(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708624
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】車両用ホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 19/00 20060101AFI20200601BHJP
B60B 3/02 20060101ALI20200601BHJP
B60B 21/02 20060101ALI20200601BHJP
B60B 3/06 20060101ALN20200601BHJP
【FI】
B60B19/00 K
B60B3/02
B60B21/02 G
B60B21/02 H
B60B21/02 Q
!B60B3/06
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-506609(P2017-506609)
(86)(22)【出願日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2016058504
(87)【国際公開番号】WO2016148239
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-55529(P2015-55529)
(32)【優先日】2015年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】河合 正樹
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 滋朗
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−088394(JP,A)
【文献】
実開昭62−033965(JP,U)
【文献】
特開2009−051248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00
B60B 3/02
B60B 21/02
B60B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク(10)とリム(20)を備え、ブレーキ装置(30)を内蔵した車両用ホイールにおいて、
上記リム(20)における上記ディスク(10)の反対側の端に、環状の整流部(40;40A;50)が設けられ、
上記整流部は、上記リム(20)のビードシート部(22)から上記ホイールの径方向内側に突出する環状の突出部(41;51)を有し、この突出部は、上記ディスク(10)の反対側において、上記ホイールの中心軸線に向かうにしたがって上記ディスクに近づくように傾斜した環状の傾斜面(41a;51a)を有し、
上記整流部(40;40A;50)は、上記リム(20)のリムフランジ部(23)に沿う環状の壁部(42;52)を有し、この壁部における上記ディスク(10)の反対側の側面(42a;52a)が、上記ホイールの中心軸線(L)と直交する平坦面をなし、上記傾斜面(41a;51a)に連なっていることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項2】
ディスク(10)とリム(20)を備え、ブレーキ装置(30)を内蔵した車両用ホイールにおいて、
上記リム(20)における上記ディスク(10)の反対側の端に、環状の整流部(40;40A;50)が設けられ、
上記整流部は、上記リム(20)のビードシート部(22)から上記ホイールの径方向内側に突出する環状の突出部(41;51)を有し、この突出部は、上記ディスク(10)の反対側において、上記ホイールの中心軸線に向かうにしたがって上記ディスクに近づくように傾斜した環状の傾斜面(41a;51a)を有し、
上記傾斜面(41a;51a)は、上記ホイールの中心軸線(L)と直交する平面に対して、5〜15°傾斜していることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項3】
上記傾斜面(41a;51a)は、上記ホイールの中心軸線(L)と直交する平面に対して、5〜15°傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
【請求項4】
上記整流部(40;40A)の突出部(41)は、環状のつば形状をなしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ホイール。
【請求項5】
ディスク(10)とリム(20)を備え、ブレーキ装置(30)を内蔵した車両用ホイールにおいて、
上記リム(20)における上記ディスク(10)の反対側の端に、環状の整流部(50;50A;50B)が設けられ、
上記整流部は、上記リム(20)のビードシート部(22)から上記ホイールの径方向内側に突出する環状の突出部(51)を有し、この突出部は、上記ディスク(10)の反対側において、上記ホイールの中心軸線に向かうにしたがって上記ディスクに近づくように傾斜した環状の傾斜面(51a)を有し、
上記突出部(51)の上記傾斜面(51a)が第1の傾斜面として提供され、
さらに上記突出部は上記ディスク(10)側を向く環状の第2の傾斜面(51b)を有し、この第2の傾斜面は、上記ホイールの中心軸線に向かうにしたがって上記ディスクから遠ざかるように傾斜し、
上記第1及び第2の傾斜面(51a,51b)の交差により、環状をなす頂部(51c)が形成されていることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項6】
上記突出部(51)の上記傾斜面(51a)が第1の傾斜面として提供され、
さらに上記突出部は上記ディスク(10)側を向く環状の第2の傾斜面(51b)を有し、この第2の傾斜面は、上記ホイールの中心軸線に向かうにしたがって上記ディスクから遠ざかるように傾斜し、
上記第1及び第2の傾斜面(51a,51b)の交差により、環状をなす頂部(51c)が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ホイール。
【請求項7】
上記整流部(40;50)が上記リム(20)と一体をなしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用ホイール。
【請求項8】
上記整流部(40A;50A;50B)が上記リム(20)と別体をなし、上記リムに取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用ホイール。
【請求項9】
上記整流部(40A)は上記リム(20)と別体をなす環状部材(49)により構成され、この環状部材(49)は、上記突出部(41)と、上記壁部(42)と、上記突出部と上記壁部の境からホイール軸方向に突出する取付部(43)とを一体に有し、この取付部が上記ビードシート部(22)の内周に嵌め込まれることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
空気中を物体が移動する時に、物体の表面近傍に気流の渦が発生する。その渦が大きいほど空気抵抗は大きくなる。空気抵抗は、物体が移動する速度の2乗に比例して増加することが知られている。
【0003】
上記原理に基づき、車両用ホイールに加わる空気抵抗について説明する。ホイールは、ディスクとリムとを備えている。ディスクは、リムにおけるホイール軸方向外側の端(車体の反対側の端)に配置されている。リムの外周にはタイヤが装着される。
【0004】
車両走行時にホイール周りでは、前方からの気流が、回転するタイヤ前端に当たりホイールの両側(ホイールの軸方向外側と内側)を経て後方に抜ける。ホイールの軸方向外側に沿って流れる気流は側面流と称され、車体下側においてホイールの軸方向内側(車体側)に沿って流れる気流は床下流と称されている。
【0005】
上記側面流はタイヤの一方の側面およびディスクの意匠面に沿って比較的円滑に流れる。しかし、床下流は、タイヤの他方の側面を過ぎ、ホイールの大きな開口部に達した時に、一部が剥離して開口部内に巻き込まれ、渦が発生する。しかも、この渦を含む気流は、次の渦に押し出され、ホイールの内部空間を経てディスクの飾り穴から吹き出し、上記側面流に合流する。そのため、側面流を乱し、渦を発生させる。
上述したように、ホイールには渦に起因した空気抵抗が生じる。また、床下流がホイール後部においてリム内壁面に衝突することによっても、空気抵抗が生じる。
【0006】
上記渦発生を抑制する手段の一つとして、ディスクの飾り穴の開口面積を減じ、床下流の一部が側面流に合流するのを制限することが考えられる。しかし、この手段では、ディスクのデザイン性を損なう。また、ホイール内部空間を流れる空気の流量が減るのでホイールに内蔵されたブレーキ装置の冷却が不十分になる。
【0007】
特許文献1は、渦発生を抑制し、空気抵抗を少なくした車両用ホイールを開示している。詳述すると、リムの車体側の端(ディスクの反対側の端)に、環状の整流部材が取り付けられている。この整流部材は、ビードシート部から径方向内側に突出し、ホイールの車体側の開口部の一部(開口部の周縁近傍部)を覆っている。整流部材は、車体側において、ホイールの中心軸線と直交する環状の平坦面を有している。
【0008】
特許文献1のホイールでは、床下流が上記整流部材の平坦面に沿って整流され、開口部での床下流の剥離が抑制されるため、渦の発生を少なくでき、ひいては床下流の一部が側面流に向かって吹き出すことによって生じる渦の発生も抑えることができる。これにより、ホイールでの空気抵抗を減じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−51248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、ホイールでの空気抵抗が減少するものの、ホイールの内部空間への流入空気量が減少するため、ホイールに内蔵されたブレーキ装置の冷却性能が低下する欠点があった。
【0011】
特許文献1には、整流部材に空気取り入れ孔を形成し、ホイール内部空間へ空気を取り入れてブレーキ装置の冷却を図る実施形態も開示されている。しかし、この空気取り入れ孔は、ホイールの中心軸線と直交する平坦面に開口しているため、床下流の一部が空気取り入れ孔を経てホイール内部空間へ流入する量は少なく、ブレーキ装置を十分に冷却することは期待できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、ディスクとリムを備え、ブレーキ装置を内蔵した車両用ホイールにおいて、
上記リムにおける上記ディスクの反対側の端に、環状の整流部が設けられ、
上記整流部は、上記リムのビードシート部から上記ホイールの径方向内側に突出する環状の突出部を有し、この突出部は、上記ディスクの反対側において、上記ホイールの中心軸線に向かうにしたがって上記ディスクに近づくように傾斜した環状の傾斜面を有していることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、整流部の突出部の傾斜面により、床下流の剥離による渦発生を抑制し、空気抵抗を減じることができる。しかも、整流部の傾斜面によりブレーキ装置を冷却するのに十分な量の空気をホイール内部空間に導くことができる。
【0014】
好ましくは、上記整流部は、上記リムのリムフランジ部に沿う環状の壁部を有し、この壁部における上記ディスクの反対側の側面が、上記ホイールの中心軸線と直交する平坦面をなし、上記傾斜面に連なっている。
この構成によれば、ホイールの中心軸線と直交する平坦な側面が傾斜面に連なっているので、空気抵抗のさらなる低減を図ることができる。
【0015】
好ましくは、上記傾斜面は、上記ホイールの中心軸線と直交する平面に対して、5〜15°傾斜している。
この構成によれば、空気抵抗の低減効果とブレーキ装置の冷却効果をバランス良く実現できる。5°未満であるとブレーキ装置を冷却するのに必要な流量を確保できず、15°を超えるとブレーキ装置を冷却するのに必要な流量を確保できるものの、空気抵抗が増大して整流部の効果が減じられるからである。
【0016】
好ましくは、上記整流部の突出部は、環状のつば形状をなしている。
この構成によれば、ホイール重量の増大を抑制できる。
【0017】
好ましくは、上記突出部の上記傾斜面が第1の傾斜面として提供され、さらに上記突出部は上記ディスク側を向く環状の第2の傾斜面を有し、この第2の傾斜面は、上記ホイールの中心軸線に向かうにしたがって上記ディスクから遠ざかるように傾斜し、上記第1及び第2の傾斜面の交差により、環状をなす頂部が形成されている。
この構成によれば、ホイール前部での床下流の剥離による渦発生を抑制できるだけでなく、ホイール後部のリム内壁面に床下流が衝突する際に、整流部の頂部で分流して第1、第2の傾斜面に沿って円滑に流すことができるので、さらに空気抵抗を低減できる。
【0018】
本発明の一態様では、上記整流部が上記リムと一体をなしている。
本発明の他の態様では、上記整流部が上記リムと別体をなし、上記リムに取り付けられている。
【0019】
好ましくは、上記整流部は上記リムと別体をなす環状部材により構成され、この環状部材は、上記突出部と、上記壁部と、上記突出部と上記壁部の境からホイール軸方向に突出する取付部とを一体に有し、この取付部が上記ビードシート部の内周に嵌め込まれる。
この構成によれば、リムと別体をなす環状部材を比較的容易にリムに取り付けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両用ホイールは、ブレーキ装置冷却のためにホイール内に流れる空気の流量を確保しつつ、空気抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用ホイールの平断面図である。
【
図2】同車両用ホイールの要部である整流部の拡大断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る車両用ホイールの整流部の拡大断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る車両用ホイールの平断面図である。
【
図5】本発明の第4実施形態に係る車両用ホイールの整流部の拡大断面図である。
【
図6】本発明の第5実施形態に係る車両用ホイールの整流部の拡大断面図である。
【
図7】本発明の第6実施形態に係る車両用ホイールの整流部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態に係る車両用ホイールについて
図1、
図2を参照しながら説明する。
図1に示す車両用ホイール1は、例えばアルミ合金(軽金属)の鋳造品からなり、ほぼ円盤形状のディスク10と、このディスク10の周縁に連なるほぼ円筒形状のリム20とを一体に備えている。リム20の外周にはタイヤTが装着される。
【0023】
ディスク10は、中央の円板形状のハブ取付部11と、環状の周縁部12と、これらハブ取付部11と周縁部12とを連ねるようにして放射状に延びるスポーク部14とを有している。
上記ハブ取付部11には、ハブ穴11aと複数のボルト穴11bが形成されている。スポーク部14間には飾り穴15が形成されている。
【0024】
上記リム20は、一般的なホイールのリムと同様に、リムドロップ部21と、その両端部に連なる一対のビードシート部22と、一対のリムフランジ部23とを有している。
【0025】
ディスク10はリム20のホイール軸方向外側(車体の反対側)の端に配置されており、これらディスク10とリム20によりホイール1の内部空間2が形成されている。リム20のホイール軸方向内側(車体側)には、開口部3が形成されている。
上記開口部3から上記内部空間2に車両のハブ(図示しない)が入り込み、このハブに上記ディスク10のハブ取付部11が固定されている。この内部空間2にはブレーキ装置30が収容されている。
【0026】
ブレーキ装置30は、図示しないハブに固定されたブレーキロータ31と、ブレーキキャリパ32とを備えている。ブレーキキャリパ32は、油圧シリンダによって動作する一対のブレーキパッド(図示しない)を有し、これらブレーキパッドをブレーキロータ31に押しつけることにより、摩擦による制動を可能にしている。
上記飾り穴15は、意匠性を高める役割とともに上記ブレーキ装置30で発生する熱を外部に逃がす役割を有している。
【0027】
次に、本発明の特徴部について説明する。
図1、
図2に示すように、リム20における車体側(ディスク10の反対側)の端には環状の整流部40がリム20と一体をなして設けられている。この整流部40は、ビードシート部22からホイール1の径方向内側に突出する環状のつば部41(つば形状の突出部)と、上記リムフランジ部23に沿いリムフランジ部23と一体をなす環状の壁部42とを有している。
【0028】
上記つば部41の車体側の側面は、中心軸線Lに向かうにしたがってディスク10に近づく傾斜面41a(テーパ面;円錐面)となっている。上記壁部42の車体側の側面はホイール1の中心軸線Lと直交する環状の平坦面42aとなっており、上記傾斜面41aに連なっている。
【0029】
整流部40のホイール径方向の幅a及び傾斜面41aの角度bは、床下流の一部剥離(開口部3からの回り込み)を抑制しつつホイール1内にブレーキ装置30の冷却に必要な空気の流量を確保するように設定される。幅aは50mm〜80mmが好ましく、傾斜面41aの傾斜角度bは5〜15°が好ましい。5°未満であるとブレーキ装置30への冷却空気の流量を確保しにくくなるからである。15°を超えると、冷却空気の流量を確保できるものの、空気抵抗が増大して整流部40の効果が減じられるからである。
【0030】
本実施形態では、ホイール1と整流部40とが一体に構成されており、ホイール1の鋳造後にフローフォーミングおよび機械加工を施すことにより、ホイール1に整流部40が成形される。
【0031】
以下に、上記ホイール1の作用を説明する。
図1で矢印Aで示すように、車両走行中に床下流は、ホイール1の前部において壁部42の平坦面42a及びこれに連なるつば部41の傾斜面41aにより整流されるため、剥離が抑制され、ひいては渦の発生が抑制されるので、空気抵抗が減じられる。また、床下流Aが整流されて、後方に流れるので、ホイール1の後方のリム20の内壁面に衝突することが抑制され、この衝突に起因した空気抵抗も低減される。
【0032】
床下流Aの一部は、傾斜面41aによりホイール1の内部に導かれてブレーキ装置30を冷却し、ディスク10の飾り穴15からホイール1の外に出て、ホイール1の外側を流れる側面流Bに合流する。
【0033】
上記整流部40はリム20の車体側に配置され、外部から見えにくい。また、空気抵抗を減じるためにディスク10の飾り穴15の開口面積を小さくする等の変更をせずに済む。そのため、ホイールの意匠性は損なわれない。
【0034】
以下、本発明の他の実施形態について図面を参照しながら説明する。これら実施形態において、先行する実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0035】
図3に示す第2実施形態では、整流部40Aが、リム20と別体をなす環状部材49により構成されている。この環状部材49は、傾斜面41aを有するつば部41と、平坦面42aを有する壁部42と、つば部41と壁部42の境部近傍からホイール軸方向外側に突出する取付部43とを有している。この取付部43は周方向に間隔をおいて複数形成されている。取付部43の先端部のホイール径方向外側には突起43aが形成されている。上記環状部材49をリム20に押し込むと、上記取付部43が弾性変形し、突起43aがビードシート部22を乗り越える。さらに環状部材49を押し込むと、上記突起43aがビードシート部22に隣接してリム20の内周面に形成された環状のノッチ24に嵌り、取付部43が弾性復帰する。
【0036】
上記環状部材49の取付状態において、上記つば部41はビードシート部22からホイール径方向内側に突出し、壁部42はリムフランジ部23の車体側の側面に接し、その平坦面42aは、リムフランジ部23の外周縁の車体側の側面23aと面一をなしている。
車両走行中における整流部40Aの作用は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0037】
図4に示す第3実施形態では、リム20の車体側の端に環状の整流部50が形成されている。この整流部50は、断面三角形をなしてビードシート部22からホイール1の径方向内側に突出する環状の突出部51と、リムフランジ部23の車体側に配置されてリムフランジ部23と一体をなす壁部52とを有している。
【0038】
図4に示すように、突出部51は、ディスク10から遠い環状の第1の傾斜面51a(テーパ面;円錐面)とディスク10に近い環状の第2の傾斜面51b(テーパ面;円錐面)を有している。第1の傾斜面51aは、第1、第2実施形態の傾斜面41aと同様に、ホイール1の中心軸線Lに向かうにしたがってディスク10に近づくように傾斜している。第2の傾斜面51bは、ホイール1の中心軸線Lに向かうにしたがってディスク10から遠ざかるように傾斜している。
第1の傾斜面51aと第2の傾斜面51bの断面輪郭は、直線であってもよいし曲線であってもよい。
上記傾斜面51a,51bが交差することにより環状の頂部51cが形成されている。頂部51cの断面輪郭は、尖っていてもよいが、曲率半径が比較的小さな凸曲線になるのが好ましい。
上記壁部52の車体側は、ホイール中心軸線と直交する平坦面52aとなっていて、上記傾斜面51aに連なっている。
【0039】
図4に矢印Aで示すように、床下流はホイール1の前部において平坦面52a、傾斜面51aに整流される点、床下流の一部が傾斜面51aに導かれてブレーキ装置30を冷却する点は、第1、第2実施形態と同様である。
【0040】
第3実施形態では、さらに次の作用効果を発揮することができる。ホイール1の後部において、床下流Aがリム20の内壁面に衝突する際、突出部51の頂部51cから傾斜面51aと傾斜面51bとに分かれて流れる。傾斜面51aを流れる気流は平坦面52aにより整流されて後方に流れる。傾斜面51bを流れる気流はホイール1の内部に導かれて、ブレーキ装置30を冷却し、ディスク10の飾り穴15からホイール1の外に出て、ホイール1の外側を流れる側面流に合流する。
【0041】
上記のように床下流の一部が分流され傾斜面51a,51bに沿って円滑に流れるので、空気抵抗を低減させることができる。
第3実施形態でも、傾斜面51aの傾斜角度は第1、第2実施形態と同様に5〜15°が最も好ましいが、より大きな傾斜角度であっても採用可能である。上記分流効果による空気抵抗の減少が、傾斜角度の増大に伴う空気抵抗の増加の一部を相殺するからである。
【0042】
図5に示す第4実施形態では、第1の傾斜面51aの断面形状の輪郭が凸曲線をなしており、リムフランジ部23の車体側の傾斜した側面23aに滑らかに連なっている。
【0043】
図6に示す第5実施形態では、整流部50Aの突出部51が、リム20と別体をなす環状部材55とキャップ56により構成されている。この環状部材55は、断面略山形をなし、環状の溝55aと、この溝55aの底面に周方向に間隔をおいて形成されたねじ挿通孔55bを有している。このねじ挿通孔55bに挿通されたねじ57をリム20のビードシート部22の内周面に形成されたねじ孔22aにねじ込むことにより、環状部材55はビードシート部22に固定されている。
【0044】
上記キャップ56は、半割された環状をなし、横断面が折れ曲げられた形状を有している。キャップ56を上記環状部材55の頂部に固定することにより、上記溝55aが塞がれている。
上記環状部材55とキャップ56に、第1及び第2の傾斜面51a,51bが形成され、キャップ56に頂部51cが形成されている。第1の傾斜面51aは、リムフランジ部23の車体側の側面23aに連なっている。
上記溝55aの代わりに、ボルト穴位置にボルト頭より径が大きい座グリ穴を設けてもよい。この場合、キャップ56は座グリ穴ごとに設置される。
【0045】
図7に示す第6実施形態では、整流部50Bの突出部51がリム20と別体をなす環状部材58により構成されている。この環状部材58は、第1及び第2の傾斜面51a,51bと、頂部51cを有している。環状部材58の内周面には環状の浅い凹部58aが形成されており、この凹部58aに充填された接着剤59により、環状部材58がビードシート部22の内周面に固定されている。
上記凹部58aは周方向に連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
上記第1、第2実施形態において整流部は、平坦面を有する壁部を有するが、この壁部は無くてもよい。その場合、つば部の傾斜面がリムフランジ部の側面に連なる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、空気抵抗の低減とブレーキ装置の冷却を要求される車両用ホイールに適用可能である。