(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708526
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20200601BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
H02K9/06 A
H02K5/20
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-173595(P2016-173595)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-42338(P2018-42338A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩野 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤畠 公則
【審査官】
服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−308310(JP,A)
【文献】
特開2013−034332(JP,A)
【文献】
特開2016−100953(JP,A)
【文献】
特許第5881921(JP,B1)
【文献】
実公昭54−002326(JP,Y1)
【文献】
特開2015−159723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、該固定子の内径側にエアギャップを介して配置された回転子と、前記固定子の上方側に位置する固定子フレームに設置され、前記固定子及び回転子を冷却した冷却媒体を除熱する冷却器と、前記固定子と回転子及び前記冷却器を格納するケーシングと、前記回転子の回転軸の両端に設置され、前記冷却器で除熱された冷却媒体を機内に還流する軸流ファンとを備え、
前記固定子は、固定子鉄心と、該固定子鉄心の内径側に形成された複数のスロット内に収納された固定子コイルとから成り、
前記固定子コイルは、前記固定子鉄心の端部から軸方向に突出した固定子コイルエンド部が形成されていると共に、固定子コイルエンド部を覆うように前記固定子コイルエンド部に設置して設けられるガイド板を有し、
前記固定子コイルエンド部の上方に位置する前記固定子フレームに、前記冷却器からの冷却媒体を前記固定子コイルエンド部に導入するための第1の開口部が設けられ、かつ、前記ガイド板の前記軸流ファンより軸方向外側に位置する領域には、前記固定子コイルエンド部を冷却した前記冷却媒体を排出するための第2の開口部が設けられ、
前記第1の開口部は、前記固定子コイルエンド部の前記固定子鉄心の軸方向端部側に位置する前記固定子フレームに設けられていると共に、
前記ガイド板は、径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分とから成るL字状に形成され、径方向に延びる部分の先端部は前記固定子フレームに固定され、かつ、軸方向に延びる部分の先端部は前記固定子鉄心の軸方向端部に近接し、かつ、
前記第2の開口部は、前記L字状の前記ガイド板の径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分及び前記径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分との境界部分にそれぞれ開口され、この第2の開口部が周方向に所定の間隔をもって複数設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第2の開口部のうち最も前記軸流ファンに近い前記軸方向に延びる部分に設けられた前記第2の開口部の出口に、径方向内向きに流出する前記冷却媒体を軸方向に転向させる軸方向転向部材を設けたことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、
前記固定子鉄心の軸方向端部に前記エアギャップの軸方向端部を閉止するエアギャップ閉止部材を設けると共に、前記ガイド板は、径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分とから成るL字状に形成され、径方向に延びる部分の先端部は前記固定子フレームに固定され、かつ、軸方向に延びる部分の先端部は前記エアギャップ閉止部材に近接していることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機において、
前記回転電機は、前記回転軸を中心に上側を上部、下側を下部とした時に、前記第2の開口部の下部の開口面積を、上部の開口面積より大きくしたことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
固定子と、該固定子の内径側にエアギャップを介して配置された回転子と、前記固定子の上方側に位置する固定子フレームに設置され、前記固定子及び回転子を冷却した冷却媒体を除熱する冷却器と、前記固定子と回転子及び前記冷却器を格納するケーシングと、前記回転子の回転軸の両端に設置され、前記冷却器で除熱された冷却媒体を機内に還流する軸流ファンとを備え、
前記固定子は、固定子鉄心と、該固定子鉄心の内径側に形成された複数のスロット内に収納された固定子コイルとから成り、
前記固定子コイルは、前記固定子鉄心の端部から軸方向に突出した固定子コイルエンド部が形成されていると共に、固定子コイルエンド部を覆うように前記固定子コイルエンド部に設置して設けられるガイド板を有し、
前記固定子コイルエンド部の上方に位置する前記固定子フレームに、前記冷却器からの冷却媒体を前記固定子コイルエンド部に導入するための第1の開口部が設けられ、かつ、前記ガイド板の前記軸流ファンより軸方向外側に位置する領域には、前記固定子コイルエンド部を冷却した前記冷却媒体を排出するための第2の開口部が設けられ、
前記第1の開口部は、前記固定子コイルエンド部の前記固定子鉄心の軸方向端部側に位置する前記固定子フレームに設けられていると共に、
前記ガイド板は、径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分とから成るL字状に形成され、径方向に延びる部分の先端部は前記固定子フレームに固定され、かつ、軸方向に延びる部分の先端部は前記固定子鉄心の軸方向端部に近接若しくは伸延し、かつ、
前記第2の開口部は、前記L字状の前記ガイド板の径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分にそれぞれ開口され、この第2の開口部が周方向に所定の間隔をもって複数設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機において、
前記ガイド板の前記軸方向に延びる部分の先端部は前記固定子鉄心の軸方向端部に近接し、かつ、第2の開口部は、前記L字状のガイド板の径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分に周方向に所定の間隔をもって複数形成され、この複数の前記第2の開口部のそれぞれの周方向間の前記ガイド板に、径方向と軸方向に伸延するL字状の補強部材が設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項6に記載の回転電機において、
前記L字状の補強部材はリブから成り、該リブの前記軸方向に延びる部分は、前記軸流ファンへ向かう流れの方向に沿っていることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項5に記載の回転電機において、
前記ガイド板の前記軸方向に延びる部分の先端部は前記固定子鉄心の軸方向端部に伸延し、かつ、前記固定子鉄心の軸方向端部に、前記ガイド板の軸方向に延びる部分の先端部と前記固定子鉄心の軸方向端部との間を塞ぐ第2のガイド板を設けたことを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項8に記載の回転電機において、
前記第2のガイド板は、前記固定子鉄心の軸方向端部に固定される径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分とから成るL字状に形成され、前記L字状の第2のガイド板の軸方向に延びる部分の先端部と、前記L字状のガイド板の軸方向に延びる部分の先端部とは重なっていることを特徴とする回転電機。
【請求項10】
請求項5に記載の回転電機において、
前記回転電機は、前記回転軸を中心に上側を上部、下側を下部とした時に、前記第2の開口部の下部の開口面積を、上部の開口面積より大きくしたことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機などの回転電機は、回転子と固定子を冷却する必要があり、そのための冷却構造が設けられている。
【0003】
こうした回転電機における冷却構造の代表的な冷却構造としては、電動機の内部に冷却媒体を流通させて回転子と固定子を冷却する方式がある。
【0004】
このような冷却方式を用いた比較的大容量の回転電機においては、回転子と固定子の間の間隙(エアギャップ)に、軸方向外側から内側に向かって冷却媒体を流入させ、更に、この冷却媒体を、軸方向に所定の間隔をもち、かつ、固定子の径方向に設けた複数の通風ダクトを内径側から外径側へと流通させる構造が知られている。
【0005】
また、冷却媒体の一部は、回転子に設けた軸方向流路へ流入し、固定子と同様、軸方向に所定の間隔を持ち、かつ、回転子の径方向に設けた複数の通風ダクトを内径側から外径側へと流通させ、エアギャップを流れる冷却媒体へ合流させる場合もある。固定子の通風ダクトを通過した冷却媒体は、冷却器に導かれて除熱された後に、回転電機の内部へと還流される。
【0006】
更に、冷却媒体の一部を分流させ、固定子鉄心の端部から軸方向に突出した固定子コイルの端部(以下では、固定子コイルエンド部という)を冷却する構造が一般的である。この固定子コイルエンド部を冷却した冷却媒体は、そのまま冷却器へと流入して除熱される。冷却器を出た冷却媒体は、回転軸の両端に設置された軸流ファンにより、再び回転電機の軸方向内側に送出される。
【0007】
また、冷却器から軸流ファンへと冷却媒体を導くために、通常は、固定子コイルエンド部の軸方向外側に、固定子コイルエンド部を覆うようにガイド板を設置し、このガイド板とケーシングとの間に通風ダクトを形成している。
【0008】
このような回転電機の一例の構成を
図7に示す。
【0009】
図7に示す回転電機は、固定子2と、この固定子2の内径側にエアギャップ3を介して配置された回転子1と、固定子2の上方側に位置する固定子フレーム8に設置され、固定子2及び回転子1を冷却した冷却媒体18を除熱する冷却器10と、固定子2と回転子1及び冷却器10を格納するケーシング19と、回転子1の回転軸11の両端に設置され、冷却器10で除熱された冷却媒体18を機内に還流する軸流ファン7とを備え、固定子2は、固定子鉄心6と、この固定子鉄心6の内径側に形成された複数のスロット(図示せず)内に収納された固定子コイル4とから成り、この固定子コイル4は、固定子鉄心6の端部から軸方向に突出した固定子コイルエンド部9が形成されていると共に、この固定子コイルエンド部9を覆うようにガイド板5を有して構成されている。
【0010】
そして、軸流ファン7で除熱された冷却媒体18は、回転子1の内部へ向かう冷却媒体18a、エアギャップ3へ向かう冷却媒体18b、固定子コイルエンド部9へ向かう冷却媒体18cに分流する。回転子1の内部へ向かう冷却媒体18aは、回転子1を冷却した後、エアギャップ3へ向かう冷却媒体18bと合流して固定子2を冷却し、固定子フレーム8内に流入する。固定子コイルエンド部9へ向かう冷却媒体18cは、固定子コイルエンド部9を冷却した後、固定子1を支持する主板20と固定子フレーム8の隙間を通って固定子フレーム8内に流入して他の冷却媒体と合流する。固定子フレーム8の外周から流出した冷却媒体18は、冷却器10に流入し除熱され、ケーシング19とガイド板5とで形成される通風路21を通り軸流ファン7へと戻る。
【0011】
上記のような従来の冷却構造では、軸流ファン7により送出された冷却媒体18は、固定子2及び回転子1を冷却する冷却媒体(回転子1の内部へ向かう冷却媒体18aとエアギャップ3へ向かう冷却媒体18b)と、固定子コイルエンド部9を冷却する冷却媒体(固定子コイルエンド部9へ向かう冷却媒体18c)とに分流されている。
【0012】
このため、固定子コイルエンド部9の冷却を強化するために、固定子コイルエンド部9側へ流れる冷却媒体(固定子コイルエンド部9へ向かう冷却媒体18c)を増加させると、固定子2及び回転子1側へと流れる冷却媒体(回転子1の内部へ向かう冷却媒体18aとエアギャップ3へ向かう冷却媒体18b)が減少してしまう。
【0013】
逆に、固定子2及び回転子1側へと流れる冷却媒体(回転子1の内部へ向かう冷却媒体18aとエアギャップ3へ向かう冷却媒体18b)を増加させると、固定子コイルエンド部9側へ流れる冷却媒体(固定子コイルエンド部9へ向かう冷却媒体18c)が減少してしまう。即ち、固定子2及び回転子1の冷却と固定子コイルエンド部9の冷却は、トレードオフの関係にあり、固定子2及び回転子1の冷却に悪影響を与えずに固定子コイルエンド部9の冷却を強化することが難しいという問題がある。
【0014】
これを解決するために、特許文献1には、冷却器から出た直後の冷却媒体を、固定子コイルエンド部の軸方向外側に設置したフィンに当てる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実開昭51−137501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した特許文献1に記載されている従来の冷却技術は、固定子コイルエンド部の軸方向外側の端部が、冷却器から流出した冷却媒体の全流量により冷却されるため、コイルエンド部の冷却を強化することができる。
【0017】
しかしながら、固定子コイルエンド部の軸方向内側の残りの部分は、従来と同様にファンから分流した冷却媒体で冷却されことになる。
【0018】
そのため、固定子コイルエンド部の軸方向内側の冷却の強化のため、固定子コイルエンド部の軸方向内側の部分の流量を増加させると、固定子及び回転子へ流れる風量が減少するという上述した問題が解決されないまま残ってしまう。
【0019】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、固定子及び回転子の冷却に悪影響を与えることなく、固定子コイルエンド部の冷却を強化することができる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の回転電機は、上記目的を達成するために、固定子と、該固定子の内径側にエアギャップを介して配置された回転子と、前記固定子の上方側に位置する固定子フレームに設置され、前記固定子及び回転子を冷却した冷却媒体を除熱する冷却器と、前記固定子と回転子及び前記冷却器を格納するケーシングと、前記回転子の回転軸の両端に設置され、前記冷却器で除熱された冷却媒体を機内に還流する軸流ファンとを備え、前記固定子は、固定子鉄心と、該固定子鉄心の内径側に形成された複数のスロット内に収納された固定子コイルとから成り、前記固定子コイルは、前記固定子鉄心の端部から軸方向に突出した固定子コイルエンド部が形成されていると共に、固定子コイルエンド部を覆うように前記固定子コイルエンド部に設置して設けられるガイド板を有し、前記固定子コイルエンド部の上方に位置する前記固定子フレームに、前記冷却器からの冷却媒体を前記固定子コイルエンド部に導入するための第1の開口部が設けられ、かつ、前記ガイド板の前記軸流ファンより軸方向外側に位置する領域には、前記固定子コイルエンド部を冷却した前記冷却媒体を排出するための第2の開口部
が設けられ
、前記第1の開口部は、前記固定子コイルエンド部の前記固定子鉄心の軸方向端部側に位置する前記固定子フレームに設けられていると共に、前記ガイド板は、径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分とから成るL字状に形成され、径方向に延びる部分の先端部は前記固定子フレームに固定され、かつ、軸方向に延びる部分の先端部は前記固定子鉄心の軸方向端部に近接し、かつ、前記第2の開口部は、前記L字状の前記ガイド板の径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分及び前記径方向に延びる部分と軸方向に延びる部分との境界部分にそれぞれ開口され、この第2の開口部が周方向に所定の間隔をもって複数設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、固定子及び回転子の冷却に悪影響を与えることなく、固定子コイルエンド部の冷却を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の回転電機の実施例1の全体構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の回転電機の実施例2を示す固定子コイルエンド部の周辺を拡大して示す断面図である。
【
図4】本発明の回転電機の実施例3を示す固定子コイルエンド部の周辺を拡大して示す断面図である。
【
図5】本発明の回転電機の実施例4を示す固定子コイルエンド部の周辺を拡大して示す断面図である。
【
図6】本発明の回転電機の実施例5を示す固定子コイルエンド部の周辺を拡大して示す断面図である。
【
図7】従来の回転電機の全体構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の回転電機を説明する。なお、符号は、従来と同一のものは同符号を使用する。
【実施例1】
【0024】
図1及び
図2に、本発明の回転電機の実施例1を示す。
【0025】
該図に示すように、本実施例の回転電機は、固定子2と、この固定子2の内径側にエアギャップ3を介して配置された回転子1と、固定子2の上方側に位置する固定子フレーム8に設置され、固定子2及び回転子1を冷却した冷却媒体18を除熱する冷却器10と、固定子2と回転子1及び冷却器10を格納するケーシング19と、回転子1の回転軸11の両端に設置され、冷却器10で除熱された冷却媒体18dを機内に還流する軸流ファン7とを備え、更に、固定子2は、固定子鉄心6と、この固定子鉄心6の内径側に形成された複数のスロット(図示せず)内に収納された固定子コイル4とから成り、しかも、固定子コイル4は、固定子鉄心6の端部から軸方向に突出した固定子コイルエンド部9が形成されていると共に、この固定子コイルエンド部9がガイド板5Aで覆われて概略構成されている。
【0026】
そして、本実施例では、固定子コイルエンド部9の上方に位置する固定子フレーム8に、冷却器10で除熱された冷却媒体18dを固定子コイルエンド部9に導入するための第1の開口部12が設けられていると共に、ガイド板5Aの軸流ファン7より軸方向外側に位置する領域には、固定子コイルエンド部9を冷却した冷却媒体18e、18f、18gを排出するための第2の開口部13a、13b、13cが設けられている。
【0027】
具体的には、ガイド板5Aは、径方向に延びる部分5A1と軸方向に延びる部分5A2から成るL字状に形成されると共に、径方向に延びる部分5A1の先端部は固定子フレーム8に固定され、かつ、軸方向に延びる部分5A2の先端部は固定子鉄心6の軸方向端部に近接しており、第2の開口部13a、13b、13cは、L字状のガイド板5Aの径方向に延びる部分5A1に第2の開口部13aが、軸方向に延びる部分5A2に第2の開口部13
cが、径方向に延びる部分5A1と軸方向に延びる部分5A2の境界部分に第2の開口部13
bが開口され、この第2の開口部13a、13b、13cが、
図2に示すように、周方向に所定の間隔をもって複数設けられている。
【0028】
また、第1の開口部12は、固定子コイルエンド部9の固定子鉄心6の軸方向端部側に位置する固定子フレーム8に設けられている。
【0029】
このような本実施例の回転電機は、
図1に示すように、冷却器10で除熱され
た冷却媒体18dは、固定子フレーム8の上部に設けた第1の開口部12を通り固定子コイルエンド部9を冷却する。固定子コイルエンド部9を冷却した冷却媒体18e、18f、18gは、この第2の開口部13aから冷却媒体18eが、第2の開口部13bから冷却媒体18fが、第2の開口部13cから冷却媒体18gがそれぞれ流出し、軸流ファン7の吸込み側へ流出する。
【0030】
軸流ファン7により圧送された冷却媒体は、回転子1の内部へ向かう冷却媒体18a及びエアギャップ3へ向かう冷却媒体18bに示すように、エアギャップ3と回転子1へ流入する。
図7に示した従来例と異なり、軸流ファン7の吐き出し側から固定子コイルエンド部9へ冷却媒体が戻らないよう、ガイド板5Aは軸方向内側に延長され、固定子鉄心6の軸方向端部に近接するようにしている。
【0031】
このような本実施例の構成によれば、冷却器10で除熱された冷却媒体18dで、固定子コイルエンド部9の全体を直接(除熱された冷却媒体18dの全流量)冷却できるので、固定子コイルエンド部9の冷却を強化することができる。また、固定子コイルエンド部9を冷却する冷却媒体を、
図7に示した従来のように分流する必要が無いため、固定子2及び回転子1の冷却に悪影響を与えることが無い。
【0032】
更に、固定子コイルエンド部9の冷却が強化されれば、熱伝導により固定子鉄心6内の固定子コイル4の温度も低下するので、固定子2全体の冷却性能も向上する。
【0033】
また、一般に、冷却媒体は、軸流ファン7を通過する際に、軸流ファン7の損失により温度上昇するが、本実施例の構成とすることにより、軸流ファン7を通過する前の冷却媒体が固定子コイルエンド部9に当たるため、
図7に示す従来例よりも低温の冷却媒体で固定子コイルエンド部9を冷却することができる。
【0034】
また、副次的な効果としては、固定子コイルエンド部9への冷却媒体の配分を考える必要が無いので、設計が単純になる。
【0035】
従って、本実施例によれば、冷却器10で除熱された冷却媒体18dで直接固定子コイルエンド部9の全体を冷却できるので、固定子コイルエンド部9の冷却を強化できる。また、軸流ファン7からの冷却媒体は、直接固定子2及び回転子1を冷却するので、固定子2及び回転子1の冷却に悪影響を及ぼすこともない。
【0036】
なお、本実施例では、第2の開口部13a、13b、13cを周方向にほぼ均等に配置しているが、不均一な配置でもよい。例えば、冷却器10で除熱された冷却媒体18dは、回転軸11を中心より上側の上部から流入するため、冷却媒体18dは、周方向に回り込みながら上部から回転軸11を中心より下側の下部へと流下する。
【0037】
このため、上部の第2の開口部13a、13b、13cの開口面積を小さく、下部の第2の開口部13a、13b、13cの開口面積を大きくすることは、軸流ファン7の吸込み側への周方向流量分布を均一化するのに有効である。これにより、軸流ファン7の特性の悪化を防止する効果がある。
【0039】
また、本実施例では、回転軸11を通る断面内で3カ所に第2の開口部13a、13b、13cを設けているが、軸流ファン7の吸込み側へ流出するのであればどの位置でもよく、第2の開口部の個数や配置を限定するものではない。
【実施例2】
【0040】
図3に、本発明の回転電機の実施例2を示す。
【0041】
該図に示すように、本実施例の回転電機は、ガイド板5Bが、径方向に延びる部分5B1と軸方向に延びる部分5B2から成るL字状に形成されると共に、径方向に延びる部分5B1の先端部は固定子フレーム8に固定され、かつ、軸方向に延びる部分5B2の先端部は固定子鉄心6の軸方向端部に近接しており、2つの第2の開口部13d、13eは、L字状のガイド板5Bの径方向に延びる部分5B1に第2の開口部13dが、軸方向に延びる部分5B2に第2の開口部13eが開口され、この第2の開口部13d、13eのそれぞれが、周方向に所定の間隔をもって複数形成されており、しかも、第2の開口部13d、13eのそれぞれの周方向間のガイド板5Bに、径方向と軸方向に伸延する補強部材としてのL字状のリブ14が設けられている。
【0042】
このL字状のリブ14の軸方向に延びる部分は、軸流ファン7へ向かう流れの方向に沿って配置されている。
【0043】
このような本実施例の構成とすることにより、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、補強部材としてのL字状のリブ14を設けたことにより、第2の開口部13d、13eを形成したことによる強度の低下を防止することができる。また、L字状のリブ14は、補強部材としてのみでなく、軸流ファン7へ向かう冷却媒体の流れを整流する効果も併せ持っている。
【実施例3】
【0044】
図4に、本発明の回転電機の実施例3を示す。
【0045】
該図に示すように、本実施例の回転電機は、ガイド板5Cが、径方向に延びる部分5C1と軸方向に延びる部分5C2から成るL字状に形成されると共に、径方向に延びる部分5C1の先端部は固定子フレーム8に固定され、かつ、軸方向に延びる部分5C2の先端部は固定子鉄心6の軸方向端部に伸延し、2つの第2の開口部13d、13eは、L字状のガイド板5Cの径方向に延びる部分5C1に第2の開口部13dが、軸方向に延びる部分5C2に第2の開口部13eが開口され、この第2の開口部13d、13eのそれぞれが、周方向に所定の間隔をもって複数形成されており、しかも、固定子鉄心6の軸方向端部に、ガイド板5Cの軸方向に延びる部分5C2の先端部と固定子鉄心6の軸方向端部との間を塞ぐ第2のガイド板15を設けている。
【0046】
上述した第2のガイド板15は、固定子鉄心6の軸方向端部に固定される径方向に延びる部分15aと軸方向に延びる部分15bとから成るL字状に形成され、このL字状の第2のガイド板15の軸方向に延びる部分15bの先端部と、L字状のガイド板5Cの軸方向に延びる部分5C2の先端部とは重なっている。
【0047】
このような本実施例の構成とすることにより、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、ガイド板5Cの軸方向長さが短くできるので、片持ち構造の距離を短縮して構造強度を向上することができる。
【実施例4】
【0048】
図5に、本発明の回転電機の実施例4を示す。
【0049】
該図に示すように、本実施例の回転電機は、固定子鉄心6の軸方向端部にエアギャップ3の軸方向端部を閉止するエアギャップ閉止部材16を設けると共に、ガイド板5Dが、径方向に延びる部分5D1と軸方向に延びる部分5D2から成るL字状に形成されると共に、径方向に延びる部分5D1の先端部は固定子フレーム8に固定され、かつ、軸方向に延びる部分5D2の先端部はエアギャップ閉止部材16に近接しており、第2の開口部13a、13b、13cは、L字状のガイド板5Dの径方向に延びる部分5D1に第2の開口部13aが、軸方向に延びる部分5D2に第2の開口部13
cが、径方向に延びる部分5D1と軸方向に延びる部分5D2の境界部分に第2の開口部13
bが開口され、この第2の開口部13a、13b、13cが、周方向に所定の間隔をもって複数設けられている。
【0050】
このような本実施例の構成とすることにより、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、回転子1の通風ダクトの遠心力によるファン作用が、軸流ファン7よりも強い場合に、エアギャップ3から軸方向外側に冷却媒体が流出するのを防止することができる。また、軸流ファン7と回転子1の通風ダクトのファン作用が直列に働くため、ファン作用の圧力が合計されて固定子2への通風量を増加させることができる。
【実施例5】
【0051】
図6に、本発明の回転電機の実施例5を示す。
【0052】
該図に示すように、本実施例の回転電機は、ガイド板5Eが、径方向に延びる部分5E1と軸方向に延びる部分5E2から成るL字状に形成されると共に、径方向に延びる部分5E1の先端部は固定子フレーム8に固定され、かつ、軸方向に延びる部分5E2の先端部は固定子鉄心6の軸方向端部に近接しており、第2の開口部13a、13b、13cは、L字状のガイド板5Eの径方向に延びる部分5E1に第2の開口部13aが、軸方向に延びる部分5E2に第2の開口部13
cが、径方向に延びる部分5E1と軸方向に延びる部分5E2の境界部分に第2の開口部13
bが開口され、この第2の開口部13a、13b、13cが、周方向に所定の間隔をもって複数設けられている。
【0053】
そして、本実施例では、第2の開口部13a、13b、13cのうち最も軸流ファン7に近い軸方向に延びる部分5E2に設けられた第2の開口部13cの出口に、径方向内向きに流出する冷却媒体を軸方向に転向させる軸方向転向部材17を設けている。
【0054】
一般に、
図7に示す従来例においても、また、
図1に示す実施例1においても、ガイド板5、5Aとケーシング19で形成される通風路21内を、径方向内向きに流れる冷却媒体が、軸流ファン7に向かって軸方向に90°流れの向きが変わるような場合には、その角部において流れが剥離して流れの偏りが生じる可能性がある。
【0055】
ところが、本実施例の構成によれば、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、最も軸流ファン7に近い軸方向に延びる部分5E2に設けられた第2の開口部13cの出口に、径方向内向きに流出する冷却媒体を軸方向に転向させる軸方向転向部材17を設けているので、この軸方向転向部材17から軸方向に生じる噴流によって、周りの流れが吸い寄せられるコアンダ効果が生じるため、流れの剥離を抑制して軸流ファン7への流入が均一となり、ファン特性の悪化を防止する効果がある。これにより、風量の低下が防止でき、冷却性能が維持できる。
【0056】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…回転子、2…固定子、3…エアギャップ、4…固定子コイル、5、5A、5B、5C、5D、5E…ガイド板、5A1、5B1、5C1、5D1、5E1…ガイド板の径方向に延びる部分、5A2、5B2、5C2、5D2、5E2…ガイド板の軸方向に延びる部分、6…固定子鉄心、7…軸流ファン、8…固定子フレーム、9…固定子コイルエンド部、10…冷却器、11…回転軸、12…第1の開口部、13a、13b、13c、13d、13e…第2の開口部、14…リブ、15…第2のガイド板、15a…ガイド板の径方向に延びる部分、15b…ガイド板の径方向に延びる部分、16…エアギャップ閉止部材、17…軸方向転向部材、18…冷却媒体、18a…回転子の内部へ向かう冷却媒体、18b…エアギャップへ向かう冷却媒体、18c…固定子コイルエンド部へ向かう冷却媒体、18d…冷却器で除熱された冷却媒体、18e、18f、18g…固定子コイルエンド部を冷却した冷却媒体、19…ケーシング、20…主板、21…通風路。