特許第6708889号(P6708889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6708889
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】溶接訓練用治具
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/00 20060101AFI20200601BHJP
   B23K 37/053 20060101ALI20200601BHJP
   B23K 9/028 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B23K37/00 301Z
   B23K37/053 A
   B23K37/053 G
   B23K9/028 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-62380(P2019-62380)
(22)【出願日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】519057036
【氏名又は名称】岬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】堀内 英之
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−28586(JP,U)
【文献】 特表2017−521716(JP,A)
【文献】 特開2012−218058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/00
B23K 37/053
B23K 9/028
G09B 9/00
G09B 19/00
G09B 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの管体を溶接する訓練を行うための溶接訓練用治具であって、
複数の第1管体を、前記複数の第1管体それぞれの筒軸方向に直交する一方向に並列した状態で支持する第1支持部材と、
複数の第2管体を、前記複数の第1管体それぞれの筒軸方向において前記複数の第1管体それぞれに隣接し、前記複数の第2管体それぞれの筒軸方向に直交する一方向に並列した状態で支持する第2支持部材と、
前記複数の第1管体および前記複数の第2管体に対向して配置されたパネルと、を備え、
前記第2支持部材は、前記複数の第1管体それぞれの前記複数の第2管体側の第1端部と前記複数の第2管体それぞれの前記複数の第1管体側の第2端部とが突き合わされ、前記第1端部および前記第2端部と前記パネルとの間の距離が50mm以上110mm以下の長さとなるように前記複数の第2管体を支持する、
溶接訓練用治具。
【請求項2】
隣り合う2つの第1管体の間の距離および隣り合う2つの第2管体の間の距離は、50mm以上110mm以下の長さに設定されている、
請求項1に記載の溶接訓練用治具。
【請求項3】
前記複数の第1管体は、前記第1支持部材に対して着脱自在であり、
前記複数の第2管体は、前記第2支持部材に対して着脱自在である、
請求項1または2に記載の溶接訓練用治具。
【請求項4】
地面に載置され、複数の第3管体を、前記複数の第3管体それぞれの筒軸方向に直交する一方向に並列した状態で支持する第3支持部材と、
地面に載置され、複数の第4管体を、前記複数の第3管体それぞれの筒軸方向において前記複数の第3管体それぞれに隣接し、前記複数の第4管体それぞれの筒軸方向に直交する一方向に並列した状態で支持する第4支持部材と、を更に備え、
前記第4支持部材は、前記複数の第3管体それぞれの前記複数の第4管体側の第3端部と前記複数の第4管体それぞれの前記複数の第3管体側の第4端部とが突き合わされ、前記第3端部および前記第4端部と前記地面との間の距離が50mm以上110mm以下の長さとなるように前記複数の第4管体を支持する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の溶接訓練用治具。
【請求項5】
前記複数の第3管体は、前記第3支持部材に対して着脱自在であり、
前記複数の第4管体は、前記第4支持部材に対して着脱自在である、
請求項4に記載の溶接訓練用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接訓練用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの管体の端部同士を突き合わせた状態で2つの管体の開先を溶接する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。この種の溶接技術は、工場、発電所等における配管の敷設工事において利用されている。また、このような配管の敷設工事における配管同士の溶接は、溶接装置を利用した自動化も進んでいるが、依然として溶接士による手溶接により行われることが多い。特に、比較的狭隘な場所に設置された配管同士の溶接のように溶接装置の配置が困難な場所での溶接は、熟練した溶接士により行われるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−267248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工業、発電所等における設備の複雑化または省スペース化に伴い、比較的狭隘な場所に設置された配管同士の溶接の需要が高まりつつある。そのため、熟練した溶接士の育成が求められている。そして、溶接士の育成のために、実際に高度な溶接技能が要求される場所を再現して溶接訓練を行える環境の構築が要請されつつある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、高度な溶接技能が要求される場所を再現できる溶接訓練用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る溶接訓練用治具は、
2つの管体を溶接する訓練を行うための溶接訓練用治具であって、
複数の第1管体を、前記複数の第1管体それぞれの筒軸方向に直交する一方向に並列した状態で支持する第1支持部材と、
複数の第2管体を、前記複数の第1管体それぞれの筒軸方向において前記複数の第1管体それぞれに隣接し、前記複数の第2管体それぞれの筒軸方向に直交する一方向に並列した状態で支持する第2支持部材と、
前記複数の第1管体および前記複数の第2管体に対向して配置されたパネルと、を備え、
前記第2支持部材は、前記複数の第1管体それぞれの前記複数の第2管体側の第1端部と前記複数の第2管体それぞれの前記複数の第1管体側の第2端部とが突き合わされ、前記第1端部および前記第2端部と前記パネルとの間の距離が50mm以上110mm以下の長さとなるように前記複数の第2管体を支持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2支持部材が、複数の第1管体それぞれの複数の第2管体側の第1端部と複数の第2管体それぞれの複数の第1管体側の第2端部とが突き合わされ、第1端部および第2端部とパネルとの間の距離が50mm以上110mm以下の長さとなるように複数の第2管体を支持する。これにより、互いに溶接される第1管体の第1端部と第2管体の第2端部と、パネルと、の間の距離が、一般的な大きさの溶接トーチ1つの外形寸法と同程度にすることができるので、第1管体と第2管体とを溶接するのに高度な技能が必要とされる環境を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る溶接訓練用治具を示し、(A)は側面図であり、(B)は(A)のA−A線における断面矢視図である。
図2】(A)は実施の形態に係る溶接訓練用治具の図1(A)のB−B線における断面矢視図であり、(B)は実施の形態に係る保持部の側面図である。
図3】(A)は実施の形態に係る溶接訓練用治具の使用方法を説明するための図であり、(B)は実施の形態に係る溶接訓練用治具の一使用例を示す写真である。
図4】(A)は実施の形態に係る溶接訓練用治具の一使用例を示す写真であり、(B)は実施の形態に係る溶接訓練用治具の他の一使用例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る溶接訓練用治具について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態に係る溶接訓練用治具は、2つの管体を溶接する訓練を行うためのものである。この溶接訓練用治具は、複数の第1管体を、複数の第1管体それぞれの筒軸方向に直交する一方向に並列した状態で支持する第1支持部材と、複数の第2管体を、複数の第1管体それぞれの筒軸方向において複数の第1管体それぞれに隣接し、複数の第2管体それぞれの筒軸方向に直交する一方向に並列した状態で支持する第2支持部材と、複数の第1管体および複数の第2管体に対向して配置されたパネルと、を備える。そして、第2支持部材は、複数の第1管体それぞれの複数の第2管体側の第1端部と第2管体それぞれの複数の第1管体側の第2端部とが突き合わされ、第1端部および第2端部とパネルとの間の距離が50mm以上110mm以下の長さとなるように複数の第2管体を支持する。
【0010】
図1(A)、図1(B)および図2に示すように、本実施の形態に係る溶接訓練用治具1は、矩形枠状の枠体21と、矩形枠状であり枠体21の+Z方向側に配置された枠体22と、枠体21から+Z方向側へ延在し先端部で枠体22を支持する2つの柱23および2つの柱24と、2つの柱24を支持する2つの柱支持部材25と、を備える。また、溶接訓練用治具1は、5つの管体TU1を支持する支持部材11と、5つの管体TU1へ溶接する対象である5つの管体TU2を支持する支持部材12と、管体TU1、TU2の−Y方向において管体TU1、TU2に対向して配置されたパネル17と、を備える。更に、溶接訓練用治具1は、5つの管体TU3を支持する支持部材13と、5つの管体TU3へ溶接する対象である5つの管体TU4を支持する支持部材14と、を備える。また、溶接訓練用治具1は、5つの管体TU5を支持する支持部材15と、5つの管体TU5へ溶接する対象である5つの管体TU6を支持する支持部材16と、管体TU5、TU6の+Z方向において管体TU5、TU6に対向して配置されたパネル18と、を備える。また、枠体21には、パネル17の−Z方向側の端部を係止するための係止部27が配設されている。
【0011】
更に、溶接訓練用治具1は、枠体21、22と柱23、24とで囲まれる空間の±X方向側を覆うように配置されたパネル191、192を備える。なお、図1(A)では、パネル192の図示を省略している。パネル191、192は、それぞれ、固定具29により柱24に固定されている。固定具29としては、柱24に対して着脱自在なものを採用することができ、例えばボルトとナットとを組み合わせたものが採用される。固定具29を柱24から取り外すことにより、パネル191、192を溶接訓練用治具1から離脱させることができる。このように、パネル191、192を溶接訓練用治具1に対して着脱することにより、溶接訓練用治具1を使用した溶接訓練の難易度を変更することができる。
【0012】
管体TU1は、2つの柱24の間においてその筒軸方向がZ軸方向に一致する姿勢で配置された第1管体であり、管体TU2は、2つの柱24の間においてその筒軸方向がZ軸方向に一致する姿勢で管体TU1の+Z方向側に配置された第2管体である。また、管体TU3は、枠体21の内側においてその筒軸方向がY軸方向に一致する姿勢で配置された第3管体であり、管体TU4は、枠体21の内側においてその筒軸方向がY軸方向に一致する姿勢で管体TU3の−Y方向側に配置された第4管体である。更に、管体TU5は、枠体22の内側においてその筒軸方向がY軸方向に一致する姿勢で配置された第1管体であり、管体TU6は、枠体22の内側においてその筒軸方向がY軸方向に一致する姿勢で管体TU5の−Y方向側に配置された第2管体である。管体TU1、TU2、TU3、TU4、TU5、TU6は、それぞれ円筒状であり、ステンレス、アルミニウム等の金属から形成されている。
【0013】
枠体21のX軸方向の幅と枠体22のX軸方向の幅とは等しくなっている。一方、枠体21のY軸方向の長さは、枠体22のY軸方向の長さに比べて短くなっている。そして、枠体21、22を+Z方向側から見た場合、枠体21の−Y方向側の2つの角部と枠体22の−Y方向側の2つの角部とが重なるように配置されている。2つの柱23は、それぞれ、枠体21の−Y方向側の2つの角部から+Z方向へ延在し、先端部が枠体22の−Y方向側の2つの角部に固定されている。また、2つの柱24は、それぞれ、枠体21における、枠体21、22を+Z方向側から見た場合、枠体21の+Y方向側の2つの角部と重なる部位から+Z方向へ延在し、先端部が枠体22の+Y方向側の2つの角部に固定されている。2つの柱支持部材25は、それぞれ、一端部が枠体21の+Y方向側の2つの角部に固定され他端部が柱24に固定されている。また、枠体21における+Y方向側の端部には、枠体21を支持する支持部材26が配設されている。支持部材26の+X方向側の端部には、パネル191の−Z方向側の端部を係止するための係止部281が配設され、支持部材26の−X方向側の端部には、パネル192の−Z方向側の端部を係止するための係止部282が配設されている。
【0014】
支持部材11は、長尺の角柱状でありX軸方向に延在する梁部112と、梁部112の長手方向に沿って配設され管体TU1を保持する5つの保持部111と、を有し、5つの管体TU1をX軸方向に並列した状態で支持する第1支持部材である。
【0015】
保持部111は、図2(B)に示すように、梁部112に固定される基台1111と、長尺であり長手方向の一端部が基台1111に軸部1116を介して旋回自在に軸支されたアーム1112と、フック1113と、を有する。ここで、基台1111には、管体TU1が載置される溝1111aが形成されている。また、フック1113は、長尺であり、中央部に湾曲部1113bを有する。このフック1113は、長手方向の一端部がアーム1112の他端部に軸部1117を介して旋回自在に軸支され、他端部にスリット1113aが形成されている。また、保持部111は、棒状であり一部に螺子部1114aが設けられるとともに、長手方向の一端部が軸部1118を介して基台1111に旋回自在に軸支された留め具1114と、留め具1114の螺子部1114aに螺着したナット1115と、を有する。この保持部111は、図2(B)の一点鎖線で示すように、基台1111の溝1111aに管体TU1が嵌入された状態でフック1113の湾曲部1113bの内側に管体TU1が配置される形でフック1113を基台1111に被さった状態で、管体TU1を保持する。このとき、フック1113のスリット1113aに留め具1114を嵌入した状態で、留め具1114の螺子部1114aに螺着されたナット1115を締め込むことにより管体TU1が基台1111に堅固に固定される。管体TU1が保持部111に保持された状態で、ナット1115を緩めてから、図2(B)の矢印AR1に示すように留め具1114を軸部1118周りに旋回させ、その後、図2(B)の矢印AR2に示すように、フック1113を軸部1117周りに旋回させることにより、管体TU1を保持部111から取り外し可能な状態とすることができる。これにより、管体TU1が、支持部材11に対して着脱自在となっている。
【0016】
図1(A)に戻って、支持部材12は、長尺の角柱状でありX軸方向に延在する梁部122と、梁部122の長手方向に沿って配設され管体TU2を保持する5つの保持部121と、を有する第2支持部材である。保持部121は、保持部111と同様の構成である。これにより、管体TU2が、支持部材12に対して着脱自在となっている。支持部材12は、5つの管体TU2を、Z軸方向において管体TU1に隣接し、X軸方向に並列した状態で支持する。支持部材12は、管体TU1の+Z方向側の端部TU1aと管体TU2の−Z方向側の端部TU2aとが突き合わされた状態で、管体TU2を支持する。ここで、管体TU1の端部TU1aが、管体TU2の端部TU2aに溶接される第1端部であり、管体TU2の端部TU2aが、管体TU1の端部TU1aに溶接される第2端部である。また、梁部112、122は、それらの長手方向における両端部それぞれが柱24に固定されている。
【0017】
支持部材13は、図1(A)、図1(B)および図2に示すように、長尺の角柱状でありX軸方向に延在する梁部132と、梁部132の長手方向に沿って配設され管体TU3を保持する5つの保持部131と、を有する第3支持部材である。保持部131は、保持部111と同様の構成である。この支持部材13は、地面Fに載置され、5つの管体TU3をX軸方向に並列した状態で支持する。支持部材14は、長尺の角柱状でありX軸方向に延在する梁部142と、梁部142の長手方向に沿って配設され管体TU4を保持する5つの保持部141と、を有する第4支持部材である。保持部141は、保持部111と同様の構成である。支持部材14は、地面Fに載置され、5つの管体TU4を、Y軸方向において管体TU3に隣接し、X軸方向に並列した状態で支持する。ここで、管体TU3の端部TU3aが、管体TU4の端部TU4aに溶接される第3端部であり、管体TU4の端部TU4aが、管体TU3の端部TU3aに溶接される第4端部である。また、梁部132、142は、それらの長手方向における両端部が枠体21に固定されており枠体21を支持している。また、支持部材13、14が、前述の保持部131、141を有することにより、管体TU3が、支持部材13に対して着脱自在であり、管体TU4が、支持部材14に対して着脱自在となっている。また、梁部132、142それぞれの+X方向側の端部には、パネル191の−Z方向側の端部を係止するための係止部281が配設されている。更に、梁部132、142それぞれの−X方向側の端部には、パネル192の−Z方向側の端部を係止するための係止部282が配設されている。
【0018】
支持部材15は、長尺の角柱状でありX軸方向に延在する梁部152と、梁部152の長手方向に沿って配設され管体TU5を保持する5つの保持部151と、を有し、5つの管体TU5をX軸方向に並列した状態で支持する第1支持部材である。保持部151は、保持部111と同様の構成である。支持部材16は、長尺の角柱状でありX軸方向に延在する梁部162と、梁部162の長手方向に沿って配設され管体TU6を保持する5つの保持部161と、を有する第2支持部材である。保持部161は、保持部111と同様の構成である。支持部材16は、5つの管体TU6を、Y軸方向において管体TU5に隣接し、X軸方向に並列した状態で支持する。ここで、管体TU5の端部TU5aが、管体TU6の端部TU6aに溶接される第1端部であり、管体TU6の端部TU6aが、管体TU5の端部TU5aに溶接される第2端部である。また、支持部材15、16が、前述の保持部151、161を有することにより、管体TU5が、支持部材15に対して着脱自在であり、管体TU6が、支持部材16に対して着脱自在となっている。
【0019】
パネル17、18は、例えばベニヤ板から形成されている。パネル17は、支持部材11、12の梁部112、122それぞれの−Y方向側に固定され、パネル18は、支持部材15、16の梁部112、122それぞれの+Z方向側に固定されている。
【0020】
本実施の形態に係る溶接訓練用治具1では、管体TU1および管体TU2とパネル17との間の距離W1、即ち、管体TU1の端部TU1aおよび管体TU2の端部TU2aとパネル17との間の距離W1が50mm以上110mm以下の長さとなっている。また、管体TU5および管体TU6とパネル18との間の距離H2、即ち、管体TU5の端部TU5aおよび管体TU6の端部TU6aとパネル18との間の距離H2も50mm以上110mm以下の長さとなっている。この管体TU1、TU2とパネル17との間の距離W1は、一般的な溶接トーチが管体TU1、TU2とパネル17との間の隙間に1つだけ挿入できる程度の長さに設定されている。管体TU5および管体TU6とパネル18との間の距離H2も同様である。管体TU3および管体TU4と地面Fとの間の距離H1も50mm以上110mm以下の長さとなっている。
【0021】
また、隣り合う2つの管体TU1の間の距離W12、W13および隣り合う2つの管体TU2の間の距離W12、W13は、50mm以上110mm以下の長さに設定されている。また、最も+X方向側に配置された管体TU1、TU2と柱24との間の距離W11も、50mm以上110mm以下の長さに設定されている。これらの距離W11、W12、W13は、一般的な溶接トーチを隣り合う2つの管体TU1、TU2の間または管体TU1、TU2と柱24との間に1つだけ挿入できる程度の長さに設定されている。ここで、距離W11、W12、W13は、例えば105mm、140mm、150mmに設定される。隣り合う2つの管体TU3の間の距離W12、W13および隣り合う2つの管体TU4の間の距離W22、W23は、50mm以上110mm以下の長さに設定されている。また、最も+X方向側に配置された管体TU3、TU4と枠体21との間の距離W21も、50mm以上110mm以下の長さに設定されている。更に、隣り合う2つの管体TU5の間の距離W32、W33および隣り合う2つの管体TU6の間の距離W32、W33は、50mm以上110mm以下の長さに設定されている。また、最も+X方向側に配置された管体TU5、TU6と枠体22との間の距離W31も、50mm以上110mm以下の長さに設定されている。これらの距離W21、W22、W23、W31、W32、W33も、前述と同様に一般的な溶接トーチに外形寸法に基づいて設定されている。ここで、距離W21、W22、W23は、例えば105mm、140mm、150mmに設定され、距離W31、W32、W33も、例えば105mm、140mm、150mmに設定される。
【0022】
次に、本実施の形態に係る溶接訓練用治具1の使用方法について説明する。溶接訓練を行う作業者は、例えば図3(A)に示すように、まず、X軸方向で隣り合う2つの溶接対象の管体TU1、TU2の隙間から溶接トーチToを挿入する。そして、作業者は、溶接トーチToを管体TU1、TU2とパネル17との間の空間に配置した状態で、管体TU1、TU2の端部TU1a、TU2a同士の溶接の訓練を行う。このとき、作業者は、例えば図3(B)に示すように、ミラーMを使用して、管体TU1、TU2の端部TU1a、TU2aの溶接箇所を確認しながら端部TU1a、TU2a同士を溶接するという高度な溶接技能が必要とされる。また、作業者は、例えば図4(A)に示すように、X軸方向で隣り合う2つの溶接対象の管体TU3、TU4の隙間から溶接トーチToを管体TU3、TU4と地面Fとの空間に配置し、管体TU3、TU4の端部TU3a、TU4a同士の溶接の訓練を行うこともできる。更に、作業者は、例えば図4(B)に示すように、X軸方向で隣り合う2つの溶接対象の管体TU5、TU6の隙間から溶接トーチToを管体TU5、TU6とパネル18との空間に配置し、管体TU5、TU6の端部TU5a、TU6a同士の溶接の訓練を行うこともできる。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態に係る溶接訓練用治具1によれば、支持部材12が、管体TU1の管体TU2側の端部TU1aと管体TU2の管体TU1側の端部TU2aとが突き合わされ、管体TU1、TU2の端部TU1a、TU2aとパネル17との間の距離が50mm以上110mm以下の長さとなるように管体TU2を支持する。これにより、互いに溶接される管体TU1の端部TU1aと管体TU2の端部TU2aと、パネル17と、の間の距離が、一般的な大きさの溶接トーチToつの外形寸法と同程度にすることができるので、管体TU1と管体TU2とを溶接するのに高度な技能が必要とされる環境を再現することができる。
【0024】
また、本実施の形態に係る溶接訓練用治具1では、隣り合う2つの管体TU1の間の距離および隣り合う2つの管体TU2の間の距離が、50mm以上110mm以下の長さに設定されている。これにより、溶接トーチToを隣り合う2つの管体TU1または隣り合う2つの管体TU2の間から管体TU1、TU2とパネル17との間の空間へ挿入してから管体TU1、TU2同士を溶接するという高度な技能が必要とされる環境を実現できる。
【0025】
更に、本実施の形態に係る溶接訓練用治具1によれば、支持部材14が、管体TU3の管体TU4側の端部TU3aと管体TU4の管体TU3側の端部TU4aとが突き合わされ、管体TU3、TU4の端部TU3a、TU4aとパネル18との間の距離が50mm以上110mm以下の長さとなるように管体TU2を支持する。これにより、互いに溶接される管体TU3の端部TU3aと管体TU4の端部TU4aと、地面Fと、の間の距離が、一般的な大きさの溶接トーチToつの外形寸法と同程度にすることができるので、高度な技能が必要とされる、地面F近傍に敷設された管体TU3、TU4同士を溶接する環境を再現することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば管体TU1、TU2がそれらの筒軸がZ軸と交差する姿勢で配置されていてもよい。例えば管体TU1の端部TU1aと管体TU2の端部TU2aとパネル17との間の距離は、50mm以上110mm以下の長さであるが、管体TU1、TU2における他方の端部TU1a、TU2aとパネル17との間の距離が、110mmよりも長くなっていてもよい。即ち、管体TU1、TU2が互いに突き合わされた端部TU1a、TU2aを頂部とするV字状に配置されていてもよい。或いは、管体TU3、TU4、TU5、TU6が、それらの筒軸がY軸と交差する姿勢で配置されていてもよい。
【0027】
実施の形態では、管体TU1、TU2、TU3、TU4、TU5、TU6が円筒状である例について説明したが、管体TU1、TU2、TU3、TU4、TU5、TU6の形状はこれに限定されるものではない。例えば、管体TU1、TU2、TU3、TU4、TU5、TU6が角筒状であってもよいし、断面形状がその他の形状である筒状であってもよい。
【0028】
以上、本発明の実施の形態および変形例(なお書きに記載したものを含む。以下、同様。)について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、発電設備、工場等の建設現場において管体同士を溶接するのに必要な技能訓練に好適である。
【符号の説明】
【0030】
1:溶接訓練用治具、11,12,13,14,15,16,26:支持部材、17,18,191,192:パネル、21,22:枠体、23,24:柱、25:柱支持部材、27,281,282:係止部、29:固定具、111,121,131,141,151,161:保持部、112,122,132,142,152,162:梁部、1111:基台、1111a:溝、1112:アーム、1113:フック、1113a:スリット、1113b:湾曲部、1114:留め具、1114a:螺子部、1115:ナット、1116,1117,1118:軸部、F:地面、M:ミラー、To:溶接トーチ、TU1,TU2,TU3,TU4,TU5,TU6:管体、TU1a,TU2a,TU3a,TU4a,TU5a,TU6a:端部
【要約】
【課題】高度な溶接技能が要求される場所を再現できる溶接訓練用治具を提供する。
【解決手段】溶接訓練用治具1は、5つの管体TU1をX軸方向に並列した状態で支持する支持部材11と、5つの管体TU2を、管体TU1の筒軸方向において管体TU1に隣接しX軸方向に並列した状態で支持する支持部材12と、管体TU1、TU2に対向して配置されたパネル17と、を備える。支持部材12は、管体TU1それぞれの端部TU1aと管体TU2の端部TU2aとが突き合わされ、端部TU1a、TU2aとパネル17との間の距離W1が50mm以上110mm以下の長さとなるように管体TU2を支持する。
【選択図】図1
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図2
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