【文献】
高橋裕之 外3名,めがねトンネルの中央導坑を利用した先行アーチ支保,トンネルと地下,株式会社土木工学社,2006年 6月,No.6,vol.37,第405−413頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押圧部は、前記第1ガイド部に沿って移動可能に前記ガイド部材に取り付けられる第1の取付状態と、前記第2ガイド部に沿って移動可能に前記ガイド部材に取り付けられる第2の取付状態とに切替可能に構成されている、請求項1に記載の推進装置。
前記ガイド部材を回動させることによって、水平面に対する前記ガイド部材の傾斜度合を変化させるための回動軸をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の推進装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<太径曲線パイプルーフ工法の説明>
まず、
図1〜
図4を参照して、本発明の一実施形態による推進装置100を用いて行われる太径曲線パイプルーフ工法について説明する。
【0019】
太径曲線パイプルーフ工法は、2本の併設されたトンネルTを接続することによって、地上から地盤を開削せずに、非開削で大きな地下空間Sを形成するための工法である。
【0020】
具体的には、太径曲線パイプルーフ工法では、まず、併設したトンネルT1およびT2の一方側のトンネル(トンネルT1)に推進装置100(
図4参照)を設置する。そして、
図1に示すように、推進装置100を用いて、直径が800mm程度で、所定の曲率半径Rを有する湾曲した曲線鋼管STを、トンネルT1から地中を推進させる。そして、トンネルT2に到達するまで、曲線鋼管STを地中を推進させる。これにより、曲線鋼管STによって、トンネルT1とトンネルT2とを連結する円弧状の曲線ルーフが形成される。そして、上記工程が繰り返されることによって、複数の曲線ルーフがトンネルT1およびT2の軸方向(トンネルTの延びる方向)に沿って形成される。その後、軸方向における曲線鋼管ST同士の隙間が、凍結などの地盤改良により止水される。最後に、トンネルT1およびT2間の地盤が掘削されるとともに、内周面が覆工されることによって、
図2に示すように、トンネルT1およびT2が接続された、大型の地下空間Sが施工される。なお、曲線鋼管STは、特許請求の範囲の「管部材」の一例である。
【0021】
ここで、
図1および
図2に示すように、地下空間Sを形成する位置の近傍に構造物Oが存在する場合には、構造物Oを避けて曲線ルーフを形成する必要がある。つまり、
図3に示すように、曲率半径R1の曲線鋼管ST1を用いて曲率半径R1の曲線ルーフを形成するとともに、所定の位置では、曲率半径R1よりも小さな曲率半径R2の曲線鋼管ST2を用いて、曲率半径R2の曲線ルーフを形成する必要がある。なお、曲線鋼管STの曲率半径Rは、曲線鋼管STの円状の断面の中心を通る中心線と、曲率中心Cとの距離である。
【0022】
そこで、本実施形態の推進装置100は、後述するように、特定の曲率半径R1を有する曲線鋼管ST1と、曲率半径R1よりも小さな特定の曲率半径R2を有する曲線鋼管ST2との両方を、地中に向かって押圧可能であるように構成されている。これにより、異なる曲率半径R1およびR2の曲線ルーフを容易に形成可能である。これにより、本実施形態の推進装置100を、異なる曲率半径R1およびR2の曲線ルーフを形成する必要のある地下空間Sの施工において、好適に用いることが可能である。また、本実施形態の推進装置100を、曲率半径Rが異なる複数の地下空間Sの施工においても、好適に用いることが可能である。
【0023】
<推進装置の構成>
次に、
図4〜
図7を参照して、推進装置100について詳細に説明する。これ以降、トンネルT1の鉛直方向をZ方向とし、推進装置100が設置されるトンネルT1の軸方向をX方向とし、鉛直方向および軸方向と直交する方向をY方向とする。
【0024】
なお、推進装置100に押圧される曲線鋼管STのうち、最も推進装置100から離れた位置(最先行)の曲線鋼管STの先端には、
図4に示すように、掘進機101が取り付けられている。この掘進機101の先端(地中側)には、ブレード101aが取り付けられている。掘進機101は、推進装置100により曲線鋼管STが地中に向かって押圧されるのに合わせて、ブレード101aを用いて地盤を掘削することによって、地中を推進するように構成されている。
【0025】
推進装置100は、併設されるトンネルTの一方側(トンネルT1側)内に設置されており、曲線鋼管STを地中に向けて押圧する機能を有している。推進装置100は、
図4および
図5に示すように、ガイド部材1と、押圧部2と、フレーム3と、回動ジャッキ4とを含んでいる。押圧部2は、曲線鋼管STを地中に向かって押圧するように構成されている。フレーム3は、ガイド部材1を回動可能に支持している。回動ジャッキ4は、ガイド部材1を回動させる際に、ガイド部材1に駆動力を加えるように構成されている。
【0026】
ガイド部材1は、
図4に示すように、Y方向から見て、押圧部2が取り付けられる側が概略円弧状になるように形成されている。また、
図6および
図7に示すように、ガイド部材1は、支持部11と、一対のガイド部12とを有している。支持部11は、X方向から見て、U字状の断面形状になるように形成されている。一対のガイド部12は、共にX方向に延びるとともに、支持部11の開口側(側面から見て概略円弧状の側、B1側)の端部から互いに対向する方向に突出するように形成されている。この一対のガイド部12は、X方向の両側にそれぞれ設けられている。この結果、ガイド部材1のX方向の断面は、鏡像対称になるように形成されている。また、
図7において、紙面に沿った上下方向、上方向および下方向を、それぞれ、B方向、B1方向およびB2方向とする。
【0027】
ガイド部12は、第1ガイド部13と、第2ガイド部14とを有している。第2ガイド部14は、支持部11側に形成されており、支持部11に接続されている。第1ガイド部13は、支持部11とは反対側に形成されており、第2ガイド部14に接続されている。また、
図6に示すように、第1ガイド部13および第2ガイド部14は、共に、ガイド部材1の長手方向(A方向)に延びるように形成されている。
【0028】
ここで、本実施形態では、
図4に示すように、第1ガイド部13の外部に露出する曲面13a(
図7に示すB1側の表面)は、側面視において、特定の曲率半径R3になるように、円弧状に形成されている。なお、曲面13aの曲率半径R3は、推進装置100に取り付けられた状態の曲線鋼管ST1と略同じ曲率中心C1から曲面13aまでの距離である。また、第1ガイド部13の曲面13aは、曲面13aのA方向の全体に亘って、曲線鋼管ST1の曲率半径R1に対応するように曲率半径R3に形成されている。
【0029】
また、第1ガイド部13の曲面13aとは反対側の曲面13b(
図7に示すB2側の表面)は、側面視において、特定の曲率半径R4になるように円弧状に形成されている。また、曲面13bは、曲面13bのA方向の全体に亘って、曲線鋼管ST1の曲率半径R1に対応するように曲率半径R4に形成されている。なお、曲面13bの曲率半径R4は、曲率中心C1から曲面13bまでの距離である。つまり、曲面13bの曲率半径R4は、第1ガイド部13の厚み(曲面13aから曲面13bまでの長さ)をt1とした場合に、R4=R3−t1を満たす。なお、曲面13aおよび13bは、特許請求の範囲の「第1ガイド面」の一例であり、曲率半径R3およびR4は、特許請求の範囲の「第1の曲率半径」の一例である。
【0030】
また、本実施形態では、第2ガイド部14の外部に露出する曲面14a(
図7に示すB1側の表面)は、側面視において、特定の曲率半径R5になるように、円弧状に形成されている。なお、曲面14aの曲率半径R5は、推進装置100に取り付けられた状態の曲線鋼管ST2と略同じ曲率中心C2から曲面14aまでの距離である。また、第2ガイド部14の曲面14aは、曲面14aのA方向の全体に亘って、曲線鋼管ST2の曲率半径R2に対応するように曲率半径R5に形成されている。
【0031】
また、第2ガイド部14の曲面14aとは反対側の曲面14b(
図7に示すB2側の表面)は、側面視において、特定の曲率半径R6になるように円弧状に形成されている。また、曲面14bは、曲面14bのA方向の全体に亘って、曲線鋼管ST2の曲率半径R2に対応するように、曲率半径R6に形成されている。なお、曲面14bの曲率半径R6は、曲率中心C2から曲面14bまでの距離である。つまり、曲面14bの曲率半径R6は、第2ガイド部14の厚み(曲面14aから曲面14bまでの長さ)をt2とした場合に、R6=R5−t2を満たす。なお、曲面14aおよび14bは、特許請求の範囲の「第2ガイド面」の一例であり、曲率半径R5およびR6は、特許請求の範囲の「第2の曲率半径」の一例である。
【0032】
なお、
図4に示すように、第2ガイド部14の曲面14aの曲率半径R5は、第1ガイド部13の曲面13aの曲率半径R3よりも小さい。また、第2ガイド部14の曲面14bの曲率半径R6は、第1ガイド部13の曲面13bの曲率半径R4よりも小さい。この結果、第2ガイド部14の曲率半径は、第1ガイド部13の曲率半径よりも小さくなるように形成されている。
【0033】
また、
図6および
図7に示すように、B1側(
図7参照)の曲面13aおよび14aは、X方向に隣接して設けられているとともに、段差部15aを介して接続されている。同様に、内側の曲面13bおよび14bは、X方向に隣接して設けられているとともに、段差部15bを介して接続されている。
【0034】
また、
図4〜
図6に示すように、ガイド部材1のA方向の一方端部(先端側の端部)には、後述する回動軸3aが挿入される円筒状の回動軸挿入部16が一対設けられている。この一対の回動軸挿入部16は、X方向に所定の間隔を隔てて形成されている。
【0035】
ガイド部材1のA方向の他方端部(後端側の端部)には、後述する一対の推進ジャッキ22を支持するジャッキ支持部17が設けられている。このジャッキ支持部17は、支持部11から突出するように、ガイド部材1に一体的に設けられている。また、ジャッキ支持部17(ガイド部材1)は、一対の支持ジャッキ17aにより下方から支持されている。一対の支持ジャッキ17aは、トンネルT1内に設けられた床F上に配置されている。また、ガイド部材1の回動に合わせて一対の支持ジャッキ17aの位置および伸縮が調整されることによって、ガイド部材1が安定的に支持される。
【0036】
また、ジャッキ支持部17は、一対の推進ジャッキ22をそれぞれ回動可能に支持する一対の回動支持部17bを有している。これにより、ガイド部材1の回動に伴う押板21の傾斜に合わせて、一対の推進ジャッキ22が押板21の他方表面21cを略直交する方向から押圧するように、推進装置100を構成することが可能である。
【0037】
押圧部2は、
図4に示すように、ガイド部材1に取り付けられる押板21と、一対の推進ジャッキ22とを含んでいる。一対の推進ジャッキ22は、押板21を下方(Z2側)または斜め下方から押圧するように構成されている。
【0038】
押板21は、
図7に示すように、Y方向から見て、概略I形状の板状部材である。また、押板21は、X方向の断面が、鏡像対称になるように形成されている。
【0039】
押板21の一方表面21aには、曲線鋼管ST(
図4参照)が取り付けられる鋼管取付部分21bが形成されている。また、押板21の他方表面21cには、一対の推進ジャッキ22が取り付けられる一対のジャッキ取付部分21dが形成されている。また、鋼管取付部分21bは、X方向の略中央に設けられているとともに、一対のジャッキ取付部分21dは、鋼管取付部分21bをX方向に挟み込むように形成されている。これにより、一対の推進ジャッキ22による押圧力が、押板21を介して、効率よく曲線鋼管STに伝達されるように押圧部2は構成されている。また、鋼管取付部分21bおよび一対のジャッキ取付部分21dは、共に、ガイド部材1から離れたB1側に形成されている。
【0040】
押板21には、ガイド部材1に移動可能に取り付けられた一対の取付部23が設けられている。この一対の取付部23は、押板21において、X方向の両側面から押板21の内側に向かって窪むようにそれぞれ形成されている。つまり、一対の取付部23は、凹状に形成されている。
【0041】
ここで、本実施形態では、凹状の取付部23のうち、B1側の内面23aには、2つの車輪部24および25が取り付けられているとともに、B2側の内面23bには、2つの車輪部26および27が取り付けられている。車輪部24および26は、共に、X方向の内側において、B方向に対向するように形成されている。また、車輪部25および27は、共に、X方向の外側において、B方向に対向するように形成されている。
【0042】
また、車輪部24および26は、押板21がガイド部材1に取り付けられた状態において、それぞれ、B方向において、第1ガイド部13の曲面13aおよび13bに対向するように取り付けられている。また、車輪部25および27は、押板21がガイド部材1に取り付けられた状態において、それぞれ、B方向において、第2ガイド部14の曲面14aおよび14bに対向するように取り付けられている。
【0043】
車輪部24は、曲面13a上で回転可能な車輪24aと、車輪24aを回転可能に支持するシャーシ24bとを有している。車輪部25は、曲面14a上で回転可能な車輪25aと、車輪25aを回転可能に支持するシャーシ25bとを有している。車輪部26は、曲面13b上で回転可能な車輪26aと、車輪26aを回転可能に支持するシャーシ26bとを有している。車輪部27は、曲面14b上で回転可能な車輪27aと、車輪27aを回転可能に支持するシャーシ27bとを有している。なお、車輪24aおよび26aは、特許請求の範囲の「第1回転体」の一例であり、車輪25aおよび27aは、特許請求の範囲の「第2回転体」の一例である。
【0044】
車輪部24のシャーシ24bおよび車輪部25のシャーシ25bは、B1側に移動することによって、B1側の内面23aから押板21の内部に格納可能に構成されている。車輪部26のシャーシ26bおよび車輪部27のシャーシ27bは、B2側に移動することによって、B2側の内面23bから押板21の内部に格納可能に構成されている。つまり、車輪24a〜27aは、ガイド部12から離間する方向に移動可能に構成されている。これにより、車輪部24〜27の車輪24a〜27aを、それぞれ、曲面13a、13b、14aおよび14bと当接する状態と、曲面13a、13b、14aおよび14bと当接しない状態とに、切替可能に押板21は構成されている。
【0045】
また、凹状の取付部23の内底面23cには、1つの車輪部28が形成されている。車輪部28は、ガイド部12の内側の端面12aに回転可能に当接する車輪28aと、車輪28aを回転可能に支持するシャーシ28bとを有している。なお、シャーシ28bは、押板21の内部に格納可能には構成されておらず、車輪28aは、常に、ガイド部12の内側の端面12aに当接するように構成されている。この結果、一対の取付部23の各々に設けられた車輪部28により、X方向に押板21が挟み込まれるので、X方向に押板21ががたつくのが抑制されている。
【0046】
なお、曲面13a、13b、14a、14bおよび端面12aのうち、少なくとも車輪24a〜28aと当接する部分には、図示しないすべり止めが取り付けられている。これにより、車輪24a〜28aと、曲面13a、13b、14a、14bおよび端面12aとの摩擦を大きくして、押板21を安定的に移動させることが可能である。
【0047】
一対の推進ジャッキ22は、
図4および
図5に示すように、伸縮することによって、他方表面21cに対して略直交する方向から押板21を押圧するように構成されている。これにより、一対の推進ジャッキ22により、押板21を効率よく押圧することが可能である。
【0048】
フレーム3は、
図4および
図5に示すように、複数の柱および梁から構成された躯体である。フレーム3は、床F上に設置されている。また、フレーム3には、ガイド部材1の回動軸挿入部16に挿入された状態で、X方向の両側からガイド部材1を回転可能に保持する一対の回動軸3aが形成されている。これにより、ガイド部材1が回動されることによって、水平面(床F)に対するガイド部材1の傾斜度合を変化させることが可能である。
【0049】
回動ジャッキ4は、フレーム3の回動支持部3bに回動可能に支持されているとともに、ガイド部材1を押圧可能に取り付けられている。回動ジャッキ4は、ガイド部材1を押圧するように伸縮することによって、ガイド部材1を回動軸部3a周りに回動させることが可能なように構成されている。
【0050】
(押圧作業の説明)
次に、
図3、
図4および
図7を参照して、推進装置100を用いて曲線鋼管STを地中に向かって押圧する際の押圧作業について説明する。
【0051】
まず、先端に掘進機101が取り付けられ、所定の曲率半径Rを有する曲線鋼管STの後端が、押板21の鋼管取付部分21bに取り付けられる。その際、一対の推進ジャッキ22は、最も収縮しており、その結果、押板21は、
図4に二点鎖線で示すように、ガイド部12に沿って移動して、下方(Z2側)の初期位置に位置している。
【0052】
そして、鋼管取付部分21b(
図7参照)に曲線鋼管STが取り付けられた状態で、一対の推進ジャッキ22をガイド部12に沿って移動させる。これにより、曲線鋼管STは、押板21を介して、地中に向かって押圧される。そして、地盤に接触した掘進機101は、地盤を掘削しながら地中を推進する。そして、押板21が、ガイド部12に沿って上方に移動された際に、曲線鋼管STが図示しない固定具により固定されて、再度、押板21が初期位置に戻される。
【0053】
そして、新たな曲線鋼管STの後端が、押板21の鋼管取付部分21bに取り付けられる。そして、上記と同様に、曲線鋼管STは、押板21を介して、地中に向かって押圧されて、先行していた曲線鋼管STの後端に新たな曲線鋼管STの先端が接触する。その後、先行する曲線鋼管STと新たな曲線鋼管STとがボルトまたは溶接などにより互いに固定される。そして、互いに固定された複数の曲線鋼管STが図示しない固定具により固定されて、再度、押板21が初期位置に戻される。この工程が繰り返されることによって、複数の曲線鋼管STが連結されつつ、地中を推進する。この結果、
図3に示すように、所定の曲率半径Rを有する曲線ルーフが形成される。
【0054】
なお、押板21の押圧距離(押板21のガイド部12に沿った移動距離)を大きくする場合には、推進ジャッキ22として、2段階で押板21を押圧可能なトラニオンがロッド側とキャップ側との両方に配置されたジャッキを用いるのが好ましい。これにより、1段階で押板21を押圧するジャッキの2倍程度のストロークで、押板21を押圧することができるので、押板21の押圧距離を大きくしつつ、推進ジャッキ22を小型化することが可能である。この結果、狭小なトンネルT1であったとしても、容易に、推進装置100を内部に設置することが可能である。
【0055】
(第1の取付状態の説明)
次に、
図4〜
図7を参照して、推進装置100の第1の取付状態について説明する。
【0056】
推進装置100の第1の取付状態は、特定の曲率半径R1を有する曲線鋼管ST1を地中に向かって押圧する際の、押圧部2の取付状態を意味する。具体的には、第1の取付状態において、
図7に示すように、手動または自動により、車輪部24の車輪24aおよび車輪部26の車輪26aが、それぞれ、第1ガイド部13の曲面13aおよび13bに当接される。また、手動または自動により、車輪部25の車輪25aおよび車輪部27の車輪27aが、それぞれ、第2ガイド部14の曲面14aおよび14bから離間する位置に移動される。これにより、押板21は、車輪24aと車輪26aとにより、第1ガイド部13をB方向に挟み込んだ状態になる。これにより、推進装置100の押圧部2の取付状態が、
図4および
図5に示す第1の取付状態に切り替えられる。また、この際、形成する曲線ルーフに応じて、回動ジャッキ4が適宜伸縮されることによって、ガイド部材1の角度が調整される。これにより、形成する曲線ルーフに応じて、
図4および
図5に示すように、曲線鋼管ST1を押圧する方向が調整される。そして、一対の支持ジャッキ17aの位置および伸縮が調整されることによって、ガイド部材1が安定的に支持される状態になる。
【0057】
その後、押板21の鋼管取付部分21b(
図7参照)に、特定の曲率半径R1を有する曲線鋼管ST1が取り付けられる。そして、一対の推進ジャッキ22により、押板21が第1ガイド部13に沿って移動するように押圧される。この際、車輪24aおよび26aは、それぞれ、曲面13aおよび13bに沿って移動される。ここで、第1ガイド部13の曲面13aおよび13bが、曲線鋼管ST1の曲率中心C1と略一致するような曲率半径R3およびR4をそれぞれ有している。これにより、押板21は、曲率半径R1を維持した状態で、曲線鋼管ST1を地中に向かって押圧するように、ガイド部材1上を移動する。この結果、第1の取付状態では、所望の曲率半径R1を有するルートに沿って移動するように、曲線鋼管ST1を正確に地中に推進させることが可能である。
【0058】
(第2の取付状態の説明)
次に、
図8〜
図10を参照して、推進装置100の第2の取付状態について説明する。
【0059】
推進装置100の第2の取付状態は、特定の曲率半径R2を有する曲線鋼管ST2を地中に向かって押圧する際の、押圧部2の取付状態を意味する。具体的には、第2の取付状態において、
図10に示すように、手動または自動により、車輪部25の車輪25aおよび車輪部27の車輪27aが、それぞれ、第2ガイド部14の曲面14aおよび14bに当接される。また、手動または自動により、車輪部24の車輪24aおよび車輪部26の車輪26aが、それぞれ、第1ガイド部13の曲面13aおよび13bから離間する位置に移動される。これにより、押板21は、車輪25aと車輪27aとにより第2ガイド部14をB方向に挟み込んだ状態になる。これにより、推進装置100の押圧部2の取付状態が、
図8および
図9に示す第2の取付状態に切り替えられる。また、この際、形成する曲線ルーフに応じて、回動ジャッキ4が適宜伸縮されることによって、ガイド部材1の角度が調整される。これにより、形成する曲線ルーフに応じて、
図8および
図9に示すように、曲線鋼管ST2を押圧する方向が調整される。そして、一対の支持ジャッキ17aの位置および伸縮が調整されることによって、ガイド部材1が安定的に支持される状態になる。
【0060】
その後、押板21の鋼管取付部分21b(
図7参照)に、特定の曲率半径R2を有する曲線鋼管ST2が取り付けられる。そして、一対の推進ジャッキ22により、押板21が第2ガイド部14に沿って移動するように押圧される。この際、曲面14aおよび14bにそれぞれ回転可能に当接する車輪25aおよび27aは、それぞれ、曲面14aおよび14bに沿って移動される。ここで、第2ガイド部14の曲面14aおよび14bが、曲線鋼管ST2の曲率中心C2と略一致するような曲率半径R5およびR6をそれぞれ有している。これにより、押板21は、曲率半径R2を維持した状態で、曲線鋼管ST2を地中に向かって押圧するように、ガイド部材1上を移動する。この結果、第2の取付状態では、所望の曲率半径R2を有するルートに沿って移動するように、曲線鋼管ST2を正確に地中に推進させることが可能である。
【0061】
<本実施形態の効果>
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0062】
本実施形態では、上記のように、ガイド部材1に、曲率半径R3に形成された曲面13aと、曲率半径R4に形成された曲面13bとを有する第1ガイド部13を設ける。また、ガイド部材1に、曲率半径R3よりも小さな曲率半径R5に形成された曲面14aと、曲率半径R4よりも小さな曲率半径R6に形成された曲面14bとを有する第2ガイド部14とを設ける。これにより、第1ガイド部13に合わせて、曲率半径R3およびR4に対応する曲率半径R1を有する曲線鋼管ST1を押圧部2により押圧するように推進装置100を構成することができる。また、第2ガイド部14に合わせて、曲率半径R5およびR6に対応する曲率半径R2を有する曲線鋼管ST2を押圧部2により押圧するように推進装置100を構成することができる。この結果、1つの推進装置100を用いて、異なる曲率半径Rを有する曲線鋼管STを地中に推進させることができる。したがって、異なる曲率半径の曲線ルーフを作成する場合において、推進装置を解体して新たな別の推進装置を設置せずとも、推進装置100を流用することができるので、地下空間Sの施行に係る工期の短縮を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、押圧部2を、第1ガイド部13に沿って移動可能にガイド部材1に取り付けられる第1の取付状態と、第2ガイド部14に沿って移動可能にガイド部材1に取り付けられる第2の取付状態とに切替可能に構成する。これにより、共通の押圧部2により、異なる曲率半径Rを有する曲線鋼管STを地中に推進させることができるので、曲線鋼管STに応じて押圧部2を取り換える必要がない分、推進装置100の構成を簡略化することができるとともに、工期の短縮をより図ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、第1ガイド部13に、曲率半径R3に形成された曲面13aと、曲率半径R4に形成された曲面13bとを形成する。また、押圧部2に、第1の取付状態において曲面13a上および13b上をそれぞれ移動するための車輪24aおよび26aを設ける。これにより、第1の取付状態において、車輪24aおよび26aにより、押圧部2を曲面13aおよび13b上に沿ってそれぞれ移動させることができる。この結果、曲率半径R3およびR4に対応する曲率半径R1を有する曲線鋼管ST1を、曲率半径R1に合わせて確実に移動させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、第2ガイド部14に、曲率半径R5に形成された曲面14aと、曲率半径R6に形成された曲面14bとを形成する。また、押圧部2に、第2の取付状態において曲面14a上および14b上をそれぞれ移動するための車輪25aおよび27aとを設ける。これにより、車輪25aおよび27aにより、押圧部2を曲面14aおよび14b上に沿ってそれぞれ移動させることができる。この結果、曲率半径R5およびR6に対応する曲率半径R2を有する曲線鋼管ST2を、曲率半径R2に合わせて確実に移動させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、車輪24aおよび26aを、それぞれ、曲面13aおよび13bから離間する方向に移動可能に構成し、車輪25aおよび27aを、それぞれ、曲面14aおよび14bから離間する方向に移動可能に構成する。これにより、車輪25aおよび27aにより、押圧部2を曲面14aおよび14b上に沿って移動させる際に、車輪24aおよび26aを曲面13aおよび13bから離間する方向にそれぞれ移動させることができる。この結果、車輪24aおよび26aを曲面13aおよび13bとはそれぞれ当接することなく、車輪25aと曲面14aとが当接し、車輪27aと曲面14bとが当接する状態に、ガイド部材1を構成することができる。したがって、曲率半径R5およびR6に対応する曲率半径R2を有する曲線鋼管ST2を、曲率半径R2に合わせて確実に移動させることができる。同様に、車輪24aおよび26aにより、押圧部2を曲面13aおよび13b上に沿って移動させる際に、車輪25aおよび27aを曲面14aおよび14bから離間する方向にそれぞれ移動させることができる。これにより、車輪25aおよび27aを曲面14aおよび14bとはそれぞれ当接することなく、車輪24aと曲面13aとが当接し、車輪26aと曲面13bとが当接する状態に、ガイド部材1を構成することができる。この結果、曲率半径R3およびR4に対応する曲率半径R1を有する曲線鋼管ST1を、曲率半径R1に合わせて確実に移動させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、曲面13aと曲面14aとを、段差部15aを介して隣接させる。これにより、曲面13aの曲率半径R3と曲面14aの曲率半径R5を異ならせつつ、曲面13aと曲面14aとを近接させることができるので、曲率半径が異なる2つの曲面を独立してガイド部材に形成する場合と比べて、ガイド部材1が大型化するのを抑制することができる。また、曲面13bと曲面14bとを、段差部15bを介して隣接させる。これにより、曲面13bの曲率半径R4と曲面14bの曲率半径R6を異ならせつつ、曲面13bと曲面14bとを近接させることができるので、曲率半径が異なる2つの曲面を独立してガイド部材に形成する場合と比べて、ガイド部材1が大型化するのを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、ガイド部材1を回動させることによって、水平面(床F)に対するガイド部材1の傾斜度合を変化させるための回動軸3aを、推進装置100に設ける。これにより、ガイド部材1を回動させることによって、曲線鋼管STを地中に向かって押圧する際の、水平面に対する曲線鋼管STの推進角度を変化させることができる。この結果、曲線鋼管STの推進角度を容易に変化させることができる。
【0069】
[変形例]
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0070】
たとえば、上記実施形態では、2種類の曲線鋼管ST1およびST2(管部材)を押圧可能な推進装置100を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、3種類以上の管部材を押圧可能なように推進装置を構成してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、推進ジャッキ22により、押板21を介して、曲線鋼管ST(管部材)を地中に向かって押圧した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、管部材を地中に向かって押圧可能に構成されていれば、押圧部の構成は、押板および推進ジャッキを含む構成に限られない。
【0072】
また、上記実施形態では、第1の取付状態において、押板21の車輪24aと車輪26aとにより第1ガイド部13を挟み込んだ状態で、押板21を第1ガイド部13に沿って移動可能に構成した。また、第2の取付状態において、押板21の車輪25aと車輪27aとにより第2ガイド部14を挟み込んだ状態で、押板21を第2ガイド部14に沿って移動可能に構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、押板(押圧部)は、第1の取付状態および第2の取付状態において、それぞれ、第1ガイド部13および第2ガイド部14に沿って移動可能に構成されていればよく、車輪により挟み込まれていなくてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、車輪24a〜27a(第1回転体および第2回転体)を、それぞれ、曲面13a、14a、13bおよび14b(第1ガイド面および第2ガイド面)上で回転可能に構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1回転体および第2回転体として、車輪以外の回転体を用いてもよい。たとえば、コロおよびローラなどを回転体として用いてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、車輪24a〜27a(第1回転体および第2回転体)を、押板21の内部に格納することによって、それぞれ、曲面13a、14a、13bおよび14b(第1ガイド面および第2ガイド面)から離間する方向に移動可能に構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1回転体および第2回転体が取り付けられるシャーシを折り曲げ可能に構成することによって、第1回転体および第2回転体を、それぞれ、第1ガイド面および第2ガイド面から離間する方向に移動可能に構成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、ガイド部材1を回動させる際に、ガイド部材1に駆動力を加える回動ジャッキ4を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回動ジャッキ4を設けなくてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、押圧部2を、曲線鋼管ST1および曲線鋼管ST2(管部材)で流用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、押圧部を流用せずに、管部材に合わせて取り換えてもよい。このような場合であっても、推進装置の大部分を占めるガイド部材を流用することができるので、地下空間の施行に係る工期の短縮を十分に図ることが可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、ジャッキ支持部17をガイド部材1に一体的に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ジャッキ支持部をガイド部材とは別体として設けてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、太径曲線パイプルーフ工法に本発明の推進装置100を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の推進装置は、湾曲した管部材を地中に向かって押圧するような工法であれば、太径曲線パイプルーフ工法以外の工法にも適用可能である。