特許第6708737号(P6708737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6708737親水性置換基を有する重合性ポリシロキサン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708737
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】親水性置換基を有する重合性ポリシロキサン
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/20 20060101AFI20200601BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20200601BHJP
   C08G 77/14 20060101ALI20200601BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20200601BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C08G77/20
   C08F290/06
   C08G77/14
   C08G77/38
   G02C7/04
【請求項の数】20
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-527765(P2018-527765)
(86)(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公表番号】特表2018-538395(P2018-538395A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】IB2016057585
(87)【国際公開番号】WO2017103791
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】62/267,312
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520000722
【氏名又は名称】アルコン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】デソウサ,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ホァン,ジンユ
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−540187(JP,A)
【文献】 特開昭56−094323(JP,A)
【文献】 特開2011−070207(JP,A)
【文献】 特開2001−233915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00− 77/62
C08F 290/00−290/14
C08F 299/00−299/08
C08F 6/00−246/00
G02C 1/00− 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)
(i)ジメチルシロキサン単位;及び
(ii)親水化シロキサン単位、
を含むポリジオルガノシロキサンポリマー鎖であって、
前記親水化シロキサン単位のそれぞれが、
1つのメチル置換基;及び
少なくとも2つのカルボキシ基を有する1つの一価C10〜C50有機置換基;を有し、
前記ジメチルシロキサン単位に対する、前記親水化シロキサン単位のモル比が、約0.035〜約0.25である、
ポリジオルガノシロキサンポリマー鎖と;
(2)2つの末端(メタ)アクリロイル基と;
を含み、
少なくとも約3000ダルトンの平均分子量を有する、
親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【請求項2】
前記親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤が、式(1)
【化1】

(式中:
υ1が、30〜500の整数であり、ω1が、1〜75の整数であり、ただし、ω1/υ1が、約0.035〜約0.25であり;
が、OまたはNR’であり、ここで、R’が、水素またはC〜C10−アルキルであり;
が、水素またはメチルであり;
およびRが、互いに独立して、置換もしくは非置換C〜C10アルキレン二価基または−R−O−R−の二価基であり、ここで、RおよびRが、互いに独立して、置換もしくは非置換C〜C10アルキレン二価基であり;
が、式(2)
【化2】

の一価基であり、
q1が、0または1であり;
n1が、2〜4の整数であり;
が、水素、メチル、または
【化3】

の基であり;
が、エチルまたは
【化4】

の基であり;
ただし、RおよびRの少なくとも1つが、
【化5】

の基である)のポリマーである、請求項1に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【請求項3】
が、式(2)のものであり、式中、n1が3であり、q1が1であり、Rが水素であり、
が、
【化6】

の基である、請求項2に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【請求項4】
が、式(2)のものであり、式中、n1が3であり、q1が1であり、Rが、
【化7】

の基であり、
がエチルである、
請求項に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【請求項5】
が、式(2)のものであり、
式中、n1が3であり、q1が1であり、
およびRが、
【化8】

の基である、請求項に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤の単位と;
シロキサン含有ビニルモノマーの単位と;
少なくとも1つの親水性ビニルモノマーの単位と;
前記架橋ポリマー材料に共有結合されていないが、前記架橋ポリマー材料内に物理的に取り込まれた親水性ポリマーと;
を含む架橋ポリマー材料を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、
完全に水和されるとき、少なくとも約70バーラーの酸素透過性(Dk)、約25重量%〜約70重量%の含水量、約0.2MPa〜約1.2MPaの弾性率、少なくとも約15秒の水破壊時間、および約90°以下の水接触角を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記親水性ビニルモノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレート(GMA)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、最大で1500の数平均分子量を有するポリエチレングリコールC〜C−アルキルエーテル(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸、エチルアクリル酸、またはそれらの組合せである、請求項6に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記親水性ビニルモノマーが、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、またはそれらの組合せである、請求項7に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記架橋ポリマー材料が、シリコーンを含まない疎水性ビニルモノマーの単位、非シリコーンビニル架橋剤の単位、UV吸収ビニルモノマーの単位、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、N−ビニルピロリドンのホモポリマー、N−ビニルピロリドンと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドのホモポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、アクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、メタクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ヘパリン多糖類、多糖類、またはそれらの混合物である、請求項6〜9のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレン
ズ。
【請求項11】
前記親水性ポリマーの数平均分子量Mが、5,000〜500,000ダルトンである、請求項10に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニル−N−メチルアセトアミド)、ポリアクリルアミド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、またはそれらの組合せである、請求項10または11に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項13】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための方法であって、
室温で、および任意選択であるが好ましくは約0〜約4℃の温度で透明であるレンズ形成組成物を調製する工程であって、前記レンズ形成組成物が、
(a)約5重量%〜約35重量%の、請求項1〜のいずれか一項に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤、
(b)シロキサン含有ビニルモノマー、
(c)約30重量%〜約60重量%の少
なくとも1つの親水性ビニルモノマー、
(d)エチレン性不飽和基を含まない親水性ポリマー、および
(e)少なくとも1つのフリーラジカル開始剤を含み、
ただし、上に列挙された重合性成分および任意のさらなる重合性成分が合計して100重量%になる工程と;
前記レンズ形成組成物を成形型に導入する工程であって、前記成形型が、コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の成形型半部と、前記コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の成形型半部とを有し、前記第1および第2の成形型半部は、前記第1および第2の成形面の間に空洞が形成されるように互いを受け入れるように構成される工程と;
前記レンズ成形型中の前記レンズ形成組成物を熱または化学線により硬化して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する工程であって、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約70バーラーの酸素透過性(Dk)、約25重量%〜約70重量%の含水量、約0.2MPa〜約1.2MPaの弾性率、少なくとも約15秒の水破壊時間、および約90°以下の水接触角を有する工程と、を含む方法。
【請求項14】
前記レンズ形成組成物が、無溶媒液体混合物であり、C〜C10アルキルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン(TMS)、およびt−ブチルスチレン(TBS)、およびそれらの組合せからなる群から選択される混合ビニルモノマー(好ましくは、前記混合ビニルモノマーは、メチルメタクリレートである)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レンズ形成組成物が、有機溶媒を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記レンズ形成組成物中に存在する全てのシリコーン含有重合性成分の総量は、約65%以下である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記親水性ビニルモノマーが、親水性N−ビニルモノマーであり、好ましくは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、またはそれらの組合せであり、さらにより好ましくは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、またはそれらの組合せである、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、N−ビニルピロリドンのホモポリマー、N−ビニルピロリドンと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドのホモポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、アクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、メタクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ヘパリン多糖類、多糖類、またはそれらの混合物である、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記親水性ポリマーの数平均分子量Mが、5,000〜500,000ダルトンである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニル−N−メチルアセトアミド)、ポリアクリルアミド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、またはそれらの組合せである、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性置換基を有する種類の重合性ポリシロキサンおよびその使用に関する。特に、本発明は、親水性置換基を有する重合性ポリシロキサンを含むレンズ配合物で作製されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソフトシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、それらの高い酸素透過性および快適性のためにますます人気を集めている。「ソフト」コンタクトレンズは、眼の形状にぴったりと合うことができるため、酸素はレンズを容易に回避することができない。ソフトコンタクトレンズは、周囲空気からの酸素(すなわち、酸素)が角膜に到達することを可能にしなければならないが、これは、角膜が他の組織のように血液供給から酸素を受け取らないためである。十分な酸素が角膜に到達しない場合、角膜の膨張が起こる。長期間の酸素の欠乏は、角膜における血管の望ましくない成長を引き起こす。高い酸素透過性を有することによって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、十分な酸素がレンズを通して角膜に浸透し、角膜の健康に対する悪影響を最小限にすることを可能にする。
【0003】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製するのに広く使用されるレンズ形成材料の1つは、得られるコンタクトレンズに高い酸素透過性を提供することができるポリジオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)ビニル架橋剤である。しかしながら、ポリジメチルシロキサンビニル架橋剤は、得られるコンタクトレンズの機械的特性、例えば、弾性率に影響を与え得る。例えば、低分子量のポリジメチルシロキサンビニル架橋剤(<2,000g/mol)は、所望の酸素透過性を達成するために、比較的高い弾性率を有する得られるコンタクトレンズを提供し得る。比較的高い分子量のポリジメチルシロキサンビニル架橋剤は、典型的に、高い酸素透過性および低い弾性率の両方を達成するのに必要とされる。しかしながら、その疎水性のため、ポリジメチルシロキサンビニル架橋剤、特に、高い分子量を有するものは、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド(VMA)、または非重合性親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンまたはポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)を含む内部湿潤剤を含むレンズ配合物中の親水性成分と相溶性でない。均一なレンズ配合物を得ることは難しいであろう。
【0004】
したがって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製するのに好適な新規な化学線重合性ポリシロキサンが必要とされている。
【0005】
米国特許第4260725号明細書、同第5034461号明細書、同第5346946号明細書、同第5416132号明細書、同第5449729号明細書、同第5486579号明細書、同第5512205号明細書、同第5760100号明細書、同第5994488号明細書、同第6858218号明細書、同第6867245号明細書、同第7671156号明細書、同第7744785号明細書、同第8129442号明細書、同第8163206号明細書、同第8501833号明細書、同第8513325号明細書、同第8524850号明細書、同第8835525号明細書、同第8993651号明細書、および同第9187601号明細書および米国特許出願第14/859486号明細書には、1つ以上の親水化ポリシロキサン架橋剤を含む様々なレンズ配合物(溶媒含有または無溶媒配合物のいずれかである)が、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製するのに使用され得ることが開示されている。米国特許第6367929号明細書、同第6822016号明細書、同第7052131号明細書および同第7249848号明細書には、内部湿潤剤として浸出性親水性ポリマーを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一態様において、親水化ポリシロキサンビニル架橋剤を提供する。本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、(1)メチルシロキサン単位および親水化シロキサン単位を含むポリジオルガノシロキサンポリマー鎖であって、前記親水化シロキサン単位が1つのメチル置換基および少なくとも2つのカルボキシ基を有する1つの一価C10〜C50有機置換基を有し、ジメチルシロキサン単位に対する親水化シロキサン単位のモル比が、約0.035〜約0.25であるポリジオルガノシロキサンポリマー鎖と;(2)2つの末端(メタ)アクリロイル基とを含み、親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、3000ダルトンを超える数平均分子量を有する。
【0007】
別の態様において、本発明は、本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤の単位(上述される)と;シロキサン含有ビニルモノマーの単位と;少なくとも1つの親水性ビニルモノマーの単位と;架橋ポリマー材料に共有結合されていない親水性ポリマーとを含む架橋ポリマー材料を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、完全に水和されるとき、少なくとも約70バーラーの酸素透過性(Dk)、約25重量%〜約70重量%の含水量、約0.2MPa〜約1.2MPaの弾性率、少なくとも約15秒の水破壊時間、および約90°以下の水接触角を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための方法を提供する。この方法は、室温で、および任意選択であるが好ましくは約0〜約4℃の温度で透明であるレンズ形成組成物を調製する工程であって、レンズ形成組成物が、(a)約5重量%〜約35重量%の、本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤、(b)シロキサン含有ビニルモノマー、(c)約30重量%〜約60重量%の少なくとも1つの親水性ビニルモノマー、(d)エチレン性不飽和基を含まない親水性ポリマー、および(e)少なくとも1つのラジカル開始剤を含み、ただし、上に列挙された重合性成分および任意のさらなる重合性成分が合計して100重量%になる工程と;レンズ形成組成物を成形型に導入する工程であって、成形型が、コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の成形型半部と、コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の成形型半部とを有し、前記第1および第2の成形型半部は、前記第1および第2の成形面の間に空洞が形成されるように互いを受け入れるように構成される工程と;レンズ成形型中のレンズ形成組成物を熱または化学線により硬化して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する工程であって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約70バーラーの酸素透過性(Dk)、約25重量%〜約70重量%の含水量、約0.2MPa〜約1.2MPaの弾性率、少なくとも約15秒の水破壊時間、および約90°以下の水接触角を有する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書において使用される命名法および実験手順は、周知であり、当該技術分野において一般的に用いられる。当該技術分野および様々な一般的な参考文献において示されるものなどの、従来の方法がこれらの手順に使用される。用語が単数形で示される場合、本発明者らは、その用語の複数形も想定している。本明細書において使用される命名法および後述される実験手順は、周知であり、当該技術分野において一般的に用いられる。
【0010】
本明細書において使用される際の「約」は、「約」と示される数が、記載される数±記載される数の1〜10%を含むことを意味する。
【0011】
本明細書において使用される際の「眼科用機器」は、コンタクトレンズ(ハードまたはソフト)、眼内レンズ、角膜アンレー(onlay)、眼もしくは眼の周りまたは眼の近くに使用される他の眼科用機器(例えば、ステント、緑内障シャントなど)を指す。
【0012】
「コンタクトレンズ」は、着用者の眼の上または眼の中に配置され得る構造を指す。コンタクトレンズは、使用者の視覚を、補正し、改善し、または変化させ得るが、そうである必要はない。コンタクトレンズは、当該技術分野において公知であるかまたは今後開発される任意の適切な材料製であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、またはハイブリッドレンズであり得る。「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」は、シリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズを指す。
【0013】
「ヒドロゲル」または「ヒドロゲル材料」は、水に不溶性であるが、少なくとも10重量パーセントの水を吸収することができる架橋ポリマー材料を指す。
【0014】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つのシリコーン含有ビニルモノマーまたは少なくとも1つのシリコーン含有ビニルマクロマーまたは少なくとも1つの化学線架橋性シリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるシリコーン含有ヒドロゲルを指す。
【0015】
本明細書において使用される際の「親水性」は、脂質より水とより容易に結合する材料またはその部分を表す。
【0016】
「ビニルモノマー」は、1つのみのエチレン性不飽和基を有し、溶媒に可溶性の化合物を指す。
【0017】
溶媒中の化合物または材料に関する「可溶性」という用語は、化合物または材料が、溶媒に溶解されて、室温(すなわち、約20℃〜約30℃の温度)で少なくとも約0.5重量%の濃度を有する溶液を生じ得ることを意味する。
【0018】
溶媒中の化合物または材料に関する「不溶性」という用語は、化合物または材料が、溶媒に溶解されて、室温(上に定義されるような)で0.005重量%未満の濃度を有する溶液を生じ得ることを意味する。
【0019】
「オレフィン性不飽和基」または「エチレン性不飽和基」という用語は、本明細書において広い意味で用いられ、少なくとも1つの>C=C<基を含有する任意の基を包含することが意図される。例示的なエチレン性不飽和基としては、限定はされないが、(メタ)アクリロイル
【化1】

、アリル、ビニル、スチレニル、または他のC=C含有基が挙げられる。
【0020】
「エン基」という用語は、酸素または窒素原子またはカルボニル基に共有結合されていないCH=CH−を含む一価基を指す。
【0021】
本明細書において使用される際、重合性組成物、プレポリマーまたは材料の硬化、架橋または重合に関する「化学線により」は、硬化(例えば、架橋および/または重合)が、例えば、紫外線照射、電離放射線(例えばγ線またはX線照射)、マイクロ波照射などの化学線放射によって行われることを意味する。熱硬化または化学線硬化方法は、当業者に周知である。
【0022】
「(メタ)アクリルアミド」という用語は、メタクリルアミドおよび/またはアクリルアミドを指す。
【0023】
「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを指す。
【0024】
「(メタ)アクリルオキシ」という用語は、
【化2】

の基を指す。
【0025】
「(メタ)アクリルアミド」という用語は、
【化3】

(式中、R’が、水素またはC〜C10−アルキルである)の基を指す。
【0026】
本明細書において使用される際の「親水性ビニルモノマー」は、ホモポリマーとして、水溶性であるかまたは少なくとも10重量パーセントの水を吸収することができるポリマーを典型的に生じるビニルモノマーを指す。
【0027】
本明細書において使用される際の「疎水性ビニルモノマー」は、ホモポリマーとして、水に不溶であり、10重量パーセント未満の水を吸収することができるポリマーを典型的に生じるビニルモノマーを指す。
【0028】
「混合ビニルモノマー」は、重合性組成物の親水性および疎水性成分の両方に溶解して、溶液を形成することが可能なビニルモノマーを指す。
【0029】
「マクロマー」または「プレポリマー」は、エチレン性不飽和基を含有し、かつ700ダルトンを超える平均分子量を有する化合物またはポリマーを指す。
【0030】
「ポリマー」は、1つ以上のビニルモノマー、マクロマーおよび/またはプレポリマーを重合/架橋することによって形成される材料を意味する。
【0031】
本明細書において使用される際のポリマー材料(モノマーまたはマクロマー材料を含む)の「分子量」は、特に明示されない限り、または試験条件が別に示されない限り、数平均分子量を指す。
【0032】
親水性ポリマー鎖に関する「低分子量」という用語は、ポリマー鎖が、ポリシロキサンに結合される前の出発親水性ポリマーの平均分子量に基づいて、250〜100,000ダルトン、好ましくは、400〜50,000ダルトン、より好ましくは、500〜250,000ダルトン、さらにより好ましくは、750〜150,000ダルトンの平均分子量を有することを意味する。
【0033】
「アルキル」という用語は、直鎖状または分枝鎖状アルカン化合物から水素原子を除去することによって得られる一価基を指す。アルキル基(ラジカル)は、有機化合物中の1つの他の基と1つの結合を形成する。
【0034】
「アルキレン」という用語は、アルキルから1つの水素原子を除去することによって得られる二価基を指す。アルキレン基(またはラジカル)は、有機化合物中の他の基と2つの結合を形成する。
【0035】
本出願において、アルキレン二価基またはアルキル基に関する「置換」という用語は、アルキレン二価基またはアルキル基が、アルキレンまたはアルキル基の1つの水素原子を置換する少なくとも1つの置換基を含むことを意味し、置換基は、ヒドロキシル、カルボキシル、−NH、スルフヒドリル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ(硫化アルキル)、C〜Cアシルアミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジ−C〜Cアルキルアミノ、ハロゲン原子(BrまたはCl)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0036】
本出願において、「シロキサン単位」という用語は、2つのみの置換基を有する−Si(R)−O−の二価基を指し、そのRおよびRは、互いに独立して、一価有機基であり、1つの単結合を介して、シロキサン単位のケイ素原子に直接連結される。
【0037】
「一価有機基」という用語は、有機化合物から水素原子を除去することによって得られる一価基を指す。
【0038】
本出願において、シロキサン単位に関する「メチル置換基」という用語は、シロキサン単位のケイ素原子に直接連結されたメチル基を指し;シロキサン単位に関する「一価C10〜C50有機基置換基」という用語は、10〜50個の炭素原子を含み、かつシロキサン単位のケイ素原子に直接連結された一価有機基を指す。
【0039】
本出願において、「親水化シロキサン単位」という用語は、シロキサン単位のケイ素原子上の2つの置換基のうちの1つが、少なくとも1つの親水性基または部分(ヒドロキシル、メトキシ、カルボキシルもしくはアミノ基、またはアミドもしくはアミノ結合など)を有する一価C10〜C50有機基であるシロキサン単位を指す。
【0040】
本出願において、「親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤」は、少なくとも1つの親水化シロキサン単位を含むポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤を指す。
【0041】
本明細書において使用される際、「多数の(multiple)」という用語は、3つ以上を指す。
【0042】
「ビニル架橋剤」は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する化合物を指す。「ビニル架橋剤」は、2つ以上のエチレン性不飽和基および700ダルトン未満の分子量を有する化合物を指す。
【0043】
フリーラジカル開始剤は、光開始剤または熱開始剤のいずれかであり得る。「光開始剤」は、光の使用によってフリーラジカル架橋/重合反応を開示させる化学物質を指す。「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用によってラジカル架橋/重合反応を開始させる化学物質を指す。
【0044】
「重合性UV吸収剤」または「UV吸収ビニルモノマー」は、エチレン性不飽和基およびUV吸収部分を含む化合物を指す。
【0045】
「UV吸収部分」は、当業者によって理解されるように200nm〜400nmの範囲の紫外線を吸収または遮蔽することができる有機官能基を指す。
【0046】
「化学線の空間的制限」は、光線の形態のエネルギー放射が、空間的に制限されて、明確に画定された周囲境界を有する領域に当たるように、例えば、マスクまたはスクリーンまたはそれらの組合せによって方向付けられる作用またはプロセスを指す。紫外線/可視線の空間的制限は、米国特許第6,800,225号明細書(図1〜11)、および同第6,627,124号明細書(図1〜9)、同第7,384,590号明細書(図1〜6)、および同第7,387,759号明細書(図1〜6)(これらは全て、全体が参照により援用される)の図面に概略的に示されるように、放射線(例えば、紫外線/可視線)透過性領域、放射線透過性領域を囲む放射線(例えば、紫外線/可視線)不透過性領域、および放射線不透過性および放射線透過性領域の間の境界である投射輪郭を有するマスクまたはスクリーンを使用することによって得られる。マスクまたはスクリーンは、マスクまたはスクリーンの投射輪郭によって画定される断面形状を有する放射線(例えば、紫外線/可視線)のビームを空間的に投射する。投射された放射線(例えば、紫外線/可視線)のビームは、投射されたビームの経路に位置するレンズ形成材料に当たる放射線(例えば、紫外線/可視線)を、成形型の第1の成形面から第2の成形面までに制限する。得られるコンタクトレンズは、第1の成形面によって画定される前面、第2の成形面によって画定される反対側の後面、および投射された紫外線/可視線ビームの断面形状(すなわち、放射線の空間的制限)によって画定されるレンズエッジを含む。架橋に使用される放射線は、任意の放射エネルギー、特に、紫外線/可視線、γ線、電子放射線または熱放射線であり、放射エネルギーは、好ましくは、一方で良好な制限を達成するために、他方でエネルギーの効率的な使用を達成するために、ほぼ平行なビームの形態である。
【0047】
従来の注型プロセスにおいて、成形型の第1および第2の成形面は、互いに対してプレスされて、得られるコンタクトレンズのエッジを画定する円周の接触線を形成する。成形面の密接な接触は、成形面の光学的品質を損なうことがあるため、成形型は再利用することができない。対照的に、Lightstream Technology(商標)では、得られるコンタクトレンズのエッジは、成形型の成形面の接触によって画定されず、代わりに放射線の空間的制限によって画定される。成形型の成形面の間に接触がないため、成形型を繰り返し使用して、高い再現性を有する高品質のコンタクトレンズを製造することができる。
【0048】
「染料」は、レンズ形成流体材料に可溶性であり、色を与えるのに使用される物質を意味する。染料は、典型的に半透明であり、光を吸収するが散乱させない。
【0049】
「顔料」は、それが不溶であるレンズ形成組成物中で懸濁された粉末状の物質(粒子)を意味する。
【0050】
本明細書において使用される際の「表面改質」または「表面処理」は、物品が、物品の形成の前または後に、表面処理/改質プロセスにおいて処理されていることを意味し、ここで、(1)コーティングが、物品の表面に適用され、(2)化学種が、物品の表面に吸収され、(3)物品の表面の化学基の化学的性質(例えば、帯電)が変化され、または(4)物品の表面特性が他の形で改質される。例示的な表面処理プロセスとしては、限定はされないが、エネルギー(例えば、プラズマ、静電荷、照射、または他のエネルギー源)による表面処理、化学的処理、物品の表面への親水性ビニルモノマーまたはマクロマーのグラフト、米国特許第6,719,929号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)に開示される成形型トランスファーコーティング(mold−transfer coating)プロセス、米国特許第6,367,929号明細書および同第6,822,016号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)において提供されるコンタクトレンズを作製するためのレンズ配合物への湿潤剤の組み込み、米国特許第7,858,000号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)に開示される強化された成形型トランスファーコーティング、および米国特許第8,147,897号明細書および同第8,409,599号明細書および米国特許出願公開第2011/0134387号明細書、同第2012/0026457号明細書および同第2013/0118127号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)に開示されるコンタクトレンズの表面への1つ以上の親水性ポリマーの1つ以上の層の共有結合または物理蒸着から構成される親水性コーティングが挙げられる。
【0051】
シリコーンヒドロゲル材料またはソフトコンタクトレンズに関する「硬化後表面処理」は、成形型中でのヒドロゲル材料またはソフトコンタクトレンズの形成(硬化)後に行われる表面処理プロセスを意味する。
【0052】
シリコーンヒドロゲル材料またはコンタクトレンズに関する「親水性表面」は、シリコーンヒドロゲル材料またはコンタクトレンズが、約90°以下、好ましくは、約80°以下、より好ましくは、約70°以下、より好ましくは、約60°以下の平均水接触角を有することによって特徴付けられる表面親水性を有することを意味する。
【0053】
「平均接触角」は、少なくとも3つの個別のコンタクトレンズの測定を平均することによって得られる水接触角(液滴法によって測定される)を指す。
【0054】
材料の固有の「酸素透過性」、Dkは、酸素が材料を通過する速度である。本出願において使用される際、ヒドロゲル(シリコーンまたは非シリコーン)またはコンタクトレンズに関する「酸素透過性(Dk)」という用語は、後の実施例に示される手順にしたがって、境界層効果によって引き起こされる酸素フラックスに対する表面抵抗について補正された、測定された酸素透過性(Dk)を意味する。酸素透過性は、従来、バーラーの単位で表され、ここで、「バーラー」は、[(cm酸素)(mm)/(cm)(秒)(mm Hg)]×10−10として定義される。
【0055】
レンズまたは材料の「酸素透過率」、Dk/tは、測定領域にわたってt[mm単位]の平均厚さを有する特定のレンズまたは材料を酸素が通過する速度である。酸素透過率は、従来、バーラー/mmの単位で表され、ここで、「バーラー/mm」は、[(cm酸素)/(cm)(秒)(mm Hg)]×10−9として定義される。
【0056】
本出願において使用される際、レンズ形成組成物に関する「透明な」という用語は、レンズ形成組成物が、透明な溶液または液体混合物である(すなわち、400〜700nmの範囲で、85%以上、好ましくは、90%以上の光透過率を有する)ことを意味する。
【0057】
一般に、本発明は、(1)メチルシロキサン単位および親水化シロキサン単位を含むポリジオルガノシロキサンポリマー鎖であって、前記親水化シロキサン単位が1つのメチル置換基および少なくとも2つのカルボキシ基を有する1つの一価C10〜C50有機置換基を有し、ジメチルシロキサン単位に対する親水化シロキサン単位のモル比が、約0.035〜約0.25であるポリジオルガノシロキサンポリマー鎖と;(2)2つの末端(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ含む種類の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤であって、3000ダルトンより大きい平均分子量を有する親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤に関する。
【0058】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの作製における、本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤の使用に関連するいくつかの潜在的な独特の特徴がある。
【0059】
第1に、本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、分子当たり比較的多い量のカルボキシ基の存在のため、他の親水性重合性成分(例えば、親水性ビニルモノマー、親水性架橋剤、および/または親水性プレポリマー)とより相溶性である。カルボキシ基が、他の親水性基とH結合を形成する能力が非常に高いため、本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、大量の親水性重合性成分を含有することができ、かつ室温または約0℃〜約4℃の低い保存温度でさえまだ透明である様々な溶媒含有または無溶媒レンズ配合物を調製するのに好適である。このようなレンズ配合物は、有利には、製造において予め調製され得る。
【0060】
第2に、本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤が、PVPまたはポリDMAのような親水性H結合受容体ポリマーとH結合錯体を形成することができるポリアクリル酸のように、H結合または双極子間相互作用によって親水性(コ)ポリマーと錯体を形成し得ると考えられる(Macromolecules 1994,27,947−952)。カルボン酸基はまた、PEIおよびポリ−ビニルアミンのようなより塩基性のポリマーとイオン錯体を形成し得る。H結合または双極子間相互作用のため、本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、レンズ形成組成物中の親水性ポリマー(エチレン性不飽和基を含まない)と相溶性であり得る。配合物が硬化された後、親水性ポリマーは、シリコーンヒドロゲル網目構造内にまだ残り得るが、レンズ表面に向かってゆっくりと移動し、湿潤性および潤滑性表面特性を有する最終的なレンズを提供し得る。
【0061】
第3に、カルボキシ基を、限られた数のシロキサン単位中に充填することによって、得られるポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤が、6つ以上の連続したジメチルシロキサン単位からなる十分なシロキサン部分を有し得ることを確実にすることができる。より高い酸素透過性を達成するために、ポリジオルガノシロキサンは、連続した配列で少なくとも5つのジメチルシロキサン単位を有するべきであると考えられる。このようなポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤を用いて、他の親水性重合性成分とのその相溶性に悪影響を与えずに、シロキサン単位当たりの比較的高い酸素透過性を効率的に提供し得る。
【0062】
本発明は、一態様において、親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤を提供する。本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、(1)メチルシロキサン単位および親水化シロキサン単位を含むポリジオルガノシロキサンポリマー鎖であって、前記親水化シロキサン単位が1つのメチル置換基および少なくとも2つのカルボキシ基を有する1つの一価C10〜C50有機置換基を有し、ジメチルシロキサン単位に対する親水化シロキサン単位のモル比が、約0.035〜約0.25であるポリジオルガノシロキサンポリマー鎖と;(2)2つの末端(メタ)アクリロイル基とを含み、親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、少なくとも約3000ダルトン(好ましくは、約4000ダルトン〜約80,000ダルトン、より好ましくは、約5000ダルトン〜約50,000ダルトン、さらにより好ましくは、約6000ダルトン〜約25,000ダルトン、最も好ましくは、約7000ダルトン〜約18,000ダルトン)の平均分子量を有する。
【0063】
本発明によれば、親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、好ましくは、式(1)
【化4】

(式中:
υ1が、30〜500の整数であり、ω1が、1〜75の整数であり、ただし、ω1/υ1が、約0.035〜約0.25(好ましくは、約0.040〜約0.18、さらにより好ましくは、約0.045〜約0.18)であり;
が、OまたはNR’であり、ここで、R’が、水素またはC〜C10−アルキルであり;
が、水素またはメチルであり;
およびRが、互いに独立して、置換もしくは非置換C〜Cアルキレン二価基または−R−O−R−の二価基であり、ここで、RおよびRが、互いに独立して、置換もしくは非置換C〜Cアルキレン二価基であり;
が、式(2)
【化5】

の一価基であり、
q1が、0または1であり;
n1が、2〜4の整数であり;
が、水素、メチル、または
【化6】

の基であり;
が、エチルまたは
【化7】

の基であり;
ただし、RおよびRの少なくとも1つが、
【化8】

の基である)
のポリマーである。
【0064】
好ましい実施形態において、一価基Rが、式(2)のものであり、式中、n1が3であり、q1が1であり、Rが水素であり、Rが、
【化9】

の基である。
【0065】
別の好ましい実施形態において、一価基Rが、式(2)のものであり、式中、n1が3であり、q1が1であり、Rが、
【化10】

の基であり、Rがエチルである。
【0066】
別の好ましい実施形態において、一価基Rが、式(2)のものであり、式中、n1が3であり、q1が1であり、RおよびRが、
【化11】

の基である。
【0067】
式(1)の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、3工程プロセスで調製され得る。
【0068】
第1の工程において、下式
【化12】

(式中、X、R、R、R、υ1、およびω1が、上に定義されるとおりである)のヒドロシロキサン含有ポリシロキサンは、当業者に公知の任意の方法にしたがって調製される。説明のための例として、式(3)のヒドロシロキサン含有ポリシロキサンは、鎖末端ブロックとしての1,3−ビス[3−(メタ)アクリルオキシプロピル]テトラメチルジシロキサン(など)の存在下でおよび触媒の存在下で、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)と1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(H4)との混合物の重合から調製され得る。D4対H4のモル比を制御することによって、υ1/ω1の所望の値を得ることができる。
【0069】
第2の工程において、工程2において得られたヒドロシロキサン含有ポリジオルガノシロキサンは、当業者に公知の白金触媒ヒドロシリル化反応において、2つまたは3つのヒドロキシル基を含有するエンモノマーと反応されて、2〜3つのヒドロキシル基を有する1つの有機置換基をそれぞれ含む親水化シロキサン単位を含有するポリジオルガノシロキサンが得られる。好ましい2つまたは3つのヒドロキシル基を含有するエンモノマーは、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、2−アリルオキシメチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、2−アリルオキシメチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(すなわち、トリメチロールプロパンアリルエーテル)、またはアリルオキシグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、3,4−エポキシ−1−ブテン、または2−メチル−2−ビニルオキシランであるエポキシ含有エンモノマーの完全に加水分解された(すなわち、開環)生成物である。上に列挙されたエンモノマーは、市販されている。
【0070】
第3の工程において、2〜3つのヒドロキシル基を有する1つの有機置換基をそれぞれ含む親水化シロキサン単位を含有する得られたポリジオルガノシロキサンは、無水コハク酸と反応されて、式(1)の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤が得られる。
【0071】
本発明(式(1)上に定義される)の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤は、本発明の別の態様である、ポリマー、好ましくは、シリコーンヒドロゲルポリマー材料の調製における具体的な使用を見出すことができる。当業者は、任意の公知の重合機構にしたがって、重合性組成物からポリマーまたはシリコーンヒドロゲルポリマー材料を調製する方法を認識している。
【0072】
別の態様において、本発明は、式(1)(上述される)の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤の単位と;シロキサン含有ビニルモノマーの単位と;少なくとも1つの親水性ビニルモノマーの単位と;架橋ポリマー材料に共有結合されていないが、架橋ポリマー材料内に物理的に取り込まれた親水性ポリマーとを含む架橋ポリマー材料を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、完全に水和されるとき、少なくとも約70バーラーの酸素透過性(Dk)、約25重量%〜約70重量%の含水量、約0.2MPa〜約1.2MPaの弾性率、少なくとも約15秒の水破壊時間、および約90°以下の水接触角を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。
【0073】
当業者は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの酸素透過性、酸素透過率、含水量、弾性率、およびレンズ直径を測定する方法を十分に認識している。これらのレンズ特性は、それらのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ製品のための全ての製造業者によって報告されている。
【0074】
式(1)(上に定義される)親水化されたポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤の様々な実施形態は、本発明のこの態様に組み込まれるべきである。
【0075】
任意の好適なシロキサン含有ビニルモノマーが、本発明に使用され得る。好ましいシロキサン含有ビニルモノマーの種類は、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基またはビス(トリアルキルシリルオキシ)アルキルシリル基を含有するものである。このような好ましいシリコーン含有ビニルモノマーの例としては、限定はされないが、3−アクリルアミドプロピル−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、3−N−メチルアクリルアミドプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]−(メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルプロピルシロキシ)−シリルプロピル]−(メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルフェニルシロキシ)シリルプロピル](メタ)アクリルアミド、N−[トリス(ジメチルエチルシロキシ)シリルプロピル](メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル)−2−メチルアクリルアミド;N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル)アクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド;N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル)−2−メチルアクリルアミド;N−(2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル)アクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド;N−[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド;N−[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]−2−メチルアクリルアミド;N,N−ビス[2−ヒドロキシ−3−(3−(t−ブチルジメチルシリル)プロピルオキシ)プロピル]アクリルアミド;3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピルメタクリレート(TRIS)、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン)、(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリルオキシエトキシプロピルオキシ−プロピル−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−2−メタクリルオキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバメート、3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカーボネート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−トリス(トリメチル−シロキシ)シラン、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート、t−ブチルジメチル−シロキシエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルメチルビニルカーボネート、ならびに少なくとも1つの親水性結合および/または少なくとも1つの親水性鎖を含む米国特許第9,103,965号明細書、同第9,475,827号明細書、および同第9,097,840号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)に開示される親水化シロキサン含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0076】
好ましいシロキサン含有ビニルモノマーの別の種類は、ポリカーボシロキサンビニルモノマー(またはカーボシロキサンビニルモノマー)である。このようなポリカーボシロキサンビニルモノマーまたはマクロマーの例は、米国特許第7915323号明細書および同第8420711号明細書、米国特許出願公開第2012/244088号明細書、同第2012/245249号明細書、同第2015/0309211号明細書、および同第2015/0309210号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)に記載されるものである。
【0077】
好ましいシロキサン含有ビニルモノマーのさらなる種類は、ポリジメチルシロキサン含有ビニルモノマーである。このようなポリジメチルシロキサン含有ビニルモノマーの例は、様々な分子量のモノ−(メタ)アクリルオキシ末端ポリジメチルシロキサン(例えば、モノ−3−メタクリルオキシプロピル末端、モノ−ブチル末端ポリジメチルシロキサンまたはモノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端、モノ−ブチル末端ポリジメチルシロキサン)、様々な分子量のモノ−(メタ)アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン、またはそれらの組合せである。
【0078】
本発明によれば、シロキサン含有ビニルモノマーは、好ましくは、3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、3−(メタ)アクリルオキシエトキシプロピルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピル−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、3−N−メチル(メタ)アクリルアミドプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、様々な分子量のモノ−(メタ)アクリルオキシ末端ポリジメチルシロキサン、様々な分子量のモノ−(メタ)アクリルアミド末端ポリジメチルシロキサン、またはそれらの組合せである。
【0079】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの架橋ポリマー材料は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを作製するためのレンズ形成組成物中の親水性重合性成分と相溶性である限り、ポリジメチルシロキサンビニル架橋剤を任意に含み得ることが理解される。
【0080】
好ましい親水性ビニルモノマーの例としては、限定はされないが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレート(GMA)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、最大で1500の数平均分子量を有するポリエチレングリコールC〜C−アルキルエーテル(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸、エチルアクリル酸、およびそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、親水性ビニルモノマーは、親水性N−ビニルモノマー、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、またはそれらの組合せである。さらにより好ましくは、親水性ビニルモノマーは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、またはそれらの組合せである。
【0081】
任意の非架橋性親水性ポリマーまたはコポリマー(すなわち、エチレン性不飽和基を含まない)が使用され得る。特に、親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤のカルボキシ基の補助により、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのポリマーマトリクス内に物理的に取り込まれることによって、このような非架橋性親水性ポリマーは、レンズ表面に向かってゆっくりと移動し、湿潤性および潤滑性表面特性を有する最終的なレンズを提供し得る。非架橋性親水性ポリマーの好ましい例としては、限定はされないが、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、N−ビニルピロリドンのホモポリマー、N−ビニルピロリドンと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドのホモポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、アクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、メタクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ヘパリン多糖類、多糖類、およびそれらの混合物が挙げられる。非架橋性親水性ポリマーの数平均分子量Mは、好ましくは、5,000〜500,000、より好ましくは、10,000〜300,000、さらにより好ましくは、20,000〜100,000である。好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニル−N−メチルアセトアミド)、ポリアクリルアミド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、またはそれらの組合せが使用される。
【0082】
本発明によれば、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの架橋ポリマー材料は、シリコーンを含まない疎水性ビニルモノマーの単位、非シリコーンビニル架橋剤の単位、UV吸収ビニルモノマーの単位、またはそれらの組合せをさらに含み得る。
【0083】
好ましい疎水性ビニルモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチル−アクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロ−イソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートが挙げられる。
【0084】
好ましい非シリコーン架橋剤の例としては、限定はされないが、テトラエチレングリコールジ−(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ−(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ−(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ−(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、エチレンジアミンジ−(メタ)アクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、アリル(メタ)アクリレート、N−アリル−(メタ)アクリルアミド、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド、ジアミンの生成物(好ましくは、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、およびそれらの組合せからなる群から選択される)およびエポキシ含有ビニルモノマー(好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される)、それらの組合せが挙げられる。より好ましい架橋剤は、テトラ(エチレングリコール)ジ−(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)ジ−(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ−(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ−(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビス(メタ)アクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0085】
好ましいUV吸収ビニルモノマーの例としては、限定はされないが、2−(2−ヒドロキシ−5−ビニルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−アクリリルオキシ(acrylyloxy)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルアミドメチル−5−tertオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピル−3’−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−1)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−メトキシ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−5)、3−(5−フルオロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−2)、3−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−3)、3−(5−クロロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メトキシベンジルメタクリレート(WL−4)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−3−(5−メチル−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−6)、2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(5−(トリフルオロメチル)−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)ベンジルメタクリレート(WL−7)、4−アリル−2−(5−クロロ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−6−メトキシフェノール(WL−8)、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−5’[3”−(4”−ビニルベンジルオキシ)プロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、フェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−エテニル−(UVAM)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2−プロペン酸、2−メチル−、2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]エチルエステル、Norbloc)、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−[3’−メタクリロイルオキシプロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV13)、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(3’−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−5−トリフルオロメチル−2H−ベンゾトリアゾール(CF−UV13)、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール(UV6)、2−(3−アリル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV9)、2−(2−ヒドロキシ−3−メタリル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(UV12)、2−3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(3”−ジメチルビニルシリルプロポキシ)−2’−ヒドロキシ−フェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール(UV15)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルプロピル−3’−tert−ブチル−フェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV16)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルプロピル−3’−tert−ブチル−フェニル)−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(UV16A)、2−メチルアクリル酸3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]−プロピルエステル(16−100、CAS#96478−15−8)、2−(3−(tert−ブチル)−4−ヒドロキシ−5−(5−メトキシ−2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)フェノキシ)エチルメタクリレート(16−102);フェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−メトキシ−4−(2−プロペン−1−イル)(CAS#1260141−20−5);2−[2−ヒドロキシ−5−[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]−3−tert−ブチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール;フェノール、2−(5−エテニル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−、ホモポリマー(9CI)(CAS#83063−87−0)が挙げられる。
【0086】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、本発明の別の態様である本発明の方法にしたがってレンズ形成組成物から調製され得る。
【0087】
さらなる態様において、本発明は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための方法を提供する。この方法は、室温で、および任意であるが好ましくは約0〜約4℃の温度で透明であるレンズ形成組成物を調製する工程であって、レンズ形成組成物が、(a)約5重量%〜約35重量%の、本発明の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤、(b)シロキサン含有ビニルモノマー、(c)約30重量%〜約60重量%の少なくとも1つの親水性ビニルモノマー、(d)エチレン性不飽和基を含まない親水性ポリマー、および(e)少なくとも1つのラジカル開始剤を含み、ただし、上に列挙された重合性成分および任意のさらなる重合性成分が合計して100重量%になる工程と;レンズ形成組成物を成形型に導入する工程であって、成形型が、コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の成形型半部と、コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の成形型半部とを有し、前記第1および第2の成形型半部は、前記第1および第2の成形面の間に空洞が形成されるように互いを受け入れるように構成される工程と;レンズ成形型中のレンズ形成組成物を熱または化学線により硬化して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する工程であって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約70バーラーの酸素透過性(Dk)、約25重量%〜約70重量%の含水量、約0.2MPa〜約1.2MPaの弾性率、少なくとも約15秒の水破壊時間、および約90°以下の水接触角を有する工程を含む。
【0088】
式(1)(上に定義される)の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤の上述される様々な実施形態は、本発明のこの態様に組み込まれるべきである。
【0089】
シロキサン含有ビニルモノマー、親水性ビニルモノマー、非架橋性親水性ポリマーの上述される様々な実施形態は、本発明のこの態様に組み込まれるべきである。
【0090】
本発明によれば、フリーラジカル開始剤は、熱開始剤または光開始剤であり得る。
【0091】
好適な熱重合開始剤は、当業者に公知であり、例えば、過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ−ビス(アルキル−またはシクロアルキルニトリル)、過硫酸塩、過炭酸塩またはそれらの混合物を含む。例は、過酸化ベンゾイル、tert.−ブチルペルオキシド、ジ−tert.−ブチル−ジペルオキシフタレート、tert.−ブチルヒドロペルオキシド、アゾ−ビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1,1−アゾジイソブチルアミジン、1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾ−ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などである。重合は、高温で、例えば、25〜100℃、好ましくは、40〜80℃の温度で、上記の溶媒中で好都合に行われる。反応時間は、広い限度内で変化し得るが、好都合には、例えば、1〜24時間または好ましくは、2〜12時間である。重合反応に使用される成分および溶媒を予め脱気し、不活性雰囲気下、例えば、窒素またはアルゴン雰囲気下で前記共重合反応を行うのが有利である。
【0092】
好適な光開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびDarocurおよびIrgacurタイプ、好ましくは、Darocur 1173(登録商標)およびDarocur 2959(登録商標)、ゲルマン系ノリッシュI型光開始剤である。ベンゾイルホスフィン開始剤の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド;およびビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。例えば、マクロマーに組み込まれ得るかまたは特殊なモノマーとして使用され得る反応性光開始剤も好適である。反応性光開始剤の例は、欧州特許第632 329号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)に開示されるものである。次に、重合は、好適な波長の化学線、例えば、光、特に紫外光によって引き起こされ得る。スペクトル要件は、必要に応じて、好適な光増感剤の添加によって、状況に応じて制御され得る。
【0093】
紫外線および高エネルギー紫光線(HEVL)を吸収することが可能なビニルモノマーが、本発明に使用される場合、ゲルマン系ノリッシュI型光開始剤および約400〜約550nmの領域の光を含む光源が、フリーラジカル重合を開始させるのに好ましくは使用される。約400〜約550nmの領域の光を含む光源による照射下でフリーラジカル重合を開始させることが可能である限り、任意のゲルマン系ノリッシュI型光開始剤が、本発明に使用され得る。ゲルマン系ノリッシュI型光開始剤の例は、米国特許第7,605,190号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)に記載されるアシルゲルマニウム化合物である。好ましくは、レンズ形成材料のモノマーは、以下のアシルゲルマニウム化合物の少なくとも1つを含む。
【化13】
【0094】
好ましい実施形態において、レンズ形成組成物は、有機溶媒を含む。
【0095】
好適な溶媒の例としては、限定はされないが、水、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸i−プロピル、塩化メチレン、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールおよびエキソノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、tert−ブタノール、tert−アミル、アルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2−2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノールおよび3−エチル−3−ペンタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、t−アミルアルコール、イソプロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリジノン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0096】
別の好ましい実施形態において、レンズ形成組成物は、無溶媒液体混合物であり、C〜C10アルキルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン(TMS)、およびt−ブチルスチレン(TBS)、およびそれらの組合せからなる群から選択される混合ビニルモノマーを含む。好ましくは、混合ビニルモノマーは、メチルメタクリレートである。
【0097】
別の好ましい実施形態において、レンズ形成組成物中に存在する全てのシリコーン含有重合性成分の総量は、約65%以下である。
【0098】
別の好ましい実施形態において、親水性ビニルモノマーは、親水性N−ビニルモノマーであり、好ましくは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、またはそれらの組合せであり、さらにより好ましくは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、またはそれらの組合せである。
【0099】
別の好ましい実施形態において、レンズ形成組成物は、非シリコーンビニル架橋剤をさらに含む。シロキサン含有ビニルモノマー、親水性ビニルモノマーの上述される様々な実施形態は、本発明のこの態様に組み込まれるべきである。使用される非シリコーンビニル架橋剤の量は、全重合性成分に対する重量含量で表され、好ましくは、約0.05%〜約2%の範囲、より好ましくは、約0.1%〜約1.5%の範囲、さらにより好ましくは、約0.15%〜約1.0%の範囲である。
【0100】
本発明によれば、レンズ形成組成物は、当業者に公知であるように、他の成分、例えば、可視性ティント剤(visibility tinting agent)(例えば、染料、顔料、またはそれらの混合物)、抗菌剤(例えば、好ましくは、銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性潤滑剤、浸出性涙液安定剤、およびそれらの混合物をさらに含み得る。
【0101】
コンタクトレンズを作製するためのレンズ成形型は、当業者に周知であり、例えば、注型またはスピンキャストに用いられる。例えば、成形型(注型用)は、一般に、少なくとも2つの成形型部分(もしくは部)または成形型半部、すなわち、第1および第2の成形型半部を含む。第1の成形型半部は、第1の成形(もしくは光学)面を画定し、第2の成形型半部は、第2の成形(もしくは光学)面を画定する。第1および第2の成形型半部は、レンズ形成空洞が、第1の成形面と第2の成形面との間に形成されるように、互いに受け入れるように構成される。成形型半部の成形面は、成形型の空洞形成面であり、レンズ形成材料と直接接触する。
【0102】
コンタクトレンズを注型するための成形型部分を製造する方法は、一般に、当業者に周知である。本発明の方法は、成形型を形成するいずれの特定の方法にも限定されない。実際に、成形型を形成する任意の方法が、本発明に使用され得る。第1および第2の成形型半部は、射出成形または旋盤加工(lathing)などの様々な技術によって形成され得る。成形型半部を形成するための好適な方法の例は、Schadへの米国特許第4,444,711号明細書;Boehmらへの同第4,460,534号明細書;Morrillへの同第5,843,346号明細書;およびBonebergerらへの同第5,894,002号明細書(参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0103】
成形型を作製するための当該技術分野において公知の実質的に全ての材料が、コンタクトレンズを作製するための成形型を作製するのに使用され得る。例えば、ポリマー材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、Topas(登録商標)COCグレード8007−S10(Ticona GmbH(Frankfurt,GermanyおよびSummit,New Jersey)製のエチレンおよびノルボルネンの透明な非晶質コポリマー)などが使用され得る。石英ガラスおよびサファイアなどの、紫外光透過を可能にする他の材料が使用され得る。
【0104】
本発明によれば、レンズ形成配合物(または組成物)は、任意の公知の方法にしたがって成形型によって形成される空洞中に導入(分配)され得る。
【0105】
レンズ形成組成物が成形型中に分配された後、それは、重合されて、コンタクトレンズを製造する。架橋は、熱または化学線により開始され得る。
【0106】
成形品を成形型から取り出すことができるような成形型の開放は、それ自体公知の方法で行われ得る。
【0107】
成形されたコンタクトレンズは、未重合の重合性成分を除去するためにレンズ抽出に供され得る。抽出溶媒は、当業者に公知の任意の溶媒であり得る。好適な抽出溶媒の例は、上述されるものである。好ましくは、水または水溶液が、抽出溶媒として使用される。抽出後、レンズは、水または湿潤剤(例えば、親水性ポリマー)の水溶液中で水和され得る。
【0108】
成形されたコンタクトレンズはさらに、例えば、表面処理、約0.005重量%〜約5重量%の湿潤剤(例えば、当業者に公知の上述される親水性ポリマーなど)および/または粘度増強剤(例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、またはそれらの混合物)を含有し得るパッケージング溶液を含むレンズパッケージ内への包装;少なくとも約30分間にわたる118〜124℃でのオートクレーブなどの滅菌処理などのさらなるプロセスに供され得る。
【0109】
好ましい実施形態において、得られたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、水または水溶液で抽出される。
【0110】
別の好ましい実施形態において、成形型は、再利用可能な成形型であり、レンズ形成組成物は、化学線の空間的制限下で、化学線により硬化(すなわち、重合)されて、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する。好ましい再利用可能な成形型の例は、米国特許第6,627,124号明細書、同第6,800,225号明細書、同第7,384,590号明細書、および同第7,387,759号明細書(全体が、参照により援用される)に開示されるものである。再利用可能な成形型は、石英、ガラス、サファイア、CaF、環状オレフィンコポリマー(例えば、Topas(登録商標)COCグレード8007−S10(Frankfurt,GermanyおよびSummit,New JerseyのTicona GmbH製のエチレンおよびノルボルネンの透明な非晶質コポリマー)、Zeonex(登録商標)およびZeon Chemicals LP(Louisville,KY)製のZeonor(登録商標)など)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、DuPont(Delrin)製のポリオキシメチレン、G.E.Plastics製のUltem(登録商標)(ポリエーテルイミド)、PrimoSpire(登録商標)、およびそれらの組合せで作製され得る。
【0111】
本発明の様々な実施形態が、特定の用語、デバイス、および方法を用いて説明されてきたが、このような説明は、例示のためのものに過ぎない。使用される用語は、限定の用語ではなく説明の用語である。変更および変化が、以下の特許請求の範囲に記載される、本発明の趣旨または範囲から逸脱せずに当業者によってなされ得ることが理解されるべきである。さらに、以下に示されるように、様々な実施形態の態様が、全体的または部分的に交換されてもよく、または任意の方法で組み合わされ得、および/または一緒に使用され得ることが理解されるべきである。
【0112】
1.(1)ジメチルシロキサン単位および親水化シロキサン単位を含むポリジオルガノシロキサンポリマー鎖であって、前記親水化シロキサン単位が1つのメチル置換基および少なくとも2つのカルボキシ基を有する1つの一価C10〜C50有機置換基を有し、ジメチルシロキサン単位に対する親水化シロキサン単位のモル比が、約0.035〜約0.25であるポリジオルガノシロキサンポリマー鎖と;(2)2つの末端(メタ)アクリロイル基とを含む親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤であって、少なくとも約3000ダルトンの平均分子量を有する親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0113】
2.親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤が、式(1)
【化14】

(式中:
υ1が、30〜500の整数であり、ω1が、1〜75の整数であり、ただし、ω1/υ1が、約0.035〜約0.25であり;
が、OまたはNR’であり、ここで、R’が、水素またはC〜C10−アルキルであり;
が、水素またはメチルであり;
およびRが、互いに独立して、置換もしくは非置換C〜C10アルキレン二価基または−R−O−R−の二価基であり、ここで、RおよびRが、互いに独立して、置換もしくは非置換C〜C10アルキレン二価基であり;
が、式(2)
【化15】

の一価基であり、
q1が、0または1であり;
n1が、2〜4の整数であり;
が、水素、メチル、または
【化16】

の基であり;
が、エチルまたは
【化17】

の基であり;
ただし、RおよびRの少なくとも1つが、
【化18】

の基である)
のポリマーである、発明1に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0114】
3.式(1)中、ω1/υ1が、約0.040〜約0.18、さらにより好ましくは、約0.045〜約0.18である、発明2に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0115】
4.親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤が、約4000ダルトン〜約80,000ダルトン、より好ましくは、約5000ダルトン〜約50,000ダルトン、さらにより好ましくは、約6000ダルトン〜約25,000ダルトン、最も好ましくは、約7000ダルトン〜約18,000ダルトンの平均分子量を有する、発明1〜3のいずれか1つに記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0116】
5.式(1)中、XがOである、発明1〜4のいずれか1つに記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0117】
6.式(1)中、XがNR’であり、ここで、R’が、水素またはC〜C10−アルキルである、発明1〜4のいずれか1つに記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0118】
7.Rが、式(2)のものであり、式中、n1が3であり、q1が1であり、Rが水素であり、Rが、
【化19】

の基である、発明1〜6のいずれか1つに記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0119】
8.Rが、式(2)のものであり、式中、n1が3であり、q1が1であり、Rが、
【化20】

の基であり、Rがエチルである、発明7に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0120】
9.Rが、式(2)のものであり、式中、n1が3であり、q1が1であり、RおよびRが、
【化21】

の基である、発明7に記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤。
【0121】
10.発明1〜9のいずれか1つに記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤の単位と;
シロキサン含有ビニルモノマーの単位と;
少なくとも1つの親水性ビニルモノマーの単位と;
架橋ポリマー材料に共有結合されていないが、架橋ポリマー材料内に物理的に取り込まれた親水性ポリマーと
を含む架橋ポリマー材料を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、
完全に水和されるとき、少なくとも約70バーラーの酸素透過性(Dk)、約25重量%〜約70重量%の含水量、約0.2MPa〜約1.2MPaの弾性率、少なくとも約15秒の水破壊時間、および約90°以下の水接触角を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0122】
11.親水性ビニルモノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレート(GMA)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、最大で1500の数平均分子量を有するポリエチレングリコールC〜C−アルキルエーテル(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸、エチルアクリル酸、またはそれらの組合せである、発明10に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0123】
12.親水性ビニルモノマーが、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、またはそれらの組合せである、発明11に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0124】
13.架橋ポリマー材料が、シリコーンを含まない疎水性ビニルモノマーの単位、非シリコーンビニル架橋剤の単位、UV吸収ビニルモノマーの単位、またはそれらの組合せをさらに含む、発明10〜12のいずれか1つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0125】
14.親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、N−ビニルピロリドンのホモポリマー、N−ビニルピロリドンと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドのホモポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、アクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、メタクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ヘパリン多糖類、多糖類、またはそれらの混合物である、発明10〜13のいずれか1つに記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0126】
15.親水性ポリマーの数平均分子量Mが、5,000〜500,000、より好ましくは、10,000〜300,000、さらにより好ましくは、20,000〜100,000である、発明14に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0127】
16.親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニル−N−メチルアセトアミド)、ポリアクリルアミド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、またはそれらの組合せである、発明14または15に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【0128】
17.シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための方法であって、
室温で、および任意であるが好ましくは約0〜約4℃の温度で透明であるレンズ形成組成物を調製する工程であって、レンズ形成組成物が、(a)約5重量%〜約35重量%の、発明1〜9のいずれか1つに記載の親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤、(b)シロキサン含有ビニルモノマー、(c)約30重量%〜約60重量%の少なくとも1つの親水性ビニルモノマー、(d)エチレン性不飽和基を含まない親水性ポリマー、および(e)少なくとも1つのラジカル開始剤を含み、ただし、上に列挙された重合性成分および任意のさらなる重合性成分が合計して100重量%になる工程と;
レンズ形成組成物を成形型に導入する工程であって、成形型が、コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の成形型半部と、コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の成形型半部とを有し、前記第1および第2の成形型半部は、前記第1および第2の成形面の間に空洞が形成されるように互いを受け入れるように構成される工程と;
レンズ成形型中のレンズ形成組成物を熱または化学線により硬化して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する工程であって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、少なくとも約70バーラーの酸素透過性(Dk)、約25重量%〜約70重量%の含水量、約0.2MPa〜約1.2MPaの弾性率、少なくとも約15秒の水破壊時間、および約90°以下の水接触角を有する工程と
を含む方法。
【0129】
18.レンズ形成組成物が、無溶媒液体混合物であり、C〜C10アルキルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン(TMS)、およびt−ブチルスチレン(TBS)、およびそれらの組合せからなる群から選択される混合ビニルモノマー(好ましくは、混合ビニルモノマーは、メチルメタクリレートである)を含む、発明17に記載の方法。
【0130】
19.レンズ形成組成物が、有機溶媒を含む、発明17に記載の方法。
【0131】
20.レンズ形成組成物中に存在する全てのシリコーン含有重合性成分の総量が、約65%以下である、発明17〜19のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
21.親水性ビニルモノマーが、親水性N−ビニルモノマーであり、好ましくは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、またはそれらの組合せであり、さらにより好ましくは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、またはそれらの組合せである、発明17〜20のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
22.親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、N−ビニルピロリドンのホモポリマー、N−ビニルピロリドンと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドのホモポリマー、N−ビニル−N−メチルアセトアミドと1つ以上の親水性ビニルコモノマーとのコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、アクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、メタクリルアミドと1つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ヘパリン多糖類、多糖類、またはそれらの混合物である、発明17〜21のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
23.親水性ポリマーの数平均分子量Mが、5,000〜500,000、より好ましくは、10,000〜300,000、さらにより好ましくは、20,000〜100,000である、発明22に記載の方法。
【0135】
24.親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニル−N−メチルアセトアミド)、ポリアクリルアミド、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、またはそれらの組合せである、発明22または23に記載の方法。
【0136】
25.硬化の工程が、熱的に行われる、発明17〜24のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
上記の開示は、当業者が本発明を実施するのを可能にする。様々な変更、変形、および組合せを、本明細書に記載される様々な実施形態に対して行うことができる。読者が特定の実施形態およびその利点をよりよく理解することができるように、以下の実施例を参照することが提案される。本明細書および実施例は、例示的であると見なされることが意図される。
【実施例】
【0138】
実施例1
酸素透過性測定
規定されない限り、レンズおよびレンズ材料の見掛けの酸素透過性(Dkapp)、見掛けの酸素透過率(Dk/t)、固有の(またはエッジ補正された(edge−corrected))酸素透過性(Dk)が、米国特許出願公開第2012/0026457A1号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)の実施例1に記載される手順にしたがって決定される。
【0139】
イオン透過性測定
レンズのイオン透過性が、米国特許第5,760,100号明細書(全体が、参照により本明細書に援用される)に記載される手順にしたがって測定される。以下の実施例において報告されるイオン透過性の値は、対照材料としてのレンズ材料、Alsaconに対する相対イオノフラックス拡散係数(D/Dref)である。Alsaconは、0.314×10−3mm/分のイオノフラックス拡散係数を有する。
【0140】
潤滑性評価
レンズの潤滑性が、0〜4の摩擦評価尺度でレンズ表面の滑りやすさを定性的に特性評価する指感触(finger−felt)潤滑性試験を使用することによって評価される。摩擦評価が高いほど、滑りやすさ(または潤滑性)が低い。
【0141】
市販のレンズ:DAILIES(登録商標)TOTAL1(登録商標);ACUVUE(登録商標)OASYS(商標);ACUVUE(登録商標)ADVANCE PLUS(商標);DAILIES(登録商標)Aqua Comfort Plus(登録商標);およびAIR OPTIX(登録商標)に、それぞれ0、1、2、3、および4の摩擦評価(以後、「FR」と示される)を割り当てる。それらは、試験されるレンズの摩擦評価を決定するために標準レンズとして使用される。
【0142】
試料を、それぞれ30分間の少なくとも2回のすすぎのためにPBSに入れ、次に、評価の前に新鮮なPBSに移す。評価の前、手をせっけん溶液ですすぎ、脱イオン水でしっかりとすすぎ、次に、KimWipe(登録商標)タオルで拭く。試料に指の間で触れ、上述される上記の標準レンズと比べて各試料に数値を割り当てる。例えば、レンズが、AIR OPTIX(登録商標)レンズよりわずかに良好であると決定される場合、レンズに3の数値を割り当てる。摩擦評価の値は、2人以上によるコンタクトレンズの少なくとも2回の摩擦評価の結果を平均することによって、および/または1人による2つ以上のコンタクトレンズ(レンズ製造の同一のバッチからの)の摩擦評価を平均することによって得られるものである。
【0143】
表面湿潤性試験
コンタクトレンズにおける水接触角(WCA)は、コンタクトレンズの表面湿潤性の一般的な尺度である。特に、低い水接触角は、より湿潤性の表面に対応する。コンタクトレンズの平均接触角(液滴)は、AST,Inc.(Boston,Massachusettsに所在)製のVCA 2500 XE接触角測定デバイスを用いて測定される。この機器は、前進接触角(θ)または後退接触角(θ)または液滴(静的)接触角を測定することが可能である。規定されない限り、水接触角は、液滴(静的)接触角である。測定は、十分に水和されたコンタクトレンズにおいて、以下のように拭き取り乾燥(blot−drying)した直後に行われる。コンタクトレンズを、バイアルから取り出し、レンズ表面から緩く結合された包装添加剤を除去するために、約200mlの新鮮な脱イオン水で3回洗浄する。次に、レンズを、糸くずの出ない清潔な布(Alpha Wipe TX1009)の上に置き、よく拭き取って、表面の水を除去し、接触角測定台に取り付け、乾燥空気を吹き付けて乾燥させ、最後に、液滴接触角を、製造業者によって提供されるソフトウェアを用いて自動的に測定する。接触角を測定するのに使用される脱イオン水は、18MΩcmを超える抵抗率を有し、使用される液滴体積は2μlである。典型的に、コーティングされていないシリコーンヒドロゲルレンズ(オートクレーブ後)は、約120°の液滴接触角を有する。ピンセットおよび台を、イソプロパノールでよく洗浄し、コンタクトレンズと接触させる前に脱イオン水ですすぐ。
【0144】
水破壊時間(WBUT)試験
レンズ(オートクレーブ後)の表面親水性が、水膜がレンズ表面で壊れ始めるのに必要な時間を決定することによって評価される。簡潔には、レンズをバイアルから取り出し、それぞれ30分間の少なくとも2回のすすぎのためにPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に入れ、次に、レンズ表面から緩く結合された包装添加剤を除去するために、新鮮なPBSに移す。レンズを溶液から取り出し、明るい光源に対して保持する。水膜が壊れて(脱水)、下にあるレンズ材料が露出するのに必要な時間を視覚的に観察する。コーティングされていないレンズは、典型的に、PBSから取り出すと直ぐに壊れ、0秒のWBUTを割り当てられる。10秒以上のWBUTを示すレンズは、親水性表面を有すると見なされ、眼における十分な湿潤性(涙液膜を支持する能力)を示すことが予測される。
【0145】
指擦り試験
レンズを、20秒間にわたってRENU(登録商標)多目的レンズケア溶液(または別の多目的レンズケア溶液)とともに(使い捨ての粉なしゴム手袋を着用した)指で擦り、次に、生理食塩水ですすぐ。上記の手順を、所与の回数、例えば、1〜30回(すなわち、洗浄および浸漬サイクルを模倣する指擦り試験の反復回数)繰り返す。
【0146】
実施例2
グリセロールエーテル含有PDMSマクロマーの合成
グリセロールエーテル含有PDMSマクロマーを、スキーム1に示される手順にしたがって調製する。
【化22】
【0147】
前駆体の合成
297.9gのオクタメチルシクロテトラシロキサン(分子量296.62)、12.0gの1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(分子量240.51)、9.7gの1,3−ビス(3−メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン(分子量386.63)、および0.9gのトリフルオロメタンスルホン酸(分子量150.08)を、500mLの丸底フラスコ中で秤量する。反応を35℃で24時間行った後、170mLの0.5%の炭酸水素ナトリウムを加える。収集された有機部分を、脱イオン水(サイクル当たり170mL)で5回さらに抽出する。無水MgSOを、収集された有機溶液に加えた後、約350mLのさらなるCHClを加え、次に、溶液を一晩撹拌する。ろ過の後、溶媒を、ロータリーエバポレータ(Rotovap)、続いて高真空によって除去する。102gの最終生成物(前駆体)が得られる。
【0148】
マクロマーを形成するための3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールとのヒドロシリル化反応
小型の反応器を、加熱器および乾燥管付きの空気冷却機に連結する。21gのトルエン、15gの上記の前駆体、および5.03gの3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールを反応器に加える。溶液温度が30℃で安定した後、152μLのカールシュテット触媒(キシレン中2Pt%)を加える。2時間後、IRに基づいて100%のSi−Hの転化が達成される。次に、溶液をフラスコに移し、ロータリーエバポレータ(Rotovop)を用いて濃縮した後、アセトニトリル/水混合物(75/25)中で3回沈殿させる。ロータリーエバポレータ(Rotovop)、続いて高真空による溶媒の除去の後、12gの濁った液体が得られた。
【0149】
実施例3
スキーム2にしたがって、無水コハク酸を、実施例2において調製されたグリセロールエーテル含有PDMSマクロマーと反応させることによって、好ましい親水化ポリジオルガノシロキサンビニル架橋剤を調製する。
【化23】