特許第6708623号(P6708623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6708623害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する方法及び害虫忌避剤の皮膚への浸透抑制剤
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  • 特許6708623-害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する方法及び害虫忌避剤の皮膚への浸透抑制剤 図000027
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708623
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する方法及び害虫忌避剤の皮膚への浸透抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20200601BHJP
   A01N 37/18 20060101ALI20200601BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20200601BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   A01N25/00 101
   A01N37/18 Z
   A01N31/06
   A01P17/00
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-500714(P2017-500714)
(86)(22)【出願日】2016年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2016054582
(87)【国際公開番号】WO2016133124
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-28648(P2015-28648)
(32)【優先日】2015年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿南 鋭三郎
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−171205(JP,A)
【文献】 特開2003−171204(JP,A)
【文献】 特開昭59−222402(JP,A)
【文献】 特開2009−126804(JP,A)
【文献】 特開平04−244001(JP,A)
【文献】 ROSS, J. S. et al.,Reduction in skin permeation of N,N-diethyl-m-toluamide (DEET) by altering the skin/vehicle partitio,Journal of Controlled Release,2000年,67(2-3),pp. 211-221,ISSN: 0168-3659
【文献】 QIU, Hongchun et al.,Formulation of topical insect repellent N,N-diethyl-m-toluamide (DEET): vehicle effects on DEET in v,International Journal of Pharmaceutics,1998年,163(1-2),pp. 167-176,ISSN: 0378-5173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N25/00−25/10
A01N31/06−51/00
A01P17/00
A61K8/39−8/86
A61Q17/02
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレングリコール、N,N−ジエチル−m−トルアミド、メントール及びp−メンタン−3,8−ジオールから選択される少なくとも1種の害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、前記害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する方法。
【請求項2】
前記ポリプロピレングリコールの分子量が200〜20000である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリプロピレングリコールを含有する、N,N−ジエチル−m−トルアミド、メントール及びp−メンタン−3,8−ジオールから選択される少なくとも1種の害虫忌避剤の皮膚への浸透抑制剤。
【請求項4】
ポリプロピレングリコールの、皮膚上に適用したN,N−ジエチル−m−トルアミド、メントール及びp−メンタン−3,8−ジオールから選択される少なくとも1種の害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制させるための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する方法及び害虫忌避剤の皮膚への浸透抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蚊をはじめとしたアブ、トコジラミなどの吸血昆虫からの被害を防ぐために、各種の害虫忌避剤が用いられてきた。これらの害虫忌避剤については、使用感の向上や刺激性の低減、忌避効果の持続性を高めるために各種検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、害虫忌避成分による忌避効果を持続させるために、特定の無水ケイ酸粒子が配合された害虫忌避組成物が開示されている。また、特許文献2には、光による分解を抑えるために紫外線吸収剤を加えた害虫忌避組成物や、害虫忌避成分であるディートの刺激を抑えるために天然ミネラル水を併用した人体用害虫忌避剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開平9−208406号公報
【特許文献2】日本国特開2009−126804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の害虫忌避組成物においては、保管中に、配合した無水ケイ酸粒子が容器底部に沈降し、使用時にはその都度振り混ぜなくてはならない。そのため害虫忌避組成物を振り混ぜないで使用した場合には、噴口や塗布具の目詰まりや、噴射面、処理面に無水ケイ酸粒子が固まるなどの問題が生じる場合がある。
【0006】
また、特許文献2の人体用害虫忌避剤においては、配合する天然ミネラル水の入手が容易とは言えず、安定して供給しづらいことから実用的ではないものである。
【0007】
また、上記の害虫忌避組成物や害虫忌避剤を皮膚に適用する場合、害虫忌避剤が皮膚内部へ浸透するため、皮膚上に長時間にわたり害虫忌避剤を十分に滞留させることができない。そのため、皮膚に適用した害虫忌避剤の害虫忌避効果の持続性は不十分なものであった。さらに、ディート等の害虫忌避剤は皮膚刺激性を有するため、害虫忌避剤が皮膚内部へ浸透すると、皮膚に対して刺激を与えることになり、人体に適用する際の安全性は不十分であった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、薬剤による刺激が少なく、長時間に渡り、皮膚上における害虫忌避効果の持続性を向上させるために、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑え、長時間にわたり害虫忌避剤を表皮(皮膚表面)に滞留させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は以下の通りである。
1.ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する方法。
2.前記害虫忌避剤のlogP値が1以上である、前記1に記載の方法。
3.前記ポリアルキレングリコールの分子量が200〜20000である前記1または2に記載の方法。
4.前記ポリアルキレングリコールが、ポリプロピレングリコールである、前記1〜3のいずれか1に記載の方法。
5.ポリアルキレングリコールを含有する、害虫忌避剤の皮膚への浸透抑制剤。
6.ポリアルキレングリコールの、皮膚上に適用した害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制させるための使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、害虫忌避剤を皮膚に適用する際に、ポリアルキレングリコールを合わせて適用することで、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑えることができる。その結果、害虫忌避剤を皮膚上に長時間にわたり滞留させることが可能となり、皮膚上における害虫忌避効果の持続性を向上させることができる。
【0012】
さらに、害虫忌避剤を低濃度で用いても害虫忌避効果を長時間持続させることができ、人体への刺激の少ない製剤を提供することができる。また、害虫忌避剤を高濃度で用いた場合においては、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑えることができるので、害虫忌避剤の皮膚に対する刺激を抑制することができ、人体に対してより安全性が高い製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、皮膚吸収抑制試験に用いた水平型拡散セルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明は、ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する方法を提供するものである。また、本発明は、ポリアルキレングリコールの、皮膚上に適用した害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制させるための使用方法を提供するものである。
【0016】
本発明の害虫忌避剤としては、刺咬性害虫に対して忌避作用又は吸血阻害作用を有する、合成又は天然の各種化合物を用いることができる。例えば、N,N−ジエチル−m−トルアミド(以下、ディートともいう)、p−メンタン−3,8−ジオール、3−(N−アセチル−n−ブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピル、2−エチル−1,3−ヘキサジオール、ブチル3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−4−オキソ−2H−ピラン−6−カルボキシレート、n−ヘキシルトリエチレングリコールモノエーテル、メチル6−n−ペンチル−シクロヘキセン−1−カルボキシレート、ジメチルフタレート、ユーカリプトール、メントール、酢酸メンチル、α−ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、ターピネオール、カンファー、リナロール、テルペノール、カルボン、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ナフタレンなどが挙げられる。
【0017】
この他にも、例えば、シトロネラ、ペパーミント、シダーウッド、ラベンダー、ティートゥリーオイル、桂皮、樟脳、レモングラス、クローバ、タチジャコウソウ、ジェラニウム、ベルガモント、月桂樹、松、アカモモ、ベニーロイアル、ユーカリ、インドセダンなどから抽出される精油やエキス、さらには、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、エムペントリン、トランスフルスリン、メトフルトリン、プロフルトリンなどのピレスロイド系化合物などを用いることができる。
【0018】
これらの害虫忌避剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、これらの中でも汎用性が高いという観点から、ディートが好ましい。
【0019】
本発明の害虫忌避剤は、logP値が1以上であることが好ましい。
【0020】
本発明において、logP値とは、Chemical Reviews vol71(6),525(1971)などで定義されている水とオクタノールへの物質の分配のしやすさにより、極性をあらわす係数である。薬剤のlogP値は、計算ソフト(PALAAS:CompDrug Chemistry Ltd.製)にて算出することができる。
【0021】
logP値は大きいほど、疎水表面である皮膚の角層との親和性が良くなり、皮膚へ浸透しやすくなることが知られている。logP値が1以上である害虫忌避剤は、疎水性の角層との親和性が良いので角層表面上でのぬれが良い。そのため、皮膚への浸透面積が大きくなる。皮膚への浸透は害虫忌避剤と皮膚との浸透面積に比例するので、浸透面積が大きいと浸透量も多くなる。
【0022】
したがって、logP値が1以上であり、皮膚への浸透量が多い害虫忌避剤である程、後述するポリアルキレングリコールによる害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する本発明の効果がより顕著に得られることとなるため、好ましい。
【0023】
本発明では、前記害虫忌避剤とともに、ポリアルキレングリコールを皮膚に適用する。ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑えることができる。
【0024】
また、ポリアルキレングリコールを皮膚に適用することにより害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑えることができるので、害虫忌避剤をより長時間皮膚上に滞留させることができ、その結果皮膚上における害虫忌避剤の害虫忌避効果の持続性を向上させることができる。したがって本発明は、ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制し、皮膚上における害虫忌避剤の害虫忌避効果の持続性を向上させる方法も提供するものである。
【0025】
また、ポリアルキレングリコールを皮膚に適用することにより害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑えることができるので、害虫忌避剤の皮膚に対する刺激を抑制することができる。したがって本発明は、ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制し、害虫忌避剤の皮膚に対する刺激を抑制する方法も提供するものである。
【0026】
ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑えることができる作用機序は明らかではないが、ポリアルキレングリコールのアルキレン鎖部位に害虫忌避剤が保持され、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑制するためだと推測される。
【0027】
前記ポリアルキレングリコールの分子量としては、好ましくは200〜20000であり、より好ましくは200〜5000である。ポリアルキレングリコールの分子量が200以上であると効果が顕著であるため好ましく、20000以下であると製剤調製が容易となるため好ましい。
【0028】
また、ポリアルキレングリコールの重合度は好ましくは3以上、より好ましくは4〜400である。ポリアルキレングリコールの重合度が3以上であると本発明の効果が十分に得られるため好ましく、4以上であるとその効果がより顕著になるため好ましい。また、重合度が400以下のポリアルキレングリコールは汎用性が高いため好ましい。
【0029】
また、ポリアルキレングリコールの炭素数は2〜4のものが好ましく、2〜3がより好ましい。ポリアルキレングリコールの炭素数が2以上であると本発明の効果が顕著であるため好ましく、4以下であると害虫忌避組成物とする際に各種成分との相溶性が高いため好ましい。
【0030】
また、ポリアルキレングリコールは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。具体的には、ポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール等が挙げられる。汎用性、安定性および皮膚への低刺激性の観点から、ポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコールが特に好ましい。また、種々のポリアルキレングリコールを1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0031】
本発明において好適なポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800、ポリエチレングリコール1000、ポリプロピレングリコール1000、ポリプロピレングリコール2000、及びポリプロピレングリコール4000等が挙げられる。
【0032】
ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用するに際しては、害虫忌避剤の適用量を1としたときのポリアルキレングリコールの適用量が質量比で0.025以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。上記範囲であることで、ポリアルキレングリコールの害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する効果がより高くなるからである。
【0033】
ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用するに際しては、害虫忌避剤及びポリアルキレングリコールの両者を同時に適用してもよいし、別々に分けて適用してもよい。皮膚全体に塗り延ばしやすい点、ディートなどの害虫忌避剤の刺激が緩和される点、さらには簡便性の観点から、両者を含有する製剤として同時に皮膚に適用することが好ましい。
【0034】
前記害虫忌避剤及びポリアルキレングリコールを皮膚に適用するに際しては、例えば、ポンプ剤、ローション剤、ウェットティッシュ剤、ロールオン剤、塗布剤、エアゾール剤等の各種製剤として皮膚に適用することができる。
【0035】
これらの製剤とするには、本発明の効果を奏する限りにおいて、公知の担体、噴射剤、溶剤、乳化・分散剤等を用いて調製し、さらに必要に応じて、不織布、アクチュエーター、塗布具、ポンプ装置、エアゾール装置等と組合せて所望の製剤形態とすればよい。
【0036】
前記害虫忌避剤及びポリアルキレングリコールを皮膚上に適用するに際しては、例えば、害虫忌避剤がディートである場合、ディートの皮膚への付着量が1.5mg/100cm以上、かつポリアルキレングリコールの皮膚への付着量が0.3mg/100cm以上となるように適用するのが好ましい。ディート及びポリアルキレングリコールの皮膚への付着量を前記範囲とすることで、害虫忌避効果及び皮膚への浸透抑制効果を十分に得ることができる。
【0037】
さらに、良好な使用感を得るという観点から、ディートは1.5〜150mg/100cm、ポリアルキレングリコールは0.3〜50mg/100cmの付着量で用いることがより好ましい。この好ましい条件を得るためには、例えば、皮膚に適用する際にエアゾール剤やポンプ剤を使用する場合には、噴口、バルブ、噴射圧などを調整したり、塗布剤、ロールオン剤やウェットティッシュ剤を使用する場合においては、塗布面形状や塗布部の材質性状などを調整するなどして、皮膚への害虫忌避剤及びポリアルキレングリコールの付着量を調整すればよい。
【0038】
前記製剤をエアゾール剤として皮膚に適用するには、製剤全体に対して噴射剤が5〜95v/v%となるようにエアゾール容器に加圧充填すればよい。噴射剤としては、例えば、液化石油ガス、ジメチルエーテル、代替フロン、圧縮ガス(酸素、窒素)、及びこれらの混合物等を用いることができる。
【0039】
また前記製剤をウェットティッシュ剤として皮膚に適用するには、支持体の目付量が20〜80g/mであることが好ましい。支持体の目付量が20〜80g/mであることによって所望の害虫忌避剤及びポリアルキレングリコールの取り込み、保持、塗布、含浸が可能になる。
【0040】
また、厚さが0.1〜5mm程度の支持体に、害虫忌避剤を70〜300ml/m保持させることが好ましい。害虫忌避剤を支持体に70〜300ml/m保持させることによって、所望の害虫忌避剤及びポリアルキレングリコールの取り込み、保持、塗布、含浸が可能になる。
【0041】
支持体としては、ネル、綿、絹、ポリエステル、ナイロン、これらを素材としたもの等の織布;ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、綿、レーヨン、ビニロン、セルロース、これらを素材としたもの等の不織布;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等を発泡させたシート状の樹脂発泡体等を用いることができる。
【0042】
担体としては、例えば、水道水、精製水、イオン水等の水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、セタノール、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール等の低級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0043】
乳化・分散剤としては、例えば、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、デカグリセリンモノオレート、ジオレイン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリルアルコール、ポリビニルピロリドン、ラノリン脂肪酸等の界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール等が挙げられる。
【0044】
さらに使用感を向上させたり、害虫忌避効果を高めたり、殺菌効果を付与する等を目的として、例えば、任意の量の粉体、香料成分、殺菌・防腐成分、保湿成分、増粘剤等をあわせて皮膚に適用することができる。
【0045】
例えば、疎水性シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイソウ土、高純度シリカ、無水ケイ酸等のケイ酸化合物;タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、酸性白土、ホワイトカーボン、パーライト等の無機粉体;オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム等のアルケニルコハク酸デンプンの金属塩;シルクパウダー等の天然パウダー;ナイロン、ポリプロピレン等の樹脂等の粉体;メントール、ハッカオイル、ミントオイル等の香料成分;フェノール、パラオキシ安息香酸エステル、サリチル酸及びその塩、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、フェノキシエタノール等の殺菌・防腐成分;ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、コラーゲン、プラセンタエキス、ミルクプロテイン、ビタミンC誘導体、ソルビット、グリセリン等の保湿成分(湿潤剤);カルボキシビニルポリマー、3−オクタデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピル2−ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘剤;パラアミノ安息香酸エステル、シノキサート、オキシベンゼン等の紫外線吸収・遮断成分;クロルヒドロキシアルミニウム、アルミニウム・ジルコニウムクロルヒドレート等の制汗・消臭成分;ベニバナ等の色素成分等が挙げられる。
【0046】
さらにミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル等の高級脂肪酸エステル;アロエ、モモ、トウキ、冬虫夏草、トマト、ニンジン、ブクリョウ、アカブドウ、アシタバ、アルテア、アルニカ、カイソウ、キューカンバ、紅茶、ゴボウ、シイタケ、ジオウ、タイソウ、甜茶、プハーン、ヘチマ、ボタン、ユリ、リンゴ、レイシ等の植物抽出物;シリコーン等を配合することにより、害虫忌避効果の持続と使用感の更なる向上を図ることができる。
【0047】
本発明において忌避の対象となりうる害虫としては、例えば、カ、ブユ、ダニ、ノミ、サシバエ、ナンキンムシ、ヤマビル、マダニ、ハチ、アリ、アブ、ツツガムシ等の各種の刺咬性害虫が挙げられる。
【0048】
本発明は、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑えるためにポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用するという、ポリアルキレングリコールの用途に関するものであり、本発明を適用することで、害虫忌避効果の持続性が向上し、かつ皮膚に対する刺激が抑制された害虫忌避組成物が提供される。
【0049】
害虫忌避剤としては、前述したような各種化合物が挙げられる。害虫忌避剤は、害虫忌避組成物に対して、通常、0.1〜99.5w/v%、より好ましくは0.1〜50w/v%、さらに好ましくは0.5〜50w/v%、特に好ましくは1〜30w/v%である。1w/v%以上であると、持続効果が顕著であるため好ましく、30w/v%以下であると、べたつきが少ないため好ましい。
【0050】
皮膚における害虫忌避効果の持続性を向上させる効果を得るためには、有効量のポリアルキレングリコールを皮膚上に適用する必要がある。ポリアルキレングリコールの有効量として好ましくは、害虫忌避組成物に対して0.1〜99.5w/v%、より好ましくは0.1〜50w/v%、さらに好ましくは0.5〜30w/v%、特に好ましくは0.5〜10w/v%である。0.5%w/v以上であると、持続効果が顕著であるため好ましく、10w/v%以下であると、べたつきが少ないため好ましい。
【0051】
上記害虫忌避組成物においては、害虫忌避剤の含有量を1としたときのポリアルキレングリコールの含有量が、質量比で0.025以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。上記範囲であることで、ポリアルキレングリコールの害虫忌避剤の皮膚への浸透を抑制する効果がより高くなるからである。
【0052】
上記害虫忌避組成物は、前述したような、ポンプ剤、ローション剤、ウェットティッシュ剤、ロールオン剤、塗布剤、エアゾール剤等の各種製剤として用いることができる。
【0053】
これらの製剤とするには、本発明の効果が奏する限りにおいて、前述したような、公知の担体、噴射剤、溶剤、乳化・分散剤等を用いて調製し、さらに必要に応じて、不織布、アクチュエーター、塗布具、ポンプ装置、エアゾール装置等と組合せて所期の製剤形態とすればよい。
【0054】
本発明はまた、ポリアルキレングリコールを含有する、害虫忌避剤の皮膚への浸透抑制剤を提供するものである。この浸透抑制剤は、ポリアルキレングリコールを含有しているため、害虫忌避剤の皮膚内部への浸透を抑え、害虫忌避剤をより長時間表皮に滞留させることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に何ら制限されるものではない。
【0056】
<<試験例1:皮膚吸収抑制試験)>>
<試験例1−1(実施例1〜3、比較例1)>
(害虫忌避組成物の調製)
下記表1に示す処方に従い、各成分を撹拌下で混合して、害虫忌避組成物を調製した(実施例1〜3、比較例1)。なお、ディートのlogP値は2.0である。またPEG−200(マクロゴール200)、PEG−1000(マクロゴール1000)、及びPP−1000(ニューポールPP−1000)は、三洋化成工業株式会社から入手したものを用いた。
【0057】
【表1】
【0058】
(試験方法)
以下の手順により試験を行った。なお、試験装置として、図1に示す水平型拡散セル(ビードレックス社製、平板膜用水平型パームセル)を使用した。
1.マウスの皮膚1(ラボスキン、株式会社星野実験動物飼育所より入手)を水平型拡散セル10に、皮膚1の真皮側がレセプターセル2側に位置するように取り付けた。
2.皮膚1の角層側(4.9cm)に、上記調製した害虫忌避組成物を約45μL処理し、アルミ箔8で覆い、締め付けノブ6で皮膚1を固定した。
3.レセプターセル2にはディートを含まない生理食塩水9を50mL満たした。
4.実験の間、レセプターセル2はスターラー3でセル内の生理食塩水を撹拌させ、レセプターセル2を覆っているウォータージャケット4には、ヒーター/サーキュレーター5により、37℃の温水を循環させることで、レセプターセル2内の温度を37℃で一定に保った。
5.レセプターセル2内の温度が37℃になった時点から、0.5、1時間後に、レセプターセル2のサンプリング・ポート7より生理食塩水9を3mLサンプリングし、その後同量のディートを含まない生理食塩水を戻し、液量を一定にした。
6.サンプリング液中のディート量をHPLCによって測定した。ディート量の測定結果より、下記式により、皮膚上残存量、皮膚上残存率を算出した。
0.5時間後の皮膚上残存量(mg/cm)=(処理ディート量−0.5時間後にサンプリングした液のディート量×50/3)/処理面積
1時間後の皮膚上残存量(mg/cm)=(処理ディート量−1時間後にサンプリングした液のディート量×50/3−0.5時間後にサンプリングした液のディート量)/処理面積
皮膚上残存率(%)=各時間の皮膚上残存量/処理ディート量×100
皮膚上残存量(mg/cm)は小数第三位を四捨五入した数値とし、皮膚上残存率(%)は小数第一位を四捨五入した数値とした。
試験例1−1の結果を表2(皮膚上残存量(mg/cm))および表3(皮膚上残存率(%))に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表2、3に示すように、ディート単独で使用した比較例1に比べ、ディートと、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールを併用して使用した実施例1〜3の方が、一定時間経過後の皮膚上のディートの残存量および残存率が、顕著に多いまたは高い結果となった。
この結果により、ディート等の害虫忌避剤を単独で皮膚に適用するよりも、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールと合わせて害虫忌避剤を皮膚に適用することにより、害虫忌避剤がより長い時間皮膚上に残存することがわかった。
【0062】
<試験例1−2(実施例4〜8、比較例1)>
下記表4に示す処方に従い、害虫忌避剤組成物を調製し(実施例4〜8、比較例1)、試験例1−1と同様に皮膚吸収抑制試験を行った。表4中、PP2000(ニューポールPP−2000)は、三洋化成工業株式会社から入手したものを用いた。
試験例1−2の結果を表5(皮膚上残存量(mg/cm))および表6(皮膚上残存率(%))に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
実施例4〜8と試験例1−1の比較例1を比較してわかるように、ディートに対しポリプロピレングリコールを併用することにより、一定時間の経過後の皮膚上のディートの残存量および残存率が多くなるまたは高くなる結果となった。また、ポリプロピレングリコールの含有量を増やすと、濃度依存的にディートの残存量および残存率が多くなるまたは高くなる結果となった。
また、ディートの含有量に対してポリプロピングリコールの含有量が最も少ない(ディートの含有量を1としたときのポリプロピングリコールの含有量が質量比で0.05である)実施例4の害虫忌避組成物においても、ポリプロピングリコールを含有しない試験例1−1の比較例1の害虫忌避組成物と比較して、一定時間の経過後の皮膚上の害虫忌避剤の残存量および残存率が多いまたは高い結果となった。
【0067】
<試験例1−3(実施例9、比較例2)>
下記表7に示す処方に従い、害虫忌避剤組成物を調製し(実施例9、比較例2)、試験例1−1と同様に皮膚吸収抑制試験を行った。表7中、PP2000(ニューポールPP−2000)は、三洋化成工業株式会社から入手したものを用いた。
試験例1−3の結果を表8(皮膚上残存量(mg/cm))および表9(皮膚上残存率(%))に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
実施例9と比較例2を比較してわかるように、ディートに対しポリプロピレングリコールを併用することにより、一定時間の経過後の皮膚上のディートの残存量および残存率が多くなるまたは高くなる結果となった。
【0072】
<試験例1−4(実施例10〜11、比較例3〜4)>
下記表10に示す処方に従い、害虫忌避剤組成物を調製し(実施例10〜11、比較例3〜4)、試験例1−1と同様に皮膚吸収抑制試験を行った。
なお、メントールのlogP値は3.4、p−メンタン3,8−ジオールのlogP値は1.4である。
試験例1−3の結果を表11(皮膚上残存量(mg/cm))および表12(皮膚上残存率(%))に示す。
【0073】
【表10】
【0074】
【表11】
【0075】
【表12】
【0076】
表11、12に示すように、試験例1−1で使用したディートの代わりに害虫忌避剤のメントールを使用した場合であっても、害虫忌避剤を単独で使用した比較例3に比べ、害虫忌避剤とポリプロピレングリコールを併用して使用した実施例10の方が、一定時間の経過後の皮膚上の害虫忌避剤の残存量および残存率が多いまたは高い結果となった。害虫忌避剤としてp‐メンタン3,8−ジオールを使用した場合も同様であった。
この結果により、ディートの代わりに害虫忌避剤のメントールまたはp‐メンタン3,8−ジオールを使用した場合であっても、これら害虫忌避剤を単独で皮膚に適用するよりも、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールと合わせて害虫忌避剤を皮膚に適用することにより、害虫忌避剤がより長い時間、皮膚上に残存することがわかった。
【0077】
<試験例1−5(参考例1〜4)>
下記表13に示す処方に従い、害虫忌避剤組成物を調製し(参考例1〜4)、試験例1−1と同様に皮膚吸収抑制試験を行った。
なお、イミダクロプリドのlogP値は0.8、アセタミプリドのlogP値は0.6である。
試験例1−5の結果を表14(皮膚上残存量(mg/cm))および表15(皮膚上残存率(%))に示す。
【0078】
【表13】
【0079】
【表14】
【0080】
【表15】
【0081】
参考例1〜4の害虫忌避剤組成物における害虫忌避剤(イミダクロプリド及びアセタミプリド)はlogP値が1未満であり、皮膚に浸透しにくい性質を有するため、ポリアルキレングリコールを併用したとしても、一定時間の経過後の皮膚上の害虫忌避剤の残存量および残存率に変化は見られなかった。
【0082】
<<試験例2(吸血阻止試験)>>
<試験例2−1(実施例12〜14、比較例5)>
(害虫忌避組成物の調製)
下記表16に示す処方に従い、各成分を撹拌下で混合して、害虫忌避組成物を調製した(実施例12〜14、比較例5)。なお、実施例12は試験例1−2の実施例6と、比較例5は試験例1−1の比較例1と同様の処方である。
【0083】
【表16】
【0084】
(試験方法)
以下の手順により試験を行った。
1.ヘアレスマウス(オス、20〜40g)1頭にコントロール区はエタノールを、処理区は表16に示す各害虫忌避組成物を全身に塗布し(0.5mL処理)、金網ゲージ内に動けないように固定した。
2.マウスを固定したゲージを試験ボックス内(30cm×30cm×30cm)に吊るした後、ケージ内にヒトスジシマカの雌を約40頭放した。
3.ケージ内にヒトスジシマカを放して5分後に、ケージ内からマウスを取り出した後、40〜100℃の恒温器にケージを1分程度入れ、ケージ内のヒトスジシマカを不動状態にし、放したヒトスジシマカ全てをつぶし、吸血頭数を計測し、下記の式より、吸血率および吸血阻止率を算出した。
吸血率(%)=(吸血数/供試虫数)×100
吸血阻止率(%)={(コントロール区の吸血率−処理区の吸血率)/コントロール区の吸血率}×100
吸血率(%)は小数第一位を四捨五入した数値とした。
4.上記2〜3を繰り返し、1時間ごとに吸血阻止率を算出した。
試験例2−1の結果を表17に示す。
【0085】
【表17】
【0086】
表17に示したように、ディート単独で使用した比較例5に比べ、ディートとポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを併用して使用した実施例12〜14の方が、ディートの量が同じであるにもかかわらず、一定時間吸血阻止率が顕著に高いことが分かった。この結果により、ディート等の害虫忌避剤を単独で皮膚に適用するよりも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールと合わせて害虫忌避剤を皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の害虫忌避効果の持続性が向上することが分かった。
【0087】
<試験例2−2(実施例15〜16、比較例6)>
下記表18に示す処方に従い、害虫忌避剤組成物を調製し(実施例15〜16、比較例6)、試験例2−1と同様の手順により試験を行った。
試験例2−2の結果を表19に示す。
【0088】
【表18】
【0089】
【表19】
【0090】
実施例15、16において、比較例6に対してディートの量を3/5に減らしたにも関わらず、ディートと、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを併用して使用することによって、一定時間の吸血阻止率が高くなることが分かった。
この結果により、ディート等の害虫忌避剤を単独で皮膚に適用するよりも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールと合わせて害虫忌避剤を皮膚に適用することにより、皮膚における害虫忌避剤の害虫忌避効果の持続性が向上することがわかった。
【0091】
<<試験例3(皮膚刺激抑制試験)>>
本試験では被験者10名(男性5人、女性5人;No.1〜10)の皮膚に本発明の害虫忌避組成物を適用し、害虫忌避剤の皮膚に対する刺激が抑制されるかについて試験を行った。
(害虫忌避組成物の調製)
[実施例17〜19、比較例7]
下記表20〜23に示す処方に従い、各成分を撹拌下で混合して、実施例17〜19、比較例7の害虫忌避組成物を調製した。
【0092】
【表20】
【0093】
【表21】
【0094】
【表22】
【0095】
【表23】
【0096】
なお、表20〜23において、グリセリン脂肪酸エステルは、モノオレイン酸デカグリセリル(デカグリン1−OV;日光ケミカルズ社より入手)を用いた。
【0097】
(観察・検査項目および判定)
本試験は、(1)事前検診、(2)被験薬貼付、(3)被験薬除去、(4)自覚症状の質問、(5)皮膚反応の観察・判定を以下の表24に示すスケジュールで行った。
【0098】
【表24】
【0099】
(1)事前検診
試験開始直前に被験者に自覚症状(薬剤アレルギー、痛み、痒み等)について質問し、試験への参加の適否を判断した。
(2)被験薬貼付
上記調整した各被験薬(実施例17〜19、及び比較例7の害虫忌避組成物)と、対照薬(精製水)を皮膚テスト用パッチテープ(リバテープ製薬社製)のパッドに約0.03mL滴下し、各被験者の両上腕内側部に貼付した。なお、各被験薬の濃度は等倍に設定した。
(3)被験薬除去
被験薬を貼付してから24時間後に被験薬を除去した。
(4)自覚症状の質問
被験薬貼付直後、被験薬貼付24時間後、被験薬除去1時間後に被験者に痛みや痒みの有無についての質問を行い、自覚症状を確認した。
(5)皮膚反応の観察・判定
皮膚反応の出やすい被験薬除去1時間後に対照薬(精製水)貼付部位の皮膚反応を対照として、被験薬貼付部位の皮膚反応を観察し、判定した。判定は以下のICDRG(国際接触皮膚炎研究会)基準に従い行った。
[ICDRG基準]
−:全く無反応
±:かすかな紅斑のみ
1+:弱い(小水疱なし)陽性反応、軽度紅斑、丘疹
2+:強い(小水疱あり)陽性反応、明らかな紅斑、丘疹
3+:非常に強い陽性反応、強度紅斑、腫脹、大水疱
【0100】
また、各種判定結果に評価点(−:0点、±:0.5点、1+:1点、2+:2点、3+:3点)を与え、平均評価点を算出した。結果を表25に示す。
【0101】
【表25】
【0102】
実施例17〜19のポリプロピレングリコールを含有する害虫忌避組成物を24時間貼付した結果、除去1時間後に1名の被験者(No.6)においてかすかな紅斑(評価±)が認められたものの、他の被験者において皮膚反応は全く見られなかった。平均評価点に関しても、いずれも0.05点と低い点数であった。また、各判定時の自覚症状の質問においても、痛みや痒みの自覚症状を訴える被験者はいなかった。
【0103】
一方、比較例7のポリプロピレングリコールを含有しない害虫忌避組成物を24時間貼付した結果、除去1時間後に9名もの被験者においてかすかな紅斑(評価±)が認められた。平均評価点も0.45点となり、実施例と比較して評価点が高くなる結果となった。
【0104】
以上の結果より、ポリプロピレングリコールを含有する害虫忌避組成物は、ポリプロピレングリコールを含有しない場合と比較して、皮膚に対する刺激が抑制されていることがわかった。したがって、ポリアルキレングリコールを害虫忌避剤とともに皮膚に適用することにより、害虫忌避剤の皮膚に対する刺激を抑制できることがわかった。
【0105】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2015年2月17日付で出願された日本特許出願(特願2015−028648)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0106】
1.皮膚
2.レセプターセル
3.スターラー
4.ウォータージャケット
5.ヒーター/サーキュレーター
6.締め付けノブ
7.サンプリング・ポート
8.アルミ箔
9.生理食塩水
10.水平型拡散セル
図1