特許第6709135号(P6709135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709135
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】可変容量型ベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/22 20060101AFI20200601BHJP
   F04C 2/344 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   F04C14/22 D
   F04C2/344 331D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-182113(P2016-182113)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-44536(P2018-44536A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100197516
【弁理士】
【氏名又は名称】秋岡 範洋
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 浩一朗
(72)【発明者】
【氏名】五味 裕希
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 文彦
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−194390(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/017710(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/097637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/22
F04C 2/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に連結されたロータと、
前記ロータに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記ベーンの先端が摺動する内周面を有し、前記ロータに対して偏心可能に設けられるカムリングと、
前記カムリングを収容する収容部材と、
前記カムリングと前記収容部材との間に圧縮状態で介装され、前記カムリングを前記ロータに対する偏心量が大きくなる方向に付勢する付勢部材と、
前記収容部材を挟むようにそれぞれ前記収容部材の両側面に当接して設けられる第1及び第2ハウジングと、
前記付勢部材を収容する収容室と、を備え、
前記収容室における前記付勢部材を囲う内周壁は、前記収容部材の前記両側面に対向する第1ハウジングの第1内面及び前記第2ハウジングの第2内面と、互いに対向して前記収容部材に形成される第3内面及び第4内面と、を有し、
前記第1内面及び前記第2内面のそれぞれには、
前記付勢部材における前記収容部材に着座する端部を支持する支持部と、
前記支持部から前記付勢部材の付勢方向に延びて形成され前記支持部よりも前記付勢部材から離れて形成される逃げ部と、が設けられることを特徴とする可変容量型ベーンポンプ。
【請求項2】
前記収容部材の前記第3内面及び前記第4内面のそれぞれにも、前記支持部及び前記逃げ部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型ベーンポンプ。
【請求項3】
前記付勢部材は、コイルスプリングであり、
前記支持部は、前記コイルスプリングの付勢方向に沿った長さが、前記コイルスプリングの座巻の長さと同一に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の可変容量型ベーンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型ベーンポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ収容室を有する断面コ字形状のポンプボディ及び該ポンプボディの一端開口を閉塞するカバー部材からなるハウジングと、ポンプ収容室内に回転自在に収容されて中心部が駆動軸に結合されたロータ及び該ロータの外周部に放射状に切欠形成された複数のスリット内にそれぞれ出没自在に収容されたベーンからなるポンプ要素と、該ポンプ要素の外周側にロータの回転中心に対して偏心可能に配置され、ロータ及び隣接するベーンと共に複数の作動油室であるポンプ室を画成するカムリングと、ポンプボディ内に収容され、ロータの回転中心に対するカムリングの偏心量が増大する方向へ当該カムリングを常時付勢する付勢部材であるスプリングと、を備える可変容量型ベーンポンプが開示されている。
【0003】
また、特許文献1には、カムリングは、外周部の所定位置に突設され偏心揺動支点を構成するピボット部と、該ピボット部に対しカムリングの中心を挟んで反対側の位置に突設されスプリングと連係するアーム部と、を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−057326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の可変容量型ベーンポンプでは、ロータに対してカムリングが揺動することにより、ポンプ室の吐出容量が変化する。このようなカムリングの揺動に伴い、ポンプボディ内に圧縮状態で組み込まれた付勢部材(スプリング)は伸縮する。しかしながら、例えば、付勢部材がポンプボディ内で傾いた場合などには、伸縮する付勢部材がポンプボディや、ポンプボディに取り付けられるポンプカバーと接触し摩擦が生じることがある。付勢部材の伸縮時におけるポンプボディやポンプカバーとの接触は、付勢部材の付勢力を受けるカムリングの揺動動作に影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、可変容量型ベーンポンプにおけるカムリングの動作の安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、可変容量型ベーンポンプであって、駆動軸に連結されたロータと、ロータに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーンと、ロータの回転に伴ってベーンの先端が摺動する内周面を有し、ロータに対して偏心可能に設けられるカムリングと、カムリングを収容する収容部材と、カムリングと収容部材との間に圧縮状態で介装され、カムリングをロータに対する偏心量が大きくなる方向に付勢する付勢部材と、収容部材を挟むようにそれぞれ収容部材の両側面に当接して設けられる第1及び第2ハウジングと、付勢部材を収容する収容室と、を備え、収容室における付勢部材を囲う内周壁は、収容部材の両側面に対向する第1ハウジングの第1内面及び第2ハウジングの第2内面と、互いに対向して収容部材に形成される第3内面及び第4内面と、を有し、第1内面及び第2内面のそれぞれには、付勢部材における収容部材に着座する端部を支持する支持部と、支持部から付勢部材の付勢方向に延びて形成され支持部よりも付勢部材から離れて形成される逃げ部と、が設けられることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、カムリングを収容する収容部材と、収容部材を挟むように設けられる第1ハウジング及び第2ハウジングと、を備える可変容量型ベーンポンプにおいて、第1ハウジング及び第2ハウジングには、付勢部材から離れる逃げ部が形成される。これにより、例えば、付勢部材が傾いた状態で伸縮する場合であっても、逃げ部によって付勢部材と第1ハウジングや第2ハウジングとの接触が防止される。
【0009】
第2の発明は、収容部材の第3内面及び第4内面のそれぞれにも、支持部及び逃げ部が設けられることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、逃げ部によって付勢部材と収容部材との接触が防止されて、摩擦の発生が防止される。
【0011】
第3の発明は、付勢部材が、コイルスプリングであり、支持部は、コイルスプリングの付勢方向に沿った長さが、コイルスプリングの座巻の長さと同一に形成されることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、ばねとして伸縮作動する有効部分全体が逃げ部に臨むため、コイルスプリングの伸縮による摩擦の発生がより確実に防止される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可変容量型ベーンポンプにおけるカムリングの動作の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る可変容量型ベーンポンプの平面図であり、ポンプカバーを外した状態を示す。
図2図1におけるII−II線に沿った断面図である。
図3図1におけるIII−III線に沿った断面図である。
図4図3におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0016】
まず、図1及び2を参照して、本発明の実施形態に係る可変容量型ベーンポンプ(以下、単に「ベーンポンプ」と称する。)100の全体構成について説明する。
【0017】
ベーンポンプ100は、車両に搭載される流体圧機器、例えば、無段変速機等の流体圧供給源として用いられる。
【0018】
ベーンポンプ100は、駆動軸1の端部にエンジン(図示省略)の動力が伝達され、駆動軸1に連結されたロータ2の回転に伴い、作動流体としての作動油を吸い込んで吐出するものである。ロータ2は、図1において矢印で示すように反時計回りに回転する。
【0019】
図1及び図2に示すように、ベーンポンプ100は、ロータ2に対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン3と、ロータ2を収容すると共にロータ2の回転に伴ってベーン3の先端が摺動する内周面であるカム面4aを有しロータ2の中心に対して偏心可能なカムリング4と、駆動軸1が挿通し駆動軸1を回転自在に支持する第1ハウジングとしての第1ポンプボディ10と、カムリング4を収容する収容部材としての第2ポンプボディ20と、第1ポンプボディ10と共に第2ポンプボディ20を挟むように設けられ第2ポンプボディ20の開口を封止する第2ハウジングとしてのポンプカバー15と、を備える。第1ポンプボディ10及びポンプカバー15は、第2ポンプボディ20を挟むようにそれぞれ第2ポンプボディ20の両側面20a,20bに当接して設けられる(図2参照)。
【0020】
図1に示すように、ロータ2には、外周面に開口するスリット7が所定間隔をおいて放射状に形成される。スリット7には、ベーン3が往復動自在に挿入される。スリット7内には、吐出圧が導かれる背圧室8がベーン3の基端部によって区画される。
【0021】
ベーン3は、背圧室8に導かれる作動油の圧力によって、スリット7から抜け出る方向に押圧され、先端部がカムリング4のカム面4aに当接する。これにより、カムリング4の内部には、ロータ2の外周面、カムリング4のカム面4a、及び隣り合うベーン3によって複数のポンプ室9が区画される。
【0022】
カムリング4は、ベーン3の先端が摺接する内周面であるカム面4aを有する略環状の本体部5と、本体部5から径方向に延びて形成されるレバー部6と、を有する。レバー部6は、基端が本体部5に接続され、先端には後述するスプリング27が着座する略平面状の着座面6aが形成される。
【0023】
また、カムリング4は、ロータ2の回転に伴ってカム面4aを摺動する各ベーン3間に区画されるポンプ室9の容積を拡張する吸込領域と、ポンプ室9の容積を収縮する吐出領域と、を有する。このように、各ポンプ室9は、ロータ2の回転に伴って拡縮する。
【0024】
図2に示すように、第1ポンプボディ10における第2ポンプボディ20に対向する端面(対向面)10aには、ロータ2及びカムリング4に対向する位置に収容凹部10bが形成される。収容凹部10bには、ロータ2及びカムリング4の一側面(図2では右側面)に当接するサイドプレート11が配置される。サイドプレート11は、第1ポンプボディ10において第2ポンプボディ20に対向する対向面10aと略同一面となるように形成される。ロータ2及びカムリング4の他側面(図1では左側面)には、ポンプカバー15が当接して配置される。サイドプレート11とポンプカバー15とは、ロータ2及びカムリング4の両側面を挟んだ状態で配置され、ポンプ室9を密閉する。なお、本実施形態では、ポンプカバー15がロータ2及びカムリング4の他側面に当接してポンプ室9を密閉するが、ポンプカバー15にロータ2及びカムリング4の他側面に当接するサイドプレートを設け、このサイドプレートでポンプ室9を密閉してもよい。
【0025】
ポンプカバー15には、ポンプ室9の吸込領域に対応して円弧状に開口する吸込ポート16と、タンク(図示省略)と連通し、吸込ポート16を通じてタンクの作動油をポンプ室9へと導く吸込通路17と、が形成される。また、サイドプレート11には、ポンプ室9の吐出領域に対応して円弧状に開口する吐出ポート12が貫通して形成される。
【0026】
第1ポンプボディ10には、吐出領域にあるポンプ室9から吐出される作動油が導かれる高圧室13が形成される。ポンプ室9から吐出される作動油は、サイドプレート11に形成される吐出ポート12を通じて高圧室13に導かれる。高圧室13に導かれた作動油は、第1ポンプボディ10に形成され高圧室13に連通する吐出通路(図示省略)を通じて外部の油圧機器へと供給される。
【0027】
ベーンポンプ100は、ロータ2の回転に伴って、カムリング4の吸込領域における各ポンプ室9にて吸込ポート16及び吸込通路17を通じてタンクから作動油を吸込むと共に、カムリング4の吐出領域における各ポンプ室9から吐出ポート12及び吐出通路を通じて作動油を外部へ吐出する。このように、ベーンポンプ100は、ロータ2の回転に伴う各ポンプ室9の拡縮によって作動油を給排する。
【0028】
第2ポンプボディ20は、カムリング4を収容する収容部材であると共にカムリング4を揺動自在に支持するアダプタリングとしても機能する。第2ポンプボディ20の内周面には、図1に示すように、カムリング4を支持する支持ピン21が設けられる。カムリング4は第2ポンプボディ20の内部で支持ピン21を支点に揺動し、ロータ2の中心に対して偏心する。このように、支持ピン21が、カムリング4の揺動支点である。
【0029】
第2ポンプボディ20の内周面には、ロータ2に対する偏心量が小さくなる方向のカムリング4の移動を規制する第1規制部22と、ロータ2に対する偏心量が大きくなる方向のカムリング4の移動を規制する第2規制部23と、がそれぞれ膨出して形成される。つまり、第1規制部22はロータ2に対するカムリング4の最小偏心量を規定し、第2規制部23はロータ2に対するカムリング4の最大偏心量を規定する。
【0030】
第2ポンプボディ20の内周面における支持ピン21と軸対称の位置には、カムリング4の揺動時にカムリング4の本体部5の外周面が摺接するシール材24が装着される。
【0031】
このように、カムリング4の外周面と第2ポンプボディ20の内周面との間であるカムリング4の外側の外周収容空間には、支持ピン21とシール材24とによって、第1流体圧室25と第2流体圧室26とが区画される。なお、これに限らず、第2ポンプボディ20とは別にアダプタリングを設け、カムリング4の外周面とアダプタリングの内周面との間に、第1流体圧室25と第2流体圧室26とを区画してもよい。
【0032】
第2ポンプボディ20の内周面には、付勢部材としてのコイルスプリング(以下、単に「スプリング」と称する。)27を収納するスプリング収納部28が形成される。第2ポンプボディ20のスプリング収納部28が第1ポンプボディ10及びポンプカバー15によって封止されることで、スプリング27を収容する収容室29が区画される。収容室29は、第1流体圧室25に連通する。また、スプリング収納部28には、レバー部6の先端も収容される。
【0033】
スプリング27は、カムリング4のレバー部6と第2ポンプボディ20のスプリング収納部28との間に圧縮状態で介装される。具体的には、スプリング27では、一端部27a(図1中下端)が、第2ポンプボディ20においてスプリング収納部28の一部である着座面28aに着座し、他端部27b(図1中上端)が、レバー部6の先端に形成される着座面6aに着座する。スプリング27は、ロータ2に対するカムリング4の偏心量が大きくなる方向にカムリング4のレバー部6を付勢する。スプリング27を収容する収容室29については、後に詳細を説明する。
【0034】
第1流体圧室25は、タンクから作動油を吸い込む吸込通路17(図2参照)に連通する。第2流体圧室26には、制御弁(図示省略)によって圧力が制御されたポンプ室9の吐出圧が導かれる。第2流体圧室26に導かれる作動油の圧力は、吸込通路17の圧力よりも高いため、カムリング4には、圧力差によってロータ2に対する偏心量が小さくなる方向の推力が作用する。よって、カムリング4は、第1流体圧室25と第2流体圧室26との圧力差による推力及びスプリング27の付勢力がバランスするように、支持ピン21を支点に揺動する。カムリング4が支持ピン21を支点に揺動することによって、ロータ2に対するカムリング4の偏心量が変化し、ポンプ室9の吐出容量が変化する。
【0035】
第1流体圧室25と第2流体圧室26との圧力差による推力がスプリング27の付勢力よりも大きい場合には、ロータ2に対するカムリング4の偏心量が小さくなり、ポンプ室9の吐出容量は小さくなる。これに対して、第1流体圧室25と第2流体圧室26との圧力差による推力がスプリング27の付勢力よりも小さい場合には、ロータ2に対するカムリング4の偏心量が大きくなり、ポンプ室9の吐出容量は大きくなる。このように、ベーンポンプ100は、第1流体圧室25と第2流体圧室26との圧力差及びスプリング27の付勢力によってロータ2に対するカムリング4の偏心量が変化し、ポンプ室9の吐出容量が変化する。
【0036】
次に、主に図1、3,4を参照して、スプリング27を収容する収容室29について説明する。
【0037】
図1、3、及び4に示すように、収容室29におけるスプリング27を囲う内周壁は、第2ポンプボディ20の一側面20aに対向する第1ポンプボディ10の第1内面30と、第2ポンプボディ20の他側面20bに対向するポンプカバー15の第2内面40と、互いに対向して第2ポンプボディ20の内周面に形成される第3内面50及び第4内面60と、を有する。
【0038】
図3に示すように、第1内面30は、第2ポンプボディ20の一側面20aに当接する第1ポンプボディ10の対向面10aに形成される。第2内面40は、第2ポンプボディ20の他側面20bに当接するポンプカバー15の対向面15aに形成される。
【0039】
また、図1に示すように、第3内面50及び第4内面60は、第2ポンプボディ20のスプリング収納部28の内壁面の一部であり、互いに対向するように着座面28aから延びて形成される。つまり、図4に示すように、スプリング27は、収容室29の第1,第2,第3,及び第4内面30,40,50,60によって伸縮方向(スプリング27の軸方向)回りに四方から囲われている。
【0040】
図1、3、及び4に示すように、第1,第2,第3,及び第4内面30,40,50,60のそれぞれには、第2ポンプボディ20の着座面28aに着座するスプリング27の一端部27aに近接し一端部27aを支持する支持部31,41,51,61と、支持部31,41,51,61からスプリング27の付勢方向に延びて形成され支持部31,41,51,61よりもスプリング27から離れて形成される逃げ部32,42,52,62と、が設けられる。
【0041】
以下、第1内面30に設けられる支持部31を「第1支持部31」、第2内面40に設けられる支持部41を「第2支持部41」、第3内面50に設けられる支持部51を「第3支持部51」、第4内面60に設けられる支持部61を「第4支持部61」とも称する。また、第1内面30に設けられる逃げ部32を「第1逃げ部32」、第2内面40に設けられる逃げ部42を「第2逃げ部42」、第3内面50に設けられる逃げ部52を「第3逃げ部52」、第4内面60に設けられる逃げ部62を「第4逃げ部62」とも称する。
【0042】
第1支持部31及び第2支持部41は、図3に示すように、それぞれ第1ポンプボディ10及びポンプカバー15の対向面10a,15aの一部として形成され、第2ポンプボディ20の両側面20a,20bと略平行に形成される。スプリング27の一端部27aは、第1支持部31及び第2支持部41により、ロータ2の軸方向(図3中左右方向)に支持され、ロータ2の軸方向に沿った位置が決められる。
【0043】
第1逃げ部32は、第1支持部31よりもスプリング27の径方向に離れるように、言い換えれば、第1支持部31よりも第2ポンプボディ20から離れるように形成される。第1逃げ部32は、第1ポンプボディ10の対向面10aと略平行に形成される第1平面33と、第1ポンプボディ10の対向面10aに対して傾斜して形成され第1平面33と第1支持部31とを接続する第1テーパ面34と、を有する。第1逃げ部32の第1平面33とスプリング27との間には、第1支持部31とスプリング27との間の隙間よりも大きな隙間が形成される。
【0044】
第2逃げ部42は、第2支持部41よりもスプリング27の径方向に離れるように、言い換えれば、第2支持部41よりも第2ポンプボディ20から離れるように形成される。第2逃げ部42は、第1逃げ部32と同様に、ポンプカバー15の対向面15aと略平行に形成される第2平面43と、ポンプカバー15の対向面15aに対して傾斜して形成され第2平面43と第2支持部41とを接続する第2テーパ面44と、を有する。第2逃げ部42の第2平面43とスプリング27との間には、第2支持部41とスプリング27との間の隙間よりも大きな隙間が形成される。
【0045】
第3支持部51及び第4支持部61は、図4に示すように、それぞれ第2ポンプボディ20の両側面20a,20bと略垂直に形成される。スプリング27の一端部27aは、第3支持部51及び第4支持部61により、ロータ2の軸及びスプリング27の軸の両者に垂直な方向(図1中左右方向)に支持される。
【0046】
第3逃げ部52と第4逃げ部62とは、図1に示すように、それぞれスプリング27から離れるように第3支持部51及び第4支持部61から形成される。第3逃げ部52は、第2ポンプボディ20の両側面20a,20bと略垂直に形成される第3平面53と、第3平面53と第3支持部51とを接続する第3テーパ面54と、を有する。第4逃げ部62は、第2ポンプボディ20の両側面20a,20bと略垂直に形成される第4平面63と、第4平面63と第3支持部51とを接続するテーパ面64と、を有する。
【0047】
以上のように、スプリング27の一端部27aは、第1支持部31及び第2支持部41と、第3支持部51及び第4支持部61と、によって、径方向において互いに直交する2方向に支持される(図4参照)。よって、スプリング27は、第1,第2,第3,第4支持部31,41,51,61により径方向の移動が規制され、径方向に位置決めされる。
【0048】
第1,第2,第3,第4支持部31,41,51,61は、それぞれ、スプリング27の付勢方向に沿った長さが、スプリング27において伸縮せずばねとして機能しない一端部(以下、「座巻部分」とも称する。)27aの長さとほぼ同じ長さに形成される。また、第1,第2,第3,第4逃げ部32,42,52,62は、図1及び図3に示すように、スプリング27の最伸長状態(図1に示すようなカムリング4の偏心量が最大となった状態)において、ばねとしての有効部分(伸縮する可動部分)の全域に臨むような長さに形成される。これによれば、スプリング27において、ばねとして機能しない座巻部分27aが第1,第2,第3,第4支持部31,41,51,61によって支持されると共に、ばねとしての有効部分は第1,第2,第3,第4逃げ部32,42,52,62に対して隙間を持って常時臨むことになる。
【0049】
ここで、スプリング27は、支持ピン21を支点とするカムリング4の揺動に伴い、伸縮する。このため、例えば、スプリング27が収容室29内で傾いて伸縮する場合や伸縮により座屈して径方向に膨らむように変形した場合などには、スプリング27が第1,第2ポンプボディ10,20や、ポンプカバー15と接触し、伸縮に伴って両者の間で摩擦が生じるおそれがある。スプリング27の伸縮時における第1,第2ポンプボディ10,20やポンプカバー15との間の摩擦は、スプリング27の付勢力を受けるカムリング4の揺動動作に影響を及ぼすおそれがある。
【0050】
これに対し、本実施形態では、スプリング27を周方向に覆う収容室29の4面(第1〜第4内面30,40,50,60)には、それぞれ一端部27aを支持する支持部31,41,51,61と、スプリング27から離間する逃げ部32,42,52,62が設けられる。このため、支持部31,41,51,61によりスプリング27が位置決めされ、スプリング27の傾きや座屈等が防止される。また、スプリング27が傾いて伸縮する場合等であっても、スプリング27の伸縮する部分(ばねとしての有効部分)は逃げ部32,42,52,62に隙間を持って臨むため、スプリング27の伸縮する部分と、第1ポンプボディ10、第2ポンプボディ20、及びポンプカバー15との接触が防止される。このため、スプリング27と、第1ポンプボディ10、第2ポンプボディ20、及びポンプカバー15との間の摩擦の発生が防止され、カムリング4の揺動動作の安定性が向上する。
【0051】
なお、第1逃げ部32及び第2逃げ部42は、図4に示すように、第1ポンプボディ10及びポンプカバー15における第2ポンプボディ20との対向面10a,15aにおいて、最もスプリング27に近接する部分に形成されていればよい。つまり、第1逃げ部32及び第2逃げ部42は、少なくともスプリング27の径方向の中央部分に臨むように形成されていればよく、径方向の全域にわたって臨むように形成されていなくてもよい。第1逃げ部32及び第2逃げ部42は、少なくともスプリング27の径方向の中央部分に臨むように形成されていれば、伸縮によるスプリング27と第1ポンプボディ10及びポンプカバー15との接触及び摩擦の発生を防止することができる。
【0052】
また、逃げ部32,42,52,62によりスプリング27と、第1ポンプボディ10、第2ポンプボディ20、及びポンプカバー15との間の摩擦の発生が防止されるため、両者の摩耗によってコンタミが発生することを防止することができる。よって、作動油中へのコンタミの混入が防止される。
【0053】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0054】
上記実施形態では、支持部31,41,51,61は、スプリング27の座巻部分27aの長さと略同一に形成される。スプリング27を径方向に位置決めすると共に伸縮による摩擦の発生を防止するには、これらを略同一の長さに形成し、スプリング27の座巻部分27aが支持部31,41,51,61によって支持されることが望ましい。しかしながら、これに限らず、支持部31,41,51,61の長さは、座巻部分27aの長さよりも長くてもよい。この場合であっても、逃げ部32,42,52,62に臨むスプリング27の有効部分では、摩擦の発生を防止することができる。また、スプリング27を径方向に位置決め可能であれば、支持部31,41,51,61の長さが、座巻部分27aの長さよりも短くてもよい。また、第1,第2、第3,第4支持部31,41,51,61の長さは、互いに異なるものであってもよい。
【0055】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0056】
ベーンポンプ100では、第1,第2,第3,第4内面30,40,50,60には、それぞれ一端部27aを支持する支持部31,41,51,61と、スプリング27から離間する逃げ部32,42,52,62が設けられる。このため、支持部31,41,51,61によりスプリング27が位置決めされ、スプリング27の傾きや座屈等が防止される。また、スプリング27が傾いて伸縮する場合等であっても、逃げ部32,42,52,62によって、スプリング27の伸縮する部分と、第1ポンプボディ10、第2ポンプボディ20、及びポンプカバー15との接触が防止される。このため、スプリング27と、第1ポンプボディ10、第2ポンプボディ20、及びポンプカバー15との間の摩擦の発生が防止され、カムリング4の揺動動作の安定性が向上する。
【0057】
また、逃げ部32,42,52,62によりスプリング27と、第1ポンプボディ10、第2ポンプボディ20、及びポンプカバー15との間の摩擦の発生が防止されるため、両者の摩耗によってコンタミが発生することを防止することができる。よって、作動油中へのコンタミの混入が防止される。
【0058】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0059】
ベーンポンプ100は、駆動軸1に連結されたロータ2と、ロータ2に対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン3と、ロータ2の回転に伴ってベーン3の先端が摺動するカム面4aを有し、ロータ2に対して偏心可能に設けられるカムリング4と、カムリング4を収容する第2ポンプボディ20と、カムリング4と第2ポンプボディ20との間に圧縮状態で介装され、ロータ2に対する偏心量が大きくなる方向にカムリング4を付勢する付勢部材(スプリング27)と、第2ポンプボディ20を挟むようにそれぞれ第2ポンプボディの両側面20a,20bに当接して設けられる第1ポンプボディ10及びポンプカバー15と、スプリング27を収容する収容室29と、を備え、収容室29におけるスプリング27を囲う内周壁は、第2ポンプボディ20の両側面20a,20bに対向する第1ポンプボディの第1内面30及びポンプカバー15の第2内面40と、互いに対向して第2ポンプボディに形成される第3内面50及び第4内面60と、を有し、第1内面30及び第2内面40のそれぞれには、付勢部材(スプリング27)における第2ポンプボディ20の着座面28aに着座する一端部27aを支持する支持部(第1支持部31,第2支持部41)と、支持部(第1支持部31,第2支持部41)から付勢部材(スプリング27)の付勢方向に延びて形成され支持部(第1支持部31,第2支持部41)よりも付勢部材(スプリング27)から離れて形成される逃げ部(第1逃げ部32,第2逃げ部42)と、が設けられる。
【0060】
この構成では、カムリング4を収容する第2ポンプボディ20と、第2ポンプボディ20を挟むように設けられる第1ポンプボディ10及びポンプカバー15と、を備えるベーンポンプ100において、第1ポンプボディ10及びポンプカバー15には、付勢部材(スプリング27)から離れる逃げ部(第1逃げ部32,第2逃げ部42)が形成される。これにより、例えば、付勢部材(スプリング27)が傾いた状態で伸縮する場合であっても、逃げ部(第1逃げ部32,第2逃げ部42)によって付勢部材(スプリング27)と第1ポンプボディ10やポンプカバー15との接触が防止され摩擦の発生が防止される。したがって、ベーンポンプ100におけるカムリング4の動作の安定性が向上する。
【0061】
また、ベーンポンプ100では、第2ポンプボディ20の第3内面50及び第4内面60のそれぞれにも、支持部(第3支持部51,第4支持部61)及び逃げ部(第3逃げ部52,第4逃げ部62)が設けられる。
【0062】
この構成では、逃げ部(第3逃げ部52,第4逃げ部62)によって付勢部材(スプリング27)と第2ポンプボディ20との接触が防止され摩擦の発生が防止される。したがって、ベーンポンプ100におけるカムリング4の動作の安定性をさらに向上させることができる。
【0063】
また、ベーンポンプ100では、付勢部材は、コイルスプリング27であり、支持部(第1支持部31,第2支持部41,第3支持部51,第4支持部61)は、コイルスプリング27の付勢方向に沿った長さが、コイルスプリング27の座巻の長さと同一に形成される。
【0064】
この構成では、ばねとして伸縮作動する有効部分全体が逃げ部(第1逃げ部32,第2逃げ部42,第3逃げ部52,第4逃げ部62)に臨むため、コイルスプリング27の伸縮による摩擦の発生がより確実に防止される。したがって、ベーンポンプ100におけるカムリング4の動作の安定性をさらに向上させることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0066】
100…ベーンポンプ(可変容量型ベーンポンプ)、1…駆動軸、2…ロータ、3…ベーン、4…カムリング、4a…カム面(内周面)、10…第1ポンプボディ(第1ハウジング)、15…ポンプカバー(第2ハウジング)、20…第2ポンプボディ(収容部材)、27…スプリング(付勢部材)、29…収容室、30…第1内面、31…第1支持部(支持部)、32…第1逃げ部(逃げ部)、40…第2内面、41…第2支持部(支持部)、42…第2逃げ部(逃げ部)、50…第3内面、51…第3支持部(支持部)、52…第3逃げ部(逃げ部)、60…第4内面、61… 第4支持部(支持部)、62…第4逃げ部(逃げ部)
図1
図2
図3
図4