(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0013】
〔本発明の吸着剤〕
本発明の吸着剤は、オレフィンを含む流体中に含まれる硫化カルボニルを除去するための吸着剤であって、酸化銅を含み、アルミニウム化合物を含み、前記アルミニウム化合物の含有量が、Al換算で、10質量%以上50質量%以下の範囲にあり、NH
3−TPD測定によって算出される100℃以上200℃以下の温度域におけるNH
3脱離量が0.001mmol/gを超え1mmol/g以下の範囲にあるものである。
本発明の吸着剤は、硫化カルボニルを硫化水素に加水分解する成分と、硫化水素を吸着する成分とを含み、弱酸性を示す。本発明の吸着剤は、硫化カルボニルを硫化水素に加水分解する成分として、弱酸性の化合物を含むので、吸着剤としても弱酸性を示す。例えば、弱酸性のアルミニウム化合物を含む。そして、本発明の吸着剤は、硫化水素を吸着する成分として、酸化銅を含む。なお、酸化銅は、硫化カルボニルを吸着する機能も有している。酸化銅に硫化水素を吸着させる場合と硫化カルボニルを吸着させる場合で比較すると、硫化水素を吸着させる場合の方が吸着速度は速くなる。したがって、酸化銅と硫化カルボニルを加水分解する成分を含む吸着剤と、酸化銅を含むが硫化カルボニルを加水分解する成分を含まない吸着剤とを比較すると、前者の方が硫化カルボニルの除去速度はより速くなる。
【0014】
本発明の吸着剤は、弱酸性の化合物を含むので、弱酸性を示す。本発明では、弱酸性を表す指標として、NH
3−TPD測定によって算出される100℃以上200℃以下の温度域におけるNH
3脱離量を用いた。NH
3−TPD測定とは、物質の固体酸性を評価する方法の一つであって、塩基性の化合物であるNH
3をプローブとして物質の酸点に吸着させ、その後加熱処理して脱離したNH
3の量を測定する方法である。この方法を用いれば、NH
3脱離量から物質の酸量を求めることができる。更に、NH
3の脱離する温度は酸強度により変化することも知られており、例えば酸強度が低い場合は、NH
3と酸点との相互作用が小さくなるので、NH
3の脱離温度が低くなる。本発明においては、このような評価方法を利用して本発明の吸着剤に含まれるアルミニウム化合物の弱酸性を定義した。本発明の吸着剤は、このNH
3−TPD測定によって算出される100℃以上200℃以下の温度域におけるNH
3脱離量が、0.001mmol/gを超え1mmol/g以下の範囲にある。このNH
3脱離量が0.001mmol/g以下の場合は、硫化カルボニルの加水分解活性が低くなってしまい、その除去速度も遅くなるので好ましくない。このNH
3脱離量は、0.005mmol/g以上0.1mmol/g以下の範囲にあってもよく、0.005mmol/g以上0.05mmol/g以下の範囲にあってもよい。本発明の吸着剤において、このNH
3脱離量が多ければ多いほど硫化カルボニルの加水分解反応活性が高くなることは容易に想像されるものである。しかし、例えば前述の範囲のようなNH
3脱離量が比較的少ない場合であっても、その加水分解反応活性が高くなり、その除去速度も速くなる。
【0015】
本発明の吸着剤は、弱酸性を示す化合物として、特許文献5及び6に開示されるようなアルカリが担持されたアルミナではなく、弱酸性のアルミニウム化合物を含むことが好ましい。
【0016】
このような弱酸性のアルミニウム化合物が硫化カルボニルの加水分解反応になぜ効果的であるかは明確ではないが、本発明者らは、以下のような理由であると推察している。すなわち、酸点は正電荷を有していること、硫化カルボニルはO=C=Sの構造を有しており、O原子とS原子の電気陰性度の差によってO原子に負の電荷が偏った極性分子であることを考慮すると、次のような理由が考えられる。まず、硫化カルボニルに含まれる負の電荷に偏ったO原子が正電荷を有する酸点に吸着し、これがアルミニウム化合物の表面に存在する表面OH基と反応することで、加水分解反応が促進されるものと考えられる。また、水分子も硫化カルボニルと同じく極性分子であることから、酸点に吸着した水分子と硫化カルボニルが反応しても、加水分解反応が促進されるものと考えられる。なお、酸強度の強いアルミニウム化合物を含む吸着剤を、オレフィンを含む流体中で使用すると、オレフィンの重合反応により生成した重合物によって吸着剤が被覆されることがある。これによって硫化カルボニルの吸着量や除去速度が低下することがある。しかし、弱酸性のアルミニウム化合物を含む吸着剤は、酸強度が弱いので、オレフィンを含む流体中で使用してもこのような反応が起きにくくなるものと考えられる。
【0017】
本発明の吸着剤に含まれるアルミニウム化合物は、NH
3−TPD測定によって算出される100℃以上200℃以下の温度域におけるNH
3脱離量が、0.01mmol/g以上10mmol/g以下の範囲にあることが好ましい。このような弱酸性のアルミニウム化合物を含む吸着剤は、硫化カルボニルの加水分解活性が高くなり、その除去速度も速くなる。本発明の吸着剤に含まれるアルミニウム化合物は、このNH
3脱離量が、0.01mmol/g以上1mmol/g以下の範囲にあってもよく、0.01mmol/g以上0.05mmol/g以下の範囲にあってもよい。本発明の吸着剤に含まれるアルミニウム化合物において、このNH
3脱離量が多ければ多いほど硫化カルボニルの加水分解活性が高くなることは容易に想像されるものであるが、例えば前述の範囲のようなNH
3脱離量が比較的少ない場合であっても、その加水分解活性は高くなる。
【0018】
本発明の吸着剤に含まれるアルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)またはこれらの混合物であることが好ましい。水酸化アルミニウムを含む場合、その結晶構造は、擬ベーマイトであることがより好ましい。なお、水酸化アルミニウムの結晶構造は、X線回折パターンから判断することができる。ただし、ベーマイトと擬ベーマイトは、その結晶構造が似ていることから、X線回折パターンから明確に区別することは困難である。しかし、擬ベーマイトのX線回折パターンはベーマイトと比較してブロードになることが知られている。そこで、本発明においては、ベーマイトの結晶構造に由来する(020)面に帰属されるピークの半価幅(半価全幅)が、1.0°以上であれば擬ベーマイト構造を有しているものと判断する。酸化アルミニウムを含む場合、その結晶構造は、χ(カイ)、ρ(ロー)、θ(シータ)から選ばれる1種以上の結晶構造を有していることがより好ましく、特にカイが好ましい。なお、酸化アルミニウムの結晶構造は、X線回折パターンから判断できる。
【0019】
本発明の吸着剤に含まれるアルミニウム化合物の含有量(以下、Al含有量ともいう)は、Al換算で、10質量%以上50質量%以下の範囲にある。この含有量が多すぎると、相対的に酸化銅の含有量が減少するので、硫化カルボニルが加水分解されて発生する硫化水素を除去しきれなくなる。また、この含有量が少なすぎても、硫化カルボニルの加水分解が進みにくくなるので、吸着剤の硫化カルボニル除去速度が遅くなる。この含有量が10質量%以上30質量%以下の範囲にある場合、硫化カルボニルの除去速度がより速くなるので、好ましい。
【0020】
本発明の吸着剤は、そのアルカリの含有量が、金属換算で、0.5質量%未満であることが好ましく、特に0.1質量%未満であることが好ましい。本発明の吸着剤には弱酸性質を示す酸点が複数存在しており、これらの酸点はアルカリが吸着すると失活することがある。そこで、本発明の吸着剤のアルカリ含有量は可能な限り少ないほうが好ましい。
【0021】
本発明の吸着剤は、銅以外の遷移金属成分の含有量が、金属換算で、それぞれ1質量%未満であってもよく、特に0.1質量%未満であってもよい。アルミニウム化合物にCrやZn等の遷移金属成分を担持した硫化カルボニルの加水分解触媒は種々あるが、本発明の吸着剤は、これらの遷移金属が極めて少ないまたは含まない場合であっても、硫化カルボニルを加水分解することができ、硫化カルボニルの除去速度も速い。
【0022】
本発明の吸着剤は、酸化銅を含む。本発明の吸着剤に含まれる酸化銅は、前述のとおり、硫化カルボニルが加水分解されて生成した硫化水素を除去するための成分である。また、硫化水素が酸化銅と接触して除去される際に水が生成するので(CuO+H
2S→CuS+H
2O)、この水を硫化カルボニルの加水分解反応に再利用することができる。なお、本発明の吸着剤に含まれる酸化銅は、X線回折パターンから判別することができる。更に、本発明の吸着剤に含まれる酸化銅は、2θ=37〜40°の範囲に現れる酸化銅に帰属される回折ピークの半価幅(半価全幅)が、0.8〜2°の範囲にあることが好ましい。この半価幅が前述の範囲にある酸化銅を含むと、硫化カルボニルの除去速度がより速くなる傾向にある。
【0023】
本発明の吸着剤に含まれる酸化銅の含有量(以下、Cu含有量ともいう)は、Cu換算で、5質量%以上50質量%以下の範囲にあることが好ましく、30質量%以上50質量%以下の範囲にあることがより好ましい。酸化銅の含有量が少なすぎると、硫化カルボニルが加水分解されて生成した硫化水素を除去しきれなくなり流出してしまう。硫化水素は様々な触媒の被毒物質として知られており、硫化水素を流出することは好ましくない。酸化銅の含有量が多すぎても、前述のアルミニウム化合物の含有量が相対的に減少するので、硫化カルボニルを効率的に加水分解できなくなり、硫化カルボニルの除去速度が低下してしまう傾向にある。
【0024】
本発明の吸着剤において、アルミニウムに対する銅のモル比(Cu/Al)は、0.1以上2以下の範囲にあることが好ましく、0.5以上1未満の範囲にあることがより好ましい。このモル比が上記範囲内であれば、硫化カルボニルの加水分解と、加水分解された硫化水素の除去とのバランスが良好になり、その結果硫化カルボニルの除去速度が速くなる。
【0025】
本発明の吸着剤は、その比表面積が200m
2/g未満であっても吸着剤として問題なく使用することができる。一般的に、吸着剤は、その表面に吸着種を吸着させるので、高い比表面積を有することが求められる。しかし、本発明の吸着剤は、硫化カルボニルを加水分解反応してから除去するので、このように吸着剤としては必ずしも高くない比表面積であっても、硫化カルボニルを効率的に除去できる。この比表面積は、100m
2/g以上、200m
2/g未満であってもよい。この比表面積が100m
2/g未満の場合は、吸着剤の硫化カルボニルの吸着量が少なくなることがあるので、好ましくない。
【0026】
本発明の吸着剤の形状は、従来公知の形状であればよく、例えば、球状、柱状またはこれらに類する形状であってもよい。また、そのサイズ(吸着剤のサイズの中で、最小の距離)は、0.5mm以上6mm以下の範囲にあるものがよい。吸着剤のサイズが大きすぎると、吸着剤とオレフィンの接触面積が低下するので、硫化カルボニルの除去速度が低下することがあり、好ましくない。一方、吸着剤のサイズが小さすぎても、オレフィンを含む流体を流通させる際に圧力損失が高くなり、流体が流通できなくなることがある。
【0027】
本発明の吸着剤は、オレフィンを含む流体中に含まれる硫化カルボニルを除去する吸着剤として用いられる。本発明の吸着剤は、C2からC6のオレフィンを含む流体中に含まれる硫化カルボニルを除去する吸着剤として好適であり、特にプロピレンを含む流体中に含まれる硫化カルボニルを除去する吸着剤として好適である。また、本発明の吸着剤は、吸着剤の内部に拡散しにくい液体のオレフィンを含む流体であっても、硫化カルボニルを効率よく除去することができる。
【0028】
本発明の吸着剤は、オレフィンを含む流体中に含まれる硫化カルボニルの濃度が0.01ppm以上30ppm以下の範囲にあるプロセスにおいて好適に使用することができる。また、本発明の吸着剤は、硫化カルボニルに対して水の量が少ないプロセスにおいても、本発明の吸着剤に含まれるアルミニウム化合物の表面OH基等を利用して硫化カルボニルを加水分解することができるので、硫化カルボニルを効率的に除去することができる。より具体的には、オレフィンを含む流体中に含まれる硫化カルボニルと水のモル比(H
2O/COS)が1未満のプロセスであっても、硫化カルボニルを効率的に除去することができる。なお、硫化カルボニルの加水分解によって生成した硫化水素が酸化銅と接触して除去される際に生成する水も、硫化カルボニルの加水分解反応に再利用される。
【0029】
本発明の吸着剤は、オレフィンを含む流体の温度が−10℃以上70℃以下の範囲にあるプロセスにおいて、効率的に硫化カルボニルを除去することができる。オレフィンを含む流体の温度が低すぎると、硫化カルボニルが効率的に加水分解されなくなり、硫化カルボニルの除去速度が低下してしまう傾向にある。また、オレフィンを含む流体の温度が高すぎる場合、オレフィンの重合反応が起こりやすい傾向にあるので、前述の範囲で使用することが好ましい。
【0030】
〔本発明の吸着剤の製造方法〕
本発明の吸着剤は、例えば、以下説明する本発明の吸着剤の製造方法により製造できる。
本発明の吸着剤の製造方法は、オレフィンを含む流体中に含まれる硫化カルボニルを除去するための吸着剤の製造方法であって、アンモニア昇温脱離測定によって算出される100℃以上200℃以下の温度域におけるNH
3脱離量が、0.01mmol/g以上10mmol/g以下の範囲にあるアルミニウム化合物と、酸化銅とを、前記アルミニウム化合物の含有量が、Al換算で、10質量%以上50質量%以下の範囲となるようにして、混合する、方法である。
【0031】
アルミニウム化合物の酸性質は、その結晶構造や、不純物(Siやアルカリ等)、製造方法等により変化することが知られている。そして、本発明の吸着剤に含まれるアルミニウム化合物は、例えば、従来公知のアルミニウム化合物を弱酸で表面処理することで得られる。なお、弱酸で表面処理されたアルミニウム化合物を焼成すると、その表面の酸性質が変化するので、焼成せずに使用することが好ましい。具体的には、300℃以上の温度で焼成しないことが好ましい。また、工業原料として販売されているアルミニウム化合物の中からNH
3−TPD測定によって算出される100℃以上200℃以下の温度域におけるNH
3脱離量が0.01mmol/g以上10mmol/g以下の範囲にあるアルミニウム化合物を入手して使用してもよい。なお、前述のアルミニウム化合物以外の成分であって、弱酸性である成分を添加してもよい。
【0032】
酸化銅は、銅化合物を焼成して得られたものであってもよく、水溶液中で合成されたものであってもよい。銅化合物を焼成する場合は、酢酸銅、塩基性炭酸銅、及び硝酸銅等の銅化合物を300℃以上500℃以下で焼成することで得ることができる。また、水溶液中で酸化銅を合成する場合は、水溶液中に水酸化銅が分散した状態で50℃以上に加熱することで得ることができる。
【0033】
本発明では、前述のアルミニウム化合物と酸化銅を混合したあと、所望の形状に成型してもよい。例えば、圧縮成形した後で粉砕して所望の形状に整えたり、打錠成型や押出成形等の方法で所望の形状に成型してもよい。このとき、成型性を高めるために、成型助剤等を加えてもよい。なお、前述のアルミニウム化合物と酸化銅を混合した後は、焼成しないことが好ましい。このような状態で焼成すると、CuAl
2O
4等の副生成物の生成や、熱の影響によりアルミニウム化合物の酸性質が変化してしまうことがある。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、本発明の実施例及び比較例にて使用した酸化銅の調製方法を次に示す。
【0035】
(酸化銅の調製方法)
イオン交換水5.8kgに水酸化ナトリウム231gを溶解させて、母液を調製した。
次に、イオン交換水2.6kgに硫酸銅5水和物676gを溶解させて添加液を調製した。母液及び添加液をそれぞれ加温した状態で混合して、酸化銅の沈殿物を生成させた。その酸化銅の沈殿物を含むスラリーを濾過して、酸化銅の沈殿物を分離した後、十分に洗浄して酸化銅の沈殿ケーキを得た。その沈殿ケーキをイオン交換水4.0kgに分散させて酸化銅スラリーを得た。その酸化銅スラリーを乾燥し、粉末状の酸化銅を得た。
【0036】
[実施例1]
市販の酸化アルミニウム(UOP社製、品名:VERSAL R−3)と前述の酸化銅を質量比1:1にて物理的に混合した。これを、錠剤成型機にセットして、60MPaの圧力で1分間プレスした。得られた成型体を顆粒に粉砕した後、目開きが355μm及び710μmの篩を用いてこの顆粒を分級し、355〜710μmの顆粒を得た。この顆粒を吸着剤Aとした。なお、原料の情報(アルミニウム化合物の種類及びアルカリ含有量)並びに吸着剤の情報(吸着剤のCu含有量、Al含有量及びアルカリ含有量、並びに、吸着剤におけるアルミニウムに対する銅のモル比(Cu/Al))についても表1に示した。
【0037】
(NH
3−TPD測定:100℃以上200℃以下の温度域におけるNH
3脱離量)
実施例1にて用いたアルミニウム化合物及び実施例1の方法で得られた吸着剤について、NH
3−TPD測定を行った。具体的には、前述のアルミニウム化合物をサンプルとして0.05g秤量し、NH
3−TPD測定装置(マイクロトラック・ベル社製、装置名:BEL−CAT A)の試料管にセットした(前述の吸着剤をサンプルとして測定する際は、サンプルを0.1g秤量した。)。その後、不活性ガス(He)を30ml/minの流量で試料管に流通しながら、150℃で60分加熱処理した。その後、試料管の温度を100℃で保持しながら、NH
3を含むガス(NH
3:5%、He:バランス)を60分間流通して、サンプルにNH
3を吸着させた。その後、不活性ガスを30ml/minの流量で試料管に流通した状態で60分保持した。次に保持温度100℃、不活性ガス30ml/minの流量のまま、水蒸気を30分間試験管に導入し、物理吸着分のNH
3を除去した。水蒸気の導入を停止し、保持温度100℃、不活性ガス30ml/minの流量で30分間保持した。次に昇温速度10℃/minで700℃まで昇温し、10分間保持した。このとき、サンプルから脱離したNH
3を四重極型質量分析計(Q−Mass)を用いて測定した。この測定により得られたデータから、試料管の温度が100℃以上200℃以下の間に脱離したNH
3量を算出し、これをサンプルの仕込量で割ることで、100℃以上200℃以下の温度域におけるNH
3脱離量を算出した。結果を表1に示した。
【0038】
(X線回折測定:アルミニウム化合物の結晶構造)
実施例1にて用いたアルミニウム化合物及び吸着剤について、X線回折測定を行った。具体的には、サンプルを試料板に充填し、X線回折装置(リガク社製、装置名:MultiFlex)にセットした。その後、下記の条件でX線回折測定を行った。
<X線回折測定条件>
操作軸 :2θ/θ
線源 :CuKα
測定方法 :連続式
電圧 :40kV
電流 :20mA
開始角度 :2θ=10°
終了角度 :2θ=80°
サンプリング幅:0.020°
スキャン速度 :4.000°/min
X線回折測定によって得られたX線回折パターンをX線回折測定装置に付属の解析ソフトを用いて解析した結果、表1に記載の結晶構造に帰属された。
【0039】
(比表面積測定)
得られた吸着剤について窒素流通下にて前処理を行い、全自動比表面積測定装置(マウンテック製、型式:MacsorbHM model−1220)にセットし、窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の脱離量から、BET1点法により比表面積を算出した。具体的には、試料0.1gを測定セルに充填し取り、窒素流通下にて250℃−40minで前処理を行い、窒素混合ガス(体積分率で窒素が30%、ヘリウムが70%)の気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させた。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量をTCDで検出した。最後に純窒素を1ccパルスで流通させ、先の窒素脱離量との比から比表面積を算出した。
【0040】
(硫化カルボニルの加水分解反応活性試験)
実施例1にて用いたアルミニウム化合物について、硫化カルボニルの加水分解反応活性を評価した。具体的には、内径0.53cmの反応管に層高が1.5cmとなるようにサンプルとして吸着剤A(顆粒形状:355〜710μm)を充填し、窒素流通下にて150℃で1時間加熱処理した。その後、サンプルの温度を22℃で保持しながら、原料液(COS:10質量ppm、1−ヘキセン:バランス)を3.2g/minの供給速度で流通させた。所定時間ごとに反応管の入口と出口の液をサンプリングしておき、原料液の流通から90分後の入口と出口の液について、化学発光硫黄検出器(SCD検出器)を備えたガスクロマトグラフ(アジレントテクノロジー社製、装置名:7890B GC)を用いてそのCOS濃度及びH
2S濃度を測定した。得られた結果から、下記の式(1)に基づきCOSの転化率を算出した。結果を表1に示した。
式(1):COS転化率[%]=出口のH
2S濃度/入口のCOS濃度×100
【0041】
(硫化カルボニルの除去速度試験)
実施例1にて得られた吸着剤について、硫化カルボニルの除去速度を評価した。具体的には、吸着剤の層厚が8cmとなるように吸着剤を反応管にセットしたこと以外は、前述の硫化カルボニルの加水分解反応活性の評価方法と同様である。原料液の流通から90分後の反応管の入口と出口のCOS濃度の差分から、COS除去速度定数を算出した。結果を表1に示した。
【0042】
[実施例2]
市販の水酸化アルミニウム(UOP社製、品名:V−250)を用いた以外は吸着剤Aと同様の方法で、吸着剤Bを調製した。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0043】
[実施例3]
市販の水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、品名:C10W)を用いた以外は吸着剤Aと同様の方法で、吸着剤Cを調製した。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0044】
[実施例4]
市販の水酸化アルミニウムA(UOP社製、品名:V−250)と前述の酸化銅を質量比9:1にて物理的に混合し、錠剤成型機にセットして、60MPaの圧力を1分間プレスした。得られた成型体を顆粒に粉砕した後、目開きが355μm及び710μmの篩を用いてこの顆粒を分級し、355〜710μmの顆粒を得た。この顆粒を吸着剤Dとした。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0045】
[実施例5]
市販の水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、品名:C10W)を用いた以外は吸着剤Dと同様の方法で、吸着剤Eを調製した。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0046】
[実施例6]
市販の酸化アルミニウム(UOP社製、品名:VERSAL R−3)を用いた以外は吸着剤Dと同様の方法で、吸着剤Fを調製した。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0047】
[実施例7]
実施例1に用いた酸化銅200gを用い、担体として市販のχ(カイ)−アルミナ(比表面積:210m
2/g)、有機バインダー8g、無機バインダーとしてシリカゾルを100g(Si濃度:20質量%(SiO
2換算))及びイオン交換水125gをミキサーに仕込み、均一に混合して原料混合物を得た。
この原料混合物を押出成型機に投入し、直径1.6mmφの高さ3〜5mmの円柱状に押出成型して成型体を得た。その成型体を電気乾燥機で120℃の温度で16時間乾燥し、硫黄化合物吸着剤を得た。得られた硫黄化合物吸着剤を顆粒に粉砕した後、目開きが355μm及び710μmの篩を用いてこの顆粒を分級し、355〜710μmの顆粒を得た。この顆粒を吸着剤Gとした。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0048】
[比較例1]
市販の水酸化アルミニウム(昭和電工社製、品名:H−32)と前述の酸化銅を質量比1:9にて物理的に混合し、錠剤成型機にセットして、60MPaの圧力を1分間プレスした。得られた成型体を顆粒に粉砕した後、目開きが355μm及び710μmの篩を用いてこの顆粒を分級し、355〜710μmの顆粒を得た。この顆粒を吸着剤Hとした。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0049】
[比較例2]
市販の水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、品名:C10W)を用いた以外は吸着剤Gと同様の方法で、吸着剤Iを調製した。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0050】
[比較例3]
市販の水酸化アルミニウム(UOP社製、品名:V−250)を用いた以外は吸着剤Gと同様の方法で、吸着剤Jを調製した。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0051】
[比較例4]
市販の酸化アルミニウム(UOP社製、品名:VERSAL R−3)を用いた以外は吸着剤Gと同様の方法で、吸着剤Kを調製した。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0052】
[比較例5]
市販の水酸化アルミニウム(昭和電工社製、品名:H−32)を用いた以外は吸着剤Aと同様の方法で、吸着剤Lを調製した。また、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示した。なお、原料及び吸着材の情報についても表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示す結果からも明らかなように、NH
3脱離量が0.001mmol/gを超え1mmol/g以下の範囲にある吸着剤(実施例1〜7)は、NH
3脱離量が0.001mmol/g以下の範囲にある吸着剤である比較例1〜5と比較して、COS除去速度が顕著に速くなっている。