【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0014】
図1は、本発明の一実施例であるベーン式オイルポンプ10の構成を説明する図で、
図2におけるI−I矢視部分の断面図である。このベーン式オイルポンプ10は、ハウジング12を構成している円筒状のカムリング14、サイドプレート16、およびポンプカバー18と、そのカムリング14の内部に収容されたロータ20とを備えている。サイドプレート16およびポンプカバー18は、カムリング14の外径と略等しい外径の円板形状を成しており、サイドプレート16とポンプカバー18との間にカムリング14を挟んだ状態で互いに同心に配設され、締結ボルト等により互いに一体的に固設されているとともに、図示しないトランスミッションケース等に固定されている。ロータ20は円筒形状を成していて、上記サイドプレート16とポンプカバー18との間の収容空間内に同心に且つ回転可能に配設されているとともに、ポンプ軸22に対して同心に且つスプライン嵌合等により相対回転不能に連結されている。ポンプ軸22は、車両の走行用駆動源や電動モータ等の所定の回転駆動源によって回転駆動されるもので、ロータ20はポンプ軸22と一体的に回転させられる。サイドプレート16およびポンプカバー18の中心部分には、ポンプ軸22が挿通させられる挿通穴が設けられている。ポンプ軸22の軸心すなわちロータ20の回転軸線は、ベーン式オイルポンプ10の中心線Sと一致する。上記カムリング14およびサイドプレート16は、一体に構成することも可能である。
【0015】
図2は、ベーン式オイルポンプ10のポンプカバー18を省略した状態の正面図で、
図3はサイドプレート16を単独で示した正面図である。前記カムリング14の内周面は、中心線Sからの径寸法が周方向において増減変化している内周カム面24とされている。ロータ20には、上記内周カム面24と対向する外周面に開口するように中心線Sと平行に多数(実施例では12)のスリット26が設けられており、それ等のスリット26には、それぞれ先端部がスリット26から外部へ突出可能にベーン28が嵌め入れられている。スリット26は、中心線Sまわりに等角度間隔で放射状に設けられており、ベーン28はロータ20の径方向に進退可能に放射状に配設されている。本実施例では、スリット26が中心線Sを通る径方向に設けられているが、中心線Sまわりに傾斜させて設けることも可能である。なお、
図2においてポンプ軸22に記載した矢印Aは、ポンプ軸22の回転方向で、本実施例では
図2において左まわり方向へ回転駆動されるようになっている。
【0016】
前記サイドプレート16の内側面には、多数のベーン28の先端部を内周カム面24に押し付けるための背圧オイルをスリット26の底部に供給できるように、一対の第1背圧溝30および第2背圧溝32が設けられている。これ等の背圧溝30、32は、中心線Sまわりにおいて何れもスリット26の底部と略同じ径寸法の円弧状に設けられており、所定圧の背圧オイルをスリット26の底部へ供給することにより、ベーン28に対して背圧が付与され、ベーン28の先端部が所定の押付力F(
図4参照)で内周カム面24に押し付けられる。スリット26の深さ寸法は、ベーン28が内周カム面24との係合でスリット26内に押し込まれた状態においても、底部に所定の隙間が残るように定められている。また、そのスリット26の底部には、ベーン28の板厚よりも大径の円穴がスリット26に連続して設けられており、その円穴内に背圧オイルが供給されることによりベーン28の全長に亘って所定の背圧が適切に付与されるようになっている。
【0017】
ベーン28は矩形の平板形状を成しており、中心線S方向の両側端部がそれぞれサイドプレート16およびポンプカバー18の内側面に摺接させられている。したがって、背圧によりベーン28がロータ20の径方向外側へ押し出され、先端部がカムリング14の内周カム面24に押し付けられると、隣り合う各ベーン28と内周カム面24とロータ20の外周面とサイドプレート16およびポンプカバー18の内側面とによって、ロータ20の周囲に複数(本実施例では12)のポンプ室が区画される。そして、ロータ20が中心線Sまわりに回転駆動されると、各ベーン28が内周カム面28の径寸法変化に伴ってロータ20の径方向へ進退させられることにより、複数のポンプ室の容積がそれぞれ増減させられ、このポンプ室の容積の増減によりオイルを吸入して吐出するポンプ作用が得られる。本実施例では、内周カム面24が、中心線Sまわりにおいて180°の周期で径寸法が周期的に変化する楕円形状を成しており、それぞれロータ20の半回転でオイルを吸入して吐出する同一のポンプ性能の一対の第1ポンプ部40および第2ポンプ部42が、ロータ20を挟んで対称的(180°位相をずらした状態)に設けられている。
図2における左側のオイル吸入部位40a、オイル閉込部位40b、オイル吐出部位40cは第1ポンプ部40に関するもので、右側のオイル吸入部位42a、オイル閉込部位42b、オイル吐出部位42cは第2ポンプ部42に関するものである。
【0018】
上記オイル吸入部位40a、42a、オイル閉込部位40b、42b、およびオイル吐出部位40c、42cは、ロータ20の回転方向である矢印A方向において、それぞれオイル吸入部位40a、42aが上流側、オイル吐出部位40c、42cが下流側となる位置関係で設けられている。また、オイル吸入部位40a、42aでは、
図4の(a) に示すように、矢印A方向へ向かうに従って内周カム面24の径寸法が徐々に大きくなり、ロータ20の回転に伴いベーン28がスリット26から突き出してポンプ室の容積が増大する部分であり、第1ポンプ部40、第2ポンプ部42の各オイル吸入部位40a、42aには、それぞれ外部からオイルを吸入するための第1吸入口44、第2吸入口46が設けられている。これ等の吸入口44、46は、カムリング14の平坦な側面に設けられた溝にて構成されており、ポンプカバー18によって塞がれることにより外周面に開口する吸入口44、46が形成され、ポンプ室の容積変化によって生じる負圧により外部からポンプ室内にオイルが吸入される。オイル閉込部位40b、42bでは、
図4の(b) に示すように、矢印A方向へ向かうに従って内周カム面24の径寸法が増大から減少へ変化し、ポンプ室の容積が殆ど変化しない部分である。オイル吐出部位40c、42cでは、
図4の(c) に示すように、矢印A方向へ向かうに従って内周カム面24の径寸法が徐々に小さくなり、ロータ20の回転に伴いベーン28がスリット26内に押し込まれてポンプ室の容積が減少する部分であり、第1ポンプ部40、第2ポンプ部42の各オイル吐出部位40c、42cには、それぞれ外部へオイルを吐出するための第1吐出口48、第2吐出口50が設けられている。これ等の吐出口48、50は、サイドプレート16に設けられた貫通穴にて構成されており、ポンプ室の容積変化によってポンプ室内のオイルがそれ等の吐出口48、50から外部に吐出される。
【0019】
図3から明らかなように、上記第1吐出口48は連通路52を介して第1背圧溝30に連通させられており、第1吐出口48から出力されて第1吐出圧P1に調圧された第1ポンプ部40の第1吐出オイルが背圧オイルとして第1背圧溝30に導入される。また、第2吐出口50は連通路54を介して第2背圧溝32に連通させられており、第2吐出口50から出力されて第2吐出圧P2に調圧された第2ポンプ部42の第2吐出オイルが背圧オイルとして第2背圧溝32に導入される。これ等の連通路52、54は、サイドプレート16の内側面に形成された溝にて構成されており、その内側面がロータ20の側面に密着するように組み付けられることによって油路が形成される。一方、第1背圧溝30は、第1ポンプ部40のオイル閉込部位42bおよびオイル吐出部位42cにおいて、スリット26の底部に背圧オイルとして第1吐出オイルを導入できるように、そのオイル閉込部位42bおよびオイル吐出部位42cと同じ角度範囲(例えば120°程度)に円弧状に設けられている。第2背圧溝32は、第2ポンプ部42の全域および第1ポンプ部40のオイル吸入部位40aにおいて、スリット26の底部に背圧オイルとして第2吐出オイルを導入できるように、その第2ポンプ部42の全域および第1ポンプ部40のオイル吸入部位40aと同じ角度範囲(例えば240°程度)に円弧状に設けられている。なお、第1ポンプ部40のオイル閉込部位40bまで第2背圧溝32を延ばすとともに、第1背圧溝30を第1ポンプ部40のオイル吐出部位40cのみに短縮することもできる。
【0020】
このような本実施例のベーン式オイルポンプ10は、第1ポンプ部40の第1吐出圧P1に比較して第2ポンプ部42の第2吐出圧P2が低圧に調圧される油圧制御装置の油圧源として好適に用いられる。
図5に示す車両用の油圧制御装置60はその一例で、自動変速機の油圧アクチュエータや潤滑部位等のオイル必要部位62等にオイルを供給するもので、ポンプ軸22は車両の走行用駆動源である図示しないエンジンに連結されて機械的に前記矢印A方向へ回転駆動される。ポンプ軸22と共にロータ20が回転駆動されると、オイルパン等のオイル貯留部64に貯留されたオイルがストレーナ66を介して吸入油路68から第1吸入口44、第2吸入口46内に吸入され、第1吐出口48、第2吐出口50から第1吐出油路70、第2吐出油路72に吐出される。これ等の第1吐出油路70および第2吐出油路72は連通油路74によって連通させられているとともに、その連通油路74には、第2吐出油路72から第1吐出油路70へ向うオイルの流通を許容し、第1吐出油路70から第2吐出油路72へ向うオイルの流通を阻止する逆止弁76が設けられている。
【0021】
上記第1吐出油路70は、第1ポンプ部40から吐出された第1吐出オイルを前記オイル必要部位62へ供給する他、調圧弁80の第1入力ポート82およびフィードバックポート84に接続されている。第2吐出油路72は、調圧弁80の第2入力ポート86に接続されている。調圧弁80は、第1吐出油路70内の第1吐出オイルの油圧である第1吐出圧P1、および第2吐出油路72内の第2吐出オイルの油圧である第2吐出圧P2をそれぞれ調圧するもので、スプール弁子88と、そのスプール弁子88を閉弁方向すなわち
図5の上方へ付勢するスプリング(圧縮コイルスプリング)90とを備えており、フィードバックポート84に加えられた第1吐出圧P1とスプリング90とが釣り合うように、スプール弁子88を下方(開弁方向)へ移動させて第1吐出油路70内の余分なオイルを第1入力ポート82から第1出力ポート92を経て油路94へ流出させる。すなわち、第1吐出圧P1は、スプリング90の付勢力に応じて定まる略一定の制御油圧Paに調圧される。この制御油圧Paは、オイル必要部位62の必要油圧に応じて適宜定められる。
【0022】
第1吐出圧P1を制御油圧Paに調圧するためにスプール弁子88が下方へ移動させられると、第2入力ポート86と第2出力ポート96とが連通させられ、第2吐出油路72内の第2吐出オイルが第2入力ポート86から第2出力ポート96を経て還流油路98へ流出させられ、吸入油路68へ戻されるとともに、第2吐出油路72の第2吐出圧P2が低下させられる。フィードバックポート84に加えられた第1吐出圧P1によりスプール弁子88が
図1の下方へ移動させられた場合、第1入力ポート82と第1出力ポート92との間、および第2入力ポート86と第2出力ポート96との間が同期して開かれるが、第2入力ポート86と第2出力ポート96との間の流通断面積(開口面積)は、第1入力ポート82と第1出力ポート92との間の流通断面積(開口面積)よりも大きくなるように各部の形状等が設定されており、これにより第2吐出圧P2が第1吐出圧P1よりも低圧に調圧される。
【0023】
図6は、油圧制御装置60における第1吐出油路70内の第1吐出圧P1および第2吐出油路72内の第2吐出圧P2の油圧特性を示した図で、ベーン式オイルポンプ10のロータ20の回転速度すなわち吐出流量に対応するエンジン回転速度Nに応じて変化している。エンジン回転速度NがN1よりも小さく、ロータ20が低回転で、第1ポンプ部40から第1吐出油路70へ吐出された第1吐出オイルの第1吐出圧P1が制御油圧Paに達しない状態では、調圧弁80のスプール弁子88に対してフィードバックポート84に入力される第1吐出圧P1による開弁方向の付勢力よりもスプリング90の閉弁方向の付勢力が大きく、第1入力ポート82と第1出力ポート92との間、および第2入力ポート86と第2出力ポート96との間が閉じられる。このとき、オイル必要部位62に接続された第1吐出油路70の第1吐出圧P1は第2吐出圧P2よりも低くなり、逆止弁76が開いて第2吐出油路72内の第2吐出オイルが第1吐出油路70内に流入することにより、第1吐出圧P1が第2吐出圧P2と略同圧とされて第1吐出圧P1の立上がりが促進される。このベーン式オイルポンプ10の始動時には、同圧とされた第1吐出圧P1の第1吐出オイルおよび第2吐出圧P2の第2吐出オイルがそれぞれ第1背圧溝30、第2背圧溝32を通じて各ベーン28に対して背圧オイルとして供給されることにより、その背圧オイルによる背圧等によって所定の押付力Fで各ベーン28の先端部が内周カム面24に押し付けられ、所定のポンプ効率でオイルが吐出されて油圧立上りの応答性が確保される。
【0024】
エンジン回転速度NがN1以上N2未満のとき、フィードバックポート84に入力された第1吐出圧P1に対応するスプール弁子88の開弁方向の付勢力とスプリング90の閉弁方向の付勢力とがバランスし、第1吐出圧P1がスプリング90の付勢力に応じて定まる制御油圧Paとなるように第1入力ポート82と第1出力ポート92との間が開閉されると同時に、第2入力ポート86と第2出力ポート96との間が同期して開閉される。第2入力ポート86と第2出力ポート96との間が開閉されることにより、第2吐出油路72のオイルが還流油路98を介して還流される。また、連通油路74を通じた第2吐出油路72から第1吐出油路70へのオイルの流通は許容されるため、第2吐出圧P2は第1吐出圧P1と略同圧の制御油圧Paに維持される。
【0025】
エンジン回転速度NがN2以上になると、第1吐出油路70では第1吐出圧P1を制御油圧Paに調圧するのに十分な吐出油量となるため、ロータ20の回転上昇に比例して増大した第1吐出油路70の吐出油量に対応してスプール弁子88の開弁方向への移動量が増大し、第1吐出油路70から油路94へ流出する油量、および第2吐出油路72から還流油路98へ流出する油量は共に増加する。ここで、第1入力ポート82と第1出力ポート92、および第2入力ポート86と第2出力ポート96は、同期して連通させられ、且つ第2入力ポート86と第2出力ポート96との流通断面積は、第1入力ポート82と第1出力ポート92の流通断面積よりも大きいため、第2吐出油路72内の第2吐出圧P2が低下して逆止弁76が閉じられる。これにより、エンジン回転速度NがN2以上すなわちベーン式オイルポンプ10のロータ20の高回転時には、低下した第2吐出圧P2の第2吐出オイルが第2背圧溝32を通じて第2ポンプ部42の全域および第1ポンプ部40のオイル吸入部位40aにおいて、各ベーン28に背圧オイルとして供給されるため、それ等のベーン28の先端部を内周カム面24に押し付ける押付力Fが低下させられ、ベーン28と内周カム面24との間の摺動抵抗に起因するトルク損失が低減される。エンジン回転速度N2は、例えば車両走行中の大半を占める定常走行等の低負荷状態におけるエンジン回転速度がN2よりも高回転側に含まれるように設定される。
【0026】
ここで、ベーン28を内周カム面24に押し付ける押付力Fは、背圧溝30、32から供給される背圧オイルによる背圧の他にベーン28に作用する遠心力、オイルの吸入負圧、オイルの吐出圧などが影響し、
図4の(a) に示すオイル吸入部位40a、42aでは、押付力F=背圧+遠心力+吸入負圧となる。また、
図4の(b) に示すオイル閉込部位40b、42bでは、押付力F=背圧+遠心力+吸入負圧−吐出圧となり、
図4の(c) に示すオイル吐出部位40c、42cでは、押付力F=背圧+遠心力−吐出圧となる。すなわち、背圧および遠心力が同じであれば、(オイル吸入部位の押付力F)>(オイル閉込部位の押付力F)>(オイル吐出部位の押付力F)の関係となり、オイル吸入部位40a、42aにおける押付力Fが最も高くなる。
【0027】
これに対し、本実施例のベーン式オイルポンプ10は、吸入負圧によって押付力Fが高くなる第1ポンプ部40のオイル吸入部位40aまで第2背圧溝32が延長して設けられ、そのオイル吸入部位40aでは、第2背圧溝32から比較的低圧の第2吐出オイルが背圧オイルとして供給されるため、押付力Fが低下してベーン28と内周カム面24との間の摺動抵抗に起因するトルク損失が低減され、燃費が向上する。本実施例では第2背圧溝32が中心線Sまわりにおいて略240°の角度範囲に設けられており、その範囲では第2吐出オイルが背圧オイルとして供給されて押付力Fが低下させられるため、ベーン28と内周カム面24との間の摺動抵抗に起因するトルク損失が適切に低減される。一方、吐出圧(第1吐出圧P1)の影響で押付力Fが低下する第1ポンプ部40のオイル閉込部位40bおよびオイル吐出部位40cでは、第1背圧溝30から比較的高圧の第1吐出オイルが背圧オイルとして供給されるため、吐出圧に拘らず適切な押付力Fでベーン28が内周カム面24に押し付けられ、オイル漏れが抑制されて所定のポンプ効率を確保できる。
【0028】
また、第2背圧溝32は、第2ポンプ部42の全域および第1ポンプ部40のオイル吸入部位40aにおいて、背圧オイルとして比較的低圧の第2吐出オイルを供給するように設けられているため、第2ポンプ部42の全域でベーン28の押付力Fが低下し、ベーン28と内周カム面24との間の摺動抵抗に起因するトルク損失が低減される。吐出圧(第2吐出圧P2)の影響で押付力Fが低下する第2ポンプ部42のオイル吐出部位42cでは押付力不足によるオイル漏れによってポンプ効率が損なわれる可能性があるが、本実施例の油圧制御装置60の場合、第2吐出圧P2が低圧とされるエンジン回転速度N2以上の領域では、逆止弁76が閉じられて第2ポンプ部42から吐出されたオイルは総て調圧弁80を経て還流油路98から吸入油路68へ還流されるため、ポンプ効率が問題になることはない。すなわち、第2ポンプ部42はポンプ始動時(エンジン始動時)の油圧の立上りに寄与するもので、その始動時には調圧弁80が閉じられて第2吐出油路72内の第2吐出オイルの還流が阻止されることにより第2吐出圧P2が速やかに上昇させられるとともに、逆止弁76が開いて第2吐出オイルが第1吐出油路70内に流入することにより第1吐出圧P1が第2吐出圧P2と略同圧とされる。そして、その第1吐出圧P1の第1吐出オイルおよび第2吐出圧P2の第2吐出オイルが、それぞれ第1背圧溝30、第2背圧溝32を通じて各ベーン28の背圧オイルとして供給されることにより、所定の押付力Fでベーン28が内周カム面24に押し付けられ、所定のポンプ効率でオイルが吐出されて油圧立上りの応答性が確保される。
【0029】
なお、上記油圧制御装置60では、単一の調圧弁80によって第1吐出圧P1および第2吐出圧P2が調圧されるようになっていたが、それ等の吐出圧P1、P2を別々の調圧弁を用いて調圧しても良い。また、第1吐出圧P1がスプリング90の付勢力によって定まる略一定の制御油圧Paに調圧されるようになっていたが、電磁弁等を用いてスプール弁88に信号圧を加えることにより、第1吐出圧P1を連続的または段階的に変化させることもできる。調圧弁80としてソレノイド(電磁コイル)を有する電磁調圧弁を採用することで、スプール弁子88を電磁力で付勢することにより、第1吐出圧P1を連続的に変化させることもできるなど、種々の態様が可能である。
【0030】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。