(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートベルトリトラクタでは、スパイラルスプリングの渦巻き方向内側の端末部(内側端末部)は、スプールの回転軸に接続されていて、スパイラルスプリングの渦巻き方向外側の端末部(外側端末部)は、スプリングケースの外周部に接続されている。
【0005】
しかしながら、巻き部分がスプリングケースの内側に偏倚した巻き上げ状態のスパイラルスプリングを更に巻き上げる力が強まると、当該スパイラルスプリングの外側端末部に過剰な負荷が入るおそれがある。同様に、巻き部分がスプリングケースの外側に偏倚した弛緩状態(解放状態)のスパイラルスプリングを更に弛緩(解放)させる力が強まると、当該スパイラルスプリングの内側端末部に過剰な負荷が入るおそれがある。
【0006】
そこで、本開示の一態様は、スパイラルスプリングの端末部に入る過剰な負荷を低減できる、シートベルトリトラクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の第1の態様では、
シートベルトを巻き取るスプールと、
前記スプールを前記シートベルトの巻き取り方向に付勢するスパイラルスプリングと、
前記スパイラルスプリングを収容するスプリングケースと、
前記スプールの回転軸に対して偏心した状態で回転するギアとを備え、
前記スパイラルスプリングは、前記回転軸に接続された内側端末部と、前記スプリングケースの外周部に接続された外側端末部とを有し、
前記スプリングケースは、ハイポサイクロイド機構を構成するように前記ギアの外歯と噛み合う内歯と、前記ギアの盤面から突出するボスと当接することで前記回転軸と前記スプリングケースとを結合させる当接面とを有し、
前記当接面は、前記スパイラルスプリングが前記スプリングケースの外側に偏倚した弛緩状態で前記ボスが当接する第1の当接面と、前記スパイラルスプリングが前記スプリングケースの内側に偏倚した巻き上げ状態で前記ボスが当接する第2の当接面とを含む、シートベルトリトラクタが提供される。
【0008】
第1の態様によれば、前記スパイラルスプリングが前記スプリングケースの外側に偏倚する弛緩方向に前記回転軸又は前記スプリングケースが回転するにつれて、前記スプリングケースに対する前記ボスの相対的な位置は、前記ハイポサイクロイド機構により移動する。当該弛緩方向に前記回転軸又は前記スプリングケースが回転し続け、前記スパイラルスプリングが前記スプリングケースの外側に偏倚した弛緩状態になると、前記ボスは、前記第1の当接面に当接する。前記ボスが前記第1の当接面に当接することによって前記回転軸と前記スプリングケースとが結合するので、当該弛緩方向に前記回転軸又は前記スプリングケースを回転させる力が更に強まると、前記回転軸と前記スプリングケースとが一体に同じ方向に回転する。
【0009】
したがって、当該弛緩状態の前記スパイラルスプリングを更に弛緩させる力が強まっても、前記回転軸と前記スプリングケースとが一体に同じ方向に回転するので、前記スパイラルスプリングを弛緩させる力の強まりを抑制することができる。その結果、当該弛緩状態の前記スパイラルスプリングの内側端末部に入る過剰な負荷を低減することができる。
【0010】
また、第1の態様によれば、前記スパイラルスプリングが前記スプリングケースの内側に偏倚する巻き上げ方向に前記回転軸又は前記スプリングケースが回転するにつれて、前記スプリングケースに対する前記ボスの相対的な位置は、前記ハイポサイクロイド機構により移動する。当該巻き上げ方向に前記回転軸又は前記スプリングケースが回転し続け、前記スパイラルスプリングが前記スプリングケースの内側に偏倚した巻き上げ状態になると、前記ボスは、前記第2の当接面に当接する。前記ボスが前記第2の当接面に当接することによって前記回転軸と前記スプリングケースとが結合するので、当該巻き上げ方向に前記回転軸又は前記スプリングケースを回転させる力が更に強まると、前記回転軸と前記スプリングケースとが一体に同じ方向に回転する。
【0011】
したがって、当該巻き上げ状態の前記スパイラルスプリングを更に巻き上げる力が強まっても、前記回転軸と前記スプリングケースとが一体に同じ方向に回転するので、前記スパイラルスプリングを巻き上げる力の強まりを抑制することができる。その結果、当該巻き上げ状態の前記スパイラルスプリングの外側端末部に入る過剰な負荷を低減することができる。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本開示の第2の態様では、
シートベルトを巻き取るスプールと、
前記スプールを前記シートベルトの巻き取り方向に付勢するスパイラルスプリングと、
前記スパイラルスプリングを収容するスプリングケースと、
前記スプールの回転軸に対して偏心した状態で回転するギアとを備え、
前記スパイラルスプリングは、前記回転軸に接続された内側端末部と、前記スプリングケースの外周部に接続された外側端末部とを有し、
前記ギアは、ハイポサイクロイド機構を構成するように前記スプリングケースの内歯と噛み合う外歯と、前記スプリングケースの底壁から突出するボスと当接することで前記回転軸と前記スプリングケースとを結合させる当接面とを有し、
前記当接面は、前記スパイラルスプリングが前記スプリングケースの外側に偏倚した弛緩状態で前記ボスが当接する第1の当接面と、前記スパイラルスプリングが前記スプリングケースの内側に偏倚した巻き上げ状態で前記ボスが当接する第2の当接面とを含む、シートベルトリトラクタが提供される。
【0013】
第2の態様も、第1の態様と同様に機能するので、前記弛緩状態の前記スパイラルスプリングの内側端末部又は前記巻き上げ状態の前記スパイラルスプリングの外側端末部に入る過剰な負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の態様によれば、スパイラルスプリングの端末部に入る過剰な負荷を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、一実施形態に係るシートベルトシステム1の構成の一例を示す図である。シートベルトシステム1は、車両に搭載されたシステムの一例である。シートベルトシステム1は、例えば、シートベルト4と、リトラクタ3と、ショルダーアンカー6と、タング7と、バックル8と、ECU(Electronic Control Unit)100とを備える。
【0018】
シートベルト4は、車両のシート2に座る乗員11を拘束するウェビングの一例であり、リトラクタ3に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルト4の先端のベルトアンカー5は、車体の床又はシート2に固定される。
【0019】
リトラクタ3は、シートベルト4の巻き取り又は引き出しを可能にする巻き取り装置の一例であり、車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度が検知されると、シートベルト4がリトラクタ3から引き出されることを制限する。リトラクタ3は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。リトラクタ3は、シートベルトリトラクタの一例である。
【0020】
リトラクタ3は、モータの動力によりシートベルト4をスプールに巻き取る。リトラクタ3は、車両衝突前に、ミリ波レーダー等のセンサからの信号に基づいてモータを作動してシートベルト4をスプールに巻き取り、シートベルト4にプリテンションを与えてシートベルト4による乗員拘束を迅速に行う。また、リトラクタ3は、タング7とバックル8との係合が解除された時にモータを作動してシートベルト4をスプールで巻き取る。更に、リトラクタ3は、モータを作動してシートベルト4の張力をドライビングシチュエーション(車両の状態)に応じて調整することで、シートベルト4による乗員の拘束性やシートベルト4の装着時の快適性をそれぞれ向上させる。
【0021】
車両の状態とは、例えば、シートベルト4の引き出しの有無、乗員11の有無、車両の走行速度、車両の加速度、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作、バックル8の操作、ドア操作、乗員が操作可能な車載の選択スイッチの操作入力などを表す状態をいう。
【0022】
ショルダーアンカー6は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、リトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員11の肩部の方へガイドする部材である。
【0023】
タング7は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー6によりガイドされたシートベルト4にスライド可能に取り付けられた部品である。
【0024】
バックル8は、タング7が着脱可能に連結される部品であり、例えば、車体の床又はシート2に固定される。
【0025】
タング7がバックル8に係合された状態で、ショルダーアンカー6とタング7との間のシートベルト4の部分が、乗員11の胸部及び肩部を拘束するショルダーベルト部9である。タング7がバックル8に係合された状態で、ベルトアンカー5とタング7との間のシートベルト4の部分が、乗員11の腰部を拘束するラップベルト部10である。
【0026】
ECU100は、リトラクタ3と通信可能に一又は複数本のワイヤハーネス101を介して接続された制御装置の一例である。
【0027】
<第1の実施形態>
図2は、第1の実施形態に係るリトラクタ3Aの構成の一例を示す斜視図である。リトラクタ3Aは、
図1に示されたリトラクタ3の一例である。
【0028】
図2において、リトラクタ3Aは、例えば、フレーム19と、フレーム19に回転可能に支持されてシートベルト4を巻き取るスプール20と、フレーム19に固定されたリテーナ16と、リテーナ16に取り付けられたカバー15とを備える。フレーム19は、フレームプレート18と、ベースフレーム17とを有する。リテーナ16及びフレームプレート18は、ベースフレーム17に固定されている。スプール20は、ベースフレーム17に回転可能に支持されている。
【0029】
図3〜
図5では、各図面の視認性向上のため、カバー15、リテーナ16及びフレームプレート18の図示が省略されている。
図3は、リトラクタ3Aの構成の一例を一部省略して示す斜視図である。
図4は、リトラクタ3Aの構成の一例を一部省略して示す正面図である。
図5は、リトラクタ3Aの構成の一例を一部省略して示す側面図である。以下、
図3〜
図5を参照して、リトラクタ3Aの構成の一例について詳細に説明する。
【0030】
図3は、リトラクタ3Aの構成の一例を示す斜視図である。リトラクタ3Aは、
図1に示されたリトラクタ3の一例である。
図3において、リトラクタ3Aは、例えば、ベースフレーム17と、ベースフレーム17に対して回転可能に支持されてシートベルト4を巻き取るスプール20とを備える。
【0031】
図4は、リトラクタ3Aの構成の一例を示す正面図である。
図5は、リトラクタ3Aの構成の一例を示す側面図である。
【0032】
リトラクタ3Aは、スプール20と、スパイラルスプリング22と、スプリングケース23と、第1の回転ディスク38と、第1の回転検知部40と、第2の回転ディスク58と、第2の回転検知部60と、演算部73と、モータ24とを備える。
【0033】
スプール20は、シートベルト4を巻き取る回転部材である。スプール20の回転軸は、シャフト20aと、シャフト20aの一端に固定されたブッシュ21とを含んで構成される。
【0034】
スパイラルスプリング22は、スプール20の回転軸に接続された一端22aと、スプリングケース23の外周壁に接続された他端とを有し、スプール20をシートベルト4の巻き取り方向に付勢する弾性体の一例である。スパイラルスプリング22は、スプール20に一体回転可能に取り付けられたブッシュ21に一端22aが接続されて、スプール20をシートベルト4の巻き取り方向に常時付勢する。スパイラルスプリング22の一端22aは、ブッシュ21に形成された引っ掛け溝21aに引っ掛けられている。
【0035】
スプリングケース23は、スパイラルスプリング22の他端が接続された外周壁を有し、スパイラルスプリング22を当該外周壁の内側に収容する。スプリングケース23は、スプール20の回転軸を中心にベースフレーム17に対して回転可能に設けられている。つまり、スプリングケース23は、スプール20の回転軸と同軸に回転可能に設けられている。スプリングケース23の外周壁には、外歯23aが形成されている。
【0036】
第1の回転ディスク38は、ベースフレーム17に対して回転可能に取り付けられている。第1の回転ディスク38は、円環状の第1のマグネット保持部材42と、第1のマグネット保持部材42に一体回転可能にかつ円環状に配設された第1のマグネット41とを有している。円環状の第1のマグネット41は、N極マグネット41aとS極マグネット41bとが第1のマグネット41の円周方向に交互に配設されて形成されている。N極マグネット41aの着磁幅が第1のマグネット41の円周方向に所定の第1の角度幅に設定されているとともに、S極マグネット41bの着磁幅が第1のマグネット41の円周方向に所定の第2の角度幅に設定されている。第2の角度幅は、第1の角度幅と同じでも違ってもよい。第1のマグネット保持部材42は、第1のマグネット保持部材42と同心に配設された外歯43a(
図5参照)を有する筒状の第1の被伝動ギア43を一体に有している。第1のマグネット41は、第1の被伝動ギア43の回転に伴って、第1の被伝動ギア43と一体に第1の被伝動ギア43の回転軸と同軸に回転する。
【0037】
スプール20の回転軸のシャフト20aには、伝動ギア44がシャフト20aと一体回転可能にかつ同心に取り付けられている。伝動ギア44の外周部には外歯44aが形成されている。第1の被伝動ギア43の外歯43aは、伝動ギア44の外歯44aと噛み合っている。
【0038】
第1の回転検知部40は、スプール20の回転を検知する回転検知部の一例である。第1の回転検知部40は、例えば、第1のマグネット41の回転を検知することによってスプール20の回転を検知する。第1の回転検知部40は、例えば、第1の磁気検知部40aと第2の磁気検知部40bと有する。第1の磁気検知部40aと第2の磁気検知部40bは、それぞれ、第1のマグネット41の回転に伴って変化する磁気を検知する。第1の磁気検知部40a及び第2の磁気検知部40bの具体例として、ホール素子が挙げられる。ホール素子は、ホール効果によって磁気変化を検出する半導体素子の一例である。
【0039】
スプール20がシートベルト4の引き出し方向に回転すると、スプール20の回転軸と一体に回転する伝動ギア44が回転する。伝動ギア44が回転すると、伝動ギア44の外歯44aと噛み合っている外歯43aが形成された第1の被伝動ギア43が回転するので、第1の回転ディスク38の第1のマグネット41が回転する。つまり、スプール20がシートベルト4の引き出し方向に回転すると、スプール20の回転に連動して、シートベルト4の引き出し方向に対応する回転方向に第1のマグネット41が回転する。
【0040】
第1のマグネット41が回転すると、第1の磁気検知部40aと第2の磁気検知部40bは、それぞれ、N極マグネット41aを検知しているときとS極マグネット41bを検知しているときとで位相が反転する検知信号を出力する。また、第1の磁気検知部40aの配置位置は、第2の磁気検知部40bの配置位置と異なるので、第1の磁気検知部40aから出力される検知信号の位相は、第2の磁気検知部40bから出力される検知信号の位相に対して所定量ずれている。
【0041】
演算部73は、第1の磁気検知部40aと第2の磁気検知部40bのそれぞれから出力された検知信号の位相の反転回数をカウントすることで、スプール20の回転量(回転位置)を検知する。また、演算部73は、第1の磁気検知部40aから出力された検知信号と第2の磁気検知部40bから出力された検知信号との間の位相のずれ方に基づいて、スプール20の回転方向がシートベルト4の引き出し方向であるか、シートベルト4の巻き取り方向であるかを判断する。
【0042】
第2の回転ディスク58は、ベースフレーム17に対して回転可能に取り付けられている。第2の回転ディスク58は、円環状の第2のマグネット保持部材62と、第2のマグネット保持部材62に一体回転可能にかつ円環状に配設された第2のマグネット61とを有している。円環状の第2のマグネット61は、N極マグネット61aとS極マグネット61bとが第2のマグネット61の円周方向に交互に配設されて形成されている。N極マグネット61aの着磁幅が第2のマグネット61の円周方向に所定の第3の角度幅に設定されているとともに、S極マグネット61bの着磁幅が第2のマグネット61の円周方向に所定の第4の角度幅に設定されている。第4の角度幅は、第3の角度幅と同じでも違ってもよい。第2のマグネット保持部材62は、第2のマグネット保持部材62と同心に配設された外歯63aを有する筒状の第2の被伝動ギア63を一体に有している。第2のマグネット61は、第2の被伝動ギア63の回転に伴って、第2の被伝動ギア63と一体に第2の被伝動ギア63の回転軸と同軸に回転する。
【0043】
第2の被伝動ギア63の外歯63aは、スプリングケース23の外歯23aと噛み合っている。
【0044】
第2の回転検知部60は、スプリングケース23の回転を検知する回転検知部の一例である。第2の回転検知部60は、例えば、第2のマグネット61の回転を検知することによってスプリングケース23の回転を検知する。第2の回転検知部60は、例えば、第3の磁気検知部60aと第4の磁気検知部60bと有する。第3の磁気検知部60aと第4の磁気検知部60bは、それぞれ、第2のマグネット61の回転に伴って変化する磁気を検知する。第3の磁気検知部60a及び第4の磁気検知部60bの具体例として、ホール素子が挙げられる。ホール素子は、ホール効果によって磁気変化を検出する半導体素子の一例である。
【0045】
スプリングケース23がモータ24の駆動によりシートベルト4の引き出し方向に回転すると、スプリングケース23の外歯23aと噛み合っている外歯63aが形成された第2の被伝動ギア63が回転する。第2の被伝動ギア63の回転により、第2の回転ディスク58の第2のマグネット61が回転する。つまり、スプリングケース23がシートベルト4の引き出し方向に回転すると、スプリングケース23の回転に連動して、シートベルト4の引き出し方向に対応する回転方向に第2のマグネット61が回転する。
【0046】
第2のマグネット61が回転すると、第3の磁気検知部60aと第4の磁気検知部60bは、それぞれ、N極マグネット61aを検知しているときとS極マグネット61bを検知しているときとで位相が反転する検知信号を出力する。また、第3の磁気検知部60aの配置位置は、第4の磁気検知部60bの配置位置と異なるので、第3の磁気検知部60aから出力される検知信号の位相は、第4の磁気検知部60bから出力される検知信号の位相に対して所定量ずれている。
【0047】
演算部73は、第3の磁気検知部60aと第4の磁気検知部60bのそれぞれから出力された検知信号の位相の反転回数をカウントすることで、スプリングケース23の回転量(回転位置)を検知する。また、演算部73は、第3の磁気検知部60aから出力された検知信号と第4の磁気検知部60bから出力された検知信号との間の位相のずれ方に基づいて、スプリングケース23の回転方向がシートベルト4の引き出し方向であるか、シートベルト4の巻き取り方向であるかを判断する。
【0048】
演算部73は、第1の回転検知部40により回転が検知されたスプール20の回転量と、第2の回転検知部60により回転が検知されたスプリングケース23の回転量との差(以下、差Dと称する)を演算し、差Dの演算結果を出力する。演算部73の具体例として、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などが挙げられる。
【0049】
ECU100(
図1参照)は、演算部73によって得られた差Dの演算結果をワイヤハーネス101を介して取得する。ECU100は、取得した差Dの演算結果に応じて、モータ24の駆動を制御する。
【0050】
ECU100がこのようにモータ24の駆動を制御することにより、モータ24は、差Dに応じてスプリングケース23を回転させる。例えば、差Dが大きくなるほど、シートベルト4の張力は変化(例えば、増加)する。よって、モータ24が差Dに応じてスプリングケース23を回転させることで、モータ24はシートベルト4の張力を連続的且つ無段階に高精度に調整できる。
【0051】
図6は、リトラクタ3Aの構成の一例を一部省略して示す分解斜視図である。リトラクタ3Aは、モータ24と、リテーナ16は、スプリングケース23と、ギア110と、カム80と、センタープレート90と、ブッシュ21と、スパイラルスプリング22とを備える。
【0052】
スプリングケース23は、スプール20の回転軸を中心にベースフレーム17に対して回転可能に設けられ、スパイラルスプリング22を収容する。スプリングケース23は、円形の底壁29と、底壁29の外周縁から底壁29の法線方向に突き出る外周壁28とを有する。スプリングケース23は、ギア110、カム80、センタープレート90、ブッシュ21及びスパイラルスプリング22を、外周壁28の内側に収容する。
【0053】
スプリングケース23は、ハイポサイクロイド機構を構成するようにギア110の外歯111と噛み合う内歯27を外周壁28の内側に有する。内歯27は、底壁29に形成されている。底壁29は、底壁29のスパイラルスプリング22側の表面に対して凹んだ凹面37を有する。内歯27は、底壁29のスパイラルスプリング22側の表面と、凹面37との段差を利用して、凹面37の円状の外周縁部に形成されている。
【0054】
凹面37の中央部には、上述のシャフト20aが貫通する孔であるケース孔33が内歯27の内側に形成されている。ケース孔33の凹面37側の開口部には、当該開口部の縁に形成された段差部32が設けられている。段差部32には、カム80の円筒部82が回転可能に嵌まる。
【0055】
ケース孔33と内歯27との間には、円弧状の溝34が形成されている。溝34は、凹面37に対して凹んでいる。溝34は、ギア110の盤面112から突出するボス113がハイポサイクロイド機構により移動する際の通路となる。なお、ボス113の通路は、溝34に代えて、底壁29を貫通する孔でもよい。ボス113が溝34又は孔に挿入されていることにより、ボス113が溝又は孔に挿入されない形態に比べて、リトラクタ3Aの小型化が可能である。
【0056】
ギア110は、スプール20の回転軸に対して偏心した状態で回転する円盤状部材である。ギア110の盤面112の円状の外周縁には、外歯111が形成されている。ギア110は、盤面112から突出するボス113を有する。図示のボス113の形状は、円柱状であるが、角柱等の他の突起形状でもよい。盤面112の中央部には、円状のギア孔114が形成されている。ギア孔114には、シャフト20aが貫通する。ギア孔114には、カム80のカム板83が回転可能に嵌まる。
【0057】
カム80は、円状の外周縁を有するカム板83と、ケース孔33の段差部32に回転可能に嵌まる円筒部82とを有する。円筒部82がケース孔33の段差部32に嵌まった状態で、カム板83は凹面37に接する。カム板83は、スプール20の回転軸から距離が一定でない外周縁を有する。カム板83の中央部には、ブッシュ21の筒部21bがカム80に対して相対回転不能に挿入されるカム孔81が形成されている。
【0058】
センタープレート90は、ブッシュ21の筒部21bが挿入されるプレート孔91を有する。プレート孔91は、円状のセンタープレート90の中央部に形成されている。センタープレート90は、スプリングケース23の外周壁28の内側に収納されて位置決めされている。ブッシュ21は、シャフト20aと共に回転するが、センタープレート90は、ブッシュ21がシャフト20aと共に回転してもスプリングケース23に固定されている。例えば、センタープレート90の外周縁に形成された凹部92が、スプリングケース23の引っ掛け壁26に形成された凸部26aに嵌まることによって、センタープレート90は、スプリングケース23の外周壁28の内側に固定される。センタープレート90は、ギア110とスパイラルスプリング22との干渉を回避する。
【0059】
ブッシュ21は、円筒状の頭部21dと、頭部21dに接続された筒部21bとを有する。頭部21dと筒部21bとは一体に形成されている。シャフト20aは、ブッシュ21の軸方向にブッシュ21に形成されたブッシュ孔21cを貫通する。ブッシュ孔21cは、頭部21dの中央部及び筒部21bの中央部に形成されている。ブッシュ21は、シャフト20aに対して回転不能にブッシュ孔21cで固定されている。
【0060】
スパイラルスプリング22は、スプール20に一体回転可能に取り付けられたブッシュ21の頭部21dに接続される内側端末部22aと、スプリングケース23の外周壁に接続された外側端末部22bとを有する。
【0061】
図7は、第1の実施形態において、巻き部分がスプリングケース23の外側に偏倚した弛緩状態のスパイラルスプリング22の形態の一例を示す正面図である。
図7では、視認性向上のため、センタープレート90の図示が省略されている。
図8は、
図7に示された断面B−Bにおける断面図である。
【0062】
スパイラルスプリング22は、シャフト20aに対して回転不能に固定されたブッシュ21の頭部21dに接続された内側端末部22aと、スプリングケース23の外周部に位置する引っ掛け壁26に接続された外側端末部22bとを有する。内側端末部22aは、スパイラルスプリング22の渦巻き方向内側の端末部の一例であり、外側端末部22bは、スパイラルスプリング22の渦巻き方向外側の端末部の一例である。引っ掛け壁26は、外側端末部22bが引っ掛けられる引っ掛け部の一例である。
【0063】
内側端末部22aは、例えば、ブッシュ21の頭部21dに形成された引っ掛け溝21aに引っ掛けられることによって、ブッシュ21の頭部21dに接続されている。外側端末部22bは、例えば、引っ掛け壁26に引っ掛けられることによって、引っ掛け壁26に接続されている。外側端末部22bが引っ掛け壁26で折り返される方向は、内側端末部22aが引っ掛け溝21aで折り返される方向とは逆向きである。引っ掛け壁26は、スプリングケース23の外周部の一例である。引っ掛け壁26は、スプリングケース23の外周壁28の一部でもよいし、外周壁28とは別の部分でもよい。
【0064】
スプリングケース23は、ハイポサイクロイド機構を構成するようにギア110の外歯111と噛み合う内歯27を有する。外歯111の歯数は、内歯27の歯数よりも僅かに少ない。図示の場合、外歯111の歯数は、26であり、内歯27の歯数は、27である。この場合、シャフト20aに固定されたブッシュ21は、1歯移動する毎に1回転する。
【0065】
例えば、スプリングケース23の回転が固定された状態で、スプール20がシートベルト4の引き出し方向に回転すると、シャフト20aに固定されたブッシュ21がスパイラルスプリング22を巻き上げる方向Eに回転する。ブッシュ21がスパイラルスプリング22を巻き上げる方向Eに回転すると、ボス113は、ハイポサイクロイド機構により、H方向に移動する。一方、ブッシュ21がスパイラルスプリング22を巻き上げる方向Eに回転すると、スパイラルスプリング22は、
図7,8の状態から
図9,10の状態に遷移するようにスプリングケース23の内側に向けて移動する。
【0066】
図9は、第1の実施形態において、巻き部分がスプリングケース23の内側に偏倚した巻き上げ状態のスパイラルスプリング22の形態の一例を示す正面図である。
図9では、視認性向上のため、センタープレート90の図示が省略されている。
図10は、
図9に示された断面C−Cにおける断面図である。
【0067】
例えば、スプリングケース23の回転が固定された状態で、スプール20がシートベルト4の巻き取り方向に回転すると、シャフト20aに固定されたブッシュ21がスパイラルスプリング22を弛緩させる方向(解放させる方向)Fに回転する。ブッシュ21がスパイラルスプリング22を弛緩させる方向Fに回転すると、ボス113は、ハイポサイクロイド機構により、G方向に移動する。一方、ブッシュ21がスパイラルスプリング22を弛緩させる方向Fに回転すると、スパイラルスプリング22は、
図9,10の状態から
図7,8の状態に遷移するように、スプリングケース23の外側に向けて移動する。
【0068】
ここで、スプリングケース23は、ボス113と当接することでブッシュ21とスプリングケース23とを結合させる当接面を有する。第1の実施形態では、スプリングケース23は、当該当接面として、第1の当接面35と第2の当接面36とを有する。第1の当接面35は、スパイラルスプリング22がスプリングケース23の外側に偏倚した弛緩状態でボス113が当接するストッパ面である(
図7,8参照)。第2の当接面36は、スパイラルスプリング22がスプリングケース23の内側に偏倚した巻き上げ状態でボス113が当接するストッパ面である(
図9,10参照)。第1の当接面35は、溝34の行き止まりの側壁面に形成され、第2の当接面36は、第1の当接面35とは反対側の溝34の行き止まりの側壁面に形成されている。
【0069】
ブッシュ21がスパイラルスプリング22をスプリングケース23の外側に偏倚させる方向Fにブッシュ21が回転するにつれて、スプリングケース23に対するボス113の相対的な位置は、ハイポサイクロイド機構によりG方向に移動する。方向Fにブッシュ21が回転し続け、スパイラルスプリング22がスプリングケース23の外側に偏倚した弛緩状態になると、ボス113は、第1の当接面35に当接する(
図7,8参照)。ボス113が第1の当接面35に当接することによってブッシュ21とスプリングケース23とが結合するので、方向Fにブッシュ21を回転させる力が更に強まると、ブッシュ21とスプリングケース23とが一体に同じ方向Fに回転する。
【0070】
スプリングケース23が方向Eに回転するにつれて、スプリングケース23に対するボス113の相対的な位置は、ハイポサイクロイド機構によりG方向に移動する。方向Eにスプリングケース23が回転し続け、スパイラルスプリング22がスプリングケース23の外側に偏倚した弛緩状態になると、ボス113は、第1の当接面35に当接する(
図7,8参照)。ボス113が第1の当接面35に当接することによってブッシュ21とスプリングケース23とが結合するので、方向Eにスプリングケース23を回転させる力が更に強まると、ブッシュ21とスプリングケース23とが一体に同じ方向Eに回転する。
【0071】
したがって、当該弛緩状態のスパイラルスプリング22を更に弛緩させる力が強まっても、ブッシュ21とスプリングケース23とが一体に同じ方向に回転するので、スパイラルスプリング22を弛緩させる力の強まりを抑制することができる。その結果、当該弛緩状態のスパイラルスプリング22の内側端末部22aに入る過剰な負荷を低減することができる。その結果、例えば、内側端末部22aに入る過剰な負荷によって内側端末部22aが引っ掛け溝21aから外れることを防止することができる。
【0072】
一方、ブッシュ21がスパイラルスプリング22をスプリングケース23の内側に偏倚させる方向Eにブッシュ21が回転するにつれて、スプリングケース23に対するボス113の相対的な位置は、ハイポサイクロイド機構によりH方向に移動する。方向Eにブッシュ21が回転し続け、スパイラルスプリング22がスプリングケース23の内側に偏倚した巻き上げ状態になると、ボス113は、第2の当接面36に当接する(
図9,10参照)。ボス113が第2の当接面36に当接することによってブッシュ21とスプリングケース23とが結合するので、方向Eにブッシュ21を回転させる力が更に強まると、ブッシュ21とスプリングケース23とが一体に同じ方向Eに回転する。
【0073】
スプリングケース23が方向Fに回転するにつれて、スプリングケース23に対するボス113の相対的な位置は、ハイポサイクロイド機構によりH方向に移動する。方向Fにスプリングケース23が回転し続け、スパイラルスプリング22がスプリングケース23の内側に偏倚した巻き上げ状態になると、ボス113は、第2の当接面36に当接する(
図9,10参照)。ボス113が第2の当接面36に当接することによってブッシュ21とスプリングケース23とが結合するので、方向Fにスプリングケース23を回転させる力が更に強まると、ブッシュ21とスプリングケース23とが一体に同じ方向Fに回転する。
【0074】
したがって、当該巻き上げ状態のスパイラルスプリング22を更に巻き上げる力が強まっても、ブッシュ21とスプリングケース23とが一体に同じ方向に回転するので、スパイラルスプリング22を巻き上げる力の強まりを抑制することができる。その結果、当該巻き上げ状態のスパイラルスプリング22の外側端末部22bに入る過剰な負荷を低減することができる。その結果、例えば、外側端末部22bに入る過剰な負荷によって外側端末部22bが引っ掛け壁26から外れることを防止することができる。
【0075】
<第2の実施形態>
図11は、第2の実施形態に係るリトラクタ3Bの構成の一例を一部省略して示す分解斜視図である。リトラクタ3Bは、
図1に示されたリトラクタ3の一例である。リトラクタ3Bにおいてリトラクタ3Aに係る構成と同様の構成については、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。リトラクタ3Bは、リトラクタ3Aとは異なる形態のスプリングケース223及びギア310を備える。
【0076】
スプリングケース223は、凹面37から突出するボス213を備える。図示のボス1213の形状は、円柱状であるが、角柱等の他の突起形状でもよい。ギア310は、ギア孔114と外歯111との間に円弧状の孔234が形成された盤面112を有する。孔234は、スプリングケース223の凹面37から突出するボス213がハイポサイクロイド機構により移動する際の通路となる。なお、ボス213の通路は、孔234に代えて、盤面112に対して凹んだ溝でもよい。ボス213が孔234又は溝に挿入されていることにより、ボス213が孔又は溝に挿入されない形態に比べて、リトラクタ3Bの小型化が可能である。
【0077】
ギア310は、ボス213と当接することでブッシュ21とスプリングケース223とを結合させる当接面を有する。第2の実施形態では、ギア310は、当該当接面として、第1の当接面235と第2の当接面236とを有する。第1の当接面235は、スパイラルスプリング22がスプリングケース223の外側に偏倚した弛緩状態でボス213が当接するストッパ面である。第2の当接面236は、スパイラルスプリング22がスプリングケース223の内側に偏倚した巻き上げ状態でボス213が当接するストッパ面である。第1の当接面235は、孔234の行き止まりの側壁面に形成され、第2の当接面236は、第1の当接面235とは反対側の孔234の行き止まりの側壁面に形成されている。
【0078】
図12は、第2の実施形態において、巻き部分がスプリングケース223の外側に偏倚した弛緩状態のスパイラルスプリング22の形態の一例を示す断面図である。
図12は、第1の実施形態に係る
図7に示された断面B−Bに相当する断面を示す。
図13は、第2の実施形態において、巻き部分がスプリングケース223の内側に偏倚した巻き上げ状態のスパイラルスプリング22の形態の一例を示す断面図である。
図13は、第1の実施形態に係る
図9に示された断面C−Cに相当する断面を示す。
【0079】
第2の実施形態も、第1の実施形態と同様に機能するので、弛緩状態のスパイラルスプリング22の内側端末部22a又は巻き上げ状態のスパイラルスプリング22の外側端末部22bに入る過剰な負荷を低減することができる。その結果、例えば、外側端末部22bに入る過剰な負荷によって外側端末部22bが引っ掛け壁26から外れることを防止することができ、内側端末部22aに入る過剰な負荷によって内側端末部22aが引っ掛け溝21aから外れることを防止することができる。
【0080】
以上、シートベルトリトラクタを実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。