特許第6709071号(P6709071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709071
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】振れ補正機能付き光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   G03B5/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-35627(P2016-35627)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-146571(P2017-146571A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】62/296,314
(32)【優先日】2016年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−217432(JP,A)
【文献】 特表2015−537247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 − 7/16
G03B 5/00 − 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体および固定体と、
前記可動体を互いに交差する第1軸線および第2軸線回りに揺動可能に支持する支持機構と、
前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構と、を有し、
前記支持機構は、可動枠と、前記可動枠を支持する複数の揺動支持部とを備え、
前記複数の揺動支持部のうちの一部は前記固定体に設けられ、前記一部以外は前記可動体に設けられ、
前記可動枠は、1枚の板状ばね、または、複数枚の前記板状ばねが前記第1軸線および前記第2軸線と直交する第1方向に重なった積層体であって、
前記板状ばねは、前記揺動支持部と接する支点部と、前記支点部と前記支点部とを繋ぐ連結部とを備え、前記連結部は前記支点部よりも内周側に位置する蛇行部または湾曲部を備え、
前記蛇行部または前記湾曲部は、前記板状ばねの1枚当たりの前記第1方向の厚さよりも、前記第1方向と直交し且つ前記蛇行部の蛇行経路または前記湾曲部の湾曲経路と直交する第2方向の厚さの方が大きく、
前記連結部は、前記蛇行部と、前記蛇行部と前記支点部とを繋ぐ直線部と備え、
前記蛇行部は、外周側に凸となる第1湾曲部と、前記第1湾曲部の周方向の一方側で内周側に凸となる第2湾曲部と、前記第1湾曲部の周方向の他方側で内周側に凸となる第3湾曲部と、を備え、
前記第2湾曲部および前記第3湾曲部は、前記直線部と繋がり、
前記蛇行部の前記第2方向の厚さは、前記直線部の前記第2方向の厚さよりも大きいことを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記可動枠は前記積層体であり、前記複数枚の前記板状ばねの一部または全体が前記支点部で接合されていることを特徴とする請求項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記複数枚の前記板状ばねのそれぞれは、前記蛇行部の前記第2方向の厚さが、前記蛇行部の前記第1方向の厚さの2倍以上であることを特徴とする請求項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記複数枚の前記板状ばねは、前記第1方向に重なる第1板状ばね、第2板状ばね、第3板状ばねを含み、
前記第1板状ばねと前記第2板状ばねは前記支点部で接合され、
前記第3板状ばねは、前記支点部の周方向の両側で前記第2板状ばねと接合されていることを特徴とする請求項2または3に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記第3板状ばねは、前記第2板状ばねと接合される薄肉部を備えることを特徴とする請求項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記第3板状ばねは、前記連結部の外周縁を前記第1板状ばねおよび前記第2板状ばねよりも内側に切り欠いた外側切り欠き部を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
前記第3板状ばねは、前記連結部の内周縁を前記第1板状ばねおよび前記第2板状ばねよりも外側に切り欠いた内側切り欠き部を備えることを特徴とする請求項4から6の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項8】
前記可動体は、光学モジュールと、前記光学モジュールの外周側に位置する壁部を備え、
前記壁部は周方向に離間した複数の位置に設けられ、前記壁部に前記振れ補正用駆動機構のコイルが固定され、
前記可動枠は、前記蛇行部または前記湾曲部が前記壁部の内周側に位置し、前記支点部が周方向に隣り合う前記壁部の間に配置されることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジンバル機構によって可動体を揺動可能に支持する振れ補正機能付き光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮影用の光学モジュールが搭載された各種の光学ユニットが用いられている。かかる光学ユニットは、手振れや振動による撮影画像の乱れを抑制するために、光学モジュールを揺動させて振れを補正する振れ補正用駆動機構を備える。また、かかる光学ユニットは、光学モジュールを搭載した可動体を固定体に対して揺動可能に支持するための支持機構として、可動体と固定体の間に配置したジンバル機構を備える。特許文献1には、この種のジンバル機構を備える振れ補正機能付き光学ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−64501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のジンバル機構は、矩形枠状のジンバルばね(可動枠)と、ジンバルばねを支持する揺動支持部を備える。ジンバルばねの対角位置に設けられた2組の揺動支持部のうち、1組は固定体に設けられ、もう1組は可動体に設けられる。ジンバルばねには揺動支持部によって支持される支点部が設けられ、支点部と支点部を繋ぐ連結部には蛇行部が設けられる。
【0005】
ジンバルばね(可動枠)に蛇行部を設けたことにより、ジンバルばねは平面方向のばね性だけでなく、平面方向と直交する方向のばね性を持つようになっている。しかしながら、振れ補正機能付き光学ユニットの用途によっては、蛇行部のばね性が大きすぎると望ましくない場合がある。例えば、外部衝撃が加わった場合の可動体の移動量を小さくしたい場合がある。しかしながら、このような要望に対応する形状のジンバルばねは提案されていない。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、可動枠を用いた支持機構によって可動体を支持する振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、外部衝撃による可動体の移動量を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の振れ補正機能付き光学ユニットは、可動体および固定体と、前記可動体を互いに交差する第1軸線および第2軸線回りに揺動可能に支持する支持機構と、前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構と、を有し、前記支持機構は、可動枠と、前記可動枠を支持する複数の揺動支持部とを備え、前記複数の揺動支持部のうちの一部は前記固定体に設けられ、前記一部以外は前記可動体に設けられ、前記可動枠は、1枚の板状ばね、または、複数枚の前記板状ばねが前記第1軸線および前記第2軸線と直交する第1方向に重なった積層体であって、前記板状ばねは、前記揺動支持部と接する支点部と、前記支点部と前記支点部とを繋ぐ連結部とを備え、前記連結部は前記支点部よりも内周側に位置する蛇行部または湾曲部を備え、前記蛇行部または前記湾曲部は、前記板状ばねの1枚当たりの前記第1方向の厚さよりも、前記第1方向と直交し且つ前記蛇行部の蛇行経路または前記湾曲部の湾曲経路と直交する第2方向の厚さの方が大きく、前記連結部は、前記蛇行部と、前記蛇行部と前記支点部とを繋ぐ直線部と備え、前記蛇行部は、外周側に凸となる第1湾曲部と、前記第1湾曲部の周方向の一方側で内周側に凸となる第2湾曲部と、前記第1湾曲部の周方向の他方側で内周側に凸となる第3湾曲部と、を備え、前記第2湾曲部および前記第3湾曲部は、前記直線部と繋がり、前記蛇行部の前記第2方向の厚さは、前記直線部の前記第2方向の厚さよりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、可動体を揺動可能に支持する支持機構が可動枠を備えており、可動枠は、1枚の板状ばね、または、複数枚の前記板状ばねが重なった積層体であって、板状ばねは、揺動支持部によって支持される支点部と、支点部よりも内周側に位置する蛇行部または湾曲部を備える。このため、可動枠は、板状ばねを含む平面方向のばね性を有するので、外部衝撃による装置の破損を防止できる。その一方で、本発明では、蛇行部または湾曲部の剛性を高めた形状を採用している。具体的には、第1軸線および第2軸線と直交する方向を第1方向、第1方向と直交し且つ蛇行部の蛇行経路または湾曲部の湾曲経路と直交する方向を第2方向とするとき、第1方向の厚さ(板状ばねを含む平面と直交する方向の厚さ)よりも第2方向の厚さ(第1方向に見た場合の蛇行部または湾曲部の太さ)の方が大きい断面形状を採用している。このような形状は、蛇行部または湾曲部に平面方向のばね性を持たせつつ、蛇行部または湾曲部の剛性を適度に高めることができる。従って、外部衝撃による可動体の移動量を少なくすることができる。また、このようにすると、湾曲形状よりもばね性を大きくすることができる。また、蛇行回数が少ないので、ばね性が過度に大きくなることを抑制できる。従って、外部衝撃による装置の破損を防止しつつ、外部衝撃等による可動体の移動量を少なくすることができる。また、このようにすると、蛇行部の剛性を適度に高めつつ、直線部の配置スペースを小さくすることができる。従って、蛇行部の剛性を適度に高めつつ、装置全体の小型化を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記可動枠は前記積層体であり、前記複数枚の前記板状ばねの一部または全体が前記支点部で接合されている構成を採用できる。このようにすると、板状ばねの製造方法等により、板状ばねの板厚方向の寸法を自由に設定できない場合でも、板状ばねを積層することによって求める断面形状を実現できる。また、荷重がかかる箇所である支点部で接合すれば、剛性を高めることができる。
【0012】
本発明において、前記複数枚の前記板状ばねのそれぞれは、前記蛇行部の前記第2方向の厚さが、前記蛇行部の前記第1方向の厚さの2倍以上であることが望ましい。このようにすると、板状ばねを1枚で用いる場合においても蛇行部または湾曲部の剛性を適度に高めることができ、2枚で用いる場合はさらに剛性を高めることができる。
【0013】
例えば、前記複数枚の前記板状ばねが、前記第1方向に重なる第1板状ばね、第2板状ばね、第3板状ばねを含む場合には、前記第1板状ばねと前記第2板状ばねは前記支点部で接合され、前記第3板状ばねは、前記支点部の周方向の両側で前記第2板状ばねと接合されている構成を採用できる。このように、支点部およびその近傍で板状ばねを接合すれば、荷重がかかる箇所およびその近傍で接合されるので、剛性を高めることができる。また、2枚の板状ばねを重ねて支点部で接合した可動枠にもう1枚の板状ばねを追加で接合することにより、板状ばねが2枚の場合よりも剛性を高めることができる。
【0014】
この場合に、前記第3板状ばねは、前記第2板状ばねと接合される薄肉部を備えることが望ましい。このようにすると、レーザ溶接により接合する場合に、高出力で溶接を行わ
なくても確実な接合を行うことができる。
【0015】
本発明において、前記第3板状ばねは、前記連結部の外周縁を前記第1板状ばねおよび前記第2板状ばねよりも内側に切り欠いた外側切り欠き部を備えることが望ましい。また、前記第3板状ばねは、前記連結部の外周縁を前記第1板状ばねおよび前記第2板状ばねよりも外側に切り欠いた内側切り欠き部を備えることが望ましい。このような切り欠き部を形成すると、可動体の揺動時に可動枠が傾いた場合に、可動枠と揺動支持部との接点から離れた位置にある第3板状ばねが周囲の部品と接触するおそれが少ない。
【0016】
本発明において、前記可動体は、光学モジュールと、前記光学モジュールの外周側に位置する壁部を備え、前記壁部は周方向に離間した複数の位置に設けられ、前記壁部に前記振れ補正用駆動機構のコイルが固定され、前記可動枠は、前記蛇行部または前記湾曲部が前記壁部の内周側に位置し、前記支点部が周方向に隣り合う前記壁部の間に配置されることが望ましい。このように、蛇行部または湾曲部をコイル固定用の壁部の内周側に通し、支点部は周方向に隣り合う壁部の間に配置する場合、可動枠は蛇行部または湾曲部が内周側に凹んだ形状となる。従って、壁部およびコイルを内周側に配置できる。また、支点部の外周側に壁部を配置するスペースを確保する必要がない。従って、装置全体を小型化できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可動体を揺動可能に支持する支持機構が可動枠を備えており、可動枠は、1枚の板状ばね、または、複数枚の前記板状ばねが前記第1軸線および前記第2軸線と直交する第1方向に重なった積層体であって、前記板状ばねは、支点部と支点部の間に蛇行部または湾曲部を備える。そして、蛇行部または湾曲部は、第1軸線および第2軸線と直交する方向を第1方向、第1方向と直交し且つ蛇行部の蛇行経路または湾曲部の湾曲経路と直交する方向を第2方向とするとき、板状ばねの1枚当たりの第1方向の厚さ(板状ばねを含む平面と直交する方向の厚さ)よりも第2方向の厚さ(第1方向に見た場合の蛇行部または湾曲部の太さ)の方が大きい。このような断面形状により、蛇行部または湾曲部に平面方向のばね性を持たせつつ、蛇行部または湾曲部の剛性を適度に高めることができる。従って、外部衝撃による装置の破損を防止でき、且つ、外部衝撃による可動体の移動量が過度に大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニットを物体側および像側から見た斜視図である。
図2図1の振れ補正機能付き光学ユニットを物体側から見た分解斜視図である。
図3図1の振れ補正機能付き光学ユニットの断面斜視図である。
図4】第1ケースおよび光学モジュールを取り外した振れ補正機能付き光学ユニットの平面図、および揺動支持部の部分断面図である。
図5】可動枠の斜視図および断面斜視図である。
図6】可動枠の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(全体構成)
以下に、図面を参照して、本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニット1の実施の形態を説明する。本明細書において、XYZの3軸は互いに直交する方向であり、X軸方向の一方側を+X、他方側を−Xで示し、Y軸方向の一方側を+Y、他方側を−Yで示し、Z軸方向の一方側を+Z、他方側を−Zで示す。Z軸方向は、振れ補正機能付き光学ユニット1の可動体10が揺動していない状態で、可動体10に搭載される光学モジュール2の光軸Lに沿う方向である。また、−Z方向が光軸L方向の像側、+Z方向が光軸L方
向の物体側(被写体側)である。
【0020】
図1(a)は振れ補正機能付き光学ユニット1を物体側から見た斜視図であり、図1(b)は像側から見た斜視図である。図2は振れ補正機能付き光学ユニット1を物体側から見た分解斜視図である。図3は振れ補正機能付き光学ユニット1の断面斜視図であり、図1(a)のA−A断面斜視図である。振れ補正機能付き光学ユニット1は、例えばカメラ付き携帯電話機、ドライブレコーダー等の光学機器や、ヘルメット、自転車、ラジコンヘリコプター等に搭載されるアクションカメラやウエアラブルカメラ等の光学機器に用いられる。このような光学機器では、撮影時に振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生することを回避するため、振れ補正機能付き光学ユニット1を駆動して振れを補正する。
【0021】
振れ補正機能付き光学ユニット1は、可動体10と、固定体20と、可動体10を固定体20に対して揺動可能に支持する支持機構であるジンバル機構30と、可動体10を固定体20に対して相対変位させる磁気駆動力を発生させる振れ補正用駆動機構50と、可動体10と固定体20とを接続するバネ部材70と、フレキシブル配線基板80を備える。振れ補正機能付き光学ユニット1は、フレキシブル配線基板80を介して、振れ補正用駆動機構50に給電する。振れ補正機能付き光学ユニット1を搭載する光学機器の本体側に設けられた上位の制御装置は、光学機器に振れが発生したときに振れを検出するジャイロスコープ(振れ検出センサ)の出力に基づいて振れ補正用駆動機構50を駆動して可動体10を揺動させ、振れ補正を行う。
【0022】
可動体10は、ジンバル機構30により、光軸Lと交差する第1軸線R1回りに揺動可能に支持されているとともに、光軸Lおよび第1軸線R1と交差する第2軸線R2回りに揺動可能に支持されている。第1軸線R1および第2軸線R2は、固定体20の対角方向であり、光軸Lと直交する。また、第1軸線R1および第2軸線R2は、互いに直交する。
【0023】
(固定体)
固定体20は、Z軸方向に見た場合に略正方形の外形をした第1ケース210と、第1ケース210に対して−Z方向側から組み付けられる第2ケース250を備える。第1ケース210は、溶接等により第2ケース250と固定される。第1ケース210は、可動体10の周りを囲む角筒状の胴部211と、胴部211の+Z方向の端部から内側に張り出した矩形枠状の端板部212を備える。端板部212の中央には窓214が形成されている。胴部211は、+X方向側、−X方向側、+Y方向側、−Y方向側の各方向に位置する側板部216を備える。
【0024】
第2ケース250は、矩形枠状の第1部材251と、第1部材251の+Z方向側に取り付けられる矩形枠状の第2部材252の2部材によって構成される。第2ケース250の内周側には、可動体10と固定体20とを接続するバネ部材70が取り付けられる。第2部材252は、第1軸線R1上の対角位置から+Z方向に立ち上がる側壁部254、255を備える。側壁部254、255には、ジンバル機構30の第1揺動支持部36を構成する第1接点バネ保持部31が形成されている。
【0025】
(可動体)
可動体10は、光学モジュール2と、光学モジュール2を保持するホルダ40と、光学モジュール2の+Z方向側の端部に固定されたウェイト11と、ホルダ40の−Z方向の端部に取り付けられる枠状のストッパー49を備える。ストッパー49は、可動体10が揺動する際に固定体20の第2ケース250の内周面と当接して可動体10の揺動範囲を規制する。図3に示すように、光学モジュール2は、光学素子としてのレンズユニットを保持する円柱状の上部モジュール2Aを備える。上部モジュール2Aの+Z方向側の端部
からは円柱状のレンズホルダ4が突出する。ウェイト11は非磁性の金属からなり、レンズホルダ4の外周側および+Z方向側を囲むように取り付けられる。
【0026】
ホルダ40は、Z軸方向に見た場合の平面形状が略正方形である枠部41を備える。枠部41の中央には光学モジュール2を配置するための円形の保持孔42(図3参照)が形成されている。枠部41は、保持孔42の外周側を囲む4箇所で+Z方向に立ち上がる壁部44を備える。壁部44は、枠部41の各側端縁の中央でX軸方向もしくはY軸方向に直線状に延在する。4箇所の壁部44は、それぞれ、保持孔42とは反対側を向く外側面に形成されたコイル保持部45を備える。コイル保持部45は矩形の凸部であり、磁気駆動機構51のコイル53が取り付けられる。図3に示すように、コイル保持部45は、コイル53の中央から磁石52の側に突出しており、磁石52と対向する。振動等によって可動体10がX軸方向もしくはY軸方向に変位する際、コイル保持部45が磁石52と当接して可動体10の移動範囲を規制する。
【0027】
枠部41には、コイル53に対する給電用のフレキシブル配線基板80が取り付けられる。フレキシブル配線基板80は、4箇所の壁部44の内周側に沿って延在する矩形枠部分81と、矩形枠部分81の内周縁から保持孔42を通って−Z方向に引き出される帯状の引き回し部82を備える。
【0028】
枠部41の第1軸線R1上の対角位置には、第1軸線R1に対して垂直な面によって切り欠かれた切り欠き部46(図2参照)が設けられている。可動体10を固定体20に対して組み付けると、第2ケース250の第1軸線R1上の対角位置に設けられた側壁部254、255が切り欠き部46に配置される。従って、側壁部254、255に設けられた第1接点バネ保持部31が枠部41の第1軸線R1上の対角位置に配置される。また、枠部41の第2軸線R2上の対角位置には、ジンバル機構30の第2揺動支持部37を構成する第2接点バネ保持部32が形成されている。
【0029】
枠部41の外周面の−Z方向側の部分には、+X方向側、−X方向側、+Y方向側、−Y方向側を向く各面の中央に固定用凸部48(図2参照)が形成されている。固定用凸部48はZ軸方向に直線状に延びており、バネ部材70を係合する係合部として機能する。また、枠部41の−Z方向の端部にはストッパー49が取り付けられている。
【0030】
(バネ部材)
バネ部材70は、固定体20の−Z方向の端部に配置され、固定体20と可動体10とを接続する。振れ補正用駆動機構50が駆動されていない静止状態にあるときの可動体10の姿勢は、バネ部材70によって定まる。図2に示すように、バネ部材70は、金属板を加工した矩形枠状の板バネである。バネ部材70は、その外周部に設けられた固定体側連結部71が第2ケース250の第1部材251に固定されることにより、固定体20に接続される。また、バネ部材70の内周部には枠状の可動体側連結部72が設けられ、可動体側連結部72はアーム部73によって固定体側連結部と繋がっている。可動体10を固定体20に組み付けると、可動体側連結部72に設けられた凹部75と可動体10の外周面に設けられた固定用凸部48とが係合する。この係合箇所を接着剤で固定することにより、バネ部材70と可動体10とが接続される。
【0031】
(振れ補正用駆動機構)
図4(a)は第1ケース210および光学モジュール2を取り外した振れ補正機能付き光学ユニットの平面図であり、図4(b)は第2揺動支持部37の部分断面図(図4(a)のB−B断面図)である。振れ補正用駆動機構50は、固定体20と可動体10の間に設けられた4組の磁気駆動機構51を備える。各磁気駆動機構51は、磁石52とコイル53を備える。コイル53は空芯コイルであり、可動体10の+X方向側および−X方向
側の側面、ならびに可動体10の+Y方向側および−Y方向側の側面に保持される。磁石52は、第1ケース210の胴部211において、+X方向側、−X方向側、+Y方向側、−Y方向側の各方向に位置する側板部216(図2参照)の内面に保持される。従って、可動体10と第1ケース210の胴部211との間では、+X方向側、−X方向側、+Y方向側、−Y方向側のいずれにおいても、磁石52とコイル53とが対向する。
【0032】
磁石52は、胴部211に接する外面側と、コイル53に面する内面側が異なる極に着磁されている。また、磁石52は光軸L方向(すなわち、Z軸方向)に2分割され、内面側の磁極が分割位置を境にして異なるように着磁されている。このため、コイル53は、上下の長辺部分が有効辺として利用される。4つの磁石は、外面側および内面側に対する着磁パターンが同一である。第1ケース210は磁性材料から構成されており、磁石52に対するヨークとして機能する。
【0033】
図4(a)に示すように、可動体10の+Y方向側および−Y方向側に位置する2組の磁石52およびコイル53からなる2組の磁気駆動機構51は、通電時にX軸周りの同一方向の磁気駆動力が発生するように配線接続されている。従って、これら2組の磁気駆動機構51のコイル53に通電することにより、ピッチング(縦揺れ)方向の振れ補正を行うことができる。また、可動体10の+X方向側および−X方向側に位置する2組の磁石52とコイル53からなる2組の磁気駆動機構51は、通電時にY軸周りの同一方向の磁気駆動力が発生するように配線接続されている。従って、これら2組の磁気駆動機構51のコイル53に通電することにより、ヨーイング(横揺れ)方向の振れ補正を行うことができる。
【0034】
(ジンバル機構)
ジンバル機構30は、第2ケース250とホルダ40との間に構成されている。ジンバル機構30は、可動体10を固定体20に対して組み付けたときに第1軸線R1方向で離間する2か所に配置される第1揺動支持部36と、第2軸線R2方向で離間する2か所に配置される第2揺動支持部37と、第1揺動支持部36および第2揺動支持部37によって支持される可動枠60を備える。
【0035】
図5(a)は可動枠60の斜視図であり、図5(b)は可動枠60の断面斜視図である。可動枠60は概略矩形状のジンバルばねである。可動枠60は、光軸L回りの4か所に設けられた支点部61と、光軸L回りで隣り合う支点部61を繋ぐ連結部62を備える。各支点部61の内側面には溶接等によって金属製の球体38が固定されている。この球体38によって、各支点部61に可動枠60の中心を向く半球状の凸面が設けられている。連結部62は、X軸方向もしくはY軸方向に延在する蛇行部63を備えており、光軸Lに対して直交する方向に弾性変形可能である。
【0036】
第1揺動支持部36は、固定体20の第2ケース250に設けられた第1接点バネ保持部31と、第1接点バネ保持部31に保持される第1接点バネ33を備える。第1接点バネ33は、U字状に屈曲した金属製の板バネである。第1揺動支持部36は、第1軸線R1方向の対角位置に設けられた支点部61の内周側に配置され、第1軸線R1方向に弾性変形可能な状態に取り付けられた第1接点バネ33を介して可動枠60を支持する。
【0037】
第2揺動支持部37は、可動体10のホルダ40に設けられた第2接点バネ保持部32と、第2接点バネ保持部32に保持される第2接点バネ34を備える。図4(b)に示すように、第2接点バネ34は、U字状に屈曲した金属製の板バネであり、第1接点バネ33と同一形状である。第2揺動支持部37は、第2軸線R2方向に弾性変形可能な状態に取り付けられた第2接点バネ34を介して可動枠60を支持する。
【0038】
第1揺動支持部36の第1接点バネ33および第2揺動支持部37の第2接点バネ34は、それぞれ、支点部61に溶接された球体38に接触する半球状の接点部35(図4(b)参照)を備える。可動枠60は、光軸L回りの4か所に設けられた支点部61に接合された球体38と、第1接点バネ33および第2接点バネ34の半球状の接点部35とが点接触することによって支持される。従って、可動枠60は、光軸L方向と直交する2方向(第1軸線R1方向および第2軸線R2方向)の各方向回りに回転可能な状態で支持される。
【0039】
(可動枠)
可動枠60は、第1板状ばね60A、第2板状ばね60B、第3板状ばね60Cを光軸L方向(Z軸方向)に積層した積層体であり、レーザ溶接により接合されている。これら3枚の板状ばねは光軸L方向を板厚方向とする枠状の板ばねであり、その板厚は同一である。第1板状ばね60Aと第2板状ばね60Bは支点部61で接合されており、第1板状ばね60Aと第2板状ばね60Bの接合箇所に球体38が接合されている。また、第3板状ばね60Cは、支点部61の周方向の両側で第2板状ばね62Bと接合されている。第1板状ばね60A、第2板状ばね60B、第3板状ばね60Cはエッチング加工により形成されている。なお、これらをプレス加工により形成してもよい。
【0040】
図6は可動枠60の分解斜視図である。図5図6に示すように、第1板状ばね60Aは、球体38が接合される支点部61Aを4箇所に備えており、光軸L周りで隣り合う支点部61Aを繋ぐ連結部62Aには蛇行部63Aが形成されている。支点部61Aの周方向の中央には半円形の薄肉部64Aが形成され、薄肉部64Aの中央には半円形の切り欠き部65Aが形成されている。薄肉部64Aおよび切り欠き部65Aは、支点部61Aの内周側の縁に設けられている。同様に、第2板状ばね60Bは、球体38が接合される支点部61Bを4箇所に備えており、光軸L周りで隣り合う支点部61Bを繋ぐ連結部62Bには蛇行部63Bが形成されている。支点部61Bには、半円形の薄肉部64Bおよび薄肉部64Bの中央に位置する半円形の切り欠き部65Bが形成されている。
【0041】
図5(b)に示すように、支点部61において、薄肉部64A、64BはZ軸方向(光軸L方向)に当接する。第1板状ばね60Aと第2板状ばね60Bは、薄肉部64A、64Bがレーザ溶接により接合されることによって4箇所で接合されている。球体38は、薄肉部64A、64Bをレーザ溶接により接合する際、同時に薄肉部64A、64Bの内周側の端面に溶接される。
【0042】
第3板状ばね60Cは、第2板状ばね60Bの支点部61Bと重なる支点部61Cを4箇所に備えており、光軸L周りで隣り合う支点部61Cを繋ぐ連結部62Cには蛇行部63Cが形成されている。各支点部61Cの周方向の両側には薄肉部64Cが形成され、薄肉部64Cの中央に切り欠き部65Cが形成されている。薄肉部64Cおよび切り欠き部65Cは、支点部61Cと連結部62Cとを繋ぐ角部の外周縁に位置する。第3板状ばね60Cは、薄肉部64Cがレーザ溶接によって第2板状ばね60Bに溶接されている。
【0043】
図5(a)に示すように、板状ばねの積層体である可動枠60は、支点部61と支点部61を繋ぐ連結部62の中央部が蛇行部63となっており、蛇行部63と支点部61とを繋ぐ部分は径方向と平行に延びる直線部66となっている。蛇行部63は支点部61よりも内周側に位置する。蛇行部63は、外周側へ凸となる第1湾曲部631と、第1湾曲部631の周方向の一方側で内周側へ凸となる第2湾曲部632と、第1湾曲部631の周方向の他方側で内周側へ凸となる第3湾曲部633を備える。第2湾曲部632および第3湾曲部633は直線部66と湾曲状に繋がっている。
【0044】
ジンバル機構30は、固定体20に対して可動体10を揺動可能に支持しており、可動
体10は、可動枠60の対角位置に設けられた一対の支点部61を通る第1軸線R1と、第1軸線R1と直交し他の一対の支点部61を通る第2軸線R2の2本の軸線周りに揺動可能に支持される。ここで、第1軸線R1および第2軸線R2と直交する方向を第1方向Q1(図5(a)参照)とし、第1方向Q1と直交し且つ蛇行部63の蛇行経路S(図5(b)参照)と直交する方向を第2方向Q2(図5(b)参照)とするとき、第1方向Q1は可動枠60を含む平面と直交する方向である。また、第2方向Q2は、第1方向Q1に見た場合の蛇行部63の部材幅(太さ)方向である。可動体10が揺動していない状態では、第1方向Q1は光軸L方向すなわちZ軸方向と一致する。
【0045】
可動枠60は、第1方向Q1(すなわち、光軸L方向)に見た場合の連結部62の部材幅(太さ)が一定でなく、直線部66よりも蛇行部63の方が太く形成されている。すなわち、直線部66の外周縁には一定深さで内周側に切り欠いた外側切り欠き部67が形成されている。このため、直線部66は、外側切り欠き部67の切り欠き量だけ蛇行部63よりも細くなっている。蛇行部63の部材幅を太くすることにより、蛇行部63に適度な剛性を持たせ、ばね性が過度に大きくなることを抑制できる。蛇行部63は第1湾曲部631、第2湾曲部632、および第3湾曲部633が繋がった形状であるが、これら3つの湾曲部のどの位置でも、第1方向Q1に見た場合の部材幅(太さ)は同じである。
【0046】
各板状ばねにおける蛇行部63A、蛇行部63B、蛇行部63Cは、各板状ばねの1枚当たりの第1方向Q1の厚さt0(図5(b)参照)よりも、第2方向Q2の厚さt2(図5(b)参照)の方が大きい断面形状である。さらには、蛇行部63A、蛇行部63B、蛇行部63Cの各々の第2方向Q2の厚さt2は、第1方向Q1の厚さt0の2倍以上の厚さであることが好ましい。なお、上述したように、可動枠60は3枚の板状ばねの積層体であるため、積層体全体の第1方向Q1の厚さt1は、第2方向Q2の厚さt2よりも厚くなっている。積層体全体の第1方向Q1の厚さt1が第2方向Q2の厚さt2よりも厚くなっていることで、さらに蛇行部63の剛性を高めることができる。従って、外部衝撃による可動体の移動量をさらに少なくすることができる。
【0047】
図3図4(a)に示すように、可動枠60を第1揺動支持部36および第2揺動支持部37に組み付けると、蛇行部63は光学モジュール2の上部モジュール2A(図3参照)と壁部44の間を通るように配置される。また、支点部61は、周方向に隣り合う壁部44の間の角度位置に位置し、支点部61は壁部44およびコイル53よりも外周側に位置する。このように、可動枠60は、蛇行部63を形成した部分が内周側に凹んだ平面形状である。また、ホルダ40には、周方向に隣り合う壁部44の間に支点部61を配置するスペースが確保されている。従って、壁部44およびコイル53を内周側に配置でき、コイル53と対向する磁石52についても内周側に配置できる。よって、装置全体を光軸Lと直交する方向で小型化できる。
【0048】
可動枠60は、上述したように、蛇行部63と支点部61を繋ぐ直線部66を蛇行部63よりも細くするにあたって、直線部66の外周縁に外側切り欠き部67を設けている。これにより、蛇行部63の外周側に設けられた壁部44およびコイル53の配置スペースは、外側切り欠き部67によって切り欠かれた領域分だけ広くなっている。従って、壁部44のX軸方向もしくはY軸方向の長さを長くすることができ、コイル53を大型化することができる。もしくは、壁部44およびコイル53を大型化する代わりに装置全体を小型化できる。
【0049】
図5(a)に示すように、外側切り欠き部67は、第1板状ばね60Aに設けられた外側切り欠き部67Aと、第2板状ばね60Bに設けられた外側切り欠き部67Bと、第3板状ばね60Cに設けられた外側切り欠き部67Cが重なった部分である。ここで、外側切り欠き部67A、67Bは同一形状であるが、外側切り欠き部67Cは外側切り欠き部
67A、67Bよりも一回り大きく切り欠かれている。すなわち、第3板状ばね60Cは、直線部66の外周縁を第1板状ばね60Aおよび第2板状ばね60Bよりも内側に切り欠いた外側切り欠き部67Cを備える。また、第3板状ばね60Cは、直線部66の内周縁を第1板状ばね60Aおよび第2板状ばね60Bよりも外側に切り欠いた内側切り欠き部68Cを備える。
【0050】
可動枠60は、支点部61に溶接された球体38(すなわち、第1揺動支持部36、第2揺動支持部37との接点)から光軸L方向に最も離れた位置に第3板状ばね60Cが設けられているため、可動体10が揺動して可動枠60が傾いた際に、第3板状ばね60Cの移動量が第1板状ばね60Aおよび第2板状ばね60Bよりも大きい。そこで、第3板状ばね60Cの外周縁および内周縁を第1板状ばね60Aおよび第2板状ばね60Bよりも大きく切り欠く(外側切り欠き部67C、内側切り欠き部78Cを設ける)ことにより、可動体10の揺動時に可動枠60が傾いた場合に、可動枠60と周囲の部品(例えば、コイル53や壁部44)とが接触するおそれを少なくしている。
【0051】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態の振れ補正機能付き光学ユニット1は、可動体10を揺動可能に支持する支持機構であるジンバル機構30の可動枠60が、第1揺動支持部36および第2揺動支持部37によって支持される支点部61よりも内周側に位置する蛇行部63を備える。そして、可動枠60を構成する第1板状ばね60A、第2板状ばね60B、第3板状ばね60Cの蛇行部(蛇行部63A、63B、63C)の断面形状として、第1軸線R1および第2軸線R2と直交する方向を第1方向Q1、第1方向Q1と直交し且つ蛇行部63の蛇行経路Sと直交する方向を第2方向Q2とするとき、各板状ばねの1枚当たりの第1方向Q1の厚さt0よりも、第2方向Q2の厚さt2の方が大きい断面形状を採用している。従って、蛇行部63に平面方向のばね性を持たせつつ、蛇行部63の剛性を適度に高めることができる。よって、外部衝撃による可動体10の移動量を少なくすることができる。
【0052】
本形態では、蛇行部63が3つの湾曲部を備え、直線部66と湾曲状に繋がっている。このように、蛇行回数が少なければ、スペース上の制約があっても蛇行部63を太くすることができる。また、湾曲形状よりもばね性を大きくしつつ、ばね性が過度に大きくなることを抑制できる。従って、外部衝撃が加わった場合の可動体の移動量を少なくすることができる。
【0053】
本形態では、蛇行部63の第2方向Q2の厚さは、直線部66の第2方向Q2の厚さよりも大きい。このようにすると、蛇行部63の剛性を確保し、且つ、直線部66の配置スペースを小さくすることができる。従って、外部衝撃が加わった場合の可動体の移動量を少なくするとともに、装置全体の小型化を図ることができる。
【0054】
本形態では、可動枠60は、第1方向Q1すなわち光軸L方向に重なる複数枚の板状ばね(第1板状ばね60A、第2板状ばね60B、第3板状ばね60C)を備える積層体であり、これら複数枚のうちの2枚(第1板状ばね60Aと第2板状ばね60B)が支点部61で接合され、他の1枚(第3板状ばね60C)が支点部61の周方向の両側で第2板状ばね60Bと接合されている。本形態では、第1板状ばね60A、第2板状ばね60B、第3板状ばね60Cをエッチング加工で製造しているため、幅寸法(太さ)とは無関係に第1方向の厚さt0(板厚)を大きくすることはできないが、複数枚の板状ばねを積層することにより、求める断面形状を実現できる。
【0055】
本形態では、支点部61およびその近傍で第1板状ばね60A、第2板状ばね60B、第3板状ばね60Cを接合するので、荷重がかかる箇所の近傍で接合される。従って、可
動枠60の剛性を高めることができる。具体的には、第1板状ばね60Aと第2板状ばね60Bの薄肉部64A、64Bを重ねた箇所をレーザ溶接により接合し、第3板状ばね60Cの薄肉部64Cを支点部61の周方向の両側で第2板状ばね60Bにレーザ溶接により接合する。このように、薄肉部をレーザ溶接することにより、高出力で溶接を行わなくても確実に接合できる。
【0056】
本形態では、支点部61に溶接された球体38から光軸L方向に最も離れた第3板状ばね60Cに設けられた外側切り欠き部67Cが、他の板状ばねに設けられた外側切り欠き部67A、67Bよりも大きい。また、第3板状ばね60Cに内側切り欠き部68Cが設けられている。従って、可動体10が揺動して可動枠60が傾いた際に、第3板状ばね60Cが他の板状ばねよりも大きく移動したとしても、第3板状ばね60Cと周囲の部品(例えば、コイル53や壁部44)とが接触するおそれが少ない。
【0057】
(変形例)
(1)上記形態は、可動枠60として3枚の板状ばねを積層して接合した積層体を用いるものであったが、板状ばねの枚数は1枚であってもよい。この場合には、蛇行部の第2方向Q2の厚さt2が第1方向Q1の厚さt0よりも大きい1枚の板状ばねを用いるが、第2方向Q2の厚さt2を第1方向Q1の厚さt0の2倍以上にすることが望ましい。これにより、板状ばねを1枚で用いる場合においても剛性を高めることができる。また、板状ばねの枚数は2枚であってもよく、蛇行部の第2方向Q2の厚さt2が板状ばねの1枚当たりの第1方向Q1の厚さt0の2倍以上の板状ばねを2枚積層して接合したものを用いても良い。板状ばねの枚数増加により剛性を高めることができる。あるいは、板状ばねの枚数は4枚以上であってもよい。また、複数枚の板状ばねを積層する場合、板厚は同一でなくてもよい。
【0058】
(2)上記形態は、蛇行部63の形状として、3回湾曲する形状を採用するものであったが、蛇行部63の形状を、可動枠の内周側に1回のみ湾曲する湾曲部に変えてもよい。この場合には、湾曲部の断面形状として、第1方向Q1と直交し且つ湾曲部の湾曲経路と直交する方向を第2方向Q2とし、板状ばねの1枚当たりの第1方向Q1の厚さt0よりも第2方向Q2の厚さt2の方が大きい断面形状を採用すればよい。
【符号の説明】
【0059】
1…振れ補正機能付き光学ユニット、2…光学モジュール、2A…上部モジュール、4…レンズホルダ、10…可動体、11…ウェイト、20…固定体、30…ジンバル機構、31…第1接点バネ保持部、32…第2接点バネ保持部、33…第1接点バネ、34…第2接点バネ、35…接点部、36…第1揺動支持部、37…第2揺動支持部、38…球体、40…ホルダ、41…枠部、42…保持孔、44…壁部、45…コイル保持部、46…切り欠き部、48…固定用凸部、49…ストッパー、50…振れ補正用駆動機構、51…磁気駆動機構、52…磁石、53…コイル、60…可動枠、61、61A、61B、61C…支点部、62、62A、62B、62C…連結部、63、63A、63B、63C…蛇行部、64A、64B、64C…薄肉部、65A、65B、65C…切り欠き部、66…直線部、67、67A、67B、67C…外側切り欠き部、68C…内側切り欠き部、70…バネ部材、71…固定体側連結部、72…可動体側連結部、73…アーム部、75…凹部、80…フレキシブル配線基板、81…矩形枠部分、82…引き回し部、210…第1ケース、211…胴部、212…端板部、214…窓、216…側板部、250…第2ケース、251…第1部材、252…第2部材、254、255…側壁部、631…第1湾曲部、632…第2湾曲部、633…第3湾曲部、L…光軸、Q1…第1方向、Q2…第2方向、R1…第1軸線、R2…第2軸線、S…蛇行経路、t0…板状ばねの1枚当たりの第1方向の厚さ、t1…積層体全体の第1方向の厚さ、t2…第2方向の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6