【文献】
Biochemical Engineering Journal, 2006, Vol. 29, pp. 109-118
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反応混合物が、1種またはそれより多くの金属カチオンをさらに含み、さらなる金属カチオンの反応混合物への供給は、任意にさらなるヌクレオチドの供給とは独立して、制御される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のDNAを合成するための無細胞製法。
反応混合物の測定可能なパラメーターが、DNA合成の速度、合成されたDNAの濃度、反応混合物の粘度または反応混合物の体積を含む、請求項9に記載の無細胞製法。
反応混合物中のDNAの濃度は、反応混合物またはその一部または局部の圧力における差を測定することによりモニターされる、請求項10または請求項11に記載の無細胞製法。
前記DNAテンプレートが、閉じた直鎖状DNAであり、好ましくは、前記DNAテンプレートが、変性条件下でインキュベートされて、閉じた環状一本鎖DNAを形成する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製法。
前記DNAテンプレートが、少なくとも1つのプロセシング酵素の標的配列、好ましくはリコンビナーゼ標的配列またはプロテロメラーゼ標的配列を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製法。
前記さらなるヌクレオチドが、複数のアリコートで反応混合物に供給され、好ましくは、前記さらなるヌクレオチドが、製法の持続時間中にわたり一定間隔で、任意に少なくとも30分毎に、アリコートとして供給される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製法。
前記ヌクレオチドまたはさらなるヌクレオチドが、生物学的に不活性なヌクレオチドを含み、好ましくは活性化を介して前記反応混合物に供給される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の製法。
前記シグナルがDNAの濃度を示し、圧力センサーで、反応混合物の一部を取り出したり戻したりする往復ポンプによって生じた圧力差を測定することによって生成される、請求項20に記載の製法。
前記金属カチオンが、2価カチオンであり、前記2価の金属カチオンとヌクレオチドとの比率は、反応混合物中で約3:1に維持される、請求項4、または請求項22に記載の製法。
前記ヌクレオチドおよび/またはさらなるヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、またはそれらの誘導体もしくは改変型であり、好ましくは、前記ヌクレオチドおよび/またはさらなるヌクレオチドは、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)およびそれらの誘導体の1種またはそれ以上である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の製法。
前記ヌクレオチドが、遊離酸、それらの塩またはそれらのキレートの1種以上として提供され、前記塩またはキレートに含まれるものは、任意に以下の金属イオンの1種以上:Mg2+、Be2+、Ca2+、Sr2+、Li+、Na+、K+、Mn2+またはZn2+であってよい、請求項1〜25のいずれか一項に記載の製法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
本発明は、DNAを合成するための無細胞プロセスに関する。本発明のプロセスは、DNAのハイスループット合成を可能にする。
【0038】
本発明に従って合成されるデオキシリボ核酸(DNA)は、あらゆるDNA分子であり得る。DNAは、一本鎖または二本鎖であってもよい。DNAは、直鎖状であってもよい。DNAは、プロセシングされて、環、特に小環、一本鎖の閉じた環、二本鎖の閉じた環、二本鎖の開いた環、または閉じた直鎖状の二本鎖DNAを形成してもよい。DNAは、特定の二次構造、例えば、これらに限定されないが、ヘアピンループ(ステムループ)、不完全なヘアピンループ、シュードノット、または様々な種類の二重らせんのいずれか1つ(A−DNA、B−DNA、またはZ−DNA)を形成できるようにされていてもよいし、またはそれらを形成できるようにプロセシングされていてもよい。またDNAは、ヘアピンを形成していてもよい。
【0039】
合成されたDNAは、あらゆる好適な長さを有していてもよい。本発明のプロセスを使用した場合、最大77キロベース(kbまたはkベース)またはそれを超える長さが考えられる。より特定には、本プロセスに従って合成され得るDNAの長さは、およそで最大60キロベース、または最大50キロベース、または最大40キロベース、または最大30キロベースであってもよい。好ましくは、合成されたDNAは、100ベースから60キロベース、200ベースから20キロベース、より好ましくは200ベースから15キロベース、最も好ましくは2キロベースから15キロベースであってもよい。
【0040】
本発明のプロセスに従って合成されたDNAの量は、反応混合物1l当たり10gを超えてもよい。合成されたDNAの量は、最大10、9、8、7、6または5g/lであることが好ましい。合成されたDNAの好ましい量は、0.2から5g/l、好ましくは1から5g/lである。生産されたDNAの量は、ラージスケールの生産または大量生産での工業的または商業的な量として説明される場合もある。本プロセスによって生産されたDNAは、品質において、すなわちDNAの長さおよび配列において一様であってもよい。したがって本プロセスは、ラージスケールのDNA合成に好適であり得る。
【0041】
現在利用可能なDNA合成技術において、ほとんどは小規模または実験室ベースのスケールであり、反応はマイクロリットルレベルの体積で起こる。それでもなおPCRをスケールアップしようとする試みも、反応はヌクレオチドの開始量でのみ起こり、さらなるヌクレオチドが供給されず、生成物の形成は反応を阻害するために、不十分なDNA収量、例えば反応混合物1リットル当たりおよそ20〜40mgにしかならない(ヴァンダリア(Vandalia))。
【0042】
DNAテンプレートは、あらゆる好適なテンプレートであってもよい。DNAテンプレートは、一本鎖(ss)または二本鎖(ds)であってもよい。DNAテンプレートは、直鎖状または環状であってもよい。二本鎖DNAテンプレートは、開いた環状dsDNA、閉じた環状dsDNA、開いた直鎖状dsDNAまたは閉じた直鎖状dsDNAであってもよい。一本鎖のDNAテンプレートは、直鎖状ssDNAまたは閉じた環状ssDNAであってもよい。後者のDNAテンプレートは、閉じた直鎖状dsDNAを変性させることによって生産することができる。閉じた直鎖状DNA、すなわち直鎖状dsの共有結合で閉じたDNA分子は、典型的には、共有結合で閉じた末端、すなわちヘアピン末端を含み、ここで相補的DNA鎖間の塩基対は存在しない。ヘアピンループは、相補的DNA鎖の末端を合体させる。特にループがプロテロメラーゼ標的配列の一部を含む場合、ループはそれ自身が、相補配列を含有していてもよい。閉じた直鎖状dsDNAは、プラスミドであってもよい。
【0043】
DNAテンプレートは、天然に誘導された、または人工のあらゆる配列を含んでいてもよい。DNAテンプレートは、少なくとも1つのプロセシング酵素の標的配列、例えば1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くのプロセシング酵素の標的部位を含んでいてもよい。このような標的配列は、任意に合成後にさらにDNAをプロセシングすることを可能にすると予想される。プロセシング酵素は、その標的部位を認識してDNAをプロセシングする酵素である。プロセシング酵素の標的配列は、制限酵素に関する標的配列であってもよい。制限酵素、すなわち制限エンドヌクレアーゼは、標的配列に結合して、特異的なポイントで切断する。プロセシング酵素の標的配列は、リコンビナーゼに関する標的であってもよい。リコンビナーゼは、各リコンビナーゼに特異的な短い(30〜40ヌクレオチドの)標的部位配列間のDNA交換反応を指向的に触媒する。リコンビナーゼの例としては、Creリコンビナーゼ(標的配列としてloxPを有する)およびFLPリコンビナーゼ(短いフリッパーゼ認識標的(FRT)部位を有する)が挙げられる。プロセシング酵素の標的配列は、部位特異的なインテグラーゼ、例えばphiC31インテグラーゼのための標的であってもよい。プロセシング酵素の標的配列は、プロテロメラーゼ酵素のための標的であってもよい。プロテロメラーゼ標的配列は、DNAテンプレート中にそれが存在することにより、プロテロメラーゼの酵素活性により閉じた直鎖状DNAへの変換が可能になるあらゆるDNA配列である。言い換えれば、プロテロメラーゼ標的配列は、共有結合で閉じた直鎖状DNAを形成するための、プロテロメラーゼによる二本鎖のDNAの切断および再ライゲーションに必要である。典型的には、プロテロメラーゼ標的配列は、あらゆるパリンドローム配列、すなわち2倍の回転対称性を有するあらゆる二本鎖DNA配列を含み、これらはまた、本明細書では逆方向反復配列としても記載される。逆方向反復配列の長さは、具体的な生物に応じて異なる。パリンドロームまたは逆方向反復配列は、完全であってもよいし、または不完全であってもよい。プロテロメラーゼ標的配列は、好ましくは、長さが少なくとも14塩基対の二本鎖のパリンドローム(逆方向反復配列)配列を含む。好適なプロテロメラーゼ標的部位は、当業界において公知であり、参照により本明細書に組み入れられるEP2,391,731で論じられている。好適なプロテロメラーゼ酵素は、大腸菌(Escherichia coli)ファージN15からのTelNであってもよい。プロセシング酵素の標的部位は、プロテロメラーゼの標的部位であることが好ましい。
【0044】
プロセシング酵素の標的配列は、DNAがポリペプチド合成のためのテンプレートになるように、RNAポリメラーゼのための標的配列であってもよい。この例において、プロセシング酵素の標的部位は、プロモーター、好ましくは真核生物プロモーターである。
【0045】
本プロセスは、反応混合物をプロセシング酵素と接触させる追加の工程を含んでいてもよい。反応混合物は、プロセシング酵素といつ接触させてもよい。好ましくは、反応混合物は、DNA合成が完了したら、プロセシング酵素と接触する。プロセシング酵素は、RNAポリメラーゼ、リコンビナーゼ、制限エンドヌクレアーゼまたはプロテロメラーゼであってもよい。好ましくは、プロセシング酵素は、プロテロメラーゼである。
【0046】
プロテロメラーゼは、本発明で使用できることからも、共有結合で閉じた直鎖状DNA分子を生産するために、プロテロメラーゼの標的部位を含むテンプレートを切断し再び合体させることが可能なあらゆるポリペプチドである。したがって、プロテロメラーゼは、DNA切断およびライゲーション機能を有する。プロテロメラーゼタイプの活性を有する酵素はまた、テロメアレゾルバーゼ(例えばボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)におけるもの)としても説明されている。プロテロメラーゼの典型的な基質は、環状の二本鎖DNAである。このDNAがプロテロメラーゼの標的部位を含有する場合、酵素は、DNAをこの部位で切断して、末端をライゲートして、直鎖状の二本鎖の共有結合で閉じたDNA分子を作り出すことができる。プロテロメラーゼの標的部位に関する必要条件は、上記で論じられている。上記で概説したように、プロテロメラーゼの標的部位を含むテンプレートから閉じた直鎖状DNAの生産を触媒する所与のポリペプチドの能力は、当業界で説明されるあらゆる好適なアッセイを使用して決定することができる。
【0047】
DNAのプロセシングは、少なくとも1種のプロテロメラーゼの使用を必要とする場合がある。本発明のプロセスは、1種より多くのプロテロメラーゼ、例えば2、3、4、5種またはそれより多くの異なるプロテロメラーゼの使用を含んでいてもよい。好適なプロテロメラーゼの例としては、バクテリオファージからのもの、例えばハロモナス・クアマリナ(Halomonas quamarina)からのphiHAP−1、エルシニア・エンテロリティカ(Yersinia enterolytica)からのPY54、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)からのphiK02、およびビブリオ属種からのVP882、および大腸菌(配列番号15)からのN15、またはそれらのあらゆる変異体が挙げられる。バクテリオファージN15プロテロメラーゼまたはそれらの変異体の使用が特に好ましい。この酵素は、TelNとも称される。これらの酵素は、参照により本明細書に組み入れられるWO2012/017210でさらに説明されている。
【0048】
したがって本プロセスは、プロセシング酵素を包含するDNAテンプレート上で実行することができ、プロセシング酵素は、制御された方法で反応混合物に供給することができる。プロセシング酵素は、あらゆる適切な時間で反応混合物に供給することができ、これは、シグナルに応答してなされてもよい。プロセシング酵素の1回またはそれより多くの添加がなされてもよい。プロセシング酵素は、アリコートで供給され、それらは不連続的に反応混合物に添加されることが好ましい。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれより多くのプロセシング酵素のアリコートが反応混合物に添加されてもよい。さらなるヌクレオチドおよび/またはさらなる金属イオンのアリコートが必要になる直前に、プロセシング酵素を添加することが有利な場合がある。代替として、プロセシング酵素は、さらなるヌクレオチドのアリコートが反応混合物に添加されると共に、またはその後に添加されてもよい。プロセシング酵素は、反応混合物中のDNAが望ましい濃度に達したというシグナルに応答して添加されてもよい。このDNA濃度は、本明細書で説明されるように検出してもよい。
【0049】
DNAテンプレートは、目的のタンパク質、および任意に真核生物転写終結配列を包含する配列に機能するように連結した真核生物プロモーターを含む、それからなる、またはそれから本質的になる発現カセットを含んでいてもよい。任意に、発現カセットは、典型的には(i)細菌の複製起点;(ii)細菌の選択マーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)、および(iii)非メチル化CpGモチーフからなる群より選択される1つまたはそれより多くの細菌またはベクター配列を欠失した最小カセットであってもよい。「プロモーター」は、ポリヌクレオチドの転写を開始および調節するヌクレオチド配列である。プロモーターとしては、誘導性プロモーター(この場合、プロモーターに機能するように連結したポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される)、抑制性プロモーター(この場合、プロモーターに機能するように連結したポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補因子、調節タンパク質などによって抑制される)、および構成的プロモーターを挙げることができる。用語「プロモーター」または「制御要素」は、全長プロモーター領域およびこれらの領域の機能的な(例えば、転写または翻訳を制御する)セグメントを包含することが意図される。「機能するように連結した」は、要素の配列を指しており、そのようにして説明される構成要素は、それらの通常の機能が発揮されるように設計される。したがって、核酸配列に機能するように連結した所与のプロモーターは、適した酵素が存在するときにその配列の発現を実行することが可能である。プロモーターは、配列の発現を指示するように機能する限り、必ずしも配列と隣接していなくてもよい。したがって、例えば、翻訳されないが転写される配列の介在が、プロモーター配列と核酸配列との間に存在していてもよく、プロモーター配列は、それでもなおコード配列に「機能するように連結した」とみなすことができる。したがって、用語「機能するように連結した」は、転写複合体によりプロモーター要素が認識されたときに目的のDNA配列の転写の開始を可能にする、プロモーター要素と目的のDNA配列とのあらゆる間隔または方向を包含することが意図される。
【0050】
DNAテンプレートは、あらゆる好適な長さを有していてもよい。特に、DNAテンプレートは、最大60キロベース、または最大50キロベース、または最大40キロベース、または最大30キロベースであってもよい。好ましくはDNAテンプレートは、100ベースから60キロベース、200ベースから20キロベース、より好ましくは200ベースから15キロベース、最も好ましくは2キロベースから15キロベースであってもよい。
【0051】
DNAテンプレートは、当業界において公知のあらゆる方法によって、本プロセスでの使用に十分な量で提供されてもよい。例えば、テンプレートは、PCRによって生産されてもよい。
【0052】
本プロセスにおいて、DNAテンプレートの全体または選択された部分が増幅されてもよい。
DNAテンプレートは、発現のためのDNA配列を含んでいてもよい。DNAは、細胞(すなわちインビトロまたはインビボでトランスフェクトされた細胞)における発現のためであってもよいし、または無細胞系における発現(すなわちタンパク質合成)のためであってもよい。発現のためのDNA配列は、目的とする治療、すなわちDNAワクチンの遺伝子治療のためであってもよい。発現のための配列は遺伝子であってもよく、前記遺伝子は、DNAワクチン、治療用タンパク質および同種のものをコードしていてもよい。DNA配列は、活性なRNAの形態、すなわち短鎖干渉RNA分子(siRNA)に転写される配列を含んでいてもよい。
【0053】
DNAテンプレートは、少なくとも1種のポリメラーゼと接触する。1、2、3、4または5種の異なるポリメラーゼが使用されてもよい。ポリメラーゼは、DNAのポリマーを合成するあらゆる好適なポリメラーゼであってもよい。ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼであってもよい。あらゆる市販のDNAポリメラーゼを包含するあらゆるDNAポリメラーゼが使用されてもよい。2、3、4、5種またはそれより多くの異なるDNAポリメラーゼが使用されてもよく、例えば校正機能やそれ以外の1種またはそれより多くの機能を提供するDNAポリメラーゼが使用されてもよい。異なるメカニズムを有するDNAポリメラーゼ、例えば鎖置換型のポリメラーゼおよび他の方法でDNAを複製するDNAポリメラーゼが使用されてもよい。鎖置換活性を有さないDNAポリメラーゼの好適な例は、T4 DNAポリメラーゼである。
【0054】
ポリメラーゼは、プロセス条件下での持続的なインキュベーションによってその活性が実質的に低減されないように、高度に安定していてもよい。それゆえに、酵素は、好ましくは、これらに限定されないが温度およびpHなどの様々なプロセス条件下で、長い半減期を有する。またポリメラーゼは、製造プロセスにとって好適な1つまたはそれより多くの特徴を有することも好ましい。ポリメラーゼは、好ましくは、例えば校正活性を有することにより高い忠実度を有する。さらに、ポリメラーゼは、高い処理能力、高い鎖置換活性、およびdNTPとDNAとに関して低いKmを示すことが好ましい。ポリメラーゼは、テンプレートとして環状および/または直鎖状DNAを使用することが可能であってもよい。ポリメラーゼは、テンプレートとしてdsDNAまたはssDNAを使用することが可能であってもよい。ポリメラーゼは、その校正活性に関連しないDNAエキソヌクレアーゼ活性を示さないことが好ましい。
【0055】
当業者は、市販のポリメラーゼ、例えばPhi29(ニューイングランドバイオラボ社(New England Biolabs, Inc.)、米国マサチューセッツ州イプスウィッチ)、Deep Vent(登録商標)(ニューイングランドバイオラボ社)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(Bst)DNAポリメラーゼI(ニューイングランドバイオラボ社)、DNAポリメラーゼIのクレノーフラグメント(ニューイングランドバイオラボ社)、M−MuLV逆転写酵素(ニューイングランドバイオラボ社)、VentR(登録商標)(エキソマイナス)DNAポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラボ社)、VentR(登録商標)DNAポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラボ社)、Deep Vent(登録商標)(エキソ−)DNAポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラボ社)およびBst DNAポリメラーゼ大フラグメント(ニューイングランドバイオラボ社)によって示された特性との比較によって、所与のポリメラーゼが上記で定義されたような特徴を示すかどうかを決定することができる。高い処理能力と述べられる場合、これは、典型的には、テンプレートとの会合/解離1回当たりのポリメラーゼ酵素によって付加されたヌクレオチドの平均数、すなわち単一の会合事象から得られたプライマー伸長の長さを示す。
【0056】
鎖置換型のポリメラーゼが好ましい。好ましい鎖置換型のポリメラーゼは、Phi29、Deep VentおよびBst DNAポリメラーゼIまたはそれらのあらゆる変異体である。「鎖置換」は、合成中に二本鎖DNAの領域と遭遇したときに相補鎖を置換するポリメラーゼの能力を説明する。したがってテンプレートは、相補鎖を置換して新しい相補鎖を合成することによって増幅される。したがって、鎖置換での複製中、新たに複製された鎖が置換されて、ポリメラーゼにさらなる相補鎖を複製するための進路をもたらすことになる。一本鎖テンプレートのプライマーまたは3’の遊離末端がテンプレート上で相補配列にアニールすると、増幅反応が開始する(両方ともプライミング事象である)。DNA合成が進行して、さらなるプライマーまたはテンプレートにアニールした他の鎖と遭遇すると、ポリメラーゼはこれを置換して、その鎖の伸長を継続する。鎖置換は、より多くのプライミング事象のためにテンプレートとして作用することができる新たに合成された一本鎖DNAを生成する。新たに合成されたDNAのプライミングは、超分岐、および高い生成物収量をもたらす。二本鎖DNAが新しいDNA鎖の継続的な合成への妨害にならないために、変性のサイクルが効率的なDNA増幅にとって必須ではないという点で、鎖置換増幅方法は、PCRベースの方法とは異なることが理解されるはずである。鎖置換増幅は、プライマーが使用される場合にそれをプライマー結合部位にアニールさせるために、最初のテンプレートが二本鎖である場合、それを変性させるための1回の最初の加熱ラウンドのみを必要とすることがある。これ以降、増幅は、さらなる加熱または冷却が必要ではないため等温と記載される場合もある。対照的に、PCR方法は、二本鎖DNAを溶融させて新しい一本鎖テンプレートを提供するために、増幅プロセス中に変性(すなわち温度を94℃またはそれより高く高めること)のサイクルを必要とする。鎖置換中、ポリメラーゼは、すでに合成されたDNAの鎖を置換することになる。さらに、新たに合成されたDNAをテンプレートとして使用することになり、DNAの急速な増幅を確実にする。
【0057】
本発明のプロセスで使用される鎖置換ポリメラーゼは、好ましくは、少なくとも20kb、より好ましくは、少なくとも30kb、少なくとも50kb、または少なくとも70kbまたはそれより多くの処理能力を有する。一実施態様において、鎖置換DNAポリメラーゼは、phi29のDNAポリメラーゼに匹敵するかまたはそれより高い処理能力を有する。
【0058】
それゆえに、鎖置換での複製が好ましい。鎖置換での複製中、テンプレートは、ポリメラーゼの作用によって合成されたすでに複製された鎖を置換し、順に別の鎖を置換することによって増幅され、ここで別の鎖は、二本鎖テンプレートの元の相補鎖か、または新たに合成された相補鎖であってもよく、後者は、テンプレートにアニールした最初のプライマー上でポリメラーゼの作用によって合成されたものである。したがって、テンプレートの増幅は、別の鎖の鎖置換での複製により複製された鎖を置換することによって起こり得る。このプロセスは、鎖置換増幅または鎖置換での複製と記載される場合もある。
【0059】
好ましい鎖置換での複製プロセスは、ループ介在等温増幅、またはLAMPである。LAMPは、一般的に、テンプレートDNAの6〜8種の別個の領域を認識する4〜6種のプライマーを使用する。簡単に言えば、鎖置換DNAポリメラーゼが合成を開始させると、プライマーの2つがループ構造を形成して、それに続く増幅ラウンドを容易にする。標的DNAのセンスおよびアンチセンス鎖の配列を含有する内部プライマーが、LAMPを開始させる。それに続く外部プライマーによってプライミングされる鎖置換DNA合成は、一本鎖DNAを放出する。これは、標的の他の末端にハイブリダイズしてステム−ループDNA構造を生じさせる第2の内部および外部プライマーによってプライミングされるDNA合成のためのテンプレートとして役立つ。それに続くLAMPサイクルにおいて、1つの内部プライマーが生成物上でループにハイブリダイズして、置換DNA合成が開始すると、元のステム−ループDNAおよびステムが2倍長い新しいステム−ループDNAが生じる。
【0060】
好ましい鎖置換での複製プロセスは、ローリングサークル増幅(RCA)である。RCAという用語は、ハイブリダイズしたプライマーを伸長させながら環状DNAテンプレート鎖の周辺で連続的に進行するRCA型のポリメラーゼの能力を説明している。これは、増幅したDNAの複数の反復を有する直鎖状の一本鎖生成物の形成を引き起こす。環状テンプレート(単一ユニット)の配列は、直鎖状生成物中で多重的に繰り返される。環状テンプレートの場合、最初の鎖置換増幅生成物は、テンプレートの極性に応じてセンスまたはアンチセンスのいずれかの一本鎖のコンカテマーである。これらの直鎖状の一本鎖生成物は、同様に増幅したDNAの複数の反復を含むコンカテマー様の二本鎖DNA生成物の形成を引き起こす、複数のハイブリダイゼーション、プライマー伸長および鎖置換事象の基準として役立つ。したがって、コンカテマー様の二本鎖DNA生成物中に、増幅された「単一ユニット」DNAそれぞれの複数のコピーが存在する。RCAポリメラーゼが、本発明のプロセスでの使用に特に好ましい。RCA型の鎖置換での複製プロセスの生成物は、単一ユニットのDNAを放出するためにプロセシングを必要とする場合がある。これは、DNAの単一ユニットが必要な場合に望ましい。
【0061】
増幅を可能にするために、DNAテンプレートは、1種またはそれより多くのプライマーとも接触する。プライマーは、DNAテンプレート内に含まれる1つまたはそれより多くの配列に、非特異的(すなわち配列中でランダム)であってもよいし、または特異的であってもよい。プライマーがランダム配列を有する場合、それらはDNAテンプレート上のあらゆる部位で非特異的な開始を可能にする。これは、各テンプレート鎖からの複数の開始反応による高い効率の増幅を可能にする。ランダムプライマーの例は、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体であるか、またはそれより長さが大きい配列であり、例えば12、15、18、20または30ヌクレオチドの長さを有する。ランダムプライマーは、6から30、8から30または12から30ヌクレオチドの長さを有していてもよい。ランダムプライマーは、典型的には、DNAテンプレートにおいて例えば六量体、七量体、八量体または九量体の全ての可能な組合せを代表するオリゴヌクレオチドの混合物として提供される。
【0062】
一実施態様において、プライマーまたはプライマーの1つもしくはそれより多くは、特異的である。これは、プライマーが、そこから増幅が開始されることが望ましいDNAテンプレート中の配列に相補的な配列を有することを意味する。この実施態様において、プライマーの対は、2つのプライマー結合部位の内側にあるDNAテンプレートの部分を特異的に増幅するのに使用される可能性がある。代替として、単一の特異的なプライマーが使用される可能性がある。
【0063】
一実施態様において、DNAテンプレートは、1つまたはそれより多くのプロテロメラーゼ標的配列を包含する。このような標的配列は、パリンドロームの性質を有する。この実施態様において、プロテロメラーゼ結合部位内のパリンドローム配列に結合する特異的なプライマーを使用することが可能になり、したがってDNAテンプレートの両方の鎖で増幅をプライミングすることができる。このようなプロセスは、WO2012/017210で詳細に説明されている。したがって、単一のプライマーは、増幅するのに十分である。
【0064】
プライマーは、標識されていなくてもよいし、または1種またはそれより多くの標識、例えば放射性核種または蛍光色素を含んでいてもよい。またプライマーは、化学的に改変されたヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、キャップが除去されるまで、すなわち化学的または物理的手段によって除去されるまでDNA合成の開始を防ぐために、プライマーはキャップされていてもよい。プライマーの長さ/配列は、典型的には、温度の検討に基づき、すなわち増幅工程において使用される温度でテンプレートに結合することができるように選択されてもよい。
【0065】
DNAテンプレートとポリメラーゼおよび1種またはそれより多くのプライマーとを接触させることは、DNAテンプレートへのプライマーのアニーリングを促進する条件下で起こしてもよい。この条件は、プライマーのハイブリダイゼーションを可能にする一本鎖DNAの存在を包含する。またこの条件は、テンプレートへのプライマーのアニーリングを可能にする温度および緩衝液も包含する。適切なアニーリング/ハイブリダイゼーション条件は、プライマーの性質に応じて選択されてもよい。本発明で使用される好ましいアニーリング条件の例は、緩衝液として30mMのトリス−HCl、pH7.5、20mMのKCl、8mMのMgCl
2を包含する。アニーリングは、熱を使用する変性後に、望ましい反応温度に段階的に冷却することによって行われてもよい。
【0066】
しかしながら、鎖置換での複製を使用する増幅はまた、プライマーなしでも起こすことができ、したがってハイブリダイゼーションおよびプライマー伸長を起こす必要がない。その代わりに、一本鎖DNAテンプレートは、伸長に利用可能な遊離の3’末端を有するヘアピンを形成するによって自己プライミングする。残りの増幅工程は同じままである。
【0067】
DNAテンプレートおよびポリメラーゼは、ヌクレオチドとも接触する。DNAテンプレート、ポリメラーゼおよびヌクレオチドの組合せは、反応混合物を形成する。反応混合物はまた、1種またはそれより多くのプライマーを含んでいてもよい。反応混合物はまた、独立して、1種またはそれより多くの金属カチオンを包含していてもよい。
【0068】
ヌクレオチドは、核酸の単量体または単一ユニットであり、ヌクレオチドは、窒素塩基、五炭糖(リボースまたはデオキシリボース)、および少なくとも1つのリン酸基で構成される。あらゆる好適なヌクレオチドが使用される可能性がある。
【0069】
ヌクレオチドは、遊離酸、それらの塩もしくはキレート、または遊離酸および/もしくは塩またはキレートの混合物として存在していてもよい。
ヌクレオチドは、1価金属イオンのヌクレオチド塩または2価金属イオンのヌクレオチド塩として存在していてもよい。塩としては、2価金属イオンの塩、例えば、これらに限定されないが、マグネシウム(Mg
2+)、マンガン(Mn
2+)、カルシウム(Ca
2+)、ベリリウム(Be
2+)、亜鉛(Zn
2+)およびストロンチウム(Sr
2+)などの塩、または1価金属イオンの塩、これらに限定されないが、リチウム(Li
+)、ナトリウム(Na
+)もしくはカリウム(K
+)などの塩を挙げることができる。
【0070】
窒素塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)であってもよい。また窒素塩基は、改変された塩基、例えば5−メチルシトシン(m5C)、プソイドウリジン(Ψ)、ジヒドロウリジン(D)、イノシン(I)、および7−メチルグアノシン(m7G)であってもよい。
【0071】
五炭糖は、ヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドになるように、デオキシリボースであることが好ましい。
ヌクレオチドは、dNTPと表されるデオキシヌクレオシド三リン酸の形態であってもよい。これは、本発明の好ましい実施態様である。好適なdNTPとしては、dATP(デオキシアデノシン三リン酸)、dGTP(デオキシグアノシン三リン酸)、dTTP(デオキシチミジン三リン酸)、dUTP(デオキシウリジン三リン酸)、dCTP(デオキシシチジン三リン酸)、dITP(デオキシイノシン三リン酸)、dXTP(デオキシキサントシン三リン酸)、ならびにそれらの誘導体および改変型を挙げることができる。dNTPは、dATP、dGTP、dTTPもしくはdCTP、またはそれらの改変型もしくは誘導体の1つまたはそれより多くを含むことが好ましい。dATP、dGTP、dTTPおよびdCTPまたはそれらの改変型の混合物を使用することが好ましい。
【0072】
ヌクレオチドは、溶液中であってもよいし、または凍結乾燥した形態で提供されてもよい。ヌクレオチドの溶液が好ましい。
ヌクレオチドは、改変されたヌクレオチドを含んでいてもよく、これらの改変されたヌクレオチドは、生物学的に不活性な型であってもよい。したがって改変されたヌクレオチドは、生物学的に不活性なヌクレオチドであってもよい。生物学的に不活性化されたヌクレオチドは、ヌクレオチドの基、例えば3’の炭素・酸素または末端のリン酸・酸素を保護する取り外し可能な部分を有していてもよい。生物学的に不活性なヌクレオチドは、ケージドヌクレオチドまたはブロックされたヌクレオチドであってもよい。好適な部分としては、これらに限定されないが、光活性化可能な(ケージング)基、例えば、α−カルボキシ−2−ニトロベンジル(CNB)、1−(2−ニトロフェニル)エチル(NPE)、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル(DMNB)、1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチル(DMNPE)および5−カルボキシメトキシ−2−ニトロベンジル(CMNB)(モレキュラープローブス(Molecular Probes))などが挙げられる。これらの基は、一般的に、末端のリン酸・酸素を介して結合する。この部分は、あらゆる好適な手段によって除去され得る。例えばこの部分が光不安定性である場合、紫外光によるこの部分の閃光光分解が、照射部位における急速で高度に局所的な生物学的に活性なヌクレオチドの放出をもたらす。この部分は熱不安定性であってもよく、その場合に生物学的に活性なヌクレオチドは、熱によって放出されてもよい。ヌクレオチドを生物学的に活性化するのに熱が使用される場合、ポリメラーゼの温度必要条件を考慮しなければならず、これは、当業者の権限の範囲内である。例えば末端のリン酸は、ケージングまたはブロッキング部分でエステル化されていてもよい。
【0073】
ヌクレオチドは、1種またはそれより多くの好適な塩基、好ましくは、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の1種またはそれより多くの混合物で提供されてもよい。DNAを合成するためのプロセスでは、2、3または好ましくは4種全てのヌクレオチド(A、G、T、およびC)が使用される。
【0074】
ヌクレオチドは、全て天然ヌクレオチド(すなわち改変されていない)であってもよく、ヌクレオチドは、天然ヌクレオチドのように作用し、生物学的に活性な改変されたヌクレオチドであってもよく(すなわちLNAヌクレオチド−ロックト核酸)、ヌクレオチドは、改変されており、生物学的に不活性であってもよく、またはそれらは、改変されていないヌクレオチドと改変されたヌクレオチドとの混合物、および/または生物学的に活性なヌクレオチドと生物学的に不活性なヌクレオチドとの混合物であってもよい。ヌクレオチドの各タイプ(すなわち塩基)は、1つまたはそれより多くの形態で、すなわち改変されていない形態および改変された形態、または生物学的に活性な形態および生物学的に不活性な形態で提供されてもよい。
【0075】
本発明の一形態において、ヌクレオチドは反応混合物中に包含されており、反応混合物へのさらなるヌクレオチドの供給が制御される。この形態によれば、ヌクレオチドは、8mM未満、7mM未満、6mM未満、5mM未満、4mM未満、3mM未満、2mM未満または1mM未満の開始濃度で反応混合物中に存在していてもよい。したがって、反応混合物中のヌクレオチドの開始濃度が、8mMまたはそれ未満、好ましくは5mMまたはそれ未満、より好ましくは4mMまたはそれ未満になるように、ヌクレオチドが添加されて、反応混合物が形成される。開始濃度は、反応開始時における反応混合物中のヌクレオチド(全ての塩基)の総濃度を指す。
【0076】
ヌクレオチドは、少なくとも0.3g/lのDNAを合成するのに十分な開始濃度で反応混合物中に存在していてもよい。開始濃度は、0.5g/lのDNAのDNAを合成するのに十分であることが好ましく、より好ましくは0.6g/lまたは0.65g/lのDNAを合成するのに十分である。示される体積は、反応混合物の体積である。ヌクレオチドの開始濃度は、反応混合物から望ましい量のDNAを合成するには十分ではないことがと予想され、すなわち最終的な収量を達成するのに十分ではない可能性がある。ヌクレオチドの開始濃度は、反応混合物中の1種またはそれより多くのポリメラーゼに基づいて決定されてもよい。
【0077】
代替として、またはそれに加えて、ヌクレオチドの開始濃度は、ポリメラーゼの濃度とヌクレオチドの濃度との比率と定義される場合もある。開始時のヌクレオチド分子の数と各ポリメラーゼ酵素との比率は、最大500,000:1、最大300,000:1または最大200,000:1であってもよいし、あるいは5,000:1から100,000:1まで、好ましくは20,000:1から90,000:1まで、より好ましくは30,000:1から80,000:1まで、より好ましくは40,000:1から60,000:1までであってもよい。ヌクレオチド分子の数と各ポリメラーゼとの比率は、好ましくは5,000:1よりも大きい。好ましい形態において、開始時におけるヌクレオチド:ポリメラーゼ酵素の比率は、50,000:1である。
【0078】
反応混合物は、前記テンプレートの増幅を促進する条件下でインキュベートされる。鎖置換増幅が好ましい。好ましくは、この条件は、別の鎖の鎖置換での複製により複製された鎖を置換することによって前記テンプレートの増幅を促進する。この条件は、DNAの増幅を可能にするあらゆる温度、一般的に20から90℃の範囲の温度の使用を含む。好ましい温度範囲は、約20から約40または約25から約35℃であり得る。LAMP増幅にとって好ましい温度は、約50から約70℃である。
【0079】
典型的には、適切な温度は、特異的なポリメラーゼが最適な活性を有する温度に基づき選択される。この情報は、一般的に入手可能であり、当業者の一般的な知識の一部を形成する。例えば、phi29 DNAポリメラーゼが使用される場合、好適な温度範囲は、約25から約35℃、好ましくは約30℃と予想される。当業者であれば、本発明のプロセスによる効率的な増幅にとって好適な温度を慣例的に確認することができると予想される。例えば、本プロセスは、様々な温度で行うことができ、増幅されたDNAの収量をモニターして、所与のポリメラーゼごとに最適な温度範囲を確認することができる。増幅は一定温度で行うことができ、本プロセスは等温であることが好ましい。鎖置換増幅が好ましいことから、DNA鎖を分離するために温度を変更する必要はない。したがって、本プロセスは、等温プロセスであってもよい。
【0080】
DNAテンプレートの増幅を促進する他の条件は、好適な緩衝剤の存在/酵素の性能または安定性に必要なpHおよび他の因子を含む。好適な条件は、当業界において公知のポリメラーゼ酵素の活性をもたらすのに使用されるあらゆる条件を包含する。
【0081】
例えば、反応混合物のpHは、3から10の範囲内、好ましくは5から8の範囲内、または約7、例えば約7.5であってもよい。pHは、1種またはそれより多くの緩衝剤の使用によってこの範囲に維持されてもよい。このような緩衝液としては、これらに限定されないが、MES、ビス−トリス、ADA、ACES、PIPES、MOBS、MOPS、MOPSO、ビス−トリスプロパン、BES、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、トリズマ(Trizma)、HEPPSO、POPSO、TEA、EPPS、トリシン(Tricine)、Gly−Gly、ビシン(Bicine)、HEPBS、TAPS、AMPD、TABS、AMPSO、CHES、CAPSO、AMP、CAPS、CABS、リン酸塩、クエン酸−リン酸水素ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム−酢酸、イミダゾールおよび炭酸ナトリウム−重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0082】
熱の適用(数分にわたる95℃への暴露)を使用して二本鎖DNAを変性させる一方で、DNA合成により好適な他のアプローチを使用してもよい。二本鎖DNAは、高いまたは低いpH環境への暴露によって、あるいはカチオンが存在しないかまたは例えば脱イオン水中など非常に低濃度で存在する場合に、容易に変性させることができる。ポリメラーゼは、その複製を開始させるために、DNAテンプレートの一本鎖領域への短いオリゴヌクレオチドプライマー配列の結合を必要とする。この相互作用の安定性、したがってDNA増幅効率は、本プロセスの肝要な部分とみなされ得る金属カチオン、特に2価カチオン、例えばMg
2+イオンの濃度によって、特に影響を受ける可能性がある。
【0083】
反応混合物はまた、金属イオンを含んでいてもよい。反応混合物はまた、金属の塩、例えば、これらに限定されないが、2価金属イオン:マグネシウム(Mg
2+)、マンガン(Mn
2+)、カルシウム(Ca
2+)、ベリリウム(Be
2+)、亜鉛(Zn
2+)およびストロンチウム(Sr
2+)の塩、または1価金属イオン、例えば、これらに限定されないが、リチウム(Li
+)、ナトリウム(Na
+)またはカリウム(K
+)などの塩を含んでいてもよい。塩としては、塩化物、酢酸塩および硫酸塩を挙げることができる。包含され得る他の塩は、アンモニウム塩、特定には硫酸アンモニウムである。当業者であれば、金属イオン塩の形態でのヌクレオチドの供給が、反応混合物中における金属イオンの濃度に影響を与え、必要があればこの金属イオンの追加源を考慮に入れることができることを認識していると予想される。反応混合物中における金属イオンの総濃度は、好ましくは全ての金属イオン源を包含する。
【0084】
また洗浄剤も、反応混合物中に包含されていてもよい。好適な洗浄剤の例としては、トリトン(Triton)X−100、トウィーン(Tween)20およびそれらのいずれかの誘導体が挙げられる。また安定化剤も、反応混合物中に包含されていてもよい。あらゆる好適な安定化剤を使用してもよく、特定には、ウシ血清アルブミン(BSA)および他の安定化タンパク質である。また反応条件は、DNAを緩和させテンプレートをより簡単に変性させる薬剤を添加することによって改善されてもよい。このような薬剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、グリセロールおよびベタインが挙げられる。またDNA縮合剤も、反応混合物中に包含されていてもよい。このような薬剤としては、例えば、ポリエチレングリコールまたはカチオン脂質またはカチオン性ポリマーが挙げられる。
【0085】
当業者は、その一般的な知識に基づきこれらの追加の要素および条件を使用して、本発明のプロセスのために増幅およびインキュベーション条件を改変して最適化することができることが理解されるものとする。同様に、特定の薬剤の具体的な濃度は、当業界における以前の例に基づき選択され、一般的な知識に基づきさらに最適化されてもよい。一例として、反応混合物中に存在するポリメラーゼの量は、最適化されてもよい。これは、DNA合成中、反応混合物にポリメラーゼ酵素をさらに添加することを含んでいてもよい。さらなる例として、DNAテンプレートの量は、最適化されてもよい。これは、DNA合成中に反応混合物にDNAテンプレートをさらに添加することを含んでいてもよい。ポリメラーゼ酵素および/またはDNAテンプレートのさらなる供給は、連続でもまたは不連続でもよく、好ましくは不連続である。
【0086】
一例として、当業界においてRCAベースの方法で使用される好適な反応緩衝液は、pH7.5の50mMのトリスHCl、10mMのMgCl
2、20mMの(NH
4)
2SO
4、5%グリセロール、0.2mMのBSA、1mMのdNTPである。本発明のRCA増幅で使用される好ましい反応緩衝液は、30mMのトリス−HCl、pH7.4、30mMのKCl、7.5mMのMgC1
2、10mMの(NH
4)
2SO
4、4mMのDTT、2mMのdNTPである。この緩衝液は、Phi29 RCAポリメラーゼとの使用に特に好適である。
【0087】
反応混合物はまた、1種またはそれより多くの追加のタンパク質の使用を含んでいてもよい。DNAテンプレートは、少なくとも1種のピロホスファターゼ、例えば酵母の無機ピロホスファターゼの存在下で増幅されてもよい。2、3、4、5種またはそれより多くの異なるピロホスファターゼが使用されてもよい。これらの酵素は、鎖複製中にポリメラーゼによってdNTPから生成したピロホスフェートを分解することができる。反応中のピロホスフェート蓄積は、DNAポリメラーゼの阻害を引き起こし、DNA増幅の速度および効率を低下させる可能性がある。ピロホスファターゼは、ピロホスフェートを崩壊させて阻害作用のないホスフェートにすることができる。本発明のプロセスでの使用に好適なピロホスファターゼの例は、ニューイングランドバイオラボ社から市販されているサッカロミセス・セレビジエのピロホスファターゼである。
【0088】
一本鎖DNAを安定化するために、あらゆる一本鎖結合タンパク質(SSBP)が本発明のプロセスで使用されてもよい。SSBPは、生細胞の必須の要素であり、ssDNAを含む全てのプロセス、例えばDNA複製、修復および組換えに参加している。これらのプロセスにおいて、SSBPは、一時的に形成されたssDNAに結合し、ssDNA構造の安定化を助けることができる。本発明のプロセスでの使用に好適なSSBPの例は、ニューイングランドバイオラボ社から市販されているT4遺伝子32タンパク質である。
【0089】
反応混合物は、上述したように、DNAテンプレートの増幅を促進する条件下でインキュベートされてもよい。増幅は、好ましくは鎖置換での複製である。反応混合物は、好ましくはこれまでに論じられた開始濃度または開始時の比率(ポリメラーゼに対する)で、ヌクレオチドを含む。反応混合物は、金属イオンをさらに含んでいてもよい。
【0090】
本発明の一形態によれば、DNAを合成するために、さらなるヌクレオチドの供給が必要である。反応混合物へのヌクレオチドの供給は、本発明の第1の形態に従って制御される。したがって、プロセスの開始時に、DNA合成に必要なヌクレオチドの全てが反応混合物に添加されるわけではない。さらなるヌクレオチドは、あらゆる好適な時間に、反応混合物に供給または提供されてもよい。反応混合物にさらなるヌクレオチドを供給するタイミングおよび/または反応混合物に供給されるヌクレオチドの量は、制御または指示される。したがって、反応それ自体は、ヌクレオチドの正確な供給によって制御され得る。この制御は、酵素反応速度論の理論上の計算に基づいていてもよいし、または制御は、ポリメラーゼによってさらなるヌクレオチドが必要とされるときにそれらが供給されるように、反応混合物の測定可能なパラメーターに基づいていてもよい。
【0091】
反応混合物が形成されたら、さらなるヌクレオチドを供給して、DNAテンプレートの増幅を促進する条件下でインキュベートしてもよい。さらなるヌクレオチドは、増幅が開始または始動した後に供給されてもよい。一実施態様において、ヌクレオチドのさらなる供給は、開始時のヌクレオチドが提供されてから少なくとも20分、または少なくとも30分または少なくとも40分後に始まる。しかしながら、特にヌクレオチドの供給が連続的である場合、供給は、反応開始時に開始させることができる。
【0092】
一実施態様において、反応混合物中におけるヌクレオチドの濃度または量は、プロセス中において上の閾値を超えない。ヌクレオチドの供給は、ヌクレオチドの濃度または量が上の閾値を超えないように制御される。上の閾値は、反応混合物中、8mM、または7mM、または6mM、または5mM、または4mM、または3mM、または2mMのヌクレオチドであってもよい。好ましくは、上の閾値は、反応混合物中、約4mMのヌクレオチドである。同様に、一実施態様において、反応混合物中におけるヌクレオチドの濃度または量は、プロセス中に下の閾値を下回らない可能性がある。ヌクレオチドの供給は、ヌクレオチドの濃度または量が下の閾値を下回らないように制御される。この下の閾値は、反応混合物中、0.1μM、0.5μM、1μM、5μMのまたは10μMのヌクレオチドであってもよい。反応混合物中のヌクレオチドの濃度は、プロセス中、上の閾値と下の閾値との間に維持されることが好ましい。したがって、反応混合物中のヌクレオチドの濃度は、0.0001mMから8mMの間、好ましくは0.001mMから6mMの間、最も好ましくは0.01mMから5mMの間に維持されてもよい。ヌクレオチドの濃度は、反応混合物へのさらなるヌクレオチドの供給を制御することによって維持されてもよい。一実施態様において、反応混合物中のヌクレオチドの濃度は、イオンクロマトグラフィーによって推測されてもよい。代替として、およそのヌクレオチド濃度は、本明細書で論じられるように、合成されたDNAの量を推測することによって計算することができる。
【0093】
代替として、上および下の閾値は、反応混合物中に存在するヌクレオチドの量とポリメラーゼの量との比率に関して説明されていてもよい。したがって上の閾値は、500,000:1(ヌクレオチド:ポリメラーゼ)、200,000:1、150,000:1、100,000:1または80,000:1であり得る。下の閾値は、1,000:1、1,500:1または2,000:1であってもよい。したがって、ヌクレオチドとポリメラーゼとの比率は、1,000:1から500,000:1の間、好ましくは2,000:1から450,000:1の間、より好ましくは5,000:1から400,000:1の間、最も好ましくは10,000:1から100,000:1の間に維持されてもよい。最も好ましくは、比率は、40,000:1から70,000:1の間、約50,000:1に維持される。
【0094】
一実施態様において、さらなるヌクレオチドは、1回またはそれより多くの別々の添加で、すなわちアリコートとして反応混合物に供給される。あらゆる数の添加またはアリコートがこの実施態様の範囲内である。したがって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多くの、すなわち20〜25、25〜30、35〜40の添加またはアリコートが、反応混合物に添加されてもよい。したがって、1〜50、1〜40、1〜30または1〜20個のアリコートが、ヌクレオチドを供給するのに使用されてもよい。アリコートは、プロセスに必要な、またはプロセスに添加されるヌクレオチド総量の一部であってもよい。アリコート中のヌクレオチドの体積および/または濃度は、プロセスの必要条件に応じて様々であり得る。アリコートは、少量のヌクレオチド、すなわち特定の濃度または量のヌクレオチドが反応混合物中に確実に存在するのに十分な量のヌクレオチドを含んでいてもよい。ヌクレオチドは、一定間隔で(すなわち30分毎、60分毎、90分毎、120分毎、180分毎または240分毎または他のあらゆる好適な期間で)アリコートとして反応混合物に供給されてもよい。ヌクレオチドは、不規則な間隔で、アリコートとして反応混合物に供給されてもよい。例えば、ヌクレオチドのそれぞれの供給間の期間は、初期ではより短く、次いでプロセスが進行するにつれて長くしてもよく、または逆もまた同様である。アリコートは、反応混合物中に一定のヌクレオチド濃度を維持するために提供されてもよいし、またはヌクレオチドの濃度を、開始濃度まで補給するために提供されてもよい。好ましい実施態様において、ヌクレオチドは、反応混合物中の濃度が8mM、または7mM、または6mM、または5mM、または4mMを超えないように供給される。好ましい実施態様において、ヌクレオチドは、反応混合物中におけるヌクレオチドの濃度または量が上の閾値と下の閾値の範囲内に確実に含まれるように供給される。
【0095】
アリコートは、分析または試験のために採取された反応混合物の体積を補充するためだけに供給されるのではなく、反応がさらなるヌクレオチドを必要とするという理由で供給されることが好ましい。反応混合物の試験は非侵襲的であること、さらに、反応が完了するまで反応混合物から材料が引き出されないことが好ましい。
【0096】
さらなるヌクレオチドは、反応混合物中におけるより多くのヌクレオチドへの必要性に応答して供給されてもよい。これは、これらに限定されないが、DNA合成の速度、合成されたDNAの濃度、または反応混合物の粘度もしくは体積などの数種のパラメーターによって決定することができる。DNA合成の速度は、所定期間にわたり合成されたDNAの濃度から計算することができる。DNA合成の速度が減少し始めたら、さらなるヌクレオチドが供給されてもよい。代替として、合成されたDNAの濃度は、以下でさらに論じられる方法によってモニターされてもよい。DNAの濃度が閾値レベルに増加したら、さらなるヌクレオチドが供給されてもよい。反応混合物の粘度が測定されてもよく、粘度の増加は、さらなるヌクレオチドの必要性を示し得る。反応物の粘度は、粘度計で測定されてもよい。
【0097】
一実施態様において、さらなるヌクレオチドは、連続的に反応混合物に供給され、すなわちそれらは連続的な方式で反応混合物に添加される。しかしながら代替として、ヌクレオチドは、滴注されてもよいし、または絶えず供給されてもよい。この実施態様によるさらなるヌクレオチドの供給は、ヌクレオチドの供給がポリメラーゼによるさらなるヌクレオチドの要求量と合致するような十分少ない量であってもよい。この実施態様において、ヌクレオチドの一定供給は、反応混合物中ほぼ一定のヌクレオチド濃度を維持する。反応混合物へのさらなるヌクレオチドの一定供給により、反応混合物中のヌクレオチド濃度が、上の閾値と下の閾値の範囲内に確実に維持されることが好ましい。
【0098】
さらなるヌクレオチドは、物理的に反応混合物に提供されてもよく、すなわちそれらは、反応混合物の外部にある。したがって、供給は、外部源、例えば貯蔵容器から発生していてもよい。この貯蔵容器は、反応混合物に接続されていてもよい。ヌクレオチドは、反応混合物にポンプ注入されてもよい。したがって、ヌクレオチドおよび反応混合物は、物理的に別々であり、さらなるヌクレオチドの供給は、ヌクレオチドの物理的な供給である。代替として、ヌクレオチドは、浸透圧ポンプを介して供給されてもよい。浸透圧ポンプは、制御された連続的なヌクレオチド供給のための方法を提供する。
【0099】
代替として、ヌクレオチドは、これまでに論じられたものなどの生物学的に不活性化されたヌクレオチドを活性化することによって、反応混合物に提供されてもよい。反応混合物にヌクレオチドを供給するために、生物学的に不活性なヌクレオチドは、好適な手段によって活性化される。したがって、さらなるヌクレオチドは、あらゆる好適な生物学的に不活性なヌクレオチドを含んでいてもよい。開始時に生物学的に不活性なヌクレオチドが反応混合物中に包含されていてもよいが、活性化の制御によってのみ反応混合物に供給される。代替として、生物学的に不活性なヌクレオチドは、アリコートで、または連続的に反応混合物に物理的に添加され、その後活性化されて、反応混合物にヌクレオチドを供給することもできる。活性化は、物理的(すなわち熱または光)であってもよいし、または化学的であってもよく、ヌクレオチドの供給を制御するのは、活性化の制御である。
【0100】
DNAの合成が完了するまで、例えば、DNAテンプレートが使い尽くされ、さらなる取り込みが不可能になったら、反応混合物へのヌクレオチドの供給が制御されてもよい。代替として、期待されるまたは望ましいDNA収量が合成されたら、反応は完了し得る。このような収量は、添加されたヌクレオチドの量に基づいていてもよい。必要な量、例えば、反応混合物1リットル当たり1g、2g/l、3g/l、4g/l、5g/l、または最大10g/lもしくはそれより多くのDNAが合成されたら、DNAの合成は完了し得る。DNA合成の速度が減少して、ヌクレオチドをさらに供給してもこの速度が上昇しない、反応混合物が別の要素(例えば、これらに限定されないが、プライマーなど)を使い果たす、ポリメラーゼ酵素が不活性化される、無機ピロホスファターゼが不活性化される、これ以上の一本鎖テンプレートが利用できなくなる、金属カチオンなどの必要な補因子が使い尽くされる、反応混合物の粘度が特定の閾値に達する、反応混合物の体積が特定の閾値に達する、またはポリメラーゼが阻害されると、DNAの合成は完了し得る。
【0101】
反応の収量は、合成されたDNAの量に関する。本発明に係るプロセスからの期待される収量は、反応混合物1リットル当たり10グラムを超えていてもよいし、または10、9、8、7、6、5、4、3、2または1g/lであってもよい。本発明は、DNAの酵素的合成から可能な収量を改善する。本発明の目的は、費用効率が高い方法によりラージスケールでDNAが合成できるように、無細胞での酵素によるDNA合成プロセスの収量を改善することである。本発明は、ポリメラーゼによって触媒される酵素的なプロセスを使用して、工業スケールで経済的にDNAを製造/合成することを可能にする。本発明のプロセスは、DNA生成物への効率的なヌクレオチド取り込みを可能にする。本発明のプロセスは、反応混合物を数リットル、例えば数十リットルにスケールアップさせると考えられる。改善された収量、DNA合成速度、生産性または処理能力は、開始時にヌクレオチドの全てが供給される同一な反応混合物と比較され得る。実施例で実証されたように反応混合物へのさらなるヌクレオチドの供給を制御することによって、収量を改善することができると考えられる。
【0102】
DNA合成の速度は、本プロセスの1分当たりの合成されたDNAの量または濃度に関する。実施例において、DNA合成の速度は、プロセスが進行するにつれて次第に遅くなっているのがわかる。
【0103】
プロセスの生産性、または供給されるヌクレオチド単位当たりのDNAの出力速度は、本発明の1つまたは複数のプロセスを使用することによって増加させることができる。
一実施態様において、本発明は、DNAの合成を強化するためのプロセスに関する。この強化は、開始時にヌクレオチドなどの必要な要素の全てが添加されることを除いて同一な反応混合物と比較され得る。この対照反応混合物にはさらなる添加はなされない。
【0104】
一形態において、DNAを合成するための無細胞プロセスであって、1種またはそれより多くのプライマー、ヌクレオチドおよび金属カチオンの存在下で、DNAテンプレートを少なくとも1種のポリメラーゼと接触させて、前記テンプレートの増幅を促進する条件下で、別の鎖の鎖置換での複製により複製された鎖を置換することによって反応混合物を形成することを含み、さらなる金属カチオンが、制御された方法で反応混合物に供給される、上記プロセスが提供される。
【0105】
しかしながら代替として、増幅は、テンプレートの鎖置換での複製により起こる。したがって本発明は、DNAを合成するための無細胞プロセスであって、1種またはそれより多くのプライマー、ヌクレオチドおよび金属カチオンの存在下で、DNAテンプレートを少なくとも1種のポリメラーゼと接触させて、前記テンプレートの鎖置換での複製を促進する条件下で、反応混合物を形成することを含み、さらなるヌクレオチドおよびさらなる金属カチオンは、制御された方法で反応混合物に供給される、上記プロセスを提供する。
【0106】
DNAを合成するための無細胞プロセスの反応速度は、制御された方法で反応混合物にさらなるカチオンを供給することによって制御されることが好ましい。
反応混合物への金属カチオンの供給は、本発明のこの形態に従って制御されてもよい。このような制御は、特にラージスケールのプロセスにおいて、DNA合成の速度を改善すると考えられる。開始時に、1種またはそれより多くの金属カチオンが反応混合物中に存在していてもよい。したがって、反応混合物はまた、好ましくは塩として供給される1種またはそれより多くの金属カチオンを含んでいてもよい。反応混合物へのさらなる金属カチオンの供給は、制御されてもよい。1種またはそれより多くの金属カチオンが供給されてもよい。好適な金属カチオンとしては、2価金属イオン:マグネシウム(Mg
2+)、マンガン(Mn
2+)、カルシウム(Ca
2+)、ベリリウム(Be
2+)、亜鉛(Zn
2+)およびストロンチウム(Sr
2+)、または1価金属イオン、例えば、これらに限定されないが、リチウム(Li
+)、ナトリウム(Na
+)またはカリウム(K
+)などが挙げられる。金属カチオンは、好ましくは塩として供給される。塩としては、塩化物、酢酸塩および硫酸塩を挙げることができ、金属カチオンが塩化物の塩として供給されることが好ましい。包含され得る他の塩は、アンモニウム塩であり、特定には硫酸アンモニウムである。金属カチオンは、好ましくはマグネシウムまたはマンガンであり、最も好ましくはマグネシウムである。最も好ましい実施態様において、金属カチオンは、塩化マグネシウムとして提供される。
【0107】
本発明の一形態によれば、DNAを合成するために、さらなる金属カチオンの供給が必要である。反応混合物への金属カチオンの供給は、本発明の第2の形態に従って制御される。したがって、プロセスの開始時に、DNAの合成に必要な金属カチオンの全てが反応混合物に添加されるわけではない。さらなる金属カチオンは、あらゆる好適な時間に反応混合物に供給または提供されてもよい。反応混合物にさらなる金属カチオンを供給するタイミングおよび/または反応混合物に供給される金属イオンの量は、制御または指示される。したがって、反応それ自体は、金属イオンの正確な供給によって制御され得る。この制御は、酵素反応速度論の理論上の計算に基づいていてもよいし、または制御は、さらなる金属イオンが必要とされるときにそれらが供給されるように、反応混合物の測定可能なパラメーターに基づいていてもよい。さらなる金属カチオンの供給は、さらなるヌクレオチドの制御された供給と平行して、またはそれと共に制御されてもよい。供給は、独立して制御されてもよいし、または一緒に制御されてもよい。
【0108】
反応混合物が形成されたら、さらなる金属カチオンを供給して、DNAテンプレートの増幅を促進する条件下でインキュベートしてもよい。さらなる金属カチオンは、増幅が開始または始動した後に供給されてもよい。一実施態様において、金属カチオンのさらなる供給は、金属カチオンの開始濃度が提供されてから少なくとも20分、または少なくとも30分または少なくとも40分後に始まる。しかしながら、特に金属カチオンの供給が連続的である場合、供給は、反応開始時に開始させることができる。
【0109】
一実施態様において、反応混合物中における遊離または未結合の金属カチオンの濃度または量は、プロセス中において上の閾値を超えない。金属カチオンの供給は、遊離または未結合の金属カチオンの濃度または量が最大の閾値を超えないように制御される。最大の閾値は、反応混合物中、4mM、3mMまたは2mMであってもよい。好ましくは、最大の閾値は、反応混合物中、約3mMである。同様に、一実施態様において、反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度または量は、プロセス中に最小の閾値を下回らない可能性がある。金属カチオンの供給は、遊離の金属カチオンの濃度または量が最小の閾値を下回らないように制御される。この最小の閾値は、反応混合物中、0.03μM、0.15μM、0.3μM、1.5μM、または3μMであってもよい。反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度は、プロセス中、最大の閾値と最小の閾値との間に維持されることが好ましい。したがって、反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度は、0.03μMから4mMの間、または0.5μMから3mM、または1μMから2mM、または10μMから1mMに維持されてもよい。好ましくは、反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度は、1mMから1.5mMの間に維持される。
【0110】
代替として、最大の閾値は、反応混合物中、10mM、8mM、6mM、4mM、3mMまたは2mMであってもよい。好ましくは、最大の閾値は、反応混合物中、約3mMである。同様に、一実施態様において、反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度または量は、プロセス中に最小の閾値を下回らない可能性がある。金属カチオンの供給は、遊離の金属カチオンの濃度または量が最小の閾値を下回らないように制御される。この最小の閾値は、反応混合物中、0.03μM、0.15μM、0.3μM、1.5μM、3μMおよび5μMであってもよい。反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度は、プロセス中、最大の閾値と最小の閾値との間に維持されることが好ましい。したがって、反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度は、0.03μMから10mMの間、または0.15μMから8mM、または0.3μMから6mM、または1.5μMから3mMに維持されてもよい。好ましくは、反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度は、0.15μMから5μMの間に維持される。
【0111】
遊離の金属カチオンの濃度は、反応混合物へのさらなる金属イオンの供給を制御することによって維持されてもよい。一実施態様において、反応混合物中における遊離の金属イオンの濃度は、原子吸光分析、イオンクロマトグラフィーおよび当業界において公知の他の方法によって推測されてもよい。代替として、およその遊離の金属カチオン濃度は、本明細書で論じられるように、合成されたDNAの量を推測することによって計算することができる。誤解を避けるために言えば、金属カチオン、例えばマグネシウムイオンは、これらに限定されないが、ピロホスフェート、ホスフェートおよびDNAなどの反応混合物中の異なる物体に結合することができる。これらのイオンは結合して、遊離ではなくなる。
【0112】
一実施態様において、さらなる金属カチオンは、1回またはそれより多くの別々の添加で、すなわちアリコートとして反応混合物に供給される。あらゆる数の添加またはアリコートがこの実施態様の範囲内である。したがって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多くの、すなわち20〜25、25〜30、35〜40の添加またはアリコートが、反応混合物に添加されてもよい。したがって、1〜50、1〜40、1〜30または1〜20個のアリコートが、金属カチオンを供給するのに使用されてもよい。アリコートは、プロセスに必要な、またはプロセスに添加される金属カチオン総量の一部であってもよい。アリコート中の金属カチオンの体積および/または濃度は、プロセスの必要条件に応じて様々であり得る。アリコートは、少量の金属カチオン、すなわち特定の濃度または量の金属カチオンが反応混合物中に確実に存在するのに十分な量の金属カチオンを含んでいてもよい。金属カチオンは、一定間隔で(すなわち30分毎、60分毎、90分毎、120分毎、180分毎または240分毎または他のあらゆる好適な期間で)アリコートとして反応混合物に供給されてもよい。金属カチオンは、不規則な間隔で、アリコートとして反応混合物に供給されてもよい。例えば、金属カチオンのそれぞれの供給間の期間は、初期ではより短く、次いでプロセスが進行するにつれて長くしてもよく、または逆もまた同様である。アリコートは、反応混合物中に一定の金属カチオン濃度を維持するために提供されてもよいし、または金属カチオンの濃度を、開始濃度まで、好ましくは最適な遊離の金属イオンの濃度まで補給するために提供されてもよい。
【0113】
好ましい実施態様において、金属カチオンは、反応混合物中における遊離の金属カチオンの濃度または量が最大の閾値から最小の閾値の範囲内に確実に含まれるように供給される。
【0114】
さらなる金属カチオンは、反応混合物中におけるそれらへの必要性に応答して供給されてもよい。これは、これまでに論じられたように、数種のパラメーターによって決定することができる。
【0115】
一実施態様において、さらなる金属カチオンは、連続的に反応混合物に供給される。
さらなる金属カチオンは、物理的に反応混合物に提供されてもよく、すなわちそれらは、反応混合物の外部にある。
【0116】
さらなるヌクレオチドの供給も制御されることが好ましい。
さらなる形態において、DNAを合成するための無細胞プロセスであって、1種またはそれより多くのプライマー、ヌクレオチドおよび金属カチオンの存在下で、DNAテンプレートを少なくとも1種のポリメラーゼと接触させて、前記テンプレートの増幅を促進する条件下で、別の鎖の鎖置換での複製により複製された鎖を置換することによって反応混合物を形成することを含み、さらなるヌクレオチドおよび金属カチオンは、制御された方法で反応混合物に供給される、上記プロセスが提供される。
【0117】
DNAを合成するための無細胞プロセスであって、ヌクレオチドおよび金属カチオンの存在下で、DNAテンプレートを少なくとも1種のポリメラーゼと接触させて、前記テンプレートの鎖置換での増幅を促進する条件下で、反応混合物を形成することを含み、さらなるヌクレオチドおよびさらなる金属カチオンは、制御された方法で反応混合物に供給される、上記プロセスも提供される。
【0118】
さらなるヌクレオチドおよびさらなる金属イオンは、一緒にまたは別々に供給され得る。さらなるヌクレオチドまたはさらなる金属カチオンの制御された供給は、これらの物体に関してこれまでに論じられたようにして達成されてもよい。
【0119】
金属カチオンまたはさらなる金属カチオンの供給は、ヌクレオチドの供給と平行してなされてもよいし、またはヌクレオチドの供給と異なる時間になされてもよい。
特に金属カチオンが1価である場合、さらなる金属カチオンが、ヌクレオチドの供給と共に反応混合物に供給され得ることが好ましい。したがって金属カチオンおよびヌクレオチドは、混合物として供給されてもよい。したがって、それらは分離状態を維持することが好ましいが、金属カチオンの供給およびヌクレオチドは組み合わされていてもよい。
【0120】
さらなる金属カチオンおよび/またはさらなるヌクレオチドの供給は、これらの物体のそれぞれについて個々に説明された通りであってもよい。
本発明の好ましい実施態様において、金属カチオンおよびヌクレオチドは、金属カチオン:ヌクレオチドの比率(量)が、9:1から1:9、もしくは6:1から1:6の間、または3:1、または1:3、または1:1になるように供給される。好ましくは、反応混合物中におけるこれらの量間の比率は、約3:1から1:3の間であり、好ましくは約3:1である。これらの比率は、金属カチオンが、2価の金属カチオン、例えば、これらに限定されないが、マグネシウム(Mg
2+)、マンガン(Mn
2+)、カルシウム(Ca
2+)、ベリリウム(Be
2+)、亜鉛(Zn
2+)およびストロンチウム(Sr
2+)である場合に特に好ましい。
【0121】
ヌクレオチドに対する金属カチオン、好ましくはマグネシウムカチオンの比率を維持することは、DNA合成の速度を制御することにおいて重要であり得ると考えられる。ヌクレオチド:ポリメラーゼの比率はまた、これまでに論じられたように維持されてもよい。したがって、ヌクレオチドおよび金属カチオンの供給を制御することによってこれらの2つの比率を制御することは、DNAの合成を制御することができる。
【0122】
本発明のいずれかの形態に関連して、ヌクレオチドが金属カチオンの塩として供給される場合、反応混合物に供給されるこれらの塩中における金属カチオンの濃度は、これらの金属カチオンを包含すると予想される。当業者であれば、金属カチオンの塩の形態におけるヌクレオチドを供給することは、反応混合物中における金属カチオンの濃度に影響を与え、この追加の量を考慮に入れることができることを認識していると予想される。
【0123】
ヌクレオシド三リン酸(ATP、GTP、CTPおよびTTP)は、それらの化学特性により、DNA生成物収量を増加させるために高濃度が使用される場合、様々な方法でDNA増幅に干渉する可能性を有する。高濃度は、反応混合物中、4mMより高いdNTP濃度とみなすことができる。dNTPのリン酸基は、1価および2価の金属カチオンと相互作用することができ、Mg
2+に最も強い親和性を有する。例えば、Mg
2+へのATPの親和性は、Na
+の700倍を超え、Li
+よりほぼ400倍大きい。
【0124】
増幅中、ポリメラーゼは、成長するDNA鎖に取り込まれるヌクレオチドからピロホスフェートを放出する。ピロホスフェートは、ATPに類似するMg
2+イオンに結合親和性を有することから、遊離のMg
2+イオンは、このプロセスによって放出されない。増幅中にヌクレオチドの高い開始濃度を使用することの結果は、遊離のMg
2+イオンのレベルを低下させることであると予想される。Mg
2+イオンはポリメラーゼの触媒活性に必要であり得るため、ホスフェートまたはリン酸基との相互作用によって引き起こされる最善とは言えないレベルは、効率的な増幅にとって有害である可能性が高い。しかしながら、逆に言えば、高濃度のMg
2+イオンは、一部のDNAポリメラーゼの忠実度に影響を与えることが示されている。それゆえにMg
2+イオンの反応濃度は、DNAの収量および品質にとって重要であると考えられる場合がある。
【0125】
ピロホスフェートの破壊は、酵素によって触媒されてもよく、ピロホスフェートから結合したMg
2+イオンを放出することが予想できる。しかしながら、Mg
2+イオンはPO
43−イオンと結合して、本質的に不溶性のMg
3(PO
4)
2(20℃で、水中に0.01mMの溶解性)を形成する。
【0126】
Mg
2+イオンは、合成されたDNAにも結合すると予想される。
あらゆるDNAポリメラーゼが触媒する反応におけるあらゆる特定のタイムポイントでの遊離のMg
2+イオンのレベルは、開始濃度、カチオンと結合することが可能な分子の総濃度、および反応物のpHに依存すると予想される。プロセスは平衡状態にあるため、多少の遊離のMg
2+が存在する可能性が常にある。一実施態様において、遊離のMg
2+のレベルは、好ましくはマグネシウム塩としての、遊離のMg
2+イオンの反応混合物への供給を制御することによって制御される。
【0127】
ローリングサークル、鎖置換メカニズムを介して環状DNAテンプレートを増幅することができるポリメラーゼは、テンプレートの長い直鎖状コンカテマー様の反復を生産することが可能である。このようなローリングサークル鎖を置換するポリメラーゼが好ましい。例えば、Phi29 DNAポリメラーゼは、環状DNAテンプレートを増幅して、長さが最大77キロベースの直鎖状の反復を生産できることが報告されている。これらの非常に長い分子はポリマーのような挙動を示し、粘度を増加させることによって反応物のレオロジー特性を有意に変更することができる。この粘度の増加は、合成されたDNAの濃度と直接的に相関する可能性がある圧力の変化によって測定できる。このような測定を連続的にまたは設定時間で行い、シグナル、好ましくは反応の状態を示すのに使用される可能性があるオンラインのシグナルを提供することができる。さらなるヌクレオチドの供給は、圧力シグナルに応答して制御されてもよい。このような反応混合物のパラメーターを示すシグナルに応答するヌクレオチドの供給は、反応混合物の収量および/または生産性を増加させるためになされてもよい。
【0128】
DNA濃度を推測するための圧力差の測定は、Syto色素などの蛍光性化学試薬の結合をベースとしたアッセイを超える重要な利点を有する。二本鎖DNAにのみ結合するこれらの試薬とは異なり、圧力差の測定は、一本鎖の形態を含有するサンプル中のDNAの誤った推測を生じない。
【0129】
一実施態様において、ヌクレオチドの供給は、シグナルに応答して制御される。シグナルは、あらゆる好適なシグナルであってもよく、オンラインのシグナルであってもよい。シグナルは、DNAの濃度に関するものが好ましく、特に、反応混合物中におけるDNAの総濃度の推測に基づく。代替として、シグナルは、反応混合物の体積に関するものでもよい。さらなる金属イオンの供給も同様に、シグナルに応答して制御されてもよい。シグナルは、同一でもよいし、または異なっていてもよい。
【0130】
好ましいシグナルは、反応混合物の粘度に関するものである。反応混合物の粘度は、反応混合物中のDNAの濃度の推測を提供し得る。粘度は、粘度計などのあらゆる好適な手段によって測定されてもよい。粘度は、圧力の変化によって測定されることが好ましい。圧力差は、圧力センサー、圧力トランスデューサー、圧力送信器、圧力計、ピエゾメーターまたはマノメーターによって測定されてもよい。一実施態様において、圧力差は、反応混合物の一部を取り出し入れ替える往復ポンプを使用して作り出されてもよい。反応は、ここで示されたように非侵襲的な様式で、リアルタイムでモニターされることが好ましい。
【0131】
本発明のプロセスは、バッチ反応として実行さてもよい。この実施態様において、反応混合物は、リアクター中に存在する。さらなるヌクレオチドの供給および/またはさらなる金属カチオンは、リアクターにフィードされてもよい。したがって、本プロセスは、流加培養リアクターで実行されてもよい。代替として、本プロセスは、連続フローリアクターで実行されてもよい。このようなリアクターは、当業者の知識の範囲内である。特に好ましい様式を以下に示す。
【0132】
一実施態様において、1種またはそれより多くのプロセシング酵素は、1回またはそれより多くの別々の添加で、すなわちアリコートとして反応混合物に供給される。あらゆる数の添加またはアリコートがこの実施態様の範囲内である。したがって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多くの、すなわち20〜25、25〜30、35〜40の添加またはアリコートが、反応混合物に添加されてもよい。したがって、1〜50、1〜40、1〜30または1〜20個のアリコートが、プロセシング酵素を供給するのに使用されてもよい。アリコートは、プロセスに必要な、またはプロセスに添加されるプロセシング酵素総量の一部であってもよい。アリコート中のプロセシング酵素の体積および/または濃度は、プロセスの必要条件に応じて様々であり得る。アリコートは、少量のプロセシング酵素、すなわち特定の濃度または量のプロセシング酵素が反応混合物中に確実に存在するのに十分な量のプロセシング酵素を含んでいてもよい。プロセシング酵素は、一定間隔で(すなわち30分毎、60分毎、90分毎、120分毎、180分毎または240分毎または他のあらゆる好適な期間で)アリコートとして反応混合物に供給されてもよい。プロセシング酵素は、不規則な間隔で、アリコートとして反応混合物に供給されてもよい。例えば、プロセシング酵素のそれぞれの供給間の期間は、初期ではより長く、次いでプロセスが進行するにつれて減少させてもよく、または逆もまた同様である。
【0133】
プロセシング酵素は、反応混合物中におけるそれらへの必要性に応答して供給されてもよい。これは、これまでに論じられたように、反応混合物中のDNAの濃度および/またはDNA合成の速度などの数種のパラメーターによって決定することができる。
【0134】
プロセシング酵素は、物理的に反応混合物に提供されてもよく、すなわちそれらは、反応混合物の外部にある。これらの酵素は、別々の貯蔵容器に保持されて、制御された方法で反応混合物に放出されてもよい。
【0135】
プロテロメラーゼなどのプロセシング酵素は、シングルターンオーバーを有することが好ましく、その場合、プロセシング酵素の量を制御することは、酵素によってプロセシングされたDNAの量を直接的に制御する。プロセシング酵素は、さらなるヌクレオチドと共に、またはさらなるヌクレオチドの後に添加されてもよい。さらなる金属イオンも必要になると予想され、その場合、DNAのプロセシングがさらなる金属イオンの添加の前に起こるように、これらはプロセシング酵素添加の後に添加されることが好ましいことがある。
【0136】
本プロセスは、あらゆる好適な装置で実行されてもよい。ここで、本プロセスを行うのに好適な特定の装置を説明する。合成装置1は、内蔵型のシャシー11に構築され、主要な要素にアクセスするための開閉式のフロントカバー12が備えられている。フロントカバー12は、望ましくは透明な材料で作製されるが、過剰な光レベルから反応要素を保護するために着色されていてもよい。これはまた、汚染物質の進入を制限するのにも役立つ。装置は、例えば装置の側面に、外部から操作可能な電源スイッチおよび電源入力13が備えられている。加えて、例えば米国テキサス州のナショナルインスツルメンツ社(National Instruments Corporation)によって供給されるLabview(商標)などの実験用オートメーションソフトウェアを実行する汎用のコンピューターと装置を連通させる、および/またはそれにより制御するための、入力/出力ポート14がある。装置の前から見える位置に、操作表示灯15が備えられ、これは、装置が作動中であるかどうかを示す。
【0137】
合成装置の中央の要素は、ジャケット付き反応容器2であり、これは、30mlより大きい体積、例えば50ml、75または120mlの体積を有していてもよい。反応容器の体積は、300ml未満であってもよい。反応容器の体積は、装置の意図された使用、およびバッチでの達成が意図される生成物の量、または連続プロセスでの生産速度に従って選択されてもよい。明らかに、反応容器のサイズが、バッチで生産できる生成物の量に上限を課す。
【0138】
反応容器のアスペクト比は、8:1以下であるか、または7:1、6:1もしくは5:1以下であってもよい。反応容器の高さが高すぎる場合、反応混合物の引き抜きと戻しにより内容物の徹底的な混合を行うことがより難しくなる。反応容器の幅が広すぎる場合、特により小さい反応体積の場合、全体で一定の温度を確実にすることがより困難になる。混合物の撹拌は、特に反応混合物が95℃に加熱される場合、混合物全体で望ましい温度を達成することを助けることができる。上記の範囲内のアスペクト比を有する反応容器は、異なる量の反応要素にも適用することができる。
【0139】
図3において、本発明の実施態様において使用され得る反応容器2を断面で示す。反応容器2は、ジャケット25で取り囲まれた内部容器23を含む。内部容器23の内容物の温度を制御するために、温度制御流体は、内部容器23とジャケット25との間のスペース26を通って循環する。下部ポート27および上部ポート28は、内部容器をそれぞれ選択バルブ32b、32aに接続するために備えられている。
【0140】
内部容器23は、例えば20から50mm、好ましくは25から35mmの範囲の直径D1の円柱の形態を有する主要部分と、円柱形の部分を下部ポート27に接続する先細部分24とを有していてもよい。内部容器の全体的な高さH1は、150mmから300mm、望ましくは200mmから250mmの範囲であってもよい。先細部分24の高さは、5から20mm、好ましくは10から15mmの範囲であってもよい。先細部分の側壁の角度は、内部容器の軸に対して30から60°の範囲であってもよく、好ましくは約45°である。下部ポート27の直径D2は、5から10mmの範囲であってもよい。
【0141】
反応容器は、一定ではない断面を有していてもよく、例えば、その高さ全体で漸減する断面を有するか、または中央のふくらんだ部分を有する。
反応容器の温度は、外部ジャケットを介した反応容器への温度制御流体のフローによって制御されてもよい。温度制御流体は、入口2aによって供給され、再循環式の温度制御デバイス22によって出口2bから除去されてもよい。再循環式の温度制御デバイスは、流体を加熱および/または冷却することによって温度制御流体の温度を制御する。反応容器は、例えば吸熱または発熱反応の出現に関係なく一定温度に維持されてもよいし、または望ましい温度プロファイルに従うように制御されてもよい。温度制御流体は、水または油であってもよい。温度制御流体は、装置のシャシーに備えられたポート16を介して供給されてもよい。好適な再循環式の温度制御デバイスは、米国ペンシルベニア州のユラボUSA社(Julabo USA, Inc.)によって製造されたPresto A30温度制御システムである。本発明の実施態様において、再循環式の温度制御デバイス22は、オームヒーターおよび/またはペルチエデバイスを含む。一実施態様において、反応容器の温度は、4℃から95℃の範囲の温度に0.01℃の精度で制御することができる。
【0142】
温度制御された貯蔵容器4a〜4cは、合成反応で使用される反応要素ごとに備えられていてもよい。温度制御デバイス41a〜41c中に搭載されたシリンジ42a〜42c中、例えば使い捨てのポリプロピレンシリンジ中に、反応要素が保持される。この実施態様において、温度制御デバイスは、シリンジ42a〜42cをぴったりと受け入れるボアを有する、導電材料、例えばアルミニウムのブロックを含む。ブロックとシリンジとの間の熱伝導率を増加させる必要がある場合、熱伝導性ペーストが提供されてもよい。熱伝導性ブロックの温度、したがって貯蔵容器42a〜42c中に貯蔵された反応要素の温度を制御するために、加熱/冷却デバイス、例えばオームヒーターまたはペルチエデバイスが熱伝導性ブロックに取り付けられる。
【0143】
温度制御デバイス41a〜41cは、貯蔵された反応要素を加熱するかまたは冷却するために使用されてもよい。一部の反応要素は、それらの劣化を防ぐために、望ましくは低温で、例えば約4℃で保持される。プライマーは、プライマーの二量体化(diming)を防ぐおよび/または低減するように、高温で貯蔵することができる。また貯蔵容器を加熱して、反応容器に添加される前にテンプレートとプライマーとを変性させてアニールさせることもできる。反応容器の主要な温度制御の場合と同様に、温度制御された貯蔵容器は、一定温度に維持されてもよいし、または望ましい温度プロファイルに従ってもよく、例えば反応容器に添加する直前に反応要素を加熱してもよい。一実施態様において、温度制御された貯蔵容器の温度は、4℃から95℃の範囲内で0.01℃の精度で独立して制御することができる。
【0144】
反応容器に添加する前にプライマーなどの反応要素の温度を、例えば95℃に上昇させるために、1つまたはそれより多くのインラインヒーター(示されていない)が備えられていてもよい。ヒーターは、貯蔵容器4a〜c、5a〜gと選択バルブ32cとの間および/または選択バルブ32aと反応容器2との間のコンジットに備えられている。
【0145】
この具体化において、温度制御された貯蔵容器4cの1つは、単一の温度制御ブロック41cと熱接触している2つの貯蔵容器のシリンジ42cおよび42c’を含む。これは、2つの反応要素が同じ温度に維持される必要がある場合、またはより大きい体積の単一の反応要素が望ましい反応に必要な場合に有用である。
【0146】
装置はまた、温度制御デバイスと共に提供されない複数のさらなる貯蔵容器5a〜5gも含む。この実施態様では、7つのこのような貯蔵容器が存在し、他の実施態様では、それより多いまたは少ない貯蔵容器が提供される。さらなる貯蔵容器5a〜5gはまた、シリンジ、例えば、空のときに取り出して処分することができるガラスまたはポリプロピレンシリンジを含んでいてもよい。シリンジの使用は、反応要素が引き出されると貯蔵容器の体積が自動的に低減されるために有利である。折り畳み可能なバッグまたはチューブでも類似の作用を達成することができる。硬いコンテナーが使用される場合、汚染物質の進入を防ぐために、大気に通じるあらゆる通気孔中にフィルターが備えられていることが望ましい。
【0147】
都合のよい形態としては、貯蔵容器5を搭載するための回転式スタンド51が備えられている。反応要素が大量に必要となる場合、装置は、外部の貯蔵容器に接続するためのポートが備えられていてもよい。望ましくは、装置は、貯蔵容器を選択バルブに接続するのに必要なコンジットの長さを最小化するようにレイアウトされる。コンジットは、貯蔵容器から取り外し可能であってもよく、したがってクリーニング用流体または濯ぎのための水の供給源に接続されるマニホールドに取り付けられることができる。この方式によれば、装置全体を、その場で、すなわち分解することなく洗い流すことができる。
【0148】
貯蔵容器4a〜cおよび5a〜gは、3から10ml、例えば約5mlの容量を有していてもよい。1つまたはそれより多くのより大きい貯蔵容器が備えられていてもよく、例えば緩衝溶液のためには、10から500ml、例えば約250mlの容量である。
【0149】
反応容器への反応要素の供給は、往復シリンジポンプ3aによって実行されてもよい。このポンプは、供給ポンプと称される。これは、シリンジ31a、例えばガラスまたはポリプロピレンシリンジを含み、ソレノイド33aによって駆動され、貯蔵容器および反応容器のそれぞれにソレノイドを選択的に接続するための制御可能な選択バルブ32aに接続されている。反応容器に制御された量の反応要素を添加するために、まず選択バルブ32aを使用してポンプのシリンジを関連する貯蔵容器に接続し、次いでソレノイドを作動させてシリンジに関連する体積の反応要素を引き込む。次に、選択バルブ32aを使用してシリンジ31aを反応容器2に接続し、ソレノイドを逆に作動させてシリンジの内容物を反応容器に吐出させる。この配列を用いれば、複数のシリンジポンプおよび反応容器への複数の入口を必要とせずに、反応容器に多量の望ましい反応要素を逐次的に迅速添加することが可能である。しかしながら、反応容器に複数の反応要素を同時に添加することが望ましい場合、複数の供給ポンプ3aを備えることが可能である。これはまた、それらを反応容器に添加する前、特定の反応要素を絶対的に分離し続けることが必要な場合にも望ましいこともある。
【0150】
さらに、第2の往復シリンジポンプ3bは、反応容器の内容物を撹拌したり、同様に反応の最後、または反応プロセス中のサンプリング目的のいずれかで反応混合物または生成物を取り出したりするのに使用されてもよい。このポンプは引き抜きポンプと称され、ソレノイド33bによって駆動するシリンジ31bを含む。第2のシリンジポンプ3bは、反応容器の底部で、第2の選択バルブ32bを介して出口に接続される。反応容器の内容物を撹拌するために、第2の選択バルブ32bを使用して反応容器にシリンジ31bを接続し、その間に反応容器から所定量の反応混合物を引き出して、次いでそこに戻す。実行される撹拌の程度を制御するために、引き出される反応混合物の量および反応混合物を戻す速度を制御してもよい。このような撹拌は、反応経過中ずっと連続的に、一定間隔で、または反応要素の添加に関する特定の時間で実行することができる。
【0151】
代替として、またはそれに加えて、第2の往復シリンジポンプ3bは貯蔵容器4aに接続されていてもよく、その貯蔵容器に貯蔵された反応要素を反応容器2に供給するのに使用することができる。
【0152】
圧力センサー82は、反応容器2と選択バルブ32bとの間または選択バルブ32bと引き抜きポンプ3bとの間のコンジットに接続された短いスプール上に備えられていてもよい。反応容器2からの材料の引き抜きおよび反応容器2への戻し中、センサー82によって測定された圧力が、移動中の混合物の粘度の指標になり、すなわち圧力が高いほど、粘度はより高くなる。特定には、材料の周期的な引き抜きおよび戻し中の圧力変化の振幅が、反応混合物の粘度の指標になる。圧力と粘度との正確な関係は、材料の引き抜きまたは戻しの速度、使用されるコンジットの直径、および反応容器の幾何学的配置などの様々な要因に依存する。この関係は、理論的に決定することもでき、または較正によって決定することもできる。一実施態様において、正確な関係は必ずしも必要ではなく、圧力センサー82からのシグナルは、その正確な粘度を知らないまま反応混合物中における変化を検出するのに単に使用することもできる。生成物形成により粘度が増加する反応において、圧力センサーからのシグナルは、反応を制御するのに使用することができる。圧力シグナルをベースとして、適切な速度または適切な量で、貯蔵容器の1つまたはそれより多くから1種またはそれより多くの適切な試薬を送達するのにポンプを駆動させることによって、生成物収量を増加させることができる。他のケースにおいて、圧力シグナルは、反応の完了または反応中の段階を示す場合があることから、生成物の回収または次の段階のための要素の添加を開始させるのに使用することができる。
【0153】
圧力センサー82からのシグナルは、混合物中のDNA材料が剪断力によってダメージを受けないように反応容器への混合物の引き抜きおよび/または戻しの速度を制御するのに使用することができる。混合物の引き抜きおよび/または戻しの速度は、圧力の限界を超えないように制御されてもよい。圧力の限界は、粘度依存性であり得る。
【0154】
反応容器から材料、例えば反応生成物を取り出すために、まず引き抜きポンプ3bを第2の選択バルブ32bによって反応容器に接続して、ソレノイドを作動させて、反応容器2から材料が引き抜かれるようにシリンジのピストンを引き出す。次いで引き抜きポンプを第2の選択ポンプによって出口ポート7に接続し、ソレノイド33bを駆動させて、出口ポート7を介して収集された材料を排出する。
【0155】
出口ポート7は、例えば、反応生成物のためのコンテナー、サンプルコンテナー、測定デバイスまたは他のあらゆる装置に接続されてもよい。測定目的で取り出されたサンプルを測定後に反応容器に戻すことも可能である。
【0156】
引き抜きポンプ3bは、例えば反応容器全体が1回のポンピング操作で空にすることができるように、供給ポンプ3aより大きい容量を有していてもよい。またこのような引き抜きポンプ3bの大きい容量は、システム全体に大量のクリーニング溶液および/または脱イオン水をフラッシングさせることによる装置のクリーニングを助けるためにも望ましい。この目的を達成するために、装置は、十分な量のクリーニング溶液および脱イオン水を保持するための追加の大きい貯蔵容器が備えられていてもよい。
【0157】
反応混合物を撹拌するために、さらに反応混合物および/または生成物を引き出すために、単一のポンプを反応要素を供給するのに使用してもよい。
供給ポンプ3aおよび/または引き抜きポンプ3bは、別の形態のポンプ、例えば蠕動ポンプを含んでいてもよい。
【0158】
また装置は、通気孔62を介して大気に接続される廃棄物容器6も含み、ここで通気孔は、一方向バルブと共に備えられていてもよい。廃棄物容器6は、通気孔を備えることにより反応容器2中の圧力上昇を防ぐように、反応容器2の上部に接続される。反応容器からの生成物ならびにあらゆる未使用のおよび望ましくない反応要素の放出が可能になるように、廃棄物容器6を選択バルブ32aおよび32bを用いて接続するためのコンジットも備えられる。廃棄物容器はまた、その場での洗い流しの間に洗い流しの流体を受け取ったり、加えて、反応容器への望ましい量の正確な送達を可能にするために、コンジットのプライミングから少量の反応要素を受け取ったりするのに使用することができる。
【0159】
廃棄物容器6は、省略されてもよい。その場合、反応容器2に安全バルブを備えていること、および選択バルブ32a、32bから外部のドレインへの接続部を備えていることが望ましい。
【0160】
装置の操作は、制御器8によって制御され、ここで制御器8は、温度制御デバイス41a〜cに、選択シリンジ32a〜bに、ソレノイド33a〜bに、温度制御デバイス22に、および圧力センサー82に、これらの装置の要素を制御するように電気的に接続される。制御器8はまた、全体的なプロセス制御を行うために外部のコンピューター9への接続を可能にするインターフェース81も含む。
【0161】
制御器8は、プライミング、サンプリング、回収、濯ぎ、およびクリーニングなどの、具体的な一般的に使用されるルーチンを実行するために事前にプログラム化されていてもよい。一実施態様において、制御器8は単に、外部のコンピューター9から装置の異なる要素にコマンドを送る。上述のルーチンは、外部のコンピューターの制御下で、または手動で実行することができる。
【0162】
装置のプライミングは、貯蔵容器と選択バルブとの間のコンジットがそれぞれの反応要素で充填されるように、使用される貯蔵容器のそれぞれから反応要素を引き出すことを含んでいてもよい。これは、反応容器に送達される反応要素の量の精度を増加させて、汚染の可能性を低下させるのに望ましい。一実施態様において、反応混合物のサンプリングは、反応の経過中に、予め決定された量の反応要素を、外部の容器またはセンサーに取り出すことを含む。いくつかのケースにおいて、反応容器へのサンプルの戻しが可能性である。回収は、バッチプロセスの最後に、または連続プロセス中の適切な時間に、反応生成物の一部または全てを引き出すことを含んでいてもよい。濯ぎは、使用されるコンジットおよび貯蔵容器を純水で濯ぐことを含んでいてもよい。装置のクリーニングは、コンジットおよび貯蔵容器をクリーニング溶液で濯ぐことを含んでいてもよい。
【0163】
本発明の実施態様において、DNAテンプレート、少なくとも1種のポリメラーゼ、1種またはそれより多くのプライマーおよびヌクレオチドが反応容器に添加されて、反応混合物が形成される。反応混合物の部分または一部は、反応混合物を撹拌してそれらの混合を確実にするために、反応容器から引き出され、そこに戻される。反応の最後に、DNAは、反応容器から引き出される。一実施態様において、反応混合物は、反応容器のより低い部分に、好ましくは反応容器の最も低いポイントに備えられたポートから引き出される。一実施態様において、取り出される反応混合物の一部は、反応混合物全体の50%またはそれ未満、望ましくは40%またはそれ未満、好ましくは30%またはそれ未満の量である。一実施態様において、取り出される反応混合物の一部は、反応混合物全体の5%またはそれより多く、望ましくは10%またはそれより多く、好ましくは20%またはそれより多くの量である。
【0164】
一実施態様において、反応混合物の開始時の体積は、10mlから10リットルの間であり、好ましくは10〜100ml、100ml〜1000mlまたは1〜10リットルである。
【0165】
以下、数々の非限定的な例を参照しながら本発明を説明する。
【実施例】
【0166】
材料および方法
以下の実施例で行われたDNA増幅は、プロテロメラーゼTelNの標的部位を含有するds環状テンプレートに作用するPhi29 DNAポリメラーゼを使用して行われた。Phi29ポリメラーゼは、プロテロメラーゼTelN(タッチライトジェネティクス(Touchlight Genetics))で望ましい閉じた直鎖状DNA生成物にプロセシングされ得る環状テンプレート(コンカテマー)の長い直鎖状の反復を生産する。Phi29 DNAポリメラーゼによりコンカテマー様のDNAを作り出すことにより、それらの長さが長いことから(報告によれば最大77キロベース)反応物の粘度増加が起こり、一方でプロテロメラーゼTelNで二本鎖のコンカテマー様DNAをプロセシングすることにより、それらの長さがより一層短いことから(所与の実施例では2から3キロベースの間)粘度減少が起こる。
【0167】
実施例1および3において、DNAは、本明細書で説明され、
図1〜3に示されるような装置で生産される。
実施例1:圧力差測定による反応で生産されたDNAのオンラインの定量
まず装置をクリーニングし汚染を除去した。チューブを10個の試薬貯蔵容器(42a、42b、42c’、42c、5a〜5g)から切り離し、10%次亜塩素酸ナトリウム溶液を含有する120mlの貯蔵容器からのフィードを受ける10個の位置のマニホールドに、ルアー式はめ込みを介して再度接続した。同様に、10%次亜塩素酸ナトリウム溶液の60mlの貯蔵容器を、選択バルブ32bからの出口ポート7に取り付けた。それぞれ5mlのガラスシリンジ31aおよび31bにおける選択バルブ32aおよび32bの位置ならびにソレノイド33aおよび33bの作用を制御することによって、反応容器2それ自体を包含するシステム全体を、デッドスペースを作らずに次亜塩素酸ナトリウム溶液で完全に充填した。各チューブを介して最小限の溶液5mlを引き出した。反応容器(容量120ml)をサーモサーキュレーター22での制御動作によって50℃に加熱し、この状況で30分間にわたりシステムを維持した。この手順により、全てのフィードチューブおよび反応容器それ自体の中における全ての汚染DNAの完全な破壊を確実にした。
【0168】
同様に、上述した選択バルブおよびソレノイドを制御するのに適切なプログラムを使用することによって、次亜塩素酸ナトリウム溶液を廃棄物容器6に分配することによりシステム全体を空にした。貯蔵容器中の次亜塩素酸ナトリウム溶液を脱イオン水で交換した後、上記のプロセスを5回繰り返すことによって、残留した全ての次亜塩素酸ナトリウムのシステム全体からの完全な除去を確実にし、システムをすぐ使える状態にした。
【0169】
次いでチューブをマニホールドから切り離し、ルアーロック式のはめ込みを備えた滅菌の使い捨てポリプロピレンシリンジ(容量5ml〜20ml)を含む10個の試薬貯蔵容器に再度接続した。以下で示される場合、これらのシリンジは、個々の反応要素を最小限の体積の2mlで含有していた。そうでなければ、プランジャーを完全に押し下げてシリンジを空のままにした。貯蔵容器5dは、総容量120mlの脱イオン水が得られるように、並列して2つの60mlシリンジからなっていた。試薬を含有するシリンジにおいて、充填後に、シリンジ出口から液体が少しだけ漏れるまでプランジャーを手動で押し下げることによって、各シリンジ外筒中の空気を追い出した。この手順中、シリンジ出口をシリンジプランジャーの上で垂直に維持して、外筒中の全ての空気が排除されるようにした。
【0170】
【表1】
【0171】
それぞれ貯蔵容器42cおよび42c’中の酵素試薬Phi29 DNAポリメラーゼおよびピロホスファターゼを、温度制御デバイス41cにより、安定な条件下、4℃で維持した。全ての他の試薬を室温で維持した。
【0172】
反応容器2への正確な試薬の分配を達成するために、極めて少量の試薬を引き出し廃棄物容器6に分配することによって、試薬貯蔵容器と選択バルブ32aおよび32bとの間のチューブを逐次的にプライミングした。
【0173】
DNAテンプレートを変性させてオリゴヌクレオチドプライマーと結合させるために、貯蔵容器5a、5bおよび5cからの試薬を、選択バルブ32aを介して、閉じた空の5mlシリンジ(貯蔵容器42b)に分配した(シリンジ31aでのソレノイド33aの作動により)。この貯蔵容器の温度を、温度制御デバイス41bによって制御した。41bでの制御動作を使用して、その温度を3分にわたり95℃に高め、次いで30℃に冷却した。次いで貯蔵容器42b中の組み合わされた反応要素を選択バルブ32aを介して反応容器2に分配した。反応容器2の最終容量が100mlになるように、残りの5種の反応要素を、選択バルブ32aを介して表1に示された順番で逐次的に分配した。反応容器2の温度をサーモサーキュレーター22での制御動作によって30℃に設定した。反応要素は、設定値より2℃高い表面温度に晒されなかった。
【0174】
反応要素の混合は、ソレノイド33bでの制御動作とそれに続くシリンジ31bの混合動作によって達成された。5mlの反応要素を反応容器2から引き出しそこに戻すようにシリンジの動作を制御した。混合は不連続であり、シリンジは、29分の間隔で1分にわたり、55ml/分の引き抜き/分配速度で駆動させた。
【0175】
反応容器2とシリンジ31bとの間のチューブにおける圧力変化を、真空および圧力センサー(モデルPX409−2.5CGUSBH、オメガエンジニアリング社(Omega Engineering Limited)、マンチェスター、M44 5BD、英国)によって測定した。このセンサーは、−2.5から+2.5psiの圧力差を測定し、直径1/8インチのPTFEチューブの短い断片を使用したT型部品を介して接続された。センサーからの出力シグナルをリアルタイムでモニターし、製造元により供給されたソフトウェアを使用して、リアクターを制御するコンピューターにログオンした。混合シリンジの往復動作が、プラス値とマイナス値(混合シリンジの押す/引くストローク)の間で往復する圧力センサーの出力を発生させる。各混合タイムポイントで記録された1分毎の圧力データにつき、最小および最大圧力の記録を、20秒を3セットで計算した。各セットにつき最大値から最小値を引き、平均を計算した。シリンジ速度、チューブ材料、内径および長さ、ならびに選択バルブのサイズおよび幾何学的配置などの他の全ての変数を固定することにより、ピーク高さのいかなる変化も、反応要素の粘度変化のみに起因するようにできる。環境温度や圧力変動に起因し得る非常に小さい圧力変化は、圧力差の計算において補正しなかった。システムの完全な平衡化を確実にするために、分析に使用された第1のデータポイントは、およそ45分後であった。
【0176】
図4は明らかに、Phi29 DNAポリメラーゼによって触媒されたDNA増幅反応の経過とともに圧力差が増加したことを示す。この反応から採取されたサンプルも、Qubit(商標)BR dsDNA蛍光アッセイ(ライフテクノロジーズ(Life Technologies)、英国ペイズリー)を使用して、DNAに関して直接分析した。このアッセイは、二本鎖DNAのみを測定する。反応で生産されたコンカテマー様のDNAをプロテロメラーゼTelNを用いてプロセシングして、3種の共有結合で閉じた直鎖状DNA分子を生産した。プロセシングされたDNAを、それぞれ5%および2Mの最終濃度のPEG8000およびNaClで沈殿させた。沈殿したDNAを14,000gで20分遠心分離し、等しい体積のヌクレアーゼ非含有の脱イオン水に再懸濁した。
【0177】
図5は明らかに、反応の経過中の圧力差シグナルの増加は、DNAの濃度増加と直接的に相関することを示す。また圧力と測定されたDNAとの間の直接的な直線関係は、この反応期間にわたり、DNAが二本鎖の形態で優勢に存在することも示す。
【0178】
実施例2:開始のdNTP濃度の、それらのDNAへの取り込み効率への作用
この実験において、DNA増幅反応(体積5ml)を50mlのポリプロピレン遠沈管で実行した。表2に示した順番で遠沈管に要素を逐次的に添加して、示された最終濃度を得た。DNA増幅への開始のdNTP濃度の作用を、2mM、4mMのおよび8mMで試験した。
【0179】
【表2】
【0180】
全てのチューブを、オービタルインキュベーターにおいて、61.5時間の最短の撹拌時間で、30℃でインキュベートした。この期間は、2mMのdNTPが供給されたDNA増幅反応の完了に必要な期間のおよそ10倍に相当する。反応の最後に、各条件下で生産されたコンカテマー様のDNAを、プロテロメラーゼTelNを用いてプロセシングして、2種の異なる共有結合で閉じた直鎖状DNA分子を生産した。プロセシングされたDNAを、それぞれ5%および2Mの最終濃度のPEG8000およびNaClで沈殿させた。沈殿したDNAを14,000gで20分遠心分離し、5mlのヌクレアーゼ非含有の脱イオン水に再懸濁した。このDNA生成物のサンプルを脱イオン水50に対して1に希釈し、75℃に1分加熱した。この希釈したDNAの10μlのサンプルを、2μlのローディング色素(ノーベルジュース(Novel Juice)、ニューマーケットサイエンティフィック社(Newmarket Scientific Ltd.)、英国)と混合し、10μlのサンプルを0.8%アガロースゲルに適用し、DNA要素がはっきりと分離するまで標準的な電気泳動条件下で泳動した(
図6)。
【0181】
図6の電気泳動ゲルは明らかに、開始のdNTP濃度が8mMであった場合、2種の共有結合で閉じた直鎖状DNA生成物に関して生成物収量の劇的な減少を示す。反応を長い期間にわたり行ったため、これは、DNA増幅に対して非常に強い阻害作用を示す。また反応の最後に採取されたサンプルも、260nmでの吸光度測定を使用してDNAに関してアッセイし、結果を表3に示した。
【0182】
【表3】
【0183】
Phi29 DNAポリメラーゼによって触媒される反応における4mMを超える開始のdNTP濃度はDNAの収量を劇的に低減する可能性があることを
図6において示した電気泳動結果が、表3で確認される。また、8mMの開始のdNTP濃度は、2つの主要な生成物のバンド周辺が滲んでいることから明らかなように(
図6)、生成物の純度も有意に低減することが明白となった。
【0184】
dNTPの開始濃度を増加させることによる観察されたDNA収量の低減は、反応における様々な作用が原因の可能性がある。これらの作用としては、これらに限定されないが、酵素の基質の阻害、DNA鎖相互作用、主にプライマーとテンプレートとの相互作用の安定性に対するLi
+またはヌクレオチドの作用、および/またはdNTPへのMg
2+結合の結果として酵素活性に利用可能な遊離のMg
2+のレベルが挙げられる。DNA増幅の阻害は、直接または間接的な方式で機能する単一の要因または複数の要因によって引き起こされる可能性がある。明らかに、工業的生産にとって許容できるとみなされるレベルに反応におけるDNAの収量を増加させることは、単にdNTPの開始濃度を増加させることでは達成できない。
【0185】
実施例3:Phi29 DNAポリメラーゼによって触媒されるDNA増幅反応にdNTPをフィードすることの作用
実験を行って、Phi29によって触媒されるDNA増幅反応に追加量のdNTPを補充することの作用を比較した。260nmでの吸光度測定からDNA濃度を計算したこと以外は、実施例1で説明されるようにして反応を行った。2mMのdNTPを用い、追加のdNTPを添加しなかった反応(反応1)、2mMのdNTPを用い、530分で追加の2mMのdNTPをフィードした反応(反応2)、開始から4mMのdNTPを用いた(追加のdNTPを添加しなかった)反応、および2mMのdNTPを用い、2mM濃度の追加のdNTPを3回(500、1430および4340分で)フィードした反応の間で比較を行った。あらゆる追加のdNTPをフィードするためのきっかけは、圧力差シグナルが横ばいになったときであった。それにより、リアクター中のdNTP濃度が2mMに増加するように、貯蔵容器から適切な体積のdNTP溶液の添加が開始された。
【0186】
これらの反応条件のそれぞれについて、
図7に圧力差対時間のプロットを示す。
図7に示したデータから、必要に応じてdNTP添加前、添加の間および添加後の初速度を計算した。これらは表4に示される。各反応の最後にも、DNAの最終的な収量を推測し、添加されたdNTP濃度から、理論上の最大収量のパーセンテージとして計算した。表5にデータを示す。
【0187】
【表4】
【0188】
【表5】
【0189】
表4は明らかに、dNTPの濃度を増加させることは、Phi29 DNAポリメラーゼによってDNAが増幅される速度を劇的に低減することを示す。反応速度への作用は累積的であり、いつ追加のdNTPが添加されるかは無関係である。
【0190】
実施例2において、8mMのdNTP開始濃度を用いた反応は、理論上の最大収量の15%しか生産しなかったことが示され、これは、反応が極めて遅かったことを示す。表5において、8mMのdNTPが2mMのアリコートで添加される反応(反応4)は、理論上の最大収量の54%のDNA収量を達成しており、これは、極めて有意な改善である。段階的なdNTPのフィードにより連続的な反応速度低減が起こると考えられるが、反応開始時に高濃度のdNTPを導入するよりも、全体的な速度は速く、収量も多い。
【0191】
表4はまた、dNTPをフィードするプロセスにおいて、Mg
2+イオンとdNTPリン酸基とのモル比(Mg
2+/PO
43−の比率)が有意に低減し、観察された反応速度の減少と一致することも示す。これは、
図8で例示される。
【0192】
したがってdNTPをフィードすることは、酵素によって触媒される反応で、DNA生産を工業的に許容されるレベルに増加させることができる。しかしながら、より高い反応速度を達成するために、Mg
2+イオンとdNTPPO
43−基とのモル比を、dNTPと共にMg
2+イオンをフィードすることによって最適なレベルに維持することが必要であると考えられる。
【0193】
実施例4:DNAへのdNTPの取り込み効率に対するマグネシウムイオン濃度の作用
この実験において、DNA増幅反応(体積5ml)を50mlのポリプロピレン遠沈管中で実行した。要素を30℃に予熱し、表6に示した順番で遠沈管に逐次的に添加して、示された最終濃度を得た。2.24mM、4.52mM、9mMのおよび11.24mMのMg
2+の開始濃度と、3mMの開始のdNTP濃度との組合せにより、それぞれ0.25、0.5、1および1.25のMg
2+/PO
43−の比率を得た。チューブを30℃で19時間インキュベートした後、さらなるdNTPおよびMgCl
2のアリコートを添加して、dNTPの反応濃度を6mMに増加させ、Mg
2+濃度を4.48mM、9.04mM、18mMおよび22.48mMに増加させて、0.25、0.5、1および1.25のMg
2+/PO
43−の比率を維持した。反応をさらに24時間進行させた後、回収されたDNA生成物とその濃度を推測した。DNAを十分な量のプロテロメラーゼTelNで消化し、500mMのNaCl、100mMのMgCl
2を含有する緩衝液中の6%PEG8000を使用してDNAを沈殿させた。DNAを4mlの体積に再懸濁し、260nmでの吸光度測定を使用してDNAを定量した。
【0194】
【表6】
【0195】
【表7】
【0196】
表7の結果は、dNTPフィード反応の43時間後における異なるMg
2+/PO
43−の比率のDNA収量への作用を示す。この時間の後に0.25のMg
2+/PO
43−の比率で達成されたより低いDNA収量は、Mg
2+イオン濃度が不十分なことによるより遅い反応速度または反応阻害を示す。いずれにせよ、データから、工業用途のための効率的なDNA増幅反応のために維持されることが求められる最適なMg
2+/PO
43−の比率があることが示される。データから、最適な比率は、0.5から1.25の間であり得ることが示される。またデータから、dNTPが反応にフィードされる場合、追加のMg
2+イオンの添加は、最適なMg
2+/PO
43−の比率(理想的には1)を維持し、DNAへの効率的な変換を可能にすることも示される。
【0197】
実施例5:複数のdNTPアリコートがフィードされたPhi29 DNAポリメラーゼによって触媒されるDNA増幅反応へのプロテロメラーゼTelN添加の作用
実験を行って、プラスミドProTLx−K N3X2 LuxにおけるPhi29によって触媒されるDNA増幅反応に、追加量のdNTPおよびプロテロメラーゼTelNを補充する作用を比較した(
図13)。反応は本質的に実施例1で説明されるようにして行われたが、貯蔵容器42bは、12mMのトリス−HCl(pH7.4)、90mMのNaCl、0.1mMのEDTA中の25μMのTelN溶液を含有していた。1mMのDTT、50%グリセロールを4℃で維持し、貯蔵容器5gに脱イオン水中の100mMのMgCl
2溶液を入れた。テンプレートProTLx−K_N3X2Luxの開始濃度は5μg/mlであった。
【0198】
反応のバッチ相の後、300分、600分、900分、1080分、1230分および1440分の選択された時間間隔で2mMの濃度増加を達成するために、dNTPのアリコートをシリンジ31aを介して反応容器2に添加した。dNTP添加の同じ間隔で、およびその直後に、MgCl
2のアリコートを添加して、[Mg
2+]:[dNTP]の3:1の比率を達成した。1050分に、プロテロメラーゼTelNを反応容器2に分配して、2μMの最終濃度を得た。
【0199】
反応の最初のバッチ相(最大300分)の後、コンカテマー様のDNA合成に対応する差圧の測定において安定した増加がみられる。1050分で反応にプロテロメラーゼTelNを添加した後、DNA合成の劇的な増加に対応する圧力変化の速度の3.6倍の増加がみられる。反応のdNTP/Mg
2+フィード相中における単一のTelN添加により、さらなるDNA増幅のためのテンプレートとして作用できる閉じた直鎖状DNAの生産が起こることが提唱される。このポイント後におけるMg
2+/dNTPのさらなるフィードは、観察されたDNA合成速度の増加を確実にするために重要である。