【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例における、2台のサーボモータを並列運転するサーボシステムの概略構成図である。
【0013】
図1において、第1のサーボモータ3および第2のサーボモータ13が、負荷5において、ギア、タイミングベルト等によって機械的に結合されているものとする。また、第1の交流電源4及び第2の交流電源14からの電圧を所望周波数の交流電圧に変換して、それぞれ第1のサーボモータ3及び第2のサーボモータ13に供給し駆動する第1のサーボアンプ1及び第2のサーボアンプ11を有している。また、第1のサーボモータ3及び第2のサーボモータ13には第1の位置センサ2及び第2の位置センサ12が接続され、第1の位置センサ2及び第2の位置センサ12の出力がそれぞれ第1のサーボアンプ1及び第2のサーボアンプ11に入力されている。
【0014】
第1のサーボアンプ1は、第1の交流電源4に接続された、第1の整流部102、第1の蓄電部103、第1の電力変換部104、第1の演算部101で構成される。また、第2のサーボアンプ11も、同様に、第2の整流部202、第2の蓄電部203、第2の電力変換部204、第2の演算部201で構成される。
【0015】
第1の整流部102及び第2の整流部202は、例えばダイオードで構成された直流変換回路やIGBTとフライホイールダイオードを用いた直流変換回路で構成され、第1の交流電源4及び第2の交流電源14から入力された交流電圧を、直流電圧に変換し、第1の蓄電部103及び第2の蓄電部203に出力する。
【0016】
第1の蓄電部103及び第2の蓄電部203は、第1の整流部102及び第2の整流部202から入力された直流電圧を平滑化し、第1の電力変換部104及び第2の電力変換部204に直流電圧を出力する。
【0017】
第1の電力変換部104及び第2の電力変換部204は、例えばIGBTとフライホイールダイオードを用いた交流変換回路で構成され、第1の蓄電部103及び第2の蓄電部203の直流電圧と、第1の制御部101及び第2の制御部201の出力指令を入力とし、直流電圧を交流電圧に変換し、変換した所望周波数の交流電圧を第1のサーボモータ3及び第2のサーボモータ13に供給する。
【0018】
第1の制御部101及び第2の制御部201は、第1のサーボモータ3及び第2のサーボモータ13を駆動するために与えられた指令から演算された出力指令に従い、第1の電力変換部104及び第2の電力変換部204にPWM出力指令を与える。
【0019】
次に、磁極位置異常検出の動作について説明する。
【0020】
まず、第1のサーボアンプ1における第1の蓄電部103の端子間電圧であるP−N電圧を第1の制御部101で検出する。また、同様に、第2のサーボアンプ11における第2の蓄電部203の端子間電圧であるP−N電圧を第2の制御部201で検出する。ここで、第2のサーボアンプ11は第1のサーボアンプ1からの制御指令に基づき制御されるとすると、第2の制御部201で検出したP−N電圧を第1の制御部101に伝送し、第1の制御部101で両者のP−N電圧値を比較する。そして、その比較結果で不一致状態が一定時間続いた場合に、第1の制御部101は、第1のサーボモータ3あるいは第2のサーボモータ13が磁極位置異常状態にあると判定する。
【0021】
また、第1のサーボアンプ1では、トルク出力推定値および第1の位置センサ2の速度検出値から、第1のサーボモータ3が力行状態(トルク出力推定値と速度検出値の方向が一致している場合、P−N電圧は下降する。)あるいは回生状態(トルク出力推定値と速度検出値の方向が逆の場合、P−N電圧は上昇する。)のいずれかを判別し、第1の蓄電部103のP−N電圧から推定する力行/回生の判断と、上記トルク出力推定値および第1の位置センサ2の速度検出値から推定する力行/回生の判断とが不一致であれば、第1のサーボモータ3が異常軸であると推定する。
【0022】
同様に、第2のサーボアンプ11では、トルク出力推定値および第2の位置センサ12の速度検出値から、第2のサーボモータ13が力行状態あるいは回生状態のいずれかを判別し、第2の蓄電部203のP−N電圧から推定する力行/回生の判断と上記トルク出力推定値および第2の位置センサ12の速度検出値から推定する力行/回生の判断とが不一致であれば、第2のサーボモータ13が異常軸であると推定する。
【0023】
図2に力行区間(a)と回生区間(b)のある機械を一定速で運転した場合を例にとり、P−N電圧の挙動を説明する。
【0024】
図2において正常時の挙動を実線で示す。
図2に示すように、正常時は、機械出力および回生エネルギーを2台のモータで分担するため、第1の畜電部103のP−N電圧1と、第2の畜電部203のP−N電圧2はバランスする。
【0025】
図2において、異常時の挙動として、第1のサーボモータ3に磁極位置異常が発生した場合を例にとり、点線で示す。
図2に示すように、磁極位置異常により、第1のサーボモータ3では所定のトルクが得られず、機械出力及び回生エネルギーを均等に分担できず、第1の畜電部103のP−N電圧1と、第2の畜電部203のP−N電圧2は異なる挙動となる。すなわち、P−N電圧の増加と減少の傾向が不一致となる。この不一致状態が一定時間継続することで、少なくともどちらかのサーボモータが磁極位置異常状態にあることを検出できる。
【0026】
このとき、各サーボモータの出力が干渉することで、出力トルクは増加するため、過負荷異常、異常過熱等を引き起こす可能性がある。また正常軸のP−N電圧の変化が大きくなり、不足電圧異常、過電圧異常を引き起こす可能性がある。
【0027】
このように、複数のサーボアンプのP−N電圧を各々モニタし、比較することで、磁極位置異常を検出する。
【0028】
なお、サーボアンプがDCバスで接続されている場合は、P−N電圧をサーボモータ毎に分離測定することが難しいため、PラインあるいはNラインの電流値をモニタし、比較することで、磁極位置異常を検出する。
また、サーボアンプからの出力電流値(トルク出力推定値)と速度検出値の極性から、サーボモータが力行状態にあるか、あるいは回生状態にあるかを判別し、P−N電圧の変化から推定する力行/回生の判断と比較することで、ずれが電気角90°を超えた異常軸を推定する。なお、3台以上のサーボモータが並列化されたシステムでは、P−N電圧との比較結果において、少数派を異常軸とすることで、ずれが90°に満たない異常軸を推定する。
【0029】
なお、トルク推定値1とトルク推定値2は、正常状態・異常状態であってもバランスするため、比較しても磁極位置異常を検出することはできない。
【0030】
磁極位置の異常を検出した場合には、どの軸が異常かは判別できないが、正常なサーボモータにより、サーボシステムが運転継続できているので、これを理由に停止することなく生産は継続できる。しかし、無駄な電力を消費している可能性があるので、運転を停止せずに警告を発することで、早い対策を促すことが出来る。
【0031】
また、サーボアンプ内に表示部と記憶部を有し、警告を発した履歴を記憶部に保持し、次回運転開始時に、警告を発した履歴があれば、磁極位置合わせの要求を表示部に表示するようにしてもよい。または、警告を発した履歴があれば、一度運転を解除して磁極位置合わせを行わないと運転できないようにしてもよい。
【0032】
このように、複数のサーボアンプのP−N電圧を比較することで、磁極位置異常を検出する。また、夫々のサーボアンプからの出力トルクと速度検出値に基づき、磁極位置異常を検出して異常軸を推定する。これにより、磁極位置異常の発生を速やかに検出することで、無駄な電力消費を抑えることができる。また、磁極位置異常が発生したサーボモータを推定することで、不稼働時間の拡大を抑えることができる。
【実施例2】
【0033】
実施例1では、磁極位置異常検出をサーボアンプの制御部に適用した場合について説明したが、本実施例は、上位装置で磁極位置異常検出を行う場合について説明する。
【0034】
図3は、本実施例における、2台のサーボモータを並列運転するサーボシステムの概略構成図である。
図3において、
図1と同様の機能を有する構成については同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0035】
図3において、
図1と異なる点は、磁極位置異常の検出装置6をサーボアンプの上位装置で行う点である。
すなわち、第1の蓄電部103及び第2の蓄電部203の端子間電圧であるそれぞれのP−N電圧を第1の制御部101及び第2の制御部201で検出し、各P−N電圧値を第1の制御部101及び第2の制御部201から磁極位置異常の検出装置6に伝送し、磁極位置異常の検出装置6内で比較する。そして、磁極位置異常の検出装置6は、両者の不一致状態が一定時間続いた場合に、第1のサーボモータ3あるいは第2のサーボモータ13が磁極位置異常状態にあると判定する。
【0036】
また、磁極位置異常の検出装置6は、第1のサーボアンプ1及び第2のサーボアンプ11での、トルク出力推定値および第1の位置センサ2または第2の位置センサ12の速度検出値から、第1のサーボモータ3または第2のサーボモータ13が力行状態か回生状態かの判別結果を受信し、P−N電圧から推定する力行/回生の判断と、トルク出力推定値および位置センサの速度検出値から推定する力行/回生の判断とが不一致であれば、第1のサーボモータ3または第2のサーボモータ13が異常軸であると推定する。なお、磁極位置異常の検出装置6は、トルク出力推定値および第1の位置センサ2または第2の位置センサ12の速度検出値を受信し、トルク出力推定値および位置センサの速度検出値から推定する力行/回生の判断を磁極位置異常の検出装置6内で行っても良い。
【0037】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、2台のサーボモータを並列運転するサーボシステムについて説明したが、3台もしくは複数台のサーボモータを並列運転する場合でも適用できる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。