(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の産業用ロボットにおいて、第2アームとハンドとを個別に回動させる必要がなく第2アームおよびハンドを第1モータで一緒に回動させれば良い場合には、第2モータおよび第2減速機を取り外して、中空回動軸を第1アームの基端側の内部に固定すれば良い。しかしながら、この場合には、第1減速機の出力軸に対して相対回動する中空回動軸が第1減速機の出力軸の内周側に配置されるため、第1減速機の出力軸の外周側に磁性流体シールを配置するのに加えて、第1減速機の出力軸の内周側にも磁性流体シールを配置しなければならない。したがって、この場合には、第1アームと第2アームとの連結部である関節部の構造が複雑になる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、回動可能に連結される第1アームと第2アームとを備える産業用ロボットにおいて、第1アームおよび第2アームが真空中に配置されるとともに、第1アームの内部が大気圧となっており、第2アームの内部が真空となっている場合であっても、第1アームと第2アームとの連結部である関節部の構成を簡素化することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、第1アームと、中空状に形成され第1アームの先端側に基端側が回動可能に連結される第2アームと、第2アームの基端側に固定される回動軸と、
回動軸の外周側に配置され回動軸を回動可能に支持するとともに第1アームの先端側に保持される軸受と、回動軸の外周側に配置されるとともに第1アームの先端側に保持される磁性流体シールと、第2アームの基端側の内部に配置され第2アームの基端側に固定または形成されるかあるいは回動軸に固定される支持軸と、第2アームの基端側に配置され支持軸に回動可能に支持される第1プーリと、第2アームの先端側に配置される
とともに第2アームに対して回動可能な第2プーリと、第1プーリと第2プーリとに架け渡されるベルトと、第1プーリが固定されるとともに第1アームの先端側の外側面に固定される固定部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の産業用ロボットでは、第2アームの基端側に配置される第1プーリが固定部材に固定されており、固定部材は第1アームの先端側の外側面に固定されている。そのため、本発明では、第1プーリと一緒に回動軸に対して相対回動する軸等の部材を回動軸の内周側に配置する必要がなく、その結果、回動軸の内周側に磁性流体シールを配置する必要がない。したがって、本発明では、第1アームおよび第2アームが真空中に配置されるとともに、第1アームの内部が大気圧となっており、かつ、第2アームの内部が真空となっている場合であっても、第1アームと第2アームとの連結部である関節部の構成を簡素化することが可能になる。
【0010】
本発明において、支持軸は、回動軸に固定されていることが好ましい。このように構成すると、支持軸の軸心と回動軸の軸心とを一致させやすくなるため、支持軸に回動可能に支持される第1プーリの軸心と回動軸の軸心とを一致させやすくなる。したがって、第1アームの先端側の外側面に固定される固定部材を介して第1プーリが第1アームの先端側に固定されていても、第1プーリを適切に回動させることが可能になる。
【0011】
本発明において、産業用ロボットは、回動軸を第2アームの基端側に固定するとともに、支持軸を回動軸に固定するネジを備えることが好ましい。このように構成すると、共通のネジによって、第2アームの基端側に回動軸が固定されるとともに回動軸に支持軸が固定されるため、第1アームと第2アームとの連結部である関節部の構成をより簡素化することが可能になる。
【0012】
本発明において、ベルトは、鋼板製のスチールベルトであることが好ましい。このように構成すると、ベルトがゴム製のベルトである場合と比較して、ベルトからの発塵を抑制することが可能になる。一方で、ベルトがスチールベルトである場合には、ベルトがゴム製のベルトである場合と比較して、ベルトが弾性変形しにくいため、第1プーリの軸心と回動軸の軸心とにずれがあると、第1プーリが適切に回動しにくくなりやすいが、支持軸が回動軸に固定されている場合には、第1プーリの軸心と回動軸の軸心とを一致させやすくなるため、ベルトがスチールベルトであっても、第1プーリを適切に回動させることが可能になる。
【0013】
本発明において、第2アームは、第1アームよりも上側に配置され、第2アームの基端側の下面部に回動軸が固定され、第2アームの基端側の上面部分には、第1プーリの上端側部分が配置される開口部が形成され、第1プーリの上端は、第2アームの基端側の上面よりも上側に配置され、固定部材は、第1アームの先端側の外側に固定される側面部と、側面部の上端に繋がる上面部とを備え、上面部は、第2アームの基端側の上面よりも上側に配置され、第1プーリの上端は、上面部に固定されていることが好ましい。このように構成すると、第2アームの基端側と固定部材との干渉を防止しやすくなる。また、このように構成すると、回動軸と上面部とによって上下方向の両側から第2アームの基端側が支持されるため、第2アームの動作を安定させることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明では、回動可能に連結される第1アームと第2アームとを備える産業用ロボットにおいて、第1アームおよび第2アームが真空中に配置されるとともに、第1アームの内部が大気圧となっており、第2アームの内部が真空となっている場合であっても、第1アームと第2アームとの連結部である関節部の構成を簡素化することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。
図2は、
図1に示す産業用ロボット1の側面図である。
図3は、
図2のE部の概略構成を説明するための断面図である。
図4は、
図2のF部の概略構成を説明するための断面図である。
【0018】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である液晶ディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するためのロボットである。このロボット1は、特に大型の基板2の搬送に適した大型のロボットである。また、ロボット1は、真空中で基板2を搬送する。ロボット1は、基板2が搭載される2個のハンド4、5と、2個のハンド4、5のそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個のアーム6、7と、2個のアーム6、7の基端側が回動可能に連結される共通アーム8と、共通アーム8が回動可能に連結される本体部9とを備えている。本形態の共通アーム8は、第1アームであり、アーム6、7は、第2アームである。
【0019】
図2に示すように、ハンド4は、アーム6の先端側に回動可能に連結されている。ハンド5は、アーム7の先端側に回動可能に連結されている。ハンド4は、ハンド5よりも下側に配置されている。アーム6は、ハンド4よりも下側に配置されている。アーム7は、ハンド5よりも上側に配置されている。共通アーム8は、アーム6よりも下側に配置されている。すなわち、アーム6、7は、共通アーム8よりも上側に配置されている。また、共通アーム8は、本体部9よりも上側に配置されている。
【0020】
本体部9は、上下方向を回動の軸方向として共通アーム8を回動させる回動軸(図示省略)と、この回動軸を回動させる回動機構(図示省略)と、この回動機構と一緒に共通アーム8を昇降させる昇降機構(図示省略)と、回動機構や昇降機構が収容されるケース体とを備えている。このケース体は、有底円筒状に形成されるケース本体11と、ケース本体11の上端の開口を覆う蓋体12とから構成されている。蓋体12の中心には、共通アーム8を回動させる回動軸が配置される貫通孔が形成されている。また、蓋体12には、ケース本体11の径方向の外側に広がる鍔部12aが形成されている。
【0021】
上述のように、ロボット1は、真空中で基板2を搬送するためのロボットである。
図2に示すように、ロボット1の、鍔部12aの下面よりも上側の部分は、真空チャンバー13の中に配置されている。すなわち、ロボット1の、鍔部12aの下面よりも上側の部分は、真空領域VRの中(真空中)に配置されている。一方、ロボット1の、鍔部12aの下面よりも下側の部分は、大気領域ARの中(大気中)に配置されている。
【0022】
ハンド4、5は、基板2が搭載される複数のフォーク部15を備えている。アーム6、7は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となるとともに上下方向の厚さが薄いブロック状に形成されている。アーム6の長さとアーム7の長さとは等しくなっている。また、アーム6、7は、中空状に形成されている。中空状に形成されるアーム6、7の内部は真空となっている。共通アーム8は、略V形状に形成されている。略V形状に形成される共通アーム8の中心部分は、本体部9に回動可能に連結されている。また、略V形状に形成される共通アーム8の一方の先端側にアーム6の基端側が回動可能に連結され、共通アーム8の他方の先端側にアーム7の基端側が回動可能に連結されている。
【0023】
アーム6と共通アーム8との連結部は、関節部16となっている。アーム7と共通アーム8との連結部は、関節部17となっている。また、ロボット1は、アーム6に対してハンド4を回動させるとともに共通アーム8に対してアーム6を回動させる駆動機構18(
図3参照)と、アーム7に対してハンド5を回動させるとともに共通アーム8に対してアーム7を回動させる駆動機構19(
図4参照)とを備えている。以下、共通アーム8の具体的な構成および駆動機構18、19の構成について説明する。
【0024】
(共通アームおよび駆動機構の構成)
図5は、
図3のG部の拡大図である。
図6は、
図4のH部の拡大図である。
【0025】
共通アーム8は、本体部9に連結される基端部22と、アーム6、7の基端側のそれぞれが連結される2個の先端部23、24と、2個の先端部23、24のそれぞれと基端部22とを繋ぐ2個の連結部25、26とを備えている。本形態では、基端部22と2個の先端部23、24と2個の連結部25、26とによって共通アーム8が構成されている。先端部23には、アーム6の基端側が連結され、先端部24には、アーム7の基端側が連結されている。連結部25は、基端部22と先端部23とを繋ぎ、連結部26は、基端部22と先端部24とを繋いでいる。
【0026】
基端部22と2個の先端部23、24と2個の連結部25、26とは別体で形成されており、基端部22と2個の先端部23、24と2個の連結部25、26とが固定されて一体化されることで共通アーム8が構成されている。基端部22と先端部23、24と連結部25、26とは、アルミニウム合金またはステンレス鋼で形成されている。また、基端部22と先端部23、24と連結部25、26とは、中空状に形成されている。すなわち、共通アーム8は、中空状に形成されている。共通アーム8の内部は、大気圧となっている。
【0027】
基端部22は、上下方向から見たときの形状が略五角形状となるブロック状に形成されている。基端部22の下面の中心には、本体部9の回動軸の上端が固定されている。先端部23、24は、上下方向から見たときの形状が略長方形状となるブロック状に形成されている。連結部25、26は、筒状に形成されるパイプであり、細長い円筒状に形成されている。連結部25、26の長さは、たとえば、4(m)となっている。
【0028】
連結部25の一端は、基端部22にネジ(図示省略)によって固定され、連結部25の他端は、先端部23にネジ(図示省略)によって固定されている。連結部26の一端は、基端部22にネジ(図示省略)によって固定され、連結部26の他端は、先端部24にネジ(図示省略)によって固定されている。なお、連結部25、26の両端には、径方向の外側に広がる鍔部が形成されている。
【0029】
駆動機構18は、アーム6に対してハンド4を回動させるとともに共通アーム8に対してアーム6を回動させるモータ30と、モータ30に連結される減速機31とを備えている。減速機31は、減速機31の出力軸となる回動軸32と、回動軸32を回動可能に支持する軸受33と、回動軸32の外周側に配置される磁性流体シール34とを備えている。また、駆動機構18は、減速機31の入力軸35に固定されるプーリ36と、アーム6の基端側の内部に配置される第1プーリとしてのプーリ37と、アーム6の先端側の内部に配置される第2プーリとしてのプーリ38とを備えている。本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように、プーリ37のピッチ円径とプーリ38のピッチ円径との比が1:2に設定されている。
【0030】
減速機31は、中空波動歯車装置であり、関節部16に配置されている。この減速機31は、上述の回動軸32、軸受33および磁性流体シール34に加えて、剛性内歯歯車41と、可撓性外歯歯車42と、入力軸35の外周側に取り付けられるウエーブベアリング43とを備えている。また、減速機31は、軸受33および磁性流体シール34を保持するケース体44を備えている。
【0031】
ケース体44は、全体として略円筒状に形成されている。ケース体44の上端側部分は、先端部23の上面部分に固定されており、ケース体44は、先端部23に保持されている。すなわち、軸受33および磁性流体シール34は、ケース体44を介して先端部23(すなわち、共通アーム8の一方の先端側)に保持されている。また、減速機31の、ケース体44の上端側部分と回動軸32の上端側部分とを除いた部分は、先端部23の内部に配置されている。
【0032】
軸受33は、クロスローラベアリングである。軸受33の外輪は、ケース体44の上端側部分に固定されている。軸受33の内輪は、回動軸32に固定されている。回動軸32は、磁性材料で形成されている。また、回動軸32は、中空状に形成されている。回動軸32の上端側には、回動軸32の内周側を塞ぐ蓋45が固定されている。蓋45は、円板状に形成されており、回動軸32の上端側の内周面に固定されている。蓋45の外周面と回動軸32の内周面との間には、Oリング等のシール部材(図示省略)が配置されている。回動軸32は、アーム6の基端側に固定されている。具体的には、回動軸32の上端がアーム6の基端側の下面部に固定されている。回動軸32の上端面は、アーム6の基端側の下面に接触している。
【0033】
磁性流体シール34は、複数の磁石と、複数の磁石のそれぞれを上下方向で挟むように配置される円環状のポールピースと、ポールピースの内周面と回動軸32の外周面との間に保持される磁性流体とを備えている。磁性流体シール34の磁石およびポールピースは、ケース体44の上端側部分の内周面に固定されている。磁性流体シール34は、軸受33の上側に配置されている。また、磁性流体シール34は、アーム6の上面よりも上側に配置されている。
【0034】
入力軸35は、中空状に形成されている。入力軸35は、軸受を介してケース体44の下端側部分に回転可能に支持されている。入力軸35には、上下方向から見たときの外周面の形状が楕円形状となる楕円部が形成されている。剛性内歯歯車41は、ケース体44の下端側部分に固定されている。剛性内歯歯車41の内周面には、内歯が形成されている。可撓性外歯歯車42の上端側部分は、回動軸32の下端に固定されている。可撓性外歯歯車42の下端側部分の外周面には、剛性内歯歯車41の内歯と噛み合う外歯が形成されている。可撓性外歯歯車42は、入力軸35に対して相対回転可能となっている、
【0035】
ウエーブベアリング43は、可撓性の内輪および外輪を備えたボールベアリングである。このウエーブベアリング43は、入力軸35の楕円部の外周面に沿って配置されており、楕円状に撓んでいる。可撓性外歯歯車42の、外歯が形成される下端側部分は、ウエーブベアリング43を囲むようにウエーブベアリング43の外周側に配置されており、この部分は、楕円状に撓んでいる。可撓性外歯歯車42の外歯は、楕円状に撓む可撓性外歯歯車42の下端側部分の長軸方向の2か所で、剛性内歯歯車41の内歯と噛み合っている。
【0036】
モータ30は、先端部23に固定されている。また、モータ30は、先端部23の内部に配置されるとともに、減速機31よりも連結部25側に配置されている。モータ30の出力軸には、プーリ46が固定されている。プーリ36は、入力軸35の下端に固定されている。プーリ36とプーリ46とにベルト47が架け渡されている。ベルト47は、ゴム製のベルトである。プーリ36、46およびベルト47は、先端部23の内部に配置されている。
【0037】
アーム6の基端側の内部には、プーリ37を回動可能に支持する支持軸50が配置されている。支持軸50は、下端に鍔部50aを有する鍔付きの円筒状に形成されている。また、支持軸50は、アーム6の基端側の下面部の上側に配置されており、アーム6の下面部から立ち上がるように配置されている。本形態では、アーム6の基端側の内部に配置されるネジ51によって、回動軸32と支持軸50とアーム6の基端側の下面部とが互いに固定されている。
【0038】
具体的には、アーム6の基端側の下面部および鍔部50aに、ネジ51の軸部が挿通される挿通穴が形成され、回動軸32の上端面に、ネジ51が係合するネジ穴が形成されている。すなわち、支持軸50は(具体的には、鍔部50aは)、鍔部50aと回動軸32の上端との間にアーム6の基端側の下面部を挟んだ状態で回動軸32に固定されている。また、ネジ51は、回動軸32をアーム6の基端側に固定するとともに、支持軸50を回動軸32に固定している。また、支持軸50は、支持軸50の軸心と回動軸32の軸心とが一致するように回動軸32に固定されている。
【0039】
プーリ37は、軸受を介して支持軸50に回動可能に支持されている。また、プーリ37は、固定部材53を介して先端部23に固定されている。すなわち、プーリ37は、固定部材53を介して共通アーム8の一方の先端側に固定されている。固定部材53は、アーム6および共通アーム8の外部に配置されている。また、固定部材53は、関節部16の外部に配置されている。固定部材53は、共通アーム8の一方の先端側の外側面に固定される側面部53aと、側面部53aの上端に繋がる上面部53bとから構成されている。側面部53aおよび上面部53bは、平板状に形成されている。
【0040】
側面部53aの下端側は、共通アーム8の一方の先端面に固定されている。すなわち、固定部材53は、共通アーム8の一方の先端側の外側面に固定されている。また、側面部53aは、関節部16よりも共通アーム8の先端側に配置されている。上面部53bは、側面部53aの上端に固定されている。上面部53bは、上面部53bの厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、上面部53bは、アーム6の基端側の上面よりも上側に配置されている。具体的には、上面部53bは、アーム6の基端側の上面よりもわずかに上側に配置されている。なお、本形態では、別体で形成された側面部53aと上面部53bとが互いに固定されているが、側面部53aと上面部53bとが一体で形成されていても良い。
【0041】
アーム6の基端側の上面部分には、
図5に示すように、プーリ37の上端側部分が配置される開口部6aが形成されている。プーリ37の上端は、アーム6の基端側の上面よりも上側に配置されている。具体的には、プーリ37の上端は、アーム6の基端側の上面よりもわずかに上側に配置されている。また、プーリ37の上端は、上面部53bに固定されている。すなわち、プーリ37は、固定部材53に固定されている。プーリ37の上端面は、上面部53bの下面に接触している。
【0042】
アーム6の先端側の内部には、プーリ38を回動可能に支持する支持軸58が固定されている。支持軸58は、アーム6の先端側の下面部から立ち上がっている。プーリ38は、軸受を介して支持軸58に回動可能に支持されている。また、プーリ38の上端には、ハンド4の基端側が固定されている。プーリ37とプーリ38とには、ベルト60が架け渡されている。本形態では、上下方向で重なるように配置される2本のベルト60がプーリ37とプーリ38とに架け渡されている。ベルト60は、鋼板製のスチールベルトである。ベルト60は、図示を省略するネジによって、プーリ37、38に固定されている。
【0043】
駆動機構19は、駆動機構18とほぼ同様に構成されている。したがって、以下の駆動機構19の説明では、主として、駆動機構18と駆動機構19との相違点を説明する。駆動機構19は、アーム7に対してハンド5を回動させるとともに共通アーム8に対してアーム7を回動させるモータ30と、モータ30に連結される減速機31とを備えている。また、駆動機構19は、減速機31の入力軸35に固定されるプーリ36と、アーム7の基端側の内部に配置される第1プーリとしてのプーリ37と、アーム7の先端側の内部に配置される第2プーリとしてのプーリ78とを備えている。本形態では、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように、プーリ37のピッチ円径とプーリ78のピッチ円径との比が1:2に設定されている。
【0044】
駆動機構19の減速機31は、関節部17に配置されている。駆動機構19では、減速機31のケース体44の上端側部分は、先端部24の上面部分に固定されており、ケース体44は、先端部24に保持されている。すなわち、軸受33および磁性流体シール34は、ケース体44を介して先端部24(すなわち、共通アーム8の他方の先端側)に保持されている。また、駆動機構19では、減速機31の、ケース体44の上端側部分と回動軸32の上端側部分とを除いた部分は、先端部24の内部に配置されている。また、磁性流体シール34は、アーム7の上面よりも上側に配置されている。
【0045】
駆動機構19では、回動軸32の上端に、中空状に形成される回動軸79の下端が固定されている。回動軸79は、回動軸32の軸心と回動軸79の軸心とが一致するように回動軸32に固定されている。回動軸79は、アーム7の基端側に固定されている。具体的には、回動軸79の上端がアーム7の基端側の下面部に固定されている。すなわち、回動軸32は、回動軸79を介して、アーム7の基端側に固定されている。回動軸79の上端面は、アーム7の基端側の下面に接触している。なお、回動軸32と回動軸79とは一体で形成されていても良い。
【0046】
また、駆動機構19では、モータ30は、先端部24に固定されている。モータ30は、先端部24の内部に配置されるとともに、減速機31よりも連結部26側に配置されている。また、駆動機構19では、プーリ36、46およびベルト47は、先端部24の内部に配置されている。
【0047】
アーム7の基端側の内部には、プーリ37を回動可能に支持する支持軸50が配置されている。支持軸50は、アーム7の基端側の下面部の上側に配置されており、アーム7の下面部から立ち上がるように配置されている。本形態では、アーム7の基端側の内部に配置されるネジ51によって、回動軸79と支持軸50とアーム7の基端側の下面部とが互いに固定されている。具体的には、アーム7の基端側の下面部および鍔部50aに、ネジ51の軸部が挿通される挿通穴が形成され、回動軸79の上端面に、ネジ51が係合するネジ穴が形成されている。
【0048】
すなわち、支持軸50は(具体的には、鍔部50aは)、鍔部50aと回動軸79の上端との間にアーム7の基端側の下面部を挟んだ状態で回動軸79に固定されており、回動軸79を介して回動軸32に固定されている。また、ネジ51は、回動軸79をアーム7の基端側に固定するとともに、支持軸50を回動軸79に固定している。すなわち、ネジ51は、回動軸79を介して回動軸32をアーム7の基端側に固定するとともに、回動軸79を介して支持軸50を回動軸32に固定している。また、支持軸50は、支持軸50の軸心と回動軸79の軸心と回動軸32の軸心とが一致するように回動軸79に固定されている。
【0049】
アーム7の基端側の内部に配置されるプーリ37は、固定部材83を介して先端部24に固定されている。すなわち、このプーリ37は、固定部材83を介して共通アーム8の他方の先端側に固定されている。固定部材83は、アーム7および共通アーム8の外部に配置されている。また、固定部材83は、関節部17の外部に配置されている。固定部材83は、共通アーム8の他方の先端側の外側面に固定される側面部83aと、側面部83aの上端に繋がる上面部83bとから構成されている。側面部83aおよび上面部83bは、平板状に形成されている。
【0050】
側面部83aの下端側は、共通アーム8の他方の先端面に固定されている。すなわち、固定部材83は、共通アーム8の他方の先端側の外側面に固定されている。また、側面部83aは、関節部17よりも共通アーム8の先端側に配置されている。上面部83bは、側面部83aの上端に固定されている。上面部83bは、上面部83bの厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、上面部83bは、アーム7の基端側の上面よりも上側に配置されている。具体的には、上面部83bは、アーム7の基端側の上面よりもわずかに上側に配置されている。なお、本形態では、別体で形成された側面部83aと上面部83bとが互いに固定されているが、側面部83aと上面部83bとが一体で形成されていても良い。
【0051】
アーム7の基端側の上面部分には、
図6に示すように、プーリ37の上端側部分が配置される開口部7aが形成されている。プーリ37の上端は、アーム7の基端側の上面よりも上側に配置されている。具体的には、プーリ37の上端は、アーム7の基端側の上面よりもわずかに上側に配置されている。また、プーリ37の上端は、上面部83bに固定されている。すなわち、プーリ37は、固定部材83に固定されている。プーリ37の上端面は、上面部83bの下面に接触している。
【0052】
アーム7の先端側の内部には、プーリ78を回動可能に支持する支持軸部7bが形成されている。支持軸部7bは、円筒状に形成されており、アーム7の先端側の下面部から立ち上がっている。プーリ78は、軸受を介して支持軸部7bに回動可能に支持されている。また、プーリ78の下端には、ハンド5の基端側が固定されている。プーリ37とプーリ78とには、上下方向で重なるように配置される2本のベルト60が架け渡されている。ベルト60は、図示を省略するネジによって、プーリ37、78に固定されている。
【0053】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、アーム6の基端側に配置されるプーリ37は、固定部材53を介して共通アーム8の一方の先端側に固定されており、固定部材53は、関節部16の外部に配置されている。また、本形態では、アーム7の基端側に配置されるプーリ37は、固定部材83を介して共通アーム8の他方の先端側に固定されており、固定部材83は、関節部17の外部に配置されている。すなわち、本形態では、プーリ37と一緒に回動軸32に対して相対回動する軸等の部材が回動軸32の内周側に配置されていない。そのため、本形態では、回動軸32の内周側に磁性流体シールを配置する必要がない。したがって、本形態では、アーム6、7および共通アーム8が真空中に配置されるとともに、共通アーム8の内部が大気圧となっており、かつ、アーム6、7の内部が真空となっている場合であっても、関節部16、17の構成を簡素化することが可能になる。
【0054】
本形態では、プーリ37が回動可能に支持される支持軸50は、回動軸32に固定されている。そのため、本形態では、支持軸50の軸心と回動軸32の軸心とを一致させやすくなり、その結果、プーリ37の軸心と回動軸32の軸心とを一致させやすくなる。したがって、本形態では、固定部材53、83を介してプーリ37が共通アーム8の先端側に固定されていても、プーリ37を適切に回動させることが可能になる。
【0055】
本形態では、共通のネジ51によって、回動軸32と支持軸50とアーム6の基端側の下面部とが互いに固定されている。そのため、本形態では、回動軸32をアーム6の基端側に固定するネジと、支持軸50を回動軸32に固定するネジとが個別に設けられている場合と比較して、関節部16の構成を簡素化することが可能になる。同様に、本形態では、共通のネジ51によって、回動軸79と支持軸50とアーム7の基端側の下面部とが互いに固定されているため、回動軸79をアーム7の基端側に固定するネジと、支持軸50を回動軸79に固定するネジとが個別に設けられている場合と比較して、関節部17の構成を簡素化することが可能になる。
【0056】
本形態では、ベルト60は、スチールベルトである。そのため、本形態では、ベルト60がゴム製のベルトである場合と比較して、ベルト60からの発塵を抑制することが可能になる。なお、ベルト60がスチールベルトである場合には、ベルト60がゴム製のベルトである場合と比較して、ベルト60が弾性変形しにくいため、プーリ37の軸心と回動軸32の軸心とにずれがあると、プーリ37が適切に回動しにくくなりやすいが、本形態では、プーリ37の軸心と回動軸32の軸心とを一致させやすくなるため、ベルト60がスチールベルトであっても、プーリ37を適切に回動させることが可能になる。
【0057】
本形態では、固定部材53は、共通アーム8の一方の先端面に固定される平板状の側面部53aと、側面部53aの上端に固定されるとともにアーム6の基端側の上面よりも上側に配置される平板状の上面部53bとによって構成されている。そのため、本形態では、アーム6の基端側と固定部材53との干渉を防止しやすくなる。同様に、本形態では、固定部材83が、共通アーム8の他方の先端面に固定される平板状の側面部83aと、側面部83aの上端に固定されるとともにアーム7の基端側の上面よりも上側に配置される平板状の上面部83bとによって構成されているため、アーム7の基端側と固定部材83との干渉を防止しやすくなる。
【0058】
本形態では、軸受33を介して共通アーム8の一方の先端側に回動可能に保持される回動軸32の上端がアーム6の基端側の下面部に固定されるとともに、アーム6の基端側の内部に配置される支持軸50に回動可能に支持されるプーリ37の上端が、共通アーム8の一方の先端側に固定される固定部材53の上面部53bに固定されている。すなわち、本形態では、回動軸32と上面部53bとによって上下方向の両側からアーム6の基端側が支持されている。そのため、本形態では、アーム6の動作を安定させることが可能になる。
【0059】
また、本形態では、軸受33を介して共通アーム8の他方の先端側に回動可能に保持される回動軸32、79の上端がアーム7の基端側の下面部に固定されるとともに、アーム7の基端側の内部に配置される支持軸50に回動可能に支持されるプーリ37の上端が、共通アーム8の他方の先端側に固定される固定部材83の上面部83bに固定されている。すなわち、本形態では、回動軸32、79と上面部83bとによって上下方向の両側からアーム7の基端側が支持されている。そのため、本形態では、アーム7の動作を安定させることが可能になる。
【0060】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0061】
上述した形態では、共通のネジ51によって、回動軸32と支持軸50とアーム6の基端側の下面部とが互いに固定されているが、アーム6の基端側に回動軸32を固定するネジと、回動軸32に支持軸50を固定するネジとが個別に設けられていても良い。この場合には、支持軸50は、鍔部50aの下面と回動軸32の上端とが接触するように回動軸32に固定されても良い。
【0062】
同様に、上述した形態では、共通のネジ51によって、回動軸79と支持軸50とアーム7の基端側の下面部とが互いに固定されているが、アーム7の基端側に回動軸79を固定するネジと、回動軸79に支持軸50を固定するネジとが個別に設けられていても良い。この場合には、支持軸50は、鍔部50aの下面と回動軸79の上端とが接触するように回動軸79に固定されても良い。
【0063】
上述した形態では、駆動機構18において、支持軸50は、回動軸32に固定されているが、支持軸50は、アーム6の基端側の下面部に固定されていても良い。この場合には、アーム6の基端側に回動軸32を固定するネジと、アーム6の基端側に支持軸50を固定するネジとが個別に設けられている。この場合であっても、支持軸50は、支持軸50の軸心と回動軸32の軸心とが一致するようにアーム6の基端側に固定される。また、支持軸50に相当する支持軸がアーム6の基端側の内部に形成されても良い。この場合には、この支持軸の軸心と回動軸32の軸心とが一致するようにアーム6の基端側の内部に支持軸が形成される。
【0064】
同様に、駆動機構19において、支持軸50は、アーム7の基端側の下面部に固定されていても良い。この場合には、アーム7の基端側に回動軸79を固定するネジと、アーム7の基端側に支持軸50を固定するネジとが個別に設けられている。この場合であっても、支持軸50は、支持軸50の軸心と回動軸79の軸心と回動軸32の軸心とが一致するようにアーム7の基端側に固定される。また、支持軸50に相当する支持軸がアーム7の基端側の内部に形成されても良い。この場合には、支持軸の軸心と回動軸79の軸心と回動軸32の軸心とが一致するようにアーム7の基端側の内部に支持軸が形成される。
【0065】
上述した形態では、固定部材53の側面部53aは、共通アーム8の一方の先端面に固定されているが、側面部53aは、先端部23の上面に固定されていても良い。同様に、上述した形態では、固定部材83の側面部83aは、共通アーム8の他方の先端面に固定されているが、側面部83aは、先端部24の上面に固定されていても良い。また、上述した形態では、ベルト60は、スチールベルトであるが、ベルト60は、ゴム製のベルトであっても良い。
【0066】
上述した形態では、ハンド4と共通アーム8との間に1個のアーム6が配置され、ハンド5と共通アーム8との間に1個のアーム7が配置されているが、ハンド4、5と共通アーム8との間に2個以上のアームが配置されても良い。また、上述した形態では、共通アーム8は、略V形状に形成されているが、共通アーム8は、直線状に形成されていても良い。さらに、上述した形態では、ロボット1は、2個のアーム6、7が回動可能に連結される共通アーム8を備えているが、ロボット1は、共通アーム8に代えて、1個のアーム6またはアーム7が先端側に回動可能に連結されるとともに基端側が本体部9に回動可能に連結されるアームを備えていても良い。
【0067】
上述した形態では、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、液晶ディスプレイ用のガラス基板であるが、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ用のガラス基板であっても良いし、半導体ウエハ等であっても良い。