特許第6709178号(P6709178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709178
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/00 20060101AFI20200601BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20200601BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H05K5/00 B
   H05K5/02 L
   H05K5/03 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-14275(P2017-14275)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-125333(P2018-125333A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】佐脇 敬法
【審査官】 佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−116179(JP,A)
【文献】 特開2009−049215(JP,A)
【文献】 実開昭57−138372(JP,U)
【文献】 特開2005−142213(JP,A)
【文献】 特開2013−093372(JP,A)
【文献】 特開2010−153448(JP,A)
【文献】 特開2014−197620(JP,A)
【文献】 特開平11−243283(JP,A)
【文献】 特開平05−013621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−17/02、
H02G 3/08− 3/20、
H05K 5/00− 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にコネクタを有すると共に大型電子部品が実装されている基板と、前記コネクタを突出させた状態で前記基板を収納するケースと、このケースに被せるカバーとを備え、前記ケースが被取付部材側に取付けられる電子制御装置において、
前記カバーは、縁に前記ケースの一部を差し込むことができる溝部を有すると共に前記大型電子部品を収納する凹部を有し、
前記溝部は、平面視でコ字状を呈し、前記溝部の端部が、前記凹部に開放されており、
前記ケースに、溝部内樹脂モールド用樹脂材料を注入する第1注入口が設けられ、この第1注入口から前記溝部内樹脂モールド用樹脂材料が注入されて、前記溝部に、前記カバーと前記ケースを接着固定する溝部内樹脂モールドが形成され
前記溝部は、前記第1注入口を除いて前記ケースで覆われていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記凹部に、前記大型電子部品を前記ケースに接着固定する凹部内樹脂モールドが充填されていることを特徴とする請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記ケースに凹部内樹脂モールド用樹脂材料を注入する第2注入口が設けられていることを特徴とする請求項2記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、この基板を収納するケースと、このケースに被せるカバーとからなる電子制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と、この基板を収納するケースと、このケースに被せるカバーとからなる電子制御装置が実用に供されており、電子制御装置の構造が各種提案されてきた(例えば、特許文献1(図3)参照)。
【0003】
特許文献1の図3に示されるように、電子部品を実装した回路基板(20)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)と、回路基板(20)を収納保持するケース(30)と、ケース(30)に装着されるカバー(40)と、ケース(30)にカバー(40)を固定する固定部材(60)とを備えた電子制御装置(10)である。ケース(30)及びカバー(40)は、回路基板(20)を挟持する回路基板接触部(36、46)と、回路基板接触部(36、46)から延設し、回路基板(20)の端部(24)を解放した状態で収納する回路基板解放部(37、47)とを備える。固定部材(60)は、回路基板解放部(37、47)の外周縁(33、43)に備えられている。
【0004】
固定部材(60)は、ケース(30)に予め溶接されているナット(61)と、このナット(61)にねじ込むボルト(62)とからなる。すなわち、ケース(30)とカバー(40)は、ボルト(62)とナット(61)とで固定される。
【0005】
ケース(30)とカバー(40)に収納される回路基板(20)に水や塵が付着すると電気的なトラブルが発生しやすくなる。対策として、ケース(30)とカバー(40)との間に接着剤(50)を介在させ、この接着剤(50)でケース(30)にカバー(40)を接着接続すると共に外から水や塵の侵入を防止する。
【0006】
すなわち、特許文献1の電子制御装置は、ボルト、ナット及び接着剤が必要である。ボルト、ナット及び接着剤を調達するコスト、保管するコスト及び取付けるコストが発生するため、コストアップになる。
しかし、電子制御装置のコストダウンが求められる中、部品点数の削減を図ることができる構造が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−189442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基板とケースとカバーで構成される電子制御装置において、ケースをカバーに固定する用途に供する部品の点数の削減を図ることができる構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、一端にコネクタを有すると共に大型電子部品が実装されている基板と、前記コネクタを突出させた状態で前記基板を収納するケースと、このケースに被せるカバーとを備え、前記ケースが被取付部材側に取付けられる電子制御装置において、
前記カバーは、縁に前記ケースの一部を差し込むことができる溝部を有すると共に前記大型電子部品を収納する凹部を有し、
前記溝部は、平面視でコ字状を呈し、前記溝部の端部が、前記凹部に開放されており、
前記ケースに、溝部内樹脂モールド用樹脂材料を注入する第1注入口が設けられ、この第1注入口から前記溝部内樹脂モールド用樹脂材料が注入されて、前記溝部に、前記カバーと前記ケースを接着固定する溝部内樹脂モールドが形成され
前記溝部は、前記第1注入口を除いて前記ケースで覆われていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、凹部に、大型電子部品をケースに接着固定する凹部内樹脂モールドが充填されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、ケースに、凹部内脂モールド用樹脂材料を注入する第2注入口が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、ケースにカバーが溝部内樹脂モールドで接着固定されており、ボルトやナットが不要となる。結果、ボルトやナットを調達するコスト、保管するコスト及び取付けるコストが発生しない。
よって、本発明によれば、基板とケースとカバーで構成される電子制御装置において、ケースをカバーに固定する用途に供する部品の点数の削減を図ることができる。
なお、溝部は、平面視でコ字状を呈しているので、溝部内樹脂モールド用樹脂材料は、第1注入口から溝部に進入し、分流し、溝部を満たす。
加えて、溝部の端部が、凹部に開放されていることから、溝部内樹脂モールド用樹脂材料の余剰分は凹部に流入する。
さらに加えて、溝部は、第1注入口を除いてケースで覆われているため、溝部は外から見えない。その上、ケースは被取付部材側に取付けられるため、カバーに比較して目立たない。目立たないケースに第1注入口を設けられたので、電子制御装置の外観性が高まる。
【0013】
請求項2に係る発明では、凹部に、大型電子部品をケースに接着固定する凹部内樹脂モールドが充填されているため、大型電子部品の耐震性を高めることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、ケースに、凹部内脂モールド用樹脂材料を注入する第2注入口が設けられている。
カバーは目立つがケースは目立たない。目立たないケースに第2注入口を設けたので、電子制御装置の外観性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る電子制御装置の分解斜視図である。
図2】カバーの平面図である。
図3】ケースにカバーを被せる工程を説明する図及び電子制御装置の要部断面を示す図である。
図4図3(d)の4a−4a矢視図及び電子制御装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0017】
本発明に係る電子制御装置10の外観は図4(b)で示すが、図1では天地を逆にした。すなわち説明の都合で、図1ではケース30を上に、カバー40を下に示した。基板14も天地逆に示した。
【0018】
図1に示すように、電子制御装置10は、一端にコネクタ11、12を有すると共に大型電子部品13が実装されている基板14と、コネクタ11、12を突出させた状態で基板14を収納するケース30と、このケース30に被せるカバー40とを備えている。
【0019】
基板14は、切欠き形成した第1U字部15と第2U字部16を有する。
大型電子部品13から延びるピン状の端子17が基板14に半田固定されている。同様にコネクタ11から延びる帯状の端子18が基板14に半田固定され、コネクタ12から延びるピン状の端子19が基板14に半田固定されている。
【0020】
ケース30は、一面が開口(図1では下面が開口)している箱体である。ケース30は、一対の支持片31、31を一体的に備えている。これらの支持片31、31を用いて車体などに電子制御装置10を固定することができる。
ケース30は、第1U字部15に対応する部位に第1注入口32を有し、第2U字部16に対応する部位に第2注入口33を有する。
【0021】
カバー40は、大型電子部品13を収容する凹部41と、帯状の端子18を収納する凹部42と、ピン状の端子19を収納する凹部43を有する。基板14は、一般にケース30に固定されるが、本例では、ビス44にてカバー40に固定される。
カバー40はケース30に比較して複雑な形状を呈しているため、図2で補足説明する。
【0022】
図2に示すように、カバー40は、縁にケース30の一部を差し込むことができる溝部45を有すると共に大型電子部品13を収納する凹部41及びその他の凹部42、43を有し、ビス(図1、符号44)をねじ込む座部46を有する。さらに、カバー40は、コネクタ支持突起47を有する。
【0023】
溝部45は、平面視でコ字状を呈する。好ましくは、溝部45の端部は凹部42、43に各々開放する。更に好ましくは凹部42と凹部43を補助的な溝部48で連通する。
なお、想像線で示す第1注入口32は、溝部45に合致しており、想像線で示す第2注入口33は、大型電子部品13を収容する凹部41に隣接する凹部42に合致している。
【0024】
図1にて、コネクタ11、12側の嵌合部21をコネクタ支持突起47に嵌合しながら、基板14をカバー40に載せ、基板14をビス44で座部46に締結する。
図3(a)に示すように、コネクタ11、12はカバー40から突出している。次に、基板14を被うようにしてカバー40にケース30を被せる。
取付け後の姿は、図3(b)のようになる。
【0025】
図3(c)は、図3(b)のc−c線断面図であり、大型電子部品13が凹部41に収納され、帯状の端子18が凹部42に収納され、ピン状の端子19が凹部43に収納されている。
加えて、カバー40に設けた溝部45に、ケース30の一部が入り込んでいる。
【0026】
この状態で、図3(b)に示す第1注入口32から第1注入器51にて溝部内樹脂モールド用樹脂材料52を適量注入する。溝部内樹脂モールド用樹脂材料52は、図2の第1注入口32から溝部45に進入し、左右に分流し、溝部45を満たす。余剰分は凹部42や凹部43に流入する。
【0027】
溝部内樹脂モールド用樹脂材料52は、1時間程度で固化して溝部内樹脂モールド53となる。
図3(d)に示すように、溝部45が溝部内樹脂モールド53で満たされ、この溝部内樹脂モールド53がケース30とカバー40とを接着固定する。
【0028】
ケース30にカバー40が溝部内樹脂モールド53のみで接着固定されており、ボルトやナットが不要となる。結果、ボルトやナットを調達するコスト、保管するコスト及び取付けるコストが発生しない。
【0029】
次に、図3(b)に示す第2注入口33から第2注入器55にて凹部内樹脂モールド用樹脂材料56を適量注入する。凹部内樹脂モールド用樹脂材料56は、図2の第2注入口33から凹部42に進入し、分流し、凹部41及び凹部43を満たす。
凹部内樹脂モールド用樹脂材料56は、1時間程度で固化して凹部内樹脂モールド57となる。
【0030】
なお、溝部内樹脂モールド用樹脂材料52と凹部内樹脂モールド用樹脂材料56とは、異質樹脂材料であってもよいが同一の樹脂材料の方が推奨される。樹脂材料52、56は、一液タイプ(シリコン系樹脂又はエポキシ系樹脂)であってもよいが二液タイプ(ウレタン系樹脂又はエポキシ系樹脂)の方が推奨される。一液タイプは低温保管が必要であり、粘度が高く流動性に難がある。この点、二液タイプであれば常温保管が可能であり、流動性に富み、細部まで浸透する。
【0031】
図3(d)に示すように、凹部41が凹部内樹脂モールド57で満たされ、この凹部内樹脂モールド57で大型電子部品13の一部又は全部(実施例では下半分)がカバー40に接着固定される。大型電子部品13は重いため、車両の振動の影響を受けやすい。
仮に、図3(c)に示すように、大型電子部品13がフリーであると、大型電子部品13が比較的大きく振れ、結果、端子17の半田が割れる心配がある。
対して、図3(d)であれば、大型電子部品13が凹部内樹脂モールド57で支持されているため、振れることはなく、端子17を固定する半田が割れることもない。
【0032】
同様に、凹部42に充填された凹部内樹脂モールド57で帯状の端子18が支持されるため、端子18に係る半田割れは発生しない。さらに同様に、凹部43に充填された凹部内樹脂モールド57でピン状の端子19が支持されるため、端子19に係る半田割れは発生しない。
加えて、凹部内樹脂モールド57は、次の図4(a)で説明する作用をも発揮する。
【0033】
図4(a)は図3(d)の4a−4a矢視図である。
図4(a)に示すように、凹部内樹脂モールド57は、コネクタ11、12の背面を満たす。図1で説明したように、コネクタ11、12は、嵌合部21がコネクタ支持突起47に嵌っているが、嵌合であるため僅かな隙間が発生する。仮に放置するとこの隙間から外部の水や塵がカバー40内に侵入する心配がある。
この心配に対しては、図4(a)に示す凹部内樹脂モールド57が嵌合部21とコネクタ支持突起47との間の隙間に浸透し、この隙間を塞ぐ。よって、外部の水や塵がカバー40内に侵入する心配はなくなる。
【0034】
図4(b)は、電子制御装置10の斜視図であり、カバー40が上に、ケース30が下になっている。この状態で支持片31を用いて電子制御装置10が車体等にボルト締めされる。
このように取付けられた場合、カバー40は目立つがケース30は目立たない。目立たないケース30に第1注入口(図1、符号32)及び第2注入口(図1、符号33)を設けたので、電子制御装置10の外観性が良好になる。
【0035】
尚、図3(b)にて、第1注入器51と第2注入器55とで同時に樹脂材料52、56を注入することは差し支えない。又は、第1注入器51だけを準備し、第1注入器51で第1注入口32(又は第2注入口33)へ樹脂材料52を注入したのちに、同じ第1注入器51で第2注入口33(又は第1注入口32)へ樹脂材料52を注入してもよい。
【0036】
また、実施例では、電子制御装置10は2つのコネクタ11、12を備えるが、コネクタ11のみ、又は3個以上のコネクタ11、12を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両に搭載される電子制御装置に好適である。
【符号の説明】
【0038】
10…電子制御装置、11、12…コネクタ、13…大型電子部品、14…基板、30…ケース、32…第1注入口、33…第2注入口、40…カバー、41…大型電子部品を収納する凹部、45…溝部、52…溝部内樹脂モールド用樹脂材料、53…溝部内樹脂モールド、56…凹部内樹脂モールド用樹脂材料、57…凹部内樹脂モールド。
図1
図2
図3
図4