(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応槽は、隣接する反応槽同士の組合せにおいて少なくとも1組以上が、当該反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、前記最大液面レベルの高低差により、前記最大液面レベルのより高い反応槽から前記最大液面レベルのより低い反応槽に、前記反応混合物を移動させることを特徴とする請求項1に記載の芳香族重合体の連続製造方法。
前記反応槽は、各前記反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、前記最大液面レベルの高低差により、前記順番に従って、前記最大液面レベルのより高い反応槽から当該最大液面レベルのより低い反応槽に、前記反応混合物を順次移動させる請求項1または2に記載の芳香族重合体の連続製造方法。
前記反応原料が固体粒状のアルカリ金属塩を含み、前記アルカリ金属塩は平均粒子径100μm以上のアルカリ金属塩を平均粒子径95μm以下に微細化したものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の芳香族重合体の連続製造方法。
前記反応槽は、隣接する反応槽同士の組合せにおいて少なくとも1組以上が、当該反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、前記最大液面レベルの高低差により、前記最大液面レベルのより高い反応槽から前記最大液面レベルのより低い反応槽に、前記反応混合物を移動させることを特徴とする請求項10に記載の芳香族重合体の連続製造装置。
前記反応槽は、各前記反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、前記最大液面レベルの高低差により、前記順番に従って、前記最大液面レベルのより高い反応槽から当該最大液面レベルのより低い反応槽に、前記反応混合物を順次移動させる請求項11に記載の芳香族重合体の連続製造装置。
収容室をさらに備えており、前記複数の反応槽のそれぞれは、回転中心を有する1以上の仕切板を前記収容室内に設けることによって隔てられた反応槽であることを特徴とする請求項10に記載の芳香族重合体の連続製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態1〕
(連続製造装置)
本発明の一実施形態(以下、「実施形態1」という。)に係るエーテル結合またはイミド結合を有する芳香族重合体の製造方法において使用可能な連続製造装置の構成について、
図1に基づいて説明する。
【0013】
図1は、実施形態1に係る芳香族重合体の製造方法において用いることが可能な連続製造装置の構成を示す部分断面図である。
【0014】
図1を参照して説明すると、連続製造装置100は、反応槽1a、1b、1c、1d、1e及び1fを収容する収容室2を備える。収容室2は反応原料供給側から反応混合物回収側に向かって伸びる筒状の槽である。収容室2は反応槽1a、1b、1c、1d、1e及び1fにおける液面が水平になるように設置されている。収容室2の形状としては、特に限定されず、例えば、反応槽1aに接する側壁3a及び反応槽1fに接する側壁3bを底面とする中空円柱形または中空角柱形等が挙げられる。
【0015】
収容室2の側壁3aには、収容室2に反応溶媒を供給する反応溶媒供給ライン4、及び収容室2に反応原料を供給する反応原料供給ライン5が接続されている。収容室2に接続される反応原料供給ライン5の数は、特に限定されておらず、収容室2に1つのみ接続される構成であってもよく、複数接続される構成であってもよい。なお、反応原料供給ライン5は、1つの供給ラインにつき1種類の反応原料を供給する構成となっており、収容室2に複数の反応原料を供給する場合には、収容室2に反応原料供給ライン5が複数接続されている。必要に応じて収容室2に水を供給する水供給ラインを接続してもよい。収容室2の側壁3bには、収容室2から反応混合物を回収する反応混合物回収ライン7が接続されている。反応溶媒及び反応原料は、気相を介して反応槽1aの液相に供給されてもよいし、直接、反応槽1aの液相に供給されてもよい。
【0016】
反応槽1aと反応槽1bとは隔壁8aによって隔てられている。また、反応槽1bと反応槽1cとは隔壁8bによって隔てられている。また、反応槽1cと反応槽1dとは隔壁8cによって隔てられている。また、反応槽1dと反応槽1eとは隔壁8dによって隔てられている。また、反応槽1eと反応槽1fとは隔壁8eによって隔てられている。反応槽1a、反応槽1b、反応槽1c、反応槽1d、反応槽1e、及び反応槽1fは、収容室2における気相を介して、互いに連通している。その結果、収容室2における気相の圧力は均一となる。
【0017】
隔壁8aの寸法、隔壁8bの寸法、隔壁8cの寸法、隔壁8dの寸法及び隔壁8eの寸法はそれぞれ異なっており、隔壁8a、隔壁8b、隔壁8c、隔壁8d及び隔壁8eの順番で高い。そのため、収納し得る液体の最大液面レベルは、反応槽1a、反応槽1b、反応槽1c、反応槽1d、反応槽1e、及び反応槽1fの順番で高い。反応槽1a、反応槽1b、反応槽1c、反応槽1d、反応槽1e、及び反応槽1fは、上記順番で直列に接続されている。これにより、反応槽1bから反応槽1aへの逆流、反応槽1cから反応槽1bへの逆流、反応槽1dから反応槽1cへの逆流、反応槽1eから反応槽1dへの逆流、及び反応槽1fから反応槽1eへの逆流が防止される。反応槽1a、反応槽1b、反応槽1c、反応槽1d、反応槽1e、及び反応槽1fは、それぞれ反応混合物9a、反応混合物9b、反応混合物9c、反応混合物9d、反応混合物9e、及び、反応混合物9fを収容し得る。例えば、反応槽1a中の原料混合物は、隔壁8aを乗り越えて反応槽1bへと移動する。
【0018】
このように、本発明に係る連続製造装置の好ましい一実施形態において、反応槽は、隣接する反応槽同士の組み合わせにおいて少なくとも1組以上が、反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で接続され、反応混合物は、最大液面レベルの高低差により、最大液面レベルのより高い反応槽から最大レベルのより低い反応槽に移動する構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、液面レベルの差と重力とに従って反応混合物が移動するため、反応混合物を次の反応槽へ移動させるために別途手段を設ける必要がない。なお、反応槽1a〜1fの底面積が同一である場合、反応槽1a、反応槽1b、反応槽1c、反応槽1d、反応槽1e、及び反応槽1fの順に、収容し得る反応混合物の量が減る。
【0020】
収容室2においては、反応槽1a中の反応混合物9aを撹拌する撹拌翼10a、反応槽1b中の反応混合物9bを撹拌する撹拌翼10b、反応槽1c中の反応混合物9cを撹拌する撹拌翼10c、反応槽1d中の反応混合物9dを撹拌する撹拌翼10d、反応槽1e中の反応混合物9eを撹拌する撹拌翼10e、及び、反応槽1f中の反応混合物9fを撹拌する撹拌翼10fが同一の撹拌軸11に設置されている。撹拌軸11は、収容室2外から側壁3aを貫き、側壁3bに達するように設置されている。撹拌軸11の側壁3a側の末端には、撹拌軸11を回転させる回転駆動装置12が設置されている。
【0021】
連続製造装置100を用いて行われる芳香族重合体の製造では、後述するように重縮合反応が脱塩重縮合反応である場合、反応が進むと塩が析出するものがある。析出した塩は反応槽1a〜1fの底面全体に蓄積しやすいことから、撹拌翼10a〜10fによる撹拌が十分に行われることが特に好ましい。析出した塩が堆積しないように、撹拌翼10a〜10fによる撹拌が十分に行われるためには、撹拌翼10a〜10fの幅は広いことが好ましく、例えば、反応槽1a〜1fの幅の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上である。ここで、撹拌翼の幅とは、反応混合物が移動する方向、すなわち、反応槽1aから1fに向かう方向における各撹拌翼の長さをいう。また、撹拌翼の位置は、析出した塩が堆積し流動しなくならないように配置する。撹拌翼10a〜10fの全部または一部は、撹拌に大きな偏りが生じにくい点等から、各反応槽の中央に位置してもよい。
【0022】
収容室2の側壁3a近傍には、排気ライン13の一端が接続されている。排気ライン13の他端には、収容室2における気相からの脱水を行う脱水部14が接続されている。脱水部14は、排気ライン13を通じて収容室2における気相と連通している。脱水部14の一端(例えば、下部)には、反応溶媒回収ライン15が接続されている。脱水部14の他端(例えば、上部)には、蒸気回収ライン16の一端が接続されている。蒸気回収ライン16の他端には、気液分離部17が接続されている。気液分離部17の一端(例えば、上部)から分岐した気体回収ライン18の他端には反応原料分離回収部19が接続されている。反応原料分離回収部19からは、廃ガスライン20と反応原料再供給ライン21とが分岐し、反応原料再供給ライン21には、反応原料分離回収部19において分離回収した反応原料の少なくとも一部を反応槽1a〜1fの少なくとも一部に再供給する反応原料再供給部22が接続されている。一方、気液分離部17の他端(例えば、下部)から分岐した液体回収ライン23の他端には反応原料分離回収部24が接続されている。反応原料分離回収部24からは、廃水ライン25と反応原料再供給ライン26とが分岐し、反応原料再供給ライン26には、反応原料分離回収部24において分離回収した反応原料の少なくとも一部を反応槽1a〜1fの少なくとも一部に再供給する反応原料再供給部27が接続されている。反応原料の少なくとも一部は、気相を介して反応槽1a〜1fの少なくとも一部の液相に供給されてもよいし、直接、反応槽1a〜1fの少なくとも一部の液相に供給されてもよい。なお、場合により、気液分離部17、気体回収ライン18、反応原料分離回収部19、廃ガスライン20、原料再供給ライン21、反応原料再供給部22、液体回収ライン23、反応原料分離回収部24、廃水ライン25、反応原料再供給ライン26、及び反応原料再供給部27の少なくとも1つを省くことができる。
【0023】
収容室2の側壁3bには、収容室2における気相と連通し、反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、即ち、反応槽1fから反応槽1aに向けて、該気相に不活性ガスを送り込む送気部28が、送気ライン29を介して接続されている。不活性ガスとしては、特に限定されず、例えば、アルゴン等の希ガス;窒素等が挙げられる。
【0024】
次に、
図1に基づき、実施形態1の動作を説明する。
【0025】
収容室2には、反応溶媒及び反応原料が、それぞれ反応溶媒供給ライン4及び反応原料供給ライン5を通じて供給される。なお、原料の一部または全部を予め混合してから収容室2に供給してもよい。例えば、反応溶媒と反応原料との混合物を予め調製し、この混合物を収容室2に供給してもよい。この場合、例えば、反応溶媒供給ライン4及び反応原料供給ライン5に代えて、混合物供給ライン4a(図示せず)を側壁3aに接続させ、混合物供給ライン4aを通じて収容室2に上記混合物を供給することができる。この混合物が水を含む場合には少なくともその一部を脱水してから用いてもよい。
【0026】
供給された反応溶媒及び反応原料は、反応槽1aにおいて混合され、反応溶媒中で、反応原料の重縮合反応が行われることにより、反応混合物9aが形成される。なお、場合によっては、反応槽1aにおいては重合反応が実質的に進行せず、反応槽1b以降で重合反応が進行する構成であってもよい。ここで、連続製造装置100で製造される芳香族重合体は、重縮合反応によりエーテル結合またはイミド結合が形成される芳香族重合体である。なお、この芳香族重合体には、重縮合反応により形成されるエーテル結合またはイミド結合に加えて、反応原料に由来するエーテル結合またはイミド結合を含んでいてもよい。
【0027】
反応混合物9aの高さが反応槽1aの最大液面レベルを超えると、隔壁8aを超えて、反応混合物9aが反応槽1bに流れ込む。反応槽1bでは、反応槽1aと同様に、前記反応溶媒中で、反応原料の重縮合反応が行われることにより、反応混合物9bが形成される。更に、反応混合物9bの高さが反応槽1bの最大液面レベルを超えると、隔壁8bを超えて、反応混合物9bが反応槽1cに流れ込む。反応槽1cでは、反応槽1a及び1bと同様に、反応溶媒中で、反応原料の重縮合反応が行われることにより、反応混合物9cが形成される。更に、反応混合物9cの高さが反応槽1cの最大液面レベルを超えると、隔壁8cを超えて、反応混合物9cが反応槽1dに流れ込む。反応槽1dでは、反応槽1a、1b及び1cと同様に、反応溶媒中で、反応原料の重縮合反応が行われることにより、反応混合物9dが形成される。更に、反応混合物9dの高さが反応槽1dの最大液面レベルを超えると、隔壁8dを超えて、反応混合物9dが反応槽1eに流れ込む。反応槽1eでは、反応槽1a、1b、1c及び1dと同様に、反応溶媒中で、反応原料の重縮合反応が行われることにより、反応混合物9eが形成される。更に、反応混合物9eの高さが反応槽1eの最大液面レベルを超えると、隔壁8eを超えて、反応混合物9eが反応槽1fに流れ込む。反応槽1fでは、反応槽1a、1b、1c、1d及び1eと同様に、反応溶媒中で、反応原料の重縮合反応が行われることにより、反応混合物9fが形成される。最後に、反応混合物9fの高さが反応槽1fの最大液面レベルを超えると、反応混合物回収ライン7を通じて、反応混合物9fが回収される。回収された反応混合物9fに対して、適宜、精製操作または追加の重縮合反応等を行って、芳香族重合体を得ることができる。なお、反応槽1fの最大液面レベルは、例えば、側壁3bにおける反応混合物回収ライン7の接続位置によって決まる。このように、反応槽1a〜1fにおける最大液面レベルの高低差により、反応混合物は、反応槽1a、1b、1c、1d、1e及び1fの順に、最大液面レベルのより高い反応槽から最大液面レベルのより低い反応槽に順次移動する。最大液面レベルの高低差を利用して反応混合物を順次移動させることにより、重力を利用して反応混合物を移動させるので、多大なエネルギーが不要である。よって、省資源化、省エネルギー化、設備コスト削減等を図りやすい。なお、反応混合物9a、反応混合物9b、反応混合物9c、反応混合物9d及び反応混合物9eが最大液面レベルを超えたときに、それぞれ隔壁8a、隔壁8b、隔壁8c、隔壁8d及び隔壁8eを超えることができ、また、反応槽1a、反応槽1b、反応槽1c、反応槽1d、反応槽1e、及び反応槽1fが、収容室2における気相を介して、互いに連通することを妨げない限り、隔壁8a、隔壁8b、隔壁8c、隔壁8d及び隔壁8eの形状は、特に限定されず、任意の形状であってよい。また、隔壁の開口部、例えば貫通口またはスリット(いずれも図示せず)により、反応液が移動してもよい。
【0028】
排気ライン13を通じて脱水部14の作用(詳細は後述する。)により、収容室2内の水の少なくとも一部が、収容室2における気相を介して、収容室2から除去される。収容室2内の水としては、例えば、収容室2に供給した水、重縮合反応で生成した水等が挙げられる。ここで、収容室2に供給した水とは、例えば、積極的に収容室2に供給した水、及び、積極的に水を収容室2に供給していない場合には、通常、反応原料に含まれた状態で反応原料とともに収容室2に供給された水を指す。水は蒸気圧が高いため、収容室2の気相に水分が多く含まれると、収容室2内が高圧となりやすく、収容室2の耐圧化が必要となるため、省資源化、設備コスト削減等を図りにくい。脱水部14による脱水方法として、加熱による脱水および減圧による脱水等が挙げられる。脱水部14により脱水を行い、収容室2内を低圧化することで、省資源化、設備コスト削減等を効果的に実現することができる。
【0029】
収容室2内の圧力は、供給される溶媒が沸騰しない圧力まで低下させ得る範囲であれば特に限定されるものではなく、負のゲージ圧とすることも可能であるが、エネルギーコスト、溶媒の沸点低下の観点から、ゲージ圧0MPaまで低くすることができる。例えば、0.0001MPaG以上、0.8MPaG以下であることが好ましく、0.01MPaG以上、0.65MPaG以下であることがより好ましく、0.02MPaG以上、0.39MPaG以下であることがさらに好ましく、0.03MPaG以上、0.37MPaG以下であることが特に好ましい。
【0030】
収容室2には、反応槽1a〜1fの温度を個別に制御する、昇温手段等の温度制御装置(図示せず)を備えていてもよい。温度制御装置を備えることによって、安定した重合を行える等の効果を奏する。
【0031】
反応槽1a〜1fは、収容室2における気相を介して、互いに連通しており、収容室2における気相の圧力は均一であることから、脱水部14により、反応槽1a〜1fのいずれからも水が除去され得るため、反応槽1aから反応槽1fに向かうほど、即ち、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応混合物中の水の量が少なくなる。その結果、水による反応阻害が抑制され、重縮合反応が促進される。また、反応混合物の沸点が上昇するため、高温での重合が可能となり、更に重縮合反応を促進できる。そして、上述の重縮合反応促進により、反応混合物の温度が上昇しやすくなり、更に重縮合反応が促進されやすくなる。以上の通り、連続製造装置100では、例えば、上述の通りに各部を配置し、連続反応を行うこと全体を通じて、前記移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応槽1a〜1fの温度を上昇させる手段を備えることができる。
【0032】
送気部28により、反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、即ち、反応槽1fから反応槽1aに向けて、収容室2における気相に不活性ガスが送り込まれる。上述の通りに、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応混合物中の水の量が少なくなる状態を保つためには、反応混合物から蒸発した水分が上記下流側に流れて、反応混合物上で凝縮しないようにすることが好ましい。送気部28により上記の通り上記気相に不活性ガスを送り込むことにより、水蒸気が上記下流側に流れて反応混合物上で凝縮するのを効果的に防止することができる。
【0033】
不活性ガスの流速としては、水蒸気が上記下流側に流れにくくなる範囲である限り、特に限定されない。例えば、収容室2が側壁3a及び側壁3bを底面とする内半径rの中空円柱形である場合、不活性ガスの流速をu、不活性ガスの体積流量をFとすると、u=F/(πr
2)と表される。ここで、水蒸気が上記下流側に流れにくくなる場合には、テーラー分散が成立している、即ち、分子拡散支配から対流拡散支配になっていると考えると、テーラー分散が成立する条件として、r・u≫D(但し、Dは水蒸気の拡散係数)が成り立つ。以上から、不活性ガスの流速としては、例えば、F≫D・πr、より具体的にはF>10D・πr、好ましくはF>25D・πr、より好ましくはF>50D・πrが成り立つような範囲の値が挙げられる。なお、収容室2が側壁3a及び側壁3bを底面とし、反応混合物の移動方向に垂直な断面が任意形状を有する中空柱形状である場合には、反応混合物の移動方向に垂直な方向における代表的な長さ、例えば、任意形状である断面の円相当半径をrとして、上記の式を適用することができる。
【0034】
回転駆動装置12により撹拌軸11が回転し、それに伴い、撹拌軸11に設置された撹拌翼10a〜10fが撹拌軸11の周りを回転して、反応混合物9a〜9fが撹拌される。撹拌翼10a〜10fは同一の撹拌軸11に設置されているため、回転駆動装置12により撹拌軸11を回転させるだけで、撹拌翼10a〜10fの全てを同じ条件で回転させ、均質な撹拌を高い効率で実現することができる。重縮合反応が脱塩重縮合である場合、重縮合反応が進むと、塩が析出し、反応槽1a〜1fに蓄積する。その結果、例えば、反応槽1a〜1fにおいて十分な重縮合反応を進行させるのに有効な体積が減少し、生産性の低下等が生じやすいため、蓄積した塩を除去するための余計なメンテナンス作業が発生してしまう。撹拌翼10a〜10fにより反応混合物9a〜9fを撹拌することにより、塩が反応混合物9a〜9f中に分散して、下流側の反応槽に移動し、収容室2外に排出することが容易となる。一方で、撹拌が激しすぎると、反応混合物は、隔壁8a、隔壁8b、隔壁8c、隔壁8dまたは隔壁8eを超えて、上流側の反応槽から下流側の反応槽へ不必要に混入しやすい。塩の分散を促進し、反応槽間での反応混合物の不必要な混入を回避できるよう、適宜、撹拌翼の形状、枚数、回転数等を調整することが好ましい。このうち、撹拌翼の回転数としては、例えば、塩が沈降しない条件、より具体的には、撹拌翼による撹拌速度が粒子浮遊限界撹拌速度以上となるような回転数が挙げられる。なお、撹拌翼の先端における回転速度の上限は、反応混合物が隔壁8a、隔壁8b、隔壁8c、隔壁8d及び隔壁8eを超えるのを防ぎやすい点で、撹拌翼の回転数が120rpm以下となるような速度が好ましく、60rpm以下となるような速度がより好ましい。また、撹拌が十分に行われるように、撹拌翼の回転経路等も、適宜、調整することが好ましい。例えば、撹拌翼は、少なくとも、その撹拌翼が撹拌する反応槽の液の深さの平均値の1/2よりも深い部分を通過することが好ましい。特に、反応槽1a〜1fの各々の最深部周辺で撹拌が十分に行われ、塩が堆積しないように、撹拌翼10aと反応槽1aの底部との間隙、撹拌翼10aと隔壁8aとの間隙、撹拌翼10bと反応槽1bの底部との間隙、撹拌翼10bと隔壁8bとの間隙、撹拌翼10cと反応槽1cの底部との間隙、撹拌翼10cと隔壁8cとの間隙、撹拌翼10dと反応槽1dの底部との間隙、撹拌翼10dと隔壁8dとの間隙、撹拌翼10eと反応槽1eの底部との間隙、撹拌翼10eと隔壁8eとの間隙、撹拌翼10fと反応槽1fの底部との間隙、撹拌翼10fと側壁3bとの間隙の大きさを小さくすることが好ましい。
【0035】
脱水部14には、収容室2からの排気が排気ライン13を通じて供給される。脱水部14は、例えば、蒸留塔として作用し、一端(例えば、下部)からは、反応溶媒を主成分とする液体が回収され、他端(例えば、上部)からは、反応原料及び水を含む蒸気が回収される。
【0036】
脱水部14から回収された反応溶媒は、適宜、精製等を経て、重縮合反応の原料として、再度、収容室2に供給してもよい。その際、収容室2への供給は、反応溶媒供給ライン4を通じて行ってもよいし、反応溶媒供給ライン4以外の反応溶媒供給ラインを通じて行ってもよい。供給先は、反応槽1a〜1fのいずれか1つでもよいし、これらの2以上の組み合わせでもよい。
【0037】
脱水部14の他端から回収された蒸気は、蒸気回収ライン16を介して、気液分離部17に供給される。気液分離部17は、例えば、蒸留塔として作用し、一端(例えば、上部)からは、気体が回収され、他端(例えば、下部)から、水を含む液体が回収される。
【0038】
気液分離部17の一端から回収された気体は、気体回収ライン18を介して、反応原料分離回収部19に供給される。反応原料分離回収部19では、反応原料の一部が分離回収され、反応原料再供給ライン21を介して、反応原料再供給部22に送られる。一方、残りの気体は、廃ガスとして廃ガスライン20を介して廃棄される。
【0039】
反応原料分離回収部19により気体として分離回収した一部の反応原料が、反応原料再供給部22により反応槽1a〜1fの少なくとも一部に再供給される。その際、反応槽1aへの再供給は、反応原料供給ライン5を通じて行ってもよいし、反応原料供給ライン5以外の反応原料供給ラインを通じて行ってもよい。反応原料の少なくとも一部の再供給により、反応原料が有効利用され、省資源化を図ることができる。
【0040】
気液分離部17から回収された液体は、液体回収ライン23を介して、反応原料分離回収部24に供給される。反応原料分離回収部24では、回収した液体から一部の反応原料が分離回収され、反応原料再供給ライン26を介して、反応原料再供給部27に送られる。一方、残りの液体は、廃水として廃水ライン25を介して廃棄される。
【0041】
反応原料分離回収部24により分離回収した一部の反応原料が、反応原料再供給部27により反応槽1a〜1fの少なくとも一部に再供給される。その際、反応槽1aへの再供給は、反応原料供給ライン5を通じて行ってもよいし、反応原料供給ライン5以外の反応原料供給ラインを通じて行ってもよい。少なくとも一部の反応原料の再供給により、反応原料が有効利用され、省資源化を図ることができる。
【0042】
実施形態1における撹拌軸11は単軸の場合を示しているが、2軸または3軸以上の多軸であってもよい。
【0043】
また、実施形態1に記載の反応槽1aでは、脱水のみを行ってもよい。
【0044】
さらに、本明細書において「順次接続」とは、好ましくはすべて直列に接続されていることを意味するが、一部並列であってもよい。
【0045】
上記の通り、連続製造装置100は、複数の重合缶を必要としないため、複数の重合缶間の配管、移送設備、及び計装類等が不要である。また、連続製造装置100の駆動には、最大液面レベルの高低差等に基づき、重力を利用して反応混合物の移動等を行っており、多大なエネルギーが不要である。よって、連続製造装置100は、省資源化、省エネルギー化、設備コスト削減等を図りやすい。
【0046】
(連続製造方法)
次に、上述の連続製造装置100を用いて行われる連続重合方法について説明する。
【0047】
本実施形態における連続重合方法は、エーテル結合またはイミド結合を有する芳香族重合体の連続製造方法であって、重縮合反応によりエーテル結合またはイミド結合が形成される芳香族重合体の重合に関するものである。なお、この芳香族重合体には、重縮合反応により形成されるエーテル結合またはイミド結合に加えて、反応原料に由来するエーテル結合またはイミド結合を含んでいてもよい。
【0048】
従来技術に対する改良効果が大きい点で、重縮合反応は、エーテル結合が形成される脱塩重縮合反応である重合体の製造に、本実施形態における連続重合方法を採用することが好ましい。
【0049】
また、反応槽は、隣接する反応槽同士の組合せにおいて少なくとも1組以上が、当該反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、最大液面レベルの高低差により、最大液面レベルのより高い反応槽から最大液面レベルのより低い反応槽に、反応混合物を移動させることが好ましい。この構成によれば、液面レベルの差と重力とに従って反応混合物が移動するため、反応混合物を次の反応槽へ移動させるために別途手段を設ける必要がなく、簡素な装置構成を実現することができる。
【0050】
重縮合反応によりエーテル結合が形成される芳香族重合体には、芳香族環とエーテル結合とからなる芳香族重合体のほかに、これらの基に加えて、スルホン基、ケトン基及び窒素原子を含む基から選ばれる少なくとの一つの基を含むものも包含する。例えば、芳香族環及びエーテル結合に加えてさらに、スルホン基を有するポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーエルスルホン(PES)に代表される芳香族ポリスルホンを挙げることができる。また、芳香族環及びエーテル結合に加えてさらに、ケトン基を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)を挙げることができる。具体的には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)を挙げることができる。
【0051】
窒素原子を含む芳香族重合体としては、芳香族環及びエーテル結合に加えてさらに、窒素を含む基が芳香族環に結合する芳香族重合体を挙げることができる。具体的にはニトリル基を有するポリエーテルニトリル(PEN)を挙げることができる。
【0052】
上記において、重合体中に上述の複数の基が共存する場合は、モル含有比率の最も高い基に対応する芳香族重合体に分類する。
【0053】
本発明の方法による製造上の容易さ等から、芳香族ポリエーテルが好ましく、ポリアリーレンスルフィド、芳香族ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトンおよびポリエーテルニトリルがさらに好ましい。
【0054】
上述のエーテル結合を有する芳香族重合体を得るための重合反応は、典型的には脱塩重縮合反応である。
【0055】
本発明における芳香族ポリスルホンは、塩基及び重合溶媒存在下、芳香族ジハロゲノスルホン化合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物を重縮合反応させることにより、製造することができる。本発明において、芳香族ポリスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)と、スルホニル基(−SO
2−)と、酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。当該芳香族ポリスルホンは、例えば、特開2013−159641号公報に記載される原材料を用いて製造することができる。
【0056】
即ち、芳香族ジハロゲノスルホン化合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物は、芳香族ポリスルホンを構成する繰返し単位に対応するものである。そして、芳香族ジハロゲノスルホン化合物は、一分子中に芳香環と、スルホニル基(−SO
2−)と、2個のハロゲノ基とを有する化合物であればよい。また、芳香族ジヒドロキシ化合物は、一分子中に芳香環と、2個のヒドロキシル基とを有する化合物であればよい。
【0057】
芳香族ジハロゲノスルホン化合物としては、例えば、ビス(4−クロロフェニル)スルホン(ジクロロジフェニルスルホン)及び4,4’−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニルが挙げられる。
【0058】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン及びビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド及びビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、フェニルヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び4,4’−ジヒドロキシ−p−クオターフェニルが挙げられる。本発明においては、芳香族ジハロゲノスルホン化合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物の全部または一部に代えて、4−ヒドロキシ−4’−(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル等の、分子中にハロゲノ基及びヒドロキシル基を有する化合物を用いることもできる。
【0059】
本発明においては、目的とする芳香族ポリスルホンの種類に応じて、芳香族ジハロゲノスルホン化合物及び芳香族ジヒドロキシ化合物は、いずれも、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
塩基としては、芳香族ジヒドロキシ化合物のヒドロキシル基を活性化できるものであればよく、なかでもアルカリ金属塩であることが好ましく、炭酸のアルカリ金属塩であることがより好ましい。
【0061】
炭酸のアルカリ金属塩としては、正塩である炭酸アルカリであってもよいし、酸性塩である重炭酸アルカリ(炭酸水素アルカリ)であってもよいし、正塩及び酸性塩の混合物であってもよい。炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく、重炭酸アルカリとしては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましい。
【0062】
本発明において、塩基は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基の組み合わせとしては、特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができる。
【0063】
重縮合反応は、所定の分子量を容易に制御できるように、前記モル比を調整する。
【0064】
本発明においては、重縮合反応させるときに、価数がn(nは1以上の整数である)の塩基を1種以上配合し、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対する塩基のモル数を、塩基の種類ごとにn/2倍した値の合計値が、好ましくは0.95〜1.15、より好ましくは1.00〜1.10となるように調整するとよい。nは、例えば、塩基が炭酸カリウムの場合には2であり、塩基が炭酸水素カリウムの場合には1である。
【0065】
本発明におけるPAEKは、特に制限なく、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とカルボニル結合及びエーテル結合を含む繰り返し単位からなる構造を有する。
【0066】
本発明におけるPAEKは、例えば、特公昭61−10486、特開平7−138360号公報、WO2003−050163号公報、特開2010−70657号公報、特表2014−532109号公報に記載される原材料を用いて製造することができる。
【0067】
即ち、従来公知の原料モノマーとして芳香族ジハライド化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物を用い、重合溶媒中、これらを該芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノラート型の塩を形成可能な塩基性のアルカリ金属化合物であるアルカリ金属炭酸塩やアルカリ金属炭酸水素塩あるいはアルカリ金属水酸化物と共に脱塩重縮合することによって製造する。
【0068】
芳香族ジハライド化合物としては、例えば、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンなどを例示することができるが、これらに限定されない。
【0069】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシン)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ハイドロキノン)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(4,4’−ビフェノール)、4,4’−ジヒドロキシターフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−テトラフェニルビスフェノールなどを例示することができるが、これらに限定されるものではなく、これらの他にも例えばビスフェノールA等の各種のジフェノール類が使用可能である。
【0070】
PAEKの重合温度は、100℃超、320℃以下であることが好ましく、150℃以上、300℃以下であることがより好ましく、170℃以上、280℃以下であることがさらに好ましい。重合温度は加圧条件下での温度である。
【0071】
重合工程において、ゲージ圧が0MPaを上回り、1.0MPa以下、好ましくは0.7MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である反応容器内で行うことが好ましい。
【0072】
PAEK反応混合物を回収するとき、重合溶媒に対する原料モノマーの質量比を制御することにより、スラリー状態で回収することが好ましい。原料モノマー/重合溶媒の質量比は、重合溶媒100質量部に対して、原料モノマーが通常1〜25質量部、好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。原料モノマー/重合溶媒の質量比が上述の範囲になるように、重合反応途中から回収までに、好ましくは重合反応終了後から回収までに溶媒を供給してもよい。重合溶媒に対する原料モノマーの質量比を上述の範囲で制御することによって、従来問題であった反応混合物回収時における反応混合物の固化の問題を解消できる。また、重合物の洗浄および溶媒等の回収またはリサイクルが容易となる。
【0073】
本発明におけるPENは、特に制限なく、シアノ基が結合した2価の芳香族基(シアノ基が結合した芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とエーテル結合を含む繰り返し単位からなる構造を有する。
【0074】
PENは、例えば、特開平7−138360号公報に記載される方法で得られる。
【0075】
即ち、本発明におけるPENは、従来公知の原料モノマーとして芳香族ジハライド化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物を用い、重合溶媒中、これらを該芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノラート型の塩を形成可能な塩基性のアルカリ金属化合物であるアルカリ金属炭酸塩やアルカリ金属炭酸水素塩あるいはアルカリ金属水酸化物と共に脱塩重縮合することによって製造する。
【0076】
芳香族ジハライド化合物としては、例えば、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリルなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明において脱塩重縮合のアルカリ金属化合物としては、前記反応に供する芳香族ジヒドロキシ化合物をアルカリ金属塩に変えることができるものである。ここで、アルカリ金属化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムあるいはセシウムの炭酸塩、炭酸水素塩あるいは水酸化物などを挙げることができる。アルカリ金属化合物としては、これらの中でも、通常、ナトリウム又はカリウムの化合物が好ましく、また、アルカリ金属の炭酸塩が好ましい。すなわち、アルカリ金属化合物としては、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムが、特に、好ましい。なお、これらのアルカリ金属化合物は、1種のみを用いてもよく、場合に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよく、混合物として用いてもよい。アルカリ金属化合物の使用量は、使用する芳香族ジヒドロキシ化合物1当量に対して、通常、1.01〜2.5当量の範囲に選定するのが適当である。なお、芳香族ジヒドロキシ化合物及びアルカリ金属炭酸塩は、いずれも1モルが2当量に相当し、アルカリ金属炭酸水素塩及び水酸化物は、それぞれ、1モルが1当量に相当する。
【0078】
本発明において脱塩重縮合の重合溶媒としては、室温で液体の溶媒が好ましい。重合溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド等のN,N−ジアルキルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド等のN,N−ジアルキルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキル−2−ピロリドンまたはN−シクロアルキルピロリドン;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N,N’−ジエチルイミダゾリジノン、N,N’−ジプロピルイミダゾリジノン等のN,N’−ジアルキルイミダゾリジノン;N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−プロピルカロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホンおよびジフェニルスルホン等のスルホンならびにこれらの混合物からなる群から選択される混合溶媒などを挙げることができる。スルホン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される重合溶媒を用いることが好ましく、スルホラン、N−エチル−2−ピロリドンおよびN−メチル−2−ピロリドンならびにこれらの混合物からなる群から選択される重合溶媒を用いることがより好ましい。
【0079】
さらには、N−アルキル−2−ピロリドン、N−シクロアルキルピロリドン、N−アルキルカプロラクタム、N,N’−ジアルキルイミダゾリジノン、N−アルキルカプロラクタム、スルホンならびにこれらの混合物からなる群から選択される重合溶媒を用いることが好ましく、特に、N−アルキル−2−ピロリドン、中でもN−メチル−2−ピロリドンが好適に使用される。
【0080】
PAEA反応混合物を回収するとき、重合溶媒に対する原料モノマーの重量比を制御することにより、スラリー状態で回収することが好ましい。
【0081】
原料モノマー/重合溶媒の質量比は、重合溶媒100質量部に対して、原料モノマーが通常1〜25質量部、好ましくは3〜20質量部、更に好ましくは5〜15質量部である。原料モノマー/重合溶媒の質量比をこの範囲にするため、重合反応途中から回収までに、好ましくは重合反応終了後から回収までに溶媒を追加してもよい。この範囲で回収することにより、従来問題であった反応混合物回収時に遭遇する固化の問題を解消できる。また、重合物の洗浄や溶媒等の回収・リサイクルが容易となる。
【0082】
芳香族重合体の製造時に用いられるアルカリ金属塩は、微細な粒径を有する固体粒状物であることが、供給性および反応性から好ましい。具体的には、アルカリ金属塩の平均粒子径は、95μm以下であることが好ましく、より好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは7〜60μm、特に好ましくは10〜30μmである。本明細書において平均粒子径とは、質量平均粒径を意味しており、粒子分析用分析機器を用いて簡便に決定できる。また、ホモジナイザーおよびインパクトミル等一般的に利用される粉砕方法を使用して、得ることができる。
【0083】
また、重縮合反応によりイミド結合が形成される芳香族重合体としては、熱可塑性ポリイミド、例えば三井化学株式会社製オーラム(登録商標)、SABIC IP社製ウルテム(登録商標)等のポリエーテルイミド(PEI)、及びポリアミドイミド(PAI)等を挙げることができる。
【0084】
上述のイミド結合を有する芳香族重合体を得るための重合反応は、典型的には脱水重縮合反応である。
【0085】
なお、本実施形態における連続重合方法においては、連続製造装置100を用いている点で従来の重合方法と異なるものの、重合反応の機構自体は、従来の重合反応と同じである。したがって、重合反応における反応原料及び溶媒、ならびに必要に応じた重合助剤等は従来の反応に用いられているものを挙げることができる。
【0086】
即ち、これら芳香族ポリイミドは、従来公知の原料モノマーとして芳香族ジアミンと芳香族ポリカルボン酸二無水物を用い、重合溶媒中、脱水重縮合することによって製造する。
【0087】
芳香族ジアミン、芳香族ポリカルボン酸二無水物、及び溶媒としては、熱可塑性ポリイミドを形成する場合にはUS5043419公報に記載のものを、PEIを形成する場合には特開昭57−20966号公報に記載のものを、PAIを形成する場合には特公昭56−16171号公報に記載のものを使用できる。
【0088】
なお、例えば、収容室2に供給される反応原料がほとんど無水状態の場合に、反応を促進するために、反応槽1a〜1fの少なくとも一部に水を添加してもよい。
【0089】
本実施形態により得られる芳香族重合体の重量平均分子量(Mw)は広範囲にわたる。通常、本実施形態により得られる芳香族重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量の下限値は、3,000以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上である。また、この重量平均分子量の上限値は300,000以下、好ましくは200,000以下である。
【0090】
〔実施形態2〕
さらに、連続重合装置の他の例について、
図2を用いて説明する。
【0091】
図2を参照して説明すると、連続重合装置300は収容室2内で、反応槽を隔離する隔離手段が、隔壁ではなく、回転中心を有する仕切板である点において、実施形態1と異なる。なお、
図2では、脱水部14に接続されているラインのうち排気ライン13のみを示しているが、他のラインについては実施形態1と同様の構成である。
【0092】
本実施形態では、反応槽1aと反応槽1bとは、仕切板20aによって隔てられ、反応槽1bと反応槽1cとは、仕切板20bによって隔てられている。反応槽1a、反応槽1b及び反応槽1cは、収容室2における気相部を介して、互いに連通している。
【0093】
また、仕切板20aの片面には、反応槽1a中の反応混合物9aを撹拌する撹拌翼10aが取り付けられている。同様に、仕切板20bの片面には、反応槽1b中の反応混合物9bを撹拌する撹拌翼10bが取り付けられている。なお、本実施形態における撹拌翼10a及び10bは、上述の実施形態における撹拌翼10a及び10bと異なり、内側に開口が設けられている構造を有している。
【0094】
撹拌翼10a及び10b並びに仕切板20a及び20bは、いずれも同一の回転軸21に設置されている。回転軸21は、収容室2外から側壁3aを貫き、側壁3bに達するように設置されている。回転軸21の側壁3a側の末端には、回転軸21を回転させる回転駆動装置12が設置されている。
【0095】
なお、撹拌翼は、仕切板に対して任意の位置に設置可能である。仕切板は撹拌翼の上流側であってもよく、下流側であってもよく、またこれらが混在してもよい。仕切板は撹拌翼と離れていても良いが、
図2のように密着して連結させることにより、仕切板の固定及び補強ができるので好ましい。また、撹拌翼と仕切板は必ずしも、一対である必要はなく、隣接する仕切板の間に、撹拌翼が無いところがあってもよい。少なくとも1つの撹拌翼を設けることにより、重合反応の進行を補助すると共に、反応混合物中の固体の移動をよりスムーズにすることができる。あるいは、撹拌翼は設けなくてもよく、これにより、より簡素な装置構成が可能になる。
【0096】
仕切板の形状としては、特に限定されず、回転中心を有し、且つ、収容室2内の鉛直断面を部分的に塞ぐ一方で、隣り合う反応槽が連通するように、所定の幅のクリアランス又は開口部を与える任意の形状であってよい。例えば、収容室2が中空円柱形である場合、
図2に示されるように、収容室の内部空間よりも一回り小さい半径を有する円盤状の仕切板であってよい。なお、仕切板の形状はこれに限定されず、中心軸を有さなくてもよい。仕切り板が中心軸を有さない場合、例えば、隣り合う仕切板が網状部材を介して連結することにより、複数の仕切り板がかご状回転物を形成してもよい。かご状回転物は、外側の仕切り板(最も側壁3b側に位置する仕切り板)に回転軸を備え、該回転軸を回転させることによって、内側の仕切り板に中心軸がなくても、各仕切板を回転させることができる。
【0097】
回転軸上に設けられる仕切板の数は、収容室のサイズや重合反応の種類等に応じて、1以上の任意の数であってよい。
【0098】
仕切板が2枚以上設けられている場合、これらは同一の形状であっても、又はそれぞれ異なっていてもよい。
【0099】
また、各仕切板の位置は、特に限定されず、任意の位置に設けることができる。
【0100】
一方、撹拌翼の形状としては、特に限定されず、仕切板と同軸に設けられ、反応混合物を撹拌する任意の形状であってよい。撹拌翼10は、
図2に示されるように、仕切板20のいずれか一方の面に取り付けられていてもよく、又は、両面に取り付けられていてもよい。又は、仕切板とは別個に、回転軸21上に取り付けられていてもよい。
【0101】
反応槽1a〜1cは、その液相部どうしが互いに連通している。その結果、反応槽1aに供給された原料及び溶媒は、反応混合物として重合反応を進行させながら、反応槽1b及び1cへと順次移動する。
【0102】
また、反応槽1a〜1cは、その気相部どうしも互いに連通している。その結果、収容室2内の気相の圧力は均一となる。そして、各反応槽内で重合時に発生する蒸発成分は、装置内部の温度差等により、この気相部を介して反応槽1cから、1b及び1aの方向へと順次移動し、排気ライン13から排出される。
【0103】
本実施形態における連続重合装置300では、収容室2の内壁と、仕切板20a〜20bのそれぞれの外縁との間には、所定の幅のクリアランスが存在する。これにより、隣接する反応槽の気相部どうし、及び、液相部どうしが連通し、反応混合物、蒸発成分を含む気体等が移動する。なお、クリアランスを設ける代わりに、仕切板に開口部、例えば貫通孔又はスリットを設け、これを介して反応槽を連通させてもよい。又は、クリアランス及び開口部の両方を設けてもよい。あるいは、仕切板は、複数の細かい貫通孔を有するメッシュ状であってもよい。
【0104】
クリアランスの幅又は開口部のサイズは、特に限定されず、容器の形状、仕切板の形状及び数等に応じて適宜に設定することができる。反応容器の内部空間の鉛直断面に占める、クリアランスまたは開口部の断面積の割合は、1〜50%であり、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。クリアランスまたは開口部の断面積の割合が上記範囲であることで、固体を含む反応混合物および揮発成分の逆流を防ぎ、移動を制御することができる。
【0105】
〔実施形態3〕
続いて、上述した実施形態1に示した連続製造装置の他の例について、
図3を用いて説明する。
【0106】
図3を参照して説明すると、連続製造装置200は、第1の反応槽50、第2の反応槽51及び第3の反応槽52を備えている。第2の反応槽51は第1の反応槽50に対して、第3の反応槽52は第2の反応槽51に対して、それぞれ鉛直方向下方に配置されている。
【0107】
第1の反応槽50と第2の反応槽51とは、第1の配管65によって接続されている。また、第2の反応槽51と第3の反応槽52とは、第2の配管67によって接続されている。
【0108】
第1の配管65は、第1の反応槽50中の反応混合物(図示せず)が最大液面レベルを超えたときに、反応混合物が第1の配管65を通って第2の反応槽51に移動するように設けられている。また、第2の配管67は、第2の反応槽51中の反応混合物(図示せず)が最大液面レベルを超えたときに、反応混合物が第2の配管67を通って第3の反応槽52に移動するように設けられている。
【0109】
さらに、第1〜第3の反応槽50〜52のそれぞれは、通気部70が接続されている。通気部70を介して、第1〜第3の反応槽50〜52は気相を介して連通している。これにより、第1〜第3の反応槽50〜52の気相部における圧を均一にすることができる。
【0110】
このような連続製造装置200の構成によって、第1の反応槽50及び第2の反応槽51のそれぞれの最大液面レベルの高低差を利用して反応混合物を順次移動させても、実施形態1と同様の効果が得られる。さらに連続製造装置200によれば、実施形態1に示したような隔壁を設ける必要がない。
【0111】
本実施形態に係る連続製造装置として、簡便さ等の点で、実施形態1または2の連続製造装置が好ましい。
【0112】
[まとめ]
本発明の一実施形態に係る芳香族重合体の連続製造方法は、エーテル結合またはイミド結合を有する芳香族重合体の連続製造方法であって、複数の反応槽を有する連続製造装置に、重合溶媒及び反応原料を供給する工程と、少なくとも一以上の前記反応槽において、前記重合溶媒中で重縮合反応を行うことにより、反応混合物を形成する工程と、各反応槽に、前記反応混合物を順次移動させる工程と、を同時並行して行うことを含み、前記重縮合反応によりエーテル結合またはイミド結合が形成され、前記複数の反応槽の各気相部は互いに連通しており、各気相部の圧力が均一である。
【0113】
本連続製造方法の一実施態様において、前記重縮合反応は、前記エーテル結合が形成される脱塩重縮合反応であることが好ましい。
【0114】
本連続製造方法の一実施態様において、前記反応槽は、隣接する反応槽同士の組合せにおいて少なくとも1組以上が、当該反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、前記最大液面レベルの高低差により、前記最大液面レベルのより高い反応槽から前記最大液面レベルのより低い反応槽に、前記反応混合物を移動させることが好ましい。
【0115】
本連続製造方法の一実施態様において、前記反応槽は、各前記反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、前記最大液面レベルの高低差により、前記順番に従って、前記最大液面レベルのより高い反応槽から当該最大液面レベルのより低い反応槽に、前記反応混合物を順次移動させることが好ましい。
【0116】
本連続製造方法の一実施態様において、前記反応槽の各反応槽が直列に接続されていることが好ましい。
【0117】
本連続製造方法の一実施態様において、前記反応槽の気相部における水の少なくとも一部を、前記反応槽から除去する工程を更に同時並行して行うことが好ましい。
【0118】
本連続製造方法の一実施態様において、前記反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、前記気相に不活性ガスを送り込む工程を更に同時並行して行うことが好ましい。
【0119】
本連続製造方法の一実施態様において、前記反応原料の一部を、前記気相部から分離回収する工程と、分離回収した前記反応原料の少なくとも一部を前記反応槽の少なくとも一部に再供給する工程と、を更に同時並行して行うことが好ましい。
【0120】
本連続製造方法の一実施態様において、前記連続製造装置が収容室を備えており、前記複数の反応槽が、前記収容室内の空間を隔てることにより設けられているであることが好ましい。
【0121】
本連続製造方法の一実施態様において、前記反応原料が固体粒状のアルカリ金属塩を含み、前記アルカリ金属塩は平均粒子径100μm以上のアルカリ金属塩を平均粒子径95μm以下に微細化したものであることが好ましい。
【0122】
また、本発明の一実施形態に係る芳香族重合体の連続製造装置は、重縮合反応によりエーテル結合またはイミド結合が形成される芳香族重合体の連続製造装置であって、複数の反応槽を備えており、少なくとも一以上の前記反応槽において、重合溶媒中で重縮合反応を行うことにより、反応混合物が形成され、前記反応槽は、気相部が互いに連通しており、前記反応槽は、前記反応混合物が各反応槽に順次移動するように、順次接続されている。
【0123】
本連続製造装置の一実施態様において、前記反応槽は、隣接する反応槽同士の組合せにおいて少なくとも1組以上が、当該反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、前記最大液面レベルの高低差により、前記最大液面レベルのより高い反応槽から前記最大液面レベルのより低い反応槽に、前記反応混合物を移動させることが好ましい。
【0124】
本連続製造装置の一実施態様において、前記反応槽は、各前記反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で順次接続されており、前記最大液面レベルの高低差により、前記順番に従って、前記最大液面レベルのより高い反応槽から当該最大液面レベルのより低い反応槽に、前記反応混合物を順次移動させることが好ましい。
【0125】
本連続製造装置の一実施態様において、前記反応槽の各反応槽が直列に接続されていることが好ましい。
【0126】
本連続製造装置の一実施態様において、収容室をさらに備えており、前記複数の反応槽が、前記収容室内の空間を隔てることにより設けられていることが好ましい。
【0127】
本連続製造装置の一実施態様において、隣接する前記反応槽同士は、隔壁によって隔てられており、前記反応混合物の移動方向の最上流の反応槽を除いた各反応槽において、前記移動方向の上流側の隔壁の最小高さは、その反応槽の前記最大液面レベルよりも高いことが好ましい。
【0128】
本連続製造装置の別の実施態様として、収容室をさらに備えており、前記複数の反応槽のそれぞれは、回転中心を有する1以上の仕切板を前記収容室内に設けることによって隔てられた反応槽である態様であり得る。
【0129】
なお、上述の別の実施態様に係る連続製造装置においては、前記回転中心が回転軸であること;前記回転中心が、前記複数の反応槽にまたがる1つの回転軸であり、前記1以上の仕切板が、前記1つの回転軸上に設けられていること;又は、前記仕切板と同じ回転中心を有する撹拌翼をさらに備えることがさらに好ましい。
【0130】
本連続製造装置の一実施態様において、前記反応槽中の前記反応混合物を撹拌する撹拌翼を更に備えることが好ましい。
【0131】
本連続製造装置の一実施態様において、前記撹拌翼が同一の撹拌軸に設置されていることが好ましい。
【0132】
本連続製造装置の一実施態様において、前記収容室における気相と連通し、該気相からの脱水を行う脱水部を更に備えることが好ましい。
【0133】
本連続製造装置の一実施態様において、前記収容室における気相と連通し、前記反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、該気相に不活性ガスを送り込む送気部を更に備えることが好ましい。
【0134】
本連続製造装置の一実施態様において、前記反応槽の温度を個別に制御する昇温手段をさらに備えることが好ましい。
【0135】
本連続製造装置の一実施態様において、反応原料の一部を、前記気相部から分離回収する反応原料分離回収部と、分離回収した前記反応原料の少なくとも一部を前記反応槽の少なくとも一部に再供給する反応原料再供給部と、を更に備えることが好ましい。
【0136】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0137】
重量平均分子量の測定方法:
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、日本分光製のゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)EXTREMAを用いて、以下の条件で測定した。重量平均分子量はポリスチレン換算値として算出した。
溶媒: LiBr0.01M NMP溶液、
温度: 40℃、
検出器: RI検出器、
サンプル注入量: 100μl(濃度:1mg/1ml)、
流速: 1.0ml/分、
標準ポリスチレン: 427,000、96,400、37,900、17,400、及び5,560の5種類の標準ポリスチレン。
【0138】
〔実施例1〕PPSUの製造
図1に示されるような、収容室が5枚の隔壁により仕切られて形成された6個の反応槽を有する連続製造装置を用いて重合反応を実施した。この連続製造装置は、隔壁が半円形であり、内径108mm×長さ300mmの寸法を有するチタン製反応装置であった。
【0139】
この連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)950gを仕込んだ後、上流側から5番目の隔壁の下流側より、窒素ガスを0.1NL/minの流量で流しながら、収容室2の底部に設置した外部ヒーターにより上流側から1番目と2番目の隔壁で区切られた部分、すなわち上流側から第2番目の反応槽の温度1を200℃、上流側から第4番目の反応槽の温度2を210℃に保持した。定常状態において、上流側から第1番目の反応槽の温度3は180℃、上流側から第5番目の反応槽の温度4は210℃であった。供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル(DHBP)、ジクロロジフェニルスルホン(DCPS)及び炭酸カリウムを、6.4g/min(NMP:DCPS(重量比)=760:201.01、DHBP:DCPS(モル比)=1:1、DHBP:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に8時間原料を供給した。
【0140】
なお、混合液中の平均粒子径100μm以上の炭酸カリウムは不溶で凝集しやすく、供給性が悪いため、供給前にホモジナイザーを用いて約10,000rpm/minでスラリー状に粉砕(平均粒子径95μm以下)した。
【0141】
同時に連続製造装置100に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.1MPaに制御しながら、連続的に、反応で生成した水を連続製造装置から除去した。また、反応により生成する二酸化炭素ガスは、蒸留装置及び貯水槽を経由して大気に放出した。
【0142】
運転終了後に反応装置の内部を観察した所、全ての反応槽に堰の溢流レベルまでの反応液の存在を確認した。
【0143】
反応混合物回収ラインから反応物を採取して分析した。当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリフェニルスルホン(PPSU)粉体を得た。このPPSU粉体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは77,500であった。
【0144】
〔実施例2〕PPSUの製造
反応容器本体が、10枚の円盤型仕切板により仕切られて形成された11個の反応槽を有する以外は、
図1に示すのと同様の重合体連続製造装置を用いた。この重合体連続装置において、反応容器本体は、内径108mm×長さ300mmの寸法を有するチタン製反応装置であった。10枚の仕切板はいずれも同一形状であり、径5mmの回転軸上に設けられた。それぞれの仕切板について、反応混合物の移動方向の上流側の面に、
図3に示されるように、2枚のアンカー型撹拌翼を十字に設けた。仕切板の直径は100mmであり、アンカー型撹拌翼の長手軸方向の長さaは90mmであり、短手軸方向の長さbは40mmであった。仕切板を設けた位置において、反応容器の内部空間の鉛直断面に対し、クリアランスの断面積が占める割合は、約14%であった。
【0145】
重合体連続製造装置に、有機アミド溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1700gを仕込んだ後、反応混合物の移動方向の上流側から数えて第11番目の反応槽の下流側から窒素ガスを流しながら、収容室の底部に設置した外部ヒーターにより、上流側から数えて第2番目の反応槽の温度1を200℃、第5番目の反応槽の温度2を210℃に保持した。ここで、窒素ガスの流量は0.1NL/minであり、標準状態において、仕切板のクリアランスを通過する窒素ガス線速度は0.8cm/sであった。
【0146】
各供給ラインより定量ポンプを用いて、NMP、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DHBP)、ジクロロジフェニルスルホン(DCPS)および炭酸カリウムの混合液を13.0g/min(NMP:DCPS(重量比)=760:201.01、DHBP:DCPS(モル比)=1:1、DHBP:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にて、スターラーで撹拌しながら8時間連続的に原料を供給した。なお、混合液中の平均粒子径95μm以上である炭酸カリウムを、供給前にホモジナイザーを用いて約10,000rpm/minでスラリー状に粉砕(平均粒子径95μm以下)した。
【0147】
同時に重合体連続製造装置に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.1MPaに制御しながら、重合体連続製造装置より連続的に水を除去した。また、反応により生成する二酸化炭素ガスは、蒸留装置および貯水槽を経由して大気に放出した。
【0148】
以上の操作を8時間継続した後に得られた反応物を採取して分析した。当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させ濾過した後、さらにメタノールで洗浄・濾過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリフェニルスルホン(PPSU)粉体を得た。このPPSU粉体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは約130,000であった。
【0149】
〔実施例3〕PSUの製造
図1に示されるような、収容室が5枚の隔壁により仕切られて形成された6個の反応槽を有する連続製造装置を用いて重合反応を実施した。この連続製造装置は、隔壁が半円形であり、内径108mm×長さ300mmの寸法を有するチタン製反応装置であった。
【0150】
この連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)950gを仕込んだ後、窒素ガスを上流側から第5番目の隔壁の下流側より0.1NL/minの流量で流しながら、収容室2の底部に設置した外部ヒーターにより上流側から1番目と2番目の隔壁で区切られた部分、すなわち上流側から第2番目の反応槽の温度1を220℃、上流側から第4番目の反応槽の温度2を230℃に保持した。定常状態において、上流側から第1番目の反応槽の温度3は200℃、上流側から第5番目の反応槽の温度4は230℃であった。
【0151】
各供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BHPP)、ジクロロジフェニルスルホン(DCPS)及び炭酸カリウムを、6.4g/min(NMP:DCPS(重量比)=760:201.01、BHPP:DCPS(モル比)=1:1、BHPP:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に8時間原料を供給した。
【0152】
なお、混合液中の平均粒子径95μm以上である炭酸カリウムを、供給前にホモジナイザーを用いて約10,000rpm/minでスラリー状に粉砕(平均粒子径95μm以下)した。
【0153】
同時に連続製造装置100に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.2MPaに制御しながら、連続的に、反応で生成した水を連続製造装置から除去した。また、反応により生成する二酸化炭素ガスは、蒸留装置及び貯水槽を経由して大気に放出した。
【0154】
反応混合物回収ラインから反応物を採取して分析した。当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリスルホン(PSU)粉体を得た。このPSU粉体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは100,000であった。
【0155】
〔実施例4〕PESの製造
図1に示されるような、収容室が5枚の隔壁により仕切られて形成された6個の反応槽を有する連続製造装置を用いて重合反応を実施した。この連続製造装置は、隔壁が半円形であり、内径108mm×長さ300mmの寸法を有するチタン製反応装置であった。
【0156】
この連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)950gを仕込んだ後、窒素ガスを上流側から第5番目の隔壁の下流側より0.1NL/minの流量で流しながら、収容室2の底部に設置した外部ヒーターにより上流側から1番目の隔壁と2番目の隔壁で区切られた部分、すなわち上流側から第2番目の反応槽の温度1を200℃、上流側から第4番目の反応槽の温度2を210℃に保持した。定常状態において、上流側から第1番目の反応槽の温度3は180℃、上流側から第5番目の反応槽の温度4は215℃であった。
【0157】
各供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン(DHDPS)、及びジクロロジフェニルスルホン(DCPS)を、3.6g/min(NMP:DCPS(重量比)=760:201.01、DHDPS:DCPS(モル比)=1:1)の流量、また、NMP、炭酸カリウムを2.8g/min(NMP:炭酸カリウム(重量比)=760:106.41)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に8時間原料を供給した(DHDPS:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)。
【0158】
なお、混合液中の平均粒子径95μm以上である炭酸カリウムを、供給前にホモジナイザーを用いて約10,000rpm/minでスラリー状に粉砕(平均粒子径95μm以下)した。
【0159】
同時に連続製造装置100に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.1MPaに制御しながら、連続的に、反応で生成した水を連続製造装置から除去した。また、反応により生成する二酸化炭素ガスは、蒸留装置及び貯水槽を経由して大気に放出した。
【0160】
運転終了後に反応装置の内部を観察した所、全ての反応槽に堰の溢流レベルまでの反応液の存在を確認した。
【0161】
反応混合物回収ラインから反応物を採取して分析した。当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリエーテルスルホン(PES)粉体を得た。このPES粉体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは9,000であった。
【0162】
〔実施例5〕PEEKの製造
図1に示されるような、収容室が5枚の隔壁により仕切られて形成された6個の反応槽を有する連続製造装置を用いて重合反応を実施した。この連続製造装置は、隔壁が半円形であり、内径108mm×長さ300mmの寸法を有するチタン製反応装置であった。
【0163】
この連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)950gを仕込んだ後、窒素ガスを上流側から第5番目の隔壁の下流側より0.1NL/minの流量で流しながら、収容室2の底部に設置した外部ヒーターにより上流側から1番目の隔壁と2番目の隔壁で区切られた部分、すなわち上流側から第2番目の反応槽の温度1を220℃、上流側から第5番目の反応槽の温度2を260℃、上流側から第6番目の反応槽の温度3を260℃に保持した。定常状態において、上流側から第1番目の反応槽の温度4は190℃、上流側から第4番目の反応槽の温度5は250℃であった。供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、4,4‘−ジフルオロベンゾフェノン(DFBP)、ハイドロキノン(HQ)及び炭酸カリウムを、6.4g/min(NMP:DFBP(重量比)=1202.57:160.00、DFBP:HQ(モル比)=1:1、HQ:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に8時間原料を供給した。
【0164】
なお、混合液中の平均粒子径95μm以上である炭酸カリウムを、供給前にホモジナイザーを用いて約10,000rpm/minでスラリー状に粉砕(平均粒子径95μm以下)した。
【0165】
同時に連続製造装置100に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.3MPaに制御しながら、連続的に、反応で生成した水を連続製造装置から除去した。また、反応により生成する二酸化炭素ガスは、蒸留装置及び貯水槽を経由して大気に放出した。
【0166】
また、第6番目の反応槽の下部から260℃のNMPを2.9g/minの流量で供給し、反応混合物を希釈((DFBP+HQ)/NMP(100質量部)=10質量部)することで、反応混合物をスラリー状で回収した。
【0167】
運転終了後に反応装置の内部を観察した所、全ての反応槽に堰の溢流レベルまでの反応液の存在を確認した。
【0168】
反応混合物回収ラインから反応物を採取して分析した。当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)粉体を得た。このPEEK粉体の還元粘度は0.3[dL/g]であった。
【0169】
なお還元粘度は以下の方法で求めた。
【0170】
<溶液調整方法>
PEEK0.1gおよび4−クロロフェノール10mlをオイルバスで180℃、20分間、加熱および撹拌して溶解させた。室温になるまで冷却したのち、該溶液3mlをo−ジクロロベンゼン7mlで希釈した。
【0171】
<還元粘度測定方法>
35℃においてウベローデ粘度計で測定する。
【0172】
<還元粘度の算出>
溶媒の粘度(η0)を、オストワルド型粘度管を用いて測定した。調整した溶液の粘度(η)と溶媒の粘度(η0)から、比粘性率((η−η0)/η0)を求め、この比粘性率を、溶液の濃度(0.3g/dL)で割ることにより、還元粘度(dL/g)を求めた。
【0173】
[実施例6]PEEKの製造
収容室が、9枚の円盤型仕切板により仕切られて形成された10個の反応槽を有する以外は、実施例2で使用したのと同様の重合体連続製造装置を用いた。連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1500gを仕込んだ後、反応混合物の移動方向の上流側から数えて第10番目の反応槽の下流側から窒素ガスを流しながら、収容室の底部に設置した外部ヒーターにより、上流側から数えて第3番目の反応槽の温度1を210℃、第5番目の反応槽の温度2を240℃、第9番目の反応槽の温度3を260℃、第10番目の反応槽の温度4を260℃に保持した。ここで、窒素ガスの流量は1NL/minであり、標準状態において、仕切板のクリアランスを通過する窒素ガス線速度は8cm/sであった。
【0174】
供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、4,4‘−ジフルオロベンゾフェノン(DFBP)、ハイドロキノン(HQ)及び炭酸カリウムを、13.8g/min(NMP:DFBP(重量比)=2804.43:654.53、DFBP:HQ(モル比)=1.01:1、HQ:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に6時間原料を供給した。
【0175】
なお、炭酸カリウムの粉砕および圧力調整は実施例1と同様の方法で行った。
【0176】
以上の操作を5時間継続した後に得られた当該反応混合物を5倍量の水に滴下して固形分をろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)粉体を得た。
【0177】
分離され回収した副生塩は、回収率(回収量/理論生成量)約50%であった。また、PEEK粉体の還元粘度は0.6[dL/g]であり、還元粘度は上記の方法で求めた。