特許第6708990号(P6708990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6708990光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708990
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/12 20060101AFI20200601BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20200601BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20200601BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   G02B26/12
   G02B26/10 F
   B41J2/47 101D
   G03G15/04 111
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-524944(P2018-524944)
(86)(22)【出願日】2017年5月12日
(86)【国際出願番号】JP2017018112
(87)【国際公開番号】WO2018003317
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2018年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-126868(P2016-126868)
(32)【優先日】2016年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 譲
【審査官】 外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−078999(JP,A)
【文献】 特開2002−258201(JP,A)
【文献】 特開2011−118325(JP,A)
【文献】 特開2005−092119(JP,A)
【文献】 特開2010−122449(JP,A)
【文献】 特開2010−039157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10−26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側が蓋部材により閉塞されたハウジングと、ハウジング内に収容され、光源から出射された各光ビームを偏向走査するポリゴンミラー部と、ポリゴンミラー部の下側に設けられて該ポリゴンミラー部を回転駆動するローター部を有するポリゴンモーターと、上記ポリゴンミラー部にて偏向走査された光ビームを被走査面に結像させる結像レンズ部とを備えた光走査装置であって、
上記ハウジングにおける上記結像レンズ部が設置される設置面は、上記ポリゴンモーターが設置される設置面に対して段差を持って高い位置に形成されており、
上記ポリゴンミラー部の回転軸方向から見て、該ポリゴンミラー部の各頂点を通る外接円の直径は、上記ポリゴンモーターのローター部の外径よりも大きく、
上記ポリゴンミラー部により偏向走査されて上記結像レンズ部を通過した光ビームを反射して上記被走査面に導く複数の折返しミラーを備え、
上記複数の折返しミラーは、主走査方向から見て、ポリゴンミラー部側から結像レンズ部側に向かって下側に傾斜する細長い矩形状の断面をなす傾斜ミラーを含み、
上記傾斜ミラーは、その下端が上記結像レンズ部の上端面における上記ポリゴンミラー部側のエッジの近傍に位置するように配置され、
上記結像レンズ部の上端面における上記ポリゴンミラー部側のエッジは、上記断面における上記傾斜ミラーの長手方向の延長上に位置している光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置において、
上記ローター部の下端面から上端面までの距離は、上記ポリゴンミラー部の下端面から上端面までの距離よりも大きい、光走査装置。
【請求項3】
請求項1記載の光走査装置において、
上記ポリゴンミラー部の回転軸方向から見て、上記結像レンズ部の設置面における上記ポリゴンミラー側のエッジから当該結像レンズ部までの距離をtとし、上記ポリゴンモーターの設置面における上記結像レンズ部側のエッジから該ポリゴンモーターの外周面までの距離をTとしたとき、T>tの関係を満たしている、光走査装置。
【請求項4】
請求項1記載の光走査装置において、
上記ハウジングは、上記結像レンズ部の設置面のポリゴンモーター側のエッジと、上記ポリゴンモーターの設置面の結像レンズ部側のエッジとを接続する接続面を有し、
上記接続面は、主走査方向から見てポリゴンモーター側から結像レンズ部側に近づくにつれて高さが増加する傾斜面とされている、光走査装置。
【請求項5】
請求項1記載の光走査装置において、
上記ハウジングは、上記結像レンズ部の設置面におけるポリゴンモーター側のエッジと、上記ポリゴンモーターの設置面における結像レンズ部側のエッジとを接続する接続面を有し、
上記接続面は、主走査方向から見てポリゴンモーター側から結像レンズ部側に近づくにつれて接線の傾きが急になる円弧状をなす湾曲面とされている、光走査装置。
【請求項6】
請求項1記載の光走査装置において、
上記ポリゴンミラー部は、上下方向に間隔を空けて同軸に配置された上側ポリゴンミラーと下側ポリゴンミラーとを含む、光走査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光走査装置において、
上記結像レンズ部は、上記ポリゴンミラー部の軸心方向から見て、該軸心を通る直線を挟んでその両側に対称に配置されている、光走査装置。
【請求項8】
請求項1記載の光走査装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式の画像形成装置に搭載される光走査装置として、光源と、光源から出射された光ビームを主走査方向に走査させるポリゴンミラー部と、ポリゴンミラー部によって走査された光ビームを被走査面に結像させる結像レンズと、これらの光学機器を内部に収容するハウジングとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ハウジングは上側に開放する有底箱状をなしており、ハウジングの上側は蓋部材により閉塞されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−258201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示す光走査装置では、ポリゴンミラー部の回転によって生じた空気流がハウジングの側壁部に達することで側壁部の近傍が負圧になり、ハウジング外の空気がハウジングと蓋部材との隙間から異物(塵や埃等)と共にハウジング内に流入する。空気流と共にハウジング内に流入した異物がポリゴンミラー部の反射面に付着すると光走査装置の光学性能が低下してしまう。
【0005】
そこで、ポリゴンミラー部の周囲を隔壁で囲むことで、ポリゴンミラー部の回転によって生じた空気流をポリゴンミラー部の近傍で循環させて、ハウジングの側壁部近傍が負圧になるのを抑制することが考えられる。しかしこの場合、隔壁を設ける必要があるので部品点数が増加してコスト増加を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安価な構成によりハウジングの防塵性を確保することができる光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光走査装置は、上側が蓋部材により閉塞されたハウジングと、ハウジング内に収容され、光源から出射された各光ビームを偏向走査するポリゴンミラー部と、ポリゴンミラー部の下側に設けられて該ポリゴンミラー部を回転駆動するローター部を有するポリゴンモーターと、上記ポリゴンミラー部にて偏向走査された光ビームを被走査面に結像させる結像レンズ部とを備えている。
【0008】
そして、上記ハウジングにおける上記結像レンズ部が設置される設置面は、上記ポリゴンモーターが設置される設置面に対して段差を持って高い位置に形成されており、上記ポリゴンミラー部の回転軸方向から見て、該ポリゴンミラー部の各頂点を通る外接円の直径は、上記ポリゴンモーターのローター部の外径よりも大きいものとされている。
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、上記光走査装置を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安価な構成によりハウジングの防塵性を確保可能な光走査装置及び画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態における光走査装置を備えた画像形成装置を示す概略図である。
図2図2は、光走査装置を示す概略の平面図である。
図3図3は、図2のIII−III線断面を示す概略図である。
図4図4は、ポリゴンミラー部の周囲を拡大して示す概略図である。
図5図5は、ポリゴンミラー部の周囲の空気流れを説明するための説明図である。
図6図6は、変形例1を示す図5相当図である。
図7図7は、変形例2を示す図3相当図である。
図8図8は、変形例2を示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
《実施形態》
図1は、実施形態における画像形成装置1の概略構成図を示す。この画像形成装置1は、タンデム方式のカラープリンターであって、箱形のケーシング2内に画像形成部3を備えている。この画像形成部3は、ネットワーク接続等がされたコンピューター等の外部機器から伝送されてくる画像データに基づき画像を記録紙Pに転写形成する部分である。画像形成部3の下方には、光ビーム(レーザー光)を照射する光走査装置4が配置され、画像形成部3の上方には、転写ベルト5が配置されている。光走査装置4の下方には、記録紙Pを貯留する用紙貯留部6が配置され、用紙貯留部6の側方には、手差し給紙部7が配置されている。転写ベルト5の側方上部には、記録紙Pに転写形成された画像に定着処理を施す定着部8が配置されている。符号9は、ケーシング2上部に配置され、定着部8で定着処理が施された記録紙Pを排出する用紙排出部である。
【0014】
画像形成部3は、転写ベルト5に沿って一列に配置された4つの画像形成ユニット10を備えている。これら画像形成ユニット10は、感光体ドラム11を有している。各感光体ドラム11の直下には、帯電器12が配置され、各感光体ドラム11の一側方には、現像装置13が配置され、各感光体ドラム11の直上には、1次転写ローラー14が配置され、各感光体ドラム11の他側方には、感光体ドラム11の周面をクリーニングするクリーニング部15が配置されている。
【0015】
そして、各感光体ドラム11は、帯電器12によって周面が一様に帯電され、当該帯電後の感光体ドラム11の周面に対して、上記コンピューター等から入力された画像データに基づく各色に対応したレーザー光が光走査装置4から照射され、各感光体ドラム11の周面に静電潜像が形成される。かかる静電潜像に現像装置13から現像剤が供給されて、各感光体ドラム11の周面にイエロー、マゼンタ、シアン、又はブラックのトナー像が形成される。これらトナー像は、1次転写ローラー14に印加された転写バイアスにより転写ベルト5にそれぞれ重ねて転写される。
【0016】
符号16は、定着部8の下方に転写ベルト5と当接した状態で配置された2次転写ローラーであり、用紙貯留部6又は手差し給紙部7から用紙搬送路17を搬送される記録紙Pを2次転写ローラー16と転写ベルト5とで挟持し、2次転写ローラー16に印加された転写バイアスにより転写ベルト5上のトナー像を記録紙Pに転写するようになっている。
【0017】
定着部8は、加熱ローラー18と加圧ローラー19とを備え、これら加熱ローラー18と加圧ローラー19とにより記録紙Pを挟持して加熱及び加圧し、記録紙Pに転写されたトナー像を記録紙Pに定着させる。定着処理後の記録紙Pは、用紙排出部9に排出される。符号20は、両面印刷時に定着部8から排出された記録紙Pを反転させるための反転搬送路である。
【0018】
次に、図2及び図3を参照して光走査装置4の詳細について説明する。図2は光走査装置4の内部構造を示す平面図であり、図3図2のIII方向矢視図である。
【0019】
光走査装置4は、左側光源部43L及右側光源部43Rと、該各光源部43L,43Rから出射された光ビームを偏向走査する偏向器Dと、偏向器Dにより偏向走査された光ビームを感光体ドラム11の表面に結像させる左側結像レンズ部42L及び右側結像レンズ部42Rと、これらを収容するハウジング44とを有している。ハウジング44は上側に開放する矩形箱状の樹脂ケースからなり、ハウジング44の上側は蓋部材F(図1にのみ示す)により閉塞されている。
【0020】
偏向器Dは、ポリゴンミラー部40と、ポリゴンミラー部40の下側に設けられて該ポリゴンミラー部40を回転駆動するポリゴンモーター41とを有している。
【0021】
ポリゴンミラー部40は、上下方向に間隔を空けて並ぶ上側ポリゴンミラー40a及び下側ポリゴンミラー40bと、両ポリゴンミラー40a,40bを互いに連結する連結部40cとを有している。両ポリゴンミラー40a,40bは、平面視で正六角形状をなしていて互いに同軸に配置されている。
【0022】
ポリゴンモーター41は、矩形状の制御基板49上に固定された電気モーターである。ポリゴンモーター41は、軸心が上下方向に延びる円筒状のローター部41aを有している。ポリゴンミラー部40は、このローター部41aの上端部に固定されて該ローター部41aと共に回転する。
【0023】
ポリゴンモーター41のローター部41aの外径をRとし、ポリゴンミラー部40を回転軸方向から見たときのポリゴンミラー部40の各頂点を通る外接円の直径をrとしたとき、R<rの関係を満たしている。尚、ローター部41aが円筒状でない場合(例えば多角柱状である場合)におけるローター部41aの外径Rは、ローター部41aの周方向の各位置における直径の平均値を意味する。
【0024】
また、ポリゴンモーター41のローター部41aの下端面から上端面までの距離をH(図4参照)とし、ポリゴンミラー部40の下端面から上端面までの距離をhとしたとき、H>hの関係を満たしている。
【0025】
図2を参照して、左側光源部43L及び右側光源部43Rは、ポリゴンモーター41に軸心を通り且つ前後方向に延びる直線C1を挟んで左右対称に配置されている。各光源部43L,43Rは、上側ポリゴンミラー40aに向けて光ビームを出射する上側レーザー光源43aと、下側ポリゴンミラー40bに向けて光ビームを出射する下側レーザー光源43bとを有している。
【0026】
左側光源部43L及び右側光源部43Rの各光源43a,43bと各ポリゴンミラー40a,40bとの間にはそれぞれ、コリメータレンズ45、アパーチャー46及びシリンドリカルレンズ47がこの順に配置されている。コリメータレンズ45は、各レーザー光源43a,43bから出射された光ビームを平行光に変換する。アパーチャー46はコリメータレンズ45を通過した光ビームの光束の範囲を制限する。シリンドリカルレンズ47はアパーチャー46を通過した光ビームをポリゴンミラー40a,40bに集光させる。
【0027】
左側結像レンズ部42L及び右側結像レンズ部42Rは、上記直線C1を挟んで左右対称に配置されている。各結像レンズ部42Lは、上側ポリゴンミラー40aにより反射された光ビームが通過する上側結像レンズ42aと、下側ポリゴンミラー40bにより反射された光ビームが通過する下側結像レンズ42bと有している。各結像レンズ42a,42bは、前後方向に延びる長尺状のfθレンズであって、各ポリゴンミラー40a,40bより反射された光ビームを等速度偏向して感光体ドラム11の表面に結像させる。
【0028】
光走査装置4の作動時には、左側光源部43L及び右側光源部43Rの各光源43a,43bから出射された光ビームがそれぞれコリメータレンズ45、アパーチャー46及びシリンドリカルレンズ47を通過してポリゴンミラー部40に照射される(図3の二点鎖線参照)。照射された各光ビームは、ポリゴンミラー部40にて主走査方向(図3の紙面垂直方向)に偏向走査された後、左側結像レンズ部42L,42Rを通過し、その後、折返しミラー48a〜48dにより反射されて各色に対応する感光体ドラム11の表面に結像される。各感光体ドラム11の表面が各光ビームの被走査面を構成している。
【0029】
図4に示すように、ポリゴンモーター41は制御基板49を介してハウジング44の底壁部に固定されている。ハウジング44の底壁部には、上側に開放する有底凹部44aが形成されている。有底凹部44aは、ポリゴンモーター41と同軸をなす円形凹部44b(図2参照)と、円形凹部44bの前端部から前側に延びる矩形凹部44cとを有している。有底凹部44aの底面は、ポリゴンモーター41が設置されるモーター設置面44fとされている。
【0030】
左側結像レンズ部42L及び右側結像レンズ部42Rは、モーター設置面44fに対して段差を持って高い位置に配置されている。ハウジング44は、結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)の設置面44g(以下、レンズ設置面44gという)におけるポリゴンモーター41側のエッジと、モーター設置面44fにおける結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)側のエッジとを接続する接続面44dを有している。
【0031】
接続面44dは、モーター41側から結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)側に向かうほど高くなる傾斜面とされている。この傾斜面の傾斜角度θは、45°以上90°未満(換言すれば、モーター設置面44fと接続面44dとの成す角度が90°よりも大きく135°以下)であることが好ましく、本実施形態では例えば65°とされている。
【0032】
レンズ設置面44gにおけるポリゴンミラー部40側のエッジから結像レンズ部42L,42Rまでの距離をtとし、モーター設置面44fにおける結像レンズ部42L側(又は結像レンズ部42R側)のエッジからポリゴンモーター41の外周面までの距離をTとしたとき、t<Tの関係を満たしている。
【0033】
次に図5を参照して、光走査装置4の作動時における偏向器Dの周辺の空気流れについて説明する。光走査装置4の作動時には、ポリゴンミラー部40が高速回転するので、ポリゴンミラー部40の周囲の空気が遠心力により径方向外側に向かって加速される。この径方向外側に向かう空気流が各結像レンズ部42L,42Rにより遮られて下側に向きを変えることで下降流が生じる。
【0034】
一方、ポリゴンミラー部40の周囲では、遠心力の影響で空気流の速度が高くなるので、ベルヌ−イの定理に基づいて負圧領域が生じる。このため、ローター部41aの周囲の空気は、ローター部41aの遠心力によって加速されつつこの負圧領域に吸い寄せられ上昇気流となる。そして、この上昇気流と上記下降気流とによって偏向器Dの側方には循環気流が形成される。したがって、ポリゴンミラー部40の回転に伴い径方向外側に向かって加速された空気流がハウジング44の側壁部付近に到達するのを防止することができる。延いては、ハウジング44の側壁部付近に負圧領域が形成されてハウジング44外の空気がハウジング44と蓋部材Fとの隙間からハウジング44内に流入するのを防止することができる。よって、空気流と共にハウジング44内に異物が流入して各ポリゴンミラー40a,40bの反射面や各結像レンズ部42L,42Rの表面が汚染されるのを防止することができる。
【0035】
ここで、ポリゴンミラー部40の外接円の直径rはローター部41aの外径Rよりも大きいので、上昇気流の流速に比べて下降気流の流速が高くなる。したがって、上昇気流が各結像レンズ部42L,42Rを乗り越えてハウジング44の側壁部に到達するのを抑制することができる。また、ローター部41aの外径Rを小さくすることにより、ローター部41aの側方に気流の循環スペースを十分に確保することができる。よって、気流の一部が各結像レンズ部42L,42Rを乗り越えてハウジング44の側壁部に到達するのを確実に抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、ローター部41aの下端面から上端面までの距離Hは、ポリゴンミラー部40の下端面から上端面までの距離hよりも大きい。これにより、ポリゴンモーター41の設置面側に気流の循環スペースを十分に確保することができる。よって、気流をこのスペースに引き込んで効率良く循環させることが可能となる。
【0037】
さらに本実施形態では、レンズ設置面44gにおけるポリゴンミラー部40側のエッジから結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)までの距離をtとし、モーター設置面44fにおける結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)側のエッジからポリゴンモーター41の外周面までの距離をTとしたとき、T>tの関係を満たしている。
【0038】
このように、距離tを極力短くする一方、距離Tを極力長くすることで上述した気流の循環スペースを十分に確保して気流の循環性を向上させることができる。
【0039】
さらに本実施形態では、結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)の設置面44gにおけるポリゴンモーター41側のエッジと、モーター設置面44fにおける結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)側のエッジとを接続する接続面44dは、ポリゴンモーター41側から結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)側に向かうほど高くなる傾斜面とされている。
【0040】
これによれば、ポリゴンミラー部40の回転により生じた下降気流が接続面44dに沿って滑らかに流れるので、下降気流の剥離を抑制することできる。延いては、下降気流と上昇気流とによって形成される循環気流が乱れるのを防止することができる。
【0041】
また、本実施形態では、ポリゴンミラー部40は、上側ポリゴンミラー40aと下側ポリゴンミラー40bとを二段に配置して構成されている。したがって、ポリゴンミラーの段数が一段である場合に比べて、ポリゴンミラー部40の下端面から上端面までの距離hが大きくなり、ポリゴンミラー部40の回転により径方向外側へと加速される空気流量が増加する。このため、ハウジング44の側壁部付近に空気流が到達し易くなり、上述のハウジング44内への異物侵入の問題が特に生じ易い。本発明の構成はかかる構成に対して特に有用である。
【0042】
《変形例1》
図6は、変形例1を示す図5相当図である。この変形例1は接続面44dの形状が実施形態1とは異なっている。
【0043】
すなわち、本変形例1では、接続面44dは湾曲面からなり、この湾曲面は、主走査方向(つまり結像レンズ部42L,42Rの長手方向であって図6の紙面垂直方向)から見たときにローター部41a側から結像レンズ部42L(又結像レンズ部42R)側に向かうにしたがって接線の傾きが急になる円弧状に形成されている。
【0044】
この構成によれば、接続面44dを傾斜面で構成した場合に比べて、ポリゴンミラー部40の回転により生じた下降気流を該接続面44dに沿って滑らかに流すことができる。よって、実施形態1に比べて下降気流の剥離をより一層確実に抑制することができる。延いては、下降気流と上昇気流とによって形成される気流の循環性を向上させることができる。
【0045】
《変形例2》
図7は、変形例2を示す図3相当図である。この変形例2は、各結像レンズ部42L,42Rを通過した光ビームを各感光体ドラム11に導くための折返しミラー48e〜48lの配置が上記実施形態及び変形例1とは異なっている。
【0046】
すなおち、本変形例2では、光走査装置4は、左側結像レンズ部42Lの上側結像レンズ42aを通過した光ビームを感光体ドラム11に導く折返しミラー48eと、下側結像レンズ42bを通過した光ビームを感光体ドラム11に導く3つの折返しミラー48f〜48hと、右側結像レンズ部42Rの上側結像レンズ42aを通過した光ビームを感光体ドラム11に導く折返しミラー48iと、下側結像レンズ42bを通過した光ビームを感光体ドラム11に導く折返しミラー48j〜48lとを有している。
【0047】
折返しミラー48h,48lは、上側から見て、ポリゴンミラー部40と結像レンズ部42L(又は結像レンズ部42R)との間に配置されている。これら二つの折返しミラー48h,48lは、ポリゴンミラー部40を挟んで(上記直線C1に対して)左右対称に配置されている。
【0048】
左側の折返しミラー(傾斜ミラー)48hは、主走査方向から見て、ポリゴンミラー部40側から左側結像レンズ部42L側に向かって下側に傾斜している。同様に右側の折返しミラー(傾斜ミラー)48lは、主走査方向から見て、ポリゴンミラー部40側から右側結像レンズ部42L側に向かって下側に傾斜している。
【0049】
左側の折返しミラー48hの下端は、左側結像レンズ部42Lの上端面におけるポリゴンミラー部40側のエッジ近傍に位置している。このエッジは、主走査方向から見て、該折返しミラー48hの延長線上に位置している。同様に、右側の折返しミラー48lの下端は、右側結像レンズ部42Rの上端面におけるポリゴンミラー部40側のエッジ近傍に位置している。このエッジは、主走査方向から見て、該折返しミラー48lの延長線上に位置している。
【0050】
本変形例2の光走査装置4によれば、図8に示すように、ポリゴンミラー部40の回転により誘起された径方向外側に向かう空気流は、折返しミラー48h,48lに衝突することより下側に偏向される。したがって、上述の循環気流をより一層確実に生じさせることができる。また、気流偏向部材として折返しミラー48h,48lを利用するようにしたことで、部品点数を削減して製品コストを低減することができる。
【0051】
《他の実施形態》
上記実施形態及び各変形例では、ポリゴンミラー部40におけるポリゴンミラーの段数を二段にしているが、これに限ったものではなく、ポリゴンミラーの段数は一段であってもよいし、三段以上であってもよい。
【0052】
上記実施形態及び各変形例では、光走査装置4は、ポリゴンミラー部40を挟んで左右両側に走査光学系を配置した対向走方式を採用するようにしているが、これに限ったものではなく、本発明は、ポリゴンミラー部40の一方側にのみ走査光学系を配置した光走査装置4に対しても適用可能である。
【0053】
上記実施形態では、光走査装置4が搭載される画像形成装置1は、レーザープリンターとされているが、これに限ったものではない。すなわち、画像形成装置1は、例えば複写機、複合機(MFP)又はファクシミリ等であってもよい。
【0054】
また、本発明は上記実施形態及び各変形例に限定されるものでなく、本発明には、これらの実施形態及び各変形例を適宜組み合わせた構成が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明は、光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置について有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8