【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分光測定装置の第1態様は、液体成分と粒子成分を含む試料に照射光を照射したときに該試料から発せられた光を分光する分光光学系と、前記分光光学系で分光された光を検出する検出器とを備えた分光測定装置において、
a)前記液体成分に特異的な吸収波長又は透過波長の光が透過する性質を有する、互いに平行な光入射面及び光出射面を有する試料セルと、
b)前記光入射面を通して前記試料セル中の試料に前記照射光を照射する光照射手段と、
c)前記試料セルに収容された試料に超音波を照射することにより前記光入射面及び前記光出射面と平行な方向に沿って腹及び節が並ぶ定在波を該試料中に形成する定在波形成手段と、
d)前記試料セルと前記分光光学系の間に配置された、前記試料セルから出射した光の一部を集光する集光レンズと、該集光レンズによって集光された光を平行光に変換するコリメータレンズとを有する測定光学系と
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る分光測定装置の第2態様は、
液体成分と粒子成分を含む試料に照射光を照射したときに該試料から発せられた光を分光する分光光学系と、前記分光光学系で分光された光を検出する検出装置とを備えた分光測定装置において、
a)前記液体成分に特異的な吸収波長又は透過波長の光であって前記粒子成分から発せられる光が透過する性質を有する、互いに平行な光入射面及び光出射面を有する試料セルと、
b)前記光入射面を通して前記試料セル中の試料に前記照射光を照射する光照射手段と、
c)前記試料セルに収容された試料に超音波を照射することにより前記光入射面及び前記光出射面と平行な方向に沿って腹及び節が並ぶ定在波を該試料中に形成する定在波形成手段と、
d)前記試料セルと前記分光光学系の間に配置された、前記試料セルから出射した光の一部を平行光に変換するコリメータレンズと、該コリメータレンズによって平行光に変換された光を所定の結像面に結像する結像レンズとを有する測定光学系と
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る分光測定装置においては、まず、定在波形成手段により試料中に定在波を形成する。これにより、本発明に係る分光測定装置では、音響放射圧により、試料中の粒子成分が定在波の節近傍に集められ、試料中の粒子成分と液体成分が分離される(非特許文献1、2参照)。この状態で、光照射手段からの照射光が試料セルの光入射面を通して試料に照射される。このとき、定在波の節近傍と腹近傍とで試料の濃度や含まれる液体成分と粒子成分の割合が異なるため、節近傍と腹近傍とでは異なる性質の光が発せられることになる。例えば、粒子成分が多く存在する節近傍からは照射光が粒子成分によって散乱された散乱光が発せられ、液体成分が多く存在する腹近傍からは、照射光の透過光が発せられる。従って、測定光学系によって、試料中に形成された定在波の節近傍及び腹近傍から発せられた性質の異なる光を分離し、いずれか一方のみを分光光学系に導入することにより、試料中の特定の成分の分光特性を選択的に測定することができる。
【0012】
この場合、液体成分から発せられた透過光は方向が揃った光であるのに対して、粒子成分から発せられた散乱光は様々な方向に向かった放射される光であることから、第1態様に係る分光測定装置においては、前記測定光学系を、前記試料セルと前記分光光学系の間に配置された、前記試料セルから出射された光の一部を集光する集光レンズと、該集光レンズによって集光された光を平行光に変換するコリメータレンズと、前記集光レンズの前記コリメータレンズ側の焦点位置に配置されたピンホールとから構成することにより、液体成分から発せられた光(透過光)を選択的に分光光学系に導入する。
【0013】
一方、第2態様に係る分光測定装置においては、前記測定光学系を、前記試料セルと前記分光光学系の間に配置された、前記試料セルから出射された光の一部を平行光に変換するコリメータレンズと、該コリメータレンズによって平行光に変換された光を所定の結像面に結像する結像レンズと、前記コリメータレンズの前記結像レンズ側の焦点位置に配置された、該コリメータレンズによって集光された光を遮蔽する遮光板とから構成することにより、粒子成分から発せられた光(散乱光)を選択的に分光光学系に導入する。
【0014】
本発明の第1、第2態様に係る分光測定装置においては、
前記光照射手段が、光源と、該光源からの光を集光する集光レンズと、該集光レンズによって集光された光を平行光に整形するコリメータレンズと、集光レンズとコリメータレンズの共焦点に配置された開口絞りとを備え、試料セルの光入射面及び光出射面と直交する光軸を有する光を前記試料セル中の試料に照射すると良い。
このような構成によれば、液体成分から発せられる透過光の多くが試料セルの光入射面及び光出射面と直交する光軸を有する平行光となるため、粒子成分から発せられる散乱光と分離しやすくなる。
【0015】
また、本発明の第1、第2態様に係る分光測定装置においては、
前記分光光学系を、前記測定光学系を通過した光である測定を第1測定光と第2測定光に分割する分割光学系と、前記第1測定光と前記第2測定光の間に光路長差を付与する光路長差付与手段と、前記光路長差付与手段が付与する光路長差を連続的に変化させる光路長差変化手段と、前記第1測定光と前記第2測定光を干渉させる干渉光学系とから構成し、
前記干渉光学系によって形成された前記第1測定光と前記第2測定光の干渉光の強度を検出する検出部と、前記光路長差変化手段により前記光路長差を変化させることにより前記検出器が検出する干渉光の強度変化から前記測定光のインターフェログラムを求め、該インターフェログラムをフーリエ変換することにより該測定光のスペクトルを取得する処理部を設けると良い。
【0016】
また、本発明に係る分光測定方法は、液体成分と粒子成分を含む試料に照射光を照射したときに該試料から発せられた光を分光光学系で分光し、前記試料の分光特性を測定する分光測定方法であって、
前記液体成分に特異的な吸収波長又は透過波長の光が透過する性質を有する、互いに平行な光入射面及び光出射面を有する試料セルに前記試料を収容し、
前記試料セル中の試料に超音波を照射することにより前記光入射面及び前記光出射面と平行な方向又は直交する方向に沿って腹及び節が並ぶ定在波を該試料中に形成させ、
前記試料セルと前記分光光学系の間に集光レンズ及びコリメータレンズを配置するとともに前記集光レンズの前記コリメータレンズ側の焦点位置にピンホールを配置して、前記試料セル中の試料に照射光を照射したときに該試料セルから出射された光の一部を前記集光レンズで集光した後、前記コリメータレンズで平行光に変換し、前記ピンホールを通過させた後、前記分光光学系に導入することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明に係る分光測定方法は、液体成分と粒子成分を含む試料に照射光を照射したときに該試料から発せられた光を分光光学系で分光し、前記試料の分光特性を測定する分光測定方法であって、
前記液体成分に特異的な吸収波長又は透過波長の光が透過する性質を有する、互いに平行な光入射面及び光出射面を有する試料セルに前記試料を収容し、
前記試料セル中の試料に超音波を照射することにより前記光入射面及び前記光出射面と平行な方向又は直交する方向に沿って腹及び節が並ぶ定在波を該試料中に形成させ、
前記試料セルと前記分光光学系の間にコリメータレンズと結像レンズとを配置するとともに、前記コリメータレンズの前記結像レンズ側の焦点位置に遮蔽板を配置し、前記試料セル中の試料に照射光を照射したときに該試料セルから出射された光の一部を前記コリメータレンズで平行光に変換し、前記結像レンズによって所定の結像面に結像させて前記分光光学系に導入し、前記コリメータレンズによって集光された光を前記遮蔽板で遮蔽することを特徴とする。
【0018】
上記分光測定方法においては、前記分光光学系が、導入された光を第1測定光と第2測定光に分割する分割光学系と、前記第1測定光と前記第2測定光の間に光路長差を付与する光路長差付与手段と、
前記光路長差付与手段が付与する光路長差を連続的に変化させる光路長差変化手段と、
前記第1測定光と前記第2測定光を干渉させる干渉光学系とを備え、
前記光路長差変化手段により前記光路長差を変化させたときの前記干渉光の強度を検出することにより前記測定光のインターフェログラムを求め、該インターフェログラムをフーリエ変換することにより前記分光光学系に導入された光のスペクトルを取得するように構成すると良い。