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特許6708684駆動モータおよび減速機を備えるロボットの関節部の構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708684
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】駆動モータおよび減速機を備えるロボットの関節部の構造
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   B25J17/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-52947(P2018-52947)
(22)【出願日】2018年3月20日
(65)【公開番号】特開2019-162701(P2019-162701A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】米田 敬詞
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−198789(JP,A)
【文献】 特開平09−150389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とが関節部を介して連結され、第1部材と第2部材とが相対的に回動するロボットの関節部の構造であって、
第1部材に対して第2部材を駆動するための駆動モータと、
前記駆動モータの回転力が入力される入力軸、前記入力軸の回転力を伝達する歯車、前記歯車を支持する歯車支持部材、および前記歯車の回転力が伝達される減速機ケースを有する減速機と、
前記駆動モータと第1部材との間に介在する介在部材とを備え、
前記駆動モータは、周方向に配置された複数のモータ固定ボルトにより前記介在部材に固定されており、
前記介在部材は、第1部材に固定されており、
前記歯車支持部材は、周方向に配置された複数の支持部材固定ボルトにより第1部材に固定されており、
前記減速機ケースは、前記支持部材固定ボルトとは異なる部材固定ボルトにより第2部材に固定されており、
前記モータ固定ボルトおよび前記支持部材固定ボルトは、前記モータ固定ボルトが配置される位置の直径および前記支持部材固定ボルトが配置される位置の直径が前記減速機ケースの外径よりも小さくなる位置に配置されており、
前記介在部材は、前記支持部材固定ボルトから離れた位置にて前記モータ固定ボルトを固定する形状を有する、関節部の構造。
【請求項2】
前記ロボットは、設置面に固定されるベース部、前記ベース部に対して回転する旋回ベース、および前記旋回ベースに対して回動するアームを含み、
第1部材は前記旋回ベースであり、第2部材は前記アームである、請求項1に記載の関節部の構造。
【請求項3】
前記介在部材は、円環状に形成された本体部と、前記介在部材を第1部材に固定する介在部材固定ボルトを挿通するつば部とを有しており、
第1部材は、前記介在部材を固定するための凹部を有し、
前記駆動モータは、前記介在部材の内面に嵌合する嵌合部を有し、
前記介在部材は、第1部材の凹部に嵌合する嵌合部を有し、
前記駆動モータの嵌合部が前記介在部材に嵌合し、前記介在部材の嵌合部が第1部材の凹部に嵌合することにより、前記減速機の前記入力軸の回転軸と前記駆動モータの出力シャフトの回転軸とが同軸状になる、請求項1または2に記載の関節部の構造。
【請求項4】
前記介在部材は、前記モータ固定ボルトを固定するねじ穴を有し、
前記ねじ穴は、前記駆動モータの回転軸に沿って延びる円筒の領域の内部に形成されており、
前記円筒は、前記介在部材の嵌合部の外径と同一の直径を有する、請求項3に記載の関節部の構造。
【請求項5】
前記部材固定ボルトは、第1部材から第2部材に向かう向きにて固定されている、請求項1に記載の関節部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動モータおよび減速機を備えるロボットの関節部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、関節部を介して連結されている複数の部材を備える。関節部には、一方の部材を他方の部材に対して駆動するサーボモータが配置されている。サーボモータが駆動することにより、一方の部材に対して他方の部材の向きが変化する(例えば、特開2015−123508号公報および特開平9−300254号公報を参照)。また、関節部には、サーボモータの出力トルクを増大する減速機が配置される(例えば、特開2014−136294号公報および特開2015−27714号公報を参照)。
【0003】
例えば、多関節ロボットは、複数の関節部を有する。多関節ロボットは、鉛直方向に延びる回転軸の周りに回転する旋回ベースと、旋回ベースに対して回動するアームと、旋回ベースとアームとの間に配置された関節部とを備える。サーボモータが駆動することにより、旋回ベースに対してアームの向きが変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−123508号公報
【特許文献2】特開平9−300254号公報
【特許文献3】特開2014−136294号公報
【特許文献4】特開2015−27714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
旋回ベースとアームとの間に配置される関節部は、アームの一方の側から支持する片持ち構造を採用することができる。サーボモータは、例えば、旋回ベースに固定することができる。減速機は、入力軸、減速機ケース、減速機ケースの内部に配置された歯車、および歯車を支持するシャフトを含むことができる。サーボモータの回転力を受ける入力軸から歯車に回転力が伝達される。歯車が回転することにより、減速機ケースに対してシャフトを相対的に回転させることができる。
【0006】
このような減速機の場合に、減速機ケースは旋回ベースに固定されることができる。シャフトはアームに固定されることができる。サーボモータの出力を歯車にて減速することにより、シャフトに固定されたアームを回動させることができる。
【0007】
ところで、アームは、ボルトにより減速機のシャフトに固定される。シャフトを固定するためには、アームにおいて、減速機が配置されている側と反対側からボルトを挿入する必要がある。ボルトを挿通する挿通穴を形成するために、アームは薄く形成することが好ましい。そこで、ボルトが配置される領域において、アームを薄くするために凹部を形成することができる。ボルトは、凹部の内部に配置することができる。ところが、凹部を形成した部分ではアームの剛性が小さくなるという問題がある。
【0008】
また、アームおよびアームの先端に取り付けられるエンドエフェクタは重いために、多くのボルトにてアームを減速機のシャフトに固定する必要が有る。多くのボルトがアームの外側から見えるために、見栄えが悪くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の関節部の構造は、第1部材と第2部材とが関節部を介して連結され、第1部材と第2部材とが相対的に回動するロボットの関節部の構造である。関節部の構造は、第1部材に対して第2部材を駆動するための駆動モータを備える。関節部の構造は、駆動モータの回転力が入力される入力軸、入力軸の回転力を伝達する歯車、歯車を支持する歯車支持部材、および歯車の回転力が伝達される減速機ケースを有する減速機を備える。関節部の構造は、駆動モータと第1部材との間に介在する介在部材を備える。駆動モータは、周方向に配置された複数のモータ固定ボルトにより介在部材に固定されている。介在部材は、第1部材に固定されている。歯車支持部材は、周方向に配置された複数の支持部材固定ボルトにより第1部材に固定されている。減速機ケースは、支持部材固定ボルトとは異なる部材固定ボルトにより第2部材に固定されている。モータ固定ボルトおよび支持部材固定ボルトは、モータ固定ボルトが配置される位置の直径および支持部材固定ボルトが配置される位置の直径が減速機ケースの外径よりも小さくなる位置に配置されている。介在部材は、支持部材固定ボルトから離れた位置にてモータ固定ボルトを固定する形状を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、アームの剛性の低下を抑制するロボットの関節部の構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態におけるロボットの概略図である。
図2】実施の形態における第1の関節部の拡大概略断面図である。
図3】実施の形態における関節部に配置される減速機の構造を説明する拡大概略断面図である。
図4】第1の関節部における寸法を説明する拡大概略断面図である。
図5】比較例のロボットの関節部の拡大概略断面図である。
図6】実施の形態における第2の関節部の拡大概略断面図である。
図7】第2の関節部における寸法を説明する拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図7を参照して、実施の形態におけるロボットの関節部の構造について説明する。図1は、本実施の形態におけるロボット装置の概略図である。ロボット装置は、ワークを把持するエンドエフェクタとしてのハンド2と、ハンド2を移動するロボット1とを備える。
【0013】
本実施の形態のロボット1は、複数の関節部18a,18b,18cを含む多関節ロボットである。ロボット1は、複数の部材を含む。ロボット1のそれぞれの部材は、予め定められた駆動軸の周りに回転するように形成される。
【0014】
ロボット1は、ロボット1の部材として、ベース部14と、ベース部14に支持された旋回ベース13とを含む。ベース部14は、設置面に固定されている。旋回ベース13は、ベース部14に対して回転する。旋回ベース13は、設置面に垂直な方向に延びる回転軸の周りに回転する。ロボット1は、ロボット1の部材として、上部アーム11および下部アーム12を含む。下部アーム12は、関節部18aを介して旋回ベース13に支持されている。上部アーム11は、関節部18bを介して下部アーム12に支持されている。ロボット1は、上部アーム11の端部に連結されているリスト15を含む。リスト15は、関節部18cを介して上部アーム11に支持されている。リスト15は、ハンド2を固定するフランジ16を含む。
【0015】
本実施の形態のロボット1は、上部アーム11等の各部材を駆動するロボット駆動装置を含む。本実施の形態のロボット駆動装置は、上部アーム11、下部アーム12、旋回ベース13、およびリスト15を駆動する駆動モータとしてのサーボモータを含む。本実施の形態では、それぞれの部材に対してサーボモータが配置されている。関節部において、ロボット1の部材の向きが変化することにより、ロボット1の位置および姿勢が変化する。
【0016】
本実施の形態では、複数の関節部18a,18b,18cのうち、旋回ベース13と下部アーム12との間に配置されている関節部18aについて説明する。
【0017】
図2は、旋回ベースと下部アームとの間に配置される関節部の拡大概略断面図である。本実施の形態の関節部18aは、下部アーム12の片側から下部アーム12を支持する片持ち構造を有する。本実施の形態では、旋回ベース13がロボット1を構成する第1部材に相当する。また、下部アーム12がロボット1を構成する第2部材に相当する。下部アーム12は、旋回ベース13に対して回動する。
【0018】
関節部18aは、旋回ベース13に対して下部アーム12を駆動する駆動モータとしてのサーボモータ3と、サーボモータ3の出力トルクを増大する減速機4とを備える。サーボモータ3は、旋回ベース13に固定されている。サーボモータ3は、内部に磁石およびコイル等が配置された本体部21と、本体部21から径方向の外側に向かって突出するつば部23とを含む。サーボモータ3は、本体部21から減速機4に向かって突出し、回転力を出力する出力シャフト22を含む。
【0019】
減速機4は、サーボモータ3の回転力が入力される入力軸42を含む。減速機4は、入力軸42の回転力を伝達する複数の歯車と、歯車を支持する歯車支持部材としてのシャフト43とを含む。減速機4は、歯車の回転力が伝達される減速機ケース41を含む。減速機ケース41は、シャフト43に対して相対的に回転する。
【0020】
減速機4のシャフト43は、支持部材固定ボルトとしてのシャフト固定ボルト51により、旋回ベース13に固定されている。シャフト固定ボルト51は、旋回ベース13に形成された凹部61の内部に配置されている。複数のシャフト固定ボルト51は周方向に配置されている。
【0021】
減速機ケース41は、シャフト43を取り囲むように形成されている。減速機ケース41は、円筒状に形成されている。下部アーム12は、部材固定ボルトとしてのアーム固定ボルト52により、減速機ケース41に固定されている。減速機4は、減速機ケース41から径方向の外側に向かって突出するつば部48を含む。アーム固定ボルト52は、つば部48を挿通するように配置されている。複数のアーム固定ボルト52は、周方向に配置されている。
【0022】
本実施の形態においては、下部アーム12がアーム固定ボルト52により減速機ケース41に固定されているが、この形態に限られない。下部アームは、任意の方法にて、減速機ケースに固定することができる。例えば、下部アームは、溶接または接着等により、減速機ケースに固定されていても構わない。
【0023】
矢印91は、旋回ベース13から下部アーム12に向かう向きを示す。または、矢印91は、サーボモータ3から下部アーム12に向かう向きを示す。アーム固定ボルト52およびシャフト固定ボルト51は、矢印91に示す向きに挿入されて固定されている。
【0024】
減速機4の入力軸42は、サーボモータ3の出力シャフト22に連結されている。入力軸42の回転軸は、出力シャフト22の回転軸と同軸状になるように配置されている。出力シャフト22および入力軸42は、回転軸RAの周りに回転する。回転軸RAは、関節部18aの回転軸である。
【0025】
本実施の形態の関節部18aは、サーボモータ3と旋回ベース13との間に介在する介在部材31を含む。本実施の形態における介在部材31は、円環状に形成されている。介在部材31は、円環状に形成されている本体部33と、本体部33から径方向の外側に向かって突出するつば部34とを含む。介在部材31は、介在部材固定ボルト32によって、旋回ベース13に固定されている。複数の介在部材固定ボルト32は、周方向に配置されている。介在部材固定ボルト32は、つば部34を挿通している。介在部材固定ボルト32は、旋回ベース13の凹部61の外側に配置されている。
【0026】
本実施の形態において、介在部材31は、介在部材固定ボルト32により旋回ベース13に固定されているが、この形態に限られない。介在部材は、任意の方法にて旋回ベースに固定することができる。例えば、介在部材は、溶接または接着等により、旋回ベースに固定されていても構わない。
【0027】
介在部材31は、旋回ベース13の凹部61に嵌合する嵌合部36を有する。本実施の形態においては、本体部33の一部分が嵌合部36として機能する。嵌合部36は、凹部61に嵌め込まれる。嵌合部36は、介在部材31が凹部61に嵌合した時に、介在部材31の中心軸が回転軸RAに一致する形状を有する。
【0028】
サーボモータ3は、介在部材31の内面に嵌合する嵌合部25を有する。本実施の形態においては、本体部21の先端の部分が嵌合部25として機能する。嵌合部25は、介在部材31の本体部33に嵌め込まれる形状を有する。嵌合部25は、サーボモータ3の本体部21が介在部材31に嵌め込まれた時に、サーボモータ3の出力シャフト22の回転軸が回転軸RAに一致する形状を有する。
【0029】
本実施の形態においては、介在部材31の嵌合部36が旋回ベース13の凹部61に嵌合し、サーボモータ3の嵌合部25が介在部材31に嵌合することにより、減速機4の入力軸42の回転軸とサーボモータ3の出力シャフト22の回転軸とが同軸状になる。このため、作業者は、介在部材31の嵌合部36を旋回ベース13の凹部61に嵌め込み、サーボモータ3の嵌合部25を介在部材31に嵌め込むことにより、減速機4とサーボモータ3との軸合わせを容易に行うことができる。なお、介在部材は、旋回ベースと嵌合する嵌合部を有してなくても構わない。また、モータは、介在部材と嵌合する嵌合部を有していなくても構わない。
【0030】
サーボモータ3は、モータ固定ボルト24により介在部材31に固定されている。複数個のモータ固定ボルト24は、周方向に配置されている。モータ固定ボルト24は、つば部23を挿通している。介在部材固定ボルト32およびモータ固定ボルト24は、矢印91に示す向きに固定されている。また、介在部材31の嵌合部36は、矢印91に示す向きに旋回ベース13の凹部61に挿入されている。さらに、サーボモータ3の嵌合部25は、矢印91に示す向きに介在部材31の穴部に挿入されている。
【0031】
減速機4の内部空間81には、グリースなどの潤滑材が配置される。内部空間81は、下部アーム12、減速機ケース41、旋回ベース13の凹部61、介在部材31、およびサーボモータ3の本体部21にて囲まれる空間である。関節部18aには、内部空間81に配置された潤滑材が飛び出さないように、密閉部材65,66,67,68が配置されている。密閉部材65,66,67,68は、ゴムなどの弾性を有する部材にて形成することができる。例えば、密閉部材65,66,67,68は、Oリングである。密閉部材65は、介在部材31と旋回ベース13とが接触する部分に配置されている。密閉部材65は、介在部材固定ボルト32よりも内側に配置されている。密閉部材66は、シャフト43と旋回ベース13とが接触する部分に配置されている。密閉部材66は、シャフト固定ボルト51よりも外側に配置されている。密閉部材67は、減速機ケース41と下部アーム12とが接触する部分に配置されている。密閉部材67は、アーム固定ボルト52よりも内側に配置されている。密閉部材68は、サーボモータ3の本体部21と介在部材31の本体部33とが接触する部分に配置されている。密閉部材68は、モータ固定ボルト24よりも内側に配置されている。
【0032】
図3に、本実施の形態における減速機の拡大概略断面図を示す。本実施の形態の減速機4は、偏芯揺動型の遊星歯車減速機である。サーボモータ3の出力シャフト22の回転力は、減速機4の入力軸42に伝達される。入力軸42の周方向の表面には、偏心した外歯42aが形成されている。入力軸42とシャフト43との間には軸受47が配置されている。入力軸42は、回転可能にシャフト43に支持されている。シャフト43の内部には、ピン45が配置されている。
【0033】
入力軸42には、偏芯して回転が可能な歯車44が係合している。歯車44には外歯が形成されている。歯車44は、入力軸42に形成されている外歯42aに係合する。複数の歯車44は、互いに異なる回転軸にて回転する。ピン45は、シャフト43に支持されている。シャフト43と減速機ケース41との間には、軸受46が配置されている。減速機ケース41の内面には、内歯41aが形成されている。内歯41aは、歯車44に係合する。
【0034】
サーボモータ3が駆動すると、減速機4の入力軸42が回転する。入力軸42の回転力は歯車44に伝達される。歯車44は、それぞれの回転軸にて自転しながら、回転軸RAの周りに公転する。歯車44の回転力は、減速機ケース41に伝達される。そして、減速機ケース41が回転することにより、下部アーム12が回転する。入力軸42の外歯42aの数、歯車44の外歯の数、および減速機ケース41の内歯41aの数に応じて、入力軸42の回転速度が減速される。このように、本実施の形態の減速機4は、サーボモータ3の出力シャフト22の回転速度を減速して、回転トルクを増大させることができる。旋回ベース13に対して、下部アーム12を回動させることができる。
【0035】
減速機としては、この形態に限られず、減速機ケースと、減速機ケースに対して相対的に回転する歯車支持部材(シャフト)とを有する任意の減速機を採用することができる。例えば、遊星歯車が自転しながら太陽歯車の周りを公転する遊星歯車機構を備える減速機、または偏心差動方式減速機等を採用することができる。
【0036】
図4に、本実施の形態の関節部における寸法を説明する概略断面図を示す。本実施の形態においては、つば部48を除いた減速機ケース41の外面の直径を減速機ケース41の外径RDと称する。減速機ケース41の外径RDは、減速機4の外径に相当する。サーボモータ3において、つば部23を除いた本体部21の外面の直径をサーボモータ3の外径MDと称する。次に、直径d1は、シャフト固定ボルト51が配置される位置の直径に相当する。回転軸RA上の点を中心とする直径d1は、互いに反対側に配置されたシャフト固定ボルト51の中心軸同士の距離である。すなわち、直径d1は、回転軸RAからシャフト固定ボルト51の中心軸までの距離の2倍に相当する。同様に、直径d2は、モータ固定ボルト24が配置される位置の直径に相当する。直径d2は、互いに反対側に配置されたモータ固定ボルト24の中心軸同士の距離である。直径d2は、回転軸RAからモータ固定ボルト24の中心軸までの距離の2倍に相当する。同様に、直径d3は、介在部材固定ボルト32が配置される位置の直径に相当する。直径d3は、互いに反対側に配置された介在部材固定ボルト32の中心軸同士の距離に相当する。直径d3は、回転軸RAから介在部材固定ボルト32の中心軸までの距離の2倍に相当する。
【0037】
本実施の形態において、モータ固定ボルト24およびシャフト固定ボルト51は、モータ固定ボルト24が配置される位置の直径d2およびシャフト固定ボルト51が配置される位置の直径d1が、減速機ケース41の外径RDよりも小さくなる位置に配置されている。また、シャフト固定ボルト51およびモータ固定ボルト24は、外径RDと同一の長さの直径を有し、回転軸RAに沿って延びる円筒の領域の内部に配置されている。更に、直径d1は、直径d2と近い値である。モータ固定ボルト24およびシャフト固定ボルト51は、径方向の位置がほぼ同じになる。
【0038】
介在部材31は、シャフト固定ボルト51から離れた位置にて、モータ固定ボルト24を固定する形状を有する。本実施の形態においては、介在部材31は、凹部61の内部に配置されたシャフト固定ボルト51から離れるように形成されている。モータ固定ボルト24は、介在部材31の本体部33に固定されている。このために、シャフト固定ボルト51とモータ固定ボルト24との干渉を避けることができる。
【0039】
図5に、比較例の関節部の構造の拡大概略断面図を示す。比較例の関節部においては、旋回ベース13の先端の部分に貫通穴63が形成されている。貫通穴63の一方の側からサーボモータ3が固定されている。また、貫通穴63の他方の側から減速機4が固定されている。減速機ケース41は、ボルト53により旋回ベース13に固定されている。また、減速機4のシャフト43は、ボルト54により下部アーム12に固定されている。
【0040】
比較例の関節部においては、減速機ケース41が不動である。シャフト43は、減速機ケース41に対して回動する。下部アーム12は、シャフト43と共に回動する。比較例の関節部において、ボルト54は、下部アーム12からサーボモータ3に向かう方向(矢印91と反対方向)に挿入されている。ここで、下部アーム12が厚いと、ボルト54を挿通する穴を形成することが難しくなる。比較例においては、ボルト54を挿通する穴を形成するために、下部アーム12を薄くしている。下部アーム12のボルト54が配置される領域には、凹部12aが形成されている。
【0041】
凹部12aの内部にボルト54が配置されることにより、下部アーム12のボルト54を挿通する部分を薄くすることができる。ところが、凹部12aを形成した部分では、下部アーム12の剛性が低くなるという問題がある。また、下部アーム12に減速機4を固定する為には多くのボルト54が必要である。ところが、下部アーム12の外側から多くのボルト54が見えるために、見栄えが悪いという問題がある。
【0042】
図2を参照して、これに対して、本実施の形態における関節部18aでは、アーム固定ボルト52は、矢印91に示すようにサーボモータ3から下部アーム12に向かう向きに挿入されて固定されている。このために、下部アーム12の形状の自由度が高くなる。下部アーム12の外側に凹部を形成する必要がなく、下部アーム12の剛性を高く維持することができる。また、凹部において多くのアーム固定ボルト52が見えることを回避することができて、下部アーム12の美観が向上する。
【0043】
ところで、本実施の形態の関節部18aにおいては、減速機ケース41を下部アーム12に固定し、シャフト43を旋回ベース13に固定している。このために、サーボモータ3を固定するモータ固定ボルト24と、シャフト43を固定するシャフト固定ボルト51とは、同じ向きになるように配置される。すなわち、モータ固定ボルト24およびシャフト固定ボルト51は、矢印91に向かう方向に向いている。ところが、シャフト固定ボルト51とモータ固定ボルト24との径方向の位置が近くなり、モータ固定ボルト24を旋回ベース13に固定できなくなる場合があった。
【0044】
図4を参照して、シャフト固定ボルト51の位置の直径d1と、モータ固定ボルト24の位置の直径d2とがほぼ同じになる場合がある。例えば、減速機ケース41の外径RDがサーボモータ3の外径MDよりも大きくなる場合に、直径d1と直径d2とが近くなる。または、モータ固定ボルト24の位置の直径d2およびシャフト固定ボルト51の位置の直径d1が減速機ケース41の外径RDよりも小さくなる場合に、直径d1と直径d2とが近くなる。または、減速機ケース41の外径RDと同一の直径を有し、回転軸RAに沿って延びる円筒の領域の内部にモータ固定ボルト24およびシャフト固定ボルト51が配置される場合に、直径d1と直径d2とが近くなる。このような場合に、モータ固定ボルト24がシャフト固定ボルト51に干渉し、モータ固定ボルト24を旋回ベース13に直接的に固定することができないという問題がある。
【0045】
本実施の形態における関節部18aの構造では、介在部材31を介してサーボモータ3を旋回ベース13に固定している。モータ固定ボルト24をシャフト固定ボルト51から離れた位置にて固定することができる。すなわち、モータ固定ボルト24とシャフト固定ボルト51との干渉を回避しながら、サーボモータ3を旋回ベース13に固定することができる。
【0046】
図6に、本実施の形態における第2の関節部の拡大概略断面図を示す。第2の関節部は、旋回ベース13と下部アーム12との間に配置されている。図2および図6を参照して、第2の関節部の介在部材37の構造は、第1の関節部の介在部材31の構造と異なる。
【0047】
第2の関節部における介在部材37は、円環状の本体部33と、本体部33から外側に突出するつば部34と、本体部33から内側に突出する嵌合部35を有する。嵌合部35は、断面において折れ曲がる形状を有する。嵌合部35は、旋回ベース13に形成された凹部61に嵌合している。また、第2の関節部においては、それぞれのシャフト固定ボルト51ごとに凹部62が形成されている。そして、凹部62の内部にシャフト固定ボルト51が配置されている。介在部材37を旋回ベース13の凹部61に嵌合し、サーボモータ3の嵌合部25を介在部材37の本体部33に嵌合した時に、サーボモータ3の出力シャフト22の回転軸が減速機4の入力軸42の回転軸と同軸状になるように形成されている。
【0048】
また、内部空間81に配置される潤滑材の流出を抑制するために、弾性を有する密閉部材65,66,67,68が配置されている。密閉部材65は、介在部材37の本体部33と旋回ベース13とが接触する部分に配置されている。密閉部材65は、介在部材固定ボルト32よりも内側に配置されている。密閉部材66は、旋回ベース13とシャフト43とが接触する部分に配置されている。密閉部材66は、シャフト固定ボルト51よりも外側に配置されている。密閉部材67は、減速機ケース41と下部アーム12とが接触する部分に配置されている。密閉部材67は、アーム固定ボルト52よりも内側に配置されている。密閉部材68は、サーボモータ3の本体部21と介在部材37の本体部33とが接触する部分に配置されている。密閉部材68は、モータ固定ボルト24よりも内側に配置されている。
【0049】
図7に、本実施の形態における第2の関節部の寸法を説明する概略断面図を示す。第2の関節部においては、介在部材37の嵌合部35の外径ED1は、サーボモータ3の嵌合部25の外径ED2よりも小さくなる。図4および図7を参照すると、介在部材31,37の嵌合部35,36の外径ED1とサーボモータ3の嵌合部25の外径ED2とは互いに異なるように形成することができる。
【0050】
図4を参照して、第1の関節部においては、介在部材31の嵌合部36の外径ED1は、サーボモータ3の嵌合部25の外径ED2よりも大きくなるように形成されている。また、介在部材31は、モータ固定ボルト24を固定するねじ穴33aを有している。ねじ穴33aは、回転軸RAに沿って延びる円筒の領域の内部に形成されている。この円筒は、外径ED1と同一の直径を有する。また、介在部材31の嵌合部36は、旋回ベース13に形成された凹部61の内部に配置されている。ねじ穴33aを形成するためには、介在部材31の本体部33を厚くしなくてはならない。しかしながら、第1の関節部の介在部材31では、本体部33の一部が嵌合部36として凹部61の内部に配置されている。介在部材31の嵌合部36の厚さを利用して、ねじ穴33aを配置することができる。本体部33の一部を凹部61の内部に配置することができるために、旋回ベース13から突出する長さPLを、図7に示す第2の関節部よりも短くすることができる。
【0051】
本実施の形態の第2の関節部のその他の構成、作用および効果については、第1の関節部と同様である。
【0052】
本実施の形態においては、旋回ベースと下部アームとの間の関節部を例示して説明を行ったが、この形態に限られない。本実施の形態の構造は、ロボットの任意の部材を連結する関節部に適用することができる。例えば、図1を参照して、本実施の形態の関節部の構造は、下部アーム12と上部アーム11との間の関節部18bおよび上部アーム11とリスト15との間の関節部18cなどに適用することができる。
【0053】
また、本実施の形態においては、第1部材としての旋回ベース13に対して第2部材としての下部アーム12が回動しているが、この形態に限られない。第1部材と第2部材とが相対的に回動するロボットの関節部に、上記の実施の形態の構造を採用することができる。たとえば、第2部材が不動であり、第1部材が第2部材に対して回動する関節部に、上記の実施の形態の構造を採用することができる。
【0054】
本実施の形態のロボットは、多関節ロボットであるが、この形態に限られない。少なくとも一つの部材が関節部を介して支持されている任意のロボットを採用することができる。たとえば、単一の関節部を備えるロボットに本実施の形態の関節部の構造を採用することができる。
【0055】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。
【符号の説明】
【0056】
1 ロボット
3 サーボモータ
4 減速機
12 下部アーム
13 旋回ベース
18a,18b,18c 関節部
23 つば部
24 モータ固定ボルト
25 嵌合部
31,37 介在部材
33 本体部
33a ねじ穴
34 つば部
35,36 嵌合部
41 減速機ケース
42 入力軸
43 シャフト
44 歯車
48 つば部
51 シャフト固定ボルト
52 アーム固定ボルト
61 凹部
RA 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7