(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成形ドラムの外面に補強線材を含むタイヤ構成部材を順次積層してグリーンタイヤを成形し、その際に前記成形ドラムの外面に配置されたゴム部材の外面に、ドラム幅方向に向かって延在させた前記補強線材をドラム周方向に連続させて配置する成形工程と、前記グリーンタイヤを加硫する加硫工程とを有する空気入りタイヤの製造方法において、
前記成形ドラムの幅方向中央部で前記成形ドラムの外面の外周側から前記外面に向かって前記補強線材を供給し、
前記成形工程では、前記成形ドラムの幅方向中央部から幅方向一方側に向かって、前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定長さで繰り出して、前記補強線材の折り返し部を前記成形ドラムの幅方向一方側に配置された圧着ローラの外周面に巻き付け、次いで、この圧着ローラを回転させつつ前記成形ドラムの幅方向一方側の外面に沿って移動させて前記ゴム部材の外面に圧着することにより、前記補強線材をドラム幅方向に向かって延在させる一方側工程を行い、
この一方側工程で前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定長さで前記幅方向一方側に向かって繰り出した後に、前記成形ドラムの幅方向中央部から幅方向他方側に向かって、前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定長さで繰り出して、前記補強線材の折り返し部を前記成形ドラムの幅方向他方側に配置された圧着ローラの外周面に巻き付け、次いで、この圧着ローラを回転させつつ前記成形ドラムの幅方向他方側の外面に沿って移動させて前記ゴム部材の外面に圧着することにより、前記補強線材をドラム幅方向に向かって延在させる他方側工程を行い、
前記一方側工程および前記他方側工程を、ドラム周方向に位置をずらして繰り返し行うことにより、ドラム幅方向に向かって延在させた前記補強線材をドラム周方向に連続させて配置することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、成形ドラムの外面にタイヤ構成部材を積層してグリーンタイヤを成形する際に、成形ドラムの幅方向に向かって延在する補強線材を成形ドラムの周方向に連続させて所定の位置に精度よく効率的に配置できる空気入りタイヤの製造方法および成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤの製造方法は、成形ドラムの外面に補強線材を含むタイヤ構成部材を順次積層してグリーンタイヤを成形し、その際に前記成形ドラムの外面に配置されたゴム部材の外面に、ドラム幅方向に向かって延在させた前記補強線材をドラム周方向に連続させて配置する成形工程と、前記グリーンタイヤを加硫する加硫工程とを有する空気入りタイヤの製造方法において、
前記成形ドラムの幅方向中央部で前記成形ドラムの外面の外周側から前記外面に向かって前記補強線材を供給し、前記成形工程では、前記成形ドラムの幅方向中央部から幅方向一方側に向かって、前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定長さで繰り出して
、前記補強線材の折り返し部を前記成形ドラムの幅方向一方側に配置された圧着ローラの外周面に巻き付け、次いで、この圧着ローラを回転させつつ前記成形ドラムの幅方向一方側の外面に沿って移動させて前記ゴム部材の外面に圧着することにより、前記補強線材をドラム幅方向に向かって延在させる一方側工程を行い、この一方側工程で前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定長さで前記幅方向一方側に向かって繰り出した後に、前記成形ドラムの幅方向中央部から幅方向他方側に向かって、前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定長さで繰り出して
、前記補強線材の折り返し部を前記成形ドラムの幅方向他方側に配置された圧着ローラの外周面に巻き付け、次いで、この圧着ローラを回転させつつ前記成形ドラムの幅方向他方側の外面に沿って移動させて前記ゴム部材の外面に圧着することにより、前記補強線材をドラム幅方向に向かって延在させる他方側工程を行い、前記一方側工程および前記他方側工程を、ドラム周方向に位置をずらして繰り返し行うことにより、ドラム幅方向に向かって延在させた前記補強線材をドラム周方向に連続させて配置することを特徴とする。
【0007】
本発明の空気入りタイヤの成形装置は、補強線材を含むタイヤ構成部材が外面に順次積層される成形ドラムと、前記補強線材をストック
し前記成形ドラムの幅方向中央部で前記成形ドラムの外面の外周側から前記外面に向かって前記補強線材を供給する線材保管具と、前記補強線材を前記線材保管具から繰り出して前記成形ドラムの外面に向かって押圧する配置ユニットと、前記配置ユニットを前記成形ドラムに対してドラム周方向に相対移動させる周方向移動機構とを備えた空気入りタイヤの成形装置であって、前記配置ユニットが、前記成形ドラムの幅方向中央部から幅方向一方側に向かって、前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定の長さで繰り出す一方側移動機構と、この繰り出した前記補強線材を前記成形ドラムの外面に向かって押圧する一方側圧着部と、前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定長さで前記幅方向一方側に向かって繰り出した後に、前記成形ドラムの幅方向中央部から幅方向他方側に向かって、前記補強線材を折り返した状態で予め設定された所定の長さで繰り出す他方側移動機構と、この繰り出した前記補強線材を前記成形ドラムの外面に向かって押圧する他方側圧着部とを有
し、前記一方側圧着部が前記成形ドラムの幅方向一方側に配置される圧着ローラを備えて、この圧着ローラの外周面に前記補強線材の折り返し部が巻き付けられた後に、この圧着ローラを回転させつつ前記成形ドラムの幅方向一方側の外面に沿って移動させることで前記補強線材が前記成形ドラムの外面に向かって押圧され、前記他方側圧着部が前記成形ドラムの幅方向他方側に配置される圧着ローラを備えて、この圧着ローラの外周面に前記補強線材の折り返し部が巻き付けられた後に、この圧着ローラを回転させつつ前記成形ドラムの幅方向他方側の外面に沿って移動させることで前記補強線材が前記成形ドラムの外面に向かって押圧される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形ドラムの外面に補強線材を含むタイヤ構成部材を順次積層してグリーンタイヤを成形する際に、成形ドラムの幅方向中央部から幅方向一方側に対しては前記一方側工程を行い、成形ドラムの幅方向中央部から幅方向他方側に対しては前記他方側工程を行うことで、補強線材をゴム部材の外面に圧着する時に繰り出す長さを従来技術の半分程度にすることができる。この繰り出し長さが短ければ、繰り出し長さのばらつきや繰り出し方向のばらつきが小さくなる。そのため、成形ドラムの幅方向に向かって延在する補強線材を、成形ドラムの周方向に連続させて所定の位置に精度よく配置するには有利になる。
【0009】
また、折り返した状態の所定長さの補強線材を、成形ドラムの外面に配置されているゴム部材の外面に圧着できる。そのため、補強部材を成形ドラムの幅方向中央部から幅方向一方側や他方側に延在させてから中央部側に戻して延在させて折り返した状態にする場合に比して、補強線材の単位長さ当たりに要する作業時間を短くすることができる。
【0010】
さらには、前記他方側工程は、前記一方側工程が完了していなくても、補強線材を成形ドラムの幅方向一方側に所定長さで繰り出した後に開始することができる。そのため、補強線材の単位長さ当たりに要する作業時間を短くするには益々有利になり、作業効率を一段と向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの成形装置を、成形ドラムの上半分を断面にして正面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の成形装置を側面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1の配置ユニットおよび成形ドラムを平面視で例示する説明図である。
【
図4】
図1の配置ユニットおよび成形ドラムを拡大して例示する説明図である。
【
図5】
図4の一方側移動機構により補強線材を成形ドラムの幅方向一方側に繰り出す状態を例示する説明図である。
【
図6】
図5の繰り出した補強線材をガイドロッドに係合させる状態を例示する説明図である。
【
図7】
図6の繰り出した補強線材を圧着ローラの係止突起に係合させる状態を例示する説明図である。
【
図8】
図7の繰り出した補強線材に対して圧着ローラによってテンションを付加する状態を例示する説明図である。
【
図9】
図8の繰り出した補強線材を圧着ローラによって成形ドラムの外面に向かって押圧するとともに、他方側移動機構により補強線材を成形ドラムの幅方向他方側に繰り出す状態を例示する説明図である。
【
図10】成形工程で配置された補強線材を、成形ドラムを正面展開して例示する説明図である。
【
図11】成形工程で配置された補強線材を、成形ドラムの側面視で例示する説明図である。
【
図12】成形ドラムの外面に成形されたグリーンタイヤの一部を横断面視で例示する説明図である。
【
図13】加硫装置で加硫されているグリーンタイヤの一部を横断面視で例示する説明図である。
【
図14】製造された空気入りタイヤの一部を横断面視で例示する説明図である。
【
図15】成形装置の別の実施形態を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の空気入りタイヤの製造方法および成形装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1〜
図4に例示する本発明の空気入りタイヤの成形装置1は、成形ドラム2と、補強線材M3をストックする線材保管具3と、補強線材M3を線材保管具3から繰り出して成形ドラム2の外面2sに向かって押圧する配置ユニット4と、配置ユニット4を成形ドラム2に対してドラム周方向に相対移動させる周方向移動機構10とを備えている。成形ドラム2、配置ユニット4および周方向移動機構10の動作は制御部11により制御される。
【0014】
この成形装置1を用いた成形工程では、グリーンタイヤGが成形される。成形されたグリーンタイヤGが加硫工程において加硫されることにより、空気入りタイヤTが完成する。尚、成形ドラム2の幅方向、周方向、半径方向はそれぞれ、グリーンタイヤGおよび完成タイヤ(空気入りタイヤ)Tの幅方向、周方向、半径方向に対応する。
図1、
図14の一点鎖線CLはタイヤ軸の中心を示している。
【0015】
成形ドラム2の外面2sには、タイヤ構成部材(M1〜M5)が順次積層される。タイヤ構成部材には補強線材M3が含まれている。タイヤ仕様によっては適宜必要なタイヤ構成部材が用いられる。
【0016】
この実施形態では、成形ドラム2として剛性コアが使用されている。剛性コア2は完成タイヤTの内面に対応する外面を有する筒状体である。剛性コア2は例えば、周方向に分割された複数の金属製のセグメント2Aを組み付けて構成されている。この実施形態では、周方向長さが相対的に長いセグメント2Aと相対的に短いセグメント2A周方向に交互に組み合わせて剛性コア2が構成されている。それぞれのセグメント2Aの内周面と中心軸2Cとが支持アーム2Bによって分解可能に連結されている。相対的に短いセグメント2Aを順に半径方向内側に移動させて取り除き、次いで相対的に長いセグメント2Aを順に半径方向内側に移動させて取り除くことで剛性コア2は分解される。本発明では剛性コア2に限らず、グリーンタイヤGを成形する際にタイヤ構成部材(M1〜M5)が順次積層される種々の成形ドラム2を用いることができる。
【0017】
線材保管具3は、補強線材M3をストックできる様々な構造を用いることができる。この実施形態では線材保管具3として、軸芯の両端にフランジ部を有するリールが用いられていて、補強線材M3は線材保管具3に巻き付けられてストックされている。
【0018】
配置ユニット4は、成形ドラム2の幅方向中央部から幅方向一方側(以下、この実施形態では右側という)の範囲を担当する一方側移動機構6および一方側圧着部7と、成形ドラム2の幅方向中央部から幅方向他方側(以下、この実施形態では左側という)の範囲を担当する他方側移動機構8および他方側圧着部9とを備えている。一方側移動機構6、一方側圧着部7、他方側移動機構8および他方側圧着部9の全部または一部が、例えばベース4aに対して移動可能に設けられている。この実施形態では2枚のベース4aが対置されていて、配置ユニット4はそれぞれのベース4aに連結されたフレーム等によって所定位置に固定されている。
【0019】
一方側移動機構6と他方側移動機構8とは実質的に同じ構造であり、担当する範囲に対応して配置等が異なるだけである。一方側圧着部7と他方側圧着部9とは実質的に同じ構造であり、担当する範囲に対応して配置等が異なるだけである。
【0020】
また、配置ユニット4は、成形ドラム2の幅方向中央部で、成形ドラム2の外面2sの外周側に配置された左右一対のセンターガイドローラ5a、5bを有している。線材保管具3から繰り出された補強線材M3は、センターガイドローラ5a、5bの間を通過する。このセンターガイドローラ5a、5bを間に挟んで左右一対のセンタープレート7a、9aが配置されている。それぞれのセンタープレート7a、9aは、成形ドラム2の半径方向に移動してその外面2sに対して近接および離反可能な構成になっている。
【0021】
一方側移動機構6は、成形ドラム2の幅方向中央部から右側に向かって、補強線材M3を折り返した状態で予め設定された所定の長さで繰り出す。この実施形態の一方側移動機構6は、成形ドラム2の幅方向(左右方向)に移動するプルローラ6Aを有している。このプルローラ6Aは、軸芯部どうしを連結および連結解除自在にした2つのローラ部6bを有している。補強線材M3はプルローラ6Aに掛け回されて係合されることにより折り返した状態になる。
【0022】
一方側圧着部7は、一方側移動機構6により所定長さで繰り出された補強線材M3を成形ドラム2の外面2sに向かって押圧する。一方側圧着部7は、成形ドラム2の右側に配置された圧着ローラ7bと、右側のセンターガイドローラ5aの右側に配置されたセンタープレート7aとを有している。圧着ローラ7bは回転しつつ、成形ドラム2の右側方を成形ドラム2の半径方向に移動可能な構成になっている。この圧着ローラ7bの外周面にはその外周面から突出した係止突起7cが設けられている。係止突起7cは、圧着ローラ7bの半径方向に移動する構成にして、外周面からの突出量を変更可能にすることもできる。
【0023】
この実施形態の一方側圧着部7は、圧着ローラ7bの係止突起7cに対して近接および離反移動するガイドロッド7dと、圧着ローラ7bとセンタープレート7aとの間を横断移動できるテンションローラ7eとを有している。ガイドロッド7dは、先端部が先細形状になっていて係止突起7cよりも太径の棒状体である。ガイドロッド7dは係止突起7cに対して近接すると、その先端が係止突起7cに係合する。
【0024】
他方側移動機構8は、成形ドラム2の幅方向中央部から左側に向かって、補強線材M3を折り返した状態で予め設定された所定の長さで繰り出す。この実施形態の他方側移動機構8は、成形ドラム2の幅方向(左右方向)に移動するプルローラ8Aを有している。このプルローラ8Aは、軸芯部どうしを連結および連結解除自在にした2つのローラ部8bを有している。補強線材M3はプルローラ8Aに掛け回されて係合されることにより折り返した状態になる。
【0025】
他方側圧着部9は、他方側移動機構8により所定長さで繰り出された補強線材M3を成形ドラム2の外面2aに向かって押圧する。他方側圧着部9は、成形ドラム2の左側に配置された圧着ローラ9bと、左側のセンターガイドローラ5bの左側に配置されたセンタープレート9aとを有している。圧着ローラ9bは回転しつつ、成形ドラム2の左側方を成形ドラム2の半径方向に移動可能な構成になっている。この圧着ローラ9bの外周面にはその外周面から突出した係止突起9cが設けられている。係止突起9cは、圧着ローラ9bの半径方向に移動する構成にして、外周面からの突出量を変更可能にすることもできる。
【0026】
この実施形態の他方側圧着部9は、圧着ローラ9bの係止突起9cに対して近接および離反移動するガイドロッド9dと、圧着ローラ9bとセンタープレート9aとの間を横断移動できるテンションローラ9eとを有している。ガイドロッド9dは、先端部が先細形状になっていて係止突起9cよりも太径の棒状体である。ガイドロッド9dは係止突起9cに対して近接すると、その先端が係止突起9cに係合する。この実施形態では、一方のベース4aに圧着ローラ7b、9bが取り付けられていて、他方のベース4aに圧着ローラ7b、9b以外の配置ユニット4の構成部材が取り付けられている。
【0027】
周方向移動機構10は、配置ユニット4を成形ドラム2に対して成形ドラム2の周方向に相対移動させる。この実施形態では周方向移動機構10として、成形ドラム2を回転駆動する駆動モータが用いられている。即ち、配置ユニット4は成形ドラム2の周方向には不動状態になっていて、成形ドラム2を周方向に移動させる構成になっている。本発明では、成形ドラム2を周方向に不動状態にして、配置ユニット4を成形ドラム2の周方向に移動させる構成にすることもできる。或いは、配置ユニット4と成形ドラム2の両方を成形ドラム2の周方向に移動させる構成にして周方向に相対移動させる構成にすることもできる。
【0028】
以下、本発明の空気入りタイヤの製造方法の手順の一例を説明する。
【0029】
成形装置1を用いた成形工程では、成形ドラム2の外面2sにタイヤ構成部材(M1〜M5)を順次積層する。まず、
図1、
図2に例示するように、成形ドラム2の外面2s(一方側面から他方側面に至る概ね全範囲の外面2s)に、既存の方法でインナーライナM1を巻き付ける。巻き付けたインナーライナM1の外面の両側面の最内周部にはビードワイヤM2を円環状に圧着する。
【0030】
次いで、これら部材M1、M2の外面に、カーカス層を形成するカーカスコードを補強線材M3として積層する。この補強線材M3を積層する際に配置ユニット4を用いる。
図4に例示するように補強線材M3は、線材保管具3から繰り出してセンターガイドローラ5a、5bの間を通過させる。次いで、
図5に例示するように補強線材M3をある程度の長さだけ繰り出してその先端部を、成形ドラム2の半径方向内側に移動させた左側のセンタープレート9aによってインナーライナM1の外面に押圧して圧着固定する。
【0031】
補強線材M3の先端部をインナーライナM1の外面に圧着固定した状態で、センタープレート9aと右側のセンターガイドローラ5aとの間で補強線材M3をプルローラ6Aに掛け回して係合させる。プルローラ6Aに係合させることで補強線材M3に折り返し部が形成される。この状態で、プルローラ6Aを成形ドラム2の幅方向中央部から右側に向かって移動させる。これにより、補強線材M3を折り返した状態で予め設定された所定の長さで繰り出す。この時、ガイドロッド7dおよびテンションローラ7eは所定の待機位置に配置させておき、繰り出した補強線材M3を、圧着ローラ7bとテンションローラ7eとの間に挿通させた状態にする。
【0032】
次いで、
図6に例示するように、プルローラ6Aを成形ドラム2の周方向に回転させることにより、繰り出した補強線材M3を約90°捩じって折り返し部の向きを変更する。即ち、折り返し部で対向する補強線材M3どうしが、
図5では成形ドラム2の半径方向に並んでいるが、
図6では成形ドラム2の周方向に並んでいる。補強線材M3の折り返し部の向きを変更する際に、配置ユニット4を成形ドラム2の周方向に所定の回転角度だけ相対移動させる。次いで、右側のセンタープレート7aを成形ドラムの半径方向内側に移動させて補強線材M3をインナーライナM1の外面に押圧して圧着固定する。左側のセンタープレート9aは成形ドラム2の半径方向外側に移動させてインナーライナM1および補強線材M3から離反させる。
【0033】
次いで、ガイドロッド7dを成形ドラム2の半径方向外側に移動させて、折り返し部で対向する補強線材M3どうしの間を通過させる。これにより、ガイドロッド7dの先端を圧着ローラ7bの係止突起7cに係合させる。
【0034】
その後、
図7に例示するようにプルローラ6Aのローラ部6bどうしの結合を解除して分割させる。これにより、補強線材M3のプルローラ6Aとの係合状態が解消されて、補強線材M3はガイドロッド7dに係合して折り返し状態が維持される。
【0035】
次いで、テンションローラ7eを成形ドラム2の半径方向外側に移動させることで、右側のセンタープレート7aと圧着ロータ7bとの間を横断移動させて、補強線材M3にテンションを付加する。このテンションの付加によって、補強線材M3の折り返し部は係止突起7cに係合する。
【0036】
次いで、
図8に例示するように圧着ローラ7bを回転させて、補強線材M3の折り返し部を圧着ローラ7bの外周面に巻き付ける。この時、ガイドロッド7dおよびテンションローラ7eは所定の待機位置に戻す。
【0037】
次いで、
図9に例示するように圧着ローラ7bを回転させつつ成形ドラム2の右側の外面2sに沿って移動させて、繰り出した補強線材M3をインナーライナM1およびビードワイヤM2の外面に圧着して積層する。このようにして、折り返した状態の補強線材M3を成形ドラム2の幅方向中央部から幅方向一方側に向かって延在させる一方側工程の1サイクルが完了する。
【0038】
尚、繰り出した補強線材M3を圧着ローラ7bの係止突起7cに係合させるには、ガイドロッド7dやテンションローラ7eを省略した方法を採用することもできる。例えば、
図5に例示した状態で、係止突起7cを圧着ローラ7bの外周面から大きく突出させる。この係止突起7cを折り返し部で対向する補強線材M3どうしの間を通過させる。次いで、プルローラ6Aのローラ部6bどうしの結合を解除して分割させる。これにより、補強線材M3のプルローラ6Aとの係合状態が解消されて、補強線材M3は係止突起7cに係合して折り返し状態が維持される。その後、
図8に例示するように圧着ローラ7bを回転させ、係止突起7cの突出量は小さくする。
【0039】
次いで、他方側工程を開始する。一方側工程では補強線材M3を成形ドラム2の右側に延在させたが、他方側工程では左側に延在させることだけが異なり、その他は実質的に同じ動作を行う。即ち、他方側工程では、成形ドラム2の幅方向中央部から左側に向かって、補強線材M3を折り返した状態で予め設定された所定長さで繰り出す。そして、繰り出した補強線材M3をインナーライナM1の外面に圧着することによりドラム幅方向に向かって延在させる。
【0040】
他方側工程は、一方向工程の1サイクルが完了した後に開始してもよいが、一方側工程において右側のセンタープレート7aにより、補強線材M3をインナーライナM1の外面に圧着固定して所定長さ繰り出した時点で開始することができる。即ち、一方側工程の1サイクルが完了する前に他方側工程を開始することができる。
【0041】
上述した一方側工程および他方側工程の1サイクルを、ドラム周方向に所定の回転角度で位置をずらして繰り返し行う。即ち、配置ユニット4を成形ドラム2に対してドラム周方向に相対移動させて、一方側工程および他方側工程の1サイクルを繰り返し行う。尚、この実施形態では最初に一方側工程を行っているが、他方側工程を最初に行うこともできる。
【0042】
成形ドラム2のドラム周方向への相対移動長さを大きくすると、補強線材M3の周方向配置ピッチが大きくなり、相対移動長さを小さくすると補強線材M3の周方向配置ピッチが小さくなる。そのため、補強線材M3の周方向配置ピッチの大きさに応じて、配置ユニット4のドラム周方向への適切な相対移動量を設定する。
【0043】
上述した一方側工程および他方側工程を繰り返し行うことで、
図10、
図11に例示するように、成形ドラム2の幅方向に向かって成形ドラム2の外周面A1(タイヤトレッドに相当する範囲)および両側面A2(タイヤサイドに相当する範囲)に延在させた1本の補強線材M3をドラム周方向に連続させて配置することができる。
【0044】
次いで、
図12に例示するように、ビードワイヤM2の外面に積層した補強線材M3の外面に、新たにビードワイヤM2を圧着して積層することで、成形ドラム2の外面2sの幅方向両端部のそれぞれで、補強線材M3をビードワイヤM2で挟んだ状態にする。次いで、新たに積層したビードワイヤM2および補強線材M3の外面にゴム部材M4を積層し、さらにその外面に補強層を有するゴム部材M5を積層することで
図12に例示するグリーンタイヤGが完成する。
【0045】
成形したグリーンタイヤGは、
図13に例示するように剛性コア2とともに、加硫装置12に装着された加硫用モールド12aの中に設置されて、所定の圧力で加圧されるとともに所定の温度で加熱される。このようにグリーンタイヤGを所定時間、加硫する加硫工程を経ることで
図14に例示する空気入りタイヤTが完成する。加硫工程の後で、剛性コア2を分解して空気入りタイヤTから取り外す。
【0046】
本発明によれば、成形ドラム2の外面2sにタイヤ構成部材M1〜M5を順次積層してグリーンタイヤGを成形する際に、成形ドラム2の幅方向中央部から幅方向一方側に対しては一方側工程を行い、成形ドラム2の幅方向中央部から幅方向他方側に対しては他方側工程を行うことで、補強線材M3をインナーライナM1の外面に圧着する時に繰り出す長さを従来技術の半分程度にできる。この時に補強線材M3の繰り出し長さが短ければ、繰り出し長さのばらつきや繰り出し方向のばらつきが小さくなるので、成形ドラム2の幅方向に向かって延在する補強線材M3を、成形ドラム2の周方向に連続させて所定の位置に精度よく配置できる。
【0047】
また、折り返した状態の所定長さの補強線材M3を、成形ドラム2の外面2sに配置されているインナーライナM1の外面に圧着できる。そのため、補強線材M3を成形ドラム2の幅方向中央部から幅方向一方側や他方側に延在させてから中央部側に戻して延在させて折り返した状態にする場合に比して、補強線材M3の単位長さ当たりに要する作業時間を短縮できる。これに伴い、作業効率が向上する。
【0048】
さらには、他方側工程は、一方側工程が完了していなくても開始することができる。これに伴い、補強線材M3の単位長さ当たりに要する作業時間を短縮するには益々有利になり、作業効率が一段と向上する。
【0049】
本発明により配置する補強線材M3は、カーカスコードに限定されない。例えば、ブレーカ層を形成する補強線材M3を配置する場合にも、本発明を適用することができる。
【0050】
1つの成形ドラム2に対して設置する配置ユニット4の数は1台に限らず、複数台にすることもできる。例えば
図15に示すように、複数台(2台に限らず、3台以上も可能)の配置ユニット4を成形ドラム2の周方向に間隔をあけて設置する。そして、それぞれの配置ユニット4を同時に作動させて、ドラム周方向位置を異ならせた複数範囲で成形工程を同時に行う。これにより、複数本の補強線材M3を同時に成形ドラム2の幅方向に向かって延在させるとともに周方向に連続させて配置できる。この実施形態では、2本の補強線材M3によってカーカス層が形成される。これに伴い、グリーンタイヤGの成形に要する時間を短縮することができる。