特許第6708410号(P6708410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708410
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】複合成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   C08J5/04CEZ
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-554773(P2015-554773)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2014083362
(87)【国際公開番号】WO2015098636
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-270312(P2013-270312)
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503423096
【氏名又は名称】RIMTEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正基
【審査官】 深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/147116(WO,A1)
【文献】 特開2004−244609(JP,A)
【文献】 特開2004−175641(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/044461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04−5/10、5/24
B29B 11/16、15/08−15/14
C08G 2/00−2/38、61/00−61/12
B29C 39/00−39/44、43/00−43/58
D06M 13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型内にガラス繊維を載置する工程(1)、
シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、ラジカル発生剤及び以下の一般式(I):
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、Xは、二価の有機基である。)
で表される化合物を含む重合性組成物を、ガラス繊維に含浸させる工程(2)、
ガラス繊維に含浸させた前記重合性組成物を塊状重合させて複合成形体とする工程(3)、並びに
該複合成形体を脱型する工程(4)、
を含み、前記メタセシス重合触媒が、以下の一般式(6)で表される化合物である、150℃における曲げ強度が23℃における曲げ強度の25%以上である複合成形体の製造方法
【化2】

(一般式(6)において、mは、0又は1であり、
mが1の場合、Qは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、メチレン基、エチレン基又はカルボニル基であり、
【化3】

は、単結合又は二重結合であり、
は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、Rは、置換基を有していてもよく、
及びXは、それぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示し、
は、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表し、
、X、X及びLは、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよく、
13〜R21は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、R13〜R21は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
ガラス繊維の目付が600g/m以上である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
塊状重合時の最高温度が90℃以上300℃以下である請求項1又は2記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス繊維を含む複合成形体の製造方法及び該製造方法によって得られる複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、強化繊維として炭素繊維を用いた、機械的強度に優れる架橋樹脂成形体が知られている(特許文献1及び特許文献2)。しかしながら、ガラス繊維を含む複合成形体については未だ機械的強度(特に曲げ強度)に改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2010/044461号公報
【特許文献2】再表2010/147116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、機械的強度に優れた、ガラス繊維を含む複合成形体の製造方法、及び該複合成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 型内にガラス繊維を載置する工程(1)、
シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、ラジカル発生剤及び以下の一般式(I):
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、Xは、二価の有機基である。)
で表される化合物を含む重合性組成物を、ガラス繊維に含浸させる工程(2)、
ガラス繊維に含浸させた前記重合性組成物を塊状重合させて複合成形体とする工程(3)、並びに
該複合成形体を脱型する工程(4)、
を含む、150℃における曲げ強度が23℃における曲げ強度の25%以上である複合成形体の製造方法;並びに
〔2〕 前記〔1〕に記載の製造方法により得られる複合成形体;に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、機械的強度に優れた、ガラス繊維を含む複合成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の複合成形体(以下、単に「成形体」と言うことがある。)は、シクロオレフィンモノマーを含む重合性組成物を型内で塊状重合させて得られるシクロオレフィン系樹脂の成形体であり、ガラス繊維を含有することを一つの特徴とする。本発明の成形体は、150℃における曲げ強度が23℃における曲げ強度の25%以上であり、機械的強度に優れた性質を有する。
【0010】
上記本発明の成形体は、本発明の製造方法により製造することができる。本発明の製造方法は、
型内にガラス繊維を載置する工程(1)、
シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、ラジカル発生剤及び前記一般式(I)で表される化合物を含む重合性組成物を、ガラス繊維に含浸させる工程(2)、
ガラス繊維に含浸させた前記重合性組成物を塊状重合させて複合成形体とする工程(3)、並びに
該複合成形体を脱型する工程(4)、
を含む方法である。
【0011】
重合性組成物
本発明の製造方法に用いられる重合性組成物は、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、ラジカル発生剤及び前記一般式(I)で表される化合物、並びに所望により配合される任意成分を、公知の方法に従って、適宜混合することにより調製される。
【0012】
前記任意成分としては、活性剤、活性調節剤、エラストマー及び酸化防止剤等が挙げられる。
【0013】
まず、重合性組成物に含有される各成分について説明する。
【0014】
シクロオレフィンモノマー
シクロオレフィンモノマーは、分子内に脂環式構造と炭素−炭素二重結合とを有する化合物である。
【0015】
シクロオレフィンモノマーを構成する脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環およびこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素数に格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。
【0016】
シクロオレフィンモノマーとしては、単環シクロオレフィンモノマーや、ノルボルネン系モノマーなどが挙げられ、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーである。これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭化水素基や、極性基などによって置換されていてもよい。また、ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環の二重結合以外に、二重結合を有していてもよい。
【0017】
単環シクロオレフィンモノマーとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、シクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエンなどが挙げられる。
【0018】
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなどのジシクロペンタジエン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物などのテトラシクロドデセン類;
2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などのノルボルネン類;
7−オキサ−2−ノルボルネン、5−エチリデン−7−オキサ−2−ノルボルネンなどのオキサノルボルネン類;
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.02,10.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、トリシクロペンタジエンなどの四環以上の環状オレフィン類;などが挙げられる。
【0019】
これらのシクロオレフィンモノマーのうち、極性基を有しないシクロオレフィンモノマーが、低吸水性の成形体を得ることができるので好ましい。またテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエンなどの芳香族性の縮合環を有するものを用いると重合性組成物の粘度を下げることができる。
【0020】
これらのシクロオレフィンモノマーは一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。組み合わせることで、得られるシクロオレフィン系樹脂の物性を適宜調整することができる。
なお、本発明に用いる重合性組成物には、本発明の効果の発現が阻害されない限り、上述したシクロオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーが含まれていてもよい。
【0021】
メタセシス重合触媒
本発明の製造方法に用いられるメタセシス重合触媒は、シクロオレフィンモノマーを開環重合できるものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0022】
本発明において用いられるメタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、第5,6および8族(長周期型周期表、以下同様)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、たとえばタンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。これら遷移金属原子の中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状開環重合時の触媒活性に優れるため、得られる重合体には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な重合体が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。メタセシス重合触媒は、一種類のみを使用しても良く、複数の種類を組み合わせて使用しても良い。
【0023】
ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0024】
【化2】
【0025】
上記一般式(1)及び(2)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。R及びRが互いに結合して環を形成した例としては、フェニルインデニリデン基などの、置換基を有していてもよいインデニリデン基が挙げられる。
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、カルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、炭素数6〜20のアリールスルホン酸基、ホスホン酸基、炭素数6〜20のアリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム基、及び炭素数6〜20のアリールアンモニウム基等を挙げることができる。これらの、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、及び炭素数6〜10のアリール基等を挙げることができる。
【0026】
及びXは、それぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。
【0027】
及びLは、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。ヘテロ原子含有カルベン化合物及びヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ化合物である。触媒活性向上の観点からヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましい。ヘテロ原子とは、周期律表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ヒ素原子、及びセレン原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0028】
前記ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(3)又は(4)で示される化合物が好ましく、触媒活性向上の観点から、下記一般式(3)で示される化合物が特に好ましい。
【0029】
【化3】
【0030】
上記一般式(3)及び(4)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20個の有機基;を表す。ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例は、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
また、R、R、R及びRは任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、本発明の効果がより一層顕著になることから、R及びRが水素原子であることが好ましい。また、R及びRは、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基として炭素数1〜10のアルキル基を有するフェニル基がより好ましく、メシチル基が特に好ましい。
【0031】
前記中性電子供与性化合物としては、例えば、酸素原子、水、カルボニル類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、イミン類、芳香族類、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、及びチオシアネート類等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)及び(2)において、R、R、X、X、L及びLは、それぞれ単独で、及び/又は任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0033】
また、本発明で用いるルテニウムカルベン錯体としては、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物の中でも、本発明の効果がより顕著になるという点より、上記一般式(1)で表される化合物が好ましく、中でも、以下に示す一般式(5)又は一般式(6)で表される化合物であることがより好ましい。
【0034】
一般式(5)を以下に示す。
【0035】
【化4】
【0036】
上記一般式(5)中、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR12、PR12又はAsR12であり、R12は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、Zとしては酸素原子が好ましい。
なお、R、R、X及びLは、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様であり、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成しても良いが、X及びLが多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R及びRは互いに結合して環を形成していることが好ましく、置換基を有していてもよいインデニリデン基であることがより好ましく、フェニルインデニリデン基であることが特に好ましい。
また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
【0037】
上記一般式(5)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のヘテロアリール基で、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリール基を挙げることができ、環を形成する場合の環は、芳香環、脂環およびヘテロ環のいずれであってもよいが、芳香環を形成することが好ましく、炭素数6〜20の芳香環を形成することがより好ましく、炭素数6〜10の芳香環を形成することが特に好ましい。
【0038】
上記一般式(5)中、R、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
、R10及びR11は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。
【0039】
なお、上記一般式(5)で表わされる化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第03/062253号(特表2005−515260)に記載のもの等が挙げられる。
【0040】
一般式(6)を以下に示す。
【0041】
【化5】
【0042】
上記一般式(6)中、mは、0又は1である。mは1が好ましく、その場合、Qは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、メチレン基、エチレン基又はカルボニル基であり、好ましくはメチレン基である。
【0043】
【化6】
【0044】
は、単結合または二重結合であり、好ましくは単結合である。
【0045】
、X、X及びLは、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様であり、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成しても良いが、X、X及びLが多座キレート化配位子を形成せず、かつ、Rは水素原子であることが好ましい。
【0046】
13〜R21は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
13は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、R14〜R17は、好ましくは水素原子であり、R18〜R21は、好ましくは水素原子又はハロゲン原子である。
【0047】
なお、上記一般式(6)で表わされる化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第11/079799(特表2013−516392)に記載のもの等が挙げられる。
【0048】
また、上記一般式(1)で表される化合物としては、上記一般式(5)又は一般式(6)で表される化合物のほか、以下の化合物(7)も好適に用いることができる。化合物(7)において、PCy3はトリシクロヘキシルホスフィンを示し、Mesはメシチル基を示す。
【0049】
【化7】
【0050】
メタセシス重合触媒の使用量は、反応に使用する全モノマー1モルに対して、好ましくは0.01ミリモル以上であり、より好ましくは0.1〜50ミリモル、さらに好ましくは0.1〜20ミリモルである。
【0051】
ラジカル発生剤
ラジカル発生剤は、加熱によってラジカルを発生し、それによりシクロオレフィン系樹脂において架橋反応を誘起する作用を有する。ラジカル発生剤が架橋反応を誘起する部位は、主にシクロオレフィン系樹脂の炭素−炭素二重結合であるが、飽和結合部分でも架橋が生ずることがある。
【0052】
ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物および非極性ラジカル発生剤が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキサシド;などが挙げられる。中でも、特に塊状重合におけるメタセシス重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシドが好ましい。
【0053】
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4'−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、4,4'−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4'−ジアジドジフェニルスルホン、4,4'−ジアジドジフェニルメタン、2,2'−ジアジドスチルベンなどが挙げられる。
【0054】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジフェニルブタン、1,4−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン、2,2,3,3−テトラフェニルブタン、3,3,4,4−テトラフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルプロパン、1,1,2−トリフェニルエタン、トリフェニルメタン、1,1,1−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニルプロパン、1,1,1−トリフェニルブタン、1,1,1−トリフェニルペンタン、1,1,1−トリフェニル−2−プロペン、1,1,1−トリフェニル−4−ペンテン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0055】
重合性組成物におけるラジカル発生剤の量としては、使用する全モノマー100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。ラジカル発生剤が少なすぎると、架橋反応が不十分になって成形体の曲げ強度が低下し、一方、ラジカル発生剤が多すぎると、架橋反応が過大になり成形体が脆くなる傾向がある。
【0056】
一般式(I)で表される化合物
本発明に用いられる前記一般式(I)で表される化合物は、得られる成形体において、シクロオレフィン系樹脂とガラス繊維との密着性向上剤又は密着性付与剤として機能するものと推定される。
前記一般式(I)で表される化合物は、その炭素−炭素二重結合とイソシアネート基とにより、シクロオレフィン系樹脂とガラス繊維(又は、ガラス繊維に付着されたサイジング剤)との間を物理的及び/又は化学的結合により強固に結合する他、シクロオレフィンモノマーを含む重合性組成物のガラス繊維に対する濡れ性をも改善し、該重合性組成物のガラス繊維への均一な含浸を促進するものと考えられる。
【0057】
前記一般式(I)において、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、当該アルキル基の炭素数としては1〜3が好ましい。当該アルキル基は直鎖であっても、又は分岐鎖であってもよい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基及びイソブチル基等が挙げられる。前記一般式(I)において、Xの二価の有機基としては、例えば、メチレン基やエチレン基等の炭素数1〜3のアルキレン基や、1,4−シクロヘキシレン基等の炭素数6〜10のシクロアルキレン基等が挙げられる。
【0058】
前記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、イソシアナトメチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート及び2−イソシアナトプロピルエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0059】
前記一般式(I)で表される化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記一般式(I)で表される化合物の配合量としては、使用する全モノマー100質量部に対して、通常、0.5〜20質量部、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは2〜10質量部である。この範囲にあれば、重合性組成物に対するガラス繊維の濡れ性が良好であり、シクロオレフィン系樹脂とガラス繊維との密着性が優れたものとなり、コスト面でも有利であり、好ましい。
【0060】
さらに本発明においては、ガラス繊維の密着性を高め、得られる成形体の機械的強度を向上させる観点から、前記一般式(I)で表される化合物と共に、以下の一般式(II):
【0061】
【化8】
【0062】
又は、以下の一般式(III):
【0063】
【化9】
【0064】
で表される化合物を用いるのが好ましい。当該化合物を前記一般式(I)で表される化合物と共に用いることで、前記一般式(I)で表される化合物の密着性向上剤又は密着性付与剤としての機能が相乗的に高められるものと推定される。
【0065】
前記一般式(II)において、RとRは前記一般式(I)のRと同様であり、その好適態様等も同様である。nは1〜5の整数であり、好ましくは1〜3である。
【0066】
前記一般式(III)において、R〜Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、それらのうち少なくとも二つは、以下の一般式(IV):
【0067】
【化10】
【0068】
で表される基であり、残りは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。当該アルキル基の炭素数としては1〜3が好ましく、直鎖であっても、又は分岐鎖であってもよい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基及びイソブチル基等が挙げられる。
【0069】
前記一般式(IV)において、Rは、炭素数1〜6の、アルキレン基又はオキシアルキレン基であり、炭素数としては1〜3が好ましい。Rの具体例としては、メチレン基、エチレン基、イソブチレン基及びオキシエチレン基等が挙げられる。Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数としては1〜3が好ましい。当該アルキル基は直鎖であっても、又は分岐鎖であってもよい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基及びイソブチル基等が挙げられる。
【0070】
前記一般式(II)又は(III)で表される化合物の具体例としては、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びネオペンチルグリコールジメタクリレートなどの多官能アクリレート化合物が挙げられる。
【0071】
前記一般式(II)又は(III)で表される化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。それらの化合物の配合量としては、使用する全モノマー100質量部に対して、通常、0.5〜20質量部、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは2〜10質量部である。この範囲にあれば、前記一般式(I)で表される化合物の密着性向上剤又は密着性付与剤としての機能が相乗的に高められ、シクロオレフィン系樹脂とガラス繊維との密着性が優れたものとなり、好ましい。
【0072】
任意成分
本発明に用いる重合性組成物には、例えば、活性剤、活性調節剤、エラストマー及び酸化防止剤等の任意成分が含まれていても良い。
【0073】
活性剤は、上述したメタセシス重合触媒の共触媒として作用し、該触媒の重合活性を向上させる化合物である。活性剤としては、例えば、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリドなどのアルキルアルミニウムハライド;これらのアルキルアルミニウムハライドの、アルキル基の一部をアルコキシ基で置換したアルコキシアルキルアルミニウムハライド;有機スズ化合物;などが用いられる。活性剤の使用量は、特に限定されないが、通常、重合性組成物で使用する全メタセシス重合触媒1モルに対して、0.1〜100モルが好ましく、より好ましくは1〜10モルである。
【0074】
活性調節剤は、2以上の反応原液を混合して重合性組成物を調製し、型内に注入して重合を開始させる際に、注入途中で重合が開始することを防止するために用いられる。
【0075】
メタセシス重合触媒として周期表第5族または第6族の遷移金属の化合物を用いる場合の活性調節剤としては、メタセシス重合触媒を還元する作用を持つ化合物などが挙げられ、アルコール類、ハロアルコール類、エステル類、エーテル類、ニトリル類などを用いることができる。中でもアルコール類およびハロアルコール類が好ましく、ハロアルコール類が特に好ましい。
【0076】
アルコール類の具体例としては、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。ハロアルコール類の具体例としては、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2−クロロエタノール、1−クロロブタノールなどが挙げられる。
【0077】
メタセシス重合触媒として、特にルテニウムカルベン錯体を用いる場合の活性調節剤としては、ルイス塩基化合物が挙げられる。ルイス塩基化合物としては、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、n−ブチルホスフィンなどのリン原子を含むルイス塩基化合物;n−ブチルアミン、ピリジン、4−ビニルピリジン、アセトニトリル、エチレンジアミン、N−ベンジリデンメチルアミン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾールなどの窒素原子を含むルイス塩基化合物;などが挙げられる。また、ビニルノルボルネン、プロペニルノルボルネンおよびイソプロペニルノルボルネンなどの、アルケニル基で置換されたノルボルネンは、前記のシクロオレフィンモノマーであると同時に、活性調節剤としても働く。これらの活性調節剤の使用量は、用いる化合物によって適宜調整すればよい。
【0078】
エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などが挙げられる。エラストマーを重合性組成物に溶解させて用いることにより、その粘度を調節することができる。また、エラストマーを添加することで、得られる成形体の耐衝撃性を改良できる。エラストマーの使用量は、重合性組成物中の全モノマー100質量部に対して好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部である。
【0079】
酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系などの各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤が挙げられる。
【0080】
重合性組成物の調製
本発明の重合性組成物は、公知の方法に従って、上記各成分を適宜混合することにより調製されるが、反応直前に2以上の反応原液を混合することにより調製してもよい。当該反応原液は、1液のみでは塊状重合しないが、全ての液を混合すると、各成分を所定の割合で含む重合性組成物となるように、上記した各成分を2以上の液に分けて調製される。かかる2以上の反応原液の組み合わせとしては、用いるメタセシス重合触媒の種類により、下記(a)、(b)の二通りが挙げられる。
【0081】
(a):前記メタセシス重合触媒として、単独では重合反応活性を有しないが、活性剤を併用することで重合反応活性を発現するものを用いることができる。この場合は、シクロオレフィンモノマーおよび活性剤を含む反応原液(A)と、シクロオレフィンモノマーおよびメタセシス重合触媒を含む反応原液(B)とを用い、これらを混合することで重合性組成物を得ることができる。さらに、シクロオレフィンモノマーを含み、かつメタセシス重合触媒および活性剤のいずれも含まない反応原液(C液)を併用してもよい。
【0082】
(b):また、メタセシス重合触媒として、単独で重合反応活性を有するものを用いる場合は、シクロオレフィンモノマーを含む反応原液(i)と、メタセシス重合触媒を含む反応原液(ii)とを混合することで重合性組成物を得ることができる。このとき反応原液(ii)としては、通常、メタセシス重合触媒を少量の不活性溶媒に溶解または分散させたものが用いられる。かかる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類;ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルなどが挙げられるが、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンが特に好ましい。
【0083】
前記ラジカル発生剤、前記一般式(I)〜(III)で表される化合物、及び前記任意成分は、前記反応原液のいずれに含有させてもよいし、又は、前記反応原液以外の混合液の形で添加してもよい。
【0084】
後述のように、本発明の製造方法は、公知の樹脂成型方法を適用して行うことができるが、上記反応原液の混合は、適用する樹脂成型方法に応じて適宜混合装置を選択し、それを使用して行うのが好ましい。当該装置としては、例えば、反応射出成型法で一般的に用いられる衝突混合装置のほか、ダイナミックミキサーやスタティックミキサーなどの低圧混合機などが挙げられる。反応原液をそれらの装置に導入すると直ちに混合されて重合性組成物が形成されるが、後述の樹脂成型方法においては、得られた重合性組成物はそのまま型内に注入されることになる。
【0085】
複合成形体の製造方法
本発明の製造方法は、所望する成形体の形状に応じて、適宜、公知の樹脂成型方法を適用して行うことができる。当該樹脂成型方法としては、例えば、反応射出成型法(RIM法)、レジントランスファー成型法(RTM法)及びインフュージョン成型法が挙げられる。
【0086】
工程(1)では、型内にガラス繊維を載置する。
【0087】
ガラス繊維
本発明に使用されるガラス繊維は、特に限定されるものではなく、例えば、連続繊維、織布及び不織布等の形状を有するものが挙げられ、種々の厚みのものが市販品として入手可能である。ガラス繊維の形状や厚みは得られる成形体の用途に応じて適宜選択できる。
【0088】
本発明に使用されるガラス繊維の目付量は使用目的に応じて適宜選択されるが、600g/m2以上が好ましく、600〜2000g/m2がより好ましく、640〜1800g/m2がさらに好ましい。ガラス繊維の目付量が過度に少ないと、隣り合うガラス繊維同士の間に隙間ができて、得られる成形体の機械的強度が不充分となり、一方、過度に目付量が多いと隣り合うガラス繊維同士が重なる箇所ができるため、重合性組成物の含浸性を損ねる傾向がある。
【0089】
ガラス繊維は、表面を疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理されたガラス繊維を用いることで、得られる成形体中にガラス繊維を均一に分散させることができ、成形体の剛性や寸法安定性を均一にでき、さらには異方性を小さくすることができる。疎水化処理に用いられる処理剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス、その他の高分子などが挙げられる。これらの処理剤はサイジング剤としての機能も果たしうる。
【0090】
成形型
使用する型は、所望する成形体の形状を考慮し、適用する樹脂成型方法に従って、適宜選択すればよい。本発明の製造方法では、低粘度の反応原液を用い、比較的低温低圧で成形できるため、成形に用いる型は、必ずしも剛性の高い高価な金型である必要はなく、金属製の型に限らず、樹脂製の型、または単なる型枠を用いることができる。
【0091】
ガラス繊維は、適用する樹脂成型方法に応じ、選択された型内に当該方法の実施に好適な様式で適宜載置すればよい〔工程(1)〕。工程(2)を行う前に、適宜、型内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換しておくか、又は型内を減圧しておいてもよい。
【0092】
工程(2)では、所定の重合性組成物を、型内に載置されたガラス繊維に含浸させる。
【0093】
RIM法
本法では、特に限定されないが、通常、割型構造、すなわち、コア型とキャビティー型を有する成形型が用いられる。コア型とキャビティー型は、所望する成形体の形状にあった空隙部(キャビティー)を形成するように作製される。ガラス繊維は、該成形型の空隙部に載置される。重合性組成物のガラス繊維への含浸は型内に重合性組成物を注入して行われる。本発明に用いる重合性組成物は低粘度であり基材への含浸性に優れるので、ガラス繊維に均一に含浸させることができる。
【0094】
RIM法による2液反応型樹脂の成形では、成形時に型内へ原料(重合性組成物)を注入する圧力が、樹脂を注入する射出成形の1/30〜1/500程度である。このため、型内への充填性が非常に良好であり、多様な形状を容易に成形することが可能である。型内への注入圧が非常に小さいため、型内に発生する内部圧力も非常に小さく、このため、射出成形に使用する金型に比べて、型に要求される強度が大幅に低減されることとなり、型の設計が容易になる。従って、大型成形品の型も設計が容易となり、樹脂製配管部材の展開が困難な大口径の配管部材への展開も容易となる。また、常温域での成形が可能であるという特徴を有する。
【0095】
重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。また、型締圧力は通常0.01〜10MPaの範囲内である。
【0096】
RTM法
RTM(レジントランスファーモールディング)法では、ガラス繊維を敷き詰めた合わせ型に重合性組成物を注入することにより、該組成物をガラス繊維に含浸させる。
RTM法による成形は、RIM法と同様に型内に発生する圧力が小さいことに加え、反応原液を混合する際、RIM法ほど混合圧力を必要としないため、混合設備を比較的簡易化することが可能である。また、一般に重合の速度もRIM法よりも緩やかであることから含浸の面で有利となることが多い。
【0097】
重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。また、型締圧力は通常0.01〜10MPaの範囲内である。
【0098】
インフュージョン成型法
インフュージョン成形法では、真空圧(0.1〜100Pa程度)によって、重合性組成物を型内に充填し、ガラス繊維に含浸させる。具体的には、成形型の上にガラス繊維を置き、所望により、離型シート及び樹脂拡散材を配置した状態で、ガラス繊維を気密性フィルムで覆い、気密空間内の空気を吸引排気し、減圧状態にする。この減圧状態で、気密空間内に重合性組成物を注入して、重合性組成物をガラス繊維に含浸させる。この方法は、汚れない、臭気のない成形法で、大型成形品、厚物成形品等、高強度の成形品の成形に適している。
【0099】
本発明の製造方法にはさらに、上記方法のほか、改良された方法として、ライト−レジントランスファーモールディング(L−RTM)成形法を適用することもできる。基本的には、インフュージョン成形法とRTM法を組み合わせた成形方法であって、凹凸で構成された型の凹型にガラス繊維を載置し、凸型を被せ、外周フランジ部と型の中央部にて減圧する。型の内部を真空(0.1〜100Pa程度)にして型締めを行い、外周から重合性組成物を注入し、該組成物をガラス繊維に含浸させる。余分な重合性組成物は型中央のポットに溜まる。重合性組成物は、外周から押し込む状態となり、該組成物の注入は、減圧と加圧により行われることになる。重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。また、型締圧力は通常0.01〜10MPaの範囲内である。
【0100】
その他の含浸法
その他の含浸法として、例えば、フィラメントワインディング法などにより任意の円筒にドライの状態でガラス繊維を巻き付けたものを用意し、該ガラス繊維を重合性組成物中に浸漬して該組成物を含浸させる方法、該ガラス繊維に対し重合性組成物をスプレーして該組成物を含浸させる方法、該ガラス繊維に対し前記反応原液の組み合わせで個々の反応原液を個別にスプレーし、スプレーと同時に反応原液を混合して重合性組成物を含浸させる方法などを用いることができる。
【0101】
ガラス繊維に含浸させる重合性組成物とガラス繊維との量的関係としては、重合性組成物1質量部に対してガラス繊維が0.6〜4質量部であることが好ましく、0.8〜3質量部であることがより好ましく、1〜2質量部であることがさらに好ましい。かかる範囲にあれば、得られる成形体の曲げ強度が良好に発揮され、好適である。
【0102】
なお、重合性組成物を成形型に注入等してガラス繊維に含浸せしめ、そのまま所定時間維持してもよい。維持時間としては、通常、1〜200分程度が好ましい。そのようにして維持することにより、重合性組成物をガラス繊維の隅々にまで充分行き渡らせることができる。
【0103】
工程(3)では、ガラス繊維に含浸させた重合性組成物を塊状重合させて複合成形体とする。
【0104】
塊状重合は、重合性組成物が注入等された型を加熱することで行われる。塊状重合時の温度、即ち型温度としては、最高温度が90℃以上300℃以下であることが好ましい。該最高温度は、より好ましくは100〜270℃、さらに好ましくは120〜250℃である。また、塊状重合時の最低温度としては、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜85℃である。塊状重合の開始温度は、通常、0〜40℃の範囲、好ましくは10〜30℃の範囲である。塊状重合は、重合性組成物を型内に注入等するか、又は反応原液を所定の混合装置に導入した後、好ましくは20秒〜60分、より好ましくは20秒〜40分で完了するが、そのまま60〜200分程度維持してもよい。また、加熱は一段階で行っても二段階以上の複数段階で行ってもよい。
【0105】
塊状重合の終了後、例えば、型枠を型開きして脱型することにより〔工程(4)〕、成形体を得ることができる。本明細書において脱型とは、用いた成形型から、得られた成形体を取り出すことをいう。製造直後の成形体は高温状態にあるため、脱型は、常温まで冷却した後に行うのが好ましい。
【0106】
複合成形体
以上のようにして、本発明の成形体が得られる。本発明の成形体は、150℃における曲げ強度(曲げ強度1)が23℃における曲げ強度(曲げ強度2)の25%以上を示す。当該割合は、曲げ強度1を曲げ強度2で除して100を乗ずることにより求められる。曲げ強度1が曲げ強度2に対しかかる割合を示すことは、エポキシ樹脂やビニルエステル樹脂などの、ガラス転移温度の低い樹脂の複合成形体ではガラス繊維の密着性が低下し、外的応力によりガラス繊維のずれが発生するような、例えば、150℃以上の高温域においても、本発明の成形体は、充分な機械的強度を維持していることを意味しており、従って、本発明の成形体は、幅広い温度域において機械的強度に優れたものであると言える。なお、150℃における曲げ強度としては、通常、100〜200MPa、好ましくは110〜190MPaであり、一方、23℃における曲げ強度としては、通常、400〜800MPa、好ましくは450〜750MPaである。本明細書において、成形体の曲げ強度はJIS K7017に準ずる方法により求めることができる。
【0107】
本発明の成形体中のガラス繊維の量は、好ましくは40〜85質量%、より好ましくは45〜80質量%、さらに好ましくは50〜65質量%である。ガラス繊維の量がかかる範囲にあれば、所望の曲げ強度が成形体により充分に発揮される。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0109】
[実施例1]RIM法
離型処理された内寸長さ300mm、幅250mm、深さ4mmのアルミニウム5052製金型に、長さ300mm、幅250mmに切断した日東紡製4軸ガラスマットKF01570−055S(目付1500g/m)を4枚対称に積層して金型に載置し、アルミニウム5052製平板で蓋をして、オイルポンプを用いて型内を100Paまで減圧した。
【0110】
型を40℃に設定したのち、20℃に設定したRIMモノマー(日本ゼオン社製)100質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート 5質量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート 2.5質量部、ジ−t−ブチルペルオキシド(化薬アクゾ社製、製品名「カヤブチルD(登録商標)」)1.5質量部、及びメタセシス重合触媒として前記化合物(7) 0.03質量部からなる重合性組成物を型内一杯に導入し繊維に含浸せしめた。減圧ラインと組成物導入ラインを閉塞し、型を1時間放置した。引き続き型を90℃に昇温して1時間放置したのち、さらに150℃まで昇温し1時間放置した。なお、上記のRIMモノマーの組成は、ジシクロペンタジエン約90質量部及びトリシクロペンタジエン約10質量部からなる。
【0111】
型を常温まで冷却したのち硬化した複合成形体を脱型した。JIS K7017に準拠し23℃で曲げ強度を測定した結果、580MPaであった。測定温度を150℃にした他は同条件で測定を行った結果、曲げ強度は154MPaであった。150℃における曲げ強度は23℃における曲げ強度の26.6%であった。
【0112】
[実施例2]インフュージョン法
離型処理された500mm×500mmサイズのアルミ製平板状型の外周に沿って、シリコーン製シーラントテープを配置し、その内側に離形性のある長さ400mm、幅400mmのFEPフィルム1枚を配置した。FEPフィルム上に長さ300mm、幅250mmに切断した日東紡製ガラスクロスWR800C−100CS(目付800g/m2)を8枚重ねて配置した。積層されたガラス繊維基材の上部にFEPフィルム(400mm×400mm)1枚をさらに配置し、その上部へピールプライ(60001NATURALPEELPLY、リッチモンド(株)製、寸法370mm×370mm)1枚、さらにバッグ材(VAC−PAC2000、リッチモンド(株)製)1枚を配置し、シリコーン製シーラントテープとバッグ材の間に組成物導入ラインおよび吸気ラインを設置した。組成物導入ラインを閉塞し、吸気ラインに真空ポンプを接続しバッグ材内部を100Paまで減圧を行った。
【0113】
20℃に設定した、上記と同じ組成のRIMモノマー 100質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート 2.5質量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート 2.5質量部、ジ−t−ブチルペルオキシド 1.5質量部、及びメタセシス重合触媒として前記化合物(7) 0.03質量部からなる重合性組成物を解放した組成物導入ラインから型内一杯に導入し繊維に含浸せしめた。減圧ラインと組成物導入ラインを閉塞し、1時間放置した。引き続き90℃に昇温して1時間放置したのち、さらに200℃まで昇温し1時間放置した。常温まで冷却したのち硬化した複合成形体をバッグ材より取り出した。
【0114】
JIS K7017に準拠し23℃で曲げ強度を測定した結果、590MPaであった。測定温度を150℃にした他は同条件で測定を行った結果、曲げ強度は160MPaであった。150℃における曲げ強度は23℃における曲げ強度の27.1%であった。
【0115】
実施例1と2より、本発明の製造方法によれば、所望の曲げ強度を有する、機械的強度に優れた成形体が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の複合成形体は機械的強度に優れたものであるので、一般にガラス繊維複合材料が使用される分野、例えば、動体や移動体の筐体や構造部材に好適に用いることができる。