(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709040
(24)【登録日】2020年5月26日
    
      
        (45)【発行日】2020年6月10日
      
    (54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L  35/34        20060101AFI20200601BHJP        
   H01L  35/32        20060101ALI20200601BHJP        
【FI】
   H01L35/34
   H01L35/32 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
      (21)【出願番号】特願2015-225441(P2015-225441)
(22)【出願日】2015年11月18日
    
      (65)【公開番号】特開2017-98283(P2017-98283A)
(43)【公開日】2017年6月1日
    【審査請求日】2018年9月21日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人  ユニアス国際特許事務所
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】奥村  圭佑
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】本田  哲士
              
            
        
      
    
      【審査官】
        田邊  顕人
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2005−333083(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2006−013434(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2011−176073(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2002−208741(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2001−007413(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2011−061031(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2005−353710(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2009−117792(JP,A)      
        
        【文献】
          特表2009−542035(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2010/0301492(US,A1)    
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2008/0182363(US,A1)    
        
        【文献】
          特開2000−058930(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平06−296046(JP,A)      
        
        【文献】
          特表2014−520499(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2005−098844(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2010−192764(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2000−349350(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2001−156343(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2000−353829(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L    35/34        
H01L    35/32        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  第1キャリア上に配置された第1電極に半導体素子の第1端を第1接合部材で固定する工程と、
  第2キャリア上に配置された第2電極に前記半導体素子の第2端を第2接合部材で固定する工程と、
  前記第1キャリアおよび前記第2キャリアの少なくともどちらかを加熱で消失させる工程と
  を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
  前記第1キャリアおよび前記第1キャリア上に配置された前記第1電極を含む第1電極搭載キャリアを形成する工程をさらに含み、
  前記第1電極搭載キャリアを形成する工程は、第1支持体上に前記第1電極を形成するステップ、前記第1電極に前記第1キャリアを固定するステップおよび前記第1電極に前記第1キャリアを固定するステップの後に前記第1支持体を前記第1電極からはがすステップを含む
  請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
  第1主面、および前記第1主面とは反対側に位置する第2主面を有する第1半導体ウエハと、前記第1半導体ウエハの前記第1主面に固定された第1ダイシング前接合部材と、前記第1半導体ウエハの前記第2主面に固定された第2ダイシング前接合部材とを含む積層体をダイシングすることによって、前記半導体素子、前記半導体素子の前記第1端に固定された前記第1接合部材、および前記半導体素子の前記第2端に固定された前記第2接合部材を含むチップを形成する工程をさらに含む請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
  前記第1および前記第2接合部材は金属系化合物の粒子を含む請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
  前記半導体素子は熱電変換素子である請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
  前記第1キャリアおよび前記第2キャリアの少なくともどちらかを消失させる前記工程では、前記第1キャリアおよび前記第2キャリアの両者を加熱で消失させる、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、熱電変換装置などの半導体装置を製造するための方法に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  フルスケルトンタイプの熱電変換装置およびハーフスケルトンタイプの熱電変換装置が知られている。両タイプの熱電変換装置は、サンドウィッチタイプの熱電変換装置とくらべて信頼性に優れる。サンドウィッチタイプは、一対の基板の線膨張差により破損が起こるおそれがあるが、フルスケルトンタイプは基板を有さず、ハーフスケルトンタイプは基板を一枚だけ有するからである。
【0003】
  ところで、特許文献1は、仮基板に固定された上部電極と絶縁板に設けられた下部電極との間に熱電材料を配置し、はんだづけし、仮基板を除去する方法により熱電モジュールを得る方法を開示している。この熱電モジュールは、絶縁板と、絶縁板に設けられた下部電極と、下部電極に固定された熱電材料とからなる。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−307825号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  本発明の目的は、スケルトンタイプ―フルスケルトンタイプまたはハーフスケルトンタイプ―の半導体装置を製造するための新規な方法を提供することである。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本発明は、第1キャリア上に配置された第1電極に半導体素子の第1端を第1接合部材で固定する工程と、第2キャリア上に配置された第2電極に半導体素子の第2端を第2接合部材で固定する工程と、第1キャリアおよび第2キャリアの少なくともどちらかを消失させる工程とを含む半導体装置の製造方法に関する。第1キャリアおよび第2キャリアの少なくともどちらかを消失させる工程を採用しているので、スケルトンタイプの半導体装置を製造できる。消失工程を採用しているので、第1または第2キャリアを剥離する工程を省くことができる。
【0007】
  本発明はまた、第1キャリア上に配置された第1電極に半導体素子の第1端を第1接合部材で固定する工程と、第2キャリア上に配置された第2電極に半導体素子の第2端を第2接合部材で固定する工程と、第1キャリアおよび第2キャリアの少なくともどちらかを剥離する工程とを含む半導体装置の製造方法に関する。第1キャリアおよび第2キャリアの少なくともどちらかを剥離する工程を採用しているので、スケルトンタイプの半導体装置を製造できる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る方法における焼結工程の概略断面図である。
 
【
図3A】第1電極搭載支持体の製造工程の概略断面図である。
 
【
図3B】第1電極搭載支持体の製造工程の概略断面図である。
 
【
図3C】第1電極搭載支持体の製造工程の概略断面図である。
 
【
図3D】第1電極搭載支持体の製造工程の概略断面図である。
 
【
図3E】第1電極搭載支持体の製造工程の概略断面図である。
 
【
図4A】第1電極搭載支持体の製造工程の概略断面図である。
 
【
図4B】第1電極搭載支持体の製造工程の概略断面図である。
 
【
図4C】第1電極搭載支持体の製造工程の概略断面図である。
 
【
図5】第1キャリア固定後における第1電極搭載支持体の概略断面図である。
 
【
図10】第2チップの製造工程の概略断面図である。
 
【
図11】第2チップの製造工程の概略断面図である。
 
【
図16】変形例3における第1チップの製造工程の概略断面図である。
 
【
図17】変形例4における第2チップの製造工程の概略断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0009】
  以下に実施形態を掲げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
 
【0010】
  [実施形態1]
  
図1に示すように、実施形態1に係る半導体装置の製造方法は、第1キャリア113上に配置された第1電極112aに半導体素子151の第1端を第1接合部材152で固定する工程と、第2キャリア123上に配置された第2電極122aに半導体素子151の第2端を第2接合部材153で固定する工程と、第1キャリア113および第2キャリア123を消失させる工程とを含む。消失工程を採用しているので、第1キャリア113および第2キャリア123を剥離する工程を省くことができる。実施形態1に係る半導体装置の製造方法は、第1接合部材152および第2接合部材153の焼結を開始する工程をさらに含む。具体的には、合同体19を加熱することにより焼結を開始し、第1キャリア113および第2キャリア123を消失させる。
 
【0011】
  図2に示すように、第1電極搭載支持体110を準備する。第1電極搭載支持体110は、第1支持体111および第1支持体111上に設けられた第1電極112a、112b、112c(以下、「第1電極112」と総称することがある。)を含む。第1支持体111はたとえばステンレス鋼(SUS)板などの金属板である。SUS板が第1電極112からはがれやすいため好ましい。第1支持体111の両面は第1面と第1面に対向した第2面で定義できる。第1電極112は、たとえば銅などの金属などからなる。第1電極搭載支持体110を得るために、
図3Aに示すようにフィルム114を準備し、
図3Bに示すようにトムソン刃、レーザーなどでフィルム114に開口部を形成し、
図3Cに示すようにフィルム114を第1支持体111の第1面上に配置し、
図3Dに示すように第1支持体111の第2面上にフィルム115を必要に応じて配置し、
図3Eに示すように電気めっき法で第1支持体111の第1面に第1電極112a、112b、112cを形成する手順を採用できる。いっぽう、第1電極搭載支持体110を得るために、
図4Aに示すように第1支持体111の第1面上に感光性樹脂フィルム117を配置し、第1支持体111の第2面上にフィルム118を必要に応じて配置し、
図4Bに示すように感光性樹脂フィルム117に選択的に光をあて現像し、
図4Cに示すように電気めっき法で第1支持体111の第1面に第1電極112a、112b、112cを形成する手順を採用することもできる。
 
【0012】
  図5に示すように、第1電極112a、112b、112cに第1キャリア113を固定する。第1キャリア113は、熱で分解する性質を有する。すなわち、焼結の熱で消失する性質を第1キャリア113は有する。第1キャリア113は熱分解を起こす樹脂などからなる。たとえばアクリル樹脂やポリカーボネートである。第1キャリア113はたとえば板状、シート状、フィルム状をなすことができる。
 
【0013】
  図6に示すように、第1支持体111を第1電極112a、112b、112cからはがし、第1電極搭載キャリア11を得る。第1電極搭載キャリア11は、第1キャリア113および第1キャリア113上に配置された第1電極112a、112b、112cを含む。
 
【0014】
  図7に示すように、第2電極搭載キャリア12を準備する。第2電極搭載キャリア12は、第2キャリア123および第2キャリア123上に配置された第2電極122a、122b、122c(以下、「第2電極122」と総称することがある。)を含む。第2キャリア123の組成の説明は省略する。第2キャリア123の組成は第1キャリア113の組成と同様だからである。第2電極122は、たとえば銅などの金属などからなる。第2電極搭載キャリア12は、第1電極搭載キャリア11の作製方法と同様の方法で作製できる。
 
【0015】
  図8に示すように、プレス前積層体14を準備する。プレス前積層体14は、第1半導体ウエハ141、第1ダイシング前接合部材142および第2ダイシング前接合部材143を含む。第1半導体ウエハ141の両面は、第1主面と第1主面に対向した第2主面とで定義される。第1半導体ウエハ141の第1主面上に第1ダイシング前接合部材142は位置する。第1ダイシング前接合部材142は、加熱により焼結体となる性質を有する。第1ダイシング前接合部材142はシート状をなす。第1半導体ウエハ141の第2主面上に第2ダイシング前接合部材143は位置する。第2ダイシング前接合部材143は、加熱により焼結体となる性質を有する。第2ダイシング前接合部材143はシート状をなす。プレス前積層体14をプレスすることにより積層体を得る。具体的には、実質的に平行な一対の平板911、912でプレス前積層体14に力を加えながらプレス前積層体14を加熱することにより積層体を得る。温度はたとえば23℃〜150℃、好ましくは40℃〜90℃である。積層体は、第1半導体ウエハ141と、第1半導体ウエハ141の第1主面に固定された第1ダイシング前接合部材142と、第1半導体ウエハ141の第2主面に固定された第2ダイシング前接合部材143とを含む。
 
【0016】
  図9に示すように、積層体をダイシングすることにより第1チップ15a、15b、15c、15d、15e(以下、「第1チップ15」と総称することがある。)を形成する。具体的には、積層体をダイシングシートに固定し、積層体をダイシングブレードなどで切断する。各第1チップ15は、第1半導体素子151、第1接合部材152および第2接合部材153を含む。第1半導体素子151は第1導電型の熱電変換素子である。たとえばBi
2Te
3系、酸化物半導体系、シリサイド系、スクッテルダイト系、ホイスラー系、炭素・高分子材料系などの半導体素子を使用できる。第1半導体素子151の両端は、第1端と第1端に対向した第2端とで定義される。第1半導体素子151の第1端に第1接合部材152は固定されている。第1半導体素子151の第2端に第2接合部材153は固定されている。
 
【0017】
  図10に示すように、プレス前積層体16を準備する。プレス前積層体16は、第2半導体ウエハ161、第1ダイシング前接合部材162および第2ダイシング前接合部材163を含む。第2半導体ウエハ161の両面は、第1主面と第1主面に対向した第2主面とで定義される。第2半導体ウエハ161の第1主面上に第1ダイシング前接合部材162は位置する。第1ダイシング前接合部材162は、加熱により焼結体となる性質を有する。第1ダイシング前接合部材162はシート状をなす。第2半導体ウエハ161の第2主面上に第2ダイシング前接合部材163は位置する。第2ダイシング前接合部材163は、加熱により焼結体となる性質を有する。第2ダイシング前接合部材163はシート状をなす。プレス前積層体16をプレスすることにより積層体を得る。具体的には、実質的に平行な一対の平板911、912でプレス前積層体16に力を加えながらプレス前積層体16を加熱することにより積層体を得る。温度はたとえば23℃〜150℃、好ましくは40℃〜90℃である。積層体は、第2半導体ウエハ161と、第2半導体ウエハ161の第1主面に固定された第1ダイシング前接合部材162と、第2半導体ウエハ161の第2主面に固定された第2ダイシング前接合部材163とを含む。
 
【0018】
  図11に示すように、積層体をダイシングすることにより第2チップ17a、17b、11c、11d、11e(以下、「第2チップ17」と総称することがある。)を形成する。具体的には、積層体をダイシングシートに固定し、積層体をダイシングブレードなどで切断する。各第2チップ17は、第2半導体素子171、第1接合部材172および第2接合部材173を含む。第2半導体素子171は第2導電型の熱電変換素子である。たとえばBi
2Te
3系、酸化物半導体系、シリサイド系、スクッテルダイト系、ホイスラー系、炭素・高分子材料系などの半導体素子を使用できる。第2半導体素子171の両端は、第1端と第1端に対向した第2端とで定義される。第2半導体素子171の第1端に第1接合部材172は固定されている。第2半導体素子171の第2端に第2接合部材173は固定されている。
 
【0019】
  図12に示すように、第1電極112aの第1領域に第1チップ15aを圧着する。すなわち、第1電極112aの第1領域に第1半導体素子151の第1端を第1接合部材152で固定する。圧着は、たとえば23℃〜150℃、好ましくは40℃〜90℃でおこなう。この後に、第1電極112bの第1領域に第1チップ15bを圧着し、第1電極112cの第1領域に第1チップ15cを圧着する。第1チップ15は第1電極112に固定されているので、位置ずれを起こしにくい。
 
【0020】
  第1電極112aの第2領域に第2チップ17aを圧着する。すなわち、第1電極112aの第2領域に第2半導体素子171の第1端を第1接合部材172で固定する。圧着は、たとえば23℃〜150℃、好ましくは40℃〜90℃でおこなう。この後に、第1電極112bの第2領域に第2チップ17bを圧着する。第2チップ17は第1電極112に固定されているので、位置ずれを起こしにくい。
 
【0021】
  図13に示すように、第1電極搭載キャリア11と複数の第1チップ15と複数の第2チップ17とからなる集合物に第2電極搭載キャリア12を圧着する。圧着は、たとえば23℃〜150℃、好ましくは40℃〜90℃でおこなう。圧着により得られた合同体19は、第1キャリア113と、第2キャリア123と、第1チップ15aと、第2チップ15bと、第1電極112aと、第2電極122a、122bとを含む。第1チップ15aは、第1電極112aの第1領域と第2電極122aとを接続している。第2チップ17aは、第1電極112aの第2領域と第2電極122bとを接続している。
 
【0022】
  図14に示すように、第1接合部材152、172および第2接合部材153、173の焼結をおこなう。具体的には、実質的に平行な一対の平板921、922で合同体19に力を加えながら合同体19を加熱する。焼結温度の下限はたとえば180℃、200℃である。焼結温度の上限はたとえば350℃、400℃である。焼結をおこなう工程において、第1キャリア113および第2キャリア123の分解が起き、第1キャリア113および第2キャリア123は消失する。
 
【0023】
  図15に示すように、以上の方法により得られた半導体装置は、第1電極112a、第2電極122aおよび第1半導体素子151を含む。半導体装置は、第1焼結後接合部材156および第2焼結後接合部材157をさらに含む。第1焼結後接合部材156が、第1半導体素子151の第1端と第1電極112aの第1領域とを接続している。第2焼結後接合部材157が、第1半導体素子151の第2端と第2電極122aとを接続している。半導体装置は、第2半導体素子171および第2電極122bをさらに含む。半導体装置は、第1焼結後接合部材176および第2焼結後接合部材177をさらに含む。第1焼結後接合部材176が、第2半導体素子171の第1端と第1電極112aの第2領域とを接続している。第2焼結後接合部材177が、第2半導体素子171の第2端と第2電極122bとを接続している。半導体装置はたとえば熱電変換装置として使用できる。具体的にはスケルトンタイプの熱電変換装置である。なお、第1半導体素子151がp型半導体素子であるときは第2半導体素子171がn型である。第1半導体素子151がn型であるときは第2半導体素子171がp型である。
 
【0024】
  以下では、第1接合部材152、172および第2接合部材153、173を「接合部材」と総称する。接合部材は、加熱により焼結体となる性質を有する。接合部材は、焼結で熱分解する性質を有するバインダー(以下、「熱分解性バインダー」という。)と、金属系化合物の粒子とを含む。接合部材は、100℃〜350℃の沸点を有するバインダー(以下、「低沸点バインダー」という。)をさらに含む。
 
【0025】
  熱分解性バインダーはたとえば、大気雰囲気下において昇温速度10℃/minで23℃から400℃まで昇温した後の炭素濃度が15重量%以下を示す―という性質を有する。炭素濃度は、エネルギー分散型X線分析により測定できる。熱分解性バインダーは、好ましくは23℃で固形をなす。23℃で固形をなすと、接合部材の成形が容易である。熱分解性バインダーはたとえばポリカーボネート、アクリルポリマー、エチルセルロース、ポリビニルアルコールなどである。1種または2種以上の熱分解性バインダーを接合部材は含むことができる。
 
【0026】
  金属系化合物の粒子の平均粒子径の下限はたとえば0.05nm、0.1nm、1nmである。金属系化合物の粒子の平均粒子径の上限はたとえば1000nm、100nmである。粒度分布測定装置(日機装製のマイクロトラックHRA)を用い標準モードで測定することにより求められるD50データを平均粒子径とする。金属系化合物は、たとえば銀、銅、酸化銀、酸化銅などである。これらは有機化合物などで覆われていることがある。1種または2種以上の金属粒子を接合部材は含むことができる。
 
【0027】
  低沸点バインダーは、好ましくは23℃で液状をなす。低沸点バインダーはたとえば、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、1−デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、α−テルピネオール、1,6-ヘキサンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH)などの一価及び多価アルコール類、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)などである。1種または2種以上の低沸点バインダーを接合部材は含むことができる。
 
【0028】
  (変形例1)
  変形例1において、合同体19を加熱する工程で第1キャリア113は消失しない。変形例1では、焼結をおこなう工程の後に第1キャリア113を第1電極112a、112b、112cからはく離する。
 
【0029】
  (変形例2)
  変形例2において、合同体19を加熱する工程で第2キャリア123は消失しない。変形例2では、焼結をおこなう工程の後に第2キャリア123を第2電極122a、122b、122cからはく離する。
 
【0030】
  (変形例3)
  
図16に示すように、変形例3では、プレス前積層体14は、第1はく離ライナー146および第2はく離ライナー147をさらに含む。第1はく離ライナー146と第2はく離ライナー147との間に第1半導体ウエハ141、第1ダイシング前接合部材142および第2ダイシング前接合部材143が位置する。第1ダイシング前接合部材142が平板911に付着することを第1はく離ライナー146は防止している。第2ダイシング前接合部材143が平板912に付着することを第2はく離ライナー147は防止している。
 
【0031】
  (変形例4)
  
図17に示すように、変形例4では、プレス前積層体16は、第1はく離ライナ166ーおよび第2はく離ライナー167をさらに含む。第1はく離ライナー166と第2はく離ライナー167との間に第2半導体ウエハ161、第1ダイシング前接合部材162および第2ダイシング前接合部材163が位置する。
 
【0032】
  (変形例5)
  変形例5において、第2接合部材153、173は、加熱により焼結体となる性質を有さない。
 
【0033】
  (そのほかの変形例)
  変形例1〜変形例5などは、任意に組み合わせることができる。たとえば変形例1〜2を同時に組み合わせることができる。変形例1〜2に係る半導体装置の製造方法は、第1キャリア113上に配置された第1電極112aに半導体素子151の第1端を第1接合部材152で固定する工程と、第2キャリア123上に配置された第2電極122aに半導体素子151の第2端を第2接合部材153で固定する工程と、第1キャリア113および第2キャリア123の少なくともどちらかを剥離する工程とを含む。
 
 
【符号の説明】
【0034】
         11        第1電極搭載キャリア
       112        第1電極
       113        第1キャリア
         12        第2電極搭載キャリア
       122        第2電極
       123        第2キャリア
         15        第1チップ
       151        第1半導体素子
       152        第1接合部材
       153        第2接合部材
       156        第1焼結後接合部材
       157        第2焼結後接合部材
         17        第2チップ
       171        第2半導体素子
       172        第1接合部材
       173        第2接合部材
       176        第1焼結後接合部材
       177        第2焼結後接合部材