特許第6708509号(P6708509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミヤナガの特許一覧

<>
  • 特許6708509-穿孔作業方法 図000002
  • 特許6708509-穿孔作業方法 図000003
  • 特許6708509-穿孔作業方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708509
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】穿孔作業方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20200601BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20200601BHJP
   B23B 47/00 20060101ALI20200601BHJP
   B23B 45/00 20060101ALI20200601BHJP
   B23B 35/00 20060101ALI20200601BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B28D1/14
   B28D7/02
   B23B47/00 B
   B23B45/00 Z
   B23B35/00
   B23Q11/10 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-146936(P2016-146936)
(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-15958(P2018-15958A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮永 昌明
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−047868(JP,A)
【文献】 特開平10−237479(JP,A)
【文献】 特開2011−037210(JP,A)
【文献】 特開2011−136530(JP,A)
【文献】 特開2003−001625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B23Q 11/10
B23B 47/00
C09K 5/10
B23B 45/00
B28D 7/02
B23B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に切れ刃を有するドリルビットと、前記ドリルビットを回転させる携帯用電動工具とを有する穿孔装置を用いて、穿孔対象物に穿孔する穿孔作業方法であって、
前記ドリルビットの先端に水溶性でかつジェル状の冷却剤を付着させた状態で前記ドリルビットを回転させて前記穿孔対象物に穿孔する切削工程を有し
前記冷却剤は、水溶性有機溶剤を主成分とし、かつ親水性高分子化合物を増粘剤として含んでいる、穿孔作業方法。
【請求項2】
前記ドリルビットの先端に前記冷却剤を付着させる冷却剤供給工程をさらに有し、
前記冷却剤供給工程が、前記切削工程の前、または前記切削工程中に行われる、
請求項1に記載の穿孔作業方法。
【請求項3】
前記ドリルビットの先端の前記切れ刃は、ダイヤモンド粒子を含有する砥石で構成されている、
請求項1または2に記載の穿孔作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等に穿孔する穿孔装置を用いた穿孔作業方法及びそれに用いる冷却剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート、石材、タイル等を穿孔対象物とする穿孔装置の電動工具として電気ドリルが利用されている。このような穿孔装置は、電気ドリルのチャックにドリルビット(ドリル刃)を固定し、このドリルビットを電気ドリルで回転させて穿孔するように構成されている。
【0003】
ドリルビットには、その先端に位置する刃先が、ダイヤモンド粒子を含有する砥石を固着させた切れ刃で形成されたものがある。この場合、ダイヤモンドが熱に弱い特性を有するため、ドリルビットの先端の刃先部分に水等の冷却剤を供給しつつ切削を行うのが一般的であった。
【0004】
例えば特許文献1には、水と水溶性有機溶剤の混合液からなる冷却剤を、ドリルビットの刃先部分に供給するタイプ(湿式タイプ)の構成が記載されている。この場合、冷却剤の供給手段が必要になる。また、冷却剤の飛散によって周辺を汚さないようにするために、冷却剤の回収手段も必要になる。このように、湿式タイプの場合、冷却剤の供給手段や回収手段が必要となり、構成が複雑になる。
【0005】
一方、特許文献2には、冷却剤を使用しないタイプ(乾式タイプ)の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−37210号公報
【特許文献2】特開2011−136530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、湿式タイプの場合には、冷却剤の供給手段や回収手段が必要となり、構成が複雑になる。一方、乾式タイプの場合には、構成は簡単であるが、一般的に、熱に弱いダイヤモンドを含有する切れ刃の損傷を低減するために、湿式タイプの場合に比べて、ドリルビットの回転速度を遅くして発熱を抑えるようにしているので、作業時間が長くかかる。
【0008】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、簡単な構成の穿孔装置を用いて、穿孔部分の周囲の汚れを抑え、かつ作業時間の短縮を図ることができる穿孔作業方法及び冷却剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る穿孔作業方法は、先端に切れ刃を有するドリルビットと、前記ドリルビットを回転させる携帯用電動工具とを有する穿孔装置を用いて、穿孔対象物に穿孔する穿孔作業方法であって、前記ドリルビットの先端に水溶性でかつジェル状の冷却剤を付着させた状態で前記ドリルビットを回転させて前記穿孔対象物に穿孔する切削工程を有する。
【0010】
この方法によれば、冷却剤がジェル状であるので、冷却剤をドリルビットの先端に容易に付着させることができ、この付着させた状態で穴あけを行うことにより、ドリルビットの回転速度が速くても先端の切れ刃が高温になるのを抑えて損傷を防止し、作業時間の短縮を図ることができる。また、冷却剤は液状ではなくジェル状であるため、冷却剤を用いる量が少量で済み、穿孔部分の周囲の汚れを抑えることができる。さらに、冷却剤が水溶性であるので、穴あけ終了後には、穿孔部分に残存する冷却剤を水で湿らせた布等で容易にふき取ることができ、清掃を簡単に行える。よって、従来の湿式タイプのような冷却剤の回収手段等が無く、簡単な構成の穿孔装置を用いて、穿孔部分の周囲の汚れを抑え、かつ作業時間の短縮を図ることができる。
【0011】
前記ドリルビットの先端に前記冷却剤を付着させる冷却剤供給工程をさらに有し、前記冷却剤供給工程が、前記切削工程の前、または前記切削工程中に行われるようにしてもよい。
【0012】
前記冷却剤は、水溶性有機溶剤を主成分とし、かつ親水性高分子化合物を増粘剤として含んでいることが好ましい。
【0013】
前記ドリルビットの先端の前記切れ刃は、ダイヤモンド粒子を含有する砥石で構成されていてもよい。このように熱に弱いダイヤモンド粒子を含有する切れ刃を有するドリルビットを用いて穿孔する際に、本穿孔作業方法は好適である。
【0014】
また、本発明のある態様に係る冷却剤は、先端に切れ刃を有するドリルビットを回転させて穿孔対象物に穿孔する際に、前記ドリルビットの先端に付着させる、水溶性でかつジェル状の冷却剤である。
【0015】
この冷却剤はジェル状であるので、冷却剤をドリルビットの先端に容易に付着させることができ、この付着させた状態で穴あけを行うことにより、ドリルビットの回転速度が速くても先端の切れ刃が高温になるのを抑えて損傷を防止し、作業時間の短縮を図ることができる。また、冷却剤は液状ではなくジェル状であるため、冷却剤を用いる量が少量で済み、穿孔部分の周囲の汚れを抑えることができる。さらに、冷却剤が水溶性であるので、穴あけ終了後には、穿孔部分に残存する冷却剤を水で湿らせた布等で容易にふき取ることができ、清掃を簡単に行える。よって、従来の湿式タイプのような冷却剤の回収手段等が無く、簡単な構成の穿孔装置を用いて、穿孔部分の周囲の汚れを抑え、かつ作業時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上に説明した構成を有し、簡単な構成の穿孔装置を用いて、穿孔部分の周囲の汚れを抑え、かつ作業時間の短縮を図ることができる穿孔作業方法及び冷却剤を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態の穿孔作業方法を実施するために用いられる穿孔装置等の一例を示す図である。
図2図2(A)は、穿孔装置のドリルビットの一例を示す分解図であり、図2(B)は、図2(A)におけるX−X矢視図であり、図2(C)は、図2(A)におけるY−Y断面図である。
図3図3は、本実施形態の穿孔作業方法による作業手順の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0019】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態の穿孔作業方法を実施するために用いられる穿孔装置等の一例を示す図である。また、図2(A)は、穿孔装置のドリルビットの一例を示す分解図であり、図2(B)は、図2(A)におけるX−X矢視図であり、図2(C)は、図2(A)におけるY−Y断面図である。
【0020】
図1に示す穿孔装置1は、作業者が手で持って穴あけ作業を行える携帯型の装置であり、電気ドリル2とドリルビット3とで構成されている。
【0021】
電気ドリル2は、携帯用電動工具であり、例えばインパクトドライバ、ドリルドライバなど周知のものを用いることができる。図1に示す例では、電気ドリル2は、本体部21と、この本体部21に繋がり作業者が手で把持する把持部22と、この把持部22に繋がるバッテリ収納部23とを備えている。本体部21には、ドリルビット3が取り付けられるチャック部24が設けられ、ドリルビット3を回転させるモータ等が収納されている。バッテリ収納部23には、モータに電力を供給するバッテリ等が収納されている。そして、把持部22には、作業者がモータ駆動によるドリルビット3の回転の開始・停止等を操作するためのトリガースイッチ25が設けられている。
【0022】
ドリルビット3は、図2に示すように、例えば、シャフト部3aと刃先交換部3bとで構成されている。シャフト部3aは、棒状に長い円筒状の筒部31と、その基端側に電気ドリル2のチャック部24に着脱自在に取り付けられるシャンク32とを備えている。筒部31は、その側面に細長いコア排出窓33が開口され、先端部の内壁には刃先交換部3bを取り付けるための雌ねじ部34が設けられている。
【0023】
刃先交換部3bは、短い円筒状の筒部35と、筒部35の先端に固着された複数の切れ刃36とを備えている。切れ刃36は、筒部35の先端における開口の外周に複数(図2では3個が例示)配置され、ダイヤモンド粒子を含有するセグメント砥石で構成されている。この切れ刃36は、例えば、ダイヤモンド砥粒を多層に溶着して形成されている。
【0024】
また、筒部35の基端部分の外壁には、シャフト部3aの雌ねじ部34と螺合する雄ねじ部37が設けられている。よって、刃先交換部3bは、雄ねじ部37を雌ねじ部34と螺合させることによりシャフト部3aの先端に固定され、螺合を解除することによりシャフト部3aから取り外される。このように刃先交換部3bはシャフト部3aに対して着脱可能であり、必要に応じて刃先交換部3bを交換することができる。なお、シャフト部3aと刃先交換部3bとが一体的に構成されてあってもよい。
【0025】
このような穿孔装置1を用いて、例えば図1に示すように、穿孔対象物5に穴6を開ける穿孔作業方法について説明する。穿孔対象物5は、コンクリート、石材、タイル、モルタル等で形成されており、例えば、壁、床、天井などの構造物の一部である。
【0026】
本実施形態では、作業者が穿孔装置1を手で持って、穿孔対象物5の所定箇所に穴あけ作業を行う。このとき、ドリルビット3の先端の切れ刃36に、水溶性でかつジェル状の冷却剤4を付着させて穴あけ作業を行う。
【0027】
冷却剤4は、例えば、アルコール等の水溶性有機溶剤を主成分とし、増粘剤として親水性高分子化合物を含んでいる。このような冷却剤4としては、例えば、エタノール(水溶性有機溶剤)を80vol%程度含み、カルボキシビニルポリマー(増粘剤)を含むものを用いることができ、さらに、トリエタノールアミン、ブチレングリコール、アラントイン等を含むものでもよい。
【0028】
このような冷却剤4としては、常温において、ドリルビット3の先端を容器に入った冷却剤4に浸して取り出すことによって先端の切れ刃36に冷却剤4を付着させることができる程度の低粘度のジェル状のものを用いることができる。
【0029】
図3は、本実施形態の穿孔作業方法による作業手順の一例を示す流れ図である。
【0030】
この穿孔作業方法によれば、まず、作業者は、穿孔装置1のドリルビット3の先端を冷却剤4の中につけて取り出すことにより、ドリルビット3の先端の切れ刃36に冷却剤4を付着させる(ステップS1、冷却剤供給工程)。
【0031】
次に、作業者は、ドリルビット3の先端を穿孔対象物5の穴をあける所定箇所に当てて、トリガースイッチ25を指で引いて電気ドリル2を駆動させ(ドリルビット3を回転させ)、穿孔対象物5を切削して穴あけを行う(ステップS2、切削工程)。
【0032】
そして、作業者は、穴あけが終了したと判断するまで、ステップS1とステップS2との作業を繰り返す(ステップS3)。このとき、作業者は、切れ刃36が高温になって損傷するのを防止するために、例えば、数秒ないし数十秒の間、穴あけを行った後、再度、冷却剤4を付着してから穴あけを行うようにする。なお、穴の大きさ等によっては、一回のステップS1とステップS2とで穴あけが終了する場合もあり得る。
【0033】
本実施形態では、水溶性でかつジェル状の冷却剤4を用いている。このように冷却剤4がジェル状であるので、冷却剤4をドリルビット3の先端に容易に付着させることができ、この付着させた状態で穴あけを行うことにより、ドリルビット3の回転速度が速くても先端の切れ刃36が高温になるのを抑えて損傷を防止し、作業時間の短縮を図ることができる。また、冷却剤4は液状ではなくジェル状であるため、冷却剤4を用いる量が少量で済み、穿孔部分の周囲の汚れを抑えることができる。さらに、冷却剤4が水溶性であるので、穴あけ終了後には、穿孔部分に残存する冷却剤4を水で湿らせた布等で容易にふき取ることができ、清掃を簡単に行える。よって、従来の湿式タイプのような冷却剤の供給手段や回収手段が無く、簡単な構成の穿孔装置1を用いて、穿孔部分の周囲の汚れを抑え、かつ作業時間の短縮を図ることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、冷却剤供給工程(ステップS1)と切削工程(ステップS2)とを交互に行うようにしているが、冷却剤供給工程が切削工程と同時に、例えば、切削工程中に冷却剤供給工程が行われるように、穿孔装置1が構成されていてもよい。例えば、穿孔装置1が、従来の湿式タイプに用いられているような冷却剤の供給手段を有し、コア排出窓33の無いドリルビット3が回転中(切削中)に、冷却剤4がドリルビット3内を流れて、その先端へ間欠的あるいは連続的に少量の冷却剤4が供給されるように構成されていてもよい。また、例えば、コア排出窓33の無いドリルビット3の内部に冷却剤4が充填され、ドリルビット3が回転中(切削中)にその先端へ冷却剤4が押し出されるように構成されていてもよい。これらいずれの場合も、冷却剤を供給するための構成は必要になるが、従来の湿式タイプに用いられているような冷却剤の回収手段は設けなくてもよい。
【0035】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、簡単な構成の穿孔装置を用いて、穿孔部分の周囲の汚れを抑え、かつ作業時間の短縮を図ることができる穿孔作業方法等に有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 穿孔装置
2 電気ドリル
3 ドリルビット
4 冷却剤
5 穿孔対象物
6 穴
36 切れ刃
図1
図2
図3