(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ロボットシステムでは、加工ツールによる加工作業を行う前に、計測用ツールを作業対象の表面に沿って移動させた後に、加工ツールを加工のために再び配置する必要がある。このため、加工ツールの再配置の分だけ作業時間が長くなる。また、前記ロボットシステムは、測定した表面の形状データと、ロボットシステムが予め持っている表面の形状データとを比較し、当該比較結果に基づいて動作プログラムを補正している。
【0006】
しかし、測定された形状データは、作業対象の全体の形状データであって、加工作業を行う対象位置の形状データではない。ここで、加工作業を行う対象位置の形状データを正確に測定するためには、計測用ツールを作業対象の表面に接触させた状態でロボットの先端部を移動させる計測動作を多数回行う必要がある。このような計測動作を多数回行うと、作業時間が長くなる。
【0007】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされている。本発明の目的の一つは、作業時間を無用に長くすることなく、ツールの作業対象に対する姿勢を正確に制御することが可能となるロボットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1態様のロボットは、アームと、前記アームの先端部に取付けられた力センサと、前記力センサに取付けられ
、ツールを支持す
る支持部材と、
前記支持部材
の先端部から
所定方向に突出する姿勢検出用の複数の突出部と、
前記アームを制御する制御部と、を備え、前記ツールは、測定のための測定ツール、加工のための加工ツール、又は組立のための組立ツールであり、前記ツールは前記支持部材に前記所定方向に移動可能に支持され、前記先端部には、当該先端部を前記所定方向に貫通する貫通孔であって、前記ツールの一部が挿通する貫通孔が形成され、前記制御部は、前記力センサの検出値に基づき、
前記貫通孔を挿通する前記ツールが所定の作業を行う作業対象に対して
、前記複数の突出部が全て接触したことを判断す
る。
【0009】
前記態様では、力センサの検出値に基づき、制御部が、複数の突出部の全てが作業対象に接触したことを判断する。一方、複数の突出部の全てが作業対象に接触することは、作業対象に対してツールが所定の姿勢になったことを意味する。従って、上記構成は、作業対象に対するツールの姿勢を正確に制御する上で有用である。
なお、複数の突出部を用いているので、平面だけではなく、曲面、凹凸を有する面等に対しても、作業対象に対してツールが所定の姿勢になったことを判断することができる。
【0010】
上記態様において、好ましくは、前記制御部が、前記ツール又は前記支持部材の姿勢が変化している状態において前記力センサの検出値の変化にあらわれる特異点を用いて、前記複数の突出部が全て接触したことを判断する。
当該構成は、力センサの検出値の変化にあらわれる特異点を用いるので、簡易な構造を用いてツールの姿勢の調整を正確に行うことが可能である。
【0011】
上記態様において、好ましくは、前記ツールが、前記作業対象に接触した状態で所定の測定を行う接触式の測定ツールである。
このような測定ツールは、作業対象に対する姿勢に応じて測定値が変化するものが多い。このため、ツールの姿勢の調整を正確に行うことが可能な前述の構成は、ツールによる測定の精度を向上する。
【0012】
上記態様において、好ましくは、前記複数の突出部が、前記支持部材から所定方向に突出しており、前記ツールにおいて前記
測定、前記加工、又は前記組立を行う一端部が、前記支持部材から前記所定方向に突出しており、前記制御部が、前記力センサの検出値に基づき、前記作業対象に対して前記複数の突出部の全ておよび前記ツールの前記一端部が接触したことを判断する。
【0013】
前記態様でも、力センサの検出値の変化にあらわれる特異点を用いて、突出部およびツール一端部の作業対象への接触を検出でき、作業対象に対するツールの姿勢の調整を正確に行うことができる。
【0014】
上記態様において、好ましくは、前記ツール又は前記支持部材から3つの前記突出部が突出しており、前記3つの突出部の先端を繋いで形成される三角形を、前記ロボットの手首フランジの中心軸線が通過しない。
当該構成を用いると、力センサによって検出されるトルクの変化の特異点が顕著にあらわれ易い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業時間を無用に長くすることなく、ツールの作業対象に対する姿勢を正確に制御することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1実施形態に係るロボット1が、図面を用いながら以下説明されている。
本実施形態のロボット1は、
図1に示されるように、アーム10と、制御装置20と、アーム10の先端部に取付けられた力センサ30と、力センサ30に取付けられた支持部材40と、支持部材40に取付けられたツール50とを備えている。
【0018】
本実施形態では、ツール50は接触式の測定ツールであるが、非接触式の測定ツール、他のツール等であってもよい。接触式の測定ツールは、膜厚測定器、超音波を用いた内部検査器、硬度測定器等である。非接触式の測定ツールは、非接触式の温度計、接写式のカメラ等である。他のツールの例は、加工ツール、組立に用いるツール等である。加工ツールの例は、電動ドリル等の穴あけツール、先端にタップが付いているねじ形成ツール、電動研磨ツール、塗装ガン等の塗装ツール、サーボガン等の溶接ツール等である。組立に用いるツールの例は、電動ドライバ、ピンを把持して穴に挿入するツール等である。
【0019】
アーム10は、複数のアーム部材および複数の関節を備えている。また、アーム10は、複数の関節をそれぞれ駆動する複数のサーボモータ11を備えている(
図5参照)。各サーボモータ11として、回転モータ、直動モータ等の各種のサーボモータが用いられ得る。各サーボモータ11はその作動位置および作動速度を検出するための作動位置検出装置を有し、作動位置検出装置は一例としてエンコーダである。作動位置検出装置の検出値は制御装置20に送信される。
【0020】
力センサ30は、周知の6軸力センサである。力センサ30は、
図1に示されるように、アーム10の手首フランジ12に固定されている。また、
図3に示されるように、力センサ30のZ軸の延びる方向は、アーム10の手首フランジ12の中心軸線CLが延びる方向と平行である。本実施形態では、力センサ30の中心軸線が手首フランジ12の中心軸線CLと一致している。以下の説明では、
図3に示されている力センサ30のX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向を、単にX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向と称する場合がある。
【0021】
力センサ30は、そのフランジ31に加わるZ軸方向の力、X軸方向の力、およびY軸方向の力を検出する。フランジ31は部材が取付けられる被固定部でもある。また、力センサ30は、フランジ31に加わるZ軸周りのトルク、X軸周りのトルク、およびY軸周りのトルクも検出する。
【0022】
支持部材40はツール50を支持するための部材である。支持部材40は、支持部材本体41と、支持部材本体41に固定されたリニアガイド42と、リニアガイド42によって支持されたツールホルダ43とを有する。
【0023】
支持部材本体41は、力センサ30のフランジ31に図示しないボルト等によって固定された取付部41aと、取付部41aによって支持された中間部41bと、中間部41aによって支持された先端部41cとを有する。
本実施形態では、中間部41bのZ軸方向の一端は取付部41aに固定されており、中間部材41bのZ軸方向の他端は先端部41cに固定されている。
【0024】
先端部41cは例えば板状部材である。先端部41cには貫通孔41dが設けられ、貫通孔は先端部41cをZ軸方向に貫通している。
中間部41bにはリニアガイド42のレール42aが固定され、レール42aの長手方向はZ軸と平行である。レール42aにはスライダ42bが取付けられ、スライダ42bはレール42aに沿ってZ軸方向に移動可能である。
【0025】
ツールホルダ43はスライダ42bに固定されており、ツール50はツールホルダ43によって支持されている。このため、ツール50およびツールホルダ43はレール42aに沿ってZ軸方向に移動可能である。ツールホルダ43によって支持されたツール50のZ軸方向の一端部は貫通孔41dを挿通している。ここで、ツール50のZ軸方向の一端部にはプローブ51が設けられている。また、本実施形態では、ツール50のZ軸方向の一端と力センサ30との距離がツール50のZ軸方向の他端と力センサ30との距離よりも大きい。また、ツール50の一端にはプローブ51が設けられている。
【0026】
つまり、ツール50は先端部41cに対してZ軸方向に移動可能である。また、ツール50においてプローブ51が設けられている一端部が、先端部41cにおける厚さ方向の一方の面から突出しており、厚さ方向の一方の面は厚さ方向の他方の面よりも力センサ30から遠い。つまり、ツール50の一端部は先端部41cに対して力センサ30から離れる方向に突出している。
【0027】
また、支持部材40はスプリング等の付勢部材44を有する(
図2)。付勢部材44の一端はツールホルダ43に固定され、付勢部材44の他端は先端部41cに固定されている。付勢部材44によってツールホルダ43が付勢されており、その付勢の方向は力センサ30から離れる方向である。
【0028】
先端部41cには複数の突出部45,46,47が設けられている(
図2)。各突出部45,46,47は姿勢検出用の突出部である。本実施形態では3つの突出部45,46,47が先端部41cに設けられている。各突出部45,46,47は、先端部41cの一方の面から力センサ30から離れる方向に突出している。つまり、各突出部45,46,47は、先端部41cの一方の面に対しZ軸方向に突出している。
【0029】
各突出部45,46,47の先端部45a,46a,47aはプラスチック材料から形成されている(
図2)。
図3に示されているように、全ての突出部45,46,47の先端が作業対象Oの表面に接触する時に、ツール50の姿勢が、作業対象Oに対して、所定の作業に適した姿勢となる。一例として、作業対象Oの表面は、平面、実質的に均一な曲率を有する曲面、比較的大きな曲率を有する曲面、突出部45の突出量よりも小さい凹凸を有する表面等である。
【0030】
複数の突出部45,46,47の位置は、Z軸と直交する方向に互いに離れている。複数の突出部45,46,47の先端同士の前記直交方向の距離は、1cm以上であることが好ましく、2cm以上であることがより好ましい。
本実施形態では、2つの突出部45,46はY軸方向に並んでおり、他の1つの突出部47が前記2つの突出部45,46に対してX方向にずれた位置に配置されている。
【0031】
本実施形態では、ツール50は接触式の測定ツールである。このため、Z軸方向において、ツール50の一端の位置は各突出部45,46,47の先端の位置よりも力センサ30から遠い。そして、
図3に示されるように、全ての突出部45,46,47の先端が作業対象Oの表面に接触する時に、付勢部材44の付勢力に抗してツール50がZ軸方向に移動する。
【0032】
なお、
図4に示されるように、ツールホルダ43が中間部41b又は先端部41cに固定され、スプリング等の付勢部材43aに抗してツール50がツールホルダ43に対してZ軸方向に移動可能であってもよい。この場合でも、全ての突出部45,46,47の先端が作業対象Oの表面に接触する時に、ツール50の姿勢が、作業対象Oに対して、所定の作業に適した姿勢となる。
【0033】
制御装置20は、
図5に示されるように、プロセッサ等を有する制御部21と、表示装置22と、不揮発性ストレージ、ROM、RAM等を有する記憶部23と、キーボード、タッチパネル、操作盤等である入力装置24と、信号の送受信を行うための送受信部25とを備えている。入力装置24および送受信部25は入力部として機能する。制御装置20は力センサ30および各サーボモータ11のサーボ制御器11aに接続されている。
【0034】
本実施形態では、制御装置20はロボット1の動作を制御するロボット制御装置である。一方、制御装置20は、ロボット制御装置内又はロボット制御装置外に設けられ、上記の構成を有する制御装置であってもよい。
【0035】
記憶部23にはシステムプログラム23aが格納されており、システムプログラム23aは制御装置20の基本機能を担っている。また、記憶部23には動作プログラム23bが格納されている。また、記憶装置23には、ツール姿勢制御プログラム23cと、測定プログラム23dと、動作プログラム23bの設定および再設定を行う動作設定プログラム23eとが格納されている。動作プログラム23bは、ツール50を用いた所定の作業を行う際にロボット1を動作させるための制御指令群である。
【0036】
本実施形態では、制御部21が、動作プログラム23bに基づいて、各サーボモータ11のサーボ制御器11aに制御指令を送信する。これにより、所定の作業を行うために、ロボット1がツール50の位置および姿勢を動作プログラム23bに沿って変化させる。
【0037】
本実施形態では、ツール50によって作業対象Oの表面の複数の測定位置の膜厚が測定される。測定位置はツール50による作業が行われる作業位置であるとも言える。また、本実施形態では、作業対象Oが大きいため、作業対象Oの形状のばらつきを無視することができない。このため、前記複数の測定位置におけるツール50の位置および姿勢を、動作プログラム23bによって設定された位置および姿勢に配置した時に、ツール50が作業対象Oの表面に対して適切な姿勢にならない時がある。
【0038】
このような状況は、動作プログラム23bの設定が精密に行われていない場合にも発生する。動作プログラム23bの設定を精密に行うためには長時間を要する。例えば、前記複数の測定位置の各々について、ツール50の姿勢が正確に調整されている動作プログラム23bを設定するには、長時間が必要である。逆に言うと、以下説明する処理は、作業対象Oの形状のばらつきが大きい時に有用であり、動作プログラム23bの設定を短時間で行うためにも有用である。さらに、作業対象Oの表面に作業位置をマーキングし、ビジョンシステムを用いてツール50を作業位置に配置する時に、以下説明する処理を用いてツール50の姿勢を正確に調整することも可能である。
【0039】
前述の状況において、制御部21は、動作プログラム23b、ツール姿勢制御プログラム23c、測定プログラム23d、および動作設定プログラム23eに基づいて、以下の処理を行う。以下の処理は
図6のフローチャートに示されている。
【0040】
先ず、制御部21が、入力装置24、送受信部25等を用いて入力される開始信号を受付けると(ステップS1−1)、制御部21は動作プログラム23bに基づいた制御指令を各サーボ制御器11aに送信する(ステップS1−2)。これにより、アーム10が動作プログラム23bに基づいて動作し、アーム10の動作によってツール50が所定の測定位置に配置される。
【0041】
この時、制御部21は、ツール姿勢制御プログラム23cに基づいて、力センサ30のZ軸方向の力の検出値が所定の範囲に入るように、アーム10の先端部をZ軸方向に移動させる(ステップS1−3)。この時、例えば
図7に示されるように、突出部45だけが作業対象Oに接触し、突出部46および突出部47が作業対象Oに接触しない。
【0042】
ここで、記憶部23には、ロボット1の座標系における力センサ30の位置座標が格納されており、ロボット1の座標系における各突出部45,46,47の先端の位置座標も格納されている。制御部21は、ツール姿勢制御プログラム23cに基づいて、力センサ30が検出するZ軸方向の力、Y軸周りのトルク、X軸周りのトルク等を用いて、複数の突出部45,46,47のうちの何れが作業対象Oに接触しているかを判断する(ステップS1−4)。
【0043】
続いて、制御部21は、ツール姿勢制御プログラム23cに基づいて、作業対象Oに接触していない突出部46,47を作業対象Oに接触させるために、作業対象Oに対するツール50および支持部材40の姿勢を変化させるための制御指令を各サーボ制御器11aに送信する(ステップS1−5)。本実施形態では、制御部21は、ツール50をX軸方向および/又はY軸方向に傾けるための制御指令を各サーボ制御器11aに送信する。
【0044】
ツール50を傾けることによって、作業対象Oに接触していない突出部46,47が作業対象Oに接触すると、力センサ30の検出値が検出するZ軸方向の力、Y軸周りのトルク、X軸周りのトルク等の変化に特異点があらわれる。特異点は、例えば、ツール50の傾きに応じて変化するトルクの変化率が変わる点である。制御部21は、ツール姿勢制御プログラム23cに基づいて、特異点を用いて全ての突出部45,46,47の作業対象Oへの接触を検出する(ステップS1−6)。なお、制御部21が、各突出部45,46,47の先端の位置座標と、力センサ30が検出するZ軸方向の力、Y軸周りのトルク、X軸周りのトルク等とを用いて、全ての突出部45,46,47の作業対象Oへの接触を検出してもよい。
【0045】
全ての突出部45,46,47の作業対象Oへの接触が検出されると、制御部21は、測定プログラム23dに基づき、ツール50による測定処理を行う(ステップS1−7)。測定処理は、ツール50によって測定される測定値の記憶部23への保存、所定の機器への送信、表示装置22を用いた表示等を含む。
【0046】
続いて、制御部21は、動作設定プログラム23eに基づき、ステップS1−7の測定処理が行われた際の各サーボモータ11の作動位置検出装置の検出値を用いて、動作プログラム23bにおいて前記所定の測定位置に関する部分を再設定する(ステップS1−8)。
制御部21は、最後の測定位置の測定が終了するまで、他の測定位置における測定を行うためにステップS1−2〜S1−8を繰り返す(ステップS1−9)。
【0047】
なお、作業対象Oの形状のばらつきが大きい場合等は、ステップS1−8は実施しなくてもよい。また、ステップS1−2によって突出部45,46,47の何れかが作業対象Oに接触する場合は、ステップS1−3を行う必要はない。また、ステップS1−5を行うだけで、ステップS1−6の判断が可能であれば、ステップS1−4を行う必要はない。
【0048】
このように、本実施形態では、力センサ30の検出値に基づき、制御部21が、複数の突出部45,46,47の全てが作業対象Oに接触したことを判断する。一方、複数の突出部45,46,47の全てが作業対象Oに接触することは、作業対象Oに対してツール50が所定の姿勢になったことを意味する。従って、上記構成は、作業対象Oに対するツール50の姿勢を正確に制御する上で有用である。
【0049】
また、複数の突出部45,46,47を用いているので、平面だけではなく、曲面、凹凸を有する面等に対しても、作業対象Oに対してツール50が所定の姿勢になったことを判断することができる。
【0050】
また、本実施形態では、制御部21は、ツール50又は支持部材40の姿勢が変化している状態において力センサ30の検出値の変化にあらわれる特異点を用いて、複数の突出部45,46,47が全て接触したことを判断する。力センサ30の検出値の変化にあらわれる特異点を用いるので、簡易な構造を用いてツール50の姿勢の調整を正確に行うことが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、ツール50は、作業対象Oに接触した状態で所定の測定を行う接触式の測定ツールである。このような測定ツールは、作業対象Oに対する姿勢に応じて測定値が変化するものが多い。このため、ツール50の姿勢の調整を正確に行うことが可能な前述の構成は、ツール50による測定の精度を向上する。
【0052】
また、本実施形態では、
図8に示されるように、3つの突出部45,46,47の先端を繋いで形成される三角形を、前記ロボット1の手首フランジの中心軸線CLが通過しない。当該三角形は、
図8において斜線で示されている。当該構成を用いると、力センサ30によって検出されるトルクの変化の特異点が顕著にあらわれ易い。
なお、3つの突出部45,46,47の先端を繋いで形成される三角形を中心軸線CLが通過する場合でも、前記の効果を達成することは可能である。
【0053】
なお、本実施形態において、突出部47を省き、突出部47の代わりにツール50の一端部を用いることも可能である。この場合、ツール50は例えば支持部材40に固定され、ツール50が支持部材40に対してZ軸方向に移動しない。このように構成しても、ステップS1−6において、力センサ30の検出値の変化にあらわれる特異点を用いて、突出部45,46およびツール50の一端部の作業対象Oへの接触を検出できる。そして、ステップS1−7において、前記接触が検出された時に、ツール50による測定処理を行うことができる。この場合でも、作業対象Oに対するツール50の姿勢の調整を正確に行うことができる。
【0054】
本発明の第2実施形態に係るロボット1が、図面を用いながら以下説明されている。
第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同一の符号が付され、第1実施形態と同様の構成および処理の説明は省略されている。また、第2実施形態も、第1実施形態と同様に変形することができる。例えば、ツール50を電動ドライバ等の他のツールに変更すること、制御装置20をロボット制御装置外に設けること等が可能である。
【0055】
第2実施形態では、支持部材40にツール50が支持されておらず、制御部21が、動作プログラム23bの設定又は再設定を行うための処理を行う。なお、ツール50が支持部材40に支持されている状態で、制御部21が動作プログラム23bの設定又は再設定を行ってもよい。また、第2実施形態では、ツール50を作業位置に配置するための仮の動作プログラムが記憶部23に格納されている。なお、このような処理は、作業対象Oの形状のばらつきが小さい場合等に特に有用である。
【0056】
制御部21は、仮の動作プログラム、ツール姿勢制御プログラム23c、および動作設定プログラム23eに基づいて、以下の処理を行う。以下の処理は
図9のフローチャートに示されている。
【0057】
先ず、制御部21が、入力装置24、送受信部25等を用いて入力される開始信号を受付けると(ステップS2−1)、制御部21は仮の動作プログラムに基づいた制御指令を各サーボ制御器11aに送信する(ステップS2−2)。これにより、アーム10が仮の動作プログラムに基づいて動作し、アーム10の動作によってツール50を支持するための支持部材40が所定の作業位置に配置される。なお、ステップS2−2では、手動教示モードを用いて、オペレータが手を用いて支持部材40を前記所定の作業位置に配置してもよい。また、オペレータが入力装置24を用いて支持部材40を前記所定の作業位置に配置してもよい。
【0058】
ステップS2−2が行われた時、制御部21は、ツール姿勢制御プログラム23cに基づいて、力センサ30のZ軸方向の力の検出値が所定の範囲に入るように、アーム10の先端部をZ軸方向に移動させる(ステップS2−3)。この時、例えば第1実施形態と同様に、突出部45だけが作業対象Oに接触し、突出部46および突出部47が作業対象Oに接触しない。
【0059】
次に、制御部21は、ツール姿勢制御プログラム23cに基づいて、力センサ30が検出するZ軸方向の力、Y軸周りのトルク、X軸周りのトルク等を用いて、複数の突出部45,46,47のうちの何れが作業対象Oに接触しているかを判断する(ステップS2−4)。
【0060】
続いて、制御部21は、ツール姿勢制御プログラム23cに基づいて、作業対象Oに接触していない突出部46,47を作業対象Oに接触させるために、作業対象Oに対する支持部材40の姿勢を変化させるための制御指令を各サーボ制御器11aに送信する(ステップS2−5)。
【0061】
支持部材40を傾けることによって、作業対象Oに接触していない突出部46,47が作業対象Oに接触すると、力センサ30の検出値が検出するZ軸方向の力、Y軸周りのトルク、X軸周りのトルク等の変化に特異点があらわれる。制御部21は、ツール姿勢制御プログラム23cに基づいて、特異点を用いて全ての突出部45,46,47の作業対象Oへの接触を検出する(ステップS2−6)。
【0062】
全ての突出部45,46,47の作業対象Oへの接触が検出されると、制御部21は、動作設定プログラム23eに基づき、ステップS2−6の検出が行われた際の各サーボモータ11の作動位置検出装置の検出値を用いて、仮の動作プログラムにおいて前記所定の作業位置に関する部分を設定する(ステップS2−7)。
【0063】
制御部21は、最後の作業位置の設定が終了するまで、他の作業位置における設定を行うためにステップS2−2〜S2−7を繰り返す(ステップS2−8)。これにより、仮の動作プログラムを用いて動作プログラム23bが設定される。なお、前述の処理において仮の動作プログラムの代わりに動作プログラム23bが用いられる時は、前述の処理によって動作プログラム23bの再設定が行われる。
【0064】
なお、ステップS2−2によって突出部45,46,47の何れかが作業対象Oに接触する場合は、ステップS2−3を行う必要はない。また、ステップS2−5を行うだけで、ステップS2−6の判断が可能であれば、ステップS2−4を行う必要はない。
【0065】
このように、本実施形態では、力センサ30の検出値に基づき、制御部21が、複数の突出部45,46,47の全てが作業対象Oに接触したことを判断する。一方、複数の突出部45,46,47の全てが作業対象Oに接触することは、作業対象Oに対して支持部材40によって支持されるツール50が所定の姿勢になることを意味する。従って、上記構成は、作業対象Oに対するツール50の姿勢を正確に制御する上で有用である。
【0066】
なお、第1および第2実施形態では、各突出部45,46,47は支持部材40に対してZ軸方向に突出しているが、各突出部45,46,47は支持部材40に対してX軸方向又はY軸方向に突出していてもよい。この場合、ツール50の一端部も支持部材40からX軸方向又はY軸方向に突出する。
【0067】
また、第1および第2実施形態において、ツール50自体を力センサ30のフランジ31に固定してもよい。この場合、支持部材40は不要となる。そして、ツール50に
図4に示すような態様で先端部41cを取付け、先端部41cに第1および第2実施形態にと同様の突出部45,46,47を設けることも可能である。この場合でも、前述と同様の効果を達成できる。
【0068】
また、第1および第2実施形態では力センサ30は6軸センサであるが、力センサ30は、ステップS1−6およびS2−6のように、突出部45,46,47のうちの何れが接触状態にあるかを検出できるセンサであればよい。
また、第1および第2実施形態において、各突出部45,46,47がスプリング等の付勢部材を介して先端部41cに取付けられていてもよい。この場合でも前述と同様の効果が達成され得る。
【0069】
なお、第1および第2実施形態では、3つの突出部45,46,47を設けているが、2つの突出部45,46だけでステップS1−6およびS2−6の特異点の検出を行うことも可能である。つまり、第1および第2実施形態において、Y軸周りのツール50の傾きが問題にならない場合、突出部45,46を用いてステップS1−6およびS2−6の特異点の検出が行われると、ツール50のX軸周りの姿勢が調整される。
【0070】
なお、第1および第2実施形態において、
図10に示されるように、突出部45および突出部46が、Y方向に長い凸部の両端に形成された突出部であってもよい。この場合でも前述と同様の効果の達成が可能である。