(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の対象物移動装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の対象物移動装置は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1および
図2に示されるように、本実施形態の対象物移動装置Dは、移動部材1と、ガイドレール2と、ドラム部材3と、駆動源4と、ケーブル5と、方向転換部材6と、を備えている。
【0013】
対象物移動装置Dは、駆動源4の駆動により移動部材1を移動させる。より具体的には、対象物移動装置Dは、駆動源4の駆動力によりドラム部材3に接続されたケーブル5の巻取りと繰出しとを行うことで、ケーブル5を介して移動部材1を移動させる。それにより、移動部材1に接続された移動対象物(図示せず)を移動させる。本実施形態の対象物移動装置Dは、キャリアプレート(移動部材1)を移動させて、キャリアプレートに接続した図示しない窓ガラス(移動対象物)を移動させることにより、窓を開閉するウインドレギュレータとして示されている。しかし、対象物移動装置Dは、移動部材1を移動させ、窓ガラス以外の他の移動対象物を移動させるものであっても構わない。
【0014】
駆動源4は、ドラム部材3を回転させる駆動力を生じさせる。駆動源4は、ドラム部材3と接続し、ドラム部材3を回転させる。本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、駆動源4は、減速機構等を介して出力軸(図示せず)がドラム部材3に接続されるモータとして示されている。本実施形態では、対象物移動装置Dは、ドラム部材3を収容するハウジング部材7を有し、駆動源4はハウジング部材7に取り付けられている。
【0015】
ハウジング部材7は、ドラム部材3を回転可能に収容する。本実施形態では、ハウジング部材7は、ドラム部材3の他、駆動源4の少なくとも一部や、減速機構等も収容することができる。ハウジング部材7は、ドラム部材3に巻回されたケーブル5をハウジング部材7の内部から外部へと導出する導出部を備えている。本実施形態では、ハウジング部材7は、
図1に示されるように、第1のケーブル51を導出する第1導出部71aと、第2のケーブル52を導出する第2導出部71bとを備えている。また、本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、ハウジング部材7はガイドレール2の基端2a側に配置され、ガイドレール2の基端2aがハウジング部材7のガイドレール接続部72に接続されている。ガイドレール接続部72には、上述した第2導出部71bが形成されている。なお、駆動源4やハウジング部材7を設ける位置は、図示するものに限定されず、例えばガイドレール2の基端2a側にプーリやガイド部材等の方向転換部材を設け、駆動源4やハウジング部材7を他の位置に配置しても構わない。
【0016】
ドラム部材3は、駆動源4により正逆回転され、ドラム部材3が正逆回転することによりケーブル5の巻取と繰出しを行い、移動部材1を移動させる。ドラム部材3は、本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、ハウジング部材7に収容され、ハウジング部材7内で回転するように構成されている。ドラム部材3は、ケーブル5の一端側のケーブルエンド(図示せず)が係合されるケーブルエンド係合部(図示せず)を有し、ドラム部材3の外周にはケーブル5が巻回されるケーブル巻回部(図示せず)を有している。
【0017】
ケーブル5は、移動部材1を操作するために、移動部材1に一端が接続され、ドラム部材3の回転によって巻取りと繰出しとがされる。本実施形態では、ケーブル5は、
図1および
図2に示されるように、第1のケーブル(上昇用ケーブル)51と、第2のケーブル(下降用ケーブル)52とを有している。
図1および
図2に示されるように、第1および第2のケーブル51、52のそれぞれの一端側のケーブルエンド51a、52aは、移動部材1に接続されている。第1および第2のケーブル51、52のそれぞれの他端側のケーブルエンド(図示せず)はドラム部材3に接続されている。本実施形態では、第1のケーブル51は、ドラム部材3から方向転換部材6に向かって延び、方向転換部材6により延びる方向が転換されて移動部材1に向かって延びている。第2のケーブル52は、ドラム部材3から移動部材1に向かって延びている。第1および第2のケーブル51、52は、方向転換部材6およびドラム部材3に巻き掛けられている部位以外は、ガイドレール2の長さ方向D1に沿って延びている。なお、第1および第2のケーブル51、52は、ガイドレール2に非接触の状態で配索されていてもよいし、ガイドレール2に接触するように配索されていてもよい。なお、ケーブル5の配索は、特に図示するものに限定されない。また、ケーブル5は、公知のケーブルを用いることができる。
【0018】
方向転換部材6は、移動部材1と駆動源4との間でケーブル5の延びる方向を転換する。より具体的には、方向転換部材6は、駆動源4側に設けられたドラム部材3から延びるケーブル5(第1のケーブル51)が掛けられるように構成され、移動部材1に向けてケーブル5を方向転換する。本実施形態では、方向転換部材6は、
図1および
図2に示されるように、ガイドレール2の終端2b側に設けられている。本実施形態では、方向転換部材6は、それ自体が回転することなく、湾曲したガイド溝によりケーブル5を異なる方向へとケーブル5を案内して方向転換するガイド部として形成されている。方向転換部材6は、ケーブル5の延びる方向を転換することができればよく、回転しながらケーブル5を方向転換するプーリとして形成されてもよい。また、本実施形態では、ガイドレール2の基端2a側にドラム部材3が設けられ、ガイドレール2の終端2b側に方向転換部材6が設けられているが、ガイドレール2の基端2a側および終端2b側の両方に方向転換部材6が設けられていてもよい。
【0019】
ガイドレール2は、移動部材1が所定の移動経路に沿って移動するように、移動部材1を案内する。ガイドレール2は、移動部材1を所定の移動長さで移動させるために所定の長さを有している。本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、ガイドレール2の基端2a側には、駆動源4(ハウジング部材7)が取り付けられ、終端2b側には、方向転換部材6が取り付けられている。また、ガイドレール2には、移動部材1が移動可能に取り付けられている。ガイドレール2は、例えば車両のドアパネルなどの取付対象に、ボルト等の公知の固定手段により固定され、対象物移動装置Dが取付対象に取り付けられる。なお、対象物移動装置Dは、ガイドレール2に取り付けられた方向転換部材6や駆動源4(ハウジング部材7)等を介して取付対象に取り付けられてもよい。ガイドレール2は、本実施形態では、移動部材1の移動経路に沿って延びる細長い板状に形成され、取付対象(例えばドアパネルなど)の湾曲に沿うように、ガイドレール2の長さ方向D1に沿って弓状に湾曲している。しかし、ガイドレール2は、移動部材1を所定の移動経路に沿って案内することができれば、その形状は特に限定されない。ガイドレール2の材料は、例えば金属や硬質樹脂とすることができるが、ケーブル5により加わる張力に耐えるのに必要な所定の剛性を有する材料であれば特に限定されない。
【0020】
ガイドレール2は、
図1および
図2に示されるように、長さ方向D1に基端2aおよび終端2bを有する本体部21と、本体部21から突出し、長さ方向D1に沿って延びる突条部22と、を有している。ここで、長さ方向D1は、移動部材1の移動ストロークの長さの方向、すなわち、移動部材1の移動方向をいう。対象物移動装置Dがウインドレギュレータの場合、長さ方向D1は、車両のドアに対象物移動装置Dを取り付けた際の上下方向となる。また、本明細書において、ガイドレール2の幅方向D2は、長さ方向D1に対して垂直な方向(
図1および
図2における左右方向)をいう。また、ガイドレール2の厚さ方向D3(
図3参照)は、長さ方向D1および幅方向D2に対して垂直な方向をいう。ガイドレール2(本体部21)の基端2aおよび終端2bは、長さ方向D1の一方の端部および他方の端部をいう。
【0021】
本体部21は、長さ方向D1に沿って延びる、突条部22の基部となる部位である。本体部21は、移動部材1がガイドレール2に沿って繰り返し移動できるように所定の剛性を有している。本実施形態では、本体部21は、
図1および
図2に示されるように、長さ方向D1に細長い板状に形成されているが、移動部材1が移動できるような所定の剛性を有していれば特にその形状は限定されない。
【0022】
突条部22は、長さ方向D1(移動部材1の移動方向)に沿って延びる部位であり、移動部材1が移動可能に嵌合する。突条部22は、
図3に示されるように、ガイドレール2の本体部21から突出して移動部材1と嵌合する。より具体的には、突条部22は、後述する移動部材1の移動部材側嵌合部14と嵌合し、移動部材1が突条部22に沿って移動できるように移動部材1をガイドする。突条部22は、本体部21の表面から厚さ方向D3で移動部材1側へ突出し、長さ方向D1における、移動部材1の移動ストロークに対応可能な長さで形成される。突条部22は、移動部材1の移動方向(長さ方向D1)以外の方向への移動、例えば幅方向D2(および厚さ方向D3)を規制するように構成することができる。
【0023】
本実施形態では、突条部22は、
図3に示されるように、本体部21の一方の側縁において、本体部21の一方の面から略垂直に立ち上がる第1突条部22aと、本体部21の他方の側縁において、本体部21の一方の面から略垂直に立ち上がった後、本体部21の長さ方向D1に沿った中心線X(
図1参照)から遠ざかるように延びる第2突条部22bとを有している。しかし、突条部22の形状は、移動部材1がガイドレール2に嵌合しながら摺動することができれば特に限定されない。例えば、突条部22は、本体部21の側縁から本体部21の幅方向D2における中心線X側に寄った位置から立ち上がるように形成されていてもよいし、本体部21の一方の面から立ち上がった後、中心線X側に近付くように折り曲げられていてもよく、公知の種々のガイドレールの形状を採用することができる。突条部22は、移動部材1に対して長さ方向D1への移動を許容し、幅方向D2および厚さ方向D3への移動を抑制する移動規制部としても機能する。
【0024】
移動部材1は、ガイドレール2に取り付けられ、ケーブル5により操作されて、ガイドレール2の基端2a側と終端2b側との間で移動し、移動対象物を移動させる。移動部材1はケーブル5により操作されて移動するものであれば特に限定されないが、本実施形態では、ウインドレギュレータに用いられる、窓ガラスを開閉させるキャリアプレートとして示されている。移動部材1は、例えば樹脂等により成形することができるが、移動部材1の材料は特に限定されない。
【0025】
本実施形態では、移動部材1は、
図2および
図4に示されるように、ケーブル5の一端が接続されるケーブル接続部13と、ガイドレール2の突条部22と嵌合する移動部材側嵌合部14とを有している。移動部材1は、ケーブル接続部13と、移動部材側嵌合部14とを有していれば特にその形状は限定されない。本実施形態では、移動部材1は、ケーブル接続部13および移動部材側嵌合部14を有する基部11と、窓ガラス等の移動対象物が取り付けられる対象物取付部(窓ガラス取付部)12とを有している。移動部材1の基部11は、本実施形態では、移動部材1の移動時にガイドレール2の本体部21と対向する部位となるガイドレール対向部位11aを有している。本実施形態では、ガイドレール対向部位11aの幅方向D2で外側にガイドレール2の本体部21と対向しない側部11bを有している。
【0026】
ケーブル接続部13は、ケーブル5の操作力により移動部材1がガイドレール2に沿って移動できるように、ケーブル5が接続される部位である。本実施形態では、第1および第2のケーブル51、52を接続するために一対のケーブル接続部13a、13bが設けられている。この一対のケーブル接続部13a、13bに、第1および第2のケーブル51、52のそれぞれのケーブルエンド51a、52aが接続されている。本実施形態では、ケーブル接続部13bは、
図1および
図4に示されるように、ガイドレール2によって案内される際においてガイドレール2の幅方向D2の略中央に対応する位置に設けられている。なお、本実施形態では、第2のケーブル52が接続されるケーブル接続部13bが、ガイドレール2の幅方向D2の略中央に対応する位置(ガイドレール対向部位11aの略中央)に設けられ、第1のケーブル51が接続されるケーブル接続部13aは、基部11の側部11bに設けられている。しかし、ケーブル接続部13a、13bの位置関係が逆であってもよいし、一対のケーブル接続部13a、13bの両方が、ガイドレール2の幅方向D2の略中央に対応する位置に設けられていてもよい。なお、ケーブル接続部13が「ガイドレール2の幅方向D2の略中央に対応する位置に設けられる」という場合、ガイドレール2の中心線Xを中心とした幅方向D2の所定の領域に、ケーブル接続部13が設けられることをいい、ケーブル接続部13は、ケーブル接続部13に接続されたケーブル5と、後述する衝撃緩和部9の弾性部材91とが干渉しない位置に設けられていればよい。
【0027】
移動部材側嵌合部14は、ガイドレール2に設けられた突条部22に嵌合する部位であり、突条部22と移動部材側嵌合部14とが嵌合することにより、移動部材1をガイドレール2の長さ方向D1に沿って案内する。移動部材側嵌合部14は、本実施形態では、ガイドレール2の本体部21から突出する突条部22が嵌合できるように、溝状に形成されている(
図3参照)。移動部材1は、移動部材側嵌合部14が突条部22に嵌合しながら摺動し、ガイドレール2の長さ方向D1以外への移動(例えば幅方向D2への移動)が規制される。本実施形態では、移動部材側嵌合部14は、
図3および
図4に示されるように、第1突条部22aと嵌合する第1移動部材側嵌合部14aと、第2突条部22bと嵌合する第2移動部材側嵌合部14bとを有している。第2移動部材側嵌合部14bは、第2突条部22bの外側に張り出した部分と係合できるように係合爪Cを有し、移動部材1の厚さ方向D3への移動を規制している。移動部材側嵌合部14の形状は、移動部材1が長さ方向D1に沿って移動することができるように突条部22に嵌合することができれば、特に限定されず、上述した突条部22の形状に応じて適宜変更が可能である。
【0028】
上述した構成により、駆動源4が駆動されると、駆動源4に接続されたドラム部材3が回転する。ドラム部材3が一方の方向に回転すると、ドラム部材3に巻き取られたケーブル5により、ケーブル5が接続された移動部材1に引き操作が加わる。例えば、第1のケーブル51がドラム部材3に巻き取られる場合は、ドラム部材3から方向転換部材6を介して方向転換された第1のケーブル51が、移動部材1に対して、ガイドレール2の終端2b側(
図1および
図2において上側)に引き操作を加える。この場合、移動部材1は、ガイドレール2の突条部22に案内されながら、ガイドレール2の終端2b側(ウインドレギュレータの場合、上昇方向)に移動する。また、駆動源4によりドラム部材3が他方の方向に回転し、第2のケーブル52がドラム部材3に巻き取られる場合は、第2のケーブル52が移動部材1に対して、ガイドレール2の基端2a側(
図1および
図2において下側)に引き操作を加える。この場合、移動部材1は、ガイドレール2の突条部22に案内されながら、ガイドレール2の基端2a側(ウインドレギュレータの場合、下降方向)に移動する。これにより、移動部材1の往復動作を行うことができる。
【0029】
本実施形態の対象物移動装置Dは、
図1に示されるように、移動部材1と当接してガイドレール2の基端2a側への移動部材1の移動を規制する移動規制部8を有している。なお、対象物移動装置Dは、ガイドレール2の終端2b側への移動部材1の移動を規制する終端側移動規制部を有していても構わない。
【0030】
移動規制部8は、移動部材1と当接することにより、移動部材1のガイドレール2の基端2a側への移動を規制する。より具体的には、移動規制部8は、後述する衝撃緩和部9の弾性部材91を介して移動部材1と当接し、移動部材1のガイドレール2の基端2a側への移動を規制する。移動規制部8は、例えば、ガイドレール2の幅方向D2で両側の側縁の内側で移動部材1と当接するように配置されている。移動規制部8は、移動部材1の移動を規制するように移動部材1と当接することができる大きさおよび形状であればよいが、移動規制部8は、移動部材1に当接する当接面が形成されることが好ましい。移動規制部8の当接面は、本実施形態では、移動部材1の移動方向に対して略垂直方向に延びる面として形成されている。なお、当接面は平坦であっても湾曲していてもよい。
【0031】
本実施形態では、
図1に示されるように、ハウジング部材7が移動規制部8を有し、ハウジング部材7の移動規制部8に、基端2a側の移動限度位置まで移動した移動部材1が当接する。より具体的には、本実施形態では、
図1に示されるように、ハウジング部材7のうち、第2のケーブル52が導出される第2導出部71bの周囲に設けられたガイドレール接続部72の移動部材1に対向する面が、移動規制部8として構成されている。なお、移動規制部8は、ハウジング部材7とは別の部材により構成されていてもよい。
【0032】
本実施形態の対象物移動装置Dでは、移動規制部8および移動部材1の一方が、他方との当接による衝撃を緩和する衝撃緩和部9を含んでいる。衝撃緩和部9は、
図5に示されるように、移動部材1と移動規制部8との当接の際に当接によって変形する弾性変形部91aを有する弾性部材91を有している。
【0033】
衝撃緩和部9は、移動規制部8と移動部材1とが当接した際の衝撃を弾性部材91の弾性変形により緩和する。なお、「当接した際の衝撃」とは、例えば、窓ガラスなど、所定の重量を有する移動対象物を支持する移動部材1が移動規制部8と当接したときに加わる荷重や、移動部材1が移動規制部8に当接した状態(移動部材1がほぼ停止した状態)で、ドラム部材3がさらに回転しようとすることによるケーブル5の引き操作によって移動部材1に加わる力などが含まれる。なお、本実施形態では、
図5に示されるように、衝撃緩和部9は移動部材1に設けられているが、衝撃緩和部9は、移動部材1に設けられずに、ハウジング部材7など、移動規制部8側に設けられていてもよい。
【0034】
弾性部材91は、移動部材1または移動規制部8に取り付けられ、弾性変形することにより、移動部材1と移動規制部8との間の当接時の衝撃を緩和する。弾性部材91は、衝撃を緩和することができれば特にその材料は限定されないが、例えば、ゴム製のクッション材を用いることができる。本実施形態では、衝撃緩和部9は、
図4に示されるように、弾性部材91を保持する保持部92を有し、弾性部材91は、移動部材1または移動規制部8に設けられた保持部92に取り付けられる。本実施形態では、弾性部材91は、
図4および
図5に示されるように、移動部材1の基部11(ガイドレール対向部位11a)に設けられた保持部92に取り付けられている。
【0035】
弾性部材91は、
図5に示されるように、保持部92に固定される固定部91bと、保持部92から突出する弾性変形部91aとを有している。弾性変形部91aは、移動部材1および移動規制部8のいずれか一方から、弾性部材91が設けられていない他方に向かって突出し、当該他方と当接し、弾性変形部91aに荷重が付加されることにより形状が変化(弾性変形)する。弾性変形部91aは、当接時の衝撃を緩和できるように変形することができれば、その形状は特に限定されない。本実施形態では、弾性変形部91aは、保持部92から凸状に突出している。より具体的には、本実施形態では、弾性変形部91aは、長さ方向D1および幅方向D2を含む面で切断した断面が略半円状となるように形成されているが、略三角形など他の形状であってもよい。弾性部材91の固定部91bは、弾性部材91を保持部92に取り付けることができる形状であれば特に限定されない。また、保持部92は、弾性部材91の固定部91bの形状に応じてその形状が設定され、固定部91bと係合するように構成されている。
【0036】
弾性部材91は、本実施形態では、
図6に示されるように、移動部材1に設けられた保持部92に、ガイドレール2の厚さ方向D3(ガイドレール2の長さ方向および幅方向に垂直な方向)へ移動させて、差し込むことにより取り付けられるように構成されている。弾性部材91は、
図7〜
図9に示されるように、ブロック状となっており、中央付近に係合側部91e、91fとなる、側面から中心に向って凹む窪みを有している。弾性部材91は、キャリアプレート(移動部材1)の内側に収納される固定部91bと、キャリアプレート(移動部材1)の外側に位置される弾性変形部91aと、固定部91bと弾性変形部91aとを繋ぐ中間部とを有している。弾性変形部91aは、キャリアプレート(移動部材1)の移動方向において、キャリアプレート(移動部材1)の外側に面するように配置されて、外側に凸となる湾曲面91cと、キャリアプレート(移動部材1)側に配置される内側面とを有する。弾性部材91は、この内側面の縁部と湾曲面91cの縁部とが、ガイドレール2が延びる方向に延びる2つの平面により同一側が接続されて、キャリアプレート(移動部材1)の外側に向って凸となる板状形状を有している。弾性部材91は、一対の湾曲部91c、91dと、一対の湾曲部91c、91dとの間に、保持部92と係合可能に形成された一対の係合側部91e、91fとを有している。係合側部91e、91fは、弾性部材91の軸X2方向(厚さ方向D3)に沿って溝Gが形成され、弾性部材91は、係合側部91e、91fの部位がくびれた柱状に形成されている。溝Gの軸X2方向の一端側(
図8および
図9における下側)には、後述する保持部92の係合突起92cと係合する係合凹部91gがさらに形成されている。また、一対の湾曲部91c、91dには、弾性部材91の軸X2方向に対して垂直な方向に凹溝G2が形成されている。
【0037】
一方、保持部92は、
図4および
図5に示されるように、係合側部91e、91fに対応して係合するように、互いに向かって突出する一対の係合部92a、92bを有している。一対の係合部92a、92bからは、
図6に示されるように、弾性部材91を厚さ方向D3に挿入できるように傾斜面が形成され、係合側部91e、91fの溝G内に形成された係合凹部91gに係合する係合突起92cを有している。これにより、弾性部材91を保持部92に厚さ方向D3に挿入した際に、弾性部材91の厚さ方向D3での抜けが防止される。また、保持部92は、弾性変形部91aが変形した際に中間部が移動できる空間部を有しており、本実施形態においては、変形部位収容部AC側に保持部92と固定部91bとの間に隙間を形成できる隙間形成部(
図5においては段差部)が設けられた内壁面を有している。
【0038】
本実施形態の対象物移動装置Dは、移動部材1と移動規制部8との間の当接により生じた弾性部材91の変形部位を収容する変形部位収容部ACを有している。変形部位収容部ACは、概略的に示した
図10および
図11に示されるように、移動部材1と移動規制部8とが当接した際の弾性部材91の変形時に、変形により当接前の自然状態における弾性部材91の外縁(
図11における二点鎖線参照)からはみ出した部分を収容できるように構成されている。
【0039】
本実施形態では、
図12および
図13(ともに参考例を示す図)に示されるように、衝撃緩和部9が、変形部位収容部ACが存在しなかった場合には当接によって弾性部材91と突条部22bとが当接する(
図13参照)、ケーブル接続部13と移動部材側嵌合部14との間の位置に、配置されている(
図10および
図11参照)。なお、衝撃緩和部9は、ガイドレール2の幅方向D2で略中央に設けられた少なくとも一方のケーブル接続部13と、移動部材側嵌合部14のいずれか一方との、幅方向D2における間に設けられていればよい。例えば、
図1において、ケーブル接続部13bと移動部材側嵌合部14aとの間に、衝撃緩和部9が設けられていてもよい。
【0040】
図12および
図13に示されるように、変形部位収容部ACがない状態では、弾性部材91が当接による変形によって突条部22と当接してしまう。しかし、
図10および
図11に示されるように、変形部位収容部ACが設けられていることにより、ガイドレール2の幅を短くして、弾性部材91の自然状態における外縁と突条部22とが近接した位置となる場合であっても、弾性部材91の変形部位の一部が、突条部22に向かわないように逃げることができる空間を変形部位収容部ACが提供する。したがって、弾性部材91の変形部位が突条部22と当接することを抑制することができる。それにより、弾性部材91が突条部22と接触することによる弾性部材91の外れを抑制することができる。また、変形部位収容部ACにより、弾性部材91の変形部位が突条部22と当接することを抑制できるために、ガイドレール2の幅を従来よりも細くすることができるので、対象物移動装置Dを小型軽量化することができる。また、
図12および
図13に示されるように、変形部位収容部ACが無い場合には、変形した弾性部材91は、突条部22と当接するとともにそれ以上弾性変形部91aの逃げ場がないため、弾性変形部91aに強いストレスが加わり、弾性変形部91aが破損する原因となる。一方、本実施形態では、変形部位収容部ACにより、弾性変形部91aの逃げ場があるため、弾性変形部91aの破損を抑制することができる。
【0041】
本実施形態では、変形部位収容部ACは保持部92に設けられているが、弾性変形部91aが変形した際に、突条部22と当接しないように移動できることが可能であれば、変形部位収容部ACは、保持部92以外、例えば、移動部材1および移動規制部8のうち、弾性部材91が設けられていない方に設けられていてもよい。
【0042】
本実施形態では、
図10および
図11に示されるように、保持部92に弾性変形部91aを支持する支持部Sが構成されている。支持部Sは、弾性変形部91aと、移動規制部8および移動部材1のうち、衝撃緩和部9が設けられていない他方とが当接する前には弾性変形部91aと離間し、弾性変形部91aと他方とが当接して弾性変形した際には弾性変形部91aを支持するように構成されている。このように変形部位収容部ACが形成され、かつ、変形時に弾性変形部91aを支持する支持部Sが形成されていることにより、移動部材1と移動規制部8とが当接したときには、弾性変形部91aの逃げ場を確保しながら弾性部材91の破損を防ぎ、変形後に支持部Sが弾性変形部91aを支持することにより、当接時の衝撃を緩和しつつ、突条部22への弾性変形部91aの当接を防止することができる。本実施形態では、支持部Sは、長さ方向D1へ変形する弾性変形部91aを支持する第1支持部S1と、幅方向D2へ変形する弾性変形部91aを支持する第2支持部S2とを備えている。弾性変形部91aの自然状態において、第1支持部S1と弾性変形部91aとは、弾性変形時に弾性変形部91aが長さ方向D1に逃げることができるように離間し、第2支持部S2と弾性変形部91aとは、弾性変形時に幅方向D2に逃げることができるように離間している。支持部S(第1および第2支持部S1、S2)は、弾性変形部91aが変形したときに当接する支持壁部とすることができる。なお、支持部Sは、弾性変形部91aと支持部Sとの間に変形部位収容部ACが形成されるように設けられていればよい。支持部Sは、
図10および
図11では、長さ方向D1に略垂直な平坦面として形成された第1支持部S1と、幅方向D2に略垂直な平坦面として形成された第2支持部S2とを有しているが、支持部Sの形状は特に限定されない。例えば、支持部Sは、長さ方向D1および幅方向D2へ変形する弾性変形部91aを支持することができるように形成された湾曲面として形成されていてもよい。また、支持部Sは、長さ方向D1に対して垂直な面や幅方向D2に対して垂直な面から傾斜していてもよい。幅方向D2において両側に第2支持部S2が設けられ、弾性変形した弾性変形部91aが当接することで、弾性変形部91aの衝突時における幅方向D2の変位を抑制することができるので、衝突時のキャリアプレートの安定化を図ることもできる。また、第1支持部S1に段差を設けて第1支持部S1と弾性変形部91aとの間に空間を形成し、定常状態において弾性変形部91aを支持し、弾性変形部91aが変形した際に弾性変形部91aの一部を収容できるように構成してもよい。
【0043】
また、保持部92の一対の係合部92a、92bは、
図14に示されるように、突条部22側に設けられた一方の係合部92aの厚さ方向D3の長さが、他方の係合部92bの厚さ方向D3の長さよりも短くなるように形成されていてもよい。この場合、例えば、一方の係合部92aのガイドレール2の本体部21側の端縁において、
図14に示されるように、弾性部材91側に、ガイドレール2の突条部22側に比べてガイドレール2の本体部21に向かって突出する延在部Eが形成されている。これにより、延在部Eが無い場合と比較して、弾性部材91の突条部22に向かう変形をより抑えることができる。