(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一のポリアミド樹脂は、前記ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
前記第一のポリアミド樹脂は、前記炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記第一のポリアミド樹脂は、前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位が、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記第二のポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が芳香族ジカルボン酸由来の構成単位である、請求項7または8に記載の樹脂組成物。
前記第二のポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数6〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記第一のポリアミド樹脂と前記第二のポリアミド樹脂の合計に対し、第二のポリアミド樹脂の質量比率が、20〜80質量%である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0008】
本発明の樹脂組成物は、第一のポリアミド樹脂と、第二のポリアミド樹脂を含み、前記第一のポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、イソホロンジアミン由来の構成単位であり、前記ジカルボン酸由来の構成単位が、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む非晶性ポリアミド樹脂であり、前記第二のポリアミド樹脂は、前記第二のポリアミド樹脂を構成する構成単位の少なくとも1種が、2つ以上の脂環構造を含む構成単位である非晶性ポリアミド樹脂であり、前記第一のポリアミド樹脂と前記第二のポリアミド樹脂の合計に対し、第二のポリアミド樹脂の質量比率が、10〜90質量%であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、透明性を維持しつつ、流動性に優れた低粘度の樹脂組成物が得られる。特に、透明性を有し、かつ、溶融粘度が相対的に低い第一のポリアミド樹脂の特性を維持しつつ、第二のポリアミド樹脂が本来的に有する優れた特性も維持できる樹脂組成物とすることができる。具体的には、例えば、高い耐衝撃性を維持しつつ、弾性率が高い樹脂組成物が得られる。
また、本発明の樹脂組成物では、第一のポリアミド樹脂が有する耐薬品性も高いレベルで維持することができる。
【0009】
すなわち、従来から2つ以上の脂環構造を含む構成単位を含む非晶性ポリアミド樹脂が知られている。具体的には、上述の4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)と、イソフタル酸とを主原料とする非晶性ポリアミド樹脂(エムス社製、Grilamid TR−55)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)とドデカン二酸を主原料とする非晶性ポリアミド樹脂(エムス社製のGrilamid TR−90)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−1−アミン)とドデカン二酸を主原料とする非晶性ポリアミド樹脂(ダイセル・エボニック社製、Trogamid myCX)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)とセバシン酸を主原料とする非晶性ポリアミド樹脂(アルケマ社製、Rilsan Clear)、またこれら樹脂の強化グレードが知られている。このような2つ以上の脂環構造を含む構成単位を有する非晶性ポリアミド樹脂(第二のポリアミド樹脂)は、通常、溶融粘度が高く、流動性に劣る。本発明では、上記第二のポリアミド樹脂に、上記第一のポリアミド樹脂を配合することにより、高い透明性を維持しつつ、樹脂組成物の溶融粘度を下げることに成功したものである。公知の非晶性ポリアミド樹脂に、他の非晶性ポリアミド樹脂を配合すると、相溶性が劣る傾向にあり、さらには相溶性の低下に伴う、透明性の低下が懸念される。しかしながら、本発明では、第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂の種類を適切に選択したことにより、ポリアミド樹脂の相溶性を向上させている。
【0010】
本発明における非晶性ポリアミド樹脂とは、結晶融解エンタルピーΔHmが10J/g未満であることをいい、5J/g以下が好ましく、3J/g以下がさらに好ましく、1J/g以下であってもよい。結晶融解エンタルピーは、後述する実施例で記載する方法に従って測定される。
【0011】
<第一のポリアミド樹脂>
本発明の樹脂組成物は、第一のポリアミド樹脂を含む。
第一のポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、イソホロンジアミン由来の構成単位であり、前記ジカルボン酸由来の構成単位が、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む非晶性ポリアミド樹脂である。
【0012】
第一のポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、好ましくは80モル%以上が、より好ましくは90モル%以上が、一層好ましくは95モル%以上が、より一層好ましくは99モル%以上がイソホロンジアミン由来の構成単位である。
イソホロンジアミン以外のジアミンとしては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が例示される。これらの他のジアミンは、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0013】
第一のポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位が、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む(但し、合計が100モル%を超えることはない)ことが好ましい。
前記ジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは45〜80モル%、さらに好ましくは50〜80モル%、一層好ましくは60〜80モル%、より一層好ましくは65〜80モル%が炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位である。
また、前記ジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは70〜20モル%、より好ましくは55〜20モル%、さらに好ましくは、50〜20モル%、一層好ましくは40〜20モル%、より一層好ましくは35〜20モル%が芳香族ジカルボン酸由来の構成単位である。
第一のポリアミド樹脂において、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸は、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明では、ジカルボン酸由来の構成単位のうち、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の合計量が90モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましく、99モル%以上を占めることがさらに好ましい。
【0014】
炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数8〜12のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸およびドデカン二酸が例示され、セバシン酸およびドデカン二酸の少なくとも一方が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が例示され、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の少なくとも1種が好ましく、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびイソフタル酸の少なくとも一方がより好ましい。また、第一のポリアミド樹脂の実施形態の一例として、テレフタル酸由来の構成単位を実質的に含まない形態が例示される。実質的に含まないとは、第一のポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸由来の構成単位のうち、テレフタル酸由来の構成単位の割合が5モル%以下、好ましくは3モル%以下、より好ましくは1モル%以下であることをいう。
炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸(他のジカルボン酸)としては、炭素数8以下のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、ピメリン酸)や脂環式ジカルボン酸(例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸)が例示される。他のジカルボン酸は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0015】
第一のポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位における、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位のモル比率(炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位/芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)が、0.5〜3.5であることが好ましく、0.8〜3.2であることがより好ましく、2.0〜3.1であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、各種性能により優れた非晶性ポリアミド樹脂が得られる。
【0016】
以下に、本発明の好ましい非晶性ポリアミド樹脂の実施形態を述べる。本発明がこれらの実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
第一のポリアミド樹脂の第一の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の90モル%以上が、イソホロンジアミン由来の構成単位であり、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含み、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位の少なくとも一方を含み、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位が、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む非晶性ポリアミド樹脂である。第一の実施形態では、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位のいずれか一方を含む態様および両方を含む態様が例示される。また、第一の実施形態では、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位のいずれか一方を含む態様および両方を含む態様が例示される。
【0017】
第一のポリアミド樹脂の第二の実施形態は、第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%のドデカン二酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む態様である。第二の実施形態では、(ドデカン二酸由来の構成単位/芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)が2.8〜3.2であることが好ましい。
第一のポリアミド樹脂の第三の実施形態は、第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%のセバシン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む態様である。第三の実施形態では、(炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位/芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)が0.8〜2.5であることが好ましい。
第一のポリアミド樹脂の第四の実施形態は、第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位を含む態様である。第四の実施形態では、(ドデカン二酸由来の構成単位/芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)が2.8〜3.2であることが好ましい。
第一のポリアミド樹脂の第五の実施形態は、第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%のイソフタル酸由来の構成単位を含む態様である。第五の実施形態では、(炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位/芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)が0.8〜3.2であることが好ましい。
【0018】
尚、第一のポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成されるが、ジカルボン酸由来の構成単位およびジアミン由来の構成単位以外の構成単位や、末端基等の他の部位を含みうる。他の構成単位としては、ε−カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸等由来の構成単位が例示できるが、これらに限定されるものではない。さらに、第一のポリアミド樹脂は、合成に用いた添加剤等の微量成分が含まれる場合もあるであろう。
本発明で用いる第一のポリアミド樹脂は、通常95質量%以上、好ましくは98質量%以上が、より好ましくは99質量%以上がジカルボン酸由来の構成単位またはジアミン由来の構成単位である。
【0019】
第一のポリアミド樹脂は、リン原子含有化合物を添加して溶融重縮合(溶融重合)法により製造される。溶融重縮合法としては、溶融させた原料ジカルボン酸に原料ジアミンを滴下しつつ加圧下で昇温し、縮合水を除きながら重合させる方法、もしくは、原料ジアミンと原料ジカルボン酸から構成される塩を水の存在下で、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法が好ましい。
【0020】
第一のポリアミド樹脂の重縮合系内に添加されるリン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられ、これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸カルシウム等の次亜リン酸金属塩がアミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸カルシウムおよび次亜リン酸ナトリウムが好ましい。本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
【0021】
溶融重縮合で得られた第一のポリアミド樹脂は一旦取り出され、ペレット化された後、乾燥して使用されることが好ましい。
【0022】
第一のポリアミド樹脂は、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度が、100Pa・s以上であることが好ましく、120Pa・s以上であることがより好ましい。前記溶融粘度の上限値は、2300Pa・s以下であることが好ましく、1000Pa・s以下であることがより好ましく、600Pa・s以下であることがさらに好ましく、550Pa・s以下であることが一層好ましく、490Pa・s以下であることがより一層好ましく、さらには、300Pa・s、290Pa・s以下、280Pa・s以下、275Pa・s以下であってもよい。
第一のポリアミド樹脂は、また、280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度が、80Pa・s以上であることが好ましく、90Pa・s以上であることがより好ましい。前記溶融粘度の上限値は、350Pa・s以下であることが好ましく、300Pa・s以下であることがより好ましく、250Pa・s以下であることがさらに好ましく、230Pa・s以下であることが一層好ましく、さらには、150Pa・s以下、145Pa・s以下、140Pa・s以下であってもよい。
溶融粘度の測定方法は、後述する実施例で記載する方法に従う。実施例で採用する機器が、廃版等により入手困難な場合は、他の同等の性能を有する機器を用いることができる。以下、他の測定方法についても、同様である。
【0023】
第一のポリアミド樹脂は、数平均分子量の下限値が8,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。前記数平均分子量の上限値は25,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましい。数平均分子量の測定方法は、後述する実施例で記載する方法に従う。
数平均分子量を調整することにより、上記溶融粘度の値を調整することができる。
【0024】
第一のポリアミド樹脂は、ガラス転移温度が130℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、145℃以上であることがさらに好ましい。本発明ではこのような高いTgとすることができるため、高温条件下でも物性低下しにくいというメリットがある。すなわち、高いガラス転移温度を維持しつつ、低い溶融粘度とすることができる点で、本発明の樹脂組成物は価値が高い。ガラス転移温度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、220℃以下であることが好ましく、200℃であってもよく、170℃以下でも十分実用レベルである。
ガラス転移温度の測定方法は、後述する実施例で記載する方法に従う。
【0025】
本発明の樹脂組成物における第一のポリアミド樹脂の含有量は、下限値が、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上、25質量%以上、35質量%以上、45質量%以上であってもよい。また、本発明の樹脂組成物における第一のポリアミド樹脂の含有量は、上限値が、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下、75質量%以下、65質量%以下、55質量%以下であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、第一のポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。尚、第一のポリアミド樹脂を2種以上含む場合、第一のポリアミド樹脂の溶融粘度、分子量、ガラス転移温度等は、混合物の溶融粘度等とする。第二のポリアミド樹脂についても同様に考える。
【0026】
<第二のポリアミド樹脂>
本発明の樹脂組成物は、第二のポリアミド樹脂を含む。
第二のポリアミド樹脂は、構成単位の少なくとも1種が、2つ以上の脂環構造を含む構成単位である非晶性ポリアミド樹脂である。ここでの構成単位とは、1つの原料モノマーから構成される繰り返し単位をいい、2つまたは3つ以上のアミノ基を持つ化合物由来の構成単位、2つまたは3つ以上のカルボキシ基を持つ化合物由来の構成単位、および、アミノカルボン酸(アミノ基とカルボキシ基が脱水縮合したラクトン環を含む)由来の構成単位の少なくとも1種が例示され、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の少なくとも1種が好ましい。
前記2つ以上の環状構造を含む構成単位は、環状構造を1つの構成単位に2〜4つ含むことが好ましく、2つまたは3つ含むことがより好ましく、2つ有することがさらに好ましい。このように、第二のポリアミド樹脂が、2つ以上の環状構造を含むことにより、第一のポリアミド樹脂との相溶性が高まり、非晶性ポリアミド樹脂が本来的に有する高い透明性を効果的に維持することができる。さらに、樹脂組成物の溶融粘度を第二のポリアミド樹脂のみを用いた場合と比較して、相対的に低くすることができる。
脂環構造は、それぞれ、1つの脂環からなる単環であってもよいし、2つ以上の脂環からなる縮合環であってもよい。第二のポリアミド樹脂は、このような環状構造を1つの構成単位に2つ以上有する。2つ以上の環状構造は、1つの構成単位内で単結合によって連結していてもよいし、2つ以上の環状構造と他の基の組み合わせからなる基であってもよい。
環状構造を形成する脂環は、5員環および6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
前記構成単位の実施形態としては、−NH−R−環状構造−R−環状構造−R−NH−(Rは単結合または2価の連結基を表す、以下同じ)、−CO−R−環状構造−R−環状構造−R−CO−、または、−CO−R−環状構造−R−環状構造−R−NH−で表されるものが例示され、−NH−R−環状構造−R−環状構造−R−NH−が好ましい。Rとしての2価の連結基の好ましい範囲は、後述する式(1)におけるRと同義である。
【0027】
本発明では、2つ以上の脂環構造を含む構成単位は、より具体的には、式(1)で表される構成単位であることが好ましく、式(2)で表される構成単位であることがより好ましく、式(3)で表される構成単位であることがさらに好ましく、式(4)で表される構成単位であることが一層好ましい。
【0028】
式(1)
【化3】
式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは単結合または2価の連結基であり、Xは、それぞれ独立に、NHまたはCOであり、n1およびn2は、それぞれ独立に、1〜6の整数である。
【0029】
式(2)
【化4】
式(2)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは単結合または2価の連結基であり、n1およびn2は、それぞれ独立に、1〜6の整数である。
式(3)
【化5】
式(3)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
式(4)
【化6】
式(4)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0030】
式(1)において、Xは、それぞれ独立に、NHまたはCOであり、NHであることが好ましい。
式(1)および式(2)において、Rは、単結合または2価の連結基である。2価の連結基は、その種類等、特に定めるものではないが、脂肪族炭化水素基、または、脂肪族炭化水素基と、−O−および/または−S−との組み合わせからなる基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、直鎖または分岐のアルキレン基であることが好ましく、直鎖アルキレン基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素数は、1〜15が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、1〜3が一層好ましい。アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が例示される。
式(1)〜式(4)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましい。R
1およびR
2は、同じ基であっても、異なっていてもよいが、同じ基であることが好ましい。
式(1)または式(2)において、n1およびn2は、それぞれ独立に、1〜6の整数であり、1〜4の整数が好ましく、1または2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0031】
前記2つ以上の環状構造を含む構成単位の原料となるモノマーとしては、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−1−アミン)、(4,4’−オキソビス(シクロヘキサン−1−アミン))、4,4’−チオビス(シクロヘキサン−1−アミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−カルボン酸)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−1−カルボン酸)、4,4’−チオビス(シクロヘキサン−1−アミン))、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−カルボン酸)、(4,4’−オキソビス(シクロヘキサン−1−カルボン酸))、4,4’−チオビス(シクロヘキサン−1−カルボン酸)、デカヒドロ−1,4−ナフタレンジカルボン酸等が例示される。
【0032】
第二のポリアミド樹脂は、第二のポリアミド樹脂を構成する構成単位の合計の好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、一層好ましくは40モル%以上が、2つ以上の脂環構造を含む構成単位を含む非晶性ポリアミド樹脂である。2つ以上の脂環構造を含む構成単位の上限は、構成単位の合計の全て(100モル%)であってもよいが、50モル%以下が好ましい。
【0033】
第二のポリアミド樹脂に含まれていてもよい、2つ以上の脂環構造を含む構成単位以外の他の構成単位としては、1つの脂環構造を含む構成単位、脂肪族ジアミン由来の構成単位、脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、芳香族ジアミン由来の構成単位、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位、2つ以上の脂環構造を含むアミノカルボン酸以外のアミノカルボン酸由来の構成単位が例示される。
【0034】
脂肪族ジアミンは、直鎖または分岐の脂肪族ジアミンを意味し、直鎖脂肪族ジアミンが好ましい。具体的には、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンが例示される。
脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖または分岐の脂肪族ジカルボン酸を意味し、直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、炭素数6〜15のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸がさらに好ましく、炭素数10〜12のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが一層好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸およびドデカン二酸が例示され、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸およびドデカン二酸が好ましく、セバシン酸、およびドデカン二酸がより好ましい。
【0035】
芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンが例示される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が例示され、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の少なくとも1種が好ましく、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の少なくとも一方がより好ましく、イソフタル酸がさらに好ましい。
【0036】
アミノカルボン酸としては、NH
2−直鎖または分岐の脂肪族基−COOH、および、NH
2−芳香環を含む基−COOHが好ましい。また、アミノカルボン酸には、アミノ基とカルボキシ基が脱水縮合したラクタムも含む趣旨である。
直鎖または分岐の脂肪族基は、炭素数6〜20の直鎖または分岐の脂肪族基であることが好ましく、炭素数6〜15の直鎖または分岐の脂肪族基であることがより好ましい。アミノカルボン酸を構成する脂肪族基は、直鎖脂肪族基であることが好ましい。
アミノカルボン酸としては、ε−カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸が例示でき、12−アミノドデカン酸およびラウロラクタムがより好ましく、12−アミノドデカン酸がさらに好ましい。
【0037】
第二のポリアミド樹脂は、イソホロンジアミン由来の構成単位を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。第二のポリアミド樹脂における、イソホロンジアミン由来の構成単位の割合は、ジアミン由来の構成単位の70モル%未満であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが一層好ましく、1モル%以下であることがより一層好ましい。イソホロンジアミンの割合が多いほど、第一のポリアミド樹脂との相溶性に優れ、得られる樹脂組成物の溶融粘度も低くなる傾向にある。一方、イソホロンジアミンの割合が少ないほど、得られる樹脂組成物に、第二のポリアミド樹脂由来の特性を付与することができる。本発明では、所望の用途に応じて適宜調整することができる。
【0038】
第二のポリアミド樹脂を構成する構成単位とは、ジカルボン酸由来の構成単位、ジアミン由来の構成単位、アミノカルボン酸由来の構成単位を意味する。第二のポリアミド樹脂は、(1)ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位とから構成されるか、(2)アミノカルボン酸由来の構成単位から構成されるか、(3)ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の少なくとも1種(好ましくは、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の両方と)と、アミノカルボン酸由来の構成単位とから構成される。なお、第二のポリアミド樹脂が、上記構成単位以外に、末端基等の他の部位やポリアミド樹脂の合成に用いられる添加剤成分等を含みうることは言うまでもない。
第二のポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位、ジカルボン酸由来の構成単位およびアミノカルボン酸由来の構成単位の合計で、90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましい。
本発明では、(1)ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位とから構成されるか、(3)ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の少なくとも1種と、アミノカルボン酸由来の構成単位とから構成されることが好ましい。
【0039】
第二のポリアミド樹脂の第一の実施形態として、ジアミン由来の構成単位の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上、より一層好ましくは99モル%以上が、2つ以上の脂環構造を含む構成単位を含む非晶性ポリアミド樹脂が挙げられる。
第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位のバリエーションの一例は、好ましくはその50モル%以上が、より好ましくは70モル%以上が、さらに好ましくは80モル%以上が、一層好ましくは90モル%以上が、より一層好ましくは95モル%以上が、特に一層好ましくは99モル%以上が芳香族ジカルボン酸または炭素数6〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であるポリアミド樹脂である。
第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位のバリエーションの他の一例は、好ましくはその50モル%以上が、より好ましくは70モル%以上が、さらに好ましくは80モル%以上が、一層好ましくは90モル%以上が、より一層好ましくは95モル%以上が、特に一層好ましくは99モル%以上が芳香族ジカルボン酸由来の構成単位であるポリアミド樹脂である。
第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位のバリエーションのさらに他の一例は、また、好ましくはその50モル%以上が、より好ましくは70モル%以上が、さらに好ましくは80モル%以上が、一層好ましくは90モル%以上が、より一層好ましくは95モル%以上が、特に一層好ましくは99モル%以上が炭素数6〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であるポリアミド樹脂である。
第一の実施形態において、アミノカルボン酸由来の構成単位の割合は、30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下、4モル%以下であってもよい。アミノカルボン酸由来の構成単位の割合は、0モル%であってもよいし、1モル%以上であってもよい。
【0040】
第二のポリアミド樹脂の第二の実施形態として、ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上、より一層好ましくは99モル%以上が、2つ以上の脂環構造を含む構成単位を含む非晶性ポリアミド樹脂が挙げられる。
第二の実施形態において、ジアミン由来の構成単位は、芳香族ジアミンおよび脂肪族ジアミンが好ましい。
第二の実施形態において、アミノカルボン酸由来の構成単位の割合は、30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下、4モル%以下であってもよい。アミノカルボン酸由来の構成単位の割合は、0モル%であってもよいし、1モル%以上であってもよい。
【0041】
第二のポリアミド樹脂の第三の実施形態として、アミノカルボン酸由来の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上、より一層好ましくは99モル%以上が、2つ以上の脂環構造を含む構成単位を含む非晶性ポリアミド樹脂が挙げられる。
本発明では、第一の実施形態がより好ましい。
【0042】
第二のポリアミド樹脂は、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度が、150Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることがより好ましい。前記溶融粘度の上限値は、3000Pa・s以下であることが好ましく、2500Pa・s以下であることがより好ましく、2000Pa・s以下であることがさらに好ましく、1800Pa・s以下であることが一層好ましく、1600Pa・s以下であることがより一層好ましく、1400Pa・s以下であることがさらに一層好ましく、1200Pa・s以下であることが特に一層好ましい。
第二のポリアミド樹脂は、また、280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度が、100Pa・s以上であることが好ましく、120Pa・s以上であることがより好ましい。前記溶融粘度の上限値は、600Pa・s以下であることが好ましく、550Pa・s以下であることがより好ましく、500Pa・s以下であることがさらに好ましく、450Pa・s以下であることが一層好ましく、420Pa・s以下であることがより一層好ましい。
溶融粘度の測定方法は、後述する実施例で記載する方法に従う。
【0043】
第二のポリアミド樹脂は、数平均分子量の下限値が8,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。前記数平均分子量の上限値は25,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましい。数平均分子量の測定方法は、後述する実施例で記載する方法に従う。
【0044】
第二のポリアミド樹脂は、ガラス転移温度が100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。本発明ではこのような高いTgとすることができるため、高温条件下でも物性低下しにくいというメリットがある。ガラス転移温度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、200℃以下であることが好ましく、180℃であってもよく、170℃以下でも十分実用レベルである。
ガラス転移温度の測定方法は、後述する実施例で記載する方法に従う。
【0045】
本発明の樹脂組成物における第二のポリアミド樹脂の含有量は、下限値が、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上、25質量%以上、35質量%以上、45質量%以上であってもよい。また、本発明の樹脂組成物における第二のポリアミド樹脂の含有量は、上限値が、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下、75質量%以下、65質量%以下、55質量%以下であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、第二のポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0046】
<樹脂のブレンド形態>
本発明の樹脂組成物における、第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂の質量比率は、前記第一のポリアミド樹脂と前記第二のポリアミド樹脂の合計に対し、第二のポリアミド樹脂の質量比率が、10〜90質量%である。第二のポリアミド樹脂の質量比率は、下限値が、15質量%以上であることが好ましく、25質量%以上、35質量%以上、45質量%以上であってもよい。また、第二のポリアミド樹脂の質量比率は、上限値が、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下、75質量%以下、65質量%以下、55質量%以下であってもよい。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、通常、第二のポリアミド樹脂が、第一のポリアミド樹脂より溶融粘度が高い。第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂の溶融粘度の差は、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度で、50Pa・s以上であることが好ましく、100Pa・s以上であることがより好ましく、200Pa・s以上であることがさらに好ましく、さらには、300Pa・s以上、400Pa・s以上、500Pa・s以上であってもよい。第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂の溶融粘度の差の上限値については、特に定めるものではないが、例えば、第二のポリアミド樹脂の溶融粘度−80Pa・s以下である。
また、第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂の溶融粘度の差は、280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度で、30Pa・s以上であることが好ましく、50Pa・s以上であることがより好ましく、100Pa・s以上であることがさらに好ましく、さらには、200Pa・s以上、250Pa・s以上、270Pa・s以上であってもよい。第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂の溶融粘度の差の上限値については、特に定めるものではないが、例えば、第二のポリアミド樹脂の溶融粘度−60Pa・s以下である。
このように溶融粘度の差があるポリアミド樹脂をブレンドすることにより、第一のポリアミド樹脂が本来的に有する低い溶融粘度を維持しつつ、第二のポリアミド樹脂が本来的に有する特性(例えば、機械的強度や耐熱性)を達成できる。特に、本発明では、第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂の構造を適切に選択したことにより、両者の相溶性を高めることができ、非晶性ポリアミド特有の透明性は維持しつつ、流動性に優れた低粘度の樹脂組成物とすることができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、第一のポリアミド樹脂および第二のポリアミド樹脂以外の、非晶性ポリアミド樹脂および結晶性ポリアミド樹脂を含んでいてもよい。具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6/66(ポリアミド6成分およびポリアミド66成分からなる共重合体)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、MPXD6(ポリメタパラキシリレンアジパミド)、MXD10(ポリメタキシリレンセバサミド)、MPXD10(ポリメタパラキシリレンセバサミド)およびPXD10(ポリパラキシリレンセバサミド)が例示される。これらの他のポリアミド樹脂は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の樹脂組成物が、第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂以外の非晶性ポリアミド樹脂を含む場合、その含有量は、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分の10質量%以下であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、第一のポリアミド樹脂と第二のポリアミド樹脂以外の非晶性ポリアミド樹脂を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分の1質量%未満であることをいう。
本発明の樹脂組成物が、結晶性ポリアミド樹脂を含む場合、その含有量は、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分の10質量%以下であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、結晶性ポリアミド樹脂を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分の1質量%未満であることをいう。
【0049】
また、本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)およびシクロオレフィンコポリマー(COC)等のポリオレフィン樹脂を例示できる。これらのポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の樹脂組成物が、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む場合、その含有量は、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分の10質量%以下であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分の1質量%未満であることをいう。
【0050】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、前記第一のポリアミド樹脂および第二のポリアミド樹脂のみからなってもよいし、他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、上記樹脂成分の他、充填剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、耐衝撃改良剤、滑剤、着色剤、導電性添加剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。これらの添加剤は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0051】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度の上限値が1400Pa・s以下であることが好ましく、1200Pa・s以下であることがより好ましく、1000Pa・s以下であることがさらに好ましく、950Pa・s以下であることが一層好ましく、920Pa・s以下であってもよい。前記溶融粘度の下限値は、特に定めるものではないが160Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度の上限値が500Pa・s以下であることが好ましく、450Pa・s以下であることがより好ましく、400Pa・s以下であることがさらに好ましく、380Pa・s以下であることが一層好ましく、350Pa・s以下であってもよく、340Pa・s以下であってもよい。前記溶融粘度の下限値は、特に定めるものではないが100Pa・s以上であることが好ましく、120Pa・s以上であることがより好ましい。
樹脂組成物の溶融粘度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、機械的強度に優れたポリアミド樹脂とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、JIS K7171に従った曲げ弾性率が1.6GPa以上であることが好ましく、2.0GPa以上であってもよい。上限値は特に定めるものではないが、例えば、4.0GPa以下、さらには3.5GPa以下であっても十分実用レベルである。
本発明の樹脂組成物は、JIS K7111−1に従ったノッチつきシャルピー衝撃強さが4.0kJ/m
2以上であることが好ましく、4.3kJ/m
2以上であることがより好ましい。上限値は特に定めるものではないが、例えば、9.0kJ/m
2以下、さらには8.7kJ/m
2以下であっても十分実用レベルである。
本発明の樹脂組成物は、2mmの厚さに成形したとき測定したヘイズの値が、2.0%以下であることが好ましく、1.7%以下であることがより好ましく、1.6%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが一層好ましい。下限値については、0%が理想であるが、1.0%以上であっても十分に実用レベルである。
曲げ弾性率、シャルピー衝撃強さおよびヘイズは後述する実施例の記載に従って測定される。
【0053】
<用途>
本発明の樹脂組成物は、強化繊維を配合して繊維強化樹脂組成物とすることができる。強化繊維としては、炭素繊維およびガラス繊維が例示される。繊維強化樹脂組成物としては、本発明の樹脂組成物と強化繊維を含む組成物を溶融混練してなるペレット、本発明の樹脂組成物を強化繊維に含浸または近接させたプリプレグなどが例示される。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、また、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸、真空成形などの公知の成形方法によって、成形することができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物から形成される成形品としては、フィルム、シート、薄肉成形品、中空成形品、繊維、ホース、チューブ等を含む各種成形品に用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、エンジニアリングプラスチック用途に好ましく用いられる。かかる成形品の利用分野としては、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、光学製品、工業材料、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等が挙げられる。本発明の成形品の実施形態の一例として、電子・電気機器部品の筐体、サングラス等が例示される。
【0056】
また、本発明の樹脂組成物から形成される成形品の実施形態の他の一例として、本発明の樹脂組成物から形成される層を含む単層または多層容器が挙げられる。前記多層容器としては、ポリオレフィン樹脂を含む組成物から形成される層、本発明の樹脂組成物から形成される層、およびポリオレフィン樹脂を含む組成物から形成される層を、前記順に有する多層容器が例示される。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)およびシクロオレフィンコポリマー(COC)が例示される。さらに、前記ポリオレフィン樹脂を含む組成物から形成される層と本発明の樹脂組成物から形成される層の間に接着層を有していてもよい。このような多層容器は、食品や医薬品の容器として好ましく用いることができる。医薬品の容器としては、例えば、アンプル、バイアル、真空採血管、プレフィルドシリンジが例示される。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0058】
1.原料
<第一のポリアミド樹脂>
以下の合成例で合成された以下の樹脂を用いた。
<<樹脂IPD12Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9660g(41.6mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2305g(13.86mol)、次亜リン酸ナトリウム(関東化学社製)1.67g(0.0016mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.16g(0.0141mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9645g(54.45mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を260℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に280℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂の280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度、および、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度は、表1の参考例1に示した。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は146℃であり、数平均分子量は12,900であった。
【0059】
<<樹脂IPD12Nの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したDDA8000g(34.74mol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−NDCA、ビーピー社製)2503g(11.58mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)1.37g(0.0081mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)0.6g(0.0073mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたIPDA(ダイセル・エボニック社製)7785g(45.71mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を260℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に280℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂の280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度、および、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度は、後述する表の参考例3に示した。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は150℃であり、数平均分子量は17,000であった。
【0060】
<<樹脂IPD10Iの合成>>
上記樹脂IPD12Iの合成において、ポリアミド樹脂の原料であるジアミンを10786g(63.3)molのIPDAに、ジカルボン酸を9500g(46.6)molのセバシン酸に変更し、ポリアミド樹脂を合成した。
得られたポリアミド樹脂の280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度、および、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度は、後述する表の参考例2に示した。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は161℃であり、数平均分子量は14,700であった。
【0061】
<第2のポリアミド樹脂>
以下のいずれかのポリアミド樹脂を用いた。
TR55:
エムス社製のGrilamid TR−55、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)約40モル%と、イソフタル酸約40モル%と、12−アミノドデカン酸20モル%未満を重縮合した非晶性ポリアミド樹脂。
TR55の280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度、および、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度は、表1の比較例1に示した。TR55のガラス転移温度は、165℃であった。
【0062】
Trogamid myCX:
ダイセル・エボニック社製、Trogamid myCX、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−1−アミン)とドデカン二酸を重縮合した非晶性ポリアミド樹脂。
myCXの280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度、および、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度は、表2の比較例2に示した。Trogamid myCXのガラス転移温度は、130℃であった。
【0063】
Rilsan Clear:
アルケマ社製、Rilsan Clear、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)とセバシン酸を重縮合した非晶性ポリアミド樹脂。
Rilsan Clearの280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度、および、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度は、表2の比較例3に示した。Rilsan Clearのガラス転移温度は、145℃であった。
【0064】
TR90:
エムス社製のGrilamid TR90、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)とドデカン二酸を重縮合した非晶性ポリアミド樹脂。
TR90の280℃、見かけのせん断速度1216sec
−1、保持時間6分における溶融粘度、および、280℃、見かけのせん断速度122sec
−1、保持時間6分における溶融粘度は、表2の比較例4に示した。TR90のガラス転移温度は、156℃であった。
【0065】
G21:
エムス社製のGrilamid G21、ヘキサメチレンジアミン50モル%と、イソフタル酸25モル%と、テレフタル酸25モル%を重縮合した結晶性ポリアミド樹脂。
【0066】
また、上記G21、Trogamid myCXの以外のポリアミド樹脂は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性ポリアミド樹脂であることが分かった。
【0067】
2.測定方法
<溶融粘度の測定>
上記得られたポリアミド樹脂について、キャピログラフを用い、ダイとして直径1mm×10mm長さのものを用い、見かけのせん断速度1216sec
−1または122sec
−1、測定温度280℃、保持時間6分、ポリアミド樹脂の水分量1000質量ppm以下の条件で測定した。本実施例では、キャピログラフとして、(株)東洋精機製作所製のキャピログラフD−1を用いた。
【0068】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素気流中、室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱したのち、ただちに室温以下まで冷却し、再び室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際のガラス転移温度を測定した。本実施例では、示差走査熱量計として、(株)島津製作所製のDSC−60を用いた。
また、JIS K7121およびK7122に準じて、昇温過程におけるポリアミド樹脂の結晶融解エンタルピーΔHmを測定した。
【0069】
<数平均分子量(Mn)の測定>
ポリアミド樹脂0.3gを、フェノール/エタノール=4/1(体積比)の混合溶剤に投入して、25℃で撹拌し、完全に溶解させた後、撹拌しつつ、メタノール5mLで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L塩酸水溶液で中和滴定して末端アミノ基濃度[NH
2]を求めた。また、ポリアミド樹脂0.3gを、ベンジルアルコールに、窒素気流下170℃で撹拌し、完全に溶解させた後、窒素気流下80℃以下まで冷却し、撹拌しつつメタノール10mLで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して末端カルボキシ基濃度[COOH]を求めた。測定した末端アミノ基濃度[NH
2](単位:μ当量/g)および末端カルボキシ基濃度[COOH](単位:μ当量/g)から、次式によって数平均分子量を求めた。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH
2])
【0070】
3.参考例1〜3、実施例1〜18、比較例1〜5
<コンパウンド>
上記ポリアミド樹脂(ペレット状のもの)を下記に示す量(質量部)となるように秤量してドライブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SX)の根元から投入し、260〜300℃にて溶融して押し出し、ストランドを水槽で水冷した後にペレタイジングし、ペレットを作製した。得られたペレットは、120℃(露点−40℃)で24時間真空乾燥したのち、射出成形機(住友重機械工業(株)製、SE130DU−HP)にて、金型温度100℃、シリンダー温度を280℃の条件で、4mm×10mm×80mmのISO試験片に成形した。
また、ヘイズ測定のため、2mm×100mm×100mmのヘイズ測定用試験片を作製した。
【0071】
<シャルピー衝撃強さ>
上記で得られたISO試験片をJIS K7144に従ってノッチつき試験片に加工した。ノッチつき試験片について、JIS K7111−1に従って、ノッチつきシャルピー衝撃強さを測定した。
【0072】
<曲げ弾性率>
上記ISO試験片について、JIS K7171に従った方法により、曲げ弾性率を測定した。本実施例では、曲げ試験機として、(株)東洋精機製作所製のベンドグラフIIを用いた。
【0073】
<ヘイズ>
上記で得られたヘイズ測定用の試験片のヘイズをヘイズメーターにて測定した。
測定には日本電色工業(株)COH400を用いた。
【0074】
<耐薬品性試験(質量維持率)>
上記ISO試験片を、23℃のトルエンに浸漬した。
浸漬後7日目、30日目のISO試験片について、それぞれ、質量維持率を測定した。
質量維持率=[(トルエンに浸漬したISO試験片の質量)/トルエンに浸漬する前のISO試験片の質量]×100(単位:%)
【0075】
<耐薬品性試験(強度保持率、弾性率保持率)>
上記ISO試験片を23℃のトルエンに浸漬した。
浸漬後7日目、30日目のISO試験片について、それぞれ、曲げ特性(曲げ強度および曲げ弾性率)を測定した。曲げ特性保持率(曲げ強度保持率および曲げ弾性率保持率)を以下の通り算出した。なお、曲げ弾性率は、上述の方法に従って、曲げ強度は、JIS K7171に従った方法により、測定した。
曲げ特性保持率=[(トルエンに浸漬したISO試験片の曲げ特性)/トルエンに浸漬する前のISO試験片の曲げ特性]×100(単位:%)
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、第二のポリアミド樹脂のみからなる場合(比較例1、比較例2、比較例3、比較例4)と比較して、ヘイズを損なうことが無く、溶融粘度を低くすることができた。さらに、機械的強度も向上させることが可能になった(実施例1〜18)。特に、透明性を維持しつつ溶融粘度を向上できた点は、樹脂組成物の流動性が高くなることから、より低温度での成形(特に、押出)が可能となり、さらには、ゲルやアウトガスの発生や、ポリアミド樹脂の劣化を効果的に抑制できる。
また、本発明の樹脂組成物は耐薬品性にも優れていた(表4)。
一方、第二のポリアミド樹脂を配合しても、2つ以上の脂環構造を含む構成単位であるポリアミド樹脂でない場合(比較例5)、樹脂同士が相溶しなかった。