(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708968
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】板ガラス製造装置及び板ガラス製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20200601BHJP
C03B 35/14 20060101ALI20200601BHJP
C03B 25/12 20060101ALI20200601BHJP
B65G 41/00 20060101ALI20200601BHJP
B65G 49/06 20060101ALI20200601BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
C03B17/06
C03B35/14
C03B25/12
B65G41/00 A
B65G49/06
H01L21/68 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-220607(P2016-220607)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-76212(P2018-76212A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】進藤 宏佳
【審査官】
中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−88005(JP,A)
【文献】
特表2016−507465(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/043773(WO,A1)
【文献】
特表2001−507329(JP,A)
【文献】
特開昭52−130809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 19/00− 23/22
B65G 41/00
B65G 49/06
B65G 51/00− 51/03
B65H 35/00− 35/10
C03B 7/00− 7/22
C03B 1/00− 5/44
C03B 8/00− 8/04
C03B 9/00− 17/06
C03B 19/00− 19/10
C03B 19/12− 20/00
C03B 21/00− 21/06
C03B 23/00− 35/26
C03B 40/00− 40/04
C03C 15/00− 23/00
G02F 1/1333
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを移送する複数のガラス供給管を連結してなるガラス供給路と、前記溶融ガラスを板ガラスに成形する成形炉と、前記板ガラスを移送するローラを有するとともに設置床に設置される徐冷炉と、を備えてなる板ガラス製造装置であって、
前記徐冷炉及び前記ローラは、前記設置床に対して位置変更可能に構成されることを特徴とする、板ガラス製造装置。
【請求項2】
前記ローラは、前記板ガラスの幅方向各端部を個別に挟持する片持ちローラであり、かつ上下方向に複数段とされるとともにフレームに支持されることによりローラユニットの一部として構成される、請求項1に記載の板ガラス製造装置。
【請求項3】
前記徐冷炉と前記ローラユニットとを前記設置床に対して位置変更可能に支持する支持台を備える、請求項2に記載の板ガラス製造装置。
【請求項4】
前記支持台は、前記徐冷炉を前記設置床に対して位置変更可能に支持する第一支持台と、前記ローラユニットを前記設置床に対して位置変更可能に支持する第二支持台とを備える、請求項3に記載の板ガラス製造装置。
【請求項5】
前記支持台は、前記設置床上を転動可能な車輪と、前記車輪をロックするロック機構とを備える、請求項3に記載の板ガラス製造装置。
【請求項6】
前記支持台は、前記板ガラスの幅方向又は板厚方向に沿って前記徐冷炉及び前記ローラユニットの位置を変更可能に構成される、請求項3に記載の板ガラス製造装置。
【請求項7】
前記成形炉に対する前記徐冷炉の位置決めを行う位置決め装置を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の板ガラス製造装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の板ガラス製造装置により前記板ガラスを製造する方法であって、
前記複数のガラス供給管を分離した状態で加熱する工程と、
加熱された前記ガラス供給管を連結して前記ガラス供給路を構成する工程と、
前記ガラス供給路を構成した後に、前記成形炉を前記ガラス供給路に接続する工程と、
前記接続後の前記成形炉に対して前記徐冷炉及び前記ローラの位置決めを行う工程と、
前記ガラス供給路により前記溶融ガラスを前記成形炉に供給するとともに、前記成形炉により前記板ガラスを成形する成形工程と、
を備えることを特徴とする、板ガラス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスを製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に代表されるように、各種分野に利用される板ガラスには、表面欠陥やうねりに対して厳しい製品品位が要求されるのが実情である。
【0003】
このような要求を満たすために、板ガラスの製造方法としてダウンドロー法が広く利用されている。このダウンドロー法としては、オーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法が公知である。
【0004】
オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、一枚の板ガラスを連続成形するというものである。また、スロットダウンドロー法は、溶融ガラスが供給される成形体の底壁にスロット状の開口部が形成され、この開口部を通じて溶融ガラスを流下させることにより一枚の板ガラスを連続成形するというものである。
【0005】
特にオーバーフローダウンドロー法では、成形された板ガラスの表裏両面が、成形過程において、成形体の如何なる部位とも接触せずに成形されるので、非常に平面度がよく傷等の欠陥のない火造り面となる。
【0006】
オーバーフローダウンドロー法を用いる板ガラス製造装置としては、特許文献1に開示されるように、成形体を内部に有する成形炉と、成形炉の下方に設置される徐冷炉と、徐冷炉の下方に設けられる冷却部及び切断部とを備えたものがある。この板ガラス製造装置は、成形体の頂部から溶融ガラスを溢れさせると共に、その下端部で融合させることで板ガラス(ガラスリボン)を成形し、この板ガラスを徐冷炉に通過させてその内部歪みを除去し、冷却部で室温まで冷却した後に、切断部で所定寸法に切断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−197185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の板ガラス製造装置では、成形炉の上流側に配置されるガラス溶解炉において、ガラス原料を溶解させて溶融ガラスとし、この溶融ガラスを下流側の成形炉に供給する。溶解炉と成形炉との間には、溶融ガラスを成形炉に移送するためのガラス供給路が設けられる。このガラス供給路は、例えば白金等の金属により構成される複数のガラス供給管を連結してなる。
【0009】
ガラス供給路によって移送される溶融ガラスは、1600℃以上の高温であることから、板ガラス製造装置の操業にあたり、溶融ガラスを移送することができるように、事前にガラス供給管を加熱(予熱)する必要がある。この場合において、各ガラス供給管を連結したままの状態(ガラス供給路の状態)で加熱すると、各ガラス供給管の膨張により、連結部が損傷するおそれがある。このため、ガラス供給路の加熱は、各ガラス供給管を分離させた状態で行うことが望ましい。
【0010】
上記のようにガラス供給管を分離させた状態で加熱し、その後にガラス供給管を連結してガラス供給路を構成した後に、このガラス供給管に成形炉を接続する必要がある。さらに、この成形炉に対して、徐冷炉の位置決めを行う必要がある。このように、従来の板ガラス製造装置では、板ガラスを成形する前の準備作業が煩雑なものとなっており、作業効率を向上させる必要があった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたものであり、板ガラスの成形前の準備作業を効率良く行うことが可能な板ガラス製造装置、及びこの板ガラス製造装置を使用する板ガラス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、溶融ガラスを移送する複数のガラス供給管を連結してなるガラス供給路と、前記溶融ガラスを板ガラスに成形する成形炉と、前記板ガラスを移送するローラを有するとともに設置床に設置される徐冷炉と、を備えてなる板ガラス製造装置であって、前記徐冷炉及び前記ローラは、前記設置床に対して位置変更可能に構成されることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、徐冷炉及びローラを設置床に対して位置変更可能に構成することで、予熱したガラス供給路に成形炉を接続した後に、この成形炉に対する徐冷炉及びローラの位置決めを容易に行うことができる。これにより、本発明に係る板ガラス製造装置では、板ガラスの成形前の準備作業を効率良く行うことが可能になる。
【0014】
上記構成において、前記ローラは、前記板ガラスの幅方向各端部を個別に挟持する片持ちローラであり、かつ上下方向に複数段とされるとともにフレームに支持されることによりローラユニットの一部として構成されることが望ましい。このように、ローラを片持ちローラとするとともに、複数段のローラをフレームによりユニット化することにより、ローラの位置決め作業を効率良く行うことができる。
【0015】
本発明に係る板ガラス製造装置は、前記徐冷炉と前記ローラユニットとを前記設置床に対して位置変更可能に支持する支持台を備えることが望ましい。これによれば、設置面に対して支持台を移動させることにより、成形炉に対する徐冷炉及びローラの位置決めを効率良く行うことができる。
【0016】
この場合、前記支持台は、前記徐冷炉を前記設置床に対して位置変更可能に支持する第一支持台と、前記ローラユニットを前記設置床に対して位置変更可能に支持する第二支持台とを備えることが望ましい。このように、徐冷炉とローラユニットとを別個の支持台により位置変更可能に支持することで、徐冷炉とローラの位置関係を容易に調整することが可能になる。
【0017】
また、前記支持台は、前記設置床上を転動可能な車輪と、前記車輪をロックするロック機構とを備えることが望ましい。かかる構成により、徐冷炉及びローラの位置を容易に変更することができるとともに、徐冷炉及びローラを所期の位置に確実に位置決めできる。
【0018】
また、前記支持台は、前記板ガラスの幅方向又は板厚方向に沿って前記徐冷炉及び前記ローラユニットの位置を変更可能に構成され得る。これにより、成形炉によって成形される板ガラスに対する徐冷炉とローラとの位置決めを正確に行うことができる。
【0019】
また、板ガラス製造装置は、前記成形炉に対する前記徐冷炉の位置決めを行う位置決め装置を備えることが望ましい。これにより、成形炉と徐冷炉との位置合わせを正確に行うことができる。
【0020】
本発明は、上記構成の板ガラス製造装置により板ガラスを製造する方法であって、前記複数のガラス供給管を分離した状態で加熱する工程と、加熱された前記ガラス供給管を連結して前記ガラス供給路を構成する工程と、前記ガラス供給路を構成した後に、前記成形炉を前記ガラス供給路に接続する工程と、前記接続後の前記成形炉に対して前記徐冷炉及び前記ローラの位置決めを行う工程と、前記ガラス供給路により前記溶融ガラスを前記成形炉に供給するとともに、前記成形炉により前記板ガラスを成形する成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
これによれば、ガラス供給管を分離した状態で加熱(予熱)することにより、加熱によるガラス供給管の損傷を防止するとともに、予熱したガラス供給管を連結してなるガラス供給路に成形炉を接続した後に、この成形炉に対する徐冷炉及びローラの位置決めを容易に行うことができる。これにより、本発明に係る板ガラス製造方法は、板ガラスの成形前の準備作業を効率良く行うことができ、ひいては板ガラスを効率良く製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、板ガラスの成形前の準備作業を効率良く行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】板ガラス製造装置の全体構成を示す正面図である。
【
図3】板ガラス製造方法の一工程を示す正面図である。
【
図4】板ガラス製造方法の一工程を示す正面図である。
【
図5】板ガラス製造方法の一工程を示す正面図である。
【
図6】板ガラス製造方法の一工程を示す正面図である。
【
図7】板ガラス製造方法の一工程を示す側面図である。
【
図8】板ガラス製造方法の一工程を示す側面図である。
【
図9】板ガラス製造方法の一工程を示す正面図である。
【
図10】徐冷炉の位置決め完了時の板ガラス製造装置の一部を示す正面図である。
【
図11】板ガラス製造装置の他の実施形態を示す部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図10は、本発明に係る板ガラス製造装置及び板ガラス製造方法の第一実施形態を示す。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係るガラス製造装置は、上流側から順に、溶解炉1と、清澄槽2と、均質化槽(攪拌槽)3と、状態調整槽4と、成形炉5と、ローラユニット6a,6bを有する徐冷炉(アニーラ)7と、溶解炉1から成形炉5へと溶融ガラスGMを移送するガラス供給路8とを主に備える。
【0026】
溶解炉1は、投入されたガラス原料を溶解して、溶融ガラスGMを得る溶解工程を行うための容器である。清澄槽2は、溶解炉1から供給された溶融ガラスGMを清澄剤等の作用により清澄する工程(清澄工程)を行うための容器である。清澄槽2は、ガラス供給路8を介して溶解炉1及び均質化槽3に接続されている。
【0027】
均質化槽3は、清澄された溶融ガラスGMを攪拌翼等により攪拌し、均一化する均質化工程を行うための容器である。均質化槽3は、ガラス供給路8によって状態調整槽4に接続されている。状態調整槽4は、溶融ガラスGMを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器である。状態調整槽4は、ガラス供給路8によって均質化槽3及び成形炉5に接続されている。
【0028】
成形炉5は、溶融ガラスGMを所望の板形状に成形するための成形体5aを有する。本実施形態では、成形体5aは、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGMを板ガラスGRに成形する。詳細には、
図2に示すように、成形体5aは、断面形状が略楔形状を呈する。この成形体5aは、その上部に、オーバーフロー溝5bを有する。
【0029】
成形体5aは、ガラス供給路8によって溶融ガラスGMがオーバーフロー溝5bに供給された後、溶融ガラスGMをオーバーフロー溝5bから溢れ出させて、成形体5aの両側の側壁面5c,5dに沿って流下させる。成形体5aは、流下させた溶融ガラスGMを側壁面5c,5dの下端部5eで融合させ、板ガラスGRに成形する。成形体5aは、成形炉5内に配置される加熱器により所定の温度に加熱される。なお、成形体5aは、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0030】
成形炉5は、
図1に示すように、徐冷炉7の上方位置において、支持台9に支持されている。支持台9は、成形炉5を位置変更可能に支持している。成形炉5は支持台9に支持されることにより、ガラス供給路8に対して接近・離反可能に構成される。
【0031】
徐冷炉7は、その炉壁の内面に加熱器を有するともに、板ガラスGRが上下方向に通過可能な空間を有する。徐冷炉7は、その炉壁にローラユニット6a,6bの一部を挿脱することが可能な開口部(図示せず)を有する。徐冷炉7は、設置床Sに設置されており、この設置床S上で位置変更可能に構成される。すなわち、徐冷炉7の下部は、支持台(以下「第一支持台」という)10に支持されており、第一支持台10は複数の車輪11(例えばベアリング)と、これらの車輪11を個別に固定するロック機構12とを有する。
【0032】
ローラユニット6a,6bは、徐冷炉7と同様に、設置床Sに設置されるとともに、この設置床Sに対して位置変更可能に構成される。
図1に示すように、ローラユニット6a,6bは、板ガラスGRの幅方向一端部を挟持するための第一ローラユニット6aと、板ガラスGRの幅方向他端部を挟持するための第二ローラユニット6bとを含む。各ローラユニット6a,6bは、ローラ装置13と、ローラ装置13を支持するフレーム14と、フレーム14を支持する支持台(以下「第二支持台」という)15とを有する。
【0033】
ローラ装置13は、上下方向に複数段(図例では三段)となるように構成される。各ローラ装置13は、板ガラスGRを挟持するローラ(アニーラローラ)13aと、ローラ13aを支持する軸部13bと、軸部13bを駆動する駆動装置13cとを有する。ローラ13aは、
図2に示すように、板ガラスGRの厚さ方向に並設されるローラ対として構成される。一対のローラ13aは、互いに接近・離反可能に構成される。各ローラ13aは、ローラユニット6a,6bを移動させることにより、徐冷炉7の開口部を介して当該徐冷炉7内に配置され、あるいは徐冷炉7外に取り出される。
【0034】
軸部13bは、金属製であり、各ローラ13aを個別に支持する。これにより、各ローラ13aは、板ガラスGRの幅方向における端部を個別に挟持可能な片持ちローラとして構成される。駆動装置13cは、軸部13bを回転させる電動モータを含む。
【0035】
フレーム14は、ローラ装置13を位置変更可能に支持する複数段のレール部(案内部)14aと、各レール部14aを支持する複数の支柱14bとを有する。レール部14aは、ローラ装置13のローラ13aをフレーム14から突出させ、当該ローラ13aを徐冷炉7内に挿入させる使用位置と、この使用位置から後退させてフレーム14内に収容する待機位置とに当該ローラ装置13の位置を変更させる。具体的には、レール部14aは、ローラ装置13の駆動装置13cを進退自在に支持するLMガイド(登録商標)により構成されるが、この構成に限定されない。なお、このレール部14aにより、徐冷炉7におけるローラ13aの位置を微調整することも可能である。
【0036】
支柱14bは、金属製の四角柱により構成されるが、これに限定されない。支柱14bは、上下複数段(図例では三段)に構成されるレール部14aを所定の間隔をおいて支持する。支柱14bは、第二支持台15の上面に立設されている。これにより、フレーム14は、第二支持台15と一体に構成される。
【0037】
第二支持台15は、徐冷炉7が設置される床(以下「設置床」という)S上を位置変更可能に構成される。すなわち、第二支持台15は、設置床S上で転動可能な複数の車輪16(例えばベアリング)と、これらの車輪16を個別に固定するロック機構17とを有する。
【0038】
以下、上記構成の板ガラス製造装置によって板ガラスGRを製造する方法について説明する。本方法は、溶解炉1にて原料ガラスを溶解させ(溶解工程)、溶融ガラスGMを得た後、この溶融ガラスGMに対し、順に清澄槽2による清澄工程、均質化槽3による均質化工程、及び状態調整槽4による状態調整工程を実施する。その後、この溶融ガラスGMを成形炉5に移送し、成形体5aによる成形工程により溶融ガラスGMから板ガラスGRを成形する。その後、徐冷炉7内においてローラ13aによって板ガラスGRを下方に移送しながら、徐冷により板ガラスGRの内部歪みが除去される。その後、板ガラスGRは、下流側の工程により、所定寸法に切断され(切断工程)、あるいはロール状に巻き取られる(巻取工程)。
【0039】
成形された板ガラスGRは、例えば、厚みが0.01〜10mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。
【0040】
以上のような一連の工程を実行するにあたり、事前にガラス供給路8、成形炉5及び徐冷炉7等を加熱する必要がある(以下「予熱工程」という)。以下、予熱工程について
図3乃至
図10を参照しながら説明する。
【0041】
ガラス供給路8は、複数のガラス供給管8aを連結することにより構成される。
図3に示すように、予熱工程は、ガラス供給路8を各ガラス供給管8a単位に分離した状態で実施される。各ガラス供給管8aの端部には、加熱器としての電極8bが設けられている。予熱工程では、この電極8bに通電することにより、各ガラス供給管8aを一定時間加熱する。
【0042】
各ガラス供給管8aは、この加熱により膨張する。加熱が終了すると、分離されているガラス供給管8aを連結してガラス供給路8を形成する(ガラス供給路形成工程)。さらに、ガラス供給路8に、均質化槽3、状態調整槽4等を接続する。その後、ガラス供給路8の端部に成形炉5を接続する(成形炉5の接続工程)。このとき、
図4に示すように、ガラス供給路8と、成形炉5との間に若干の隙間が生じるため、成形炉5を支持台9上でガラス供給路8に向かって移動させる必要がある。具体的には、成形炉5を移動させるとともに、この成形炉5の端部に設けられるパイプをガラス供給路8の端部(状態調整槽4の下部のパイプ)に一致させ、これらを連結する(
図5参照)。
【0043】
ガラス供給路8に対する成形炉5の接続が終了すると、次に成形炉5に対する徐冷炉7の位置決めが行われる(徐冷炉7の位置決め工程)。この徐冷炉7の位置決め工程では、成形炉5に対する徐冷炉7の位置決めを行うことで、成形炉5によって成形される板ガラスGRの幅方向及び板厚方向における徐冷炉7の位置決めを行う。
図5に示すように、成形体5aには、徐冷炉7の位置決めを行うための装置(以下「位置決め装置」という)18が取り付けられる。
【0044】
本実施形態において、位置決め装置18は、レーザ光を放射可能なレーザ照射装置により構成されるが、これに限定されず、下げ振りその他の位置決め具により構成され得る。位置決め装置18は、成形体5aに対して着脱自在に構成される。位置決め装置18は、
図5に示すように、正面視において、成形体5aの幅方向中央部に配置される。
【0045】
徐冷炉7には、位置決め用のマーカ19が付されている。マーカ19は徐冷炉7に対して着脱自在に構成されるが、これに限定されない。徐冷炉7の位置決め工程では、成形体5aに設けられた位置決め装置18からレーザ光Lを鉛直下方に放射し、このレーザ光Lにマーカ19が一致するように、徐冷炉7を移動させる(
図6参照)。徐冷炉7が所定の位置に配置されると、ロック機構12により第一支持台10の車輪11が固定される。これにより、成形炉5の幅方向、すなわち板ガラスGRの幅方向に対する徐冷炉7の位置決めが完了する。
【0046】
同様に、
図7に示すように、側面視において、成形体5aの下端部5eに一致するように位置決め装置18が取り付けられる。位置決め装置18から鉛直下方に放射されたレーザ光Lに、徐冷炉7の側面に設けられたマーカ19が一致するように、徐冷炉7を移動させる(
図8参照)。レーザ光Lとマーカ19とが一致すると、ロック機構12により第一支持台10の車輪11が固定される。これにより、成形炉5の厚さ方向、すなわち板ガラスGRの厚さ方向に対する徐冷炉7の位置決めが完了する。
【0047】
上記した徐冷炉7の位置決めは、複数の位置決め装置18を使用して行ってもよく、単一の位置決め装置18により行ってもよい。なお、徐冷炉7の位置決めが終了すると、位置決め装置18は、成形体5aから取り外される(
図9参照)。
【0048】
徐冷炉7の位置決めが完了すると、次にローラユニット6a,6bの位置決めが行われる(ローラユニット6a,6bの位置決め工程)。この場合、
図9に示すように、ローラユニット6a,6bを移動させ、徐冷炉7に接近させる。このとき、ローラ装置13は、待機位置にあってフレーム14に収容された状態となっている。
【0049】
さらに、ローラユニット6a,6bのフレーム14を徐冷炉7に隣接させ、第二支持台15の車輪16をロック機構17により固定する。その後、
図10に示すように、待機位置にあるローラ装置13を使用位置へと変更し、ローラ13aを徐冷炉7内に挿入する。以上により徐冷炉7の位置決め工程が終了する。
【0050】
その後、成形炉5及び徐冷炉7の加熱(予熱)が行われる。この加熱は、成形炉5内に設けられる加熱器、及び徐冷炉7内に設けられる加熱器により行われる。各加熱器は、板ガラスGRの成形中においても引き続き成形炉5内及び徐冷炉7内を加熱する。成形炉5内が温度に到達し、徐冷炉7内に所定の温度勾配が構成された時点で、板ガラス製造装置(成形炉5)による板ガラスGRの成形が開始する。
【0051】
以上説明した本実施形態に係る板ガラス製造装置によれば、ローラユニット6a,6b及び徐冷炉7を設置床Sに対して位置変更可能に構成することで、予熱したガラス供給路8に成形炉5を接続した後に、この成形炉5に対するローラユニット6a,6b及び徐冷炉7の位置決め作業を容易に行うことができる。これにより、本実施形態に係る板ガラス製造装置では、板ガラスの成形前の準備作業を効率良く行うことが可能になる。
【0052】
また、上記の本実施形態に係る板ガラス製造方法によれば、ガラス供給路8の予熱工程を、ガラス供給管8aに分解した状態で行うため、加熱によるガラス供給管8aの膨張に起因する当該ガラス供給管8aの損傷を確実に防止できる。また、上記のように板ガラスGRの成形工程前の準備工程を効率良く行うことができることから、この製造方法により板ガラスGRを効率良く製造することが可能になる。
【0053】
また、本実施形態では、ローラユニット6a,6bを第二支持台15により支持させることにより、ローラユニット6a,6bを徐冷炉7から容易に離脱させることができるため、ローラ装置13のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0054】
図11は、板ガラス製造装置の第二実施形態を示す。本実施形態では、徐冷炉7及びローラユニット6a,6bの構成が第一実施形態と異なる。上記の第一実施形態では、徐冷炉7とローラユニット6a,6bとを別個の支持台(第一支持台10、第二支持台15)により支持していたが、本実施形態に係る板ガラス製造装置では、徐冷炉7とローラユニット6a,6bとを一個の支持台20により一体に支持している。これにより、成形炉5に対する徐冷炉7及びローラユニット6a,6bの位置決めを効率良く行うことが可能になる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
上記の実施形態では、位置決め装置18を成形体5aに装着することにより徐冷炉7の位置決めを行う例を示したが、これに限定されない。位置決め装置18を徐冷炉7に装着することでその位置決めを行ってもよく、設置床Sに位置決め装置18を設置して徐冷炉7の位置決めを行ってもよい。この場合、成形体5aにもマーカ19を付してよい。
【符号の説明】
【0057】
5 成形炉
6a ローラユニット
6b ローラユニット
7 徐冷炉
8 ガラス供給路
8a ガラス供給管
10 第一支持台
11 車輪
12 ロック機構
13a ローラ
14 フレーム
15 第二支持台
16 車輪
17 ロック機構
18 位置決め装置
20 支持台
S 設置床
GM 溶融ガラス
GR 板ガラス