(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビームには、前記第2油路を流通した油を前記パワーローラの周面に向けて噴出するための噴出口が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
前記噴出口は、前記入力ディスク及び前記出力ディスクの各々と前記パワーローラとの接触部分に向けて、前記パワーローラの前記周面に対する接線方向から油を噴出可能に形成されている、請求項4に記載のトロイダル無段変速機。
前記ビームは、前記パワーローラの周面に向かって延びる延設部を有し、前記噴出口は、前記延設部に形成されている、請求項4または5に記載のトロイダル無段変速機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、各図を参照して説明する。
【0013】
[航空機用発電装置]
図1は、実施形態に係る航空機用発電装置1(以下、「発電装置1」ともいう。)の構成を示す断面斜視図である。発電装置1は、駆動機構一体型発電装置である。発電装置1は、外部より不図示のエンジンの回転駆動力が伝達される入力軸である装置入力軸2と、装置入力軸2と並設された変速機3と、装置入力軸2及び変速機3と並設されて変速機3の出力により駆動される発電機4と、装置入力軸2の軸方向一端2a側に設けられて変速機3の出力を発電機4に伝達する動力伝達機構5と、装置入力軸2の軸方向一端2a側に取付部6aを有するケーシング6と、変速機3の出力により駆動されるオイルポンプ7、8等の1以上の補機とを備える。
【0014】
装置入力軸2は、前記エンジンの回転駆動力を変速機3に伝達する。装置入力軸2は、軸本体部9と、変速機入力ギヤ11と近接する軸方向他端2c側において軸本体部9の端部付近に設けられた伝達ギヤ10とを有する。伝達ギヤ10は、変速機入力ギヤ11と噛み合っている。装置入力軸2は、ケーシング6の開口6bの周縁部に設けられた軸受B1と、ケーシング6の内部に設けられた軸受B2とに軸支される。
【0015】
発電機4は、ケーシング6の開口6bと近接する装置入力軸2の軸方向一端2a側に設けられた発電機入力軸12を有する。発電機入力軸12は、発電機4へ動力を入力するためのものである。変速機3の出力が動力伝達機構5を介して発電機入力軸12に入力されると、発電機4の内部で発電がなされ、ケーシング6の外部に露出して設けられたターミナル13を通じて電力が取り出される。発電装置1では、変速機3の変速比を調整することで、変速機3の出力が動力伝達機構5を介して発電機入力軸12に一定の回転数の回転駆動力として入力される。これにより、発電機4で一定周波数の交流電力が発電され、ターミナル13を介して外部機器に供給される。
【0016】
動力伝達機構5は、変速機3の出力を発電機4及びオイルポンプ7、8等に伝達する。動力伝達機構5は、変速機3の変速機出力軸25に設けられて変速機3の出力が伝達される第1ギヤ14と、第1ギヤ14と噛み合う第2ギヤ15と、第2ギヤ15のメインギヤ部15aと噛み合う第3ギヤ16と、第3ギヤ16と噛み合って発電機4の発電機入力軸12に動力を入力する第4ギヤ17と、第2ギヤ15のサブギヤ部15bに噛み合ってオイルポンプ7、8に動力をそれぞれ伝達する第5ギヤ18及び第6ギヤ19とを有して構成される。第5ギヤ18に伝達された動力は、オイルポンプ7の駆動力に供される。第6ギヤ19に伝達された動力は、オイルポンプ8の駆動力に供される。ケーシング6の内部で、動力伝達機構5は、取付部6aの近傍位置に配置される。
【0017】
ケーシング6は、薄型で縦長の扁平な箱体として構成される。取付部6aは、ケーシング6の一側部に環状のフランジ部として設けられる。発電装置1は、取付部6aにクランプバンド等の取付部材を巻き掛けることでエンジン側に取り付けられる。取付部6aに囲まれた領域には、ケーシング6の内部と連通する開口6bが形成される。開口6bからは、装置入力軸2の軸方向一端2aが外部に露出している。
【0018】
オイルポンプ7は、変速機3及び動力伝達機構5等に潤滑油を供給する供給用オイルポンプである。オイルポンプ8は、ケーシング6に溜まった油を吸い上げる吸引用オイルポンプである。
【0019】
[変速機]
変速機3は、一例として、トラクションドライブ式の無段変速機であり、ダブルキャビティ式ハーフトロイダル無段変速機である。変速機3は、装置入力軸2の軸方向他端2c側に設けられて装置入力軸2からの出力が入力される入力部22と、装置入力軸2の軸方向一端2a側に設けられて変速された出力を動力伝達機構5に伝達する出力部23とを備える。具体的構成として、変速機3は、ケーシング6の内部で不図示の軸受に軸支された中空の変速機入力軸24と、軸方向の中央部分が変速機入力軸24で覆われるように変速機入力軸24の中空部に挿通され、変速機入力軸24から独立して回転可能に配された変速機出力軸25とを有する。本実施形態では、変速機入力軸24の回転軸心と、変速機出力軸25の回転軸心とは、変速機軸心と一致している。以下、本実施形態では、変速機軸心を通る軸線を変速機軸線A1という。
【0020】
変速機3は、入力部22の構成要素である変速機入力ギヤ11と、変速機入力ギヤ11の両面側にそれぞれ設けられた一対の入力ディスク26と、各入力ディスク26と対向して変速機出力軸25に設けられた一対の出力ディスク27とを有する。変速機入力ギヤ11と、一対の入力ディスク26とは、変速機入力軸24と一体で変速機軸線A1の周りに回転可能に設けられる。一対の出力ディスク27は、変速機出力軸25と一体で変速機軸線A1の周りに回転可能に設けられる。対向する入力ディスク26及び出力ディスク27の間には、環状のキャビティ28が形成される。キャビティ28の各々は、変速機軸線A1の方向で一対をなすように、変速機軸線A1の軸周りに形成される。変速機3では、取付部6aに近接する一方の出力ディスク27が出力部23の構成要素として機能する。
【0021】
変速機3は、各キャビティ28内に設けられた複数の変速ユニット29を有する。
図2は、変速ユニット29の構成を示す斜視図である。
図3は、変速ユニット29の一部分解図である。
図4は、変速ユニット29の
図2におけるIV−IV線矢視断面図である。
図2及び3に示すように、変速ユニット29は、パワーローラユニット30とトラニオン31とビーム32とを組み立ててなる組立体である。
図1に示すように、変速機3では、一対の変速ユニット29が、変速機軸線A1の方向に並ぶ一対のキャビティ28の内部にそれぞれ並設されている。
【0022】
パワーローラユニット30は、トラニオン31に支持される。
図4に示すように、パワーローラユニット30は、トラニオン31に取り付けられる支持部33と、支持部33に回転可能に支持された略半球状のパワーローラ34と、支持体33及びパワーローラ34の間において、パワーローラ34を軸支する軸受35とを有する。支持体33は、略円盤状の板体であり、トラニオン31に向けて突設された偏心軸33aにおいてトラニオン31に支持される。支持体33は、さらに、回転軸線A2に沿って、偏心軸33aの突出方向と逆方向に突設されたローラ回転軸33bを有する。パワーローラ34のローラ回転軸33bと対向する部分には凹状の軸支部34aが形成され、軸支部34aの内部にローラ回転軸33bが挿入されて、パワーローラ34がローラ回転軸33bの軸周りに回転可能に軸支される。これにより、パワーローラ34は、変速機軸線A1の方向と異なる方向に延びる回転軸線(第1軸)A2の軸周りに回転可能に支持される。回転軸線A2は、変速機軸線A1に対して捻れの位置にある。パワーローラ34の周面34bは、緩やかな曲面である。周面34bには、駆動時に高粘度の油膜が形成される。変速機3は、いずれか一方の出力ディスク27の近傍において、各パワーローラ34の周面34bを、入力ディスク26及び出力ディスク27により所定の押圧力で挟ませる不図示の押圧機構を有する。パワーローラ34は、前記押圧機構によって押圧されながら、入力ディスク26の対向面26aと出力ディスク27の対向面27aとに前記油膜を介して傾転可能に挟まれる。変速機3では、前記油膜の粘性抵抗(流体摩擦)を利用することで、入力ディスク26の回転駆動力がパワーローラ34を介して出力ディスク27に伝達される。
【0023】
トラニオン31は、外方から周面34bの一部を覆いながらパワーローラユニット30を支持する。変速機3において、トラニオン31は、傾転軸線(第2軸)A3の周りで揺動可能に設けられる。傾転軸線A3は、変速機軸線A1に対して捻れの位置にあり、回転軸線A2に対して直交する。
図3及び4に示すように、トラニオン31は、傾転軸線A3の方向に延び、パワーローラユニット30が取り付けられるベース部31aと、パワーローラユニット30の傾転軸線A3方向(傾転軸の軸方向)の両側において、パワーローラ34の周面34bに対向するようにベース部31aに立設された一対の側壁部31b、31cとを有する。
【0024】
ベース部31aには、一方の面に偏心軸33aを軸支する軸支部31dが形成される。一対の側壁部31b、31cは、ベース部31aの長手方向の両側より突出し、一対の側壁部31b、31cの間には、空間G1が形成される。一対の側壁部31b、31cの各板厚方向は、傾転軸線A3の方向に揃えられる。一対の側壁部31b、31cは、立設方向の先端側に端面31e、31fを有する。
【0025】
端面31e、31fには、中央部分に溝部31g、31hが形成される。溝部31g、31hは、端面31e、31fの中央領域を凹ませて形成される。
図3に示すように、溝部31g、31hは、傾転軸線A3の方向の両側に向けて開放される。溝部31g、31hでは、底面31e1、31f1と、底面31e1、31f1を挟む両側で対向する一対の側面31e2、31f2とによって、収容空間G2、G3が画定される。一対の側壁部31b、31cには、複数の挿通孔31iが、傾転軸線A3の方向に貫通して形成される。
【0026】
パワーローラユニット30から見て一対の側壁部31b、31cの外側には、傾転軸線A3の方向に延びる傾転軸(短軸31j及び長軸31k)が設けられる。短軸31j及び長軸31kのいずれか一方には、不図示のアクチュエータが連結される。変速機3では、複数の変速ユニット29が、各々の短軸31j及び長軸31kにおいて、傾転軸線A3の周りで傾転可能に軸支される。これによって、パワーローラ34が、傾転軸線A3の周りで傾転可能にされる。変速ユニット29の傾転角(傾転軸線A3の周りの基準位置に対する回転角)は、前記アクチュエータを用い、パワーローラ34を傾転軸線A3の方向に移動させることで調節可能である。前記アクチュエータの駆動を制御することで、変速ユニット29におけるパワーローラ34の傾転角が調節される。パワーローラ34は、入力ディスク26の回転駆動力を傾転角に応じた変速比で出力ディスク27に伝達する。
【0027】
ビーム32は、パワーローラ34から見たトラニオン31のベース部31aと反対側において傾転軸線A3の方向(傾転軸の軸方向)に延び、一対の側壁部31b、31cに取り付けられてトラニオン31を補強する。ビーム32は、傾転軸線A3の方向に延びる長尺状である。ビーム32は、一対の側壁部31b、31cの間に延びる長尺状の本体部32gと、本体部32gの長手方向の両端寄りの位置に形成された一対の当接部32aと、一対の当接部32aの各位置よりも長手方向の中央寄りの位置に形成された二対の規制部32bと、一対の規制部32bからビーム32の短手(幅)方向に延設された4つの延設部32cとを有する。
【0028】
一対の当接部32aは、ビーム32が一対の側壁部31b、31cに取り付けられた状態において、パワーローラ34の周面34bに面する一対の側壁部31b、31cの各側面31b1、31c1よりも、本体部32gの長手方向に延びる。各当接部32aは、溝部31g、31hの内部に収容可能なサイズ及び形状を有する。より詳細には、各当接部32aは、溝部31g、31hと略同一、または嵌合可能なサイズ及び形状を有する。
【0029】
各当接部32aは、第1対向面32a1と、一対の第2対向面32a2とを有する。一対の第2対向面32a2は、第1対向面32a1を挟むように設けられる。ビーム32が一対の側壁部31b、31cに取り付けられた状態において、一方の当接部32aの第1対向面32a1は、溝部31gの底面31e1と対向し、一対の第2対向面32a2は、溝部31gの一対の側面31e2と対向する。同様に、他方の当接部32aの第1対向面32a1は、溝部31hの底面31f1と対向し、一対の第2対向面32a2は、溝部31hの一対の側面31f2と対向する。
【0030】
各当接部32aは、ビーム32の長手方向に直交する断面が矩形状である。ビーム32が一対の側壁部31b、31cに取り付けられた状態において、
図3に示すように、トラニオン31の溝部31g、31hにビーム32の各当接部32aが係合(嵌合)される。この際、第1対向面32a1が底面31e1、31f1に当接することで、ビーム32のトラニオン31のベース部31aに近接する方向への移動が拘束される。また同様に、第2対向面32a2が側面31e2、31f2に当接することで、ビーム32の短手方向への移動、すなわち、傾転軸線A3の方向と側壁部31b、31cの立設方向との両方に直交する方向へのビーム32の移動が拘束される。これにより、ビーム32をトラニオン31に対して迅速に位置決めできる。
【0031】
図5は、変速ユニット29の部分上面図である。
図3及び5に示すように、規制部32bは、ビーム32の長手方向両端付近で一対をなし、本体部32gから短手方向の外方に張り出すように形成される。このように、規制部32bが本体部32gの短手方向両側にそれぞれ形成される。各規制部32bは、空間G1の内部に配置され、一対の側壁部31b、31cの各側面31b1、31c1と接触する(
図5及び6参照)。これにより、各規制部32bは、一対の側壁部31b、31cの近接方向への変位を規制する。従って、発電装置1の駆動時において、例えば、前記押圧機構による押圧力を受けて、パワーローラユニット30のローラ回転軸33bに伝わった外力がトラニオン31に及んだ場合でも、一対の側壁部31b、31cが互いの近接方向に変形するのが防止される。また、ビーム32では、規制部32bがビーム32の短手方向にも張り出しているので、例えば、ビーム32の長手方向と交差する方向に捻れるように外力がトラニオン31に及んだ場合でも、トラニオン31が変形するのが防止される。これにより、トラニオン31をそれほど肉厚に構成しなくても、トラニオン31の変形を防止できるので、変速ユニット29を高剛性且つ軽量に構成できる。
【0032】
図3に示すように、規制部32bの側面には、ビーム32をトラニオン31に組み合わせた際に各挿通孔31iと重なる部位に、複数の挿通孔32dが形成される。ビーム32は、一対の側壁部31b、31cの各側方から挿通孔31i、32dに挿通させた複数のネジ等の締結部材P1によって、トラニオン31に対して複数個所で螺着される。これにより、ビーム32が一対の側壁部31b、31cに連結される。
【0033】
一対の当接部32aが溝部31g、31hに嵌合される際に、挿通孔31i、32d同士の位置合わせも同時に行われる。このため、締結部材P1を各挿通孔31i、32dにスムーズに挿入でき、締結部材P1の締結作業を迅速に行える。変速機3では、一対のキャビティ28の内部に複数の変速ユニット29を設けているので、上記のようにビーム32をトラニオン31に迅速且つ適切に組み付け易くすることで、変速ユニット29を効率よく作製できる。結果として、変速機3の製造効率を向上させることが可能である。
【0034】
延設部32cは、ビーム32の長手方向両端付近において、一対の側壁部31b、31cの側面31b1、31c1と一定の間隙をおきながら、ベース部31aの上面及びパワーローラ34の周面34bに向かって延びるように形成される。
【0035】
図3及び4に示すように、変速ユニット29には、パワーローラユニット30、トラニオン31及びビーム32の各内部において、変速機3の各部を潤滑し且つ冷却するとともに、パワーローラ34の周面34bに前記油膜を形成するための油を流通させる油路F1〜F5が形成される。油路F1〜F3は、トラニオン31の内部に形成された第1油路E1に含まれる。油路F4及びF5は、ビーム32の内部に形成され且つ第1油路E1に接続される第2油路E2に含まれる。
【0036】
具体的構成として、トラニオン31には、短軸31jの端面に設けられた第1開口部31lからベース部31aの内部を通り、軸支部31dと、ベース部31aの上面に形成された第2開口部31mとに至る油路F1と、油路F1と分岐して側壁部31cの内部を通り、側壁部31cの端面31fにおいて、溝部31hの表面に形成された第3開口部31nに至る油路F2とが設けられる。
【0037】
パワーローラユニット30には、支持部33の内部を厚み方向に貫通するように油路F3が設けられる。油路F3は、パワーローラユニット30の軸受35等に油を供給する。
【0038】
ビーム32には、第3開口部31nが形成された端面31fと当接する当接部32aの表面に第4開口部32fが形成される。ビーム32には、さらに、第4開口部32fから長手方向に延びる油路F4と、油路F4から分岐して、一部の延設部32cの延設方向に延びる油路F5と、油路F5の下流側に設けられてパワーローラ34の周面34bに向けて油を噴出する噴出口32eとが形成される。
図6は、ビーム32の噴出口32e付近の部分拡大図である。
図6に示すように、噴出口32eは、延設部32cの先端付近の側面(パワーローラ34側の面)に形成される。噴出口32eは、対向面26a、27aに接触するパワーローラ34の周面34bの接触部分Q(
図6中の二点鎖線)に向けて、パワーローラ34の周面34bに対する接線方向から油を噴出可能に形成される。
【0039】
変速ユニット29では、一対の当接部32aを端面31e、31fと当接させた際、トラニオン31の第3開口部31nの周縁が、ビーム32の第4開口部32fの周縁と突き合わされる。これによって、油路F2と、油路F4とが接続される。
図3及び4に示すように、第3開口部31nと、第4開口部32fとは、シール部材36を介して接続され、外部への油漏れの防止が図られる。シール部材36は、油路F2の延設方向に内部空間が延びるように形成された円筒形の筒部材37と、筒部材37の外周面に形成された環状溝に油路F2、4の各内周面と密着可能に係合された複数のOリング38とを有する。変速ユニット29では、締結部材P1の締結方向が側壁部31b、31cの立設方向と交差しているが、シール部材36を用いることで、一対の当接部32aと溝部31g、31hとの接触圧が仮に弱い場合であっても、第3開口部31n及び第4開口部32f間のシール性が良好に保たれる。
【0040】
変速ユニット29では、外部より短軸31jの第1開口部31lに油が供給されると、この油の一部が、油路F1、F3を流通し、偏心軸33aの周面と、ベース部31aと対向する支持部33の表面と、軸受35等とに接触する。これにより、パワーローラ34とトラニオン31とが良好に潤滑且つ冷却される。また、油の一部が、油路F2、4及び5をそれぞれ流通し、パワーローラ34の周面34bの接触部分Qに向けて、周面34bに対する接線方向より噴出口32eから噴出される。これにより、接触部分Qを含む周面34bに前記油膜が形成される。変速機3では、接触部分Qに効率よく油を噴出することで油量を節約しながら、変速機3の潤滑及び冷却と、前記油膜の形成とを行える。
【0041】
また、変速ユニット29では、パワーローラ34の周面34bに前記油膜を形成するための第2油路E2をビーム32に形成しているので、トラニオン31の内部に形成する第1油路E1を簡素化できる。これによって、トラニオン31を軽量化及びコンパクト化できる。また、トラニオン31の形状を簡素化し、トラニオン31を比較的容易に作製できるので、変速機3の製造効率の向上に貢献できる。
【0042】
なお、ローラ回転軸33b等に対して油を供給するため、ベース部31a側では圧損が比較的大きくなる。変速ユニット29では、ビーム32に設けた油路F4、F5を用いることによってベース部31a側の圧損による影響を回避し、パワーローラ34の周面34bに油を良好に供給できる。これにより、短軸31jから遠位において長軸31kの近傍に位置する噴出口32eに対しても、油を豊富に供給可能である。よって、パワーローラ34の周面34bに安定した油膜を形成できる。
【0043】
また、ビーム32の長手方向に沿って締結部材P1を締結させる構造としたことにより、一対の側壁部31b、31cに対して互いに近づく方向に力が作用しても、当該力の作用する方向が締結部材P1の締結方向に向くので、締結部材P1への負荷を抑制できる。
【0044】
(変形例1)
ビームに形成する当接部は、上記実施形態のように、側壁部の端面に形成した溝部内の対向面と当接する構成に限定されない。ビームに形成する当接部は、例えば、側壁部の端面に面接触により当接することで、側壁部の立設方向に沿って、トラニオンとビームとを位置合わせ可能とする構成でもよい。
【0045】
図7は、変形例1に係る変速ユニット129の構成を示す斜視図である。
図8は、変速ユニット129の一部分解図である。
図7及び8に示すように、変速ユニット129のトラニオン131は、ベース部131aに設けられた一対の側壁部131b、131cの先端側に、平坦な表面の端面131e、131fを有する。ビーム132は、本体部132gの長手方向両端から外方に突出する一対の当接部132aを有する。各当接部132aは平板状である。変速ユニット129の組立時には、一対の当接部132aの各表面が端面131e、131fの表面と面接触して当接する。これにより、一対の側壁部131b、131cの立設方向で、トラニオン131及びビーム132が迅速且つ適切に位置合わせされる。端面131e、131fには、一対の側壁部131b、131cの立設方向に複数の挿通孔131iが形成される。一対の当接部132aには、各挿通孔131iと重なる位置に、複数の挿通孔132dが形成される。トラニオン131とビーム132とを位置合わせした状態で、一対の側壁部131b、131cの立設方向からネジ等の締結部材P2を各挿通孔131i、132dに挿通させることにより、トラニオン131にビーム132を複数個所で容易に螺着できる。
【0046】
図8に示すように、端面131fに形成された第3開口部131nの周縁と、ビーム132に形成された第4開口部132fの周縁とが、Oリング138を介して突き合わされることで、トラニオン131の油路F12と、ビーム132の油路F14とが接続される。
【0047】
なお、ビームに設ける規制部及び噴射口の数は、上記実施形態のように、それぞれ4個に限定されない。規制部及び噴射口の数は、それぞれ3個以下でもよいし、5個以上であってもよい。噴射口の数は、規制部の数より少なくてもよい。
図8に示す変速ユニット129のように、例えば、ビーム132の長手方向両端付近には、規制部132bと、規制部132bと連続する延設部132cとを1つずつ設けることができる。2つの延設部132cは、ビーム132を上面から見ると、ビーム132の長手方向中央部を対称点として互いに点対称の位置となるように設けられる。外部から供給されて油路F12、F14を流通した油は、油路F14に接続された油路F15を流通し、各延設部132cに形成された噴出口132eからパワーローラ34の周面34bの接触部分Qに向けて噴出される。
【0048】
(変形例2)
ビームに設ける当接部の幅は、上記実施形態の当接部32aの幅よりも広く設定してもよい。
図9は、変形例2に係る変速ユニット229におけるトラニオン231とビーム232とを示す部分図である。
図9に示すように、トラニオン231には、端面231gが形成されている。具体的には、端面231gは、側壁部231bの先端部における空間G1に近接する部分を幅方向Wにわたって切り欠くことにより形成される。これにより、側壁部231bの先端部では、突出高さの異なる部分が形成される。つまり、突出高さが高い部分の端面231eと、低い部分の端面231gとが形成されることになる。また、端面231eと端面231gを接続する側面231oが形成されることになる。
【0049】
ビーム232は、本体部232gと、当接部232aと、規制部232bとを有する。本体部232gは長尺状に形成されている。当接部232aは、本体部232gの長手方向一端から外方に突出するように形成されている。当接部232aは、ビーム32の短手(幅)と同程度の広さの幅を持つ。規制部232bは、ビーム232の長手方向における端面により構成されている。具体的には、本変形例では、規制部232bは、当接部232aの長手方向における端面により構成されることとなる。
【0050】
ビーム232が側壁部231bに取り付けられた状態では、側壁部231bの端面231gと、ビーム232の当接部232aとが、面接触して当接する。端面231gと当接部232aとは、面接触可能なように、それぞれ一部に平坦な表面を持つ。同様に、側壁部231bの側面231oと、ビーム232の規制部232bとが、面接触して当接する。側面231oと規制部232bとは、面接触可能なように、それぞれ一部に平坦な表面を持つ。
【0051】
側壁部231bの側面と、ビーム232の規制部232bとには、ビーム232が側壁部231bに取り付けられた状態において、互いに重ね合わされる位置に、ビーム232の長手方向に延びる複数の挿通孔231i、232dがそれぞれ形成される。図示していないが、変速ユニット229におけるトラニオン231とビーム232には、端面231gと当接部232aとに相当する同様の構成が、ビーム232の長手方向の他端側においても設けられる。
【0052】
変速ユニット229の組立時には、当接部232aの下面が端面231gに当接するとともに、側壁部231bの立設方向に沿った端面231gの側面231oが規制部232bに当接することで、側壁部231bの立設方向と、ビーム232の長手方向との両方の方向において、トラニオン231とビーム232とが迅速且つ適切に位置合わせされる。また、トラニオン231とビーム232とを位置決めした状態で、ビーム232の長手方向からネジ等の締結部材P3を各挿通孔231i、232dに挿通させることにより、トラニオン231にビーム232を複数個所で容易に螺着できる。変速ユニット229では、ビーム232が規制部232bにおいてトラニオン231の側面231oと面接触することで、パワーローラ(不図示)を挟んでトラニオン131と反対側の位置から、トラニオン231がビーム232に良好に補強される。
【0053】
(その他)
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除することができる。前記実施形態と、前記各変形例とは互いに任意に組み合わせてもよく、例えば、いずれかの前記変形例中の一部の構成を前記実施形態に適用してもよい。
【0054】
トロイダル無段変速機は、ダブルキャビティ式に限定されず、シングルキャビティ式でもよい。また、一対の側壁部に設ける挿通孔は、必ずしも両方の側壁部に設ける必要はなく、少なくとも一方の側壁部の側面に対し、傾転軸線方向に側壁部を貫通してビームの規制部に至るように設ければよい。
【0055】
上記実施形態及び変形例では、ビームに延設部を設け、ビームの内部に油路を形成し、ビームの内部の油路を流通した油を延設部の噴出口によりパワーローラの周面に向けて噴出する構成を示した。しかしながら、ビームには油路及び噴出口を設けなくてもよい。この場合、例えば、トラニオンの一対の側壁部のいずれかの内部に油路を形成し、この油路に連通する噴出口を側壁部に形成し、当該側壁部に形成した噴出口から、パワーローラに油を噴出させる構成としてもよい。
【0056】
上記実施形態及び変形例に示した変速機は、航空機用発電装置への用途に限定されず、その他の用途の発電装置や、自動車または各種産業機械への用途で使用してもよい。