特許第6708883号(P6708883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708883
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】電磁誘導加熱方式を利用する調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/02 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   A47J36/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-97854(P2017-97854)
(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-191969(P2018-191969A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年11月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508236387
【氏名又は名称】株式会社 鋳物屋
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 常夫
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−117488(JP,A)
【文献】 特開平09−103362(JP,A)
【文献】 特開平09−103360(JP,A)
【文献】 特開2003−061819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 36/02
B23K 20/00
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋本体と、
前記鍋本体の少なくとも底部よりも高い硬度を有し、前記底部に取り付けられる発熱体とを備え、
前記発熱体における前記底部と接触する側の第1面には、前記底部に向かって突出するリングが一体的に形成され、
前記底部における前記リングと対向する領域には、前記リングの厚さよりも小さい溝幅を有する溝部が設けられ、
前記リングが前記溝部に食い込むように、前記発熱体における前記第1面と反対側の第2面を押すことと、前記底部に設けられた突起部を前記発熱体の周縁部を覆うように変形させることによって行われるカシメにより、前記発熱体は、前記底部に固定されることを特徴とする電磁誘導加熱方式を利用する調理器。
【請求項2】
発熱体には、前記リングとして、前記第2面が凹み、前記第1面が突出し、断面がコの字形状を有する凹部が設けられ、
前記底部における前記凹部と対向する領域には、前記溝部として、前記凹部における前記底部と対向する領域の厚さよりも小さい溝幅を有する凹部用溝部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記凹部用溝部の溝幅は、前記凹部における前記底部と対向する領域の半径方向の寸法に比べて、4%小さいことを特徴とする請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記発熱体には、前記リングとして、リブが設けられ、
前記底部における前記リブと対向する領域には、前記溝部として、前記リブの半径方向の厚さよりも小さい溝幅を有するリブ用溝部が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調理器。
【請求項5】
前記リブ用溝部の溝幅は、前記リブの半径方向の厚さに比べて、20%小さいことを特徴とする請求項4に記載の調理器。
【請求項6】
前記発熱体は、中抜き円板形状を有し、且つ前記リングを2以上有し、
前記中抜き円板形状の内側周縁部の円形と、前記2以上のリングは、同心円状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の調理器。
【請求項7】
鍋本体の底部に設けられたカシメの為に利用する突起部の間に、中抜き板形状を有する発熱体を挿入する発熱体挿入工程と、
前記発熱体における前記底部と接触する側の第1面に一体的に形成され、前記底部に向かって突出するリングが前記底部に設けられ前記リングよりも小さい溝幅を有する溝部に食い込むように、前記発熱体における前記第1面と反対側の第2面を押す押し込み工程と、
前記突起部を、前記中抜き板形状の外側周縁部と内側周縁部を覆うように変形させてカシメを行うカシメ工程とを備えることを特徴とする電磁誘導加熱方式を利用する調理器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱(Induction Heating)方式を利用する調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、電磁誘導加熱方式を利用する調理器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−102616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる調理器では、非磁性体の鍋本体の底部に、カシメなどで磁性体の発熱体が取り付けられるが、カシメだけでは、両者の接合状態が緩み、発熱体からの熱が伝わりにくくなるおそれがある。
【0005】
したがって本発明の目的は、発熱体からの熱が伝わりやすい調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電磁誘導加熱方式を利用する調理器は、鍋本体と、鍋本体の少なくとも底部よりも高い硬度を有し、底部に取り付けられる発熱体とを備え、発熱体における底部と接触する側の第1面には、底部に向かって突出するリングが一体的に形成され、底部におけるリングと対向する領域には、リングの厚さよりも小さい溝幅を有する溝部が設けられ、リングが溝部に食い込むように、発熱体における第1面と反対側の第2面を押すことと、カシメにより、発熱体は、底部に固定される。
【0007】
発熱体における第2面(上面)を押して、発熱体におけるリング形状の突起物を鍋本体の底部に設けられた溝部に嵌め込むことにより、発熱体の底部への一次的な固定(第1固定)が行われ、さらにカシメにより、発熱体の底部への二次的な固定(第2固定)が行われる。
【0008】
このため、当該リング形状の突起物を設けずにカシメだけで発熱体の底部への固定を行う形態に比べて、底部と発熱体との固定状態を維持しやすい。
リング形状の突起物は、底部に設けられた溝部に嵌め込まれるため、当該溝部が設けられない形態に比べて、当該突起物が座屈せず且つ入り込みやすく出来る。
【0009】
また、リング形状の突起物の分だけ、底部と発熱体の接触面積が大きくすることが出来るため、発熱体から鍋本体への熱伝導効率を高くすることが出来る。
【0010】
好ましくは、発熱体には、リングとして、第2面が凹み、第1面が突出し、断面がコの字形状を有する凹部が設けられ、底部における凹部と対向する領域には、溝部として、凹部における底部と対向する領域の厚さよりも小さい溝幅を有する凹部用溝部が設けられる。
【0011】
溝部(凹部用溝部)は、当該溝部の溝幅が、当該溝部に嵌め込む突起物(凹部)の厚さよりも小さくなるように構成されるので、凹部における底領域が底部から離れる方向に撓んだ状態で、発熱体が底部に嵌め込まれる。
かかる撓んだ部分(底領域)の撓み量は、熱によって変動し、当該撓み量の変動により、鍋本体と発熱体の熱膨張係数の差に基づく異音発生を防ぐことが出来る。
【0012】
さらに好ましくは、凹部用溝部の溝幅は、凹部における底部と対向する領域の半径方向の寸法に比べて、4%小さい。
【0013】
また、好ましくは、発熱体には、リングとして、リブが設けられ、底部におけるリブと対向する領域には、溝部として、リブの半径方向の厚さよりも小さい溝幅を有するリブ用溝部が設けられる。
【0014】
さらに好ましくは、リブ用溝部の溝幅は、リブの半径方向の厚さに比べて、20%小さい。
【0015】
また、好ましくは、発熱体は、中抜き円板形状を有し、且つリングを2以上有し、中抜き円板形状の内側周縁部の円形と、2以上のリングは、同心円状に配置される。
【0016】
本発明に係る電磁誘導加熱方式を利用する調理器の製造方法は、鍋本体の底部に設けられたカシメの為に利用する突起部の間に、中抜き板形状を有する発熱体を挿入する発熱体挿入工程と、発熱体における底部と接触する側の第1面に一体的に形成され、底部に向かって突出するリングが底部に設けられリングよりも小さい溝幅を有する溝部に食い込むように、発熱体における第1面と反対側の第2面を押す押し込み工程と、突起部を、中抜き板形状の外側周縁部と内側周縁部を覆うように変形させてカシメを行うカシメ工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、発熱体からの熱が伝わりやすい調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態における調理器において、発熱体が鍋本体に取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
図2】鍋本体の底部と、当該底部と対向する発熱体の下面の位置関係を示す斜視図である。
図3】発熱体挿入工程後の鍋本体と発熱体を示す斜視図である。
図4】押し込み工程後の鍋本体と発熱体を示す斜視図である。
図5】嵌め込み工程後の鍋本体と発熱体と第1カシメ治具と第2カシメ治具を示す斜視図である。
図6】カシメ工程後の鍋本体と発熱体と第1カシメ治具と第2カシメ治具を示す斜視図である。
図7】取り外し工程後の鍋本体と発熱体を示す斜視図である。
図8】発熱体が鍋本体に取り付けられる前の状態における、鍋本体と発熱体と第1カシメ治具と第2カシメ治具の断面構成図である。
図9】発熱体が鍋本体に取り付けられる前の状態における、鍋本体と発熱体の断面構成図である。
図10】発熱体挿入工程後の鍋本体と発熱体を示す断面構成図である。
図11】押し込み工程後の鍋本体と発熱体を示す断面構成図である。
図12】嵌め込み工程後の鍋本体と発熱体と第1カシメ治具と第2カシメ治具を示す断面構成図である。
図13】カシメ工程後の鍋本体と発熱体と第1カシメ治具と第2カシメ治具を示す断面構成図である。
図14】取り外し工程後の鍋本体と発熱体を示す断面構成図である。
図15】発熱体が膨張した場合の鍋本体と発熱体を示す断面構成図である。
図16】発熱体が収縮した場合の鍋本体と発熱体を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態における電磁誘導加熱方式を利用する調理器1は、鍋本体(調理対象物を入れる容器)10、発熱体20を備える(図1図16参照)。
また、発熱体20を鍋本体10に取り付ける際に、第1カシメ治具51、および第2カシメ治具52が用いられる。本実施形態では、鍋を使って調理器1の構成を説明するが、フライパンなど他の調理器1であっても良い。
【0020】
なお、他の部材との区別をしやすくするために、図1図7では、発熱体20の上面20a(底部11と接触する側の第1面(下面20b、第1面)と反対側の第2面)と下面20bにおける突出した領域に格子状の網掛けをしているが、網掛けは本発明を実施するために必須のものではない。
【0021】
鍋本体10は、アルミニウム合金などの非磁性材で構成され、底部11には、発熱体20を取り付けるために使用する第1突起部11a〜第3突起部11c、溝部12(第1フランジ用溝部12a1、第2フランジ用溝部12a2、第1凹部用溝部12b1、第2凹部用溝部12b2、第1リブ用溝部12c1〜第4リブ用溝部12c4)が設けられる。
【0022】
第1突起部11aは、略中空柱形状(たとえば中空円柱形状)を有する。
第1突起部11aの先端には、外側が内側よりも高くなるような第1斜面11a1が設けられる。
【0023】
第2突起部11bは、第1突起部11aの側面を囲む略中空柱形状(たとえば中空円柱形状)を有する。
第2突起部11bの先端には、内側が外側よりも高くなるような第2斜面11b1が設けられる。
【0024】
第3突起部11cは、第2突起部11bの側面を囲む略中空柱形状(たとえば中空円柱形状)を有する。
【0025】
第1突起部11aの内側に第1カシメ治具51が嵌め合わせ出来るように、第1突起部11aと底部11とで囲まれた第1空間101は、第1カシメ治具51の下部(底部11と接触する側の部分)と略同じ形状(本実施形態では、略円柱形状)を有する。
【0026】
第1突起部11aと第2突起部11bとの間に発熱体20が挿入出来るように、第1突起部11aと第2突起部11bと底部11とで囲まれた第2空間102は、発熱体20の下面20b(底部11と接触する側の面)と略同じ形状(本実施形態では、略ドーナツ型形状)を有する。
【0027】
底部11における第1突起部11aと第2突起部11bの間であって、第1突起部11aの近傍には、発熱体20の内側周縁部に設けられた内側フランジ21aが嵌合するリング形状の第1フランジ用溝部12a1が設けられる。
【0028】
底部11における第1突起部11aと第2突起部11bの間であって、第2突起部11bの近傍には、発熱体20の外側周縁部に設けられた外側フランジ21bが嵌合するリング形状の第2フランジ用溝部12a2が設けられる。
【0029】
底部11における第1フランジ用溝部12a1と第2フランジ用溝部12a2の間であって、第1フランジ用溝部12a1に近い側には、発熱体20の第1凹部h1が嵌合する第1凹部用溝部12b1が設けられ、第2フランジ用溝部12a2に近い側には、発熱体の第2凹部h2が嵌合する第2凹部用溝部12b2が設けられる。
【0030】
底部11における第1フランジ用溝部12a1と第1凹部用溝部12b1の間には、発熱体20の第1リブa1が嵌合する第1リブ用溝部12c1が設けられる。
底部11における第1凹部用溝部12b1と第2凹部用溝部12b2の間であって、第1凹部用溝部12b1に近い側には、発熱体20の第2リブa2が嵌合する第2リブ用溝部12c2が設けられ、第2凹部用溝部12b2に近い側には、発熱体20の第3リブa3が嵌合する第3リブ用溝部12c3が設けられる。
底部11における第2凹部用溝部12b2と第2フランジ用溝部12a2の間には、発熱体20の第4リブa4が嵌合する第4リブ用溝部12c4が設けられる。
【0031】
第2突起部11bと第3突起部11cとの間に第2カシメ治具52が嵌め合わせ出来るように、第2突起部11bと第3突起部11cと底部11とで囲まれた第3空間103は、第2カシメ治具52の下部(底部11と接触する側の部分)と略同じ形状(本実施形態では、略ドーナツ型形状)を有する。
【0032】
内側フランジ21a、外側フランジ21b、第1リブa1〜第4リブa4、第1凹部h1、第2凹部h2を含む発熱体20は、鍋本体10の底部11よりも硬度が高いフェライト系ステンレスなどの磁性体材で一体的に構成され、2.0mm〜2.5mm厚の中抜き板形状(たとえば中抜き円板形状)を有する。
【0033】
発熱体20における底部11と接触する側の面(下面20b)には、内側周縁部に、底部11に向かって延び半径方向内側に向かって突出する内側フランジ21aが一体的に形成され、外側周縁部に、底部11に向かって延び半径方向外側に向かって突出する外側フランジ21bが一体的に形成され、内側フランジ21aと外側フランジ21bの間に、上面20aが凹んで下面20bが突出する断面コの字形状の第1凹部h1と第2凹部h2が形成され、底部11に向かって突出し内側フランジ21aの側面を囲む複数のリング状のリブ(第1リブa1〜第4リブa4)が一体的に形成される。
【0034】
第1リブa1は、内側フランジ21aと第1凹部h1の間に設けられる。
第2リブa2は、第1凹部h1と第2凹部h2の間であって、第1凹部h1に近い側に設けられる。
第3リブa3は、第1凹部h1と第2凹部h2の間であって、第2凹部h2に近い側に設けられる。
第4リブa4は、第2凹部h2と外側フランジ21bの間に設けられる。
【0035】
第1リブa1は、内側フランジ21aの側面を囲み、内側フランジ21aを構成し底部11に向かって延びる部分の外周壁は、第1リブa1の内周壁と対向する位置関係にある。
第1凹部h1は、第1リブa1の側面を囲み、第1リブa1の外周壁は、第1凹部h1の下面20b側における内周壁と対向する位置関係にある。
第2リブa2は、第1凹部h1の下面20b側における側面を囲み、第1凹部h1の下面20b側における外周壁は、第2リブa2の内周壁と対向する位置関係にある。
第3リブa3は、第2リブa2の側面を囲み、第2リブa2の外周壁は、第3リブa3の内周壁と対向する位置関係にある。
第2凹部h2は、第3リブa3の側面を囲み、第3リブa3の外周壁は、第2凹部h2の下面20b側における内周壁と対向する位置関係にある。
第4リブa4は、第2凹部h2の下面20b側における側面を囲み、第2凹部h2の下面20b側における外周壁は、第4リブa4の内周壁と対向する位置関係にある。
外側フランジ21bは、第4リブa4の側面を囲み、第4リブa4の外周壁は、外側フランジ21bの内周壁と対向する位置関係にある。
【0036】
第1フランジ用溝部12a1の溝幅は、内側フランジ21aの半径方向の寸法(内側フランジ21aにおける第1フランジ用溝部12a1と対向する部分の寸法)に比べて、3〜4%小さい(例えば、第1フランジ用溝部12a1の横幅:2.7mm、内側フランジ21aの半径方向の寸法:2.8mm)。
第2フランジ用溝部12a2の溝幅は、外側フランジ21bの半径方向の寸法(外側フランジ21bにおける第2フランジ用溝部12a2と対向する部分の寸法)に比べて、3〜4%小さい(例えば、第2フランジ用溝部12a2の横幅:2.7mm、外側フランジ21bの半径方向の寸法:2.8mm)。
【0037】
第1凹部用溝部12b1の溝幅は、第1凹部h1における第1凹部用溝部12b1と対向する領域(第1底領域h1a)の半径方向の寸法に比べて、4〜5%小さい(例えば、第1凹部用溝部12b1の溝幅:8.6mm、第1底領域h1aの半径方向の寸法:9.0mm)。
第2凹部用溝部12b2の溝幅は、第2凹部h2における第2凹部用溝部12b2と対向する領域(第2底領域h2a)の半径方向の寸法に比べて、4〜5%小さい(例えば、第2凹部用溝部12b2の溝幅:8.6mm、第2底領域h2aの半径方向の寸法:9.0mm)。
【0038】
第1リブ用溝部12c1の溝幅は、第1リブa1の半径方向の厚さに比べて、20%小さい(例えば、第1リブ用溝部12c1の溝幅:1.6mm、第1リブa1の厚さ:2.0mm)。
第2リブ用溝部12c2の溝幅は、第2リブa2の半径方向の厚さに比べて、20%小さい(例えば、第2リブ用溝部12c2の溝幅:1.6mm、第2リブa2の厚さ:2.0mm)。
第3リブ用溝部12c3の溝幅は、第3リブa3の半径方向の厚さに比べて、20%小さい(例えば、第3リブ用溝部12c3の溝幅:1.6mm、第3リブa3の厚さ:2.0mm)。
第4リブ用溝部12c4の溝幅は、第4リブa4の半径方向の厚さに比べて、20%小さい(例えば、第4リブ用溝部12c4の溝幅:1.6mm、第4リブa4の厚さ:2.0mm)。
【0039】
内側フランジ21a、第1リブa1、第1凹部h1、第2リブa2、第3リブa3、第2凹部h2、第4リブa4、外側フランジ21bは、内側周縁部の内側に形成された孔21c(内側周縁部の外形を形成する円形)の中心を通る軸LXを中心とした同心円状に配置される。
【0040】
下面20bにおける、内側フランジ21aと第1リブa1との間には、第1溝g1が形成され、第1リブa1と第1凹部h1との間には、第2溝g2が形成され、第1凹部h1と第2リブa2との間には、第3溝g3が形成され、第2リブa2と第3リブa3との間には、第4溝g4が形成され、第3リブa3と第2凹部h2との間には、第5溝g5が形成され、第2凹部h2と第4リブa4との間には、第6溝g6が形成され、第4リブa4と外側フランジ21bとの間には、第7溝g7が形成される。
【0041】
第1凹部h1、第2凹部h2を除くと、発熱体20の上面20aの横断面は、略中抜き円形状を有し、発熱体20の縦断面は、外側周縁部と内側周縁部が他の領域よりも薄くなるように上面20aに段差を設けた略凸型形状を有する。
【0042】
発熱体20は、底部11における第1突起部11aと第2突起部11bの間(第2空間102)に、取り付けられ、第1リブa1〜第4リブa4と第1凹部h1と第2凹部h2を溝部12(第1リブ用溝部12c1など)に押しつけることとカシメによって固定される。
【0043】
具体的には、発熱体20の上面20aを底部11に近づくように押して、発熱体20における内側フランジ21aが底部11における第1フランジ用溝部12a1に嵌め込まれ、外側フランジ21bが底部11における第2フランジ用溝部12a2に嵌め込まれ、第1凹部h1が底部11における第1凹部用溝部12b1に嵌め込まれ、第2凹部h2が底部11における第2凹部用溝部12b2に嵌め込まれ、第1リブa1〜第4リブa4が底部11における第1リブ用溝部12c1〜第4リブ用溝部12c4に嵌め込まれることにより、発熱体20の底部11への一次的な固定(第1固定)が行われる。
【0044】
第1固定の後、発熱体20が取り付けられる領域の周囲に設けられた突起部(第1突起部11aと第2突起部11b)を発熱体20の周縁部のフランジがある部分を覆うように変形させるカシメにより、発熱体20の底部11への二次的な固定(第2固定)が行われる。
【0045】
カシメが行われる際には、突起部(第1突起部11aと第2突起部11b)の側面における発熱体20と隣接しない側(第1空間101や第3空間103)に突起部(第1突起部11aと第2突起部11b)が変形しないように、治具(第1カシメ治具51、第2カシメ治具52)が第1空間101や第3空間103に取り付けられる。
【0046】
第1カシメ治具51は、略柱形状(たとえば円柱形状)を有し、第2カシメ治具52は、略中空柱形状(たとえば中空柱形状)を有し、発熱体20を鍋本体10の底部11に取り付ける際のカシメ治具として用いられる。
【0047】
第1カシメ治具51や第2カシメ治具52は、第1突起部11a、第2突起部11bよりも硬い素材で構成される。
【0048】
次に、発熱体20を鍋本体10の底部11へ取り付ける手順を説明する。
【0049】
鍋本体10の底部11を上にした状態(図1図2図8図9参照)で、孔21cに第1突起部11aが入るように、発熱体20を第2空間102に挿入する(発熱体挿入工程、図3図10参照)。
この状態では、発熱体20における内側フランジ21a、外側フランジ21b、第1凹部h1、第2凹部h2、第1リブa1〜第4リブa4の先端部分(底部11と対向する側の部分)が、底部11における第1フランジ用溝部12a1、第2フランジ用溝部12a2、第1凹部用溝部12b1、第2凹部用溝部12b2、第1リブ用溝部12c1〜第4リブ用溝部12c4の開口部分と接触するが、他の領域(第1溝g1〜第7溝g7)は接触しない。
【0050】
発熱体20を底部11に近づくように、発熱体20の上面20aを押し、発熱体20における内側フランジ21aが底部11における第1フランジ用溝部12a1に嵌め込まれ、外側フランジ21bが底部11における第2フランジ用溝部12a2に嵌め込まれ、第1凹部h1が底部11における第1凹部用溝部12b1に嵌め込まれ、第2凹部h2が底部11における第2凹部用溝部12b2に嵌め込まれ、第1リブa1〜第4リブa4が底部11における第1リブ用溝部12c1〜第4リブ用溝部12c4に嵌め込まれ、第1溝g1〜第7溝g7を底部11と接触させる(押し込み工程(第1固定)、図4図11参照)。
【0051】
底部11に設けられた第1フランジ用溝部12a1、第2フランジ用溝部12a2は、溝幅がフランジの厚さよりも小さいが、鍋本体10は発熱体20よりも柔らかい(発熱体20の硬度が、鍋本体10(の少なくとも底部11)の硬度よりも高い)ため、第1フランジ用溝部12a1、第2フランジ用溝部12a2は、内側フランジ21a、外側フランジ21bを底部11に食い込ませるガイドとして機能し、当該押し込み工程によって、内側フランジ21a、外側フランジ21bは、底部11における第1フランジ用溝部12a1、第2フランジ用溝部12a2に食い込まれる。
【0052】
底部11に設けられた第1凹部用溝部12b1、第2凹部用溝部12b2は、溝幅が凹部の底領域の厚さよりも小さいが、鍋本体10は発熱体20よりも柔らかいため、第1凹部用溝部12b1、第2凹部用溝部12b2は、第1凹部h1、第2凹部h2を底部11に食い込ませるガイドとして機能し、当該押し込み工程によって、第1凹部h1、第2凹部h2は、底部11における第1凹部用溝部12b1、第2凹部用溝部12b2に食い込まれる。
【0053】
底部11に設けられた第1リブ用溝部12c1〜第4リブ用溝部12c4は、溝幅がリブの厚さよりも小さいが、鍋本体10は発熱体20よりも柔らかいため、第1リブ用溝部12c1〜第4リブ用溝部12c4は、第1リブa1〜第4リブa4を底部11に食い込ませるガイドとして機能し、当該押し込み工程によって、第1リブa1〜第4リブa4は、底部11における第1リブ用溝部12c1〜第4リブ用溝部12c4に食い込まれる。
【0054】
本実施形態では、第1リブa1〜第4リブa4は、先端と根元部分の厚さが同じ形状を有する形態を示すが、食い込みを確実に行わせるため、第1リブa1〜第4リブa4の先端が、根元部分に比べて薄く尖った形状を有する形態であってもよい。
【0055】
なお、溝部12(第1リブ用溝部12c1など)は、当該溝部12の溝幅が、当該溝部12に嵌め込む突起物(第1リブa1など)の厚さよりも小さく(狭く)なるように構成され、力を入れて発熱体20の上面20aを押して嵌め込みをする必要がある。
このとき、第1凹部h1における底部11と略平行で第1凹部用溝部12b1と対向する領域(第1底領域h1a)が底部11から離れる方向に撓み、第2凹部h2における底部11と略平行で第2凹部用溝部12b2と対向する領域(第2底領域h2a)が底部11から離れる方向に撓んだ状態で、発熱体20が底部11に嵌め込まれる。
【0056】
第1カシメ治具51が第1空間101に嵌め込まれ、第2カシメ治具52が第3空間103に嵌め込まれる(嵌め込み工程、図5図12参照)。
なお、嵌め込み工程のあとに、発熱体挿入工程や押し込み工程が行われる形態であってもよい。
【0057】
第1カシメ治具51が第1空間101に嵌め込まれ、第2カシメ治具52が第3空間103に嵌め込まれた状態で、第1突起部11aの第1斜面11a1と第2突起部11bの第2斜面11b1を押し、発熱体20における内側フランジ21aと外側フランジ21bを覆うように第1突起部11aや第2突起部11bを変形させて、第2空間102に挿入された発熱体20を固定する(カシメ工程(第2固定)、図6図13参照)。
【0058】
第1カシメ治具51や第2カシメ治具52を取り外しする(取り外し工程、図7図14参照)。
【0059】
カシメによる固定後、第1突起部11a、発熱体20、第2突起部11b、第3突起部11cの表面が平らになる(側面から見て先端部が略一直線上になる)ように、これらの表面を削る削り取り工程(不図示)が更に行われる形態であってもよい。
【0060】
かかる削り取り工程の後も、第1突起部11aを使ったカシメ(変形した第1突起部11aの一部が、発熱体20の内側フランジ21aを覆って固定すること)や、第2突起部11bを使ったカシメ(変形した第2突起部11bの一部が、発熱体20の外側フランジ21bを覆って固定すること)が維持されるように、発熱体20の厚さや周縁部の寸法、第1突起部11aや第2突起部11bの高さ、削り取り量などが決定される。
【0061】
本実施形態では、発熱体20における上面20aを押して、発熱体20における複数のリング形状の突起物(第1リブa1など)を鍋本体10の底部11に設けられた溝部12(第1リブ用溝部12c1など)に嵌め込むことにより、発熱体20の底部11への一次的な固定(第1固定)が行われ、さらにカシメにより、発熱体20の底部11への二次的な固定(第2固定)が行われる。
【0062】
このため、当該リング形状の突起物を設けずにカシメだけで発熱体20の底部11への固定を行う形態に比べて、底部11と発熱体20との固定状態を維持しやすい。
リング形状の突起物(内側フランジ21a、外側フランジ21b、第1凹部h1、第2凹部h2、第1リブa1〜第4リブa4)は、底部11に設けられた溝部12(第1フランジ用溝部12a1、第1凹部用溝部12b1、第2凹部用溝部12b2、第2フランジ用溝部12a2、第1リブ用溝部12c1〜第4リブ用溝部12c4)に嵌め込まれるため、当該溝部12が設けられない形態に比べて、当該突起物が座屈せず且つ入り込みやすく出来る。
【0063】
溝部12(第1凹部用溝部12b1など)は、当該溝部12の溝幅が、当該溝部12に嵌め込む突起物(第1凹部h1など)の厚さよりも小さくなるように構成されるので、第1凹部h1における第1底領域h1aが底部11から離れる方向に撓み、第2凹部h2における第2底領域h2aが底部11から離れる方向に撓んだ状態で、発熱体20が底部11に嵌め込まれる。
かかる撓んだ部分(第1底領域h1a、第2底領域h2a)の撓み量は、熱によって変動し、当該撓み量の変動により、鍋本体10と発熱体20の熱膨張係数の差に基づく異音発生を防ぐことが出来る。
【0064】
例えば、調理器1が空だき状態になるなど、鍋本体10の底面の温度が上昇し、鍋本体10よりも発熱体20が大きく膨張した場合には、第1底領域h1aと第2底領域h2aの撓み量が大きくなる(図15参照)。
また、調理器1を水中に入れるなど、鍋本体10の底面の温度が下降し、鍋本体10よりも発熱体20が大きく収縮した場合には、第1底領域h1aと第2底領域h2aの撓み量が小さくなる(図16参照)。
図11図14は、撓み量が中程度で、図15は、発熱体20が図14の状態よりも膨張して撓み量が大きくなった状態を示し、図16は、発熱体20が図14の状態よりも収縮して撓み量が小さくなった状態を示す。
【0065】
すなわち、凹部(第1底領域h1aと第2底領域h2a)の変形により、鍋本体10と発熱体20の膨張差を吸収し、大きく膨張したり収縮したりした場合でも、発熱体20と鍋本体10の固定状態を維持しやすく出来る。
【0066】
また、当該複数のリング形状の突起物の分だけ、底部11と発熱体20の接触面積が大きくすることが出来るため、発熱体20から鍋本体10への熱伝導効率を高くすることが出来る。
【0067】
また、リング形状の突起物(第1リブa1〜第4リブa5)の突出量(深さ)を大きくして、底部11への食い込み量を多くして、当該一次的な固定を強くすることも容易に出来る。
【0068】
また、カシメにより、内側フランジ21aの内側端部は、第1突起部11aが変形したものによって覆われ、外側フランジ21bの外側端部は、第2突起部11bが変形したものによって覆われ、これにより、底部11と発熱体20の隙間から水などが浸入しにくく出来る。
また、第1カシメ治具51、第2カシメ治具52を用いることにより、所定の方向(形状)にカシメによる変形方向を誘導しやすいメリットがある。
【符号の説明】
【0069】
1 調理器
10 鍋本体
11 底部
11a〜11c 第1突起部〜第3突起部
11a1 第1斜面
11b1 第2斜面
12 溝部
12a1、12a2 第1フランジ用溝部、第2フランジ用溝部
12b1、12b2 第1凹部用溝部、第2凹部用溝部
12c1〜12c4 第1リブ用溝部〜第4リブ用溝部
20 発熱体
20a 発熱体の上面(底部と接触しない側の面、第2面)
20b 発熱体の下面(底部と接触する側の面、第1面)
21a 内側フランジ
21b 外側フランジ
21c 孔
51、52 第1カシメ治具、第2カシメ治具
101〜103 第1空間〜第3空間
a1〜a4 第1リブ〜第4リブ
g1〜g7 第1溝〜第7溝
h1、h2 第1凹部、第2凹部
h1a、h2a 第1底領域、第2底領域
LX 内側周縁部の内側に形成された孔の中心を通る軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16