(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708301
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/04 20060101AFI20200601BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
A61B6/04 331B
A61B6/00 320Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-510502(P2019-510502)
(86)(22)【出願日】2017年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2017013890
(87)【国際公開番号】WO2018185802
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳夫
【審査官】
芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−525839(JP,A)
【文献】
特開2004−105606(JP,A)
【文献】
特開2010−274058(JP,A)
【文献】
特開2003−10175(JP,A)
【文献】
特開2015−150055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検診台と、前記検診台上の被検者に対して放射線を照射する放射線照射部と、前記放射線照射部から照射され前記被検者を透過した放射線を検出する放射線検出部と、を備えた放射線撮影装置において、
前記検診台は、
前記被検者を載置する天板と、
前記天板を支持部に対して移動させる天板移動機構と、
前記天板に対して互いに異なる複数の方向から装着可能な操作部と、
前記天板における前記天板に載置される被検者の足側に配設され、前記操作部に接続されたケーブルを収納可能な箱体と、
前記箱体の上部を覆う蓋体と、
を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記箱体における前記天板に載置される被検者の体軸に対する両側の側面に、前記ケーブルを通過させるための孔部が形成される放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記箱体の内部に、前記ケーブルを巻回可能な巻回部材が配設される放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線撮影装置において、
前記天板の両側にレールが配設され、
前記操作部は、前記レールを介して前記天板に装着される放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項3に記載の放射線撮影装置において、
円弧状の案内部を有し前記放射線照射部と前記放射線検出部とを支持するC型アームと、
前記円弧状の案内部と係合することにより前記C型アームをスライド可能に支持するスライド機構と、
前記スライド機構を介して前記C型アームを回動可能に支持する回動機構と、
をさらに備える放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検診台上の被検者に対して放射線透視または放射線撮影を行う放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、循環器系の検査および手術を行う場合に使用されるX線撮影装置は、被検者を載置する天板を備えた検診台と、X線管と、X線管から照射され検診台上の被検者を通過したX線を検出するX線検出部と、円弧状の案内部を有しX線管とX線検出部とを支持する略C字状のC型アームと、円弧状の案内部と係合することによりC型アームをスライド可能に支持するスライド機構と、スライド機構を介してC型アームを水平方向を向く軸心を中心に回動可能に支持する回動機構と、を備えている。また、被検者を異なる二方向から撮影するバイプレーン方式のX線撮影装置は、上述したX線管とX線検出部とを有するC型アームを一対配設した構成を有する。
【0003】
このようなX線撮影装置は、C型アームおよび検診台における天板の移動操作や、各種のX線撮影操作等を実行させるための操作部を備えている。この操作部は、C型アームと検診台との配置関係や、この操作部を操作する操作者の立ち位置等に対応して、検診台における天板に対して互いに異なる複数の方向から装着可能となっている。特許文献1においては、操作部を、検診台に対して3方向から装着可能としたX線撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−150055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各種の操作を行うための操作部は、ケーブルを介して検診台と接続されている。一方、検診台における天板は、X線撮影の態様により、支持部に対して水平移動および昇降する構成となっている。このため、天板に配設された操作部から延びるケーブルは、天板の移動を考慮して、余裕のある長さとなっている。
【0006】
また、上述したように、操作部は、C型アームと検診台との配置関係や、この操作部を操作する操作者の立ち位置等に対応して、検診台における天板に対して互いに異なる複数の方向から装着可能となっている。また、被検者が天板上に乗り、また、天板から降りるときには、操作部を天板から一旦取り外すこともある。このような理由からも、操作部から延びるケーブルは、余裕のある長さとなっている。
【0007】
このように、検診台の天板に装着された操作部から延びるケーブルの長さが余裕長を考慮したものとされ、ケーブルにたるみが発生した場合においては、被検者等がケーブルに引っ掛かり、ケーブルに断線が生じる可能性がある。また、ケーブルのたるみは、清潔性の観点からも問題となる。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、操作部を天板に対して互いに異なる複数の方向から装着する場合においても、ケーブルのたるみを解消することが可能な放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、検診台と、前記検診台上の被検者に対して放射線を照射する放射線照射部と、前記放射線照射部から照射され前記被検者を透過した放射線を検出する放射線検出部と、を備えた放射線撮影装置において、前記検診台は、前記被検者を載置する天板と、前記天板を支持部に対して移動させる天板移動機構と、前記天板に対して互いに異なる複数の方向から装着可能な操作部と、前記天板における前記天板に載置される被検者の足側に配設され、前記操作部に接続されたケーブルを収納可能な箱体と、前記箱体の上部を覆う蓋体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記箱体における前記天板に載置される被検者の体軸に対する両側の側面に、前記ケーブルを通過させるための孔部が形成される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記箱体の内部に、前記ケーブルを巻回可能な巻回部材が配設される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記天板の両側にレールが配設され、前記操作部は、前記レールを介して前記天板に装着される。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、円弧状の案内部を有し前記放射線照射部と前記放射線検出部とを支持するC型アームと、前記円弧状の案内部と係合することにより前記C型アームをスライド可能に支持するスライド機構と、前記スライド機構を介して前記C型アームを回動可能に支持する回動機構と、をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、操作部を天板に対して互いに異なる複数の方向から装着する場合においても、ケーブルの余長部分を箱体内に収納することにより、ケーブルのたるみを解消することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、操作部が天板の両側の側面のいずれに装着された場合においても、ケーブルを、孔部を介して箱体内に案内することが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、ケーブルにおける余長部分を巻回部材に巻回することにより、ケーブルを箱体内に整理された状態で収納することが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、天板の両側のレールのいずれの領域に操作部が配置された場合においても、ケーブルのたるみを解消することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、C型アームの姿勢の変更に伴って操作部を天板に対して各種の位置に配置する場合においても、ケーブルのたるみを解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係る放射線撮影装置としてのX線撮影装置の概要図である。
【
図4】操作部17をレール15に装着した状態を示す側面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る放射線撮影装置としてのX線撮影装置の概要図である。
【0021】
このX線撮影装置は、X線管とコリメータとから成るX線照射部31と、このX線照射部31から照射されて検診台1上に横たわった被検者を通過したX線を検出するX線検出部としてのフラットパネルディテクタ32と、これらのX線照射部31およびフラットパネルディテクタ32を支持する略C字状のC型アーム33と、このC型アーム33をスライド可能に支持するスライド部34と、このスライド部34を旋回させる旋回部35と、この旋回部35を床面に対して立設した状態で支持する支持部36とを備える。
【0022】
C型アーム33には、円弧状の案内部37が形成されており、スライド部34は、この案内部37に係合することにより、C型アーム33をスライド可能な状態で支持している。そして、C型アーム33は、X線照射部31とフラットパネルディテクタ32とを、X線照射部31におけるX線管の焦点からフラットパネルディテクタ32に至るX線の軸線が、案内部37を形成する円弧の直径と一致する状態で支持している。また、旋回部35は、スライド部34をC型アーム33等とともに、X線管の焦点からフラットパネルディテクタ32に至るX線の軸線と直交する軸を中心に旋回させる。このような構成を有するX線撮影装置においては、C型アーム33をスライドおよび旋回させることにより、検診台1上の被検者に対して任意の方向からX線透視またはX線撮影を実行することが可能となる。
【0023】
次に、この発明の特徴部分である検診台1の構成について説明する。
図2は、検診台1の側面概要図である。また、
図3は、検診台1の平面概要図である。
【0024】
この検診台1は、被検者を載置する天板11と、第1支持部12と、第2支持部13と、第3支持部14とを備える。天板11は、ガイド部材42に案内されることにより、第1支持部12、第2支持部13、第3支持部14に対して、
図2および
図3において矢印Aで示す長手方向に往復移動する。この長手方向は、天板11上に横たわる被検者の体軸方向である。なお、被検者は、天板11の幅が小さくなった側(
図2および
図3における左側)を頭部側とし、その逆側(
図2および
図3における右側)を足側として天板11上に横たわる。
【0025】
また、第2支持部13は、ガイド部材41に案内されることにより、天板11および第1支持部12とともに、第3支持部14に対して、
図3において矢印Bで示す短手方向に往復移動する。この短手方向は、上述した長手方向と直交する方向である。また、第1支持部12は、図示しない揺動機構により、天板11とともに、第2支持部13に対して、長手方向と平行な軸を中心として揺動する。
【0026】
天板11における短手方向の両側(天板11に載置される被検者の体軸に対する両側)には、一対のレール15が配設されている。そして、操作部17が、これらレール15に対して、任意の位置に着脱可能に装着されている。すなわち、操作部17は、レール15を介して天板11に装着されている。この操作部17は、C型アーム33の姿勢を変更し、また検診台1における天板11を移動させ、あるいは、各種のX線撮影操作等を実行させるためのものである。
【0027】
この操作部17には、ケーブル16が接続されている。このケーブル16における操作部17とは逆側の端部領域は、ケーブル16の収納部2の内部に収納されている。このケーブル16は、操作部17を、レール15に対してどの位置にも装着可能な長さを有する。すなわち、このケーブル16は、天板11に対してレール15を介して操作部17を装着する全ての装着領域に対して操作部17を装着可能な長さを有する。なお、ケーブル16の収納部2は、天板11における、この天板11に載置される被検者の足側(
図2および
図3における右側)の端部領域に連設される状態で配設されている。
【0028】
図4は、操作部17をレール15に装着した状態を示す側面概要図である。
【0029】
この操作部17は、各種の操作を実行するための操作領域18を備える。この操作領域18には、各種の操作ボタンやタッチパネル式の表示部等が配設される。また、この操作部17には、必要に応じ、操作レバー等も配設される。この操作部17は、支持部19に対して、軸28を中心に揺動可能に配設されている。支持部19は、操作ネジ29を利用して、上述したレール15に装着される。
【0030】
図5および
図6は、上述した収納部2の斜視図である。なお、
図5は、収納部2における蓋体21を閉止した状態を示し、
図6は、収納部2における蓋体21を開放した状態を示している。
【0031】
この収納部2は、ブロック状部材22と皿状部材23とから構成される箱体と、この箱体の上部を覆う蓋体21と、を備える。蓋体21は、ブロック状部材22と皿状部材23とから構成される箱体における皿状部材23に対して、軸20を中心に揺動可能に配設されている。
図5に示すように、蓋体21が閉止状態となったときには、ブロック状部材22と皿状部材23とから構成される箱体における皿状部材23の上部がこの蓋体21により覆われる。この状態においては、
図2に示すように、収納部2における蓋体21の上面と天板11の表面とは、同じ高さ位置に配置され、同一平面状となる。
【0032】
箱体を構成するブロック状部材22における天板11に載置される被検者の体軸に対する両側の側面(
図3において矢印Bで示す短手方向の両側の側面)には、操作部17に接続されたケーブル16を通過させるための孔部24が形成されている。この孔部24は、
図5に示すように、蓋体21が箱体を覆う閉止状態となったときにも、外部に向けて開口した状態となっている。
【0033】
図6に示すように、箱体を構成するブロック状部材22には、ケーブル16を第1支持部12に案内するための孔部25が形成されている。また、箱体を構成する皿状部材23には、ケーブル16を巻回可能な3個の巻回部材26が配設されている。
【0034】
以上のような構成を有するX線撮影装置においては、C型アーム33と検診台1との配置関係や、この操作部17を操作する操作者の立ち位置等に対応して、検診台1における天板11に配設された一対のレール15における所定の位置に操作部17が取り付けられる。そして、収納部2における蓋体21を開放した状態で、操作部17から延びるケーブル16の余長部分を、収納部2におけるブロック状部材22と皿状部材23とから構成される箱体内に収納する。このときには、ケーブル16は、箱体を構成するブロック状部材22における両側の側面に形成されたいずれかの孔部24を介して箱体内に侵入する。そして、必要に応じ、ケーブル16の余長部分が、3個の巻回部材26のうちの複数の巻回部材26に巻回された後、蓋体21が閉止される。
【0035】
この状態においては、ケーブル16の余長部分は、収納部2における箱体内に収納されていることから、ケーブル16にたるみが発生することを防止することが可能となる。このため、被検者等がケーブル16に引っ掛かり、ケーブル16に断線が生じたり、ケーブル16のたるみによりケーブル16が汚染されたりすることはない。なお、このケーブル16は、箱体を構成するブロック状部材22に形成された孔部25を介して、
図2に示す第1支持部12に到達している。このため、天板11が
図2および
図3に矢印Aで示す長手方向や矢印Bで示す短手方向に移動する構成としたときにも、ケーブル16が外部で垂れ下がる等の現象を生ずることはない。
【0036】
また、収納部2における蓋体21が閉止状態となったときには、
図2に示すように、収納部2における蓋体21の上面と天板11の表面とは、同じ高さ位置に配置され、同一平面状となる。このため、蓋体21の上部に、X線撮影時に使用される機器等を載置することが可能となる。
【0037】
なお、上述した実施形態においては、操作部17を天板11の両側に配設した一対のレール15に装着する場合について説明したが、例えば、収納部2におけるブロック状部材22にさらにレールを配設し、操作部17を天板11に対して3方向から装着する構成を採用してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態においては、検診台1に対してX線照射部31からフラットパネルディテクタ32に至る撮影方向が変化し、それにより操作部17の天板11に対する取り付け位置を変更することが特に要請されるC型アーム33を有するX線撮影装置にこの発明を適用した場合について説明したが、その他の撮影方式によるX線撮影装置に使用される検診台1に対してこの発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 検診台
2 収納部
11 天板
12 第1支持部
13 第2支持部
14 第3支持部
15 レール
16 ケーブル
17 操作部
18 操舵領域
19 支持部
20 軸
21 蓋体
22 ブロック状部材
23 皿状部材
24 孔部
25 孔部
26 巻回部材
31 X線発生部
32 フラットパネルディテクタ
33 C型アーム
34 スライド部
35 旋回部
36 支持部
41 ガイド部材
42 ガイド部材