(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック部は、前記オスコネクタ部を他の医療用コネクタのメスコネクタ部に挿入すると、前記筒壁が前記他の医療用コネクタに押されてスライドし、前記ロック用突起が前記複数の爪を押圧して弾性変形させることで、前記複数の爪を前記他の医療用コネクタから引き抜け不能なロック状態にする、請求項1に記載の医療用コネクタ。
前記ロック部は、前記オスコネクタ部を他の医療用コネクタのメスコネクタ部に挿入すると、前記オスコネクタ部が前記メスコネクタ部に当接することでスライドし、前記筒壁が前記外周側突起を押圧して前記複数の爪を弾性変形させることで、前記複数の爪を前記他の医療用コネクタから引き抜け不能なロック状態にする、請求項3に記載の医療用コネクタ。
前記ロック部がスライドして前記複数の爪を前記ロック状態にしたときに、前記筒壁の基端側端面から基端側へ突出して前記筒壁の径方向外側から視認可能となるロック完了視認部を備える、請求項3又は4に記載の医療用コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1〜
図9を参照して、本発明の一実施形態に係る医療用コネクタ1について詳細に例示説明する。
なお、本明細書において、先端側とは、医療用コネクタ1のオスコネクタ部2の中心軸線O1に沿う方向におけるオスコネクタ部2の先端側(例えば、
図1(a)における左側)を意味し、基端側とはその反対側を意味するものとする。
【0023】
図1〜
図3に示すように、本実施形態に係る医療用コネクタ1は、オスコネクタ部2と係合部3とロック部4とを備え、他の医療用コネクタ100と接続可能に設けられている。オスコネクタ部2は、本例ではハウジングH1に一体に形成されている。また、係合部3は、本例では、ハウジングH1に固定された係合部材E1に形成されており、複数(本例では2つ)の爪3aとして構成されている。さらに、ロック部4は、本例では、ハウジングH1にスライド可能に取り付けられたロック部材L1として構成されている。本実施形態に係る医療用コネクタ1は、ハウジングH1及び係合部材E1で構成されるコネクタ本体B1と、オスコネクタ部2の軸線O1に沿う方向にスライド可能にコネクタ本体B1に取り付けられたロック部材L1とによって構成されている。ハウジングH1、係合部材E1及びロック部材L1は、例えば合成樹脂製とすることができる。
【0024】
ハウジングH1には、メスコネクタ部5と混注ポート部6とが形成されている。混注ポート部6の開口部には、種々の医療用コネクタのオスコネクタ部の挿入時に該開口部を開放して流路を形成する一方で、そのようなオスコネクタ部の非挿入時には該開口部を閉鎖する弁体6aが設けられている。
【0025】
なお、医療用コネクタ1は、本例ではオスコネクタ部2に加えてメスコネクタ部5及び混注ポート部6も備えるTポートコネクタとして構成されているが、このような構成に限られるものではない。すなわち、医療用コネクタ1は、例えば、流路切替え構造をさらに加えた三方活栓として構成したり、輸液容器に繋がるチューブの端部に直接取付けられたオスコネクタとして構成したりすることができる。
【0026】
係合部材E1は、複数の爪3aの基端部に連なる筒状の嵌合壁7を備えている。嵌合壁7の基端側端部には、内周側に向けて一対の突片8が突設されている。一対の突片8は、ハウジングH1のオスコネクタ部2の基端部2aに嵌合しており、その結果、係合部材E1がハウジングH1に固定されている。
【0027】
具体的には、一対の突片8は、それぞれ、2つの突起8aを備えており、これらの計4つの突起8aが、オスコネクタ部2の基端部2aに形成された計4つの凹部9に嵌合している。オスコネクタ部2の基端部2a近傍には、4つの凹部9の一部を区画する基端側フランジ10が形成されており、該基端側フランジ10の先端側端面は、基端側に向かって拡径するテーパ面10aになっている。したがって、係合部材E1をハウジングH1に固定する際には、一対の突片8を基端側フランジ10のテーパ面10aに押し当て、一対の突片8を弾性変形させつつ基端側フランジ10を乗り越えさせて、オスコネクタ部2の基端部2aに嵌合させることができる。
【0028】
また、嵌合壁7には、ロック部材L1に形成された後述する複数(本例では2つ)の筒壁側嵌合部17と嵌合可能な複数(本例では2つ)の嵌合壁側嵌合部7aが形成されている。嵌合壁側嵌合部7aは、本例では開口部として形成されている。
【0029】
複数の爪3aは、それぞれ、軸線O1に沿って延びる断面円弧状の板片11と、該板片11の先端側端部に内周側に向けて突設された係合突起12とを備えている。複数の爪3aの係合突起12の先端側端面は、先端側に向けて係合突起12の突出幅を小さくするテーパ面12aになっている。
【0030】
ロック部材L1は、筒壁13を備えている。筒壁13の基端側端部には、内周側に向けて一対の突片14が突設されている。一対の突片14には、複数の爪3aが挿入される挿入孔14aが形成されている。また、一対の突片14は、ハウジングH1のオスコネクタ部2の軸線O1方向中間部にスライド可能に取り付けられている。
【0031】
具体的には、一対の突片14は、それぞれ、2つの突起14bを備えており、これらの計4つの突起14bが、オスコネクタ部2の軸線O1方向中間部に形成された計4つの溝部15内に配置されており、その結果、ロック部材L1がハウジングH1のオスコネクタ部2にスライド可能に取り付けられている。
【0032】
オスコネクタ部2の4つの溝部15の先端側には、これら溝部15の一部を区画する先端側フランジ16が形成されており、該先端側フランジ16の先端側端面は、基端側に向かって拡径するテーパ面16aになっている。したがって、ロック部材L1をハウジングH1に取り付ける際には、一対の突片14を先端側フランジ16のテーパ面16aに押し当て、一対の突片14を弾性変形させつつ先端側フランジ16を乗り越えさせて、オスコネクタ部2の軸線O1方向中間部にスライド可能に取り付けることができる。なお、このようにロック部材L1をハウジングH1に取り付けた後は、一対の突片14が先端側フランジ16に抜け止め保持されるため、ロック部材L1がハウジングH1から脱落することは防止される。
【0033】
また、筒壁13の基端側には、係合部材E1の複数(本例では2つ)の嵌合壁側嵌合部7aと嵌合可能な複数(本例では2つ)の筒壁側嵌合部17が形成されている。筒壁側嵌合部17は、本例では、開口部として形成された嵌合壁側嵌合部7aと嵌合可能な嵌合突起17aを備えている。
【0034】
筒壁13の外周面には、操作部18が設けられており、操作部18の押圧にて、嵌合壁側嵌合部7aと筒壁側嵌合部17との嵌合が解除されるようになっている。本例では、筒壁側嵌合部17は嵌合壁側嵌合部7aに対して内周側から嵌合するようになっており、操作部18の押圧にて筒壁側嵌合部17を内周側へ弾性変形させられるようになっている。操作部18、嵌合壁側嵌合部7a及び筒壁側嵌合部17は、本例では軸線O1を挟んで対向する位置に2組設けられている。
【0035】
筒壁13の内周面には、筒壁13を複数の爪3aに対して基端側にスライドさせたときに複数の爪3aを押圧して内周側に弾性変形させるロック用突起19が形成されている。ロック用突起19は、本例では、複数の爪3aに対応する複数(本例では2つ)の突起として形成されている。ロック用突起19の基端側端面は、先端側に向けてロック用突起19の突出幅を大きくするテーパ面19aになっている。
【0036】
図1に示したように、他の医療用コネクタ100はメスコネクタ部101を備えている。また、本例では、他の医療用コネクタ100はオスコネクタ部102も備えている。オスコネクタ部102は、例えば患者等の生体に留置された留置針に接続することができる。メスコネクタ部101はメスコネクタ側ハウジング103に形成されており、オスコネクタ部102はオスコネクタ側ハウジング104に形成されており、メスコネクタ側ハウジング103とオスコネクタ側ハウジング104とは互いに接合されている。
【0037】
メスコネクタ部101の開口部には、医療用コネクタ1のオスコネクタ部2の挿入時に該開口部を開放して流路を形成する一方で、オスコネクタ部2の非挿入時には該開口部を閉鎖する弁体105が設けられている。本例では、弁体105の天面部105aには、メスコネクタ部101の天面部101a側に向けて付勢力が付与されている。このような付勢力を生じさせるための具体的な構造は図示を省略しているが、そのような構造としては、例えば、弁体105と別体の弦巻ばねを流路内に配置してもよいし、弁体105の天面部105aと一体に蛇腹状の弾性部を設けてもよい。
【0038】
なお、医療用コネクタ1のオスコネクタ部2の挿入時に弁体105がメスコネクタ部101の開口部を開放して流路を形成するための具体的な構造についても図示を省略しているが、そのような構造としては、例えば、弁体105やメスコネクタ側ハウジング103に、メスコネクタ部101の開口部の開放時に形成される流路の一部を区画する溝を適宜設けることができる。
【0039】
メスコネクタ部101の円筒状の周壁部101bにおける外周面には、係合部材E1の複数(本例では2つ)の爪3aに対応する複数(本例では2つ)の係合凹部106が形成されている。
【0040】
以上のように構成された医療用コネクタ1と他の医療用コネクタ100とを互いに接続させる要領は以下のとおりである。まず、
図1に示したような、医療用コネクタ1と他の医療用コネクタ100とが離脱した状態から、例えば左手で他の医療用コネクタ100を持つと共に右手で医療用コネクタ1のコネクタ本体B1を持ち、医療用コネクタ1のオスコネクタ部2を他の医療用コネクタ100のメスコネクタ部101に挿入すると、
図4に示すように、ロック部材L1の筒壁13が他の医療用コネクタ100に当接する。
【0041】
このとき、複数の爪3aの係合突起12の間隔(軸線O1を挟んで対向する部分間の距離)がメスコネクタ部101の天面部101aの外径よりも大きいことから、複数の爪3aによるメスコネクタ部101の天面部101aの乗り越えを伴うことなく、係合部材E1の複数の爪3aの係合突起12に、メスコネクタ部101の天面部101aを越えさせ、係合凹部106と対向させることができる。また、その際、複数の爪3aの係合突起12が備えるテーパ面12aによって、メスコネクタ部101の天面部101aを複数の爪3aの間へとスムーズに案内することができる。
【0042】
そして、オスコネクタ部2をより深く挿入すると、ロック部材L1の筒壁13が他の医療用コネクタ100に押されて係合部材E1に対してスライドし、筒壁13に形成されたロック用突起19が係合部材E1の複数の爪3aを押圧して弾性変形させることで、
図5に示すように、複数の爪3aが他の医療用コネクタ100から引き抜け不能なロック状態となる。ここに、ロック状態とは、本例では、複数の爪3aの係合突起12が、ロック部4(ロック部材L1)のロック用突起19に押されてメスコネクタ部101の係合凹部106内に位置する状態を意味する。
【0043】
また、ロック用突起19で係合部材E1の複数の爪3aを押圧する際には、ロック用突起19が備えるテーパ面19aを介して複数の爪3aを押圧することができるため、複数の爪3aを弾性変形させるための操作力を低減することができる。なお、このような操作力低減のためのテーパ面19aは、ロック用突起19側に設ける代わりに、複数の爪3a側に設けてもよい。
【0044】
さらに、筒壁13が複数の爪3aをロック状態にしたとき、嵌合壁側嵌合部7a及び筒壁側嵌合部17が互いに嵌合して、筒壁13が他の医療用コネクタ1側にスライドすることを防止するようになっている。
【0045】
前述したロック状態で、医療用コネクタ1及び他の医療用コネクタ100に対する操作を終了すると、メスコネクタ部101内に配置された弁体105に付与されている付勢力により、医療用コネクタ1と他の医療用コネクタ100とが互いに離れる方向に動き、
図6に示すように、複数の爪3aの係合突起12が係合凹部106の端部に係止された状態、すなわち、コネクタ同士の接続状態となる。
【0046】
医療用コネクタ1は、以上のような要領で、他の医療用コネクタ100に接続することができるが、その接続に際しては、複数の爪3aによるメスコネクタ部101の天面部101aの乗り越えを必要としない。したがって、医療用コネクタ1によれば、他の医療用コネクタ100に接続するに際し、他の医療用コネクタ100の意図しない変位を抑制することができる。なお、本実施形態では、複数の爪3aがロック状態となるときに、筒壁側嵌合部17としての嵌合突起17aが嵌合壁側嵌合部7aとしての開口部に嵌合するが、嵌合突起17aの大きさ及び形状は、嵌合に際しての嵌合突起17aの乗り越えに要する力が、他の医療用コネクタ100の意図しない変位を生じない程度に十分に小さいものとなるように設定されていることは言うまでもない。
【0047】
次に、医療用コネクタ1と他の医療用コネクタ100とを互いに離脱させる要領について以下に説明する。まず、
図7に示すように、筒壁13に設けられた操作部18を押圧することで、嵌合壁側嵌合部7aと筒壁側嵌合部17との嵌合が解除される。
【0048】
この状態で、
図8に示すように、筒壁13を他の医療用コネクタ100側にスライドさせると、複数の爪3aが弾性変形した状態から復元し、ロックが解除される。そして、
図9に示すように、オスコネクタ部2をメスコネクタ部101から抜去することで、コネクタ同士の接続を解除することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る医療用コネクタ1によれば、医療用コネクタ1のオスコネクタ部2を他の医療用コネクタ100のメスコネクタ部101に挿入すると、ロック部4(ロック部材L1)が係合部3(複数の爪3a)に対してスライドし、このようにスライドしたロック部4により、係合部3を他の医療用コネクタ100から引き抜け不能なロック状態にすることができる。
【0050】
したがって、本実施形態によれば、オスコネクタ部2を他の医療用コネクタ100のメスコネクタ部101に挿入するだけで、コネクタ同士を接続することができる。また、本実施形態によれば、ロック部4のスライドによって係合部3をロック状態にすることができるため、係合部3による他の医療用コネクタ100の段部の乗り越えを伴うことなくコネクタ同士を接続することができる。したがって、本実施形態によれば、他の医療用コネクタ100に対する接続操作の容易性を確保しつつ、他の医療用コネクタ100の意図しない変位を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る医療用コネクタ1は、係合部3が複数の爪3aを備え、ロック部4は、複数の爪3aを包囲する筒壁13と、該筒壁13の内周面に形成されたロック用突起19とを備えている。したがって、本実施形態によれば、簡単な構成によって、前述した効果、すなわち、他の医療用コネクタ100に対する接続操作の容易性を確保しつつ、他の医療用コネクタ100の意図しない変位を抑制できるという効果を得ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、ロック部4は、オスコネクタ部2を他の医療用コネクタ100のメスコネクタ部101に挿入すると、筒壁13が他の医療用コネクタ100に押されてスライドし、ロック用突起19が複数の爪3aを押圧して弾性変形させることで、複数の爪3aを他の医療用コネクタ100から引き抜け不能なロック状態にするように構成されている。したがって、本実施形態によれば、他の医療用コネクタ100と、医療用コネクタ1のロック部4以外の部分とを把持して、医療用コネクタ1のオスコネクタ部2を他の医療用コネクタ100のメスコネクタ部101に挿入するだけで、コネクタ同士を接続することができ、良好な操作性を得ることができる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る医療用コネクタ1は、複数の爪3aの基端部に連なる嵌合壁7を備え、嵌合壁7と筒壁13との間には、筒壁13が複数の爪3aをロック状態にしたときに互いに嵌合して、筒壁13が他の医療用コネクタ100側にスライドすることを防止する、嵌合壁側嵌合部7a及び筒壁側嵌合部17が設けられている。したがって、本実施形態によれば、簡単な構成によってロック状態を保持することができる。
【0054】
また、本実施形態では、筒壁13は該筒壁13の外周面に操作部18を備え、操作部18の押圧にて、嵌合壁側嵌合部7aと筒壁側嵌合部17との嵌合が解除されるようになっている。したがって、本実施形態によれば、筒壁13に設けられた操作部18を押圧し、そのまま筒壁13をスライドさせることでロックを解除できるため、操作性を良好なものとすることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、ロックを解除するためには、操作部18を押圧した上で、筒壁13をスライドさせるという2段階の操作を必要とし、しかも、そのスライドに際しては、医療用コネクタ1の一部である筒壁13を、離脱の対象である他の医療用コネクタ100にあえて近づける方向にスライドさせる必要がある。したがって、本実施形態によれば、意図しないコネクタの離脱の発生を確実に防止することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、操作部18、嵌合壁側嵌合部7a及び筒壁側嵌合部17は、軸線O1を挟んで対向する位置に2組設けられているので、例えば親指と人差し指で2つの操作部18を外周側から摘むだけで操作部18の押圧操作ができるため、操作性をより一層、良好なものとすることができる。
【0057】
次に、
図10〜
図14を参照して、本発明の他の実施形態に係る医療用コネクタ21について詳細に例示説明する。
本実施形態に係る医療用コネクタ21は、前述した実施形態の場合とは、特に、ロック部24が係合部23に対してスライドする方向が異なる点で、構成が異なっている。
【0058】
図10〜
図12に示すように、本実施形態に係る医療用コネクタ21は、オスコネクタ部22と係合部23とロック部24とを備え、他の医療用コネクタ200と接続可能に設けられている。オスコネクタ部22は、本例ではハウジングH2に一体に形成されている。また、係合部23は、本例では、ハウジングH2に固定された係合部材E2に形成されており、複数(本例では2つ)の爪23aとして構成されている。さらに、ロック部24は、本例では、ハウジングH2にスライド可能に取り付けられたロック部材L2として構成されている。本実施形態に係る医療用コネクタ21は、ハウジングH2及び係合部材E2で構成されるコネクタ本体B2と、オスコネクタ部22の軸線O2に沿う方向にスライド可能にコネクタ本体B2に取り付けられたロック部材L2とによって構成されている。ハウジングH2、係合部材E2及びロック部材L2は、例えば合成樹脂製とすることができる。
【0059】
ハウジングH2には、オスコネクタ部22の反対側に、例えば輸液容器に繋がるチューブの端部を接続可能な接続部25が形成されている。なお、ハウジングH2は、このような構成に代えて、例えば、前述した実施形態の場合と同様に、Tポートコネクタや三方活栓として構成することも可能である。
【0060】
係合部材E2は、複数の爪23aの基端部に連なる底壁40を備えている。底壁40は、ハウジングH2のオスコネクタ部22を挿入可能な貫通孔41(
図12参照)を備え、オスコネクタ部22の軸線O2方向中間部に嵌合しており、その結果、係合部材E2がオスコネクタ部22に抜け止め可能に保持されている。また、底壁40には、複数の爪23aとは反対側に延びる4つの突起42が形成されている。なお、底壁40に設ける突起42の個数は適宜増減が可能である。各突起42の先端部には、ロック部材L2側に設けられた後述するロック部材側凸部46を乗り越えさせることでクリック感を生じさせる係合部材側凸部43が形成されている。さらに、底壁40には、複数の爪23aと同一方向に延びる一対の案内片44が設けられている。一対の案内片44は、ロック部材L2の後述する筒壁33のスライド移動を案内するようになっている。
【0061】
ロック部材L2は、筒壁33を備えている。筒壁33の基端側端部には、内周側に向けて一対の突片34が突設されている。一対の突片34には、係合部材E2に設けられた4つの突起42を挿入可能な4つの開口部45が設けられている。なお、ロック部材L2に設ける開口部45の個数は、係合部材E2に設ける突起42の個数に合わせて適宜増減が可能である。各開口部45には、係合部材側凸部43が乗り越えることでクリック感を生じさせるロック部材側凸部46が形成されている。
【0062】
ロック部材L2の一対の突片34は、ハウジングH2のオスコネクタ部22の基端部に設けられたフランジ47と、オスコネクタ部22に抜け止め可能に保持された係合部材E2の底壁40との間にスライド可能に配置されている。なお、オスコネクタ部22のフランジ47の先端側には、ロック部材L2の一対の突片34が可動範囲の基端側端部まで(フランジ47に当接するまで)移動したときに、一対の突片34が乗り越えクリック感を生じさせる環状凸部48が形成されている。また、環状凸部48は、一対の突片34が可動範囲の基端側端部から先端側へスライドするときにも、一対の突片34を乗り越えさせてクリック感を生じさせるようになっている。
【0063】
また、ロック部材L2の筒壁33の内周側には、一対の凸部49が形成されている。一対の凸部49は、ロック部材L2のスライド移動時に係合部材E2の案内片44に摺接することで、ロック部材L2と係合部材E2との間の摺動抵抗を抑制しつつロック部材L2が案内されるようにしている。なお、一対の凸部49は、案内片44に摺接しない構成としてもよい。また、一対の凸部49を設けない構成としてもよい。
【0064】
係合部材E2の複数の爪23aは、それぞれ、軸線O2に沿って延びる断面円弧状の板片31と、該板片31の先端側端部に内周側に向けて突設された係合突起32と、板片31の先端側端部に外周側に向けて突設された外周側突起50とを備えている。なお、外周側突起50は、軸線O2方向において基端側より突出していればよく、例えば、板片31の外周面に軸線O2に沿って延びる溝を設け、この溝の先端側に突設された構成であってもよい。すなわち、外周側突起50は、板片31の外周面における周方向の高さが最も大きい必要はない。複数の爪23aの係合突起32の先端側端面は、先端側に向けて係合突起32の突出幅を小さくするテーパ面32aになっている。また、複数の爪23aの外周側突起50の基端側端面は、先端側に向けて外周側突起50の突出幅を大きくするテーパ面50aになっている。
【0065】
また、ロック部材L2の筒壁33の内周面における先端部近傍には、複数の爪23aの外周側突起50に対応する複数(本例では2つ)の先端側に向けて拡径するテーパ面39が設けられている。
【0066】
図10に示したように、他の医療用コネクタ200はメスコネクタ部201を備えている。他の医療用コネクタ200は、本例では、留置針(図示省略)に接続される留置針ハブとして構成されている。メスコネクタ部201の内周面は、先端側に向けて縮径するテーパ状に形成されており、その傾きは、オスコネクタ部22のテーパ状の外周面と同一の角度となっている。
【0067】
また、メスコネクタ部201の円筒状の周壁部201bの基端側端部には、外周側に向けて突出する複数(本例では2つ)の係合凸部207が形成されている。
【0068】
以上のように構成された医療用コネクタ21と他の医療用コネクタ200とを互いに接続させる要領は以下のとおりである。まず、
図10に示したような、医療用コネクタ21と他の医療用コネクタ200とが離脱した状態から、例えば左手で他の医療用コネクタ200を持つと共に右手で医療用コネクタ21のロック部材L2を持ち、ロック部材L2を他の医療用コネクタ200に近づける方向に移動させ、医療用コネクタ21のオスコネクタ部22を他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入すると、
図13に示すように、オスコネクタ部22の先端部外周面がメスコネクタ部201の基端部内周面に当接する。
【0069】
このとき、複数の爪23aの係合突起32の間隔(本例では、軸線O2を挟んで対向する部分間の距離)がメスコネクタ部201の係合凸部207を設けた部分の外径(本例では、2つの係合凸部207の外周側端部における、軸線O2を挟んで対向する部分間の距離)よりも大きいことから、複数の爪23aによるメスコネクタ部201の係合凸部207の乗り越えを伴うことなく、係合部材E2の複数の爪23aの係合突起32に、メスコネクタ部201の係合凸部207を越えさせることができる。また、その際、複数の爪23aの係合突起32が備えるテーパ面32aによって、メスコネクタ部201の係合凸部207を複数の爪23aの間へとスムーズに案内することができる。
【0070】
そして、さらにロック部材L2を他の医療用コネクタ200に近づける方向に移動させると、コネクタ本体B2(ハウジングH2及び係合部材E2)はこれ以上移動できないため、ロック部材L2が係合部材E2に対してスライドする。このため、筒壁33が係合部材E2の複数の爪23aの外周側突起50を押圧して複数の爪23aを弾性変形させることで、
図14に示すように、複数の爪23aが他の医療用コネクタ200から引き抜け不能なロック状態となる。ここに、ロック状態とは、本例では、複数の爪23aの係合突起32が、ロック部24(ロック部材L2)の筒壁33に押されてメスコネクタ部201の係合凸部207に引き抜け不能に係止した状態を意味する。また、本例では、このようなロック状態となった時点でコネクタ同士の接続が完了する。
【0071】
なお、本例では、このようなロック状態及び接続状態を確実に維持するために、メスコネクタ部201とロック部材L2との間で、軸線O2の周りの相互の回転が規制されている。具体的には、ロック部材L2の筒壁33は、このような接続状態において筒壁33に対するメスコネクタ部201の回転を阻止する回転阻止部33a(
図10(c)参照)を備えている。回転阻止部33aは、本例では、筒壁33の内周面から突出する凸部として構成されており、メスコネクタ部201が筒壁33に対して回転したときにメスコネクタ部201の複数の係合凸部207に当接してメスコネクタ部201のそれ以上の回転を阻止することで、複数の係合凸部207と複数の爪23aの係合突起32との間の係止状態を維持することができる。
【0072】
また、前記したようなロック状態とするために、筒壁33で係合部材E2の複数の爪23aの外周側突起50を押圧する際には、筒壁33の内周面に設けられたテーパ面39及び外周側突起50が備えるテーパ面50aを介して複数の爪23aを押圧することができるため、複数の爪23aを弾性変形させるための操作力を低減することができる。なお、このような操作力低減のためのテーパ面39及びテーパ面50aは、いずれか一方を省略してもよい。
【0073】
さらに、筒壁33が複数の爪23aをロック状態にしたとき、4つのロック部材側凸部46が4つの係合部材側凸部43を乗り越えることでクリック感が生じる。したがって、該クリック感により、操作者はロックが完了したことを容易に確認することができる。
【0074】
医療用コネクタ21は、以上のような要領で、他の医療用コネクタ200に接続することができるが、その接続に際しては、複数の爪23aによるメスコネクタ部201の係合凸部207の乗り越えを必要としない。したがって、医療用コネクタ21によれば、他の医療用コネクタ200に接続するに際し、他の医療用コネクタ200の意図しない変位を抑制することができる。なお、本実施形態では、クリック感を生じさせるための突起(環状凸部48、ロック部材側凸部46及び係合部材側凸部43)が設けられているが、これらの突起の大きさ及び形状は、クリック感を生じさせる際のこれらの突起の乗り越えに要する力が、他の医療用コネクタ200の意図しない変位を生じない程度に十分に小さいものとなるように設定されていることは言うまでもない。
【0075】
このようにコネクタ同士を接続した後は、例えば、ドレッシングフィルム等の粘着シートで、メスコネクタ部201及びロック部材L2を覆うようにして留置針が留置された患者等の生体の皮膚に貼り付けることで、ロック部材L2の移動を防止し、もって、コネクタの意図しない離脱の発生を確実に防止することができる。また、前述したロック部材側凸部46及び係合部材側凸部43の突出幅を拡大し、一旦ロック部材L2によるロックが完了した場合にはロックを解除できないように構成し、もって、コネクタの意図しない離脱の発生を確実に防止するようにしてもよい。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る医療用コネクタ21によれば、医療用コネクタ21のオスコネクタ部22を他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入すると、ロック部24(ロック部材L2)が係合部23(複数の爪23a)に対してスライドし、このようにスライドしたロック部24により、係合部23を他の医療用コネクタ200から引き抜け不能なロック状態にすることができる。
【0077】
したがって、本実施形態によれば、オスコネクタ部22を他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入するだけで、コネクタ同士を接続することができる。また、本実施形態によれば、ロック部24のスライドによって係合部23をロック状態にすることができるため、係合部23による他の医療用コネクタ200の段部の乗り越えを伴うことなくコネクタ同士を接続することができる。したがって、本実施形態によれば、他の医療用コネクタ200に対する接続操作の容易性を確保しつつ、他の医療用コネクタ200の意図しない変位を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る医療用コネクタ21は、係合部23が、複数の爪23aと、該複数の爪23aの外周面に形成された外周側突起50とを備え、ロック部24は、複数の爪23aを包囲する筒壁33を備えている。したがって、本実施形態によれば、簡単な構成によって、前述した効果、すなわち、他の医療用コネクタ200に対する接続操作の容易性を確保しつつ、他の医療用コネクタ200の意図しない変位を抑制できるという効果を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態では、ロック部24は、オスコネクタ部22を他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入すると、オスコネクタ部22がメスコネクタ部201に当接することでスライドし、筒壁33が外周側突起50を押圧して複数の爪23aを弾性変形させることで、複数の爪23aを他の医療用コネクタ200から引き抜け不能なロック状態にするように構成されている。したがって、本実施形態によれば、他の医療用コネクタ200と、医療用コネクタ21のロック部24とを把持して、医療用コネクタ21のオスコネクタ部22を他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入するだけで、コネクタ同士を接続することができ、良好な操作性を得ることができる。
【0080】
また、本実施形態では、ロック部24の筒壁33は、該筒壁33に対する他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201の回転を阻止する回転阻止部33aを備えている。したがって、本実施形態によれば、前述したロック状態及び接続状態を確実に維持することができる。
【0081】
次に、
図10〜
図14を用いて前述した医療用コネクタ21の変形例について、
図15〜
図19を参照して詳細に例示説明する。
本変形例の医療用コネクタ21Aは、
図10〜
図14を用いて前述した医療用コネクタ21の場合と同様に、オスコネクタ部22Aを他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入すると、オスコネクタ部22Aがメスコネクタ部201に当接することでロック部24Aがスライドし、筒壁33Aが外周側突起50Aを押圧して複数の爪23aAを弾性変形させることで、複数の爪23aAを他の医療用コネクタ200から引き抜け不能なロック状態にするように構成されている。
【0082】
しかしながら、本変形例の医療用コネクタ21Aは、
図10〜
図14を用いて前述した医療用コネクタ21の場合とは異なり、オスコネクタ部22Aが、メスコネクタ部201の天面201aを封止する封止部22aAを備える構成となっている。なお、本変形例の医療用コネクタ21Aが接続される他の医療用コネクタ200は、
図10に示したものと同一の構成になっている。
【0083】
図15〜
図17に示すように、本変形例の医療用コネクタ21Aは、オスコネクタ部22Aと係合部23Aとロック部24Aとを備え、他の医療用コネクタ200と接続可能に設けられている。オスコネクタ部22Aは、本例ではハウジングH2Aに一体に形成されている。また、係合部23Aは、本例では、ハウジングH2Aに固定された係合部材E2Aに形成されており、複数(本例では2つ)の爪23aAとして構成されている。さらに、ロック部24Aは、本例では、ハウジングH2Aにスライド可能に取り付けられたロック部材L2Aとして構成されている。
【0084】
また、本変形例では、オスコネクタ部22Aは、前述したように封止部22aAを備えている。封止部22aAは、本例では、ハウジングH2Aのオスコネクタ部22Aの外周面に周設された環状凹部22bAに嵌合によって固定された円環状の封止部材S2Aとして構成されている。封止部22aAは、オスコネクタ部22Aに固定されたときに基端側に向けて拡径する円錐状のテーパ面22a1Aと、該テーパ面22a1Aの基端側縁部から拡径した円板状の封止フランジ22a2Aとを備えている。
【0085】
本変形例の医療用コネクタ21Aは、ハウジングH2A、係合部材E2A及び封止部材S2Aで構成されるコネクタ本体B2Aと、オスコネクタ部22Aの軸線O2に沿う方向にスライド可能にコネクタ本体B2Aに取り付けられたロック部材L2Aとによって構成されている。ハウジングH2A、係合部材E2A及びロック部材L2Aは、例えば合成樹脂製とすることができる。また、封止部材S2Aは、例えばゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性材料によって構成することができる。
【0086】
ハウジングH2Aには、オスコネクタ部22Aの反対側に、例えば輸液容器に繋がるチューブの端部を接続可能な接続部25Aが形成されている。なお、ハウジングH2Aは、このような構成に代えて、例えば、前述した実施形態の場合と同様に、Tポートコネクタや三方活栓として構成することも可能である。
【0087】
係合部材E2Aは、複数の爪23aAの基端部に連なる底壁40Aを備えている。底壁40Aは、ハウジングH2Aのオスコネクタ部22Aを挿入可能な貫通孔41A(
図17参照)を備え、オスコネクタ部22Aの軸線O2方向中間部に嵌合しており、その結果、係合部材E2Aがオスコネクタ部22Aに抜け止め可能に保持されている。また、底壁40Aには、複数の爪23aAとは反対側に延びる4つの突起42Aが形成されている。なお、底壁40Aに設ける突起42Aの個数は適宜増減が可能である。各突起42Aの先端部には、ロック部材L2A側に設けられた後述するロック部材側凸部46Aを乗り越えさせることでクリック感を生じさせる係合部材側凸部43Aが形成されている。さらに、底壁40Aには、複数の爪23aAと同一方向に延びる円筒状の案内片44Aが設けられている。案内片44Aは、ロック部材L2Aの後述する筒壁33Aのスライド移動を案内するようになっている。
【0088】
ロック部材L2Aは、筒壁33Aを備えている。筒壁33Aの基端側端部には、内周側に向けて一対の突片34Aが突設されている。一対の突片34Aには、係合部材E2Aに設けられた4つの突起42Aを挿入可能な4つの開口部45Aが設けられている。なお、ロック部材L2Aに設ける開口部45Aの個数は、係合部材E2Aに設ける突起42Aの個数に合わせて適宜増減が可能である。各開口部45Aには、係合部材側凸部43Aが乗り越えることでクリック感を生じさせるロック部材側凸部46Aが形成されている。
【0089】
ロック部材L2Aの一対の突片34Aは、ハウジングH2Aのオスコネクタ部22Aの基端部に設けられたフランジ47Aと、オスコネクタ部22Aに抜け止め可能に保持された係合部材E2Aの底壁40Aとの間にスライド可能に配置されている。なお、一対の突片34Aは、それぞれ、2つの突起34aAを備えており、これらの計4つの突起34aAが、オスコネクタ部22Aのフランジ47Aの先端側に形成された計4つの溝部22cA内に配置されており、その結果、ロック部材L1AがハウジングH1Aのオスコネクタ部22Aにスライド可能に取り付けられている。
【0090】
また、ロック部材L2Aの筒壁33Aの内周側には、一対の凸部49Aが形成されている。一対の凸部49Aは、ロック部材L2Aのスライド移動時に係合部材E2Aの案内片44Aに摺接することで、ロック部材L2Aと係合部材E2Aとの間の摺動抵抗を抑制しつつロック部材L2Aが案内されるようにしている。なお、一対の凸部49Aは、案内片44Aに摺接しない構成としてもよい。また、一対の凸部49Aを設けない構成としてもよい。
【0091】
係合部材E2Aの複数の爪23aAは、それぞれ、軸線O2に沿って延びる断面円弧状の板片31Aと、該板片31Aの先端側端部に内周側に向けて突設された係合突起32Aと、板片31の先端側端部に外周側に向けて突設された外周側突起50Aとを備えている。複数の爪23aAの係合突起32Aの先端側端面は、先端側に向けて係合突起32Aの突出幅を小さくするテーパ面32aAになっている。また、複数の爪23aAの外周側突起50Aの基端側端面は、先端側に向けて外周側突起50Aの突出幅を大きくするテーパ面50aAになっている。
【0092】
なお、前述した封止部22aAは、軸線O2方向において係合突起32Aよりも基端側に少なくとも一部が配置されるように設けることが好ましい。このように配置することで、メスコネクタ部201の内周面201cの基端側縁部と天面201aの内周縁部における液密性を確保し易くすることができる。
【0093】
また、ロック部材L2Aの筒壁33Aの内周面における先端部近傍には、複数の爪23aAの外周側突起50Aに対応する複数(本例では2つ)の先端側に向けて拡径するテーパ面39Aが設けられている。
【0094】
以上のように構成された医療用コネクタ21Aと他の医療用コネクタ200とを互いに接続させる要領は以下のとおりである。まず、
図15に示したような、医療用コネクタ21Aと他の医療用コネクタ200とが離脱した状態から、例えば左手で他の医療用コネクタ200を持つと共に右手で医療用コネクタ21Aのロック部材L2Aを持ち、ロック部材L2Aを他の医療用コネクタ200に近づける方向に移動させ、医療用コネクタ21Aのオスコネクタ部22Aを他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入すると、
図18に示すように、メスコネクタ部201の天面201aがオスコネクタ部22Aの封止部22aAに当接して、メスコネクタ部201の天面201aが封止される。
【0095】
このとき、封止部22aAは、基端側に向けて拡径するテーパ面22a1A(
図15参照)を有しているので、メスコネクタ部201の内周面201cの基端側縁部と天面201aの内周縁部における液密性を確保し易くすることができる。
【0096】
また、このとき、複数の爪23aAの係合突起32Aの間隔(本例では、軸線O2を挟んで対向する部分間の距離)がメスコネクタ部201の係合凸部207を設けた部分の外径(本例では、2つの係合凸部207の外周側端部における、軸線O2を挟んで対向する部分間の距離)よりも大きいことから、複数の爪23aAによるメスコネクタ部201の係合凸部207の乗り越えを伴うことなく、係合部材E2Aの複数の爪23aAの係合突起32Aに、メスコネクタ部201の係合凸部207を越えさせることができる。また、その際、複数の爪23aAの係合突起32Aが備えるテーパ面32aAによって、メスコネクタ部201の係合凸部207を複数の爪23aAの間へとスムーズに案内することができる。
【0097】
そして、さらにロック部材L2Aを他の医療用コネクタ200に近づける方向に移動させると、コネクタ本体B2A(ハウジングH2A、係合部材E2A及び封止部材S2A)はこれ以上移動できないため、ロック部材L2Aが係合部材E2Aに対してスライドする。このため、筒壁33Aが係合部材E2Aの複数の爪23aAの外周側突起50Aを押圧して複数の爪23aAを弾性変形させることで、
図19に示すように、複数の爪23aAが他の医療用コネクタ200から引き抜け不能なロック状態となる。ここに、ロック状態とは、本例では、複数の爪23aAの係合突起32Aが、ロック部24A(ロック部材L2A)の筒壁33Aに押されてメスコネクタ部201の係合凸部207に引き抜け不能に係止した状態を意味する。また、本例では、このようなロック状態となった時点でコネクタ同士の接続が完了する。
【0098】
なお、本例では、このようなロック状態及び接続状態を確実に維持するために、メスコネクタ部201とロック部材L2Aとの間で、軸線O2の周りの相互の回転が規制されている。具体的には、ロック部材L2Aの筒壁33Aは、このような接続状態において筒壁33Aに対するメスコネクタ部201Aの回転を阻止する回転阻止部33aA(
図15(c)参照)を備えている。回転阻止部33aAは、本例では、筒壁33Aの内周面から突出する凸部として構成されており、メスコネクタ部201が筒壁33Aに対して回転したときにメスコネクタ部201の複数の係合凸部207に当接してメスコネクタ部201のそれ以上の回転を阻止することで、複数の係合凸部207と複数の爪23aAの係合突起32Aとの間の係止状態を維持することができる。
【0099】
また、前記したようなロック状態とするために、筒壁33Aで係合部材E2Aの複数の爪23aAの外周側突起50Aを押圧する際には、筒壁33Aの内周面に設けられたテーパ面39A及び外周側突起50Aが備えるテーパ面50aAを介して複数の爪23aAを押圧することができるため、複数の爪23aAを弾性変形させるための操作力を低減することができる。なお、このような操作力低減のためのテーパ面39A及びテーパ面50aAは、いずれか一方を省略してもよい。
【0100】
さらに、筒壁33Aが複数の爪23aAをロック状態にしたとき、4つのロック部材側凸部46A(
図17参照)が4つの係合部材側凸部43Aを乗り越えることでクリック感が生じる。したがって、該クリック感により、操作者はロックが完了したことを容易に確認することができる。
【0101】
医療用コネクタ21Aは、以上のような要領で、他の医療用コネクタ200に接続することができるが、その接続に際しては、複数の爪23aAによるメスコネクタ部201の係合凸部207の乗り越えを必要としない。したがって、医療用コネクタ21Aによれば、他の医療用コネクタ200に接続するに際し、他の医療用コネクタ200の意図しない変位を抑制することができる。なお、本変形例では、クリック感を生じさせるための突起(ロック部材側凸部46A及び係合部材側凸部43A)が設けられているが、これらの突起の大きさ及び形状は、クリック感を生じさせる際のこれらの突起の乗り越えに要する力が、他の医療用コネクタ200の意図しない変位を生じない程度に十分に小さいものとなるように設定されていることは言うまでもない。
【0102】
このようにコネクタ同士を接続した後は、例えば、ドレッシングフィルム等の粘着シートで、メスコネクタ部201及びロック部材L2Aを覆うようにして留置針が留置された患者等の生体の皮膚に貼り付けることで、ロック部材L2Aの移動を防止し、もって、コネクタの意図しない離脱の発生を確実に防止することができる。
【0103】
また、コネクタ同士を離脱させる際には、ロック部材L2Aを他の医療用コネクタ200から遠ざける方向に移動させることで、複数の爪23aAを弾性変形から復元させて、ロック状態を解除することができる。そして、このようにロック状態が解除されたとき、メスコネクタ部201の天面201aを封止するように構成された封止部22aAの反発力をコネクタ同士が離れる方向に作用させることができるため、コネクタの分離のための操作性を良好なものとすることができる。また、その際、本例では封止部22aAが基端側に向けて拡径するテーパ面22a1Aを有していることにより、封止部22aAの反発力を効果的に発揮させることができる。
【0104】
なお、本変形例においても、前述したロック部材側凸部46A及び係合部材側凸部43Aの突出幅を拡大し、一旦ロック部材L2Aによるロックが完了した場合にはロックを解除できないように構成し、もって、コネクタの意図しない離脱の発生を確実に防止するようにしてもよい。
【0105】
以上説明したように、本変形例の医療用コネクタ21Aによれば、医療用コネクタ21Aのオスコネクタ部22Aを他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入すると、ロック部24A(ロック部材L2A)が係合部23A(複数の爪23aA)に対してスライドし、このようにスライドしたロック部24Aにより、係合部23Aを他の医療用コネクタ200から引き抜け不能なロック状態にすることができる。
【0106】
したがって、本変形例によれば、オスコネクタ部22Aを他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入するだけで、コネクタ同士を接続することができる。また、本変形例によれば、ロック部24Aのスライドによって係合部23Aをロック状態にすることができるため、係合部23Aによる他の医療用コネクタ200の段部の乗り越えを伴うことなくコネクタ同士を接続することができる。したがって、本変形例によれば、他の医療用コネクタ200に対する接続操作の容易性を確保しつつ、他の医療用コネクタ200の意図しない変位を抑制することができる。
【0107】
また、本変形例の医療用コネクタ21Aは、係合部23Aが、複数の爪23aAと、該複数の爪23aAの外周面に形成された外周側突起50Aとを備え、ロック部24Aは、複数の爪23aAを包囲する筒壁33Aを備えている。したがって、本変形例によれば、簡単な構成によって、前述した効果、すなわち、他の医療用コネクタ200に対する接続操作の容易性を確保しつつ、他の医療用コネクタ200の意図しない変位を抑制できるという効果を得ることができる。
【0108】
また、本変形例では、ロック部24Aは、オスコネクタ部22Aを他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入すると、オスコネクタ部22Aがメスコネクタ部201に当接することでスライドし、筒壁33Aが外周側突起50Aを押圧して複数の爪23aAを弾性変形させることで、複数の爪23aAを他の医療用コネクタ200から引き抜け不能なロック状態にするように構成されている。したがって、本変形例によれば、他の医療用コネクタ200と、医療用コネクタ21Aのロック部24Aとを把持して、医療用コネクタ21Aのオスコネクタ部22Aを他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201に挿入するだけで、コネクタ同士を接続することができ、良好な操作性を得ることができる。
【0109】
また、本変形例では、オスコネクタ部22Aが、メスコネクタ部201の天面201aを封止する封止部22aAを備えている。したがって、本変形例によれば、コネクタ接続時の液密性の確保を容易にすると共に、コネクタ分離時には、封止部22aAの反発力によってその操作性を良好なものとすることができる。
【0110】
また、本実施形態では、ロック部24Aの筒壁33Aは、該筒壁33Aに対する他の医療用コネクタ200のメスコネクタ部201の回転を阻止する回転阻止部33aAを備えている。したがって、本実施形態によれば、前述したロック状態及び接続状態を確実に維持することができる。
【0111】
次に、
図10〜
図14を用いて前述した医療用コネクタ21の他の変形例について、
図20〜
図24を参照して詳細に例示説明する。
本変形例の医療用コネクタ21Bは、
図15〜
図19を用いて前述した医療用コネクタ21Aの場合と比較すると、オスコネクタ部22Bがメスコネクタ部201Bの天面を封止する封止部を備えていない点と、筒壁33Bに対するメスコネクタ部201Bの回転を阻止する回転阻止部33aBの構成が異なる点とで構成が相違しているが、その他の点では同様の構成となっている。
【0112】
図20に示すように、本変形例の医療用コネクタ21Bは、メスコネクタ部201Bの周壁部201bBの外周面にルアーロック用の雄ねじ部201dBが設けられている他の医療用コネクタ200Bに対して接続可能に構成されている。すなわち、このような雄ねじ部201dBに複数の爪23aBの係合突起32Bを係止させてロック状態にしたとしても、筒壁33Bに対してメスコネクタ部201Bが自由に回転できる場合には、メスコネクタ部201Bが係合突起32Bから螺脱してしまうおそれがある。
【0113】
このため、本例では、他の医療用コネクタ200Bの雄ねじ部201dBに軸線O2に沿って延びる一対の回転阻止用の溝部201eBを設ける一方で、筒壁33Bの内周面に、この溝部201eBと係合可能な一対の突条として構成された回転阻止部33aBを設けている。
【0114】
なお、
図21に示すように、係合部材E2Bに設けられた一対の案内片44Bには、回転阻止部33aBを案内可能な案内溝部44aBが設けられている。また、
図22に示すように、筒壁33Bの基端側端部には、内周側に向けて延びる内向きフランジ34Bが設けられている。内向きフランジ34Bは、ハウジングH2Bのオスコネクタ部22Bの基端部に設けられたフランジ47Bと、オスコネクタ部22Bに抜け止め可能に保持された係合部材E2Bの底壁40Bとの間にスライド可能に配置されている。なお、内向きフランジ34Bは、2つの溝34aBを備えており、これらの溝34aBが、オスコネクタ部22Bのフランジ47Bの先端側に形成された2つの突条22dBと係合しており、その結果、ロック部材L2BがハウジングH2Bのオスコネクタ部22Bにスライド可能に取り付けられている。
【0115】
以上のように構成された医療用コネクタ21Bと他の医療用コネクタ200Bとを互いに接続させる要領は以下のとおりである。まず、
図20に示したような、医療用コネクタ21Bと他の医療用コネクタ200Bとが離脱した状態から、例えば左手で他の医療用コネクタ200Bを持つと共に右手で医療用コネクタ21Bのロック部材L2Bを持ち、他の医療用コネクタ200Bの雄ねじ部201dBに設けた溝部201eBとロック部材L2Bの筒壁33Bの内周面に設けた回転阻止部33aBとを係合させる。そして、ロック部材L2Bを他の医療用コネクタ200Bに近づける方向に移動させ、医療用コネクタ21Bのオスコネクタ部22Bを他の医療用コネクタ200Bのメスコネクタ部201Bに挿入すると、
図23に示すように、オスコネクタ部22Bの外周面がメスコネクタ部201Bの内周面に当接する。
【0116】
このとき、複数の爪23aBの係合突起32Bの間隔(本例では、軸線O2を挟んで対向する部分間の距離)がメスコネクタ部201Bの雄ねじ部201dBの外径よりも大きいことから、複数の爪23aBによるメスコネクタ部201Bの雄ねじ部201dBの乗り越えを伴うことなく、係合部材E2Bの複数の爪23aBの係合突起32Bに、メスコネクタ部201Bの雄ねじ部201dBを越えさせることができる。また、その際、複数の爪23aBの係合突起32Bが備えるテーパ面32aBによって、メスコネクタ部201Bの雄ねじ部201dBを複数の爪23aBの間へとスムーズに案内することができる。
【0117】
そして、さらにロック部材L2Bを他の医療用コネクタ200Bに近づける方向に移動させると、コネクタ本体B2B(ハウジングH2B及び係合部材E2B)はこれ以上移動できないため、ロック部材L2Bが係合部材E2Bに対してスライドする。このため、筒壁33Bが係合部材E2Bの複数の爪23aBの外周側突起50Bを押圧して複数の爪23aBを弾性変形させることで、
図24に示すように、複数の爪23aBが他の医療用コネクタ200Bから引き抜け不能なロック状態となる。ここに、ロック状態とは、本例では、複数の爪23aBの係合突起32Bが、ロック部24B(ロック部材L2B)の筒壁33Bに押されてメスコネクタ部201Bの雄ねじ部201dBに引き抜け不能に係止した状態を意味する。また、本例では、このようなロック状態となった時点でコネクタ同士の接続が完了する。
【0118】
そしてこのとき、本例では、前述した溝部201eB(
図20参照)と回転阻止部33aBとの係合によって、メスコネクタ部201Bとロック部材L2Bとの相互の回転が阻止されている。したがって、本例によれば、雄ねじ部201dBを有する医療用コネクタ200Bを接続対象とする場合であっても、メスコネクタ部201Bの回転を阻止してロック状態及び接続状態の確実な維持を可能にすることができる。
【0119】
次に、
図10〜
図14を用いて前述した医療用コネクタ21の更なる他の変形例について、
図25〜
図26を参照して詳細に例示説明する。
本変形例の医療用コネクタ21Cは、
図15〜
図19を用いて前述した医療用コネクタ21Aの場合と比較すると、オスコネクタ部22Cがメスコネクタ部201の天面を封止する封止部を備えていない点と、係合部材E2Cがロック完了視認部51Cを備える点とで構成が相違しているが、その他の点では同様の構成となっている。
【0120】
図20に示すように、本変形例では、係合部材E2Cの底壁40Cには、基端側に向けて突出する断面円弧状の一対の突出片52Cが設けられている。一対の突出片52Cは、
図21に示すように、ロック部24C(ロック部材L2C)がスライドして複数の爪23aC(係合部23C)をロック状態にしたときに、筒壁33Cの基端側端面33bCから基端側へ突出して筒壁33Cの径方向外側から視認可能となるロック完了視認部51Cを構成している。
【0121】
なお、本例では、係合部材E2Cの底壁40Bに設けられた4つの突起42Cも、このようなロック完了視認部51Cを構成している。本例では、
図26に示すように、一対の突出片52Cと4つの突起42Cとが、筒壁33Cの基端側に形成された切欠き部で構成される基端側端面33bCから、ロック完了時に突出して筒壁33Cの径方向外側から視認可能となるように構成されている。
【0122】
以上説明したように、本変形例の医療用コネクタ21Cは、ロック部24Cがスライドして複数の爪23aCをロック状態にしたときに、筒壁33Cの基端側端面33bCから基端側へ突出して筒壁33Cの径方向外側から視認可能となるロック完了視認部51Cを備えている。したがって、本変形例によれば、使用者は、ロック完了視認部51Cの目視により、ロックが完了したことを容易に把握することができる。
【0123】
前述したところは、本発明の一実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、前述した実施形態では、コネクタ本体B1,B2,B2A,B2B,B2Cは2つの部材から構成していたが、1つの部材又は3つ以上の部材によって構成してもよい。また、ロック部材L1,L2,L2A,L2B,L2Cを2つ以上の部材で構成することも可能である。また、係合部3,23,23A,23B,23Cが備える爪3a,23a,23aA,23aB,23aCは、2つに限られず、3つ以上設けてもよい。
【0124】
また、前述した実施形態では、嵌合壁側嵌合部7aを開口部として構成すると共に筒壁側嵌合部17を嵌合突起17aを備える爪として構成したが、これとは逆に、嵌合壁側嵌合部7aを嵌合突起を備える爪として構成すると共に筒壁側嵌合部17を開口部として構成してもよい。その場合には、操作部18は嵌合壁7に設けることができる。また、嵌合壁側嵌合部7a又は筒壁側嵌合部17としての開口部に代えて、前記嵌合突起が嵌合する凹部として構成してもよい。
【0125】
また、
図1〜
図9を用いて説明した実施形態において、筒壁13に、例えば
図10に示したような回転阻止部33aや、
図20に示したような回転阻止部33aBを設け、ロック状態及び接続状態のより確実な維持を可能にしてもよい。また、
図1〜
図9を用いて説明した実施形態において、オスコネクタ部2に、
図15に示したような封止部22aAを設け、液密性を確保し易くしてもよい。
【0126】
さらに、前述した実施形態では、複数の爪3a,23a,23aA,23aBの係合突起12,32,32Aの間隔は、複数の爪3a,23a,23aA,23aBを他の医療用コネクタ100,200,200Bから引き抜け不能な状態にするに際し、複数の爪3a,23a,23aA,23aBによる他の医療用コネクタ100,200,200Bの段部の乗り越えを必要としない大きさに設定されるものとして説明したが、必ずしもそのような構成に限られず、複数の爪3a,23a,23aA,23aBの係合突起12,32,32Aの間隔は、そのような乗り越えに要する力が他の医療用コネクタ100,200,200Bの意図しない変位を生じない程度に十分に小さければ、そのような乗り越えを生じる大きさに設定してもよい。