(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1に記載されたロータリージョイントにおいては、回転体に取り付けられたローターの一端部から他端部側に向けて、一対の軸受けとスペーサとが配設された後に上記シール部材がローターの周囲を覆うように設けられており、このシール部材よりも他端部側では、ローターの他端面に嵌合したシートリングに上記シールリングが軸線方向に押圧されて押し付けられているだけである。
【0005】
しかしながら、例えばスチームチューブドライヤーや加熱ロールにおけるロータリージョイントでは、通常はローターの軸線が横方向に向けられて使用されるため、このようにシール部材の他端部側でシールリングが軸線方向にローターに押し付けられているだけであると、特に他端部側の軸受けからシールリングまでのローターの長さが長い場合には、ローターの重さによってシール部材の下側部分が大きく摩耗する偏摩耗が生じ易い。そして、このような偏摩耗が顕著になると、シール部材がシールすべき対象物(特許文献1に記載のロータリージョイントでは、一対の軸受けに供給するグリース)の漏れを生じることになる。
【0006】
そこで、本発明の発明者等は、先に特願2015−101755において、このような課題を解決するために、一端部が回転体の回転軸と同軸に取り付けられて軸線回りに回転させられる円筒状のローターと、このローターの外周に配設されるケーシングとを備え、これらローターとケーシングとの間には、上記ローターと上記ケーシングとの間をシールする複数組のシール材と、上記ローターを上記ケーシングに回転自在に支持する上記シール材の組数と同数の軸受け部材とが、上記ローターの一端部から他端部側に向けて上記シール材、上記軸受け部材の順で交互に介装されているロータリージョイントを提案している。
【0007】
このようなロータリージョイントでは、ローターとケーシングとの間に、これらローターとケーシングとの間をシールする複数組のシール材と、ローターをケーシングに回転自在に支持するシール材組数と同数の複数の軸受け部材とが、ローターの一端部から他端部側に向けてシール材、軸受け部材の順で交互に介装されているので、回転体に取り付けられて支持されるローターの一端部の次に他端部側に介装されたシール材においては、その次に他端部側に位置する軸受け部材と上記一端部とによってローターの軸線方向両側が支持されることになる。
【0008】
さらに、このローターの一端部の次のシール材よりも他端部側に介装されるシール材では、その軸線方向の両側においてローターが2つの軸受け部材によって支持されるので、軸線が横方向に向けられるロータリージョイントであっても、ローターの重さによってシール材の下側部分に偏摩耗が生じるのを避けることができる。従って、このような偏摩耗が大きくなってシール材がシールすべき対象物の漏れが発生するのを防ぐことができ、長期に亙って安定的な回転体による加熱や乾燥等の処理を図ることができる。
【0009】
ところで、上記回転体がスチームチューブドライヤーや加熱ロールの場合、熱媒体としては通常高温の水蒸気が供給され、回転体において被加熱物を加熱した後に高温水等の液媒として排出されるが、このようなスチームチューブドライヤーや加熱ロールでは、排出される液媒の排出量が一定とはならずに脈動している。ところが、上記特願2015−101755に記載されたロータリージョイントでは、液媒が排出されるローター内の排出室の排出口より上記軸線方向の他端部側に離れた位置にもグランドパッキン等のシール材がローターとケーシングとの間に介装されており、上述のように軸線が横方向に向けられたロータリージョイントでは、回転するローターの下側に開口した排出口から液媒がローターの外周面を伝わってシール材に到達し、漏れを生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、このような背景の下になされたもので、ローターとケーシングの間に、上記排出口から上記軸線方向に離れた位置にシール材が配設されていても、シール材からの液媒の漏れが生じるのを防ぐことが可能なロータリージョイントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、一端部が回転体の回転軸と同軸に取り付けられて軸線回りに回転させられる円筒状のローターと、このローターの外周に配設されるケーシングとを備え、上記ローターの内部には、該ローターの上記軸線方向の一端部に開口して上記回転体から排出された液媒が流通する流路と、この流路の他端部に連通して上記液媒が排出される排出口が上記ローターの外周部に開口するように形成された排出室とが設けられるとともに、上記ケーシングには、上記排出口に連通する連通室が形成されており、上記ローターとケーシングの間には、上記排出口から上記軸線方向に離れた位置に、該ローターとケーシングとの間をシールするシール材が配設されていて、上記軸線方向において上記ローターの上記排出口と上記シール材との間には、該ローターの上記外周部から突出する遮蔽部材が設けられて
おり、上記遮蔽部材は、上記排出口の周りから突出する筒状部材であることを特徴とする。
【0012】
このように構成されたロータリージョイントでは、ローターの外周部に開口する排出室の排出口と上記シール材との間に、ローターの外周部から突出する遮蔽部材が設けられているので、ローターの下側に開口した排出口から液媒がローターの外周面を軸線方向に伝わっても、この軸線方向に離れた位置にあるシール材に到達するのを上記遮蔽部材によって防ぐことができる。このため、シール材から液媒が漏れ出るのを防ぐことができて、スチームチューブドライヤーや加熱ロールにおいて安定した被加熱物の加熱等の処理を行うことができる。
【0013】
さらに、本発明では、上記遮蔽部材
が、上記排出口の周りから外周側に突出する筒状部材と
されており、多量の液媒が排出されても四散して跳ね散らかるのを防ぐことができ、このような跳ねによって液媒がシール材に到達してしまうのも防ぐことができる。
【0014】
一方、上記流路の上記軸線方向における他端部を、上記排出室内において上記軸線方向の他端部側に突出させることによっても、流路を長く確保することができて液媒の排出量の脈動を吸収し、ケーシングの連通室に排出される液媒の排出量の均一化を図って排出室に液媒が滞留することによるシール材からの漏れを防ぐことができる。しかも、液媒が連通室に到達するまでの時間も長く確保して連通室に流入する流速も抑えることができるので、高速で連通室に流入した液媒が跳ね散らかることによってシール材に到達することによる漏れも防ぐことができる。
【0015】
特に、この場合には、上記流路の上記軸線方向における他端部を、上記排出室内において上記排出口の上記軸線方向の他端部側の縁部よりも突出させることにより、流路の他端部から一旦排出口よりも他端部側に排出された液媒が軸線方向の一端部側に戻って排出口から連通室に排出されることになるので、液媒の排出量の一層の均一化を図るとともに連通室への到達時間をさらに長くし、シール材への到達による漏れを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、ローターとケーシングの間において排出室から連通室への排出口から軸線方向に離れた位置にシール材が配設されていても、このシール材に液媒が到達して漏れが生じるのを防ぐことができ、回転体における安定した処理を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および
図2は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態のロータリージョイントは、その主要な部材が鋼材等の金属材料により形成されており、このうちローター1は、後述する取付部とフランジ部を除いて一定の外径の軸線Oを中心とした円筒状をなしている。また、ローター1の軸線O方向の一端部1A(
図1において左下側部分、
図2においては左側部分)には、やはり軸線Oを中心とするローター1よりも一段小さな外径の円筒状の内管2が挿入されていて、軸線Oを含む平面に沿って径方向に延びる支持板3により支持されており、ローター1と内管2との間の空間と内管2内の空間は、このローター1の一端に開口している。
【0019】
また、ローター1の一端部1Aの外周には円環板状の取付部4が設けられており、この取付部4を介して一端部1Aが図示されないスチームチューブドライヤーのドライヤー本体や加熱ロールのロール本体のような回転体の回転軸線と同軸に取り付けられることにより、ローター1は回転体と連結されて軸線O回りに一体に回転させられる。そして、ローター1の内管2内の空間は、この回転体の熱媒体排出側に接続されて熱媒体(液媒)の本実施形態における流路である排出流路5とされる一方、ローター1と内管2との間の空間は、回転体の熱媒体供給側に接続されて熱媒体の供給流路6とされる。
【0020】
なお、ローター1の一端部1Aにおいて、軸線O方向における該一端部1Aとは反対のローター1の他端部1B側(
図1において右上側、
図2においては右側)では、供給流路6は第1の隔壁7Aによって封止されていて、排出流路5と供給流路6とは気密に隔絶されている。さらに、本実施形態では、内管2は第1の隔壁7Aから上記他端部1B側に突出している。また、ローター1内の上記第1の隔壁7Aから他端部1B側に間隔をあけた位置には第2の隔壁7Bが設けられ、ローター1内のこれら第1、第2の隔壁7A、7Bの間の部分は上記排出流路5に連通する熱媒体の排出室8とされる。
【0021】
一方、第2の隔壁7Bよりも他端部1B側の部分は、排出室8および排出流路5とは隔絶された放熱室9とされている。この放熱室9は、ローター1の他端面に円形の開口部9Aを有して外部に開口し、すなわち大気に開放されている。なお、ローター1には、供給流路6と排出室8の位置に、軸線Oに垂直に延びる貫通孔が周方向に間隔をあけて複数形成されていて、それぞれ熱媒体の供給口6Aおよび排出口8Aとされている。ここで、本実施形態では、上述のように第1の隔壁7Aから突出した上記内管2は、排出口8Aの上記軸線O方向における他端部側の縁部よりも他端部側に突出している。
【0022】
また、本実施形態では、ローター1の他端部1B側に、軸線Oに対する径方向の外周側に張り出すフランジ部10が設けられている。このフランジ部10は、その中央部に放熱室9の開口部9Aと同径の開口部10Aを有するローター1よりも外径の大きな円環板状に形成され、これらの開口部9A、10Aを一致させるようにして、軸線Oに垂直に該軸線Oを中心としてローター1の他端に配設されている。
【0023】
このようなローター1の外周には、上述のように軸線O回りに回転させられるローター1に対して非回転に固定されるケーシング11が配設され、ローター1はこのケーシング11内に回転自在に支持される。このケーシング11は、ローター1の外径よりも大きな内径を有する軸線Oを中心とした円筒状をなしていて、その軸線O方向における一端と他端には、ローター1が挿入可能な内径の軸線Oを中心とした貫通孔12A、13Aを有する軸線Oに垂直な第1、第2の仕切り壁12、13が設けられるとともに、これら第1、第2の仕切り壁12、13の間には、貫通孔12A、13Aよりも僅かに大きな貫通孔14Aを有する第3の仕切り壁14が設けられている。また、ケーシング11の他端部外周には外周側に張り出すケーシングフランジ部11Aが設けられている。
【0024】
このうち、第1、第3の仕切り壁12、14の間の軸線O方向一端部側の空間は、ローター1の供給口6Aを介して供給流路6に連通する供給連通室15とされ、この供給連通室15の位置におけるケーシング11の外周には、供給連通室15に連通してロータリージョイントへの熱媒体の供給経路に接続される供給管15Aが設けられている。また、第2、第3の仕切り壁13、14の間の軸線O方向他端部側の空間は、ローター1の排出口8Aを介して排出室8および排出流路5に連通する本実施形態における連通室である排出連通室16とされ、この排出連通室16の位置におけるケーシング11の外周には、排出連通室16に連通してロータリージョイントからの熱媒体の排出経路に接続される排出管16Aが設けられている。
【0025】
なお、これら供給管15Aと排出管16Aはそれぞれ、その中心線が供給口6Aと排出口8Aの中心線と軸線O方向において同じ位置に配設されるとともに、その内径は供給口6Aと排出口8Aの内径よりも大きくされている。また、供給管15Aの内径は排出管16Aの内径よりも大きくされるとともに、供給管15Aと排出管16Aとは、ケーシング11の周方向には互いに反対側に位置するように設けられている。
【0026】
また、ケーシング11の第1、第2の仕切り壁12、13には、その貫通孔12A、13Aとローター1の外周面との間に、複数組(2組)の第1、第2のシール材17A、17Bが介装されている。従って、このうち第2のシール材17Bは、排出口8Aから軸線O方向の他端部側に離れた位置に配設される。これらのシール材17A、17Bは、本実施形態ではグランドパッキンであって、特に断面が角形で膨張黒鉛とカーボンファイバーの編組紐よりなる、いわゆる編組グランドパッキンである。
【0027】
ここで、本実施形態では、上記第1、第2の仕切り壁12、13のそれぞれ軸線O方向外側において貫通孔12A、13Aが一段拡径するようにしてシール取付部12B、13Bが設けられており、これらのシール取付部12B、13Bの内周面とローター1の外周面との間に形成される空間(スタッフィングボックス)に、複数の上述のような編組グランドパッキンが軸線O方向に詰め込まれて各1組ずつの第1、第2のシール材17A、17Bが構成された上で、断面L字の環状をなすパッキン押さえ18によって締め付けられることにより熱媒体がシールされる。
【0028】
また、本実施形態では、上記第3の仕切り壁14の貫通孔14Aとローター1の外周面との間には、上記シール材17の組数と同数(2つ)の複数の軸受け部材の1つとして、第1の軸受け部材19が介装されている。この第1の軸受け部材19は、本実施形態では滑り軸受け(ブッシュ)であって、特に断面L字の環状をなす鋳鉄等の母材に潤滑剤(潤滑油)を含浸させた含油軸受けであり、貫通孔14Aの内周面とローター1の外周面との間に嵌め入れられて第3の仕切り壁14にボルト止め等によって取り付けられ、回転するローター1が内周面に摺接することにより支持される。
【0029】
一方、ケーシング11の他端には、ローター1の外周側に間隔をあけて筒状に延びる延出部20が設けられている。この延出部20は、軸線Oを中心とした外形が円筒状をなす胴部20Aと、この胴部20Aの上記軸線O方向の両端から外周側に張り出す円環板状の延出フランジ部20B、20Cとを備え、軸線O方向の一端側の延出フランジ部20Bがケーシングフランジ部11Aに固定されてケーシング11の他端に取り付けられる。ケーシング11の第2の仕切り壁13側のシール取付部13B、第2のシール材17Bおよびパッキン押さえ18は胴部20Aの内側に配設されるとともに、延出部20の他端側の延出フランジ部20Cはローター1のフランジ部10と軸線O方向に間隔をあけて対向している。
【0030】
そして、この延出フランジ部20Cとローター1のフランジ部10との間には、本実施形態における複数の軸受け部材の他の1つとして、第2の軸受け部材21が介装されている。この第2の軸受け部材21は、本実施形態では旋回ベアリング(転がり軸受け)であって、すなわちフランジ部10と延出フランジ部20Cとのうち一方に取り付けられる内輪および他方に取り付けられる外輪と、これら内外輪の間に転動可能に介装されるボールのような転動体とを備えた例えばボールベアリングであり、転動体が転がる内外輪の間にはグリース等の潤滑剤が封入される。
【0031】
このような第2の軸受け部材21は、外周側に張り出したフランジ部10と延出フランジ部20Cの外周部に上記内外輪が取り付けられて、
図2に示すように軸線Oに対する径方向においてケーシング11の供給、排出連通室15、16よりも外周側に、また軸線O方向においては、上記第2のシール材17Bよりもローター1の他端部1B側に、軸線Oを中心とする環状に配設されている。
【0032】
従って、本実施形態では、ローター1とケーシング11との間をシールする複数組(2組)の第1、第2のシール材17A、17Bと、ローター1をケーシング11に回転自在に支持する第1、第2のシール材17A、17Bの組数と同数(2つ)の第1、第2の軸受け部材19、21とが、回転体に取り付けられるローター1の一端部1Aから他端部1B側に向けて、第1のシール材17A、第1の軸受け部材19、第2のシール材17B、第2の軸受け部材21の順で交互に介装されることになる。
【0033】
また、このうち軸線O方向の他端側に位置する第2の軸受け部材21は、熱媒体の流路であるローター1の排出流路5、供給流路6、および排出室8と、これらに連通する連通室であるケーシング11の供給連通室15および排出連通室16から、上記放熱室9と延出部20が設けられることによって軸線O方向の他端部1B側に離れた位置に配設されるとともに、フランジ部10と延出フランジ部20Cが設けられることによって軸線Oに対する径方向の外周側にも離れた位置に配設される。
【0034】
さらに、延出部20には、軸線Oに対する径方向の外周側に突出するフィン22と、軸線Oに対する径方向に該延出部20を貫通する開口部23とが設けられている。本実施形態では、延出部20の胴部20Aの外周に複数(4つ)のフィン22が周方向に等間隔に設けられるとともに、これらのフィン22の間に、やはり複数(フィン22と同数の4つ)の開口部23が周方向に等間隔に設けられている。
【0035】
フィン22は、延出部20の胴部20A外周から軸線Oを含む平面に沿って径方向に一定の突出量で延びるとともに、軸線O方向には延出フランジ部20B、20C間に亙って延びる平板状に形成されている。また、開口部23は、延出フランジ部20B、20Cとフィン22との間に小さな間隔をあけて、延出部20の胴部20Aを略全体的に切り欠くように径方向に貫通しており、従って個々の開口部23は外周側から見て長方形状に形成される。
【0036】
そして、さらに本実施形態では、ローター1の排出口8Aと、この排出口8Aから軸線O方向の他端部側に離れた位置に配設される第2のシール材17Bとの間に、ローター1の外周部から突出する遮蔽部材8Bが設けられている。この遮蔽部材8Bは、本実施形態では複数の排出口8Aの周りそれぞれから外周側に突出する短い円管等の筒状部材であって、例えばネジ込みや溶接等により接合されて排出口8Aの周りに固定されており、その外周端は排出連通室16の内周面との間に間隔をあけている。
【0037】
このような本実施形態のロータリージョイントにおいて、供給管15Aからケーシング11の供給連通室15に供給された高温の蒸気等の熱媒体は、上述のように軸線O回りに回転させられるローター1の供給口6Aから供給流路6を通り、例えばスチームチューブドライヤーの回転するドライヤー本体のような回転体の熱媒体供給側の加熱管に供給されて被処理物の加熱、乾燥に用いられる。また、こうして被処理物の加熱、乾燥に用いられた熱媒体は、凝集して高温の水のような液媒となって回転体の熱媒体排出側からローター1の排出流路5に排出され、排出室8から排出口8Aおよび遮蔽部材8B内を通り排出連通室16および排出管16Aを介して排出される。
【0038】
そして、上記構成のロータリージョイントでは、ローター1の外周部に開口する熱媒体(液媒)の排出口8Aと、この排出口8Aから軸線O方向に離れた位置に配設された第2のシール材17Bとの間に、ローター1の外周部から突出する遮蔽部材8Bが設けられているので、ローター1の下側に開口した排出口8Aから液媒がローター1の外周面を軸線O方向に伝わっても、この軸線O方向に離れた位置に配設された第2のシール材17Bに到達するのを遮蔽部材8Bによって遮って防ぐことができる。このため、第2のシール材17Bから液媒が漏れ出るのを防ぐことができ、スチームチューブドライヤーや加熱ロールにおおける被加熱物の加熱等の処理を安定的に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、この遮蔽部材8Bとして、上記排出口8Aの周りからローター1の外周側に突出する円管等の筒状部材が設けられている。この点、排出口8Aと第2のシール材17Bとの間を遮蔽可能であれば、例えばローター1の外周部の全周において排出口8Aと第2のシール材17Bとの間に張り出した円環板状の板壁部材や、このような板壁部材の外周に軸線O方向の一端部側に折れ曲がる返しの付いた断面L字状の環状部材
を用いることも考えられるが、本実施形態のような筒状部材を用いることにより、多量の液媒が排出口8Aから排出されても四散して排出連通室16内で跳ね散らかるのを防ぐことができるので、このような跳ねによって液媒が第2のシール材17Bに到達してしまうのも防ぐことができる。
【0040】
一方、本実施形態では、ローター1内に挿入された内管2の軸線O方向の他端部が排出室8内において第1の隔壁7Aから軸線O方向他端部側に突出しており、これに伴い排出流路5も排出室8の軸線O方向他端部側に突出することになる。従って、この排出流路5の長さを長くすることにより、液媒の排出量の脈動を吸収して均一化を図ることができるので、多量の液媒が排出されることによって排出連通室16内に滞留して第2のシール材17Bに達し、漏れが生じるような事態も防ぐことができる。また、こうして排出流路5が長くなることにより、液媒が排出連通室16に到達するまでの時間も長く確保して排出連通室16への流入速度も抑えることができ、高速で排出連通室に流入した液媒が跳ね散らかることによって第2のシール材17Bに到達することも防ぐことができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、こうして排出室8に突出した排出流路5の他端部が、排出室8内における排出口8Aの軸線O方向他端部側の縁部よりも突出しており、このため排出流路5の他端部から排出される液媒は、排出流路5内を排出口8Aよりも一旦軸線O方向の他端部側に通り過ぎた後に排出され、排出室8内を軸線O方向の一端部側に戻ってから排出口8Aより排出されることになる。従って、その間に液媒の排出量をさらに均一化させるとともに排出連通室16への到達時間をより長くして、第2のシール材17Bへの到達による漏れを一層確実に防ぐことができる。
【0042】
一方、本実施形態のロータリージョイントでは、上記特願2015−101755に記載されたロータリージョイントと同様に、ローター1とケーシング11の第1、第2の仕切り壁12、13の貫通孔12A、13Aとの間をシールする第1、第2のシール材17A、17Bと、ローター1をケーシング11に回転自在に支持する第1、第2の軸受け部材19、21とが、ローター1の一端部1Aから他端部1B側に向けて交互に介装されている。従って、第1のシール材17Aの軸線O方向両側においてローター1は回転体と第1の軸受け部材19によって支持されるとともに、第2のシール材17Bの軸線O方向両側においてはローター1が第1、第2の軸受け部材19、21によって支持されることになる。
【0043】
このため、スチームチューブドライヤーや加熱ロールのロータリージョイントのようにローター1の軸線Oが横方向に向けられる場合に、回転体に取り付けられる上記取付部4と第1の軸受け部材19との軸線O方向の間隔や、第1、第2のシール材17A、17Bの軸線O方向の間隔が大きくても、ローター1の重さによって第1、第2のシール材17A、17Bの下側部分に上側部分よりも大きな偏摩耗が生じるのを避けることができる。従って、このような偏摩耗がローター1の回転に伴い大きくなって第1、第2のシール材17A、17Bがシールすべき対象物(本実施形態では、供給連通室15および排出連通室16に供給、排出された熱媒体)に漏れが生じるのを防ぐことができるので、回転体による加熱や乾燥等の処理を長期に亙って安定的に行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では、1つのローター1に熱媒体の排出流路5および排出室8と供給流路6とが形成されるとともに、ケーシング11には排出流路5および排出室8に連通する排出連通室16と供給流路6に連通する供給連通室15とが形成されていて、回転体への熱媒体の供給と排出とを同時に行うようにしている。そして、軸線O方向に隣接したケーシング11の供給連通室15と排出連通室16とを仕切る第3の仕切り壁14の貫通孔14Aとローター1との間には、本実施形態における第1の軸受け部材19として、滑り軸受けが介装されている。
【0045】
このため、本実施形態によれば、この第1の軸受け部材19によって、上述のように第1、第2のシール材17A、17Bの偏摩耗を防ぎつつ、隣接した供給連通室15と排出連通室16との間の熱媒体の漏れも抑えることができる。特に、本実施形態における第1の軸受け部材19は含油軸受けであるので、含浸された潤滑剤(潤滑油)の油膜によって熱媒体の漏れ防止効果も高い。
【0046】
なお、グランドパッキンよりなる第1、第2のシール材17A、17Bのような弾性のない滑り軸受け(ブッシュ)よりなる第1の軸受け部材19によってローター1を回転自在に支持するには、この第1の軸受け部材19とローター1の外周面の間に僅かなクリアランスが必要となるが、この第1の軸受け部材19が介装される第3の仕切り壁14によって仕切られた供給連通室15と排出連通室16に流通するのは、スチームチューブドライヤー等ではともに高温の蒸気であるので、このクリアランスから僅かな熱媒体の漏れがあっても問題にはならない。
【0047】
さらに、本実施形態では、上述のように第1、第2のシール材17A、17Bに偏摩耗が生じるのを避けることができるため、これら第1、第2のシール材17A、17Bとして、例えば特許文献1に記載されたような特殊カーボン製のシールリングを用いることなく、比較的安価で調整や交換が容易なグランドパッキンを用いることが可能となる。このため、そのようなロータリージョイントによれば、メンテナンス性の向上とコストの削減を図ることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、グランドパッキンである第1、第2のシール材17A、17Bとして、上述のように編組グランドパッキンを用いているが、例えば
図3に示す上記実施形態の変形例のように、1つまたは複数のダイモールドグランドパッキンをそれぞれ1組の第1、第2のシール材24A、24Bとして用いてもよい。ここで、この
図3に示す変形例において、これら第1、第2のシール材24A、24B以外の上記実施形態と共通する部分には同一の符号を配してある。
【0049】
また、本実施形態のロータリージョイントでは、高温の熱媒体が流通する流路であるローター1の供給流路6、排出流路5、および排出室8と、これらに連通して同じく高温の熱媒体が流通する連通室であるケーシング11の供給連通室15および排出連通室16に対して、ローター1を回転可能に支持する複数の軸受け部材19、21のうち最も他端部側の第2の軸受け部材21が、軸線O方向のローター1における他端部1B側と軸線Oに対する径方向の外周側とのうち少なくとも一方(本実施形態では双方)の側に離れた位置に配設されている。
【0050】
従って、供給流路6、排出流路5、および排出室8と供給連通室15および排出連通室16からの熱が第2の軸受け部材21に伝達する前に放散するため、第2の軸受け部材21として本実施形態のような一般的な旋回ベアリング(転がり軸受け)をそのまま用いても、潤滑剤が失われることなどによって焼き付きを生じるようなことがなく、ローター1を安定して軸線O回りに回転自在に支持することができるので、第2の軸受け部材21の構造が複雑化することがない。
【0051】
さらに、こうして離れた供給流路6、排出流路5、および排出室8と第2の軸受け部材21との間と、供給連通室15および排出連通室16と第2の軸受け部材21との間とのうち少なくとも一方(本実施形態では、やはり双方)には、熱媒体の熱を放散可能な放熱部として放熱室9、フランジ部10、延出部20のフィン22および開口部23が設けられている。従って、上述のように第2の軸受け部材21が流路や連通室から離れているのに加えて、上記放熱部によって第2の軸受け部材21に伝達する熱を効率的に放散することができるので、この第2の軸受け部材21が高温に晒されるのを一層確実に避けることができる。
【0052】
すなわち、本実施形態ではまず、上記放熱部として第1に、ローター1の他端部1B側に、熱媒体の流路である供給流路6、排出流路5、および排出室8と隔絶されてローター1の他端において外部に開口部9Aを介して開口する放熱室9が設けられている。このような放熱室9によれば、ローター1の供給流路6、排出流路5、および排出室8から伝達される熱を放熱室9の外周から放散するとともに放熱室9内からも開口部9Aを介して外部に放散して、第2の軸受け部材21が高温に晒されるのを防ぐことができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記放熱部として第2に、ローター1の他端部1B側に軸線Oに対する径方向の外周側に張り出すフランジ部10を設けており、このフランジ部10の外周部に第2の軸受け部材21が取り付けられている。このため、ローター1の他端部1Bから熱が伝達されてもフランジ部10の外周側に至るうちに放散される上、フランジ部10はローター1の回転に伴い一体に回転するので、風を切るようにして高い放熱効果を得ることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、軸線O方向においてローター1の他端部1Bと同じ側のケーシング11の他端部に、このローター1の他端部1Bの外周に間隔をあけて筒状に延びる延出部20が設けられており、ローター1の供給流路6、排出流路5、および排出室8と連通して高温の熱媒体が供給、排出されるケーシング11の供給連通室15および排出連通室16から伝達される熱も、この延出部20を伝わるうちに放散される。そして、本実施形態では、この延出部20に、第3、第4の上記放熱部としてフィン22と開口部23が設けられているので、効率的な熱の放散を促すことができる。
【0055】
すなわち、延出部20にフィン22を設けることによって延出部20の表面積を大きくすることができるので、放熱効果の向上を図ることが可能となる。また、延出部20に開口部23を設けた場合には、この開口部23の内周縁から延出部20を伝わる熱を放散できるとともに、延出部20内のローター1の他端部1Bが開口部23から露出するので、ローター1の流路からこの他端部1Bに伝わる熱も延出部20内に籠もらせずに開口部23を通して放散することができる。
【0056】
なお、このようなフィンや開口部は、ローター1の他端部1Bやフランジ部10の外周部に設けてもよい。放熱室9が設けられたローター1の他端部1Bに開口部を設ければ、放熱室9内に放散した熱を開口部9A以外の上記開口部から延出部20との間に排出することができ、さらにフランジ部10にも開口部を設ければ、こうして排出された熱を延出部20の開口部23以外の上記開口部から外部に排出することができる。また、回転するローター1の他端部1B外周やフランジ部10にフィンを設ければ、一層効率的な熱の放散を促すことが可能である。
【0057】
また、本実施形態では、第2の軸受け部材21が、熱媒体の流路であるローター1の供給流路6、排出流路5、および排出室8と連通室であるケーシング11の供給連通室15および排出連通室16から、軸線O方向の他端部1B側と軸線Oに対する径方向の外周側との双方に離れた位置に配設されているが、軸線O方向にだけ離れていて径方向には同じ位置にあってもよく、逆に軸線O方向には同じ位置にあって径方向外周側だけに離れていてもよい。ただし、これらの場合には、ローター1や延出部20が軸線O方向に長くなったり、第2の軸受け部材21として径の大きなものが必要となったりするので、本実施形態のように流路や連通室から軸線O方向と径方向の双方に離れた位置に軸受け部材21が配設されるのが望ましい。
【0058】
さらに、上述のような熱媒体の流路および連通室と第2の軸受け部材21との間の距離は、熱が伝達するローター1の他端部1Bの軸線O方向の長さと他端部1B外周からフランジ部10に沿った第2の軸受け部材21までの径方向の長さとの和、あるいは延出部20の軸線O方向の長さと延出フランジ部20Cに沿った軸受け部材21までの径方向の長さとの和として、200mm以上であるのが望ましく、400mm以上であるのがより望ましい。これよりも距離が短いと、熱媒体の温度や放熱部の放熱効果によっては第2の軸受け部材21に達するまでに十分な熱の放散を図ることができなくなるおそれがある。
【0059】
一方、本実施形態では、熱媒体の流路と軸受け部材21との間に第1、第2の放熱部として放熱室9とフランジ部10が設けられるとともに、連通室と軸受け部材21との間の延出部20には第3、第4の放熱部としてフィン22と開口部23が設けられているが、放熱部はいずれか一方の間にだけ設けられていてもよい。例えば、延出部20はローター1の外周に配設されて外気に晒されているので、フィン22や開口部23を設けなかったり、あるいは必要に応じて開口部23をカバーで覆ったりしてもよい。
【0060】
さらに、このような放熱部が設けられるローター1の他端部1Bやケーシング11の延出部20に対し、ファンなどにより空気を吹きかけて空冷したり、場合によっては水冷したりして、強制的に冷却を行ってもよい。また、本実施形態では、ローター1に熱媒体の排出流路5と供給流路6とが、またケーシング11には熱媒体の供給連通室15と排出連通室16とが設けられていて、1つのロータリージョイントで回転体への熱媒体の供給と排出を行うようにしているが、排出流路5および排出連通室16だけを設けて、液媒となった熱媒体の排出のみを行うようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態ではローター1の内管2内の空間が、回転体の熱媒体排出側に接続されて熱媒体の排出流路5とされる一方、ローター1と内管2との間の空間は、回転体の熱媒体供給側に接続されて熱媒体の供給流路6とされているが、これとは逆に内管2内の空間を熱媒体の供給流路6とするとともに、ローター1と内管2との間の空間を熱媒体の排出流路5として、これらに連通する連通室も供給、排出を逆の構成としてもよい。この場合に、
図2および
図3に符号6Aで示された部分が排出口となり、上記遮蔽部材は、この排出口と第1のシール材17A、24Aとの間に少なくとも設けられることになる。