特許第6708670号(P6708670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6708670ステロイド系ラクタムおよびビス(2−クロロエチル)アミノフェノキシプロパン酸誘導体のエステル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708670
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ステロイド系ラクタムおよびビス(2−クロロエチル)アミノフェノキシプロパン酸誘導体のエステル
(51)【国際特許分類】
   C07J 73/00 20060101AFI20200601BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C07J73/00
   A61K31/58
   A61P35/00
   A61P35/02
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-567610(P2017-567610)
(86)(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公表番号】特表2018-519311(P2018-519311A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016065071
(87)【国際公開番号】WO2017001439
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年5月14日
(31)【優先権主張番号】15386022.6
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517449051
【氏名又は名称】ガレニカ・エス.アー.
(73)【特許権者】
【識別番号】517449062
【氏名又は名称】エネルジョンビオ・テクノロジーズ・エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】トラファリス,ディミトリウス
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 Melanoma Research,2005年,15,273−281
【文献】 Mutation Research,1993年,290,211−216
【文献】 J. Chem. Inf. Model.,2008年,48,2254−2264
【文献】 Bioorg. Med. Chem.,2008年,16,5207−5215
【文献】 Medicinal Chemistry,2006年,2,569−576
【文献】 Investigational New Drugs,2003年,21,47−54
【文献】 Mutation Research,1993年,319,325−329
【文献】 Mutation Research,1987年,190,205−210
【文献】 Cancer Chemother. Pharmacol.,1983年,10,129−132
【文献】 Steroids,2016年,115,1−8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 73/00
A61K 31/58
A61P 35/00
A61P 35/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[ここで、Rは、
【化2】
からなる群から選択され、
は、H、−CH、−CH=CH、−CH−CH、−CHCHCH
【化3】
からなる群から選択され、
は、H、−OH、−NHからなる群から選択される]
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
は、
【化4】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
は、
【化5】
からなる群から選択される、請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
は、
【化6】
からなる群から選択される、請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
は、H、−CH、−CH=CH、−CH−CH、−CHCHCHからなる群から選択される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
はHである、請求項5に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
はHである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
は−NHである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
薬剤に使用するための、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
癌の治療に使用するための、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
卵巣癌、乳癌、前立腺癌または白血病の治療に使用するための、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(2−クロロエチル)アミノフェノキシプロパン酸およびその置換誘導体などのアニリンの誘導体であるアルキル化マスタードを有する新規のホモ−アザ−ステロイド系エステルに関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、窒素マスタードのようなアルキル化抗癌剤は、現状の臨床診療では抗腫瘍薬として依然有効な部類のままであり、それらの治療効果は、アルキル基を細胞のDNAに結合して顕著なDNA損傷を生成する能力に由来している(Hurley LH, Nature Rev Cancer, 2002, 2:188-200; Brendel M and Ruhland A, Mutat Res, 1984; 133:51-85)。
【0003】
ステロイド系共役体は、全身毒性を低減しかつ癌治療の有効性を改善するので、以前から細胞傷害性のアルキル化剤の担体として使用されてきた(Wall ME et al, J Med Chem, 1969, 12:810-8; Catane R, Cancer Treat Rep, 1978; 62:1264-5)。前立腺癌およびリンパ増殖性悪性腫瘍のそれぞれを処置する癌治療に、エストラムスチン(エストラジオールおよびメクロレタミンのエステル)およびプレドニムスチン(プレドニゾロンおよびクロラムブシルのエステル)などのステロイド系アルキル化剤が現在適用されている(Catane R, Cancer Treat Rep, 1978, 62:1264-5; Matsumoto K et al, Med Oncol, 2013, 30:717; IARC Monogr Eval Carcinog Risks Hum, 1990, 50:115-22; Hiddemann W, Eur J Cancer, 1995, 31A(13-14):2141-5)。
【0004】
【化1】
【0005】
これらの薬物のアルキル化成分が単独で生じる毒性は非常に高いのとは裏腹に、該薬物が引き起こす急性毒性や全身毒性は低減されるが、それに反して該薬物の抗癌活性はあまり改善されず、ならびに癌細胞の標的化への特異性は、初期の見積りよりもむしろ少ない。しかしながら、エストラムスチンとプレドニムスチンが抗癌活性を発揮する主要な分子薬理学的メカニズムが、ステロイド受容体における特異的作用とは多少異なっていても、一般にそれらは臨床診療において良好で治療効果の改善を示した。
【0006】
いくつかのホモ−アザ−またはラクタムステロイド系エステル(アルキル化剤と共役したステロイド環内にラクタム基−NHC=O−を含有するステロイド)は、過去に合成されていて、前臨床設定、生体外、および生体内において、毒性および抗癌活性について試験されている(Wampler GL and Catsoulacos P, Cancer Treat Rep, 1977, 61:37-41; Catsoulacos P and Catsoulacos D, Anticancer Res, 1991, 11:1773-7; Catsoulacos P and Catsoulacos D, Anticancer Res, 1993, 13(4):1203-8; Catsoulacos P et al, Oncology, 1994, 51:74-8; Catsoulacos P and Catsoulacos D, Anticancer Res, 1994, 14(6B):2525-8; Camoutsis C and Trafalis DT, Invest New Drugs, 2003, 21:47-54; Koutsourea AI et al, Bioorg Med Chem, 2008, 16:5207-15)。
【0007】
ラクタムステロイドアルキル化エステルは、生体内で顕著に急性毒性の減少を生じることを示したが、それらは生体外および生体内で向上した非常に有望な抗腫瘍活性を示し、一方で非修飾(非ラクタム)のステロイド系アルキル化剤は、それぞれの実験的腫瘍システムに対して、顕著に低い抗癌活性を生じるか、またはほとんど生じなかった。細胞DNA損傷の発生を除いて、ラクタムステロイドアルキル化エステルが抗癌効果を顕著に改善した分子薬理学的メカニズムは、依然未知のままである。さらに、1つ以上のラクタム基がステロイド系構造内に組み込まれるという位置の生物学的重要性もまた未知である。さらに、ラクタムステロイド上にエステル結合を介して共役したアルキル化剤は、重要な役割を果たし、かつ急性毒性と抗腫瘍活性の比率、すなわち結果としてラクタムステロイド系アルキル化剤が生み出す治療可能比の程度を調節する。現在までに、いくつもの活性なラクタムステロイド系アルキル化剤が合成され試験されてきたが、より高い抗腫瘍活性を示す該アルキル化剤ではより毒性が高く、より低い毒性を示す該アルキル化剤では活性がより低かった。これらの所見は、より低い毒性かつより高い抗癌活性、すなわち最適な治療指数を適正に生成する新規の活性ラクタムステロイド系アルキル化共役剤を開発し、かつ製造する明白な必要性があることを示している。
【0008】
窒素マスタード誘導体のラクタムステロイド系アルキル化エステルに関する従来までの研究では、3β−ヒドロキシ−13α−アミノ−13,17−セコ−5α−アンドロスタン−17−オイック−13,17−ラクタム−[p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェニル]アセテート(ASE、NSC-290205)が、生体内での急性毒性および生体外かつ生体内での抗腫瘍活性についての前臨床試験において、非常にバランスの良い効果をもたらし、顕著に高い治療指数を保持することを示していた。
【0009】
【化2】
【0010】
したがってASEは、同じ部類の薬剤の新しい分子を開発し、治療効能についてASEの薬剤と比較してそれら分子を試験することに対し、「ゴールデン」の判定基準を申し立てていた。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、ステロイド系ラクタムおよびアルキル化剤の新規なエステルを提供する。より詳細には、本発明の化合物は、ビス(2−クロロエチル)アミノフェノキシプロパン酸の誘導体を有するステロイド系ラクタムのエステルである。これらの化合物は、従来技術のラクタムステロイドアルキル化エステルと比較して、より高い抗腫瘍活性およびより低い急性毒性を示し、かつ抗悪性腫瘍薬および癌治療剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、式(I):
【0013】
【化3】
【0014】
の化合物またはその薬学的に許容可能な塩であり、
式(I)において、Rは下記の式:
【0015】
【化4】
【0016】
からなる群から選択され、
は、H、−CH、−CH=CH、−CH−CH、−CHCHCH、および下記の式:
【0017】
【化5】
【0018】
からなる群から選択され、
は、H、−OH、−NHからなる群から選択される。
好ましくは、Rは、下記の式:
【0019】
【化6】
【0020】
からなる群から選択される。
より好ましくは、Rは、下記の式:
【0021】
【化7】
【0022】
からなる群から選択される。
好ましくは、Rは、H、−CH、−CH=CH、−CH−CH、−CHCHCHからなる群から選択される。より好ましくは、Rは、Hである。
【0023】
好ましくは、Rは、HまたはNHである。
式(I)の化合物のビス(2−クロロエチル)アミノフェノール部分のヒドロキシル基は、フェニル環のアミノ基に対して、オルト位、メタ位またはパラ位に存在することができる。
【0024】
式(I)の化合物は、少なくとも1つの不斉中心を含む。不斉中心の立体化学が特定されていない際には、その構造は、全ての個々の立体異性体、ならびにそれらの混合物を包含することを意図している。
【0025】
式(I)の化合物は、少なくとも1つの塩基性官能基を含み、従って、好適な酸で処理することによって薬学的に許容可能な塩を形成することができる。好適な酸として、薬学的に許容可能な無機酸、および薬学的に許容可能な有機酸を含む。 薬学的に許容可能な塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩および安息香酸塩が挙げられる。
【0026】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、広範囲の癌の治療に使用することができる。好ましくは、これらは、卵巣癌、乳癌、前立腺癌または白血病の治療のために使用される。
【0027】
式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩は、従来技術のラクタムステロイドアルキル化エステルと比較して、より高い抗腫瘍活性およびより低い急性毒性を示し、かつ抗悪性腫瘍薬および癌治療剤として有用である。以下の実施例に開示する生物活性の前臨床試験には、2つの効果のある対照、単独のアルキル化剤(3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸、pBCEAPOPA)、および「ゴールデン」の判定基準として記載済みの部類の実験的なラクタムステロイドアルキル化剤:ASE(NSC−290205)に対する癌治療効力が、新規のアルキル化ラクタムステロイドエステルの優位性を示すために、比較して組み込まれている。
【0028】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を提供する。その医薬組成物は、経口、経鼻、局所または非経口の各経路などの任意の適切な経路での投与のために製剤化できる。例えば、医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、クリームまたはゲルとして製剤化できる。その組成物は、一般に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩に加えて、薬学的に許容可能な担体を含む。その担体は、希釈剤、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、溶媒、懸濁剤、増粘剤、緩衝剤、防腐剤などの当技術分野で周知の賦形剤を含む。これらの組成物は、当技術分野で周知の方法に従って調製することができる。
【0029】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の調製方法を提供する。
式(I)の化合物中のステロイド系ラクタム(アザ−ホモステロイド)は、塩基性ステロイド系骨格の環に1つ以上のアミド官能基を有する。 そのステロイド系ラクタムは、対応するオキシムおよびベックマン転位を介して、ケトステロイドから合成できることが知られている(Koutsourea AI et al, Steroids, 2003, 68(7-8):659-66; Mazur RH, J Org Chem, 1963, 28(1):248-250; Morzycki JW et al, Bioorg Med Chem, 1996, 4(8): 1209-15; Camoutsis C and Catsoulacos P, J Heterocycl Chem, 1983, 20(4):1093-4; Huang Y et al, Molecules, 2013, 18(7):7436-47)。
【0030】
ベックマン転位のための一般的手順
オキシム(1mmol)を17.5mLの乾燥ジオキサン中に溶解した。混合物を0℃に冷却し、塩化チオニル(1.9mL)を滴下した。混合物を室温になるまで放置し、24時間撹拌した。反応をNaHCOで停止し、混合物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これをさらにSiOクロマトグラフィーにより精製した。
【0031】
本発明の化合物であるビス(2−クロロエチル)アミノフェノキシプロパン酸誘導体は、以下のように調製することができる。
【0032】
【化8】
【0033】
置換した3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸を4−ニトロフェノールから出発して合成した。異なる3−クロロプロパン酸による4−ニトロフェノールのアルキル化で、3−(4−ニトロフェノキシ)プロパン酸が生成し、Hおよび触媒としてPd/Cを使用して、それをアミノ誘導体にさらに還元した。次に、既知の手順(Valu et al, J Med Chem, 1990, 33 (11): 3014-19)に従って、アミノ基をCHCOOH、THF中でオキシランでビスアルキル化した。最後に、アルコール基をPOClのベンゼン溶液を用いかつ加熱して対応する塩化物に転化し、対応する3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸を得た。場合によって、アミノ基またはヒドロキシル基が存在する際には、保護反応および脱保護反応のための追加の工程が必要である。例えば、RがNH基またはOH基である場合に、Boc保護基またはアセチル保護基がそれぞれ使用される(Valu KK et al, J Med Chem, 1990, 33(11):3014-9)。同工程に続いて、かつ2−ニトロフェノールまたは3−ニトロフェノールから出発して、ヒドロキシル基がアミノ基に対してオルト位またはメタ位にある式(I)の誘導体を合成することができる。
【0034】
アルキル化剤を用いたステロイド系ラクタムエステルの製造において、OH基を含有するステロイド系ラクタムは、DNAアルキル化剤と反応する。例えば、ステロイド系ラクタムは、DCC、DMAPを用いて3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸と反応し、または3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパノイルクロリドと反応し、または3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸の混合無水物と反応して、対応するエステルを生成する。任意のステロイド系モノ−またはビス−ラクタムは、本方法を使用して誘導体化することができる。
【0035】
ステロイド系ラクタムのエステル化のための一般的手順A
アルコール(1mmol)を28mLの乾燥ジクロロメタンに溶解した。次いで、酸(2mmol)、DCC(2mmol)および触媒量のDMAP(3mol%)を添加した。得られた溶液を室温で24時間撹拌した後に、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0036】
ステロイド系ラクタムのエステル化のための一般的手順B
丸底フラスコ内で、1mmolの酸を3.3mLの乾燥ベンゼン中で希釈した。2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(1.2mmol)およびトリエチルアミン(2.4mmol)を加え、混合物をAr下で1時間還流した。この混合物に、3.3mLの乾燥ベンゼン中のステロイド系アルコールの50mg(1mmol)溶液および触媒量の4−ジメチルアミノピリジンを添加した。還流を3時間継続した。真空中での蒸発によりベンゼンを完全に除去し、残った残渣をCHClで希釈した。得られた混合物を5%HCl水溶液で抽出し、有機層を7%NaHCO水溶液で洗浄し、最後は水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーによりクロマトグラフィーを実施した。
【0037】
ステロイド系ラクタムのエステル化のための一般的手順C
アルコール(1mmol)、EtN(1.3mmol)および触媒量のDMAPの混合物をCHCl(5mL)に溶解し、続いて塩化ベンゾイル(0.12mL、1.1mmol)を添加した。反応をTLCでモニターし、室温で24時間撹拌し、次いでCHClで溶解して、飽和NHCl水溶液で停止した。有機層を乾燥し、粗生成物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。
【実施例】
【0038】
以下の実施例は、本発明の実例である。
実施例1
【0039】
【化9】
【0040】
1: 3−アザ−17β−ヒドロキシ−A−ホモ−4α−アンドロステン−4−オンを、テストステロン17−β−アセテートからの三つの工程を一部修正した(Camoutsis C and Catsoulacos P, J Heterocycl Chem, 1983, 20(4):1093-4)手順により合成した。テストステロン17−β−アセテート(914mg、2.77mmol)を10mlの乾燥ピリジンに溶解した。ヒドロキシルアミン塩酸塩(461mg、6.64mmol)を加え、溶液を還流下で6時間撹拌した。溶液を水に注ぎ、混合物を酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得て、これをさらにSiOクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン−酢酸エチル=4/1)により精製して、675mgのシン型およびアンチ型オキシム(74%)を白色固体として得た。
【0041】
2: シン型およびアンチ型テストステロン−17−アセテートオキシム(100mg、0.145mmol)を3.5mLの乾燥ジオキサンに溶解した。混合物を0℃に冷却し、塩化チオニル(0.6mL)を滴下した。混合物を室温になるまで放置し、3時間撹拌した。反応をNaHCOで停止し、混合物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これをさらにSiOクロマトグラフィー(酢酸エチル)により精製して、63mgの3−アザ−17β−アセトキシ−A−ホモ−4α−アンドロステン−4−オン(63%)を白色固体として得た。
【0042】
3−アザ−17β−アセトキシ−A−ホモ−4α−アンドロステン−4−オン、1を4.9mLのMeOHに溶解し、LiOH(1N、2mL)を滴下した。混合物を室温で2時間撹拌した。反応をNHClで停止し、混合物をジクロロメタン(3×10mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して、87mgの3−アザ−17β−ヒドロキシ−A−ホモ−4α−アンドロステン−4−オン2を収率74%で得た。
【0043】
3: 3−アザ−17β−ヒドロキシ−A−ホモ−4α−アンドロステン−4−オン2を28mLの乾燥ジクロロメタンに溶解した。次いで、3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸(106mg、0.573mmol)、DCC(119mg、0.574mmol)および触媒量のDMAPを添加した。得られた溶液を室温で24時間撹拌した後に、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン−酢酸エチル=1/2)により精製して、共役体3(191mg、99%)を得た。3:融点=53〜56℃;[α]23+10.5(c=0.91 CHCl);H NMR(500MHz、cdcl)δ6.92(s、1H)、6.83(d、J=8.8Hz、2H)、6.66(d、J=8.6Hz、2H)、5.72(s、1H)、4.66(t、J=8.4Hz、1H)、4.17(t、J=6.0Hz、2H)、3.63(m、4H)、3.59(m、4H)、3.32〜3.04(m、2H)、2.75(t、J=6.1Hz、2H)、2.48(m、1H)、2.27(m、1H)、2.15(m、2H)、1.50〜1.98(m、10H)、1.33(m、2H)、1.14(s、3H)、1.05(m、1H)、0.80(s、3H);13C NMR(126MHz、cdcl)δ171.0、170.4、161.3、151.3、140.8、118.8、116.3、114.4、82.7、64.4、54.2、53.2、50.2、44.5、42.7、41.9、40.7、36.7、36.2、35.3、33.8、33.1、27.5、25.6、24.9、23.4、21.3、12.1;FT−IR:3450、2925、1731、1651、1607、1512、1469、1353、1238、1181、1041、869、813。
【0044】
実施例2
【0045】
【化10】
【0046】
4: エストロンオキシムを、過去に記載された手順(Ivanenko TI et al, Pharm Chem J, 1982, 16(10):751-6)に従って合成した。エストロン(100mg、0.37mmol)の2.2mLの無水エタノール溶液に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(62mg、0.88mmol)およびピリジン(1.2mL)を添加した。混合物を6時間還流した。次に水を加え、混合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これをさらにSiOクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製して、105mgのエストロンオキシム(100%)を白色固体として得た。
【0047】
5: ラクタム5を、過去に記載された手順(Regan BM and Newton Hayes F, J Am Chem Soc, 1956, 78(3): 639-43)に従って合成した。エストロンオキシム(108mg、0.376mmol)を6.3mLの乾燥ジオキサンに溶解した。混合物を0℃に冷却し、塩化チオニル(0.7mL)を滴下した。混合物を室温になるまで放置し、24時間撹拌した。反応をNaHCOで停止し、混合物をジクロロメタン(3×20mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得て、これをさらにSiOクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)により精製して、回収した出発物質[32mgの出発物質(0.112mmol)]を伴って42mgのラクタム5(回収された出発物質に基づいて56%)を得た。
【0048】
6: ラクタム5を14mLの乾燥DMFに溶解した。次いで、3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸(90mg、0.293mmol)、DCC(61mg、0.293mmol)および触媒量のDMAPを添加した。得られた溶液を室温で24時間撹拌した後に、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液;ジクロロメタン/アセトン=2/1)で精製して、共役体6(56mg、68%)を得た。共役体6:[α]23+73.5(c=0.90 CHCl);H NMR(500MHz、CDCl)δ7.25(d、J=6.0Hz、1H)、6.89(d、J=8.8Hz、2H)、6.82(s、1H)、6.68(d、J=8.8Hz、2H)、6.31(s、1H)、4.30(t、J=6.1Hz、2H)、3.62(dt、J=29.2,6.6Hz、8H)、2.97(dd、J=15.1、9.0Hz、2H)、2.88(m、2H)、2.58〜2.36(m、4H)、2.23〜2.00(m、2H)、1.92〜1.66(m、3H)、1.60〜1.29(m、4H)、1.19(s、3H);13C NMR(126MHz、CDCl)δ171.7、169.8、151.3、148.5、141.0、137.8、137.2、126.1、121.3、118.7、116.5、114.5、64.4、54.4、54.2、46.6、43.4、40.7、39.9、38.9、34.9、30.5、29.5、26.5、25.9、22.1、19.8;FTIR:3329、2927、2850、1757、1626、1577、1512、1437、1311、1244、1157、1088、1045、892。
【0049】
実施例3
【0050】
【化11】
【0051】
7: 17−ヒドロキシアンドロスト−4−エン−3,11−ジオン(484mg、1.59mmol)を2.2mLの無水酢酸に溶解した。次いで、4mg(0.037mmol)のDMAPおよび0.25mLの乾燥ピリジンを添加した。混合物を室温で24時間撹拌した。反応を水で停止し、混合物を酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得て、これをさらにSiOクロマトグラフィー(溶出液;ヘキサン:酢酸エチル=6:1)により精製して、472mgの17−アセトキシアンドロスト−4−エン−3,11−ジオンを収率86%で得た。7:融点=162〜164℃[α]23+148.0(c1.68 CHCl)。H NMR(500MHz、cdcl)δ5.69(s、1H)、4.76(t、J=8.6Hz、1H)、2.83〜2.69(m、1H)、2.54〜2.20(m、6H)、2.01(d、J=1.2Hz、3H)、1.92(m、3H)、1.85〜1.55(m、4H)、1.51〜1.41(m、1H)、1.44〜1.34(m、3H)、1.32〜1.10(m、2H)、0.85〜0.69(m、3H);13C NMR(126MHz、cdcl)δ208.3、199.5、170.8、168.3、124.6、80.2、62.6、54.8、49.4、46.2、38.2、37.0、34.7、33.7、32.1、31.7、27.6、22.9、20.9、17.2、12.8;FT−IR:3443、2958、2935、2850、1732、1702、1677、1618、1426、1373、1360、1343、1271、1238、1224、1045、1027。
【0052】
8: 7mLの無水エタノール中の17−アセトキシアンドロスト−4−エン−3,11−ジオン(465mg、1.35mmol)の溶液に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(100mg、1.44mmol)および乾燥ピリジン(4.2mL)を添加した。混合物を室温で24時間撹拌した。次いで、水を加え、混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これをSiOクロマトグラフィー(溶出液;ジクロロメタン:酢酸エチル=20:1)でさらに精製して、461mgのオキシム8(95%)を得た。
【0053】
9: オキシム8(264mg、0.74mmol)を13mLの乾燥ジオキサンに溶解した。混合物を0℃に冷却し、塩化チオニル(1.4mL)を滴下した。混合物を室温になるまで放置し、24時間撹拌した。反応をNaHCOで停止し、混合物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得て、これをSiOクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:メタノール=1:0.03)によりさらに精製して、163mgのラクタム9を収率62%で得た。9:H NMR(500MHz、cdcl)δ6.39(s、1H)、5.75(s、1H)、4.78(t、J=8.6Hz、1H)、3.35〜3.18(m、1H)、3.09(dt、J=14.7、7.2Hz、1H)、2.67(dd、J=14.9、8.2Hz、1H)、2.48(td、J=13.6、3.9Hz、1H)、2.34〜2.20(m、3H)、2.14(dd、J=9.3、6.5Hz、1H)、2.03(s、3H)、2.01〜1.86(m、2H)、1.83〜1.53(m、5H)、1.48〜1.37(m、1H)、1.38(s、3H)、1.28〜1.08(m、1H)、0.76(s、3H);13C NMR(126MHz、cdcl)δ209.0、170.8、169.5、158.4、120.1、80.1、62.4、55.1、49.9、46.7、43.6、40.4、36.8、36.8、35.5、33.2、27.6、22.8、21.1、20.9、12.8;FT−IR:3428、2971、2920、2878、2364、2341、1736、1701、1664、1639、1599、1444、1375、1339、1245、1127、1089、1046。
【0054】
10: 76mg(0.21mmol)のラクタム9を3mLのMeOHに溶解し、LiOH(1N、1.2mL)を滴下した。混合物を室温で1時間撹拌した。反応をNHClで停止し、混合物をジクロロメタン(3×5mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して67mgのラクタム10を得た。10:H NMR(500MHz、dmso)δ7.72(s、1H)、5.51(s、1H)、4.66(d、J=4.7Hz、1H)、3.66(dd、J=13.4、8.4Hz、1H)、3.08〜2.90(m、2H)、2.47〜2.32(m、2H)、2.29(d、J=11.5Hz、1H)、2.21(d、J=11.2Hz、1H)、2.14〜2.01(m、2H)、2.01〜1.78(m、3H)、1.74〜1.50(m、3H)、1.40(m、1H)、1.28(s、3H)、1.23(s、1H)、1.15〜1.02(m、1H)、0.55(s、3H);13C NMR(126MHz、dmso)δ210.2、167.8、157.3、120.3、78.1、61.0、54.5、48.8、47.1、43.1、40.4、36.8、35.5、34.9、33.1、29.9、22.3、20.9、11.8;FT−IR:3423、3262、2952、2923、2853、1693、1647、1609、1458、1407、1375、1353、1261、1062。
【0055】
11: ラクタム10を8.2mLの乾燥DCMに溶解した。次いで、3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸(51mg、0.17mmol)、DCC(51mg、0.25mmol)および触媒量のDMAPを添加した。得られた溶液を室温で24時間撹拌した後に、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル)により精製して、共役体11(48.5mg、96%)を得た。共役体11:H NMR(500MHz、cdcl)δ6.83(d、J=9.0Hz、2H)、6.67(d、J=9.0Hz、2H)、6.11(s、1H)、5.76(s、1H)、4.86(t、J=8.6Hz、1H)、4.17(t、J=6.2Hz、2H)、3.61(m、8H)、3.25(m、1H)、3.18〜3.01(m、1H)、2.84〜2.59(m、2H)、2.59〜2.38(m、1H)、2.37〜2.25(m、3H)、2.16(m、1H)、2.10〜1.89(m、3H)、1.87〜1.55(m、4H)、1.39(s、3H)、1.26(m、2H)、1.12(m、1H)、0.76(s、3H);13C NMR(126MHz、cdcl)δ208.9、170.9、169.5、158.7、151.3、140.9、119.9、116.2、114.5、80.4、64.2、62.4、55.1、54.3、49.9、46.8、43.6、40.7、36.8、35.5、34.9、33.9、27.6、25.6、24.9、22.8、21.2、12.8;FT−IR:3432、3328、2927、2850、1733、1701、1664、1626、1599、1513、1444、1389、1369、1310、1273、1243、1179、1087、1041、999。
【0056】
実施例4
【0057】
【化12】
【0058】
13: 密封管中の化合物12(100mg、0.28mmol)の1.5mL無水エタノール溶液に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(21mg、0.31mmol)および乾燥ピリジン(0.9mL)を加えた。混合物を140℃で7日間加熱した。次いで、水を加え、混合物を酢酸エチル(3×5mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0059】
14: 前記の粗オキシム13(0.28mmol)を4.9mLの乾燥ジオキサンに溶解した。混合物を0℃に冷却し、塩化チオニル(0.54mL)を滴下した。混合物を室温になるまで放置し、24時間撹拌した。反応をNaHCOで停止し、混合物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得て、これをSiOクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:メタノール=1:0.1)によりさらに精製して52mgのラクタムを収率50%で得た。14:H NMR(500MHz、cdcl)δ7.00(s、1H)、5.77(s、1H)、5.59(s、1H)、4.61(t、J=8.3Hz、1H)、3.20(m、2H)、3.02(dd、J=9.6、5.0Hz、1H)、2.48〜2.40(m、2H)、2.31(d、J=13.7Hz、1H)、2.16(m、2H)、2.09〜2.0〜1.97(m、5H)、1.74〜1.84(m、2H)、1.51〜1.40(m、2H)、1.35〜1.30(m、1H)、1.24(s、3H)、1.23(m、1H)、1.08(m、1H)、0.95(s、3H);13C NMR(126MHz、cdcl)δ175.1、170.9、169.4、156.3、120.4、80.1、64.2、55.5、45.2、44.6、41.0、40.8、38.0、36.3、34.4、31.0、25.4、25.2、21.9、21.0、11.7。
【0060】
15: 28mg(0.084mmol)のラクタム14を1.2mLのMeOHに溶解し、LiOH(1N、0.5mL)を滴下した。混合物を室温で1時間撹拌した。反応をNHClで停止し、混合物を酢酸エチル(3×5mL)で抽出した。有機層を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮した。粗生成物をSiOクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:メタノール=1:0.1)によりさらに精製して、28mgのラクタム15を収率100%で得た。15:H NMR(500MHz、dmso)δ7.75(s、1H)、6.13(d、J=3.9Hz、1H)、5.53(s、1H)、4.66(d、J=5.3Hz、1H)、3.40(m、2H)、3.11〜2.93(m、2H)、2.44〜2.34(m、1H)、2.29(s、2H)、2.04〜1.72(m、5H)、1.65(m、2H)、1.24(m、3H)、1.20(s、3H)、0.89(m、1H)、0.66(s、3H);13C NMR(126MHz、dmso)δ174.6、167.7、156.1、120.1、78.1、69.8、63.4、44.9、44.2、41.2、40.4、37.7、35.3、33.7、31.3、27.7、24.4、20.9、10.7。
【0061】
16: ラクタム15(30mg、0.09mmol)を9mLの乾燥DCMに溶解した。次いで、3−(4−(ビス(2−クロロエチル)アミノ)フェノキシ)プロパン酸(67mg、0.22mmol)、DCC(60mg、0.29mmol)および触媒量のDMAPを添加した。得られた溶液を室温で24時間撹拌した後に、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル/MeOH=10/1)で精製して、共役体16(39mg、70%)を得た。H NMR(500MHz、cdcl)δ6.85(d、J=9.0Hz、2H)、6.76(s、1H)、6.65(d、J=9.0Hz、2H)、5.79(s、1H)、5.46(s、1H)、4.68(t、J=8.3Hz、1H)、4.17(t、J=6.2Hz、2H)、3.60(m、4H)、3.51〜3.42(m、1H)、3.18(m、2H)、3.02(dd、J=9.5、5.0Hz、1H)、2.85〜2.67(m、2H)、2.51(d、J=13.8Hz、1H)、2.44(dd、J=13.6、10.1Hz、1H)、2.33(d、J=13.8Hz、1H)、2.25〜2.06(m、2H)、2.07〜1.73(m、5H)、1.73〜1.28(m、5H)、1.25(s、3H)、1.17〜1.03(m、2H)、0.96(s、3H);13C NMR(126MHz、cdcl)δ174.7、170.9、169.1、155.6、151.3、140.9、120.7、116.3、114.4、80.5、64.2、64.1、55.5、54.2、45.3、44.5、41.1、40.7、38.1、36.3、34.8、34.4、33.9、31.0、25.6、25.5、25.2、24.9、21.9、11.8。FT−IR:3410、3330、2926、2850、1734、1654、1627、1577、1513、1445、1349、1273、1243、1180、1133、1110、1087、1044、890。
【0062】
実施例5
【0063】
【化13】
【0064】
ラクタム17は、Koutsourea et al (Steroids, 2003, 68(7-8):659-66)に従って合成した。
18: 丸底フラスコ中で、48mg(0.157mmol)の酸を0.5mlの乾燥ベンゼンで希釈した。2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(30μl、0.189mmol)およびトリエチルアミン(53μl、0.378mmol)を加え、混合物をAr下で1時間還流した。この混合物に、0.5mlの乾燥ベンゼン中のステロイド系アルコール50mg(0.157mmol)および触媒量の4−ジメチルアミノピリジンの溶液を添加した。還流を3時間継続した。真空中で蒸発することによりベンゼンを完全に除去し、残った残渣をCHClで希釈した。得られた混合物を5%HCl水溶液で抽出し、有機層を7%NaHCO水溶液で洗浄し、最後に水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル/MeOH=100/1)を実施して、46mgの共役体18を収率48%で得た。共役体18:H NMR(500MHz、cdcl)δ6.84(d、J=8.5Hz、2H)、6.67(d、J=8.5Hz、2H)、5.90(s、1H)、5.86(s、1H)、4.78(m、1H)、4.19(m、2H)、3.58〜3.59(m、8H)、3.48(m、1H)、2.61〜1.25(18H)、1.29(s、3H)、0.88(s、3H);[M+H]=605。
【0065】
実施例6
【0066】
【化14】
【0067】
ラクタム19は、Koutsourea et al (Steroids, 2003, 68(7-8):659-66)に従って合成した。
20: 丸底フラスコ中で、46mg(0.15mmol)の酸を0.5mlの乾燥ベンゼンに希釈した。2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(28μl、0.18mmol)およびトリエチルアミン(50μl、0.36mmol)を加え、混合物をAr下で1時間還流した。この混合物に、0.5mlの乾燥ベンゼン中のステロイド系アルコール50mg(0.150mmol)および触媒量の4−ジメチルアミノピリジンの溶液を添加した。還流を3時間継続した。真空中で蒸発することによりベンゼンを完全に除去し、残った残渣をCHClで希釈した。得られた混合物を5%HCl水溶液で抽出し、有機層を7%NaHCO水溶液で洗浄し、最後に水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル/MeOH=100/2)を実施し、19mgの共役体20を収率20%で得た。20:H NMR(500MHz、cdcl)δ7.18(s、1H)、6.84(d、J=8.5Hz、2H)、6.65(d、J=8.5Hz、2H)、6.60(s、1H)、5.82(s、1H)、4.80(1H、m)、4.21(2H、m)、3.50(m、8H)、3.20(1H、m)、2.80〜1.30(19H)、1.20(s、3H)、0.9(s、3H);[M+H]=621。
【0068】
実施例7
【0069】
【化15】
【0070】
ラクタム21は、Koutsourea et al (Steroids, 2003, 68(7-8):659-66)に従って合成した。
22: 丸底フラスコ中で、37mg(0.12mmol)の酸を0.4mlの乾燥ベンゼンに希釈した。2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド(22μl、0.144mmol)およびトリエチルアミン(40μl、0.288mmol)を加え、混合物をAr下で1時間還流した。この混合物に、0.4mlの乾燥ベンゼン中のステロイド系アルコール50mg(0.120mmol)および触媒量の4−ジメチルアミノピリジンの溶液を添加した。還流を3時間継続した。真空中で蒸発することによりベンゼンを完全に除去し、残った残渣をCHClで希釈した。得られた混合物を5%HCl水溶液で抽出し、有機層を7%NaHCO水溶液で洗浄し、最後に水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)を実施し、34mgの共役体22を収率40%で得た。22:H NMR(500MHz、cdcl)δ6.84(d、J=8.5Hz、2H)、6.60(d、J=8.5Hz、2H)、5.90(s、1H)、5.79(s、1H)、4.80(m、1H)、4.15(m、2H)、3.5(m、8H)、3.25(m、1H)、2.8〜0.8(22H);[M+H]=605。
【0071】
実施例8
生体外および生体内における抗癌活性の生物学的試験
A)生体外における抗癌活性
9種の十分に確立されたヒト癌細胞株(表1)を、新たに合成した化合物により生じる細胞増殖抑制活性および細胞傷害活性を試験するために処理した。該細胞株を、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手し、指示に従って異なる培養培地で増殖した。MTT((3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイは、薬物および化学物質の細胞増殖抑制活性および細胞傷害活性の評価のために十分に確立された標準的な方法である(Trafalis DT et al, J BUON, 2003, 8:333-9; Trafalis DT et al, J BUON, 2004, 9(3):275-82; Trafalis DT et al, J BUON, 2005; 10:227-34; Trafalis DT et al, Breast Cancer Res Treat, 2006, 97:17-31)。簡潔に説明すると、細胞を96ウェルプレートにウェル当り3×10細胞/mlの密度で播種し、5%COのインキュベーター内に37℃で72時間維持し、単層または懸濁液として増殖した。24時間後に、細胞を0.1〜100μmol/lの該化合物で48時間処理した。培養細胞の生存率を、前記のMTT(Sigma, St Louis, Missouri, USA)代謝アッセイで評価した。ELISA読取器(Versamax, Orleans, USA)を用いて、変換された色素の吸光度を540nmの波長で測定した。50%または全量(100%)での細胞増殖阻害性を生じた各薬物の平均濃度(それぞれGI50およびTGI)、ならびに培養細胞の50%に対して細胞傷害性を生じた薬物濃度[最大細胞傷害濃度の半分(IC50)]を線形回帰法により計算した。7種の吸光度測定値[24時間(Ct24)、対照成長の72時間(Ct72)、および5種の濃度レベルの薬物の存在下での試験増殖(Tt72x)]を用いて、増殖の百分率を薬物濃度の各レベルで計算した。国立癌研究所(NCI)に従って、増殖阻害の百分率を、Tt72x>Ct24の濃度については(Tt72x)−(Ct24)/(Ct72)−(Ct24)]×100として、Tt72x<Ct24の濃度については[(Tt72x)−(Ct24)]/Ct24]×100として計算した。GI50は、[(Tt72x)−(Ct24)/(Ct72)−(Ct24)]×100=50から計算し、TGIは、[(Tt72x)−(Ct24)/(Ct72)−(Ct24)]×100=0から計算し、IC50は、[(Tt72x)−(Ct24)/(Ct24)]×100=50から計算した。全ての実験を3回実施した。
【0072】
【表1】
【0073】
ヒト癌細胞株に対する試験化合物によって誘発された生体外での細胞増殖阻害性(GI50、TGI)および細胞傷害性(IC50)効果の結果を表2、3、4に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
B)生体内における急性毒性
腹腔内(i.p.)処理のために、試験化合物の保存溶液を使用直前に調製した。 10%ジメチルスルホキシド(DMSO)中に最初に溶解した後に、それらを所望の濃度のトウモロコシ油に懸濁させた。この濃度だけでは観察可能な毒性効果は生じなかった。
【0078】
C57Bl/6雌マウスを毒性試験に用いた。マウスはヘレニック・パスツール研究所の実験部から取得した。
簡潔に説明すると、過去に非常に詳細に記載されてきたように(Catsoulacos P et al, Cancer Chemother Pharmacol, 1979, 3(1):67-70; Catsoulacos P et al, J Pharm Sci, 1978, 67(9):1342-3; Catsoulacos P et al, Anticancer Res, 1995; 15:827-30)、4種の異なる用量で10匹のC57Bl/6マウスの群への単回腹腔内(i.p.)注射後に、試験化合物によって誘導された急性毒性を評価し、すなわちマウスを30日間観察して、通常LD10(10%の動物に対する致死量)ならびにLD50(50%の動物に対する致死量)として規定される化合物の治療用量を、図式的に推定(30日の曲線)した後に決定した。試験化合物の毒性を、C57Bl/6マウスの致死率から評価した。LD50値およびLD10値を図式的にで推定し、ここで、各用量の毒性による死亡率を縦座標に示し、投与量を横座標に示した(表5)。
【0079】
C)生体内における抗腫瘍活性
実験は、米国国立癌研究所(NCI)の実験計画に従って、P388リンパ球性白血病の10個の腹水細胞を腹腔内(i.p.)に移植することを0日目として開始した。i.p.処置に向けて、試験化合物の保存溶液を使用直前に調製した。抗腫瘍活性は、薬物処置した動物(T)の生理食塩水処置した対照(C)に対する生存時間中央値(MST)を意味する腫瘍化パラメータT/C%により評価した。NCI(米国)によると、活性の最低基準はT/Cが125%より高いことである。さらに、抗腫瘍活性は、長期生存数から評価された(治癒は、腫瘍接種後90日間生きているマウスとして定義される)(Golidim A et al, Nat Cancer Inst Monogr, 1980, 55: 25-26; NCI Monograph, NIH publication 1986, 55:80-193)。
【0080】
BALB/c scid雌マウスを抗腫瘍性の評価に用いた。これらの動物は、BALB/cの素性に重篤な複合免疫不全突然変異(scid)を保有し、国立デモクリトス科学研究センター生物学研究所から取得した。マウスは、一定の温湿度条件下で、無菌ケージ中で、水および食物とともに維持した。6匹のマウスを各処置群中に、かつ8匹のマウスを対照群中に含めた。
【0081】
試験した化合物の治療用量は、それぞれのLD10(mg/kgr)で定義した。
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
BALB/c scid雌マウスを、ヒト卵巣癌SCOV−3に対する試験化合物の生体内抗腫瘍性評価のために使用した。3×10個のSCOV−3癌細胞/0.2ml/マウスの懸濁液を、各動物の右側腹部または左側腹部に皮下接種した。マウスを一定の温湿度条件下で、滅菌ケージ中で、水および食物とともに維持した。10匹のマウスを処置および対照の各群に含めた。試験は、十分に確立された実験計画に従って実施した。薬物の有効性は、対照(C)に対する処置動物(T)の腫瘍体積の平均変化(T/C%=TI、腫瘍阻害)および腫瘍細胞動力学および生物学的特性に従う生存時間中央値の増加によって決定した。腫瘍体積または重量は、0.52×a×bとして計算され、ここでaおよびbは、腫瘍の短軸および長軸であり、データは、平均腫瘍体積±平均標準誤差(±SEM)対処置後の時間の半対数グラフ上にプロットされる。腫瘍が0.085〜0.1mmの体積に達したときに、マウスを対照群および薬物処置群(10匹のマウス/群)に分割し、このとき各群の平均腫瘍体積は類似している。試験化合物は、1日目、5日目および9日目にそれぞれLD10/4の用量で腹腔内投与された。
【0085】
抗腫瘍性効果の評価のために、(a)週毎に平均腫瘍重量変化または平均腫瘍体積変化を測定し、腫瘍阻害(TI)を式:TI(%)=[1)(TWT)TWZ)/(TWC)TWZ)]×100により計算し、ここでTWTは、評価時の処置動物における腫瘍重量(mg)または腫瘍体積(mm)として測定され、TWZは、処置開始時(ゼロ時間または1日目)の腫瘍重量(mg)または腫瘍体積(mm)として測定され、TWCは、評価時の未処置動物(対照)における腫瘍重量(mg)または腫瘍体積(mm)として測定され、さらに(b)70日目の生存マウスの百分率(OS%)、(c)70日目の腫瘍進行のない生存マウスの百分率(PFS%)を測定する。これらの結果を表7に示す。
【0086】
【表7】
【0087】
D)薬理学的効果
新しいラクタムステロイド系アルキル化剤は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP1/2)活性に対して顕著な阻害効果を誘導し、かつ周知のPARP1/2阻害剤である3−アミノベンズアミド(3−AB)よりも優れた1.7μM未満の最大阻害濃度の半値(IC50)を示す。さらに、新しいラクタムステロイド系アルキル化剤は、生体外および生体内において用量依存および時間依存的にPARP1およびPARP2の転写およびmRNA発現に顕著な変化を生じる。初回用量または低用量では、それらはPARP1およびPARP2のmRNA発現の増加を誘発することができ、この発現は、対照値より5〜400倍高い値に達し、細胞内NAD+濃度および細胞性ATP枯渇に変化を生じさせ、その後の用量またはより高用量では、それらはPARP1およびPARP2のmRNA発現の低減を誘発し、該発現を100%に近づけることが可能となる。姉妹染色体交換(SCE’s)アッセイにより生体外で評価し、かつ血清または尿中の8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)付加物を生成することにより生体内で評価したように、新しいラクタムステロイド系アルキル化剤は、それらのアルキル化成分単独によって誘発されたものに匹敵する顕著なDNA損傷を生じ、それらは著しく高い抗腫瘍活性を生じる。さらに、新しいラクタムステロイド系アルキル化剤は、ERK1/2およびAKT1/2のリン酸化反応、および結果としてPI3K分子およびMAPK分子のシグナル伝達経路の活性化を顕著に(>60%)阻害する。初めてラクタムステロイド系アルキル化剤の分子薬理学的効果を深く研究した。