(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
現在の血液浄化治療中に行われた運動において測定された前記特定の患者の循環血液量の変化に関わるパラメータ又はバイタルサインに関わるパラメータと、前記記憶手段で記憶された循環血液量の変化に関わるパラメータ又はバイタルサインに関わるパラメータとの差又は比を算出する算出手段と、
該算出手段で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたか否かを監視する監視手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の運動支援装置。
前記監視手段において、前記算出手段で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定されたことを条件として、運動量の変更を通知することを特徴とする請求項2記載の運動支援装置。
前記患者の循環血液量の変化に関わるパラメータは、血液浄化治療中に継続的に測定可能な循環血液量変化率であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の運動支援装置。
前記患者の循環血液量の変化に関わるパラメータは、血液浄化治療中に継続的に測定可能なプラズマリフィリングレートであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の運動支援装置。
前記記憶手段に記憶されるパラメータは、血液浄化治療を行うための血液浄化装置に備えられたセンサにて検出されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の運動支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術においては、以下のような問題があった。
血液浄化治療が行われる患者は、運動耐容能が低いことから、安全性を確保するために運動強度を低或いは中程度に設定するとともに、患者が極めてきついと感じない程度の運動強度に設定する必要がある。しかしながら、医師等医療従事者による巡回で運動中の患者の状態を確認するにとどまっているのが現状とされており、安全性を向上させつつ血液浄化治療中の運動を行わせることができる運動支援装置が望まれている。
【0004】
また、血液浄化治療中の運動については、患者の病態等が影響し、個人差も大きいため、安全に運動を行わせるための条件を一般化するのは困難とされることから、運動量に関する所謂ガイドラインは存在していないのが実情である。特に、同等の年齢や体力の患者であっても血液浄化治療の条件によってその患者における適正な運動量が変動してしまうことから、一般的なガイドラインを用いた運動により安全性を確保することがより一層困難となっている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、血液浄化治療中において、より安全、且つ、特定の患者に適した運動を行わせることができる運動支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、血液浄化治療中に患者が行う運動を支援し得る運動支援装置であって、血液浄化治療中に行われた運動における特定の患者の循環血液量の変化に関わるパラメータ又は特定の患者のバイタルサインに関わるパラメータと、その患者の運動時の自覚症状及び運動量とを記憶する記憶手段と、該記憶手段で記憶された前記パラメータ、運動量及び患者の自覚症状に基づき、その特定の患者にとって適正な運動量を判断する判断手段と、該判断手段で判断された特定の患者にとって適正な運動量を通知する通知手段とを具備したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の運動支援装置において、現在の血液浄化治療中に行われた運動において測定された前記特定の患者の循環血液量の変化に関わるパラメータ又はバイタルサインに関わるパラメータと、前記記憶手段で記憶された循環血液量の変化に関わるパラメータ又はバイタルサインに関わるパラメータとの差又は比を算出する算出手段と、該算出手段で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたか否かを監視する監視手段とを具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の運動支援装置において、前記監視手段において、前記算出手段で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定されたことを条件として、運動量の変更を通知することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の運動支援装置において、前記患者の循環血液量の変化に関わるパラメータは、血液浄化治療中に継続的に測定可能な循環血液量変化率であることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の運動支援装置において、前記患者の循環血液量の変化に関わるパラメータは、血液浄化治療中に継続的に測定可能なプラズマリフィリングレートであることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の運動支援装置において、前記記憶手段に記憶されるパラメータは、血液浄化治療を行うための血液浄化装置に備えられたセンサにて検出されることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか1つに記載の運動支援装置において、前記患者のバイタルサインに関わるパラメータを検出するための検出手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、血液浄化治療中に行われた運動における特定の患者の循環血液量の変化に関わるパラメータ又は特定の患者のバイタルサインに関わるパラメータと、その患者の運動時の自覚症状及び運動量とを記憶する記憶手段と、該記憶手段で記憶された前記パラメータ、運動量及び患者の自覚症状に基づき、その特定の患者にとって適正な運動量を判断する判断手段と、該判断手段で判断された特定の患者にとって適正な運動量を通知する通知手段とを具備したので、血液浄化治療中において、より安全、且つ、特定の患者に適した運動を行わせることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、現在の血液浄化治療中に行われた運動において測定された特定の患者の循環血液量の変化に関わるパラメータ又はバイタルサインに関わるパラメータと、記憶手段で記憶された循環血液量の変化に関わるパラメータ又はバイタルサインに関わるパラメータとの差又は比を算出する算出手段と、該算出手段で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたか否かを監視する監視手段とを具備したので、運動時の安全性をより向上させることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、監視手段において、算出手段で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定されたことを条件として、運動量の変更を通知するので、通知によって確実に運動量の変更を把握させることができ、安全性を向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、患者の循環血液量の変化に関わるパラメータは、血液浄化治療中に継続的に測定可能な循環血液量変化率であるので、リアルタイムで検出可能な循環血液量変化率に基づいて監視手段による監視を行わせることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、患者の循環血液量の変化に関わるパラメータは、血液浄化治療中に継続的に測定可能なプラズマリフィリングレートであるので、リアルタイムで検出可能なプラズマリフィリングレートに基づいて監視手段による監視を行わせることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、記憶手段に記憶されるパラメータは、血液浄化治療を行うための血液浄化装置に備えられたセンサにて検出されるので、治療のためのセンサを流用して記憶手段による記憶を行わせることができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、患者のバイタルサインに関わるパラメータを検出するための検出手段を具備したので、判断手段によって判断される特定の患者にとって適正な運動量をより正確に把握させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る運動支援装置は、血液浄化治療中に患者が行う運動を支援し得るもので、
図1に示すように、血液浄化治療(透析治療)を行うための血液透析装置1に配設されたブラッドボリューム計2及び血圧計3と、運動手段Sと、入力手段Wと、記憶手段4と、判断手段5と、通知手段6と、算出手段7と、監視手段8と、判定手段9とを有して構成されている。
【0022】
本実施形態に適用される血液透析装置1は、
図2、3に示すように、患者の血液を体外循環させるための血液回路10と、該血液回路10に接続されて血液透析処理を行うためのダイアライザ11と、該ダイアライザ11に接続されて透析液を供給しつつ除水する透析装置本体14とから主に構成されている。なお、血液回路10は、同図に示すように、可撓性チューブから成る動脈側血液回路10a及び静脈側血液回路10bから主に構成されており、これら動脈側血液回路10aと静脈側血液回路10bの間にダイアライザ11が接続されている。
【0023】
動脈側血液回路10aには、その先端に動脈側穿刺針aが接続されているとともに、途中にしごき型の血液ポンプ12、ヘマトクリットセンサ17が配設されている。一方、静脈側血液回路10bには、その先端に静脈側穿刺針bが接続されているとともに、途中に除泡用のエアトラップチャンバ13が接続されている。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称しており、「動脈側」及び「静脈側」とは、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
【0024】
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ12を駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路10aを通ってダイアライザ11に至り、該ダイアライザ11によって血液浄化が施され、エアトラップチャンバ13で除泡がなされつつ静脈側血液回路10bを通って患者の体内に戻る。このように、患者の血液を血液回路10にて体外循環させつつダイアライザ11にて浄化するのである。
【0025】
ダイアライザ11は、その筐体部に、血液導入ポート11a、血液導出ポート11b、透析液導入ポート11c及び透析液導出ポート11dが形成されており、このうち血液導入ポート11aには動脈側血液回路10aの基端が、血液導出ポート11bには静脈側血液回路10bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート11c及び透析液導出ポート11dは、透析装置本体14から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0026】
ダイアライザ11内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0027】
一方、透析装置本体14は、
図3に示すように、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って形成された複式ポンプPと、透析液排出ラインL2において複式ポンプPを迂回して接続されたバイパスラインL3と、該バイパスラインL3に接続された除水ポンプ16とから主に構成されている。そして、複式ポンプPを駆動させることにより、透析液供給装置15から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザ11に至った後、透析液排出ラインL2及びバイパスラインL3を通って装置外部に排出されるようになっている。
【0028】
除水ポンプ16は、ダイアライザ11中を流れる患者の血液から水分を除去して除水を施すためのものである。かかる除水ポンプ16を駆動させると、透析液導入ラインL1から導入される透析液量よりも透析液排出ラインL2から排出される液体の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。なお、複式ポンプPに代えて、所謂バランシングチャンバ形式のものとしてもよい。
【0029】
ヘマトクリットセンサ17は、透析治療過程で血液回路10を体外循環する血液の濃度(血液濃度)を時系列的に検出し得るもので、例えばLED等の発光素子及びフォトダイオード等の受光素子を備え、発光素子から血液に所定波長の光を照射するとともに、その透過した光或いは反射した光を受光素子にて受光することにより、血液回路10内を流れて体外循環する患者の血液の濃度を示すヘマトクリット値を測定するものである。ヘマトクリット値とは、血液の濃度を示す指標であり、具体的には、全血に占める赤血球の容積率で表されるものである。
【0030】
透析装置本体14には、循環血液量変化率(ΔBV)を検出し得るセンサとしてのブラッドボリューム計2と、患者の血圧を検出し得るセンサとしての血圧計3とが配設されている。ブラッドボリューム計2は、ヘマトクリットセンサ17と電気的に接続されており、当該ヘマトクリットセンサ17から送信されたヘマトクリット値(血液濃度)に基づき循環血液量変化率(ΔBV)を検出し得るものである。具体的には、ヘマトクリットセンサ17にて得られるヘマトクリット値をHtとおくと、循環血液量変化率ΔBVは、(透析開始時のHt−測定時のHt)/測定時のHt×100なる演算式から求めることができる。これにより、透析治療時間の経過に伴って患者の循環血液量変化率(ΔBV)をリアルタイムで検出することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、測定されたヘマトクリット値に基づいて循環血液量変化率(ΔBV)を求めているが、これに代えて例えばヘモグロビン濃度や血清総蛋白濃度などに基づいて循環血液量変化率(ΔBV)を用いてもよい。また、循環血液量変化率(ΔBV)を求めるためのパラメータを測定するにあたり、光学的或いは超音波等種々形態のものを使用することができる。
【0032】
運動手段Sは、血液浄化治療中(本実施形態においては透析治療中)に患者が運動を行うための手段から成り、例えばベッドに固定した下肢エルゴメータ、ベッドに固定した足踏みペダル、筋力トレーニングのためのセラバンド或いはバランスボール等から成る。なお、血液浄化治療中(本実施形態においては透析治療中)に患者が運動を行うことができれば、特定の器具等を具備する必要はなく、ストレッチや体操による運動であってもよい。
【0033】
ここで、本実施形態に係る運動支援装置は、ブラッドボリューム計2及び血圧計3と電気的に接続された記憶手段4と、判断手段5と、通知手段6と、算出手段7と、監視手段8と、判定手段9とを有して構成されている。記憶手段4は、血液浄化治療中に行われた運動における特定の患者の循環血液量変化率(ΔBV)(循環血液量の変化に関わるパラメータ)又は特定の患者の血圧(バイタルサインに関わるパラメータ)と、その患者の運動時の自覚症状及び運動量とを記憶するものである。
【0034】
例えば、血液浄化治療開始から運動中、運動後、及び血液浄化治療終了までの間において、ブラッドボリューム計2で特定の患者の循環血液量変化率(ΔBV)(循環血液量の変化に関わるパラメータ)の値を継続的に測定すると、
図4に示すように、運動量が適正(運動負荷強度が適正)の場合における循環血液量変化率(ΔBV)の推移(パターンα)と、運動量が過大(運動負荷強度が適正より高い)場合における循環血液量変化率(ΔBV)の推移(パターンβ)と、運動量が過小(運動負荷強度が適正より低い)場合における循環血液量変化率(ΔBV)の推移(パターンγ)とを取得することができる。
【0035】
また、血液浄化治療開始から運動中、運動後、及び血液浄化治療終了までの間において、血圧計3で特定の患者の血圧(バイタルサインに関わるパラメータ)の値を継続的に測定すると、運動量に応じた推移(
図7のα1、α2参照)を取得することができる。本実施形態に係る記憶手段4は、ブラッドボリューム計2で測定された特定の患者の循環血液量変化率(ΔBV)(循環血液量の変化に関わるパラメータ)の推移、及び血圧計3で測定された特定の患者の血圧(バイタルサインに関わるパラメータ)の推移を記憶するようになっている。
【0036】
入力手段Wは、患者の運動時の自覚症状及び運動量を入力するためのもので、例えばキーボード(テンキー含む)による入力、マウスによる入力、画面中の所定部位を指で触れて入力可能なタッチセンサによる入力等何れであってもよい。運動量は、運動手段Sによって付与される運動負荷強度を示すもので、例えば段階的な数値にて表されて入力手段Wによって入力されるものが好ましい。さらに、運動手段Sと記憶手段4とを電気的に接続することにより、当該運動手段Sで設定された運動負荷強度を入力手段Wを介さずに記憶手段4に記憶させるようにしてもよい。
【0037】
自覚症状は、運動中の患者がきついと感じる程度を示すもので、
図5に示すようなボルグスケール又は修正ボルグスケール(運動生理学で用いられる指標)を用いることができる。例えば、運動中の患者に対して聞き取り等することにより、そのきつさの程度をボルグスケール又は修正ボルグスケールに基づいて段階的な数値で示すものとされている。この自覚症状及び前述した運動量は、入力手段Wによって入力され、循環血液量変化率(ΔBV)の推移のデータ又は血圧の推移データと関連付け(紐付け)して記憶手段4にて記憶されるよう構成されている。なお、自覚症状及び運動量を循環血液量変化率(ΔBV)の推移のデータ又は血圧の推移データと関連付け(紐付け)しないよう構成してもよい。
【0038】
判断手段5は、記憶手段4で記憶されたパラメータ、運動量及び患者の自覚症状に基づき、その特定の患者にとって適正な運動量を判断するものである。例えば、記憶手段4で記憶された過去の推移データのうち、ボルグスケール又は修正ボルグスケールで「ややきつい」(ボルグスケール13)或いは「多少強い」(修正ボルグスケール4)とされたものをその特定の患者にとって適正な運動量にて行われたと判断するのである。
【0039】
通知手段6は、判断手段5で判断された特定の患者にとって適正な運動量を通知するためのもので、当該適正な運動量を表示する表示手段、或いは音声にて適正な運動量を報知する報知手段等何れの形態であってもよい。この通知手段6で通知された運動量は、医師等医療従事者にて処方される運動処方の目安とすることができ、複数回の透析治療を経て通知手段6で通知される適正な運動量が変化した場合、運動処方を適切に見直すことができる。
【0040】
算出手段7は、現在の血液浄化治療中(透析治療中)に行われた運動において測定された特定の患者の循環血液量変化率(ΔBV)(循環血液量の変化に関わるパラメータ)又は血圧(バイタルサインに関わるパラメータ)と、記憶手段4で記憶された循環血液量変化率(ΔBV)又は血圧との差又は比を算出するものである。例えば、
図6に示すように、現在行われている血液浄化治療中の循環血液量変化率(ΔBV)が、過去行われた血液浄化治療中の循環血液量変化率(α1、α2)と比較して乖離する場合、算出手段7で算出される差又は比が大きくなる。
【0041】
監視手段8は、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたか否かを監視するものである。例えば、
図6で示される場合、過去の血液浄化治療における運動開始時間T1以降の循環血液量変化率(ΔBV)の低下に比べ、現在の運動開始時間T1以降の循環血液量変化率(ΔBV)の低下の変化傾向が小さいことから、算出手段7で算出される差又は比が大きくなり、予め設定された閾値を超えることとなる。
【0042】
判定手段9は、監視手段8において、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定されたことを条件として、その患者にとって運動量が過小であるか或いは過大であるかを判定し、運動量の変更を通知手段6にて通知し得るよう構成されている。例えば、
図6で示される場合、運動量が過小であると判定されるので、運動量を上げる(運動負荷強度を大きくする)よう通知することができる。
【0043】
なお、監視手段8において、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定された場合、血圧が安定しているか否かを判定し、安定している場合に限って運動量の変更を通知手段6にて通知するようになっている。例えば、
図7に示すように推移した場合、現在の血液浄化治療中(透析治療中)に行われた運動において測定された特定の患者の血圧と、記憶手段4で記憶された血圧との差又は比を算出手段7で算出し、予め設定した閾値を超えていなければ血圧が安定していると判定することができる。
【0044】
しかるに、本実施形態において、血液浄化治療中に行われた運動における特定の患者の循環血液量の変化に関わるパラメータとして循環血液量変化率(ΔBV)を用い、特定の患者のバイタルサインに関わるパラメータとして血圧を用いているが、それぞれ他のパラメータを用いるようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、記憶手段4、判断手段5、通知手段6、算出手段7、監視手段8及び判定手段9が血液透析装置1の外部に配設されているが、これらのうち特定のもの或いは全てを血液透析装置1の内部に配設するようにしてもよい。その場合、通知手段6は、血液透析装置1が具備する表示手段や音声出力手段等を流用するようにしてもよい。
【0046】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る運動支援装置は、上記第1の実施形態と同様、血液浄化治療中に患者が行う運動を支援し得るもので、
図9に示すように、運動手段Sと、入力手段Wと、記憶手段4と、判断手段5と、通知手段6と、算出手段7と、監視手段8と、判定手段9とを有するとともに、心電計18、パルスオキシメータ19、血流計20及び体組成計21で構成される検出手段Eを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0047】
検出手段Eは、血液浄化治療中に行われた運動における特定の患者のバイタルサインに関わるパラメータを検出するためのものである。そのうち、心電計18は、心臓の拍動に伴う心筋の活動電位又は活動電流を検出するためのものである。パルスオキシメータ19は、プローブを指先や耳等に装着して脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2)を検出するためのものである。血流計20は、血液の流れの速さや量等を検出するためのものである。体組成計21は、体脂肪・基礎代謝量・筋肉量など、体の組成に関する種々値を測るもので、例えば患者の体に微弱電流を流し電気抵抗を測定して体の組成に関する値を推定し得るものである。
【0048】
本実施形態においては、心電計18、パルスオキシメータ19、血流計20又は体組成計21で得られた特定の患者のバイタルサインに関わるパラメータと、その患者の運動時の自覚症状及び運動量とを記憶手段4にて記憶し、記憶手段4で記憶されたパラメータ、運動量及び患者の自覚症状に基づき、その特定の患者にとって適正な運動量を判断手段5にて判断するとともに、判断手段5で判断された特定の患者にとって適正な運動量を通知手段6によって通知可能とされている。
【0049】
ここで、本実施形態においては、
図10に示すように、現在の血液浄化治療中に行われた運動において検出手段Eで測定された特定の患者の心拍出量(バイタルサインに関わるパラメータ)と、記憶手段4で記憶された心拍出量(α1、α2)との差又は比を算出手段7にて算出し、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたか否かを監視手段8にて監視するとともに、監視手段8において、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定されたことを条件として、運動量の変更を通知し得るよう構成されている。
【0050】
また、本実施形態においては、
図11に示すように、現在の血液浄化治療中に行われた運動において検出手段Eで測定された特定の患者の心拍数(バイタルサインに関わるパラメータ)と、記憶手段4で記憶された心拍数(α1、α2)との差又は比を算出手段7にて算出し、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたか否かを監視手段8にて監視するとともに、監視手段8において、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定されたことを条件として、運動量の変更を通知し得るよう構成されている。
【0051】
さらに、本実施形態においては、
図12に示すように、現在の血液浄化治療中に行われた運動において検出手段Eで測定された酸素摂取量(バイタルサインに関わるパラメータ)と、記憶手段4で記憶された心拍数(α1、α2)との差又は比を算出手段7にて算出し、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたか否かを監視手段8にて監視するとともに、監視手段8において、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定されたことを条件として、運動量の変更を通知し得るよう構成されている。
【0052】
なお、本実施形態においては、記憶手段4、判断手段5、通知手段6、算出手段7、監視手段8及び判定手段9が血液透析装置1の外部に配設されているが、これらのうち特定のもの或いは全てを血液透析装置1の内部に配設するようにしてもよい。その場合、通知手段6は、血液透析装置1が具備する表示手段や音声出力手段等を流用するようにしてもよい。さらに、検出手段Eは、血液透析装置1の外部に配設されているが、当該検出手段Eのうち特定のもの或いは全てを血液透析装置1の内部に配設するようにしてもよい。
【0053】
上記実施形態によれば、血液浄化治療中に行われた運動における特定の患者の循環血液量の変化に関わるパラメータ又は特定の患者のバイタルサインに関わるパラメータと、その患者の運動時の自覚症状及び運動量とを記憶する記憶手段4と、該記憶手段4で記憶されたパラメータ、運動量及び患者の自覚症状に基づき、その特定の患者にとって適正な運動量を判断する判断手段5と、該判断手段5で判断された特定の患者にとって適正な運動量を通知する通知手段6とを具備したので、血液浄化治療中において、より安全、且つ、特定の患者に適した運動を行わせることができる。
【0054】
また、現在の血液浄化治療中に行われた運動において測定された特定の患者の循環血液量の変化に関わるパラメータ又はバイタルサインに関わるパラメータと、記憶手段4で記憶された循環血液量の変化に関わるパラメータ又はバイタルサインに関わるパラメータとの差又は比を算出する算出手段7と、該算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたか否かを監視する監視手段8とを具備したので、運動時の安全性をより向上させることができる。
【0055】
さらに、監視手段8において、算出手段7で算出された差又は比が予め設定された閾値を超えたと判定されたことを条件として、運動量の変更を通知するので、通知によって確実に運動量の変更を把握させることができ、安全性を向上させることができる。
【0056】
特に、第1の実施形態によれば、患者の循環血液量の変化に関わるパラメータは、血液浄化治療中に継続的に測定可能な循環血液量変化率であるので、リアルタイムで検出可能な循環血液量変化率に基づいて監視手段による監視を行わせることができる。さらに、第1の実施形態によれば、記憶手段4に記憶されるパラメータは、血液浄化治療を行うための血液浄化装置に備えられたセンサ(ブラッドボリューム計2及び血圧計3)にて検出されるので、治療のためのセンサを流用して記憶手段による記憶を行わせることができる。また、第2の実施形態によれば、患者のバイタルサインに関わるパラメータを検出するための検出手段Eを具備したので、判断手段5によって判断される特定の患者にとって適正な運動量をより正確に把握させることができる。
【0057】
以上、本実施形態に係る運動支援装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1の実施形態において、患者の循環血液量の変化に関わるパラメータとして循環血液量変化率を用いているが、これに代えて或いはこれと共に、血液浄化治療中に継続的に測定可能なプラズマリフィリングレート(PRR)を用いるようにしてもよい。かかるプラズマリフィリングレート(PRR)は、血液透析装置1のブラッドボリューム計2を利用して以下の演算式にて算出することができる。ただし、患者の循環血液量を治療前の体重の1/13と仮定して算出している。
【0058】
PRR=(測定区間の除水量+測定区間の循環血液量増加量)/測定区間の時間
測定区間の循環血液量増加量=循環血液量×測定区間のΔBV変化率
循環血液量=治療前の体重/13
【0059】
このプラズマリフィリングレート(PRR)を患者の循環血液の変化に関わるパラメータとした場合、通知手段6によって特定の患者にとって適正な運動量を通知することができるとともに、
図8に示されるように、過去の血液浄化治療中(透析治療中)に行われた運動において測定された特定の患者のプラズマリフィリングレート(α1、α2)を記憶手段4にて記憶させ、その記憶されたデータと、現在の血液浄化治療中(透析治療中)に行われた運動において測定された特定の患者のプラズマリフィリングレート(α1、α2)との差又は比を算出手段7で算出することができる。
【0060】
この場合、監視手段8による監視や、判定手段9による運動量の変更の通知の判定については、上記実施形態と同様であり、リアルタイムで検出可能なプラズマリフィリングレートに基づいて監視手段8による監視を行わせることができる。なお、本実施形態においては、血液透析治療を行う血液透析装置1に適用されているが、他の血液浄化治療を行う血液浄化装置に適用するようにしてもよい。