特許第6708965号(P6708965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708965
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20200601BHJP
   B62D 43/04 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B62D25/20 H
   B62D43/04 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-176129(P2016-176129)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-39436(P2018-39436A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 佳士
(72)【発明者】
【氏名】東條 浩也
(72)【発明者】
【氏名】竹下 博康
(72)【発明者】
【氏名】小倉 章弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悟
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/021054(WO,A1)
【文献】 実開昭51−017911(JP,U)
【文献】 特開平05−319312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
B62D 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向両端においてそれぞれ車両前後方向に延在する第1リヤサイドメンバ及び第2リヤサイドメンバと、
燃料タンクの後方において車幅方向に延在し、前記第1リヤサイドメンバと前記第2リヤサイドメンバとを連結する第1リヤクロスメンバと、
車両最後部において車幅方向に延在し、前記第1リヤサイドメンバと前記第2リヤサイドメンバとを連結するリヤエンドクロスと、
車両前後方向に延在し、前記リヤエンドクロスと前記第1リヤクロスメンバとを連結するストリンガと、
前記ストリンガに取り付けられたフックと
前記第1リヤクロスメンバの下面側に取り付けられているスペアタイヤとを備える
車両後部構造であって、
前記スペアタイヤは、その中心が車幅方向中心位置よりも前記第1リヤサイドメンバ側に位置するように配置され、
前記ストリンガは、前記スペアタイヤと重複する範囲において車幅方向中心位置よりも前記第2リヤサイドメンバ側に配置される
ことを特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
前記ストリンガは、車幅方向において、前記スペアタイヤのホイール部分とは重複せず、かつ、前記スペアタイヤのタイヤ部分と重複する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記スペアタイヤは、スペアタイヤハンガによって支持されており、
前記ストリンガは、車幅方向において前記スペアタイヤハンガと重複しない
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記ストリンガは、車幅方向において中心位置から車幅の20%以内の位置に配置される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記燃料タンクに接続するフィラーパイプは、車幅方向中心位置よりも前記第2リヤサイドメンバ側に延在するように設けられる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項6】
車両前後方向における前記第1リヤクロスメンバと前記燃料タンクとの間にて車幅方向に延在し、前記第1リヤサイドメンバと前記第2リヤサイドメンバとを連結する第2リヤクロスメンバを備え、
前記第2リヤクロスメンバから後方側に突出したブラケットを備え、
前記第1リヤクロスメンバ、前記ストリンガ、及び、前記ブラケットそれぞれの下面が、前記スペアタイヤの上面に対しての当て面となる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、床下にスペアタイヤが設けられている車両の後部構造として、リヤエンドクロスとその前方に配されるリヤクロスメンバとを連結するストリンガ(下記特許文献1では荷重分散用メンバ7)を設け、ストリンガに牽引用フックを取り付ける構造が示されている。これにより、牽引用フックに牽引荷重がかかった場合にも、その荷重をストリンガだけなくクロスメンバやリヤサイドメンバに分散させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006‐88740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されている牽引用フックは、車幅方向中心位置に設けられているが、これでは、後突時にフックがスペアタイヤのホイールを前方に押し出し、燃料タンクへのタイヤヒット(スペアタイヤの衝突)による燃料漏れが発生する可能性がある。また、スペアタイヤを取り出す際にフックが邪魔になる。
【0005】
本発明は、上記技術的課題に鑑み、後突時の燃料タンクへのタイヤヒットによる燃料漏れを防ぐとともに、スペアタイヤの取り外しを容易にすることを可能とする車両後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する第1の発明に係る車両後部構造は、
車幅方向両端においてそれぞれ車両前後方向に延在する第1リヤサイドメンバ及び第2リヤサイドメンバと、
燃料タンクの後方において車幅方向に延在し、前記第1リヤサイドメンバと前記第2リヤサイドメンバとを連結する第1リヤクロスメンバと、
車両最後部において車幅方向に延在し、前記第1リヤサイドメンバと前記第2リヤサイドメンバとを連結するリヤエンドクロスと、
車両前後方向に延在し、前記リヤエンドクロスと前記第1リヤクロスメンバとを連結するストリンガと、
前記ストリンガに取り付けられたフックと
前記第1リヤクロスメンバの下面側に取り付けられているスペアタイヤとを備える
車両後部構造であって、
前記スペアタイヤは、その中心が車幅方向中心位置よりも前記第1リヤサイドメンバ側に位置するように配置され、
前記ストリンガは、前記スペアタイヤと重複する範囲において車幅方向中心位置よりも前記第2リヤサイドメンバ側に配置される
ことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する第2の発明に係る車両後部構造は、
上記第1の発明に係る車両後部構造において、
前記ストリンガは、車幅方向において、前記スペアタイヤのホイール部分とは重複せず、かつ、前記スペアタイヤのタイヤ部分と重複する
ことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第3の発明に係る車両後部構造は、
上記第1又は2の発明に係る車両後部構造において、
前記スペアタイヤは、スペアタイヤハンガによって支持されており、
前記ストリンガは、車幅方向において前記スペアタイヤハンガと重複しない
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第4の発明に係る車両後部構造は、
上記第1から3のいずれか1つの発明に係る車両後部構造において、
前記ストリンガは、車幅方向において中心位置から車幅の20%以内の位置に配置される
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第5の発明に係る車両後部構造は、
上記第1から4のいずれか1つの発明に係る車両後部構造において、
前記燃料タンクに接続するフィラーパイプは、車幅方向中心位置よりも前記第2リヤサイドメンバ側に延在するように設けられる
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第6の発明に係る車両後部構造は、
上記第1から5のいずれか1つの発明に係る車両後部構造において、
車両前後方向における前記第1リヤクロスメンバと前記燃料タンクとの間にて車幅方向に延在し、前記第1リヤサイドメンバと前記第2リヤサイドメンバとを連結する第2リヤクロスメンバを備え、
前記第2リヤクロスメンバから後方側に突出したブラケットを備え、
前記第1リヤクロスメンバ、前記ストリンガ、及び、前記ブラケットそれぞれの下面が、前記スペアタイヤの上面に対しての当て面となる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両後部構造によれば、後突時の燃料タンクへのタイヤヒットによる燃料漏れを防ぐとともに、スペアタイヤの取り外しを容易にすることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る車両後部構造を表す概略的下面図である。
図2】本発明の実施例におけるストリンガ周辺を表す概略的部分斜視図である。
図3】本発明の実施例における後突時のスペアタイヤの移動方向を説明する概略的下面図である。
図4】本発明の実施例におけるスペアタイヤの当て面を説明する概略的下面図である。
図5】70%オーバーラップのオフセット後突試験を説明する模式的上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両後部構造を実施例にて図面を用いて説明する。
【0015】
[実施例]
図1は、本発明の実施例に係る車両後部構造を表す概略的下面図である。本発明の実施例に係る車両後部構造について、まず図1を用いて説明する。
【0016】
第1リヤサイドメンバ11及び第2リヤサイドメンバ12は、車幅方向両端において、それぞれ車両前後方向に延在している。また、第1リヤサイドメンバ11及び第2リヤサイドメンバ12は、燃料タンク13の後方において車幅方向に延在する第1リヤクロスメンバ16、車両最後部において車幅方向に延在するリヤエンドクロス15、車両前後方向における第1リヤクロスメンバ16と燃料タンク13との間にて車幅方向に延在する第2リヤクロスメンバ14によって、それぞれ連結されている。
【0017】
さらに、本実施例では、タイヤ17a及びホイール17bを備えるスペアタイヤ17が、スペアタイヤハンガ18によって第1リヤクロスメンバ16の下面側に取り付けられている。また、スペアタイヤ17は、車幅方向において第1リヤサイドメンバ11側に寄るようにして取り付けられている。すなわち、スペアタイヤ17は、その中心が車幅方向中心位置よりも第1リヤサイドメンバ11側に位置するように配置されている。
【0018】
スペアタイヤハンガ18は、固定側の第1スペアタイヤハンガ部材19、及び、可動側の第2スペアタイヤハンガ部材20を備え、スペアタイヤ17を支持する。
【0019】
第1スペアタイヤハンガ部材19は、タイヤ17a及びホイール17bの下面側を通るように略車幅方向に延在し、その一端19aが第1リヤサイドメンバ11に、他端19bが第1リヤクロスメンバ16に、それぞれ固定されており、これによりスペアタイヤ17を下面側から支持するものである。
【0020】
第2スペアタイヤハンガ部材20は、タイヤ17a(タイヤ部分)及びホイール17b(ホイール部分)の下面側を通る略コの字型であり、その両端部20a,20bが、第2リヤクロスメンバ14の下面において、互いに所定間隔を有し、第2リヤクロスメンバ14よりも車高方向下側に所定角度範囲で可動するように固定されている。また、第2スペアタイヤハンガ部材20は、その略中間位置において、リヤエンドクロス15の下面に設けられたスペアタイヤハンガ用フック18aによって取り外し可能に固定されている。
【0021】
第2スペアタイヤハンガ部材20は、上述の構造により、スペアタイヤ17を下面側から支持し、かつ、第2スペアタイヤハンガ部材20をスペアタイヤハンガ用フック18aから取り外すことで、スペアタイヤ17を取り出すことができるものである。
【0022】
なお、上述したごとく、本実施例においては、スペアタイヤ17が車幅方向において第1リヤサイドメンバ11側に寄るようにして設けられているので、スペアタイヤ17を支持する略コの字型の第2スペアタイヤハンガ部材20の中間位置も、車幅方向において第1リヤサイドメンバ11側になり、それに伴い、スペアタイヤハンガ用フック18aの設置箇所も車幅方向における中心よりも第1リヤサイドメンバ11側となっている。
【0023】
ところで、図2は、本発明の実施例におけるストリンガ周辺を表す概略的部分斜視図である。図1,2に示すように、本実施例においては、車両前後方向に延在するストリンガ21が、車幅方向中心位置よりも第2リヤサイドメンバ12側に配置され、リヤエンドクロス15と第1リヤクロスメンバ16とを連結している。なお、リヤエンドクロス15のストリンガ21取り付け箇所には、輸送時やジャッキアップ時に利用可能なストリンガ側フック22が設けられている。輸送時やジャッキアップ時にストリンガ側フック22にかかる荷重は、ストリンガ21を介して第1リヤクロスメンバ16や第1,2リヤサイドメンバ11,12に分散される。
【0024】
また、ストリンガ21は、車幅方向において、スペアタイヤ17のホイール17bとは重複せず、タイヤ17aのみと重複するようにする。すなわち、ストリンガ側フック22も車幅方向において、スペアタイヤ17のホイール17bとは重複せず、タイヤ17aのみと重複する。なお、タイヤ17aとの重複部分は、ストリンガ21の幅方向全体であっても一部であってもよい(図1中では、ストリンガ21の幅方向全体が重複している状態を表している)。
【0025】
図3は、本実施例における後突時のスペアタイヤの移動方向を説明する概略的下面図である。図中の白抜き矢印は、スペアタイヤ17の移動方向を示している。この図3に示すように、本実施例では、後突時に、従来技術の如くストリンガ側フック22がスペアタイヤ17のホイール17bを前方に押し出すことがなくなり、スペアタイヤ17の前進量が抑制され、かつ、スペアタイヤ17が斜め前方に飛ぶことになり、燃料タンク13へのタイヤヒットによる燃料漏れを防止することができる。
【0026】
また、本実施例では、スペアタイヤ17の取り外しが容易となる。すなわち、従来技術の如くスペアタイヤ17の中心付近にストリンガ側フック22が配置されていると、スペアタイヤ17の取り外しが困難となるが、本実施例では、ストリンガ側フック22がスペアタイヤ17の中心付近からずれているため、スペアタイヤ17の取り外しが容易となる。
【0027】
さらに、本実施例では、前方衝突時の第1リヤクロスメンバ折れを抑制することができる。例えば、前方衝突時には、座席シート(図示略)に前方へ向かうような力が加わる。その際、この座席シートの固定点が上向きにずれるように移動しようとし、それにより第1リヤクロスメンバ16が折れ曲がってしまうが、本実施例の如くストリンガ21を設けることで、これを抑制することができる。
【0028】
ところで、図1に示すように、第2リヤクロスメンバ14には、車幅方向においてスペアタイヤ17のホイール17bと略同位置に、ブラケット23が設けられている。このブラケット23は、後方側に突出しており、スペアタイヤ17(特にタイヤ17a)の当て面となるものである。
【0029】
すなわち、スペアタイヤ17の下面側は、スペアタイヤハンガ18により支持され、スペアタイヤ17の上面側は、図4の本実施例におけるスペアタイヤの当て面を説明する概略的下面図において、破線円A,B,Cで示すように、第1リヤクロスメンバ16、ストリンガ21、及び、ブラケット23それぞれの下面の3箇所が当て面となる。
【0030】
本実施例では、ストリンガ21が、車幅方向中心位置より第2リヤサイドメンバ12側の位置(図4中の破線円B)で、スペアタイヤ17の当て面となることで、従来技術に比べ、他の2箇所(図4中の破線円A,C)の当て面との距離が広がり、これにより安定してスペアタイヤ17を固定することができる。
【0031】
さらに、本実施例では、ストリンガ側フック22を車幅方向においてスペアタイヤハンガ18と重複させないようにする。これにより、後突時にストリンガ側フック22がスペアタイヤハンガ18(特に第2スペアタイヤハンガ部材20)と接触しスペアタイヤハンガ18がスペアタイヤハンガ用フック18aから外れることを防止することができ、結果として、スペアタイヤハンガ18の脱落、及び、フライングオブジェクトを防止することができる。
【0032】
図5は、70%オーバーラップのオフセット後突試験を説明する模式的上面図であり、車体1に対し衝突試験用バリア2をオフセット後突させた状態を示している。なお、図5は上面図であり、下面図である図1とは、ストリンガ21の配設位置が反転している。
【0033】
本実施例では、ストリンガ21は、車幅方向において中心位置から(車幅の)20%以内の位置に配置されるものとするのがより好ましい。このように設定することで、オフセット後突を考慮した場合、ストリンガ21が寄っている第2リヤサイドメンバ12側からの後突であれば、ストリンガ21により衝突エネルギーを吸収することができるだけでなく、図5に示すように、第1リヤサイドメンバ11側から70%(以上)のオーバーラップで後突した場合にも、ストリンガ21により衝突エネルギーを吸収することができる。
【0034】
また、燃料タンク13にはフィラーパイプ24が接続されている。本実施例では、図1に示す如く、フィラーパイプ24は、燃料タンク13の車幅方向中心位置よりも第2リヤサイドメンバ12側(ストリンガ21側)に延在するように設けられている。
【0035】
これにより本実施例では、後突時にフィラーパイプ24へのタイヤヒット(スペアタイヤ17が衝突すること)を回避し、燃料漏れを防止することができる。
【0036】
なお、本実施例では、ジャッキアップ時の安定性も考慮して、ストリンガ21及びストリンガ側フック22の位置を決定するのがより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両の後部構造として好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 車体
2 衝突試験用バリア
11 第1リヤサイドメンバ
12 第2リヤサイドメンバ
13 燃料タンク
14 第2リヤクロスメンバ
15 リヤエンドクロス
16 第1リヤクロスメンバ
17 スペアタイヤ
17a タイヤ
17b ホイール
18 スペアタイヤハンガ
18a スペアタイヤハンガ用フック
19 第1スペアタイヤハンガ部材
19a 一端
19b 他端
20 第2スペアタイヤハンガ部材
20a,20b 端部
21 ストリンガ
22 ストリンガ側フック
23 ブラケット
24 フィラーパイプ
図1
図2
図3
図4
図5