特許第6709139号(P6709139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキョーニシカワ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6709139-オイルストレーナ 図000002
  • 特許6709139-オイルストレーナ 図000003
  • 特許6709139-オイルストレーナ 図000004
  • 特許6709139-オイルストレーナ 図000005
  • 特許6709139-オイルストレーナ 図000006
  • 特許6709139-オイルストレーナ 図000007
  • 特許6709139-オイルストレーナ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709139
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】オイルストレーナ
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/03 20060101AFI20200601BHJP
   B01D 35/02 20060101ALI20200601BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20200601BHJP
   B01D 39/08 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   F01M11/03 G
   B01D35/02 E
   B01D29/04 510A
   B01D29/04 510D
   B01D29/04 510E
   B01D29/04 530B
   B01D39/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-192413(P2016-192413)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-53833(P2018-53833A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東本 訓明
(72)【発明者】
【氏名】児玉 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】高野 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】藤本 建司
(72)【発明者】
【氏名】金安 俊哉
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−125989(JP,A)
【文献】 特開2015−112540(JP,A)
【文献】 米国特許第06880334(US,B1)
【文献】 特開2016−098885(JP,A)
【文献】 特開2011−072945(JP,A)
【文献】 特開2016−008551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/03
B01D 29/01
B01D 35/02
B01D 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを濾過するメッシュ部(20)と、該メッシュ部(20)と一体化して該メッシュ部(20)を囲むように形成された枠部(21)と、該枠部(21)の内部で上記メッシュ部(20)に沿って延びるように設けられたリブ(22、23)とが樹脂により一体成形されたオイルフィルタ(2)と、
上記オイルフィルタ(2)を収容するケーシング(3)とを備え、
上記ケーシング(3)にオイル流入口(52a)とオイル流出口(51b)とが形成され、該オイル流入口(52a)から該ケーシング(3)内に流入したオイルを上記メッシュ部(20)により濾過して該オイル流出口(51b)から流出させるように構成されたオイルストレーナ(1)において、
上記ケーシング(3)は、側方に開口部(5a)が形成されるとともに、下方に上記オイル流入口(52a)が形成され、上方に上記オイル流出口(51b)が形成された本体部(5)と、上記開口部(5a)を閉塞する蓋部材(6)とを備え、
上記オイルフィルタ(2)は、上記開口部(5a)から上記本体部(5)に挿入され、
上記メッシュ部(20)は、上記オイル流入口(52a)と上記オイル流出口(51b)との間に配置されるとともに、多数の樹脂製の線状部(20a)が互いに交差するように配置されて一体化されており、
上記枠部(21)は、上記メッシュ部(20)からオイル流れ方向に突出し、上記枠部(21)における上記メッシュ部(20)と一体化した部分は、該枠部(21)における突出方向先端側に比べて厚みが厚い厚肉部(21b)とされ
上記オイルフィルタ(2)における上記開口部(5a)側の端部には、上下方向に延びる板部(24)が一体成形され、該板部(24)の上端部は上記枠部(21)の上端部よりも上まで延び、該板部(24)の下端部は上記枠部(21)の下端部よりも下まで延び、該板部(24)には上記線状部(20a)と連続する厚肉部(24a)が形成され、
上記板部(24)が上記蓋部材(6)の内面に当接していることを特徴とするオイルストレーナ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルストレーナ(1)において、
上記メッシュ部(20)に沿って所定方向に延びる第1リブ(22)と、該第1リブ(22)と略平行に延びる第2リブ(23)とを有していることを特徴とするオイルストレーナ(1)
【請求項3】
請求項1または2に記載のオイルストレーナ(1)において、
上記厚肉部(21a)におけるオイル流れ方向の寸法は、該厚肉部(21a)の厚み寸法に比べて長く設定されていることを特徴とするオイルストレーナ(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジン等のオイルパンの内部に配設されるオイルストレーナに関し、特に、樹脂で成形される技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン等のオイルパンの内部に配設されるオイルストレーナは、特許文献1、2に開示されているように、オイルフィルタと、オイルフィルタを収容するケーシングとを備えている。ケーシングは、上側部材と下側部材とで構成されており、下側部材にオイル流入口が形成され、上側部材にはオイル流出口が形成されている。オイルフィルタは、メッシュ部と、メッシュ部を囲む枠部と、枠部内において縦横に延びるリブとを有しており、メッシュ部、枠部及びリブは樹脂材によって一体成形されている。リブの両端部は枠部と連続している。また、リブはメッシュ部と一体化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−8551号公報
【特許文献2】特開2016−98885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オイルストレーナの小型化の要求があり、オイルストレーナの小型化のためにはケーシングを小型化する必要があるが、ケーシングを小型化しようとするとオイルフィルタの外形を小さくしなければならない。しかしながら、オイルフィルタの外形を小さくするとメッシュ部が小さくなるので、オイルの通過可能な面積が減少して濾過性能が低下するとともにオイルの流通抵抗の増大を招く。
【0005】
ここで、特許文献1、2のメッシュ部は、多数の樹脂製の線状部が互いに交差するように位置して一体化しているので、各線状部を細くしながら密に配置すれば、オイルの通過可能な面積を減少させることなく、またオイルの流通抵抗を増大させることなく、オイルフィルタの外形を小さくすることが可能になる。
【0006】
ところが、各線状部は樹脂製であるため、細くしていくと成形時に溶融樹脂の流動性が悪化して成形不良が発生し易くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、メッシュ部を構成する樹脂製の線状部を細くしても成形不良の発生を抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、オイルフィルタの枠部の一部の肉厚を厚くすることによって成形時の溶融樹脂の流動性を高めるようにした。
【0009】
第1の発明は、オイルを濾過するメッシュ部と、該メッシュ部と一体化して該メッシュ部を囲むように形成された枠部と、該枠部の内部で上記メッシュ部に沿って延びるように設けられたリブとが樹脂により一体成形されたオイルフィルタと、上記オイルフィルタを収容するケーシングとを備え、上記ケーシングにオイル流入口とオイル流出口とが形成され、該オイル流入口から該ケーシング内に流入したオイルを上記メッシュ部により濾過して該オイル流出口から流出させるように構成されたオイルストレーナにおいて、上記ケーシングは、側方に開口部が形成されるとともに、下方に上記オイル流入口が形成され、上方に上記オイル流出口が形成された本体部と、上記開口部を閉塞する蓋部材とを備え、上記オイルフィルタは、上記開口部から上記本体部に挿入され、上記メッシュ部は、上記オイル流入口と上記オイル流出口との間に配置されるとともに、多数の樹脂製の線状部が互いに交差するように配置されて一体化されており、上記枠部は、上記メッシュ部から上方に突出し、上記枠部における上記メッシュ部と一体化した部分は、該枠部における突出方向先端側に比べて厚みが厚い厚肉部とされ、上記オイルフィルタにおける上記開口部側の端部には、上下方向に延びる板部が一体成形され、該板部の上端部は上記枠部の上端部よりも上まで延び、該板部の下端部は上記枠部の下端部よりも下まで延び、該板部には上記線状部と連続する厚肉部が形成され、上記板部が上記蓋部材の内面に当接していることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、枠部の厚肉部にメッシュ部が一体化されているので、メッシュ部を構成する各線状部は厚肉部から延びることになる。オイルフィルタを成形する際には、枠部を成形するキャビティが厚肉部の分、広くなるので、該キャビティ内での溶融樹脂の流動性が良好になる。これにより、各線状部を成形するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなるので、各線状部を細くしても成形不良の発生が抑制される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記メッシュ部に沿って所定方向に延びる第1リブと、該第1リブと略平行に延びる第2リブとを有していることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、オイルフィルタを成形する際に、第1リブ及び第2リブを成形するためのキャビティに溶融樹脂が流動し、これにより、各線状部を成形するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなる。
【0013】
第3の発明は、第1または2の発明において、上記厚肉部におけるオイル流れ方向の寸法は、該厚肉部の厚み寸法に比べて長く設定されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、厚肉部の断面がオイル流れ方向に拡大するので、厚肉部を設けたことによるオイルの流通抵抗の増大を抑制しながら、厚肉部の断面積を広く確保することが可能になる
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、オイルフィルタの枠部におけるメッシュ部と一体化した部分を厚肉部としたので、各線状部を成形するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなる。これにより、成形不良の発生を抑制しながら、メッシュ部を構成する各線状部を細くすることができる。
【0016】
第2の発明によれば、メッシュ部に沿って所定方向に延びる第1リブと、該第1リブと略平行に延びる第2リブとを有しているので、成形時における溶融樹脂の流動性をより一層良好にすることができる。
【0017】
第3の発明によれば、枠部の厚肉部のオイル流れ方向の寸法を厚み寸法に比べて長くしたので、オイルの流通抵抗の増大を抑制しながら、厚肉部の断面積を広く確保して成形時における溶融樹脂の流動性をより一層良好にすることができる
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1参考例に係るオイルストレーナの斜視図である。
図2図1におけるII−II線断面図である。
図3】オイルフィルタを下方から見た図である。
図4】実施形態に係るオイルストレーナの縦断面図である。
図5図4におけるV−V線断面図である。
図6】オイルフィルタを上方から見た図である。
図7図6におけるVII−VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
参考例
図1は、参考例に係るオイルストレーナ1を上方から見た斜視図である。このオイルストレーナ1は、図2及び図3に示すオイルフィルタ2と、オイルフィルタ2を収容するケーシング3とを少なくとも備えており、例えば図示しないが自動車に搭載されるエンジンのオイルパンの内部に配設され、該オイルパンの内部に貯留されているオイルを濾過して該エンジンのオイルポンプに供給するためのものである。尚、オイルストレーナ1は、自動車のエンジン以外にも各種エンジンのオイルパンの内部や、自動変速機等の内部に配設することができ、エンジンや自動変速機等を循環するオイルを濾過するために使用することができる。
【0021】
(ケーシングの構成)
ケーシング3は、上下方向の中間において分割された上側ケーシング部材30と下側ケーシング部材40とで構成されている。上側ケーシング部材30及び下側ケーシング部材40は、それぞれ、樹脂を射出成形して得られた一体成形品である。
【0022】
上側ケーシング部材30は、上壁部31と上壁部31の周縁部から下方へ延びる上側周壁部32とを備えており、全体として下方に開放するように形成された部材である。上壁部31の長手方向一側には、上方へ膨出する膨出部31aが形成されている。膨出部31aの内部はケーシング3の内部と連通している。
【0023】
膨出部31aには、オイル流出管部31bが斜め上方へ突出するように一体成形されている。オイル流出管部31bは膨出部31aを介してケーシング3の内部と連通している。オイル流出管部31bの先端部にはオイル流出口31cが開口している。また、オイル流出管部31bの外周面には、該外周面に沿って延びる第1環状突条部31dと第2環状突条部31eとが間隔をあけた状態で形成されている。第1環状突条部31dと第2環状突条部31eとの間にOリング等からなるシール材(図示せず)が嵌まるようになっている。オイル流出管部31bは、エンジンのオイルポンプの吸入口(図示せず)に差し込まれた状態で接続される。この状態でシール材が吸入口の周縁部に接触してシール性を確保することができるようになっている。
【0024】
尚、オイル流出管部31bは、鉛直方向に突出するように形成されていてもよい。また、オイル流出管部31bの形成位置は図示した位置に限られるものではない。また、オイル流出管部31bには締結固定用フランジを一体成形することもできる。また、上側ケーシング部材30には、取付用ブラケットを一体成形することもできる。
【0025】
上側ケーシング部材30の上側周壁部32の下側部分32bは上側部分32aよりもケーシング3の外方に位置するように形成されている。これにより、上側周壁部32の外周面には外側段部32cが形成され、図2に示すように内周面には内側段部32dが形成されることになる。内側段部32dは上側周壁部32の全周に亘って形成されている。この内側段部32dには後述するオイルフィルタ2の枠部21が嵌まるようになっている。
【0026】
上側周壁部32の下側部分32bの下端部には、ケーシング3の外方へ突出する上側フランジ34が全周に亘って形成されている。この上側フランジ34の突出方向先端部の上面には、上方へ突出する上側突出部34aが該上側フランジ34の全周に亘って形成されている。
【0027】
図2に示すように、下側ケーシング部材40は、下壁部41と下壁部41の周縁部から上方へ延びる下側周壁部42とを備えており、全体として上方に開放するように形成された部材である。下壁部41には、オイル流入口41aが形成されている。このオイル流入口41aは、オイルパンの底部近傍に位置付けられる。尚、図示しないが、下壁部41にオイル流入管部を下方へ突出するように形成してもよい。
【0028】
下側周壁部42の上端部には、ケーシング3の外方へ突出する下側フランジ44が全周に亘って形成されている。下側フランジ44の上面は、上側フランジ34の下面に対して全周に亘って溶着され、上側フランジ34と下側フランジ44との間からオイルが漏れないようになっている。上側フランジ34と下側フランジ44とを溶着する際には、例えば従来から周知の振動溶着法や熱板溶着法を用いることができる。また、図示しないが、上側フランジ34及び下側フランジ44に溶着用突条部を設けるのが好ましい。下側フランジ44の突出方向先端部の下面には、下方へ突出する下側突出部44aが該下側フランジ44の全周に亘って形成されている。
【0029】
下側フランジ44におけるケーシング3内側の端部は、上側フランジ34におけるケーシング3内側の端部よりもケーシング3の内方に位置している。下側フランジ44におけるケーシング3内側の端部は、後述するオイルフィルタ2の枠部21に対して下方から当接するようになっている。
【0030】
ケーシング3の内部におけるオイルフィルタ2よりも下側の空間R1は、オイル流入口41aから未濾過のオイルが流入する未濾過オイル流入空間である。また、ケーシング3の内部におけるオイルフィルタ2よりも上側の空間R2は、オイルフィルタ2によって濾過されたオイルが流入する濾過後オイル流入空間である。
【0031】
(オイルフィルタの構成)
オイルフィルタ2は、オイルを濾過するメッシュ部20と、該メッシュ部20と一体化して該メッシュ部20を囲むように形成された枠部21と、該枠部21の内部でメッシュ部20に沿って延びるように設けられたメインリブ(第1リブ)22と、サブリブ(第2リブ)23、23とを備えており、メッシュ部20、枠部21、メインリブ(第1リブ)22及びサブリブ23、23が樹脂により一体成形されている。
【0032】
メッシュ部20は、全体として板状をなしており、多数の樹脂製の線状部20a、20a、…が互いに交差するように配置され、一体化されて構成されている。この参考例では、線状部20aの幅寸法を短くし、かつ線状部20aを密に配置することで、オイルの通過可能な面積(オイルが流通する細孔20b(図2に示す)の合計面積)を減少させることなく、またオイルの流通抵抗を増大させることなく、オイルフィルタ2の外形を小さくすることが可能になる。尚、線状部20aの幅寸法を短くするとメッシュ部20が弱くなる恐れがあるが、それを補うことができるように、線状部20aの高さ寸法(オイル流通方向の寸法)を長くしている。線状部20aのオイル流通方向の寸法を長くしてもオイルの流通抵抗は殆ど増大しない。
【0033】
枠部21は、メッシュ部20の周囲を全周に亘って囲むように形成されており、上記上側ケーシング部材30の内側段部32dに嵌まるように、その形状が設定されている。枠部21は、メッシュ部20からオイル流れ方向上流側(下側)に突出するように設けられている。枠部21における下端面には、上記下側フランジ44におけるケーシング3内側の端部が下方から当接するようになっている。これにより、枠部21が上側ケーシング部材30の内側段部32dに嵌まった状態で保持される。
【0034】
尚、枠部21は、メッシュ部20の周囲を全周に亘って囲むように形成されており、上記下側ケーシング部材40の内側段部(図示せず)に嵌まった状態で保持されていてもよい。
【0035】
また、枠部21におけるメッシュ部20と一体化した部分、即ちオイル流れ方向下流側部分(上側部分)は、その枠部21における突出方向先端側、即ちオイル流れ方向上流側部分(下側部分)に比べて厚みが厚い厚肉部21aとされている。厚肉部21aは、枠部21の全周に亘って連続して設けられている。また、この厚肉部21aは、枠部21をその内方へ向けて厚肉化することによって形成されているので、枠部21の内面21cには、厚肉部21aの形成によって段部21bができることになるが、枠部21の外面21dは略平坦な面にすることができる。枠部21の外面21dを略平坦な面にすることで、上記上側ケーシング部材30の下側部分32bの内面に密着させることができ、シール性を高めることができる。
【0036】
また、厚肉部21aにおけるオイル流れ方向の寸法は、該厚肉部21aの厚み寸法に比べて長く設定されている。厚肉部21aにおけるオイル流れ方向の寸法を長くすることで厚肉部21aの断面がオイル流れ方向に拡大するが、厚肉部21aの厚み方向の寸法を抑えることができるので、厚肉部21aを設けたことによるオイルの流通抵抗の増大が抑制される。厚肉部21aを設けることにより、枠部21を成形するキャビティ(図示せず)が厚肉部21aの分、広くなるので、該キャビティ内での溶融樹脂の流動性が良好になる。
【0037】
また、この参考例では、枠部21の一部のみ厚肉部21aとして他の部分は薄肉化している。これにより、成形時における溶融樹脂の流動性を高めたい部分だけ厚肉化して溶融樹脂の流動性を高めることができ、一方、それほど流動性を高めなくてもよい部分では薄肉化によって軽量化を図ることができるとともに、使用材料を削減することができる。
【0038】
メインリブ22は、メッシュ部20の長手方向(所定方向)に延びている。メインリブ22の両端部は、枠部21の内面21cに形成された厚肉部21aの内周面と一体化されている。また、メインリブ22は、メッシュ部20とも一体化されており、該メッシュ部20からオイル流れ方向上流側へ突出している。
【0039】
尚、メインリブは複数設けられていてもよい。また、メインリブとサブリブが同じ形状であってもよい。
【0040】
図3にも示すように、サブリブ23、23は、メインリブ22を挟んでメッシュ部20の幅方向両側に位置し、メインリブ22と略平行に延びている。サブリブ23、23の両端部は、それぞれ、枠部21の内面21cに形成された厚肉部21aの内周面と一体化されている。また、サブリブ23、23は、メッシュ部20とも一体化されており、該メッシュ部20からオイル流れ方向上流側へ突出している。サブリブ23、23の長手方向に直交する方向の断面は、メインリブ22の長手方向に直交する方向の断面よりも小さく設定されている。
【0041】
尚、サブリブ23、23のうち、一方又は両方を省略してもよい。また、メインリブ22及びサブリブ23、23は、オイル流れ方向下流側へ突出していてもよい。
【0042】
(オイルフィルタの成形)
上記のように構成されたオイルフィルタ2は金型のキャビティに溶融樹脂を射出することによって成形される。このとき、メッシュ部20の線状部20aの幅寸法を短くしているので、溶融樹脂の流動性が悪化する恐れがあるが、この参考例では、メッシュ部20と一体化している枠部21に厚肉部21aを形成し、この厚肉部21aと線状部20aとを連続させることでこの問題を解決している。
【0043】
すなわち、枠部21を成形するキャビティ(図示せず)が厚肉部21aの分、広くなるので、該キャビティ内での溶融樹脂の流動性が良好になる。これにより、各線状部20aを成形するキャビティ(図示せず)内へ溶融樹脂が流入しやすくなるので、各線状部20aを細くしても成形不良の発生が抑制される。
【0044】
また、オイルフィルタ2を成形する際には、メインリブ22を形成するキャビティ(図示せず)にゲートを少なくとも一つ設けてキャビティに溶融樹脂を射出することにより、まずメインリブ22を形成するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなる。これにより、メッシュ部20の線状部20aを成形するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなる。次いで、サブリブ23、23を成形するためのキャビティ(図示せず)に溶融樹脂が流動し、これにより、更にメッシュ部20の線状部20aを成形するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなる。このことによっても各線状部20aの成形不良の発生が抑制される。
【0045】
また、オイルフィルタ2を成形する際には、メインリブ22及びサブリブ23、23を成形するためのキャビティ(図示せず)の一方の端部又は両方の端部を厚肉部21aのキャビティ(図示せず)と連通させることによりメインリブ22及びサブリブ23、23のキャビティや、厚肉部21aのキャビティに溶融樹脂が容易に流動し易くなり、これにより、メッシュ部20の線状部20aを成形するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなる。このことによっても各線状部20aの成形不良の発生が抑制される。
【0046】
参考例の作用効果)
以上説明したように、この参考例によれば、オイルフィルタ2の枠部21におけるメッシュ部20と一体化した部分を厚肉部21aとしたので、各線状部20aを成形するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなる。これにより、成形不良の発生を抑制しながら、メッシュ部20を構成する各線状部20aを細くすることができる。そして、オイルフィルタ2の外形を小さくしてオイルストレーナ1を小型化することができる。
【0047】
また、メッシュ部20に沿って延びるメインリブ22及びサブリブ23、23を設けたので、成形時における溶融樹脂の流動性をより一層良好にすることができる。
【0048】
さらに、枠部21の厚肉部21aのオイル流れ方向の寸法を厚み寸法に比べて長くしたので、オイルの流通抵抗の増大を抑制しながら、厚肉部21aの断面積を広く確保して成形時における溶融樹脂の流動性をより一層良好にすることができる。
【0049】
(実施形態)
図4及び図5は、本発明の実施形態に係るオイルストレーナ1の断面を示している。この実施形態のオイルストレーナ1は、図6及び図7に示すオイルフィルタ2を備えている。実施形態では、ケーシング3の分割構造が参考例とは異なっており、これに伴ってオイルフィルタ2の構造も参考例とは異なっている。以下、参考例と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、参考例と異なる部分について詳細に説明する。
【0050】
図5に示すように、ケーシング3は、樹脂製の本体部5と蓋部材6とで構成されている。本体部5の側方には蓋部材6で閉塞される開口部5aが形成されており、この開口部5aからオイルフィルタ2がケーシング3の内部に挿入されるようになっている。開口部5aは、本体部5の側面において略全体に開口している。本体部5における開口部5aの周縁部には、フランジ5bが形成されている。このフランジ5bには、開口部5aを囲むように延びる突条部5bが形成されている。
【0051】
蓋部材6は、略板状をなしている。蓋部材6の周縁部には、外側突条部6aと内側突条部6bとが形成されている。外側突条部6aは、本体部5の突条部5bに対して周知の溶着法によって溶着されるようになっている。内側突条部6bは、オイルフィルタ2に一体成形された板部24に当接するようになっている。
【0052】
本体部5の上壁部51にはオイル流出管部51aが上方へ突出するように形成されている。オイル流出管部51aの先端部にはオイル流出口51bが開口している。また、オイル流出管部51aの外周面には、該外周面に沿って延びる第1環状突条部51dと第2環状突条部51eとが間隔をあけた状態で形成されている。第1環状突条部51dと第2環状突条部51eとの間にOリング等からなるシール材(図示せず)が嵌まるようになっている。
【0053】
また、本体部5の下壁部52は、図4に示すように傾斜しているが、この下壁部52は水平に延びていてもよい。下壁部52には、オイル流入口52aが形成されている。
【0054】
さらに、本体部5の周壁部53の内面には、オイルフィルタ2の枠部21が嵌合する嵌合溝53aが形成されている。オイルフィルタ2が本体部5の開口部5aから該本体部5の内部に挿入されるときに、枠部21が嵌合溝53a内を移動してオイルフィルタ2が本体部5に組み付けられるようになっている。
また、枠部21には厚肉部24aが設けられていて、メインリブ22及びサブリブ23、23の一端又は両端が厚肉部24aに連結している。
【0055】
実施形態のオイルフィルタ2のメインリブ22及びサブリブ23、23はオイル流れ方向下流側へ突出しているが、これに限らず、オイル流れ方向上流側へ突出していてもよい。
【0056】
また、オイルフィルタ2には、メッシュ部20と交差する方向に延びる板部24が一体成形されている。この板部24にも厚肉部24aが設けられており、厚肉部24aとメッシュ部20の線状部20aとが連続している
【0057】
実施形態によれば、参考例と同様に、オイルフィルタ2の枠部21に厚肉部21aを設けたので、成形不良の発生を抑制しながら、メッシュ部20を構成する各線状部20aを細くすることができる。また、板部24に厚肉部24aを設けたので、厚肉部24aを成形するキャビティ(図示せず)が厚肉部24aの分、広くなり、これにより、メッシュ部20の線状部20aを成形するキャビティ内へ溶融樹脂が流入しやすくなる。
【0058】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明に係るオイルフィルタ及びオイルストレーナは、例えば、内燃機関の循環するオイルを濾過するのに適している。
【符号の説明】
【0060】
1 オイルストレーナ
2 オイルフィルタ
3 ケーシング
20 メッシュ部
20a 線状部
21 枠部
21a 厚肉部
22 メインリブ(第1リブ)
23 サブリブ(第2リブ)
31c オイル流出口
41a オイル流入口
51b オイル流出口
52a オイル流入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7