特許第6708344号(P6708344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6708344コヒーレント光受信器の同相除去比測定装置,及び測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708344
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】コヒーレント光受信器の同相除去比測定装置,及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/07 20130101AFI20200601BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20200601BHJP
【FI】
   H04B10/07
   H04B10/61
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-38152(P2016-38152)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-157969(P2017-157969A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 惠三
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲也
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】山本 直克
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−037493(JP,A)
【文献】 特開2015−037276(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0341564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/07
H04B 10/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定周波数(ω[hz])におけるコヒーレント光受信器の同相除去比測定装置(1)であって,
レーザー光源(3)からの前記測定周波数(ω[hz])を有する光を分岐する分岐部(5)と,
前記分岐部(5)により分岐された第1の分岐光を受け取り,信号光である第1の光2トーン信号を発生する第1の光2トーン発生装置(7)と,
前記分岐部(5)により分岐された第2の分岐光を受け取り,局発光である第2の光2トーン信号を発生する第2の光2トーン発生装置(9)と,
同相除去比(CMRR)の測定対象となるコヒーレント光受信器(11)から出力される出力電気信号を測定し,解析する電気信号測定装置(13)と,
を有し,
第1の光2トーン信号は,前記測定周波数より低い周波数差(ω−Δω[hz])を有し,
第2の光2トーン信号は,前記測定周波数より高い周波数差(ω+Δω[hz])を有し,
前記電気信号測定装置(13)は,
前記信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の差動成分として出力される周波数ω[hz]に対応する電気信号の強度Iωと,前記信号光である第1の光2トーン信号のみが有する周波数(ω−Δω[hz])に対応する電気信号の強度Iω−Δωとの強度比から,前記信号光側の同相除去比(CMRR)を求める機能を有する,
コヒーレント光受信器の同相除去比測定装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のコヒーレント光受信器の同相除去比測定装置であって,
前記電気信号測定装置(13)は,
前記信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の差動成分として出力される周波数ω[hz]に対応する電気信号の強度Iωと,前記局発光である第2の光2トーン信号のみが有する周波数差(ω+Δω[hz])に対応する電気信号の強度Iω+Δωとの強度比から,前記局発光側の同相除去比(CMRR)を求める機能をさらに有する,
コヒーレント光受信器の同相除去比測定装置。
【請求項3】
同相除去比を求める方法であって,
レーザー光源(3)からの測定周波数(ω[hz])の光を分岐し,第1の分岐光及び第2の分岐光を得る工程と,
第1の分岐光を受け取り,信号光である第1の光2トーン信号を発生する工程であって,第1の光2トーン信号は,前記測定周波数より低い周波数差(ω−Δω[hz])を有する工程と,
第2の分岐光を受け取り,局発光である第2の光2トーン信号を発生する工程であって,第2の光2トーン信号は,前記測定周波数より高い周波数差(ω+Δω[hz])を有する工程と,
同相除去比(CMRR)の測定対象となるコヒーレント光受信器(11)から出力される出力電気信号を測定し,解析する工程であって,前記信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の差動成分として出力される周波数ω[hz]に対応する電気信号の強度Iωと,前記信号光である第1の光2トーン信号のみが有する周波数(ω−Δω[hz])に対応する電気信号の強度Iω−Δωとの強度比から,前記信号光側の同相除去比(CMRR)を求める工程と,
を含む,
コヒーレント光受信器の同相除去比を求める方法。
【請求項4】
請求項3に記載のコヒーレント光受信器の同相除去比を求める方法であって,
前記測定周波数を繰り返し変化させ,変化させた周波数範囲に対応した同相除去比(CMRR)の周波数特性を求める工程をさらに含む,
コヒーレント光受信器の同相除去比を求める方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のコヒーレント光受信器の同相除去比を求める方法であって,
前記出力電気信号を測定し,解析する工程は,
前記信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の差動成分として出力される周波数ω[hz]に対応する電気信号の強度Iωと,前記局発光である第2の光2トーン信号のみが有する周波数(ω+Δω[hz])に対応する電気信号の強度Iω+Δωとの強度比から,前記局発光側の同相除去比(CMRR)を求める工程をさらに有する,
コヒーレント光受信器の同相除去比を求める方法。
【請求項6】
請求項3に記載のコヒーレント光受信器の同相除去比を求める方法であって,
信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の強度が等しい,コヒーレント光受信器の同相除去比を求める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光2トーン光を用いたコヒーレント光受信器の同相除去比測定装置や方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信用コンポーネント開発は業界団体のOIF(Optical Internetworking Forum)の規格に沿って進められる。OIFの最新の100Gbps用偏波多重集積型コヒーレント受信器規格(下記非特許文献1)内で定義されているCMRRは、バランス型PDを接続する前に個々のPDからの出力を測定し、定められた式で計算することとなっている。
【0003】
キーサイト(旧アジレント)社は、コヒーレント測定技術のフォーラムにて、CMRRの周波数特性測定の必要性は認識しながら、具体的な測定ソリューションは未だ提供できていない(下記非特許文献2)。
【0004】
国際公開WO2013−057967号パンフレット(下記特許文献1)は,測定技術に関するものではないが,バランス型PDの後段の差動型トランスインピーダンスアンプ(TIA)の利得を自動調整し,CMRRの優れた光受信器に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2013−057967号パンフレット
【特許文献2】特開2012−37493号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Optical Internetworking Forum, “Implementation Agreement for Integrated Dual Polarization Intradyne Coherent Receivers,” IA # OIF-DPC-RX-01.2, Nov. 2013.
【非特許文献2】川上育夫、「アジレントに全部おまかせ!コヒーレント測定・完全解説」、Agilent Measurement Forum 2013, 1D6, July 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
OIFの最新の100Gbps用偏波多重集積型コヒーレント受信器規格は,個々のPDの出力を測定した後にバランス型PDを後段の差動型トランスインピーダンスアンプ(TIA)に接続する。このため,TIAから出力される信号のCMRRは,接続部の誤差や差動TIAの特性による影響を受けるので,測定値と異なるという問題がある。
【0008】
国際公開WO2013−057967号パンフレットに記載された光受信器は,自動的に差動TIAの利得を調整し,CMRRを高く保つものであるものの,差動TIAの振幅のみを調整するものであるため,遅延時間差を調整できないという問題がある。
【0009】
そこで,本発明は,光受信器のCMRRの周波数特性を簡単に測定できる方法や装置を提供することを目的とする。
また,本発明は,測定対象であるコヒーレント光受信器内で振幅及び遅延時間を調整する方法や装置を提供し,これにより広帯域にわたり良好なCMRR特定を有する光受信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は,基本的には,以下の知見に基づくものである。
測定周波数(ω[hz])を有する光を分岐し,周波数差(ω−Δω[hz])を有する信号光である第1の光2トーン信号と,周波数差(ω+Δω[hz])を有する局発光である第2の光2トーン信号を得て,測定対象となるコヒーレント受信器に入力し,この受信器から出力される電気信号を測定すれば,周波数ω[hz]の成分に対する周波数ω−Δω[hz]の成分の信号強度比が,信号光側CMRRを与えること。
また,周波数ω[hz]の成分に対する周波数ω+Δω[hz]の成分の信号強度比が,局所光側CMRRを与えること。
測定周波数(ω[hz])を変化させながら,信号光側CMRR又は局所光側CMRRの測定を繰り返すことで,受信器のCMRR特性がわかること。
【発明の効果】
【0011】
本発明は,光受信器のCMRRの周波数特性を簡単に測定できる方法や装置を提供できる。
また,本発明は,測定対象であるコヒーレント光受信器内で振幅及び遅延時間を調整する方法や装置を提供し,これにより広帯域にわたり良好なCMRR特定を有する光受信器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は,本発明のコヒーレント光受信器の同相除去比測定装置を示すブロック図である。
図2図2は,第1の光2トーン信号(Sig)と第2の光2トーン信号(LO)を概念的に記載した図である。
図3図3は,Iチャネル側の2トーン光を示す概念図である。
図4図4は,コヒーレント光受信器内のバランス型PDから出力される電気信号のスペクトルを示す概念図である。
図5図5は,バランス型PDから出力される電気信号に基づくIチャネルの出力スペクトルを示す。
図6図6は,実施例における実験系の構成を示す概念図である。
図7図7は,可変遅延線の調整前(before)と調整後(after)の信号光側CMRR と局発光側CMRRの測定結果を示す図面に替るグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0014】
図1は,本発明のコヒーレント光受信器の同相除去比測定装置を示すブロック図である。本発明の第1の側面は,コヒーレント光受信器の同相除去比測定装置に関する。同相除去比(CMRR)は,同相信号除去比ともよばれ,差動増幅回路などでの2つの入力に共通する入力信号を除去する傾向の尺度である。
【0015】
コヒーレント光受信器は,コヒーレント受信機,及びコヒーレント光受信モジュール(財団法人機械システム振興協会発行「コヒーレント光通信システムに関する調査研究報告書など)ともよばれる光受信器である。このコヒーレント光受信器は,国際公開WO 2012−086831 A1パンフレットにも記載される通り,公知の光受信器である。
【0016】
コヒーレント光受信器は,たとえば,以下の構成を有するものがあげられる。この光受信器は,信号光が入力する信号光入力部21と局所光が入力する局所光入力部23と,90°光ハイブリッド25,及びバランス型PD(光検出器)27,29を有する。そして,入手された信号光及び局所光は,それぞれ分岐部により分岐される。分岐された信号光と分岐された局所光は,カプラなどの合波部で合波され,Iチャネル側では2トーン光が同相及び逆相で合成された光信号となる。一方,分岐された局所光の残りの分岐光は,90°位相が変換され,信号光の残りの分岐光と導波され,Qチャネル側の2トーン光となる。そして,これらの2トーン光は,バランス型PD(光検出器)により検波される。
【0017】
測定周波数(ω[hz])におけるコヒーレント光受信器の同相除去比測定装置1は,任意の波長ωにおける光受信器の同相除去比を測定する装置である。ω[hz]は,通常1MHz以上500GHz以下であり,10MHz以上100GHz以下であってもよい。測定周波数(ω[hz])の光はレーザー光源から発せられるものが好ましく,連続光(CW光)であるものが好ましい。また,レーザー光源は,波長を掃引又は変化させることができるものが好ましい。
【0018】
この装置は,レーザー光源3からの測定周波数(ω[hz])を有する光を分岐する分岐部5と,第1の光2トーン発生装置7と,第2の光2トーン発生装置9と,コヒーレント光受信器11から出力される出力電気信号を測定し,解析する電気信号測定装置13とを含む。
【0019】
分岐部は,入力する光を分岐するものであれば,公知の分岐装置を用いることができる。分岐部の例は,入力する光を強度分割するカプラ,ビームスプリッタ(BS),及び変更ビームスプリッタ(PBS)である。
【0020】
第1の光2トーン発生装置7は,分岐部5により分岐された第1の分岐光を受け取り,信号光である第1の光2トーン信号を発生する装置である。第1の光2トーン信号は,測定周波数より低い周波数差(ω−Δω[hz])を有する。通常,周波数差は,上側側帯(USB)信号の周波数から下側側帯(LSB)信号の周波数を引いて求められるものである。
【0021】
測定周波数ωに対して、特性が大きく変化しない程度にΔωを小さく選定することが好ましく,測定時間があまりかからない程度にΔωを大きく選定することが好ましい。Δωは,たとえば,ωの100万分の1以上1000分の1以下であり,10万分の1以上1万分の1以下でもよい。たとえば,ωが1GHz以上の場合,Δωは,100kHz以上1MHz以下が好ましい。
【0022】
光2トーン発生装置7,9は,基準となる周波数から所定の周波数ずれた2つの光信号を発生できるものであれば公知の光2トーン発生装置を用いることができる。光2トーン発生装置は,たとえば,DSB(両側側帯)変調器を用いてもよいし,DSB−SC変調器を用いてもよい。光2トーン光は,2つの光信号の強度が同程度であることが好ましい。
【0023】
第2の光2トーン発生装置9は,分岐部5により分岐された第2の分岐光を受け取り,局発光である第2の光2トーン信号を発生する装置である。第2の光2トーン信号は,測定周波数より高い周波数差(ω+Δω[hz])を有する。第1の光2トーン信号と第2の光2トーン信号の光強度は,同程度であることが好ましい。特に,第1の光2トーン信号を構成する2つの光信号と,第2の光2トーン信号を構成する2つの光信号の強度はいずれも同程度であることが好ましい。
【0024】
電気信号測定装置13は,同相除去比(CMRR)の測定対象となるコヒーレント光受信器11から出力される出力電気信号を受け取って,たとえば,光強度を測定し,これを用いてCMRRを解析する装置である。電気信号測定装置13の例は,公知のスペクトルアナライザーであるが,コヒーレント光通信において用いられる電気信号測定装置を用いることが好ましい。
【0025】
電気信号測定装置13は,信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の差動成分として出力される周波数ω[hz]に対応する電気信号の強度Iωと,信号光である第1の光2トーン信号のみが有する周波数(ω−Δω[hz])に対応する電気信号の強度Iω−Δωとの強度比から,信号光側の同相除去比(CMRR)を求める機能を有する。
【0026】
電気信号測定装置13は,信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の差動成分として出力される周波数ω[hz]に対応する電気信号の強度Iωと,局発光である第2の光2トーン信号のみが有する周波数差(ω+Δω[hz])に対応する電気信号の強度Iω+Δωとの強度比から,局発光側の同相除去比(CMRR)を求める機能をさらに有するものが好ましい。
【0027】
上記は,たとえば,単一偏波(例えばX偏波)のI信号成分に対する同相信号除去比の測定装置として利用されうる。
【0028】
以下,本発明の同相除去比を求める方法について説明する。
分岐部5が,レーザー光源3から発せられた測定周波数(ω[hz])のレーザー光を分岐し,第1の分岐光及び第2の分岐光を得る。この際,第1の分岐光及び第2の分岐光は,レーザー光を強度分離された光(特に同じ強度で分離された光)であることが好ましい。
【0029】
第1の光2トーン発生装置7は,分岐部5により分岐された第1の分岐光を受け取り,信号光(Sig)である第1の光2トーン信号を発生する。第1の光2トーン信号は,測定周波数より低い周波数差(ω−Δω[hz])を有する。
【0030】
第2の光2トーン発生装置9は,分岐部5により分岐された第2の分岐光を受け取り,局発光(LO)である第2の光2トーン信号を発生する。第2の光2トーン信号は,測定周波数より高い周波数差(ω+Δω[hz])を有する。光2トーン信号の発生装置は,たとえば,特開2012−37493号公報に記載された通り,公知である。この方法は,2つのサブMZMに高周波信号(f及びf)を印加し,メインMZMのバイアス電圧を調整して,2つのサブMZM(マッハツェンダー変調器)から出力されるDSB−SC変調信号の位相差をπ/2とする。そして,高速光検出器で二乗検波する。すると,クロスターム成分(f−f及びf+f)が抑圧された高周波信号の2倍周波数成分(2f及び2f)からなる光2トーン信号を得ることができる。DSB−SC(両側波帯―抑圧搬送波)変調は公知であり,DSB−SC信号を光2トーン信号として利用することができる。
【0031】
図2は,第1の光2トーン信号(Sig)と第2の光2トーン信号(LO)を概念的に記載した図である。なお,図2においてΔωは単にΔと記載されている。第1の光2トーン信号(Sig)と第2の光2トーン信号(LO)の中央周波数領域に存在する信号は,搬送波成分(ω[Hz])である。
【0032】
図3は,Iチャネル側の2トーン光を示す概念図である。コヒーレント光受信器11は,第1の光2トーン信号(Sig)と第2の光2トーン信号(LO)とを受け取り,これらの入力光を90°ハイブリッドにより混合する。I信号は,第1の光2トーン信号(Sig)と第2の光2トーン信号(LO)とが同相で合成されたものを示す。図中A及びAは,図2における光信号A及びAを意味する。I信号は,第1の光2トーン信号(Sig)と第2の光2トーン信号(LO)とが逆相で合成されたものを示す。分岐された局所光の残りの分岐光は,90°位相が変換され,信号光の残りの分岐光と導波され,Qチャネル側の2トーン光となる。
【0033】
図4は,コヒーレント光受信器内のバランス型PDから出力される電気信号のスペクトルを示す概念図である。図4に示される通り,2トーン光が,バランス型PDにそれぞれ入力され,二乗検波される。そして,信号項側同相信号(Common Mode in Sig)がω−Δωに,局所光側同相信号(Common Mode in LO)がω+Δωに,差動信号(Diff. Mode)がωに出力される。
【0034】
図5は,バランス型PDから出力される電気信号に基づくIチャネルの出力スペクトルを示す。図5に示されるように,PD同相及びPD逆相信号の差分をとることで,同相成分が減算されるとともに,逆相成分が加算され,図5に示すスペクトルが得られることとなる。もっとも,同相成分の振幅及び位相には,多少のアンバランスがあるため完全には打ち消されずに残留することとなる。このため,出力電気信号をスペクトルアナライザーなどで観測することで,周波数ωの光信号の信号強度に対するω−Δωの周波数を有する信号の強度比が信号光側のCMRRとして測定できることとなる。また,周波数ωの光信号の信号強度に対するω+Δωの周波数を有する信号の強度比が局所光側のCMRRとして測定できることとなる。
【0035】
すなわち,信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の差動成分として出力される周波数ω[hz]に対応する電気信号の強度Iωと,信号光である第1の光2トーン信号のみが有する周波数(ω−Δω[hz])に対応する電気信号の強度Iω−Δωとの強度比から,信号光側の同相除去比(CMRR)を求めることができる。
【0036】
また,信号光である第1の光2トーン信号と局発光である第2の光2トーン信号の差動成分として出力される周波数ω[hz]に対応する電気信号の強度Iωと,局発光である第2の光2トーン信号のみが有する周波数(ω+Δω[hz])に対応する電気信号の強度Iω+Δωとの強度比から,局発光側の同相除去比(CMRR)を求めることができる。
【0037】
測定周波数を繰り返し変化させ,変化させた周波数範囲に対応した同相除去比(CMRR)の周波数特性を求めることで,コヒーレント光受信器の周波数特性を求めることができる。コヒーレント光受信器の周波数特性は,対象となる周波数が変化した場合に,同相除去比(CMRR)がどのように変動するかといったコヒーレント光受信器の特性を意味する。
【0038】
なお,本発明は,単一偏波(例えばX偏波)のI信号成分に対する同相信号除去比の測定装置や方法のみならず,より複雑な態様についても応用できる。たとえば,I信号成分と,このI信号成分と時間軸上で位相が90度異なるQ信号成分を光2トーンとして扱うことで,信号光側の同相除去比(CMRR)や局発光側の同相除去比(CMRR)を求めることができる。
【実施例】
【0039】
図6に実施例における実験系の構成を示す。この構成は,レーザー光源(Laser),2つの光2トーン信号発生装置(Two−tone 1,Two−tone 2),2つの変調信号源((ω−Δ)/2,(ω+Δ)/2),光90度ハイブリッド(90−deg Hybrid),バランス型PD(Balanced PD),コヒーレント光受信器(Coherent Receiver under Test),及びスペクトルアナライザー(SPA)を含む。光90度ハイブリッドとバランス型PDを可変光アッテネータおよび可変光遅延線を介して接続したコヒーレント光受信器を構成し,40GHzまで2GHz 毎の信号光側CMRRおよび局発光側CMRRの周波数特性を測定した。
【0040】
図7は,可変遅延線の調整前(before)と調整後(after)の信号光側CMRR と局発光側CMRRの測定結果を示す図面に替るグラフである。縦軸はCMRR(デシベル),横軸は周波数(Frequency[GHz])を示す。まず2GHzでのCMRRが最大となるよう可変光アッテネータを調整し,周波数特性を測定した信号光側のCMRR及び局所光側のCMRRを,それぞれSig−CMRR before及びLO−CMRR−beforeとして示す。光路長差のためCMRRが周期的に大幅に劣化していることがわかる。次に可変遅延線も調整してから周波数特性を測定した信号光側のCMRR及び局所光側のCMRRを,それぞれSig−CMRR after及びLO−CMRR−afterして示す。図から,可変遅延線の遅延量を量精した結果,周期的な劣化はなくなり,40GHzにおいても15dB以上の良好なCMRRが得られたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は,光通信の分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0042】
1 同相除去比測定装置
3 レーザー光源
5 分岐部
7 第1の光2トーン発生装置
9 第2の光2トーン発生装置
11 コヒーレント光受信器
13 電気信号測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7