(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トラクタにトレーラを連結する際に、トレーラの連結部と結合されるカプラ部材を有し、前記トラクタの直進進行方向に沿って前記カプラ部材の位置を変更可能な位置調整手段を有するスライド型連結装置を備えた連結車の制御装置において、
前記トラクタと前記トレーラとの間を接続する複数の電気信号線のいずれかが切り離されたことを示す信号、前記カプラ部材のロックが解除された状態を示す信号、前記カプラ部材のオフセットを変更する作業を開始したことを示す信号のいずれかを検知する状態検知手段と、
前記状態検知手段によりいずれかの信号が検知された場合に、警報手段により警報を出力させる警報出力制御手段と、
前記カプラ部材のオフセットが最小となったことを検出可能な検出手段と、
を有し、
前記状態検知手段は、
前記検出手段から前記カプラ部材のオフセットが最小となったことを示す検出信号を受信すると、前記警報出力制御手段で出力中の警報を停止させる、
ことを特徴とする制御装置。
状態検知手段と、警報出力制御手段とを有し、トラクタにトレーラを連結する際に、トレーラの連結部と結合されるカプラを有し、前記トラクタの直進進行方向に沿って前記カプラ部材の位置を変更可能な位置調整手段を有するスライド型連結装置を備えた連結車の制御装置の制御方法において、
前記状態検知手段が、前記トラクタと前記トレーラとの間を接続する複数の電気信号線のいずれかが切り離されたことを示す信号、前記カプラ部材のロックが解除された状態を示す信号、前記カプラ部材のオフセットを変更する作業を開始したことを示す信号のいずれかを検知する検知ステップと、
前記警報出力制御手段が、前記状態検知手段によりいずれかの信号が検知された場合に、警報を出力する出力ステップと、
前記カプラ部材のオフセットが最小となったことを検出する検出ステップと、
前記検出手段から前記カプラ部材のオフセットが最小となったことを示す検出信号を受信すると、前記警報出力制御手段で出力中の警報を停止させるステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなスライド型連結装置を装備したトラクタでは、次のトレーラとつなぎかえるときにトラクタの後輪車軸中心とカプラの中心の距離(以下、これを「カプラ部材のオフセット」という。)が適切な距離でないと、次のトレーラと連結するに際に、トラクタの裾まわりと次のトレーラとが干渉してしまうことがある。
【0006】
図11は、次のトレーラとつなぎかえる際の不具合を説明するための図である。
図11の(a)〜(d)は、トラクタ100からトレーラ101を取り外し、トレーラ102につなぎかえる各工程を図示したものである。
図11の(a)に示すように、トラクタ100にトレーラ101が連結された状態においてトラクタ100からトレーラ101を取り外しできるように、両者をつなぐ各種信号線などを取り外すと共に、
図11の(b)に示すように、トレーラ101においてランディングギア101Aを地面に降ろして、トラクタ100とトレーラ101を切り離せる状態にして、トラクタ100を前方に移動させる。なお、この
図11の(a)または(b)の状態では、カプラ部材のオフセットは、トレーラ101とつなぐ際に最適化された距離A5となっている。ここで、
図11の(c)に示すように、次につなぐ新たなトレーラ102との連結をしやすくするために、運転者又は連結作業補助者がカプラ部材のオフセットが最少となる位置(距離A6)まで手作業でカプラ部材を移動させている。その後、
図11の(d)に示すように、トラクタ100とトレーラ102とを連結させる。さらに、
図11の(e)に示すように、カプラ部材のオフセットを、トレーラ102とつなぐ際に最適化された距離A7に調整する。これによりトラクタ100は新たなトレーラ102と連結した状態で走行可能となる。
【0007】
しかしながら、上述した
図11の(c)の工程においては、運転者又は連結作業補助者が手や足でカプラ部材の位置を移動させて、カプラ部材のオフセットを距離A5から距離A6へと変更する作業はとても重労働である。また、運転者がカプラ部材のオフセットを意識せずに、
図11の(c)に示す工程をしない状態でトラクタ100とトレーラ102を連結させようとすれば、トラクタ100のカプラ部材とトレーラ102とが衝突して、カプラ部材を破損させてしまう可能性がある。
【0008】
すなわち、本発明は、上述した課題のいずれかを解決するものであって、多種類のトレーラに対して効率的にトラクタを連結させることを支援できるスライド型連結装置の制御装置およびスライド型連結装置を備えたトラクタならびにスライド型連結装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであって、トラクタにトレーラを連結する際に、トレーラの連結部と結合されるカプラ部材を有し、前記トラクタの直進進行方向に沿って前記カプラ部材の位置を変更可能な位置調整手段を有するスライド型連結装置を備えた連結車の制御装置において、トラクタとトレーラとの間を接続する複数の電気信号線のいずれかが切り離されたことを示す信号、カプラ部材のロックが解除された状態を示す信号、カプラ部材のオフセットを変更する作業を開始したことを示す信号のいずれかを検知する状態検知手段と、状態検知手段によりいずれかの信号が検知された場合に、警報手段により警報を出力させる警報出力制御手段と
、カプラ部材のオフセットが最小となったことを検出可能な検出手段と、を有し、
状態検知手段は、検出手段からカプラ部材のオフセットが最小となったことを示す検出信号を受信すると、警報出力制御手段で出力中の警報を停止させる、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述した制御装置を有するトラクタであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、状態検知手段と、警報出力制御手段とを有し、トラクタにトレーラを連結する際に、トレーラの連結部と結合されるカプラを有し、前記トラクタの直進進行方向に沿って前記カプラ部材の位置を変更可能な位置調整手段を有するスライド型連結装置を備えた連結車の制御装置の制御方法において、状態検知手段が、トラクタとトレーラとの間を接続する複数の電気信号線のいずれかが切り離されたことを示す信号、カプラ部材のロックが解除された状態を示す信号、カプラ部材のオフセットを変更する作業を開始したことを示す信号のいずれかを検知する検知ステップと、警報出力制御手段が、状態検知手段によりいずれかの信号が検知された場合に、警報を出力する出力ステップと、
カプラ部材のオフセットが最小となったことを検出する検出ステップと、検出手段からカプラ部材のオフセットが最小となったことを示す検出信号を受信すると、警報出力制御手段で出力中の警報を停止させるステップと、を有する制御方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、多種類のトレーラに対して効率的にトラクタを連結させることを支援できるスライド型連結装置の制御装置およびスライド型連結装置を備えたトラクタならびにスライド型連結装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施例の形態に係るスライド型連結装置の制御装置を実装したトラクタおよびトレーラの外観図である。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るスライド型連結装置の制御装置は、
図1に示すように、トレーラ12を牽引するトラクタ11に設ける連結車1に実装されるものである。このトラクタ11とトレーラ12とを連結するためのスライド型連結装置は、
図1内の矢印で示すように、実効的にトラクタ11の前後方向に移動させることができる。この具体的な構造は従来例技術で説明した公報(特開平5−162663号公報)に詳しく開示されているものと同等のものとすることもできる。
【0017】
図2は、
図1に示すトラクタ11の機械的構造およびスライド型連結装置20の配置を説明する図である。トラクタ11のシャシフレームにスライド型連結装置20のベースプレート21が固定的に取付けられ、このベースプレート21には、一対のベースレール22が固定的に設けられている。この一対のベースレール22に、トレーラ12側のキングピンと結合されるカプラ部材23が可動に載置される。
図2は説明の便宜のため、ベースプレート21を90度展開してその構造を図示するものであり、ベースプレート21がトラクタ11のシャシフレームに取付けられた状態では、カプラ部材23の側面が、
図2に破線23Aで示すような形状で見えることになる。このカプラ部材23はベースレール22に沿って、車両の前後方向に移動できるように構成されている。
【0018】
図2に示すカプラ部材23の前後方向の移動可能幅は数十cmであり、この実施例では62cmである。このカプラ部材23をベースレール22に対して前後に移動することにより、トラクタ11の前後中心軸に対するトレーラ12の前後中心軸の回転中心の位置を実効的に変更することができる。これにより一つのトラクタ11で種類の異なるトレーラ12を牽引することができるとともに、このカプラ部材23の位置(カプラ部材23のオフセット)を変更することにより、トラクタ11の後軸および前軸の間の荷重分担を変更することができる。
【0019】
図2に示すように、カプラ部材23には空気圧シリンダ24が取付けられている。この空気圧シリンダ24の両端には、そのピストンロッドの先端にロック手段25が装着されている。空気圧シリンダ24に空気圧が送られると、このロック手段25がベースレール22の内側に形成された凹凸から外れて、カプラ部材23がベースレール22に沿って可動状態になる。空気圧シリンダ24の空気圧がなくなると、スプリング作用によりロック手段25が一対の平行なベースレール22の内側にそれぞれ形成された凹凸に食い込み、カプラ部材23がベースレール22に固定された状態となる。この場合も、
図2では空気圧シリンダ24がカプラ部材23の表面に見えるように描いてあるが、実際には空気圧シリンダ24はカプラ部材23の裏面に配置されているから表面からは見えない。そしてこの空気圧シリンダ24の内部には、空気圧がないときにロック手段25を外側に押し出すように作用するスプリング(不図示)が装填されている。
【0020】
図2に示すように、このトラクタ11ではこの空気圧シリンダ24に制御弁26を介して送られる空気圧が制御装置としてのCPU30により制御される。さらにこのトラクタ11では、上述したベースレール22とカプラ部材23との相対位置を計測する計測手段(測距センサ41、反射鏡42、測距回路43)が設けられ、この計測手段の計測出力がこのCPU30の入力信号として取込まれる。これにより、CPU30はカプラ部材23のオフセットを把握することができる。
【0021】
なお、計測手段について説明すると、この実施例のものは超音波測距装置である。この計測手段は、ベースプレート21に取付けられた測距センサ41と、カプラ部材23の端部にこの測距センサ41に対向するように取付けられた反射鏡42と、測距センサ41に接続され測距回路43とからなる。反射鏡42は、カプラ部材23が移動するとカプラ部材23とともに移動し、測距センサ41と反射鏡42との間の距離が変化する。測距回路43は超音波周波数のパルス電流を発生して、ケーブルを介してこれを測距センサ41に供給する。測距センサ41はこのパルス電流を超音波パルス信号に変換し、これを空間に反射鏡42に向けて送出する。反射鏡42はこの超音波パルス信号を反射し、この反射された超音波パルス信号は前記測距センサ41に受信される。受信された超音波パルス信号は受信電気信号に変換されて、ケーブルを介して測距回路43に伝達される。測距回路43では、超音波パルス電流を送出したタイミングと、受信電気信号が到来したタイミングとの時間差から、測距センサ41と反射鏡42との間の相対距離を演算計測する。
【0022】
(空気系及び電気系の説明)
続いて、トラクタ11の空気系及び電気系について説明する。
図3は、
図1に示すトラクタ11の空気系および電気系の要部ブロック構成図である。エアタンク51にはこのトラクタ11の動作のために必要な空気圧が保持されている。この空気圧は4ウエイプロテクション52を介して、前用エアタンク53、後用エアタンク54、トレーラ用エアタンク55およびマルチジョイント56を介してエアサスペンション用エアタンク57に、それぞれ空気圧を供給する。
【0023】
エアサスペンション用エアタンク57の空気圧は、シャシの高さを調節制御するレベリング弁58を介してエアサスペンション用の制御弁59に供給される。この制御弁59から分岐回路60を介して、それぞれ四輪のエアスプリング61,62に供給される。このエアスプリング61,62の各空気圧はそれぞれ圧力検出器63および64により検出される。この検出出力がインターフェース(I/O)を介してCPU30に取り込まれ、設定値との比較演算が行われる。CPU30は、比較演算の結果に基づいて、警告ランプ35を点滅させたり、警報ブザー36から警告音を出力させる。さらにトレーラ用エアタンク55の空気圧は、開閉弁65を介して、カット弁66を経由し、トレーラの非常ブレーキライン接続端67に接続される。
【0024】
(カプラ部材23の制御系の説明)
続いて、トラクタ11のカプラの制御系について説明する。
図4は、
図1に示すトラクタ11のカプラ制御系の要部ブロック構成図である。上述のように、この測距回路43の測定出力は、入出力インターフェースを介してCPU30に取込まれるとともに、表示操作盤31に位置表示31aとして光学的に表示される。
【0025】
表示操作盤31は、中央に回転型のダイヤル31bが配置され、その設定目盛りがダイヤル31bの回転角度にしたがって、−300mmから+300mmまで付けられている。その表示目盛りにそって、測距回路43が演算計測した値が位置表示31aとして光学的に表示される。この表示操作盤31は、動作中に点灯する照明灯31cにより照明される。この照明灯31cの点滅はCPU30から入出力インターフェースを介して制御される。またこのダイヤル31bは矢印で示すように回転するとともに、ダイヤル31bを押下することによりダイヤルスイッチがオン・オフするように構成されている。ダイヤルスイッチのオン・オフ情報も入出力インターフェースを介してCPU30に取込まれる。
【0026】
また、表示操作盤31には、カプラ部材23に関する作業を運転者が行う際に押下する作業中ボタン31dが設けられている。この作業中ボタン31dが押下されると、カプラ部材23のオフセットを変更する作業を開始したことを示す信号がCPU30に対して供給され、警報ランプ35、警報ブザー36の両方、もしくはいずれかが作動する。また、再度作業中ボタン31dが押下されると、カプラ部材23のオフセットを変更する作業を停止することを示す信号がCPU30に対して供給され、これらの動作が停止する。これにより、キャブ内の運転者のみならず、トラクタ11,トレーラ12の周囲にも注意喚起が可能となっている。
【0027】
また、このCPU30の入力情報は、運転者により操作されるスライドロック解除スイッチ32、上記ダイヤルスイッチのオン・オフ情報、パーキングブレーキ検出器34によるパーキングブレーキの作動状態、および表示操作盤31のダイヤル31bと位置表示31aの一致信号である。また、このCPU30の出力情報は、表示操作盤31の照明灯31cの点滅信号のほか、空気圧シリンダ24に供給する空気圧を開閉制御する制御弁26の制御信号、トレーラ12の非常ブレーキに空気圧を送出する非常ブレーキ制御弁27の制御信号、警報ランプ35の点滅制御信号、および警報ブザー36のオンオフ信号である。
【0028】
つぎにこの表示操作盤31その他が装備された運転席まわりの装備について説明する。表示操作盤31およびスライドロック解除スイッチ32は、運転席の上部バックミラーの脇に配置される。運転者は左手で、この表示操作盤31およびスライドロック解除スイッチ32を操作することができるとともに、バックミラーを通して連結されたトレーラ12の状態を見ながら、同時に表示操作盤31を見ることができる。運転席には、パーキングブレーキ33およびその作動状態を検出するパーキングブレーキ検出器34、警報ランプ35および警報ブザー36が配置されている。CPU30はユニットとして運転席の座席後ろの空間に配置される。
【0029】
(CPU30の機能)
続いてCPU30により実現される警報出力機能について説明する。
図5は、
図3および
図4に示すCPU30により実現される機能ブロック図である。CPU30は、状態検知部30Aと警報出力制御部30Bとを有する。
【0030】
状態検知部30Aは、トラクタ11とトレーラ12との間を接続する複数の電気信号線のいずれかが切り離されたことを示す信号、カプラ部材23のロックが解除された状態を示す信号のいずれかを検知する。また、状態検知部30Aは、計測手段(41、42、43)から受信する信号に基づいてカプラ部材23のオフセットが最小となったか否かを判定する。また、状態検知部30Aは、カプラ部材23のオフセットが最小であると判定すると、後述の警報出力制御手段30Bに当該情報を供給する。
【0031】
警報出力制御部30Bは、状態検知部30Aによりいずれかの信号が検知された場合に、警報を出力する。なお、ここでの警報は、たとえば警報ブザー35による音、または警報ランプ36による光によって出力される。
【0032】
(運転者の操作)
続いて、このように構成された装置を運転者がどのように操作するかについて
図6〜
図8を用いて説明する。
図6および
図7は、
図1に示すトラクタ11およびトレーラ12を操作する運転者の動作を説明する図である。
図8は、トラクタ11に他のトレーラ12とつなぎかえるときの作業を説明するための図である。
図7の左欄は運転者がキャブ内(運転席)で操作する操作手順であり、同じく右欄は運転者がキャブ外に出て行う操作手順である。いま、運転者は現在連結しているトレーラ12Bとは異なるトレーラ12Cとの連結をする前に、トレーラ12Bを連結したままの状態で連結車1を一旦停車させ、カプラ部材23の位置を変更しようとしているものとする。
【0033】
運転者は、連結車1を停車させ、パーキングブレーキ33をかける(ステップS1)。運転者は、車外に出てトレーラ12Bのランディングギア81Aを下ろして、トレーラ12Bからカプラ部材23へ加わる荷重を解く(ステップS2、
図8の(a)の状態)。ランディングギア81Aはジャッキ構造になっていて、運転者がジャッキレバーを上下させることによりトレーラ12Bの荷重はランディングギア81Aに移動する。
【0034】
運転者は、運転席に戻って、室内のバックミラーの隣に設けられたスライドロック解除スイッチ32をオンに操作する(ステップS3)。これにより、表示操作盤31の照明灯31cが点灯して、カプラ部材23の位置変更を行うことができる状態となる。更に運転者は作業中ボタン31dをオンにする。これにより、警報ランプ35、または警報ブザー36の鳴動が開始され、運転者および周囲の人間にカプラ部材23の位置変更作業を開始したことを知らせることができる。
【0035】
運転者は、表示操作盤31のダイヤル31bを操作して、カプラ部材23の位置を一番後方となるように指示設定する(ステップS4)。たとえば位置表示31aにより表示されている現在位置より、さらに後方に移動させ+300mm(絶対値表示)の位置に変更したい場合、ダイヤル31bを+300mmの位置に設定する。その位置が決まるとダイヤル31bを押し下げる。ダイヤル31bを押し下げることにより、内部のダイヤルスイッチがオン状態になり、この値はCPU30に取込まれる。そしてダイヤル31bから手を放すことによりダイヤル31bは、押し下げられた状態から復帰しダイヤルスイッチはオフ状態になる。
【0036】
運転者は、キャブ外に出てスライドロックの状態が解除されたことを視認する(ステップS5)。運転者は、運転席に戻り、パーキングブレーキを解除してギアを入れ(ステップS6)、緩やかにトラクタ11Aを前進させる(ステップS7、
図8の(b)の状態)。それにしたがって位置表示31aがゆっくり移動する。この運転操作はバックミラーとこの表示操作盤31とを同時に見ながら実行する。位置表示31aがちょうどダイヤル31bに設定された位置にくると、自動的に一致を検出して、警報ランプ35、または警報ブザー36の鳴動が停止すると共に、照明灯31cは点滅状態となる。それと同時に自動的に空気圧シリンダ24の空気圧が排出されて、ロック手段25がロック状態となってカプラ部材23の位置は固定される。運転者はここでパーキングブレーキをかけ(ステップS8)、車外へ出て連結車1の状態が所望のとおりになっているかを確認する(ステップS9)。
【0037】
運転者は、確認が終わると運転席に戻ってスライドロック解除スイッチ32をオフに操作する(ステップS10)。そして運転者は連結車1のキーをオフにする(ステップS11)。そして、運転者は再度車外に出てトレーラ12Bを切り離す。トレーラ12Bの切り離しの際には運転者がランディングギア81Aを上げ、トレーラケーブルを外し、カプラ部材23を外す(ステップS12)。そして、運転者はキャブ内にて再度連結車1のキーをオンにする(ステップS13)。これで連結位置を変更するためのすべての操作を終了し、運転者は運転席に戻り車両走行を開始する(ステップS14、
図8の(c)の状態)。
【0038】
そして、トレーラ12Bとは異なるトレーラ12Cの元へ移動すると、運転者および作業補助者はトラクタ11Aとトレーラ12Cとを連結し(ステップS15)、トレーラケーブルを接続してからランディングギア81Bを格納する(ステップS16、
図8の(d),(e)の状態)。この時点ではカプラ部材23のオフセットは、距離A2となっているため、運転者はキャブ内に戻り、スライドロック解除スイッチ32をオンに操作する(ステップS17)。そして、運転者は、表示操作盤31のダイヤル31bを操作して、カプラ部材23の位置をトレーラ102に最適となる位置(後述のA3)となるように指示設定すると共に、車両を後退させる(ステップS18、
図8の(f)の状態)。それにしたがって位置表示31aがゆっくり移動する。この運転操作はバックミラーとこの表示操作盤31とを同時に見ながら実行する。位置表示31aがちょうどダイヤル31bに設定された位置にくると、自動的に一致を検出して、警報ランプ35、または警報ブザー36が鳴動すると共に、照明灯31cは点滅状態となる。そして、運転者はカプラ部材23の位置変更作業を完了すると、作業中ボタン31dをオフにする(ステップS19)。
【0039】
(CPU30の動作)
続いて、
図9を参照して、CPU30の論理動作をフローチャートにより説明する。なお、
図9に示す処理は、
図6のステップS1〜ステップS10の間、
図8の(a)〜(b)の間に実行される処理である。なお、
図9の処理はたとえば作業中ボタン31dが押下されてから開始するものとしてもよいが、連結車1のキーがオンになっている状態を開始時点としてもよい。
【0040】
CPU30(状態検知部30A)は、トラクタ11とトレーラ12の間で接続される電気信号線の切り離しを示す信号、またはカプラ部材23のロック状態が解除されたことを示す信号を検出したか否かを判定する(ステップS41)。CPU30(警報出力制御部30B)は、これらのいずれかの信号を検出すると(ステップS41でYSE)、たとえば警報ブザー35による音、または警報ランプ36による光によって警報を出力する(ステップS42)。その後、CPU30(状態検知部30A)は、カプラ部材23のオフセットが最小であるか否かを判定する(ステップS43)。カプラ部材23のオフセットが最小となることにより、次のトレーラ12への連結作業の際に、カプラ部材23を破損することを防止すると共に、次のトレーラ12でのカプラ部材23の位置変更が容易になる。CPU30(警報出力制御部30B)は、ステップS43の判定でカプラ部材23のオフセットが最小であることを検出すると、出力している警報を停止し(ステップS44)、本処理を終了する(END)。これにより、カプラ部材23のオフセット変更作業が完了したことを運転者が容易に認識することができる。なお、オフセット変更作業が完了したことを音声により通知するようにしてもよい。
【0041】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係るスライド型連結装置の制御装置の機能により実行される
図9とは異なる他の論理動作を説明するフローチャートである。なお、第2実施形態に係るスライド型連結装置の制御装置は、上述した第1実施形態と同一の構成で、CPU30の制御動作のみが異なるため、図面および各機能の説明は省略する。第2実施形態に係るスライド型連結装置の制御装置では、
図10に示すように、CPU30(状態検知部30A)は作業中ボタン31dが押下されたか否かを判定する(ステップS51)。そして、CPU30(警報出力制御部30B)は、作業中ボタン31dが押下された場合には、「スライドカプラのオフセットを最小にしてください」というアナウンスを出力させる。このような制御とすることでも、運転者に対してカプラ部材23のオフセット変更作業を促すことができ、多種類のトレーラに対して効率的に連結させることができる。なお、
図10のステップ51では、1回のアナウンスで処理を終了しているが、たとえば、再度作業中ボタン31dが押下されるまで、このアナウンスを出力し続けてもよい。あるいは、CPU30は、ステップS51において、作業中ボタン31dが押下されたことを検出してから、所定時間(たとえば5分間)、または所定回数(たとえば10回)出力するように制御してもよい。
【0042】
以上で説明したように、CPU30はトラクタ11とトレーラ12との間を接続する複数の電気信号線のいずれかが切り離されたことを示す信号、カプラ部材23のロック解除状態についての信号、カプラ部材23のオフセットを変更する作業を開始したことを示す信号のいずれかを検知すると、警報を出力するようにしたので(
図9のステップS41でYES、ステップS42、
図10のステップS51でYes、ステップS52)、運転者は、カプラ部材23の位置の変更作業を開始しなければならないことをこの警報で認識することができる。また、カプラ部材23の変更作業中であることを運転者以外の連結車1の周囲へも報知することができる。
【0043】
また、カプラ部材23のオフセットが最小であるか否かを検出可能な計測手段(測距センサ41、反射鏡42、測距回路43)からの検出信号に基づいてCPU30(状態検知部30A)がカプラ部材23のオフセットが最小であるか否かを判定し、オフセットが最小であると判定した場合には、警報を停止するようにしたので(ステップS43でYES、ステップS44)に次のトレーラとの連結前にカプラ部材23のオフセットを最小にしたことを運転者が確実に認識することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
なお、上述した説明は、カプラ部材23の位置を計測するために超音波による測距センサ41を利用するものを説明したが、これは機械的変位を電気信号として計測する他の手段を利用しても同様に実現することができる。このための手段としては、機械的な位置を抵抗変化により検出する装置、機械的な位置を電磁誘導の変化により検出する装置、機械的な位置を静電容量の変化により検出する装置、機械的な位置を光信号により検出する装置、その他を利用することにより本発明を同様に実施することができる。
【0045】
また、警報の開始するタイミングは、トラクタ11とトレーラ12の間で接続される電気信号線の切り離しを示す信号、またはカプラ部材23のロック状態が解除されたことを示す信号を検出したときとしているが、それ以外のタイミングとしてもよい。たとえば、警報の開始するタイミングをトレーラ12のランディングギアを降ろしたタイミングや、作業中ボタン31dが押下されたタイミングであってもよい。また、警報の停止するタイミングは、カプラ部材23のオフセットが最小になった時に停止するものとしたが、たとえば、警報が出力を開始してから所定時間(30秒など)だけ鳴動させるという制御としてもよい。
【0046】
また、警報を停止するタイミングは、カプラ部材23のオフセットが最小となったときとしていたが、カプラ部材23とトレーラ12とが干渉しない位置であれば、必ずしもカプラ部材23のオフセットが最小となったときでなくてもよい。