(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記除電処理部は、前記判定処理部が前記荷重検出部により検出される荷重の振れ幅が静電気によるものであると判定した場合に、当該振れ幅が閾値未満となるまで、前記除電器による除電を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の電子天秤。
前記荷重検出部により検出される荷重の振れ幅が前記閾値未満となるまでの除電時間を測定対象物の識別情報に対応付けて記憶する記憶部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の電子天秤。
前記判定処理部が、前記荷重検出部により検出される荷重の振れ幅が静電気によるものであると判定した場合に、前記振れ幅の変化に基づいて、当該振れ幅が閾値未満となるまでの除電時間を予測する除電時間予測処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電子天秤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような従来の電子天秤では、除電動作を適切に実施できていない場合があるという不具合があった。具体的には、電子天秤では、荷重検出部からの検出信号が安定しない場合において、その原因が静電気の影響である場合と、静電気以外の影響である場合とがある。静電気以外の影響としては、例えば、ユーザが電子天秤に触れたために振動が発生した場合や、室温と電子天秤内の温度差のために、電子天秤内で対流が生じている場合などが挙げられる。
【0007】
荷重検出部からの検出信号が安定しない原因が静電気の影響である場合には、検出信号が安定するまで除電動作を行う必要がある。一方、荷重検出部からの検出信号が安定しない原因が静電気以外の影響である場合には、電子天秤に発生した振動が収まるまで待機したり、室温と電子天秤内との温度差を確認したりするなどの対応が必要である。
【0008】
ここで、ユーザが表示部などを目視することにより、検出信号が安定しない原因が、静電気の影響なのか、静電気以外の影響なのかを区別することは難しい。そのため、検出信号が安定しない原因が静電気の影響である場合に、ユーザが、その原因を誤って静電気以外の影響と判断して、上記した対応を行ってしまったり、検出信号が安定しない原因が静電気以外の影響であっても、ユーザが、その原因を誤って静電気の影響と判断して、無駄に除電動作を行ってしまうことがあった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、検出する荷重の値が安定しない場合に、その原因を的確に判断できる電子天秤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る電子天秤は、載置部と、荷重検出部と、除電器と、除電処理部と、判定処理部とを備える。前記載置部には、測定対象物が載置される。前記荷重検出部は、前記載置部に載置されている測定対象物の荷重を検出する。前記除電器は、前記載置部に載置されている測定対象物の静電気を除電する。前記除電処理部は、前記除電器の動作を制御する。前記判定処理部は、前記載置部に測定対象物が載置された状態で、前記除電処理部の制御により、前記除電器による除電が行われた場合に、除電を行う前後で前記荷重検出部により検出される荷重の振れ幅の変化に基づいて、当該振れ幅が静電気によるものであるか否かを判定する。
【0010】
載置部に測定物が載置された状態で、荷重検出部により検出される荷重の値が安定しない場合には、その検出される荷重の値に振れ幅(ばらつき)が生じている。検出した荷重の値に振れ幅が生じている原因が静電気の影響である場合には、除電器による除電を行うと、静電気が除去されて、振れ幅が変化(減少)する。一方、検出した荷重の値に振れ幅が生じている原因が静電気以外の影響である場合には、除電器による除電を行ったとしても、荷重の振れ幅は変化しない。
【0011】
上記した構成によれば、判定処理部は、除電器による除電が行われ、除電の前後で荷重検出部により検出される荷重の振れ幅の変化に基づいて、当該振れ幅が静電気によるものであるか否かを判定する。
【0012】
そのため、静電気の影響により荷重検出部により検出される荷重の値に振れ幅が生じている場合(安定しない場合)には、その原因が静電気の影響であることを的確に判定できる。また、静電気以外の影響により荷重検出部により検出される荷重の値に振れ幅が生じている場合には、その原因が静電気以外の影響であることを的確に判定できる。
【0013】
(2)また、前記除電処理部は、前記判定処理部が前記荷重検出部により検出される荷重の振れ幅が静電気によるものであると判定した場合に、当該振れ幅が閾値未満となるまで、前記除電器による除電を繰り返してもよい。
【0014】
電子天秤において除電動作を行う場合には、その除電時間は、静電気の静電量の多寡に応じて増減することが好ましい。しかし、従来の電子天秤の除電器では、通常予め所定の除電時間(例えば、10秒)が設定されており、1回の除電動作(10秒の除電動作)で信号が安定しない場合は、もう1回除電動作(10秒の除電動作)を行っていた。その場合、例えば、本来15秒で除電が完了する場合でも、20秒の除電動作を行っていたため、余計な除電動作を行っていた。そのため、電子天秤における作業時間が長くなるという問題があった。
上記した構成によれば、荷重検出部により検出される荷重の振れ幅が静電気によるものである場合に、除電器を必要なだけ動作させて、測定対象物の静電気を除去できる。
そのため、電子天秤における作業時間が長くなることを抑制できる。
【0015】
(3)また、前記電子天秤は、記憶部をさらに備えてもよい。前記記憶部は、前記荷重検出部により検出される荷重の振れ幅が前記閾値未満となるまでの除電時間を測定対象物の識別情報に対応付けて記憶する。
【0016】
このような構成によれば、所定の測定対象物に対応する適切な除電時間を記憶部に記憶させておくことができる。
【0017】
(4)また、前記電子天秤は、除電時間予測処理部をさらに備えてもよい。前記除電時間予測処理部は、前記判定処理部が、前記荷重検出部により検出される荷重の振れ幅が静電気によるものであると判定した場合に、前記振れ幅の変化に基づいて、当該振れ幅が閾値未満となるまでの除電時間を予測する。
【0018】
このような構成によれば、除電時間予測処理部により、測定対象物の静電気を除去するための適切な除電時間を予測できる。
【0019】
(5)また、前記電子天秤は、記憶部をさらに備えてもよい。前記記憶部は、前記除電時間予測処理部により予測された除電時間を測定対象物の識別情報に対応付けて記憶する。
【0020】
このような構成によれば、所定の測定対象物に対応する適切な除電時間を記憶部に記憶させておくことができる。
【0021】
(6)また、前記除電処理部は、前記荷重検出部により測定対象物の荷重が検出されたことに基づいて、前記除電器による除電を行ってもよい。
【0022】
このような構成によれば、載置部に測定対象物が載置されたことに基づいて、自動的に除電器による除電を行うことができる。
そのため、除電動作を開始させるために、ユーザが操作部を操作する作業を省くことができる。
【0023】
(7)また、前記電子天秤は、識別情報読取部と、除電時間読出部とをさらに備えてもよい。前記識別情報読取部は、前記載置部に載置される測定対象物の識別情報を読み取る。前記除電時間読出部は、前記識別情報読取部により読み取った識別情報に対応する除電時間を前記記憶部から読み出す。前記除電処理部は、前記除電時間読出部により読み出された除電時間だけ前記除電器による測定対象物の除電を行ってもよい。
【0024】
このような構成によれば、載置部に載置される測定対象物に対応する適切な除電時間を、記憶部から読み出すことができる。そして、その適切な除電時間だけ、測定対象物の除電を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、判定処理部は、除電器による除電が行われ、除電の前後で荷重検出部により検出される荷重の振れ幅の変化に基づいて、当該振れ幅が静電気によるものであるか否かを判定する。そのため、静電気の影響により荷重検出部により検出される荷重の値に振れ幅が生じている場合には、その原因が静電気の影響であることを的確に判定できる。また、静電気以外の影響により荷重検出部により検出される荷重の値に振れ幅が生じている場合には、その原因が静電気以外の影響であることを的確に判定できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.電子天秤の全体構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子天秤の構成例を示したブロック図である。この電子天秤は、測定対象物Wの質量を測定するためのものであり、載置部1、荷重検出部2、除電器3、操作部4、表示部5、識別情報読取部6、記憶部7及び制御部8などを備えている。
【0028】
載置部1は、例えば秤量皿により構成されており、その上面に測定対象物Wが載置される。本実施形態に係る電子天秤においては、粉体からなる試料の他、各種測定対象物Wを載置部1に載置して質量を測定することができる。載置部1の周囲は、例えば開閉可能な風防ケース(図示せず)により覆われており、当該風防ケース内に秤量室が形成されている。
【0029】
荷重検出部2は、載置部1に載置されている測定対象物Wの荷重を検出する。図示しないが、この例では、測定対象物Wには、バーコードやICタグなどの測定対象物Wを識別するための識別情報を保持する識別情報保持部が対応付けて設けられている。
載置部1が測定対象物Wから受ける荷重を荷重検出部2で検出することにより、その荷重に基づいて測定対象物Wの質量を測定することができる。この荷重検出部2における荷重の検出方式としては、電磁式又はロードセル式などを例示することができる。
【0030】
荷重検出部2が電磁式である場合には、例えば、マグネット及びコイルなどが荷重検出部2に備えられている。この場合、載置部1に載置される測定対象物Wの荷重と釣り合うように、コイルに電流を流して電磁力を作用させることにより、その際の電流量に基づいて測定対象物Wの荷重を検出することができる。
【0031】
荷重検出部2がロードセル式である場合には、例えばアルミなどにより形成された起歪体が荷重検出部2に備えられている。この場合、載置部1に測定対象物Wが載置されることにより起歪体が撓み、その撓み量が歪みゲージなどを用いて電気信号として検出されることにより、当該電気信号に基づいて測定対象物Wの荷重を検出することができる。ただし、荷重検出部2は、電磁式又はロードセル式に限らず、音叉式などの他の検出方式で荷重を検出するような構成であってもよい。
【0032】
除電器3は、載置部1に載置されている測定対象物Wの静電気を除去する。具体的には、除電器3において発生させたイオンを載置部1上に吹き付けることにより、載置部1上の測定対象物Wの静電気を非接触で中和して除去することができる。ただし、除電器3は、測定対象物Wに蓄積されている静電気を除去することができれば、上記のような構成に限らず、他の各種態様で静電気を除去することができるような構成を採用することができる。
操作部4は、例えば、キーボード(スイッチ)により構成される。
表示部5は、例えば、液晶表示器により構成される。
【0033】
識別情報読取部6は、測定対象物Wに対応付けられた識別情報保持部から識別情報を読み取るように構成されている。識別情報読取部6は、例えば、バーコードリーダやICタグ用リーダなどにより構成されている。
【0034】
記憶部7は、例えば、ハードディスク又はRAM(Random Access Memory)により構成される。記憶部7には、閾値71、及び、複数の除電情報72が記憶されている。
【0035】
閾値71は、制御部8が除電器3の動作を終了するときの基準となる情報であって、予め記憶部7に記憶されている。なお、閾値71は、ユーザの操作部4の操作に基づいて、記憶部7に記憶されてもよい。
【0036】
除電情報72は、除電器3の除電時間に関する情報であって、識別情報721と除電時間722とを含んでいる。識別情報721は、測定対象物Wを識別するための情報である。除電時間722は、除電器3を除電する時間の情報である。識別情報721と除電時間722とは、互いに対応づけられている。
【0037】
制御部8は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む構成である。制御部8には、荷重検出部2、除電器3、操作部4、表示部5、識別情報読取部6及び記憶部7などの各部が電気的に接続されている。本実施形態では、CPUがプログラムを実行することにより、制御部8は、入力受付部81、除電時間読出部82、判定処理部83、除電処理部84及び表示処理部85などとして機能する。
【0038】
入力受付部81は、ユーザによる操作部4の操作内容の入力を受け付ける。この例では、ユーザは、除電器3の動作を開始させるための操作を操作部4において行う。すなわち、入力受付部81は、除電器3の動作開始のための入力を受け付ける。
除電時間読出部82は、識別情報読取部6が読み取った識別情報に基づいて、記憶部7に記憶されている除電情報72を読み出す。
【0039】
判定処理部83は、荷重検出部2の検出信号に基づいて、載置部1に載置される測定対象物Wに静電気が生じているか否かを判定する。具体的には、判定処理部83は、荷重検出部2が検出する荷重の値(検出信号)に振れ幅(ばらつき)が生じている場合に、その振れ幅が静電気によるものであるか否かを判定する。
【0040】
除電処理部84は、除電器3の動作を制御する。具体的には、除電処理部84は、入力受付部81が入力を受け付けたことに基づいて、除電器3を動作させる。また、除電処理部84は、判定処理部83の判定結果、荷重検出部2の検出信号、及び、記憶部7に記憶されている閾値71に基づいて、除電器3を動作させる。また、除電処理部84は、除電時間読出部82が読み出した除電情報72に基づいて、所定の除電時間で除電器3を動作させる。
表示処理部85は、荷重検出部2の検出信号に基づいて、又は、判定処理部83の判定結果に基づいて、表示部5に対する表示を制御する。
【0041】
2.荷重検出部が検出する荷重の値
図2は、荷重検出部2により検出される測定対象物Wの荷重の値の経時的変化を示したグラフである。
図2では、測定対象物Wが静電気を帯びている場合における荷重の値の経時的変化が表されている。
【0042】
このグラフで示すように、測定対象物Wが静電気を帯びている場合には、荷重検出部2により検出される測定対象物Wの荷重の値に振れ幅(ばらつき)が生じている。具体的には、測定対象物Wの本来の荷重の値Aと異なる複数の値が検出されている。このグラフにおいて、振れ幅とは、所定時間間隔ごとでの荷重の最大値と最小値との差である。このグラフでは、測定対象物Wの静電気が除去された結果、荷重検出部2が検出する荷重の値に生じる振れ幅が時間の経過とともに小さくなっている状態が表されている。
【0043】
3.制御部の制御動作
図3は、制御部8による処理の一例を示したフローチャートであって、ユーザによって操作部4が操作されてから、記憶部7に除電時間が記憶されるまでの処理を示している。
【0044】
この電子天秤において、測定対象物Wが載置部1に載置されると、測定対象物Wの識別情報が識別情報読取部6によって読み取られるとともに、測定対象物Wの荷重が荷重検出部2によって検出される。この例では、静電気を帯びている測定対象物Wが載置部1に載置されるとする。表示処理部85は、荷重検出部2からの検出信号に基づいて、測定対象物Wの質量の値を表示部5に表示させる。この例では、測定対象物Wは静電気を帯びているため、荷重検出部2が検出する荷重の値(検出信号)は、
図2のBで示すように、その振れ幅が大きくなっている。そのため、表示部5には、振れ幅の大きい安定しない値が表示される。
【0045】
そこで、ユーザは、操作部4において、例えば、除電ボタンを押すなど、除電器3の動作を開始させるための所定の操作を行う。操作部4の操作が行われると、入力受付部81は、操作部4からの入力信号を受け付ける(ステップS101でYES)。
【0046】
すると、除電処理部84は、入力受付部81が操作部4からの入力信号(除電器3の動作開始のための信号)を受け付けたことに基づいて、除電器3の動作を1回実施する(ステップS102)。なお、この例では、除電処理部84は、除電器3の動作として、除電器3を数秒間作動させる。また、
図2において、除電処理部84が除電器3を動作させるタイミングがT
1として表されている。
【0047】
このとき、判定処理部83は、タイミングT
1の前後で、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅の変化に基づいて、測定対象物Wが静電気を帯びている状態であるか否か(振れ幅が静電気によるものであるか否か)を判定する。具体的には、判定処理部83は、タイミングT
1の前での荷重の振れ幅と、タイミングT
1の後での荷重の振れ幅とを比較し、振れ幅が小さくなっている場合に、荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気の影響であると判定し、振れ幅がほぼ変わらない場合又は変わらない場合に、荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気以外の影響であると判定する。
【0048】
この例では、タイミングT
1の前での荷重の振れ幅よりも、タイミングT
1の後での荷重の振れ幅が小さくなっているため(ステップS103でYES)、判定処理部83は、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気の影響であると判定する(ステップS104)。
【0049】
すると、除電処理部84は、再度、除電器3を動作(再除電)させる(ステップS105)。また、除電処理部84は、記憶部7から閾値71を読み出し、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅が閾値71以上の間は(ステップS106でNO)、除電器3を一定時間間隔で繰り返し動作させる。この例では、除電処理部84は、一定時間間隔ごとに除電器3を数秒間作動させており、
図2のT
2で示すタイミングで、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅が閾値71未満になっている。
【0050】
このようにして、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅が閾値71未満となると(ステップS106でYES)、除電処理部84は、除電器3の動作を終了させる。これにより、測定対象物Wの静電気が除去されて、表示部5には、測定対象物Wの質量を示す値が、安定した状態で表示される。
【0051】
除電処理部84は、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅が閾値71未満となるまでの時間(T
2−T
1)を、除電時間722として記憶部7に格納する。このとき、除電時間722は、識別情報読取部6が読み取った測定対象物Wの識別情報と対応づけられて記憶部7に格納される。このときの識別情報が識別情報721である。
【0052】
また、ステップ103でNOの場合、すなわち、除電器3を1回動作させた場合において、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅にほぼ変化がない場合又は変化がない場合には、判定処理部83は、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気以外の影響であると判定する(ステップS108)。
【0053】
そして、表示処理部85は、この判定処理部83の判定結果に基づいて、表示部5において、静電気以外の影響で荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている旨を表示させる(ステップS109)。これにより、この表示を確認したユーザは、電子天秤に発生した振動が収まるまで待機したり、室温と電子天秤内との温度差を確認したりするなど、適切な対応をとることが可能となる。
【0054】
図4は、制御部8による処理の一例を示したフローチャートであって、測定対象物Wの識別情報が読み取られてから、除電動作が実施されるまでの処理を示している。
上記した説明において、記憶部7に格納された除電情報72は、以下のようにして用いられる。
【0055】
載置部1に載置された測定対象物Wの識別情報を識別情報読取部6が読み取った結果、その識別情報が記憶部7に識別情報721として記憶されている場合には(ステップS201)、除電時間読出部82は、識別情報721に対応する除電時間722を読み出す(ステップ202)。
そして、除電処理部84は、除電時間722の時間だけ除電器3を動作させて、測定対象物Wの除電を行う(ステップ203)。
【0056】
4.作用効果
(1)本実施形態によれば、電子天秤の載置部1に測定対象物Wが載置された状態において、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている場合に、除電器3による除電が1回実施されると、判定処理部83は、その除電動作の前後で荷重検出部2により検出される荷重の値の振れ幅の変化に基づいて、当該振れ幅が静電気によるものであるか否かを判定する。
【0057】
そのため、静電気の影響により荷重検出部2により検出される荷重の値に振れ幅が生じている場合には、その原因が静電気の影響であることを的確に判定できる。また、静電気以外の影響により荷重検出部により検出される荷重の値に振れ幅が生じている場合には、その原因が静電気以外の影響であることを的確に判定できる。
【0058】
(2)また、本実施形態によれば、判定処理部83が、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気の影響であると判定した場合には(ステップS104)、除電処理部84は、記憶部7から閾値71を読み出し、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅が、その閾値71未満となるまで、除電器3を一定時間間隔で繰り返し動作させる(ステップS105)。
【0059】
そのため、荷重検出部2により検出される荷重の値の振れ幅が静電気によるものである場合に、除電器3を必要なだけ動作させて、測定対象物Wの静電気を除去できる。
そのため、電子天秤における作業時間が長くなることを抑制できる。
【0060】
(3)また、本実施形態によれば、記憶部7には、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅が閾値71未満となるまでの時間(T
2−T
1)が、測定対象物Wの識別情報と対応づけられて記憶部7に記憶されている。
【0061】
そのため、所定の測定対象物に対応する適切な除電時間を記憶部7に記憶させておくことができる。
【0062】
(4)また、本実施形態によれば、載置部1に載置された測定対象物Wの識別情報を識別情報読取部6が読み取った結果、その識別情報が記憶部7に識別情報721として記憶されている場合には(ステップS201)、除電時間読出部82は、識別情報721に対応する除電時間722を読み出す(ステップ202)。そして、除電処理部84は、除電時間722の時間だけ除電器3を動作させて、測定対象物Wの除電を行う(ステップ203)。
【0063】
そのため、載置部1に載置される測定対象物Wに対応する適切な除電時間を、記憶部7
から読み出すことができる。そして、その適切な除電時間だけ、測定対象物Wの除電を行うことができる。
【0064】
5.第2実施形態
以下では、
図5及び
図6を用いて、本発明の第2実施形態に係る電子天秤について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成及び方法については、上記と同様の符号等を用いることにより説明を省略する。
【0065】
第2実施形態の電子天秤は、
図5に示すように、第1実施形態の電子天秤における操作部4の構成を必要としない点が、構成上において、第1実施形態と大きく異なっている。
【0066】
(1)電子天秤の全体構成
具体的には、第2実施形態の電子天秤では、CPUがプログラムを実行することにより、制御部8は、除電時間読出部82、判定処理部83、除電処理部84、表示処理部85及び除電時間予測処理部86として機能する。すなわち、第2実施形態の電子天秤では、制御部8は、入力受付部81を有しておらず、新たに機能する処理部として、除電時間予測処理部86を有している。
【0067】
除電時間予測処理部86は、判定処理部83の判定結果、及び、荷重検出部2が検出する荷重の値に基づいて、適切な除電時間を予測する。具体的には、除電時間予測処理部86は、判定処理部83が、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅の変化に基づいて、その振れ幅が所定の閾値未満となるまでの除電時間を予測する。
【0068】
(2)制御部の制御動作
図6は、制御部8による処理の一例を示したフローチャートであって、測定対象物Wの荷重が検出されてから、記憶部に除電時間が記憶されるまでの処理を示している。
【0069】
電子天秤において、静電気を帯びた測定対象物Wが載置部1に載置されると、測定対象物Wの識別情報が識別情報読取部6によって読み取られるとともに、測定対象物Wの荷重が荷重検出部2によって検出される(ステップS301でYES)。
【0070】
すると、荷重検出部2が荷重を検出したことに基づいて、除電処理部84は、除電器3の動作を1回実施する(ステップS302)。なお、除電処理部84の制御による除電器3の動作の内容は、第1実施形態と同様である。
【0071】
そして、判定処理部83は、第1実施形態のステップ103と同様に、除電器3による除電の前後で、荷重の振れ幅が小さくなっていることに基づき(ステップS103でYES)、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気の影響であると判定する(ステップS304)。
【0072】
すると、除電時間予測処理部86は、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅の変化(減少)に基づいて、その振れ幅が所定の閾値未満となるまでの除電時間を予測する(ステップS305)。具体的には、除電時間予測処理部86は、所定時間における振れ幅の値の情報(最大値及び最小値の情報)に基づいて、振れ幅の減少を表す所定の傾きの線で表される関数(所定の変数を含む関数)を導き出す。そして、除電時間予測処理部86は、その関数に基づいて、振れ幅が閾値未満となるまでの時間を算出する。なお、このときの閾値は、第1実施形態のように、記憶部7に記憶されていてもよい。
そして、除電処理部84は、除電時間予測処理部86が予測した除電時間だけ除電器3を動作させて、測定対象物Wの除電を行う(ステップ306)。
【0073】
除電器3の動作が終了すると、表示処理部85は、荷重検出部2が検出する安定した検出信号に基づいて、測定対象物Wの質量を示す値を表示部5に表示させる(ステップS307)。また、除電時間予測処理部86は、予測した除電時間を除電時間722として記憶部7に格納する(ステップS308)。このとき、除電時間722は、識別情報読取部6が読み取った測定対象物Wの識別情報と対応づけられて記憶部7に格納される。このときの識別情報が識別情報721である。
【0074】
また、ステップ303でNOの場合には、第1実施形態のステップS108,109と同様に、判定処理部83が、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気以外の影響であると判定し(ステップS309)、表示処理部85が、静電気以外の影響で荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている旨を表示部5に表示させる(ステップS310)。
【0075】
なお、第1実施形態の
図4のステップ201〜203と同様の処理は、第2実施形態においても実施される。この場合には、ステップ308で記憶部7に格納された情報が用いられる。
【0076】
(3)第2実施形態の作用効果
(3−1)第2実施形態では、電子天秤において、制御部8は、新たに機能する処理部として、除電時間予測処理部86を有している。除電時間予測処理部86は、判定処理部83が、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気の影響であると判定した場合に(ステップS304)、その振れ幅の変化に基づいて、当該振れ幅が閾値未満となるまでの除電時間を予測する(ステップS305)。
【0077】
そのため、除電時間予測処理部86により、測定対象物Wの静電気を除去するための適切な除電時間を予測できる。
【0078】
(3−2)また、第2実施形態では、記憶部7には、除電時間予測処理部86が予測した除電時間が、除電時間722として記憶部7に格納される(ステップS308)。このとき、除電時間722は、識別情報読取部6が読み取った測定対象物Wの識別情報と対応づけられて記憶部7に格納される。
【0079】
そのため、所定の測定対象物に対応する適切な除電時間を記憶部に記憶させておくことができる。
【0080】
(3−3)また、第2実施形態では、除電処理部84は、荷重検出部2が荷重を検出したことに基づいて、除電器3の動作を実施する(ステップS302)。
【0081】
そのため、載置部1に測定対象物Wが載置されたことに基づいて、自動的に除電器3による除電を行うことができる。
その結果、除電動作を開始させるために、ユーザが操作部を操作する作業を省くことができる。
【0082】
6.変形例
上記した第1実施形態では、判定処理部83が、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気の影響であると判定した場合に、その振れ幅が閾値未満となるまで、除電器3の動作が一定時間間隔で自動的に繰り返されるとして説明した。しかし、第1実施形態において、判定処理部83が、荷重検出部2が検出する荷重の値に振れ幅が生じている原因を静電気の影響であると判定した場合に、表示処理部85の制御によって、表示部5において除電動作を促す(提案する)旨の表示を行ってもよい。この場合には、ユーザによって、除電器3の動作を行うための所定の操作が操作部4で行われたことに応じて、除電処理部84の制御により除電器3の動作を開始させる。このとき、表示処理部85の制御による表示部5の表示は、荷重検出部2が検出する荷重の値の振れ幅が閾値未満となるまで継続して行われることが好ましい。