(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記Ps入出口と前記感圧室との間で弁口開閉方向に摺動自在に配在された前記プランジャによって、前記Ps入出口から前記感圧室への前記吸入圧力Psの導入が阻止されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可変容量型圧縮機用制御弁。
前記プランジャが、該プランジャの最下降位置を規定するためのストッパ部に当接することによって、前記Ps入出口から前記感圧室への前記吸入圧力Psの導入が阻止されるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の可変容量型圧縮機用制御弁。
前記プランジャの受圧径と、前記ストッパ部において前記プランジャが当接する部分の受圧径とが等しく設定されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の可変容量型圧縮機用制御弁。
前記ストッパ部は、前記プランジャと当接する環状平坦面からなるシート面部と、該シート面部の内側に設けられた逆円錐台面からなる傾斜面部とを有していることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の可変容量型圧縮機用制御弁。
前記均圧通路は、前記主弁体の内部及び前記プランジャの内部を含んで構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の可変容量型圧縮機用制御弁。
前記クランク室の圧力Pcを前記Ps入出口を介して前記圧縮機の吸入室に逃がすための弁内逃がし通路が前記主弁体内又は前記弁本体内に設けられるとともに、前記弁内逃がし通路を開閉する副弁体が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の可変容量型圧縮機用制御弁。
前記クランク室の圧力Pcを前記感圧室に導き、前記主弁体の一端部に前記クランク室の圧力Pcを作用させるための均圧通路が設けられていることを特徴とする請求項15に記載の可変容量型圧縮機用制御弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の可変容量型圧縮機用制御弁では、主弁体(弁棒)にかかる冷媒圧力による開弁方向の力と閉弁方向の力とが相違すると、制御に悪影響(制御精度の低下等)を及ぼす可能性がある(例えば、上記特許文献2等参照)。詳しくは、クランク室の圧力Pcは吸入圧力Psより大きいため、この差圧(Pc−Ps)により主弁体やプランジャが閉弁方向に押し上げられ、この差圧(Pc−Ps)が大きくなると、主弁体が閉弁気味となる、弁内逃がし通路が開き気味となるなどして、制御に悪影響を及ぼすことになる。
【0006】
そこで、例えば、上記特許文献1に所載の従来の可変容量型圧縮機用制御弁では、主弁体の下端部が、吸入圧力Psが導入されるPs導入室に面し、その主弁体の下端部に吸入圧力Psが作用するようにされるとともに、弁本体に、吸入圧力Psを感圧応動部材に導き、主弁体の上端部に吸入圧力Psが作用するべく、圧縮機の吸入圧力Psを導入する吸入圧通路が設けられており、前記した主弁体に作用する冷媒圧力による制御への悪影響を受け難くなっている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に所載の従来の可変容量型圧縮機用制御弁では、前記吸入圧通路によって、主弁体にかかる冷媒圧力による開弁方向の力と閉弁方向の力とが常に同じとされるため、弁口全開時(容量(吐出量)制御オフ時)には、主弁体を全開保持しやすくなる(つまり、圧縮機オフモード性が向上する)ものの、制御弁自体の構造が複雑化するおそれがある。
【0008】
また、上記特許文献1に所載の従来の可変容量型圧縮機用制御弁では、弁本体に、圧縮機の吸入圧力Psが導入されるPs導入室が設けられるとともに、圧縮機の吸入圧力Psを感圧応動部材に導く吸入圧通路が設けられているため、弁本体の体格が大きくなる懸念もある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、主弁体に作用する冷媒圧力の影響を効果的にキャンセルさせることができるとともに、構造の複雑化・体格の大型化を回避することのできる可変容量型圧縮機用制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明に係る可変容量型圧縮機用制御弁は、基本的に、主弁体部を有する主弁体と、前記主弁体部が接離する弁口が設けられた弁室と圧縮機の吸入室に連通するPs入出口とを有し、前記弁口より上流側に圧縮機の吐出室に連通するPd導入口が設けられるとともに、前記弁口より下流側に前記圧縮機のクランク室に連通するPc入出口が設けられた弁本体と、前記主弁体を弁口開閉方向に移動させるためのプランジャを有する電磁式アクチュエータと、前記圧縮機から吸入圧力Psが前記Ps入出口を介して導入される感圧室と、前記感圧室の圧力に応じて前記主弁体を弁口開閉方向に付勢する感圧応動部材と、を備え、前記主弁体の一端部に、前記感圧室が設けられて前記吸入圧力Psが作用し、前記主弁体の他端部に、前記Pc入出口が開口せしめられて前記圧縮機からクランク室の圧力Pcが作用するようにされ、前記クランク室の圧力Pcを前記感圧室に導き、前記主弁体の一端部に前記クランク室の圧力Pcを作用させるための均圧通路が設けられ、前記弁口の全開時に、前記Ps入出口から前記感圧室への前記吸入圧力Psの導入が阻止され、前記均圧通路を介して前記クランク室の圧力Pcが前記感圧室に導入され、前記主弁体の両端部に前記クランク室の圧力Pcが作用するようにされていることを特徴としている。
【0011】
より具体的な好ましい態様では、前記主弁体の一端部に、前記感圧室が設けられ、前記主弁体の他端部に、前記Pc入出口が開口せしめられて前記圧縮機からクランク室の圧力Pcが作用するようにされるとともに、前記クランク室の圧力Pcを前記感圧室に導き、前記主弁体の一端部に前記クランク室の圧力Pcを作用させるための均圧通路が設けられ、前記弁口の全開時に、前記Ps入出口から前記感圧室への前記吸入圧力Psの導入が阻止され、前記均圧通路を介して前記クランク室の圧力Pcが前記感圧室に導入され、前記主弁体の両端部に前記クランク室の圧力Pcが作用するようにされ、前記弁口の弁開度制御時あるいは閉弁時には、前記Ps入出口を介して前記吸入圧力Psが前記感圧室に導入され、前記主弁体の他端部に前記クランク室の圧力Pcが作用し、前記主弁体の一端部に前記吸入圧力Psが作用するようにされる。
【0012】
好ましい態様では、前記Ps入出口と前記感圧室との間で弁口開閉方向に摺動自在に配在された前記プランジャによって、前記Ps入出口から前記感圧室への前記吸入圧力Psの導入が阻止されるようになっている。
【0013】
更に好ましい態様では、前記プランジャが、該プランジャの最下降位置を規定するためのストッパ部に当接することによって、前記Ps入出口から前記感圧室への前記吸入圧力Psの導入が阻止されるようになっている。
【0014】
更に好ましい態様では、前記ストッパ部は、前記弁本体に設けられる。
【0015】
更に好ましい態様では、前記プランジャの受圧径と、前記ストッパ部において前記プランジャが当接する部分の受圧径とが等しく設定される。
【0016】
更に好ましい態様では、前記ストッパ部は、前記プランジャと当接する環状平坦面からなるシート面部と、該シート面部の内側に設けられた逆円錐台面からなる傾斜面部とを有する。
【0017】
他の好ましい態様では、前記均圧通路は、前記主弁体の内部及び前記プランジャの内部を含んで構成される。
【0018】
別の好ましい態様では、前記クランク室の圧力Pcを前記Ps入出口を介して前記圧縮機の吸入室に逃がすための弁内逃がし通路が前記主弁体内又は前記弁本体内に設けられるとともに、前記弁内逃がし通路を開閉する副弁体が設けられる。
【0019】
また、本発明に係る可変容量型圧縮機用制御弁は、基本的に、主弁体部を有する主弁体と、前記主弁体部が接離する弁口が設けられた弁室と圧縮機の吸入室に連通するPs入出口とを有し、前記弁口より上流側に圧縮機の吐出室に連通するPd導入口が設けられるとともに、前記弁口より下流側に前記圧縮機のクランク室に連通するPc入出口が設けられた弁本体と、前記主弁体を弁口開閉方向に移動させるためのプランジャを有する電磁式アクチュエータと、前記圧縮機から吸入圧力Psが前記Ps入出口を介して導入される感圧室と、前記感圧室の圧力に応じて前記主弁体を弁口開閉方向に付勢する感圧応動部材と、を備え、前記主弁体の一端部に、前記感圧室が設けられて前記吸入圧力Psが作用し、前記主弁体の他端部に、前記Pc入出口が開口せしめられて前記圧縮機からクランク室の圧力Pcが作用するようにされ、前記弁口の全開時と弁開度制御時あるいは閉弁時とで、前記主弁体の一端部又は他端部に作用する圧力が前記吸入圧力Psと前記クランク室の圧力Pcとの間で切り換わるようにされていることを特徴としている。
【0020】
好ましい態様では、前記弁口の全開時に、前記主弁体の両端部に作用する圧力が同じにされ、前記弁口の弁開度制御時あるいは閉弁時には、前記主弁体の一端部又は他端部に作用する圧力が切り換わり、前記主弁体の両端部の差圧によって前記主弁体が閉弁方向に付勢されるようにされる。
【0021】
更に好ましい態様では、前記弁口の全開時に、前記Ps入出口から前記感圧室への前記吸入圧力Psの導入が阻止され、前記主弁体の両端部に前記クランク室の圧力Pcが作用するようにされ、前記弁口の弁開度制御時あるいは閉弁時には、前記Ps入出口を介して前記吸入圧力Psが前記感圧室に導入され、前記主弁体の他端部に前記クランク室の圧力Pcが作用し、前記主弁体の一端部に前記吸入圧力Psが作用し、前記主弁体の両端部の差圧によって前記主弁体が閉弁方向に付勢されるようにされる。
【0022】
更に好ましい態様では、前記クランク室の圧力Pcを前記感圧室に導き、前記主弁体の一端部に前記クランク室の圧力Pcを作用させるための均圧通路が設けられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、主弁体の他端部に作用するクランク室の圧力Pcを感圧室に導き、主弁体の一端部にクランク室の圧力Pcを作用させるための均圧通路が設けられ、弁口の全開時に、Ps入出口から感圧室への吸入圧力Psの導入が阻止され、均圧通路を介してクランク室の圧力Pcが感圧室に導入され、主弁体の両端部にクランク室の圧力Pcが作用するようにされる。
【0024】
言い換えれば、弁口の全開時と弁開度制御時あるいは閉弁時とで、主弁体の一端部又は他端部に作用する圧力が吸入圧力Psとクランク室の圧力Pcとの間で切り換わり、弁口の全開時に、前記均圧通路を通して、主弁体の両端部に作用する圧力が同じ(クランク室の圧力Pc)にされ、弁口の弁開度制御時あるいは閉弁時には、主弁体の一端部又は他端部に作用する圧力が切り換わり、主弁体の両端部の差圧によって主弁体が閉弁方向に付勢されるようにされる。
【0025】
そのため、例えば、主弁体にかかる冷媒圧力による開弁方向の力と閉弁方向の力とが常に同じとされる従来のものと比べて、主弁体に作用する冷媒圧力の影響を効果的にキャンセルさせることができる。
【0026】
また、Ps入出口から感圧室への吸入圧力Psの導入を阻止すべくPs入出口と感圧室との間で弁口開閉方向に摺動自在に配在されたプランジャの受圧径と、プランジャの最下降位置を規定するためのストッパ部においてプランジャが当接する部分の受圧径とが等しく設定されるので、プランジャに作用する冷媒圧力の影響を確実にキャンセルさせることができる。
【0027】
また、前記ストッパ部は、プランジャと当接する環状平坦面からなるシート面部と、該シート面部の内側に設けられた逆円錐台面からなる傾斜面部とを有するので、ストッパ部とプランジャとの接触面積を小さくでき、冷媒に含まれるオイル(圧縮機等を潤滑させるためのオイル)によるストッパ部とプランジャとの密着を抑制できるとともに、ストッパ部の接触部分(シート面部)の面精度を確保しやすくなる。
【0028】
また、前記均圧通路は、主弁体の内部及びプランジャの内部を含んで構成されるので、例えば、弁本体に吸入圧通路等が設けられた従来のものと比べて、弁本体の体格を大きくすることなく、主弁体に作用する冷媒圧力の影響をキャンセルさせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1〜
図4は、それぞれ本発明に係る可変容量型圧縮機用制御弁の一実施形態を示す縦断面図であり、
図1は主弁:全開、副弁:閉の状態(通常制御時(通電オフ時))、
図2は主弁:開、副弁:閉の状態(通常制御時(通電オン時))、
図3は主弁:閉、副弁:閉の状態(圧縮機起動移行時)、
図4は主弁:閉、副弁:開の状態(圧縮機起動時)を示している。なお、
図2は、(
図1に対して)通電制御時において電磁式アクチュエータ30への通電励磁(通電オン)によって弁口22の弁開度が(全開状態から)調整された状態(弁開度:小の状態)を示している。
【0032】
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際に圧縮機に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0033】
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
【0034】
[制御弁1の構成]
図示実施形態の制御弁1は、基本的に、弁口22が設けられた弁本体20と、弁口22を開閉するための主弁体10と、該主弁体10を弁口開閉方向(上下方向)に移動させるための電磁式アクチュエータ30と、感圧応動部材としてのベローズ装置40とを備えている。
【0035】
電磁式アクチュエータ30は、ボビン38、該ボビン38に外装された通電励磁用のコイル32、コイル32の内周側に配在されたステータ33及び吸引子34、ステータ33及び吸引子34の下端部外周(段差部)にその上端部が溶接により接合された案内パイプ35、吸引子34の下方で案内パイプ35の内周側に上下方向に摺動自在に配在された有底円筒状のプランジャ37、前記コイル32に外挿される有底穴付き円筒状のハウジング60、取付板39を介してハウジング60の上側に取り付けられたコネクタ部31、及び、ハウジング60の下端部(底部穴)と案内パイプ35の下端部との間に配在されてそれらを弁本体20(の本体部材20A)の上部に固定するためのホルダ29を備えている。本例においては、円筒状のステータ33の下部内周に、該ステータ33の内径より小径の挿通穴34aがその中央に(軸線Oに沿って)形成された円筒状の吸引子34が一体成形されている。また、ハウジング60の上端部(薄肉部)は、シール材としてのOリング31Aを挟んでコネクタ部31の外周に設けられた環状溝31aにかしめ固定されている(かしめ部61)。ここでは、電磁式アクチュエータ30のうちの、プランジャ37を除いた、コイル32、ステータ33、及び吸引子34等からなる部分をソレノイド部30Aと称する。
【0036】
前記ステータ33の上部には、短円柱状の固定子65が圧入等により固着せしめられ、ステータ33の内周側における前記固定子65と吸引子34との間には、圧縮機の吸入圧力Psが導入される感圧室45が形成され、この感圧室45には感圧応動部材としての、ベローズ41、逆凸字状の上ストッパ42、逆凹字状の下ストッパ43、及び圧縮コイルばね44からなるベローズ装置40が配在されている。さらに、ベローズ装置40の下側には、推力伝達部材としての段付き棒状のプッシュロッド46が軸線Oに沿って配在されている。このプッシュロッド46の中央やや上側の部分は大径(大径部46b)とされ、下ストッパ43の凹部内には前記プッシュロッド46の上端部46dが嵌挿されて支持され、吸引子34の挿通穴34aに前記プッシュロッド46の大径部46bが(若干の隙間34bを持って)内挿されている。また、前記プッシュロッド46の下部は、後述する断面凹状の副弁体17の凹穴17bに内挿され、その下端部46aが、凹穴17bの底部中央に形成された凹状の嵌挿穴17cに嵌め込まれている。
【0037】
プランジャ37には、前記吸引子34の挿通穴34aと略同径の凹穴17bを有する断面凹状の副弁体17が圧入等により内挿固定されており、副弁体17とプランジャ37とが一緒に上下動するようになっている。この副弁体17は、その上端部がプランジャ37の上端部と位置合わせされ(言い換えれば、その上端部がプランジャ37の上端部内周に位置決めされ)、その下端部がプランジャ37の底部と隙間を持った状態で(後で詳述するが、主弁体10の鍔状係止部10kが若干の上下動可能に配置される隙間を持った状態で)、前記プランジャ37に内嵌されている。副弁体17の凹穴17bの底部中央には、前記プッシュロッド46の下端部46aが嵌挿される凹状の嵌挿穴17cが形成されている。
【0038】
プッシュロッド46の大径部46bの上部に形成される段差部(下向きの環状の段丘面)46cとプランジャ37に内嵌された副弁体17の凹穴17bの底部(における嵌挿穴17c周りの上向きの面)との間には、円筒状の圧縮コイルばねからなるプランジャばね(開弁ばね)47が縮装されている。このプランジャばね47(の圧縮力)により、副弁体17を介してプランジャ37が下方(開弁方向)に付勢されるとともに、プッシュロッド46を介して前記ベローズ装置40が感圧室45内で保持されている。また、このプランジャばね47(の圧縮力)により、副弁体17は後述する弁内逃がし通路16(貫通逃がし孔16A)を閉じる方向に付勢されており、この副弁体17の下端部(平坦面)は、弁内逃がし通路16を開閉する副弁体部17aとされている(後で詳述)。
【0039】
プランジャ37の底部には、その外周付近から中央(軸線O上)まで直線状に延びる、主弁体10の鍔状係止部10kを通すための通し穴付きのスリット37sが形成されている。前記スリット37sの(上下方向の)高さ(つまり、プランジャ37の底部の厚さ(上下方向の高さ))は、主弁体10の上部小径部10dの高さより若干小さくされており、主弁体10は、プランジャ37に対して上下動可能となっている(後で詳述)。また、前記スリット37sの(横方向の)幅は、組立性等を考慮して、主弁体10の上部小径部10dの外径より若干大きくされるとともに、主弁体10の鍔状係止部10kの外径より小さくされており、前記プランジャ37の底部上面における前記スリット37sの外周部分が、主弁体10の鍔状係止部10kを掛止するための内鍔状掛止部37kとされている。
【0040】
また、本例では、副弁体17の外周の所定位置(図示例では、スリット37sの上側)に、Dカット面又は1つもしくは複数の縦溝等からなる連通溝17dが形成されており、当該連通溝17dによって、副弁体17の外周とプランジャ37の内周との間に隙間36が形成されている。
【0041】
前記したプランジャ37及び副弁体17の下側に配置される主弁体10は、例えば非磁性の金属製とされ、軸線Oに沿って配置された段付きの軸状部材から形成されている。この主弁体10は、下から順に、比較的大径の主弁体部10a、下部小径部10b、上下方向に長い中間嵌挿部10c、上部小径部10d、及び鍔状係止部10kからなっており、中間嵌挿部10cの下部外周に環状溝10Aが上下二段で設けられている。
【0042】
前記のように、主弁体10の上部小径部10dは、前記スリット37sに緩く内嵌され、鍔状係止部10kは、前記プランジャ37の内側における副弁体17より下側(言い換えれば、プランジャ37の底部と副弁体17の下端部との間の空間)に緩く内嵌される。前記鍔状係止部10kは前記スリット37sの幅より大径とされており、プランジャ37が主弁体10に対して上方向に移動せしめられるとき、前記スリット37sの外周部分からなる内鍔状掛止部37kが鍔状係止部10kに引っ掛けられて抜け止め係止されるようになっている。また、前記中間嵌挿部10cは、前記スリット37sの幅より若干大径、かつ、前記プランジャ37の外径より小径とされている。
【0043】
また、本例においては、前記主弁体10の中央部を縦方向に貫通するように(言い換えれば、軸線Oに沿うように)、後述する弁内逃がし通路16の一部を構成する貫通逃がし孔16Aが形成されるとともに、前記上部小径部10dに、前記貫通逃がし孔16Aとともに後述する均圧通路15の一部を構成する横穴からなる連通孔10eが形成されている。
【0044】
一方、弁本体20は、上部中央に嵌合用の凹穴20Cが設けられるとともに下部中央に前記凹穴20Cに連なる若干小径の収容穴18が設けられた段付き円筒状の本体部材20Aと、前記凹穴20Cに圧入等により内挿固定される円筒状のシート部材20Bとの二分割構成とされている。
【0045】
シート部材20Bは、ステンレス(SUS)、高硬度真鍮材等から作製され、前記凹穴20Cに嵌挿される段付きの嵌挿部24の上側に(言い換えれば、嵌挿部24からPs入出室28側へ向けて突出するように)、プランジャ37の最下降位置を規定するためのストッパ部24Aが突設されている。前記シート部材20B(のストッパ部24A)の外径は、前記プランジャ37の外径とほぼ等しく設定され、ストッパ部24Aの上端面(プランジャ37との対向面)は、外周部が、プランジャ37(の下端面外周部分)と当接する円環状平坦面からなるシート面部24aとされ、そのシート面部24aの内側に、(後述する案内孔19まで延びる)逆円錐台面からなる傾斜面部24bが設けられている(
図5を併せて参照)。シート部材20B(の嵌挿部24)の下端部は、本体部材20Aの凹穴20Cと収容穴18との間の段差部(段丘部)に当接せしめられている。また、シート部材20Bの中央部には、縦方向に貫通するように(つまり、軸線Oに沿って)前記主弁体10の中間嵌挿部10cが摺動自在に嵌挿される案内孔19が形成され、この案内孔19の下端部が前記主弁体10の主弁体部10aにより(下側から)開閉される弁口(弁シート部)22となっている。ここでは、主弁体部10aと弁口22とで主弁部11が構成される。
【0046】
前記のように、プランジャ37の受圧径(外径)φD1と、ストッパ部24Aにおいてプランジャ37が当接する部分(シート面部24a)の受圧径(外径)φD2とがほぼ等しく設定されることにより、プランジャ37がシート部材20Bのストッパ部24Aに当接したとき(言い換えれば、プランジャ37が最下降位置にあるとき)に、プランジャ37に作用する下向き(開弁方向)の力と上向き(閉弁方向)の力とがキャンセルされる(
図5参照)(後で詳述)。
【0047】
また、プランジャ37と対向するストッパ部24Aの上端面において、前記シート面部24aの内側に、前記プランジャ37側とは反対側に窪んだ形状の逆円錐台面からなる傾斜面部24bが設けられることにより、シート部材20Bのストッパ部24Aとプランジャ37との接触面積が小さくなり、冷媒に含まれるオイル(圧縮機等を潤滑させるためのオイル)によるストッパ部24Aとプランジャ37との密着が抑制されるとともに、ストッパ部24Aの接触部分(シート面部24a)の面精度を確保しやすくなる。
【0048】
本例においては、前記のように、プランジャ37(の下端面外周部分)がストッパ部24A(のシート面部24a)に当接することにより、後述するPs入出口27(Ps入出室28)から感圧室45への吸入圧力Psの導入が阻止(遮断)されるようになっている。
【0049】
本体部材20Aは、例えばアルミニウムや真鍮、あるいは樹脂等から作製され、本体部材20Aの凹穴20Cにシート部材20B(の嵌挿部24)が内挿された状態で、前記ストッパ部24Aの外周(言い換えれば、本体部材20Aにおけるシート部材20Bの上端側)には、圧縮機の吸入圧力PsのPs入出室28が形成されるとともに、そのPs入出室28の外周側に複数個のPs入出口27が形成されている。このPs入出口27からPs入出室28に導入された吸入圧力Psは、シート部材20Bのストッパ部24A(の上端面)とプランジャ37(の下端面)との間の隙間、プランジャ37の内部(スリット37s、及び、副弁体17とプランジャ37との間に形成される隙間36)、プッシュロッド46の外周と吸引子34との間に形成される隙間34b等を介して前記感圧室45に導入される。
【0050】
また、本体部材20Aの凹穴20Cの底部中央に、主弁体10の主弁体部10aを収容するための、案内孔19及び主弁体部10aより大径の前記収容穴18が連設されている。収容穴18の底部外周角部と主弁体10の主弁体部10aの下部外周に設けられた段差部(段丘部)10fとの間には、円錐状の圧縮コイルばねからなる閉弁ばね50が縮装され、この閉弁ばね50の付勢力により、主弁体10が閉弁方向(上向き)に付勢され、主弁体10(の鍔状係止部10kの上端部)が副弁体17(の下面)に押し付けられる。ここでは、前記収容穴18内(シート部材20Bの弁口22より下側部分)が、弁室21となっている。
【0051】
前記凹穴20Cには、圧縮機の吐出室に連通するPd導入口25が複数個開口せしめられ、そのPd導入口25の外周に、リング状のフィルタ部材25Aが配在されるとともに、前記凹穴20Cに内挿されたシート部材20Bの嵌挿部24(特に、主弁体10の中間嵌挿部10cが内挿される部分より下側の部分)に、前記Pd導入口25に連通するとともに前記案内孔19に連なる複数個の横孔25sが設けられている。
【0052】
また、本体部材20Aの下端部には、フィルタとして機能する蓋状部材48が係合・圧入等により固定されており、この蓋状部材48より上側で収容穴18より下側(言い換えれば、本体部材20Aにおけるシート部材20Bの下端側であって、弁口22より下流側)が、圧縮機のクランク室に連通するPc入出室(入出口)26となっている。このPc入出室(入出口)26は、弁室21→弁口22と主弁体部10aとの間の隙間→案内孔19の下部と下部小径部10bとの間の隙間→嵌挿部24の横孔25sを介して前記Pd導入口25に連通する。
【0053】
さらに、本実施形態では、前記主弁体10の内部中央を縦方向(軸線O方向)に貫通するように、Pc入出室26とPs入出室28(Pc入出口27)とを連通するための貫通逃がし孔16Aが設けられている。
【0054】
この貫通逃がし孔16Aは、弁内逃がし通路16の一部を構成するとともに、この貫通逃がし孔16Aの上端部(すなわち、主弁体10の上端部)が、前記副弁体17の下端部(副弁体部)17aが接離する副弁シート部23となっている。
【0055】
副弁体17は、前述のように、前記主弁体10の上側で前記プランジャ37に内挿固定されており、その外径(=プランジャ37の内径)は、前記主弁体10の鍔状係止部10kの外径より大きくされており、その下端部(平坦面)が、前記貫通逃がし孔16Aの上端縁部である副弁シート部(逆立円錐台面部)23に接離して前記弁内逃がし通路16(貫通逃がし孔16A)を開閉する副弁体部17aとなっている。ここでは、副弁シート部23と副弁体部17aとで副弁部12が構成される。
【0056】
本実施形態では、前記のように、Pc入出室26、弁室21、前記主弁体10に設けられた貫通逃がし孔16A、プランジャ37内、Ps入出室28などで、クランク室の圧力PcをPs入出口27を介して圧縮機の吸入室に逃がすための弁内逃がし通路16が構成され、貫通逃がし孔16Aの上端縁部である副弁シート部(逆立円錐台面部)23に副弁体17の副弁体部(下端部)17aが離接することにより、前記弁内逃がし通路16が開閉されるようになっている。
【0057】
さらに、上記構成に加えて、本実施形態では、電磁式アクチュエータ30(のソレノイド部30A)の通電オフ時(すなわち、プランジャ37がストッパ部24Aに当接して最下降位置をとり、弁口22が全開となるとき)に、前記主弁体10に作用する冷媒圧力による開弁方向(下向き)の力と閉弁方向(上向き)の力とをバランス(差圧をキャンセル)させるべく、次のような方策が講じられている。
【0058】
すなわち、本実施形態では、前記主弁体10の上部小径部10d(のスリット37sが延設される側)に、当該主弁体10の内部に形成された貫通逃がし孔16Aと外部のプランジャ37内(スリット37s部分)とが連通する横穴からなる連通孔10eが形成され、弁室21、前記主弁体10に設けられた貫通逃がし孔16A及び連通孔10e、プランジャ37内(スリット37s、及び、副弁体17とプランジャ37との間に形成される隙間36)、プッシュロッド46の外周と吸引子34との間に形成される隙間34bなどで、主弁体10の下端部側に設けられたPc入出室(入出口)26と主弁体10の上端部側に設けられた感圧室45とを(常時)連通し、クランク室の圧力Pcを感圧室45(感圧応動部材としてのベローズ装置40)に導くための均圧通路15が形成されている。
【0059】
このような均圧通路15が設けられた本実施形態の制御弁1では、磁式アクチュエータ30(のソレノイド部30A)の通電オフ時(弁口22の全開時)に、プランジャ37(の下端面外周部分)がストッパ部24A(のシート面部24a)に当接することによって、Ps入出口27(Ps入出室28)から感圧室45への吸入圧力Psの導入が阻止(遮断)され、前記均圧通路15を通してクランク室の圧力Pcが(Pc入出室26から)感圧室45に導入されるので、主弁体10の上下両端部にクランク室の圧力Pcが作用するようにされる(
図1参照)。
【0060】
一方、電磁式アクチュエータ30(のソレノイド部30A)の通電オン時(弁口22の弁開度制御時あるいは閉弁時)には、プランジャ37(の下端面外周部分)がストッパ部24A(のシート面部24a)から離れ、Ps入出口27(Ps入出室28)を介して吸入圧力Psが感圧室45に導入されるので、主弁体10の下端部にクランク室の圧力Pcが作用し、主弁体10の上端部に吸入圧力Psが作用し(言い換えれば、主弁体10の上端部に作用する圧力がクランク室の圧力Pcから吸入圧力Psに切り換わり)、主弁体10の上下両端部の差圧(Pc−Ps)によって当該主弁体10が閉弁方向(上向き)に付勢されるようにされる(
図2〜
図4参照)。
【0061】
ここで、本例の制御弁1では、前記のように、プランジャ37の受圧径(外径)φD1と、ストッパ部24Aにおいてプランジャ37が当接する部分(シート面部24a)の受圧径(外径)φD2とがほぼ等しく設定されているので、前述した電磁式アクチュエータ30(のソレノイド部30A)の通電オフ時(弁口22の全開時)に、プランジャ37がシート部材20Bのストッパ部24Aに当接したとき(言い換えれば、プランジャ37が最下降位置にあるとき)に、プランジャ37に作用する下向き(開弁方向)の力と上向き(閉弁方向)の力とがキャンセルされる(
図5参照)。
【0062】
なお、上記実施形態では、クランク室の圧力PcをPs入出口27を介して圧縮機の吸入室に逃がすための弁内逃がし通路16(の貫通逃がし孔16A)の一部が均圧通路15の一部を兼ねている(言い換えれば、弁内逃がし通路16が均圧通路15としても使用されている)が、当該弁内逃がし通路16と均圧通路15とを別個に形成してもよいことは勿論である。
【0063】
また、上記実施形態では、前記弁内逃がし通路16が、主弁体10内に縦方向に直線状に形成された貫通逃がし孔16Aを含んで構成されているが、例えば、当該弁内逃がし通路16を(主弁体10内ではなく)弁本体20側に設けてもよいことは詳述するまでも無い。また、当該弁内逃がし通路16自体を、省略してもよいことは勿論である。
【0064】
また、前記弁内逃がし通路16(貫通逃がし孔16A)や均圧通路15の形成方法や形状、配置態様等は、図示例に限られないことは当然である。
【0065】
また、上記実施形態では、弁本体20を本体部材20Aとシート部材20Bとの二部品構成としているが、例えば、前記弁本体20を一部品で形成してもよいことは当然である。
【0066】
ここで、本実施形態の制御弁1では、
図1に示される如くに、プランジャ37、主弁体10、及び副弁体17が最下降位置にある状態(プランジャ37の最下端面がストッパ部24Aに当接、主弁部11は全開、副弁部12は全閉)において、主弁体10の主弁体部10aと弁口(弁シート部)22との間の上下方向の離隔距離が第1リフト量Laとされ、プランジャ37の内鍔状掛止部37kと主弁体10の鍔状係止部10kとの離隔距離は所定量Lyとされ、前記プランジャ37の最大リフト量(第2リフト量)Lb(プランジャ37の最下降位置から最上昇位置までのリフト量)は、第1リフト量La+所定量Lyとなっている。
【0067】
[制御弁1の動作]
次に、上記構成とされた制御弁1の動作を概説する。
【0068】
本例の制御弁1では、前述したように、電磁式アクチュエータ30(のソレノイド部30A)の通電オフ時には、前記した均圧通路15を通して、主弁体10に作用する冷媒圧力による開弁方向(下向き)の力と閉弁方向(上向き)の力(すなわち、主弁体10の移動方向(軸線O方向)に作用する力)がバランス(差圧がキャンセル)されるとともに、電磁式アクチュエータ30(のソレノイド部30A)の通電オン時には、プランジャ37(の下端面外周部分)がストッパ部24A(のシート面部24a)から離れ、主弁体10の上下両端部の差圧(Pc−Ps)によって当該主弁体10が閉弁方向(上向き)に付勢されている。
【0069】
通常制御時(Pd→Pc制御時)には、プランジャ37(及び副弁体17)のリフト量は、最大でも前記第1リフト量La強とされ、圧縮機起動時(Pc→Ps制御時)には、プランジャ37(及び副弁体17)のリフト量は、前記第2リフト量Lbとされる。
【0070】
すなわち、通常制御時(Pd→Pc制御時)には、コイル32、ステータ33及び吸引子34等からなるソレノイド部30Aが通電オフ(
図1参照)から通電励磁されると、吸引子34にプランジャ37及び副弁体17が共に(上方向に)引き寄せられ、この動きに追従して、閉弁ばね50の付勢力により主弁体10が上方(閉弁方向)に移動せしめられる。一方、圧縮機からPs入出口27に導入された吸入圧力Psは、Ps入出室28から、シート部材20Bのストッパ部24A(の上端面)とプランジャ37(の下端面)との間の隙間、プランジャ37の内部(スリット37s及び副弁体17の外周とプランジャ37の内周との間の隙間36)等を介して感圧室45に導入され、ベローズ装置40(内部は真空圧)は感圧室45の圧力(吸入圧力Ps)に応じて伸縮変位(吸入圧力Psが高いと収縮、低いと伸張)し、該変位がプッシュロッド46や副弁体17等を介して主弁体10に伝達され、それによって、弁開度(弁口22と主弁体部10aとの離隔距離)が調整され、その弁開度に応じて、クランク室の圧力Pcが調整される。
【0071】
この場合、主弁体10は閉弁ばね50の付勢力により常に上向きに付勢されているとともに、副弁体17は開弁ばね47の付勢力により常に下向きに付勢されているので、副弁体部17aは副弁シート部23に押し付けられた状態(副弁部12が閉弁)となり、弁内逃がし通路16は主弁体10内で遮断されている。そのため、弁内逃がし通路16を通じてクランク室の圧力Pcが吸入室に逃がされることはない(
図1及び
図2参照)。
【0072】
それに対し、圧縮機起動時には、ソレノイド部30Aが通電励磁されて、吸引子34にプランジャ37及び副弁体17が共に(上方向に)引き寄せられ、この上方向移動に追従して主弁体10が上方向に移動せしめられ、主弁体10の主弁体部10aにより弁口22が閉じられた後、さらにプランジャ37及び副弁体17が上方向に移動せしめられ、これによって副弁体17が弁内逃がし通路16を開くようにされ、クランク室の圧力Pcが弁内逃がし通路16を通じて吸入室に逃がされる。
【0073】
詳細には、プランジャ37(及び副弁体17)の上方向移動量が第1リフト量Laに達するまでは、主弁体10が閉弁ばね50の付勢力によりプランジャ37及び副弁体17の上方向移動に追従するように閉弁方向に移動し、前記上方向移動量が前記第1リフト量Laに達すると、主弁体10の主弁体部10aにより弁口22が閉じられ(
図3に示す状態)、この主弁部11の閉弁状態からさらにプランジャ37及び副弁体17が前記所定量Ly分上方向に移動せしめられる(
図4に示す状態)。言い換えれば、プランジャ37及び副弁体17の上方向移動量が前記第1リフト量Laに達した後、プランジャ37の内鍔状掛止部37kが主弁体10の鍔状係止部10kに係止されるまでの所定量Ly分だけ副弁体17がプランジャ37と共に吸引子34側に引き寄せられる(第1リフト量La+所定量Ly=第2リフト量Lb)。この場合、主弁体10は閉弁状態のまま不動であるので、副弁体17の副弁体部17aは、副弁シート部23から所定量Ly分リフトせしめられ、これによって弁内逃がし通路16が開かれる。プランジャ37の内鍔状掛止部37kが主弁体10の鍔状係止部10kに係止されると、ソレノイド部30Aが吸引力を発生しても、プランジャ37及び副弁体17はそれ以上引き上げられない。
【0074】
このように、本実施形態の制御弁1においては、圧縮機起動時に、クランク室の圧力Pcは弁内逃がし通路16を通じて吸入室に逃がされることになるため、圧縮機起動時において吐出容量が大きくなるまでに要する時間を大幅に短縮することができる。また、通常制御時(Pd→Pc制御時)には、弁内逃がし通路16は副弁体17により閉じられているため、圧縮機の運転効率が低下することはない。
【0075】
また、本実施形態の制御弁1においては、主弁体10の下端部に作用するクランク室の圧力Pcを感圧室45に導き、主弁体10の上端部にクランク室の圧力Pcを作用させるための均圧通路15が設けられ、電磁式アクチュエータ30(のソレノイド部30A)の通電オフ時(弁口22の全開時)に、Ps入出口27(Ps入出室28)から感圧室45への吸入圧力Psの導入が阻止され、均圧通路15を介してクランク室の圧力Pcが感圧室45に導入され、主弁体10の上下両端部にクランク室の圧力Pcが作用するようにされる。
【0076】
言い換えれば、弁口22の全開時と弁開度制御時あるいは閉弁時とで、主弁体10の上端部又は下端部に作用する圧力が吸入圧力Psとクランク室の圧力Pcとの間で切り換わり、弁口22の全開時に、前記均圧通路15を通して、主弁体10の上下両端部に作用する圧力が同じ(クランク室の圧力Pc)にされ、弁口22の弁開度制御時あるいは閉弁時には、主弁体10の上端部に作用する圧力がクランク室の圧力Pcから吸入圧力Psに切り換わり、主弁体10の上下両端部の差圧(Pc−Ps)によって前記主弁体10が閉弁方向に付勢されるようにされる。
【0077】
そのため、例えば、主弁体にかかる冷媒圧力による開弁方向の力と閉弁方向の力とが常に同じとされる従来のものと比べて、主弁体10に作用する冷媒圧力の影響を効果的にキャンセルさせることができる。
【0078】
また、Ps入出口27(Ps入出室28)から感圧室45への吸入圧力Psの導入を阻止すべくPs入出口27(Ps入出室28)と感圧室45との間で上下方向(弁口開閉方向)に摺動自在に配在されたプランジャ37の受圧径(外径)φD1と、プランジャ37の最下降位置を規定するためのストッパ部24Aにおいてプランジャ37が当接する部分(シート面部24a)の受圧径(外径)φD2とが等しく設定されるので、プランジャ37に作用する冷媒圧力の影響を確実にキャンセルさせることができる。
【0079】
また、前記ストッパ部24Aは、プランジャ37と当接する円環状平坦面からなるシート面部24aと、該シート面部24aの内側に設けられた逆円錐台面からなる傾斜面部24bとを有するので、ストッパ部24Aとプランジャ37との接触面積を小さくでき、冷媒に含まれるオイル(圧縮機等を潤滑させるためのオイル)によるストッパ部24Aとプランジャ37との密着を抑制できるとともに、ストッパ部24Aの接触部分(シート面部24a)の面精度を確保しやすくなる。
【0080】
また、前記均圧通路15は、主弁体10の内部(貫通逃がし孔16A及び連通孔10e)及びプランジャ37の内部(スリット37s、及び、副弁体17とプランジャ37との間に形成される隙間36)を含んで構成されるので、例えば、弁本体に吸入圧通路等が設けられた従来のものと比べて、弁本体20の体格を大きくすることなく、主弁体10に作用する冷媒圧力の影響をキャンセルさせることができる。