【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従い、消耗した触媒上のアルカリ金属の量が少なくとも0.5mol%であり、シリカ担体がゼロゲル(zero−gel)である、シリカ担持された消耗したアルカリ金属触媒を再生するための方法であって、上記シリカ担持された消耗したアルカリ金属触媒を、極性有機溶媒を主成分として含む溶媒系にアルカリ金属の塩を溶解した溶液と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の方法は、使用済みのシリカ担持触媒の再生に特に適している。このような触媒は、通常、表面積が低減しているであろう。例えば、後段で再生される消耗した触媒としては、表面積が<180m
2/g
−1、より典型的には<150m
2g
−1ものを用いることができる。この表面積は、よく知られている方法で測定することができ、好適な方法は、当該技術分野においてよく知られている標準的なBET窒素吸収法である。好適には、シリカの表面積の大半は、直径が5〜150nmの範囲の細孔内に存在する。好適には、シリカの細孔容積の大半は、直径が5〜150nmの範囲の細孔により提供される。細孔容積又は表面積の「大半」が、直径が5〜150nmの範囲にある細孔により提供される、とは、細孔容積又は表面積の少なくとも50%、より好適には少なくとも70%がこの直径の細孔により提供されることを意味する。
【0010】
さらに、消耗したアルカリ金属触媒は、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、アルミニウム、ホウ素及びマグネシウム又はこれらの混合物、好適には、ジルコニウム、チタン、ハフニウム及びアルミニウム又はこれらの混合物、最適には、ハフニウム及びジルコニウム又はこれらの混合物からなる群から選択される第2の金属又はさらなる金属を含むことができる。
【0011】
好適なアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム、好適には、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択することができる。セシウムが好適である。アルカリ金属の塩は、酢酸塩、プロピオン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩及び水酸化物からなる群から選択することができる。
【0012】
驚くべきことに、強アルカリ性塩、例えば、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物を触媒の再含浸に使用できることが見出された。米国特許第6887822号明細書から、触媒担体を強アルカリ性塩に曝すと担体が熱水劣化(hydrothermal ageing)し、その結果として触媒の損傷及び表面積の損失に至ることになると理解されていたので、このことは驚くべきことである。さらに、触媒をアルカリ性塩に曝すとシリカが分解する可能性もある。
【0013】
含浸においては、アルカリ金属塩の担体として作用する、極性有機溶媒を主成分として含む含浸溶媒系を使用すると有利であることが見出された。この溶媒系は、有利には、触媒ビーズに亀裂を生じさせる可能性のある発熱を抑えると共に、高いpHでシリカが分解するリスクを低減する。驚くべきことに、これは先行技術の教示にも反することである。米国特許第6887822号明細書は、セシウムのアルコール性溶液をゼロゲル上への再含浸に使用すると、多量(76%)のビーズに亀裂が生じることを教示している。本発明においては、消耗した触媒に同じことを行ってもこのような問題が起こらないことが見出された。
【0014】
好適な極性有機溶媒はC
1〜C
4アルカノール等のアルコール、特にメタノールである。この極性有機溶媒は、単独で溶媒系として使用することもできるし、あるいは脂肪族エステル及び/又は水との混合物として使用することもできる。脂肪族エステルとしては、C
1〜C
6アルカン酸C
1〜C
6アルキルエステル、より典型的にはC
1〜C
4アルカン酸C
1〜C
4アルキルエステル、最も典型的にはプロピオン酸メチルを用いることができる。特に好適な系は、極性有機溶媒がメタノールであり、脂肪族エステルがプロピオン酸メチルである(その共沸混合物等)か又は極性有機溶媒がメタノールであるものである。どちらの場合においても、含浸の進行に伴い、溶媒系に段々と水が取り込まれる可能性がある。これは、主として、処理すべき触媒上に水分が既に存在することに加えて、極性有機溶媒に添加する前に、アルカリ金属塩供給源の水溶液中に水が導入されていることと、さらには、担体との反応により遊離した少量の水にも起因する。一連の回分式反応において、新たな触媒のバッチが含浸され、溶媒系を補充するためにアルカリ金属塩が添加されるに従い、溶媒系に含まれる水が徐々に増加するであろうことが理解されるであろう。好適な溶媒系においては、かなりの量の脂肪族エステルを使用しなくても、メタノールを用いることで開始する。通常は、メタノールがセシウム塩、より典型的には水酸化セシウムと一緒に使用される。このような組合せを用いることにより、上述したように、含浸中に水が溶媒系に徐々に追加されて取り込まれる。
【0015】
アルカリ金属塩を溶媒系に溶解した溶液の開始時点におけるpHは、好適には8〜13、より好適には、アルカリ金属塩を溶媒系に溶解した溶液の開始時点におけるpHは12〜13である。
【0016】
上述したように、好適な塩は水酸化物であり、好適な極性有機溶媒はメタノールである。
溶媒系中のアルカリ金属の好適な濃度は、含浸開始時において、溶液中のアルカリ金属は6×10
−3〜0.6mol・dm
−3であり、より典型的には、溶液中のアルカリ金属は18×10
−3〜0.18mol・dm
−3であり、最も典型的には、溶液中のアルカリ金属は30×10
−3〜0.12mol・dm
−3である。
【0017】
通常、接触ステップの時間は、触媒担体が溶液で平衡化するのに十分な時間である。担体とさらに接触させても溶液中のアルカリ金属の量が大きく変化しなくなったら、平衡に達したと決定することができる。大きな変化とは、濃度変化が−5%以下、より典型的には−1%以下になったことを意味する。通常は、数時間以内に平衡に到達することができる。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様の方法により調製される、任意選択で、その任意の好適な特徴又は任意的な特徴を含む、再含浸触媒であって、シリカゼロゲル担体及びアルカリ金属から選択される触媒金属を触媒上に0.5〜5mol%の範囲で含み、シリカ担体の表面積が<180m
2/gである、触媒が提供される。
【0019】
一実施形態においては、触媒は、第2の金属を0.5〜2.0重量%含む。特に好適な第2金属はジルコニウムである。第2の金属は、米国特許第6887822号明細書に記載されているように、触媒の耐圧潰性を改善する。
【0020】
シリカ担持触媒に溶媒としてメタノールを使用してセシウムを含浸させることが所望される場合、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硝酸塩、プロピオン酸塩等の任意のメタノール可溶性セシウム塩を使用することができる。セシウムの吸着は、約13という高いpHで最も効率的に進行し、pHが低下すると共に低下することが見出されたので、溶液中のセシウム塩の濃度をより高くすることが必要である。したがって、セシウムの吸着は、水酸化セシウム等の非常に塩基性の高いセシウム塩を使用した場合に最も効率的に進行する。
【0021】
驚くべきことに、含浸溶液中に水が存在してもセシウムの取り込み効率に影響を与えない。このことに関し、水の存在について44重量%まで試験を行ったところ、はっきりとした影響がないことが分かった。
【0022】
水は、通常、含浸溶液中に40重量%まで、より典型的には溶液中に30重量%まで、最も典型的には20重量%まで存在することができる。
さらに、アルカリ金属塩を溶液中に<2重量%という少量で使用すれば、シリカの顕著な分解が回避される。
【0023】
驚くべきことに、消耗した表面積が<180m
2/g、好適には<150m
2/gであり、本明細書に定義したアルカリ金属をより多量に添加することにより再生された使用済み触媒は、等量のアルカリ金属を含む、表面積の高い(>250m
2/g)新触媒と、MMA及びMAAの収率(%)ならびにMMA及びMAAの選択性(%)という観点では同等に機能する。これは、再生を行う前の触媒よりも性能がかなり改善されていることを表している。
【0024】
典型的には、含浸前の消耗した触媒上のアルカリ金属の量は少なくとも0.5mol%、より典型的には少なくとも1.0mol%である。含浸前の消耗した触媒上のアルカリ金属の上限の量は、触媒が使用された反応に依存するであろう。この量は、その反応のために消耗する量となるであろう。通常は、アルカリ金属は、消耗した触媒上に0.5〜3.0mol%、より典型的には1〜3.0mol%の量で存在するであろう。
【0025】
あるいは、消耗した触媒上のアルカリ金属の重量%は、少なくとも1重量%、より典型的には少なくとも2重量%とすることもできる。通常、アルカリ金属は、消耗した触媒上に、1〜6重量%の範囲、より典型的には2〜6重量%の範囲、特に4〜6重量%の範囲で存在する。これらの量はあらゆるアルカリ金属に適用されることになるが、特にセシウムに適用される。
【0026】
通常は、本発明の方法を実施した後の触媒中のアルカリ金属の量は、触媒上に1〜5mol%の範囲、より典型的には2〜4mol%の範囲、最も典型的には触媒上に2.5〜4mol%の範囲となる。
【0027】
あるいは、再含浸された触媒のアルカリ金属の重量%は、触媒上に1〜10重量%の範囲、より典型的には4〜8重量%の範囲、最も典型的には5〜8重量%の範囲とすることができる。これらの量はあらゆるアルカリ金属に当てはまることになるが、特にセシウムに当てはまる。
【0028】
本発明の方法を実施した後の触媒上のアルカリ金属の増分は、通常、触媒上0.25〜2.0mol%の範囲、より典型的には0.75mol%〜1.5mol%の範囲、最も典型的には0.9〜1.4mol%の範囲にある。
【0029】
別法として、触媒上のアルカリ金属の典型的な増分は、触媒上0.5〜4重量%、より典型的には1.5〜3.5重量%、最も典型的には2〜3重量%にある。これらの量はあらゆるアルカリ金属に当てはまることになるが、特にセシウムに当てはまる。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、エチレン性不飽和酸又はエステルを調製するための方法であって、式R
1−CH
2−COOR
3のアルカノール酸又はエステルを、本発明の第2の態様に従う触媒の存在下に、かつ任意選択でアルカノールの存在下に、ホルムアルデヒド又は次に定義する式I:
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R
5はメチルであり、R
6はHであり、
XはOであり、
nは1であり、
mは1である)のホルムアルデヒドの好適な供給源と接触させることを含む、方法が提供される。式中、R
1は水素又は1〜12個、より好適には1〜8個、最適には1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
3も、独立に、水素又は1〜12個、より好適には1〜8個、最適には1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であってもよい。
【0033】
エチレン性不飽和酸又はエステルは、好適には、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル又はアクリル酸ブチルから選択され、より好適には、エチレン性不飽和エステルであり、最適には、メタクリル酸メチルである。したがって、式R
1−CH
2−COOR
3の好適なエステル又は酸は、それぞれプロピオン酸メチル又はプロピオン酸であり、したがって、好適なアルカノールはメタノールである。しかしながら、他のエチレン性不飽和酸又はエステルの製造においては、好適なアルカノール又は酸は異なるものになることが理解されるであろう。
【0034】
したがって、本発明の再含浸触媒が特に有用であることが判明しており、及び/又は消耗した触媒が生じ得る1つの具体的なプロセスは、MMAを製造するための、メタノールの存在下におけるホルムアルデヒド及びプロピオン酸メチルの縮合である。
【0035】
MMAを製造する場合、再含浸された触媒は、好適には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物と接触する。
ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物の水の含有率は、好適には5重量%未満である。より好適には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物の水の含有率は1重量%である。最適には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物の水の含有率は0.1〜0.5重量%未満である。
【0036】
本明細書において用いられる「アルキル」という語は、特段の指定がない限り、C
1〜C
10、好適にはC
1〜C
4アルキルを意味し、アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びヘプチル基が挙げられ、最適にはメチルである。
【0037】
本発明の第3の態様においては、アルカノール酸又はそのエステル及びホルムアルデヒドは、独立に、又は予備混合を行ってから、触媒を含む反応器に、酸又はエステル対ホルムアルデヒドのモル比を20:1〜1:20として、250〜400℃の温度で、滞留時間を1〜100秒間とし、圧力1〜10baraで供給することができる。
【0038】
本発明の第1の態様において、再含浸は、任意の好適な条件、例えば、周囲温度及び周囲圧力下で実施してもよい。好適な温度は0〜100℃、より典型的には5〜60℃、最も典型的には10〜50℃である。反応に好適な圧力は1〜10baraである。
【0039】
通常、触媒は、アルカリ金属溶液と接触する際は固定床の形態にあり、アルカリ金属溶液はその中を通過する。
触媒と接触させるアルカリ金属溶液の好適な流量は0.1〜10ベッド体積/時、より典型的には0.2〜2ベッド体積/時、最も典型的には0.4〜1ベッド体積/時である。
【0040】
ベッド体積とは、被処理触媒床の嵩体積に相当する量を意味する。
溶媒系の主成分とは、溶媒系の少なくとも50体積%、より好適には少なくとも60体積%、最も好適には70体積%以上を構成する成分を意味する。主成分は、溶媒系の95体積%以上、例えば、99体積%以上又はほぼ100体積%を構成することができる。主成分が溶媒系の100体積%を構成しない場合、溶媒系の残分は1種又は2種以上の共溶媒から構成することができる。
【0041】
本明細書における溶媒系とは、単一溶媒又は1種もしくは2種以上の共溶媒を一緒に含む溶媒を意味する。単一溶媒とは、溶媒系の98体積%を超え、より典型的には99体積%を超えるものを意味する。したがって、共溶媒とは、溶媒系の少なくとも1体積%、より典型的には少なくとも2体積%を構成する溶媒を意味する。
【0042】
ゼロゲルとは、ヒドロゲルから典型的には水分の90%超、より典型的には95%超、最も典型的には99%超が除去された乾燥した担体を意味する。ゼロゲルは、水を6重量%まで、より通常は3〜5重量%含むことができる。
【0043】
本明細書における触媒上のmol%とは、触媒中のシリカ(SiO
2)のモル数に対するmol%を意味する。したがって、これは、焼成を行うことを考慮して、シリカがシリカネットワークの分子量ではなくSiO
2に対応する分子量を有すると仮定するものである。この方が触媒の性質をより正確に反映している。例えば、セシウム1重量%は、触媒中のセシウムが0.45mol%であることに等しいことになる(それぞれの分子量を132.9及び60.1と仮定)。
【0044】
特に明記しない限り、アルカリ金属又はアルカリ金属触媒の量はアルカリ金属イオンに関するものであり、塩に関するものではない。
触媒上のアルカリ金属の量は、mol%又は重量%のどちらも、適切な試料採取を行い、このような試料の平均値を求めることにより決定することができる。通常は、特定の触媒バッチの試料を5〜10回採取し、アルカリ金属の量を例えばXRF分析により求めて平均値をとることになる。
【0045】
触媒は、通常、固定床の形態で使用され、再含浸されるであろう。したがって、触媒は、成形体、例えば、通常は最大及び最小寸法が1〜10mmの範囲にある球状体、粒状体、ペレット、凝集体又は押出物であることが望ましい。触媒はまた、他の形態、例えば、粉末又は小ビーズでも有効である。 本発明の方法は液相含浸プロセスであることが理解されるであろう。
【0046】
ここで、例示のみを目的として、次に示す実施例及び図面を参照しながら実施例を用いて本発明を説明する。