(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1バルク音響共振器は、第1長さを有し、前記第2バルク音響共振器は、前記第1長さより短い第2長さを有し、前記第3バルク音響共振器は、前記第1長さ以下の第3長さを有する、請求項9に記載のバルク音響共振器セット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する本発明についての詳細な説明は、本発明が実施できる特定の実施形態を例示として示す添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を十分に実施することができるように詳細に説明される。本発明の多様な実施形態は、互いに異なるが、相互排他的な必要はないことを理解すべきである。例えば、これに記載されている特定の形状、構造及び特徴は、一実施形態に関連して本発明の思想及び範囲を逸脱することなく他の実施形態に実現され得る。また、それぞれの開示された実施形態における個別構成要素の位置または配置は、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく変更され得ることを理解するべきである。従って、後述する詳細な説明は限定的な意味で扱うものではなく、本発明の範囲は、その請求範囲が主張するものと均等な全ての範囲と共に、添付した請求範囲によってのみ限定される。図面において、類似の参照符号は、様々な側面にわたって同一または類似の機能を示す。
【0011】
以下では、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の実施形態について添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態によるバルク音響共振器を示す断面図である。
【0013】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるバルク音響共振器10は、薄膜バルク音響共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)、またはSMR(Solidly Mounted Resonator)型共振器であることができる。
【0014】
バルク音響共振器10は、基板110、絶縁層120、エアキャビティ112、及び共振部135を含む積層構造体と、上記積層構造体と結合するキャップ200と、を含むことができる。
【0015】
基板110は、通常のシリコン基板で構成されることができ、基板110の上面には、基板110に対して共振部135を電気的に絶縁させる絶縁層120が設けられることができる。絶縁層120は、二酸化ケイ素(SiO
2)及び酸化アルミニウム(Al
2O
2)のうち1つを化学気相蒸着(Chemical vapor deposition)、RFマグネトロンスパッタリング(RF Magnetron Sputtering)、またはエバポレーション(Evaporation)することで基板110上に形成されることができる。
【0016】
絶縁層120上にはエアキャビティ112が配置されることができる。エアキャビティ112は、共振部135が所定方向に振動できるように、共振部135の下部に位置することができる。エアキャビティ112は、絶縁層120上に犠牲層を形成し、次いで、犠牲層上にメンブレン130を形成した後、犠牲層をエッチングして除去する工程によって形成されることができる。メンブレン130は、酸化保護膜として機能、または基板110を保護する保護層としての機能を果たすことができる。
【0017】
絶縁層120とエアキャビティ112との間には、エッチング阻止層125がさらに形成されることができる。エッチング阻止層125は、エッチング工程中に基板110及び絶縁層120を保護する役割を果たすとともに、エッチング阻止層125上に他の様々な層が蒸着されるのに必要な基礎の役割を果たすことができる。
【0018】
共振部135は、メンブレン130上に順に積層された第1電極140、圧電層150、及び第2電極160を含むことができる。第1電極140、圧電層150、及び第2電極160の順に垂直方向に重なった共通領域は、エアキャビティ112の上部に位置することができる。第1電極140及び第2電極160は、金(Au)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、イリジウム(Ir)、及びニッケル(Ni)のうち1つ、またはこれらの合金で形成されることができる。
【0019】
圧電層150は、電気的エネルギーを弾性波形態の機械的エネルギーに変換する圧電効果を起こす部分であって、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT;PbZrTiO)のうち1つで形成されることができる。実施形態に応じて、圧電層150は希土類金属(Rare earth metal)をさらに含むことができる。一例として、希土類金属は、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、及びランタン(La)の少なくとも1つを含むことができ、圧電層150は希土類金属を含むことができる。
【0020】
第1電極140の下部には、圧電層150の結晶配向性を向上させるためのシード(Seed)層がさらに配置されることができる。シード層は、圧電層150と同一の結晶性を有する窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT;PbZrTiO)のうち1つで形成されることができる。
【0021】
共振部135は、活性領域と非活性領域に区画されることができる。共振部135の活性領域は、第1電極140及び第2電極160に無線周波数信号のような電気エネルギーが印加される際に、圧電層150で発生する圧電現象によって所定の方向に振動して共振する領域であって、エアキャビティ112の上部において、第1電極140、圧電層150、及び第2電極160が垂直方向に重なっている領域に該当する。共振部135の非活性領域は、第1電極140及び第2電極160に電気エネルギーが印加されても圧電現象によって共振しない領域であって、活性領域の外側の領域に該当する。
【0022】
共振部135は、圧電現象を用いて特定の周波数を有する無線周波数信号を出力する。具体的に、共振部135は、圧電層150の圧電現象による振動に対応する共振周波数を有する無線周波数信号を出力することができる。
【0023】
保護層170は、共振部135の第2電極160上に配置され、第2電極160が外部に露出することを防止することができる。保護層170は、酸化ケイ素系、窒化ケイ素系、及び窒化アルミニウム系のうち1つの絶縁物質で形成されることができる。
図1には1つの積層構造体が1つのキャップ200に収容される様子が示されているが、1つのキャップ200には複数の積層構造体が収容されることができ、複数の積層構造体のそれぞれは、設計に応じて互いに連結されることができる。この際、複数の積層構造体は、外部に露出した第1電極140及び第2電極160に設けられた配線電極を介して互いに連結されることができる。
【0024】
キャップ200は積層構造体と接合し、共振部135を外部環境から保護することができる。キャップ200は、共振部135が収容される内部空間を備えるカバーの形態に形成されることができる。具体的に、キャップ200は、共振部135を収容できるように中央に収容部が形成されることができ、端部で積層構造体と結合することができる。
図1にはキャップ200が、基板110上に積層される保護層170と接合される様子が示されているが、これに限定されず、保護層170を貫通してメンブレン130、エッチング阻止層125、絶縁層120、及び基板110の少なくとも1つと接合されることができる。
【0025】
キャップ200は共晶接合(eutectic bonding)により基板110と接合されることができる。この場合、基板110と共晶接合が可能な接合剤250を積層構造体上に蒸着した後、基板ウエハーとキャップウエハーを加圧及び加熱することで接合することができる。接合剤250は、銅(Cu)−スズ(Sn)の共晶(eutectic)物質を含むことができ、その他にも半田ボールを含むことができる。
【0026】
基板110の下部面には、基板110を厚さ方向に貫通する少なくとも1つのビアホール113が形成されることができる。ビアホール113は、基板110の他にも、絶縁層120、エッチング阻止層125、メンブレン130のうち一部を厚さ方向に貫通することができる。ビアホール113の内部には接続パターン114が形成されることができ、接続パターン114は、ビアホール113の内部面、即ち、内壁全体に形成されることができる。
【0027】
接続パターン114はビアホール113の内部面に導電層を形成することで製造されることができる。例えば、接続パターン114は、ビアホール113の内壁に沿って金や銅のような導電性金属を蒸着するか、塗布、または充填することで形成することができる。一例として、接続パターン114はチタン(Ti)−銅(Cu)の合金で製造されることができる。
【0028】
接続パターン114は第1電極140及び第2電極160の少なくとも1つに連結されることができる。一例として、接続パターン114は、基板110、メンブレン130、第1電極140、及び圧電層150の少なくとも一部を貫通して第1電極140及び第2電極160の少なくとも1つに電気的に連結されることができる。ビアホール113の内部面に形成された接続パターン114は基板110の下部面側に延び、基板110の下部面に設けられる基板用接続パッド115と連結されることができる。これにより、接続パターン114は、第1電極140及び第2電極160を基板用接続パッド115と電気的に連結することができる。
【0029】
基板用接続パッド115は、バルク音響共振器10の下部に配置され得る外部基板とバンプを介して電気的に連結されることができる。基板用接続パッド115を介して第1及び第2電極140、160に印加される信号によって、バルク音響共振器10は無線周波数信号のフィルターリング動作を行うことができる。
【0030】
図2は本発明の一実施形態によるフィルターの例示的な回路図である。
【0031】
図2を参照すると、フィルターは、少なくとも1つのシリーズ部11と、少なくとも1つのシリーズ部11と接地との間に配置される少なくとも1つのシャント部12と、を含むことができる。フィルターは、
図2に示されたように、ラダー型(ladder type)フィルターの構造で形成されてもよく、これと異なって、ラティス型(lattice type)フィルターの構造で形成されてもよい。
【0032】
少なくとも1つのシリーズ部11は、入力信号が入力される信号入力端RFinと出力信号が出力される信号出力端RFoutとの間に直列に連結されることができ、シャント部12は、シリーズ部11と接地との間に連結されることができる。
図2にはフィルターが3つのシリーズ部11及びシャント部12を備える様子が示されているが、シリーズ部11及びシャント部12の個数は変更されることができる。
【0033】
少なくとも1つのシリーズ部11及び少なくとも1つのシャント部12のそれぞれは、
図1に示されたバルク音響共振器を少なくとも1つ備えることができ、少なくとも1つのバルク音響共振器は、逆並列及び逆直列の少なくとも1つの方式により連結されることができる。
【0034】
図3は逆並列に連結された複数のバルク音響共振器を示す回路図であり、
図4は逆直列に連結された複数のバルク音響共振器を示す回路図である。
【0035】
図3及び
図4を参照すると、
図3の2つのバルク音響共振器310、320は互いに逆並列(anti−parallel)に連結されており、
図4の2つのバルク音響共振器410、420は互いに逆直列(anti−serial)に連結されている。ここで、逆並列とは、2つのバルク音響共振器のC軸方向(C−axis direction)が反対方向となるように並列に連結されていることを意味し、逆直列とは、2つのバルク音響共振器のC軸方向(C−axis direction)が反対方向となるように直列に連結されていることを意味すると理解することができる。ここで、C軸方向が反対方向となるように連結されるため、2つのバルク音響共振器の極性は互いに反対となるように連結されることができる。
【0036】
図3及び
図4に示されたバルク音響共振器に無線周波数信号が印加される場合、2つのバルク音響共振器のC軸方向が反対方向となるように並列または直列に連結されているため、2つのバルク音響共振器のうち1つと他の1つの振動状態(vibration state)が互いに異なり得る。例えば、1つのバルク音響共振器が拡張状態(expansion state)となる場合、他の1つのバルク音響共振器は収縮状態(contraction state)となり得る。したがって、2つのバルク音響共振器の反対刺激状態により、バルク音響共振器のそれぞれの非線形特性が互いに相殺(cancellation)されることができる。
【0037】
近年、無線周波数通信の需要の急増と技術発展に伴い、限定された周波数資源を効果的に用いるために、帯域(Band)間の間隔が細くなっている。したがって、他の帯域との干渉を最小化するための技術が求められている。無線端末機用無線周波数フィルターの場合、他の帯域との干渉を最小化するためには、挿入損失特性を改善する必要がある。また、他の帯域の周波数に干渉を与える2次高調波歪み(2HD:2nd Harmonic distortion)及び相互変調歪み(IMD:Intermodulation distortion)の現象を低減する必要がある。
【0038】
バルク音響共振器を用いたフィルターの場合、同一のバルク音響共振器を逆並列(anti−parallel)または逆直列(anti−serial)の構造で連結することで、挿入損失を改善し、2次高調波歪み現象及び相互変調歪み現象を低減することができる。
【0039】
図5及び
図6は2次高調波歪みの低減を説明するために提供される図である。
【0040】
図5は逆直列に連結されるバルク音響共振器510、520を含むフィルターの回路図であり、
図6は
図5のバルク音響共振器510、520の2次高調波歪みの応答曲線を示す図である。
【0041】
入力端Inにf
0の周波数を有する無線周波数信号RFが入力されると、第1バルク音響共振器510及び第2バルク音響共振器520のそれぞれではα*cos(4πf
0t)に該当する2次高調波歪みが発生する。
【0042】
図6(a)を参照すると、第1バルク音響共振器510で発生する2次高調波歪みS1及び第2バルク音響共振器520で発生する2次高調波歪みS2は、第1バルク音響共振器510及び第2バルク音響共振器520の極性が反対であるため、理想的には互いに相殺されて除去される。
【0043】
但し、
図6(b)を参照すると、第1バルク音響共振器510で発生した2次高調波歪みS1は、第2バルク音響共振器520を通過しながら、出力端Outから、αcos(4πf0t−
)に該当する遅延した2次高調波歪みS1dとして出力される。即ち、出力端Outから出力される第1バルク音響共振器510の2次高調波歪みS1dは、第2バルク音響共振器520を通過する前の理想的な2次高調波歪みS1より
の角度だけ遅延(delay)する。即ち、第1バルク音響共振器510の実際の2次高調波歪みS1dは、理想的な2次高調波歪みS1より
/4πf0の時間だけ遅延する。
【0044】
したがって、フィルターの2次高調波歪み2HDは完全に除去されず、α*(2−2cos
)
0.5の2次高調波歪み2HDが発生する。一例として、
が23度である場合、2次高調波歪みは約50%だけ除去される。
【0045】
図7は本発明の一実施形態によるシリーズ部及びシャント部に適用されるバルク音響共振器セット(Set)の回路図である。
【0046】
本発明の一実施形態によるバルク音響共振器セットは、入力端Inと出力端Outとの間に配置される第1バルク音響共振器1100、第2バルク音響共振器1200、及び第3バルク音響共振器1300を含むことができる。
【0047】
図7に示されたように、第1バルク音響共振器1100と第2バルク音響共振器1200は、互いに逆直列に連結され、第2バルク音響共振器1200と第3バルク音響共振器1300は、互いに逆直列に連結されることができる。
【0048】
第1バルク音響共振器1100で発生する2次高調波歪みS1をα1*cos(4πf
0t)、第2バルク音響共振器1200で発生する2次高調波歪みS2をα2*cos(4πf
0t)、第3バルク音響共振器1300で発生する2次高調波歪みS3をα3*cos(4πf
0t)と仮定する。このとき、各バルク音響共振器を通過するたびに
/4πf
0に該当する時間遅延が発生すると、第1バルク音響共振器1100で発生する2次高調波歪みS1は、出力端Outから、下記式1の遅延した2次高調波歪みS1dとして出力され、第2バルク音響共振器1200で発生する2次高調波歪みS2は、出力端Outから、下記式2の遅延した2次高調波歪みS2dの信号として出力される。
【数1】
【0049】
したがって、バルク音響共振器セット全体の最終的な2次高調波歪みSは、下記式2により表現されることができ、式2は式3に変更されることができる。
【数2】
【数3】
【0050】
2次高調波歪みSが0を満たすためには、下記式4を満たす必要がある。
【数4】
【0051】
上記式4を満たすα1、α2、α3の関係は、下記式5により表現されることができる。
【数5】
【0052】
式5を参照すると、0<
≦90または270<
≦360度である場合、第1バルク音響共振器1100と第3バルク音響共振器1300の極性は同一であり、第2バルク音響共振器1200の極性は、第1バルク音響共振器1100及び第3バルク音響共振器1300の極性と反対にならなければならない。また、90<
≦270度である場合、第2バルク音響共振器1200の極性は、第1バルク音響共振器1100及び第3バルク音響共振器1300の極性と同一でなければならない。
【0053】
即ち、各バルク音響共振器を通過するたびに、遅延する角度
が0<
≦90または270<
≦360である場合、
図7に示されたように、第2バルク音響共振器1200の極性は、第1バルク音響共振器1100及び第3バルク音響共振器1300の極性と反対になるように連結される。これと異なって、各バルク音響共振器を通過するたびに、遅延する角度
が90<
≦270度である場合、
図7とは異なり、第1バルク音響共振器1100、第2バルク音響共振器1200、及び第3バルク音響共振器1300の極性はすべて同一であり得る。
【0054】
図8は
図7の実施形態によるバルク音響共振器セットの2次高調波歪みのグラフである。
【0055】
図8は
図7の実施形態によるバルク音響共振器セットが上記式5を満たす場合の2次高調波歪みを示すグラフである。
【0056】
図8を参照すると、上記式5を満たす場合、遅延した第1バルク音響共振器1100の2次高調波歪みS1d、遅延した第2バルク音響共振器1200の2次高調波歪みS2d、及び第3バルク音響共振器1300の2次高調波歪みS3は互いに相殺されて、第1バルク音響共振器1100、第2バルク音響共振器1200、及び第3バルク音響共振器1300による全体2次高調波歪みhは0となることが確認できる。
【0057】
図9は本発明の一実施形態によるバルク音響共振器の長さに応じた2次高調波歪みのグラフであり、
図10は本発明の一実施形態によるバルク音響共振器の長さと2次高調波歪みの相関関係を示すグラフである。
【0058】
図9を参照すると、1つ(Single)のバルク音響共振器の場合、バルク音響共振器の長さ(Length、以下「L」)に応じて2次高調波歪みの大きさが変わることが確認できる。ここで、バルク音響共振器の長さLは、バルク音響共振器の面積SとL=S
1/2の関係として定義することができる。
【0059】
図9及び
図10を参照すると、2.54GHzの周波数での2次高調波歪み電力hとバルク音響共振器の長さLの相関関係は、下記式6のように近似化することができる。式6において、aは−0.3、Kは約27に該当することができる。
【数6】
【0060】
式6において、2次高調波歪み電力hは、入力電力30dBmを入力したときに共振器で発生する高調波歪み電力を[dBm]で表現したものである。電力(h'、単位:W)と電圧波形の大きさであるαの相関関係をみると、h'=a2/(2*z0)であり、h=10*log10(1000*h')に該当するため、式6は式7のように表現されることができる。
【数7】
【0061】
式5を参照すると、−α2/α1=2cos
であるため、式7は、式8のように表現されることができる。式8において、L1は第1バルク音響共振器1100の長さ、L2は第2バルク音響共振器1200の長さを示す。
【数8】
【0062】
したがって、第1バルク音響共振器1100の長さL1、第2バルク音響共振器1200の長さL2、及び第3バルク音響共振器1300の長さL3は、下記式9を満たすことができる。
【数9】
【0063】
上記式9を参照すると、第1バルク音響共振器1100の長さL1及び第3バルク音響共振器1300の長さL3は同一であるのに対し、第2バルク音響共振器1200の長さL2は、第1バルク音響共振器1100の長さL1及び第3バルク音響共振器1300と異なるように設定されることができる。
【0064】
一例として、式9において、第1バルク音響共振器1100の長さL1が80μm、
が23度である場合、第2バルク音響共振器1200の長さL2は62.3μm、第3バルク音響共振器1300の長さL3は80μmである。
【0065】
但し、第2バルク音響共振器1200の長さが第3バルク音響共振器1300の長さと異なる場合、第1バルク音響共振器1100の2次高調波歪みが第2バルク音響共振器1200で遅延する時間または角度が、第3バルク音響共振器1300で遅延する時間または角度と異なるため、全体共振器セットの2次高調波歪みが全部除去されない。具体的に、
図11を参照して、第2バルク音響共振器1200の長さが第3バルク音響共振器1300の長さと異なる全体共振器セットの2次高調波歪みが全部除去されない現象について説明する。
【0066】
図11は
図7の実施形態によるバルク音響共振器セットの2次高調波歪みのグラフである。具体的に、
図11は
図7の実施形態によるバルク音響共振器セットが上記式9を満たす場合の2次高調波歪みを示すグラフである。
【0067】
図11において、出力端Outから出力される第1バルク音響共振器1100の2次高調波歪みS1dは、第2バルク音響共振器1200の長さ変化による遅延を反映していないグラフであり、出力端Outから出力される第1バルク音響共振器1100の2次高調波歪みS1d_realは、第2バルク音響共振器1200の長さ変化による遅延を反映したグラフである。
【0068】
図11を参照すると、第2バルク音響共振器1200の長さの変化によって、出力端Outから出力される第1バルク音響共振器1100の2次高調波歪みS1d_realの遅延が増加して、全体共振器セットの2次高調波歪みが完全に除去されない。
【0069】
したがって、第2バルク音響共振器1200の長さと第3バルク音響共振器1300の長さが異なることによる遅延変化が補償される必要がある。
【0070】
図12は本発明の一実施形態によるバルク音響共振器の長さに応じた遅延角度を示すグラフである。
【0071】
図12を参照すると、バルク音響共振器の長さLに応じて遅延角度
が変化する。具体的に、バルク音響共振器の長さLが長くなると、遅延角度
が小さくなり、バルク音響共振器の長さLが短くなると、遅延角度
が大きくなる。
【0072】
一方、バルク音響共振器の長さに応じた遅延変化を反映すると、2次高調波歪みの比率は、下記式10により表現されることができる。
【数10】
【0073】
式10のSが0になるための条件は、下記式11の通りである。
【数11】
【0074】
式11において、下記式12のようにa2、a3を求めることができる。
【数12】
【0075】
上記式10において、第2バルク音響共振器1200における遅延角度
2、及び第3バルク音響共振器1300における遅延角度
3のそれぞれは、第2バルク音響共振器1200の長さL2及び第3バルク音響共振器1300の長さL3に対する関数として、それぞれ
2(L2)及び
3(L3)で表現されることができる。このとき、第2バルク音響共振器1200の長さL2及び第3バルク音響共振器1300の長さL3は、下記式8及び式12によって誘導された式13により表現されることができる。
【数13】
【0076】
第1バルク音響共振器1100の長さL1が80μmである場合、式11を満たす第2バルク音響共振器1200の長さL2は60.5μm、第3バルク音響共振器1300の長さL3は72.5μmである。このとき、第2バルク音響共振器1200における遅延角度
2は36度、及び第3バルク音響共振器1300における遅延角度
3は27度である。
【0077】
図13は本発明の一実施形態による2次高調波歪みを除去するための第1から第3バルク音響共振器の長さを示すグラフである。
【0078】
図13を参照すると、横軸は、第1〜第3バルク音響共振器を直列に連結したときのインピーダンスと同一のインピーダンスを有する1つ(single)のバルク音響共振器の長さを示す。縦軸は、1つ(single)のバルク音響共振器の長さに対応する第1〜第3バルク音響共振器の長さを示す。
【0079】
一例として、長さが40μmである1つのバルク音響共振器のインピーダンスは、長さL1が80μmである第1バルク音響共振器1100、長さL2が60.5μmである第2バルク音響共振器1200、及び長さL3が72.5μmである第3バルク音響共振器1300を直列に連結した場合のインピーダンスと同一であることができる。
【0080】
図14は本発明の一実施形態による2次高調波歪みを除去するための第1バルク音響共振器に対する第2バルク音響共振器及び第3バルク音響共振器の長さの比率を示すグラフである。
【0081】
図14を参照すると、第1バルク音響共振器に対する第2バルク音響共振器の長さの比率(L2/L1)は0.5〜1であり、より具体的には0.7〜0.9である。また、第1バルク音響共振器に対する第3バルク音響共振器の長さの比率(L3/L1)は0.5〜1であり、より具体的には0.8〜1である。
【0082】
図15は本発明の一実施形態にバルク音響共振器セットが適用されたフィルターを示す回路図である。
【0083】
図15を参照すると、本発明の一実施形態によるバルク音響共振器セットは、少なくとも1つのシリーズ部11a、11b、11c、11d及び少なくとも1つのシャント部12a、12b、12cのいずれかに適用されることができる。
【0084】
図15(a)を参照すると、第1シリーズ部11a、第2シリーズ部11b、第3シリーズ部11cのそれぞれは、第1シリーズ共振器SE1、第2シリーズ共振器SE2、及び第3シリーズ共振器SE3を含み、第4シリーズ部11dは、本発明の一実施形態による共振器セット1000を含むことができる。また、第1シャント部12a、第2シャント部12b、第3シャント部12cのそれぞれは、第1シャント共振器SH1、第2シャント共振器SH2、及び第3シャント共振器SH3を含むことができる。
【0085】
図15(a)には、本発明の一実施形態による共振器セットが第4シリーズ部11dに適用される様子が示されているが、第1シリーズ部11a、第2シリーズ部11b、第3シリーズ部11cのいずれかに適用されてもよい。
【0086】
一方、
図15(b)を参照すると、第1シリーズ部11a、第2シリーズ部11b、第3シリーズ部11c、第4シリーズ部11dのそれぞれは、第1シリーズ共振器SE1、第2シリーズ共振器SE2、第3シリーズ共振器SE3、及び第4シリーズ共振器SE4を含むことができる。また、第1シャント部12a、及び第2シャント部12bのそれぞれは、第1シャント共振器SH1、及び第2シャント共振器SH2を含むことができ、第3シャント部12cは、本発明の一実施形態による共振器セット1000を含むことができる。
【0087】
図15(a)には、本発明の一実施形態による共振器セットが第3シャント部12cに適用される様子が示されているが、第1シャント部12a、及び第2シャント部12bのいずれかに適用されてもよい。
【0088】
以上、具体的な構成要素などの特定事項と限定された実施形態及び図面によって本発明を説明したが、これは、本発明のより全体的な理解のために提供されるものにすぎず、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正及び変形を加えることが可能である。
【0089】
したがって、本発明の思想は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲だけでなく、それと同等の範囲内にある全ての変形は、本発明の思想の範囲に含まれると解釈されるべきである。