(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電気自動車等の普及に伴い、例えば250A程度の大電流を通電可能な給電システムが求められている。上記の接続端子を用いた給電システムでは、こうした大電流の通電に伴う当該接続端子の温度上昇が問題となる。給電プラグや充電コネクタの構成部材の劣化抑制や規則(例えばCHAdeMO規格等)遵守のために、接続端子の温度を所定値以下に抑える必要がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、大電流の通電に伴う温度上昇を抑制することが可能な端子、及び、その端子を備えた端子付き電線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る端子は、相手方端子と接続可能な端子接続部と、前記端子接続部を支持する支持部と、前記支持部を覆う筒状部を含むジャケット部と、を備え、前記筒状部と前記支持部との間に、冷媒が流通可能な空間が形成されており、前記ジャケット部は、前記空間に連通した一対の出入口部を有する端子である。
【0007】
[2]上記発明において、前記支持部は、前記筒状部の外周面に設けられ、前記出入口部に連通した溝を有し、前記空間は、前記溝によって形成されていてもよい。
【0008】
[3]上記発明において、前記端子は、ろう付けにより前記ジャケット部と前記支持部を接合している接合部を備えていてもよい。
【0009】
[4]上記発明において、前記端子接続部と前記支持部は相互に独立した部材であり、前記端子接続部は、前記相手方端子が挿入される挿入空間を形成する複数の接触片を有していてもよい。
【0010】
[5]本発明に係る端子付き電線は、上記の端子と、電線と、前記電線が接続された固定端子と、前記固定端子を前記支持部に固定するボルトと、を備え、前記支持部は、前記ボルトが螺合している締結孔を有し、前記固定端子は、前記ボルトが挿入された挿通孔を有する端子付き電線である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、出入口部を有するジャケット部で端子の支持部を覆い、当該支持部とジャケット部の筒状部との間に、冷媒が流通可能な空間を形成する。これにより、出入口部を介して冷媒をジャケット部内に導入して空間内を流通させることが可能となるので、大電流を通電した場合でも端子の温度上昇を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
<<第1実施形態>>
図1は本発明の第1実施形態における端子付き電線を示す断面図、
図2は
図1のII-II線に沿った断面図、
図3は本実施形態における端子を示す分解斜視図、
図4は
図3に示す端子のベース部の筒状部の外周面の展開図、
図5は
図2のV-V線に沿った断面図、
図6は
図3に示す端子の背面図、
図7は本実施形態における固定端子及び電線を示す斜視図である。
【0015】
本実施形態における端子付き電線1は、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッドカー等の自動車の車体に搭載される充電コネクタに用いられる部材である。この端子付き電線1は、
図1及び
図2に示すように、相手方端子100(
図2参照)と嵌合する端子10と、電気モータに電力を供給する二次電池等に電気的に接続された電線50と、当該電線50を端子10に電気的に接続すると共に機械的に固定する固定端子60及びボルト70と、を備えている。相手方端子100は、プラグ型コネクタ(給電プラグ)が有する棒状の端子であり、端子10が設けられる充電コネクタは、当該プラグ型コネクタと嵌合するレセプタクル型コネクタである。
【0016】
端子10は、
図2及び
図3に示すように、端子本体15と、ジャケット部40と、を備えている。端子本体15は、相手方端子100と接続可能な端子接続部20と、当該端子接続部20を支持するベース部30と、を備えており、ベース部30がジャケット部40によって覆われている。本実施形態におけるベース部40が、本発明の支持部の一例に相当する。
【0017】
本実施形態では、端子接続部20とベース部30が一体的に形成されることで、端子本体15が構成されている。この端子本体15は、例えば、金属材料等の導電性を有する材料から構成されている。これにより、この端子本体15を介して、電線50が接続された固定端子60と相手方端子100とが電気的に接続される。また、本実施形態では、後述のように、端子本体15とジャケット部40とをろう付けにより接合するため、ジャケット部40も金属材料から構成されている。なお、導電性を有していない材料でジャケット部40を構成してもよい。
【0018】
端子接続部20は、複数(本例では4本)の接触片21と、当該接触片21を連結する連結部22と、を備えている。それぞれの接触片21は、端子10の軸方向に沿って延在する板状形状を有しており、当該接触片21の先端が自由端となっているのに対し、当該接触片21の後端が連結部22に固定されている。連結部22は、円筒形状を有しており、複数の接触片21が円周方向に沿って実質的に等間隔に配置されている。このため、当該複数の接触片21によって、相手方端子100が挿入される挿入空間211が形成されている。この挿入空間211の内径は、相手方端子100の外径よりも若干小さくなっており、相手方端子100が挿入空間211に挿入されると、接触片21が撓んで当該相手方端子100の外周面に接触することで、相手方端子100と端子10とが電気的に接続されるようになっている。
【0019】
ベース部30は、端子接続部20が接続されたフランジ部31と、フランジ部
31の後端側(端子接続部20とは反対側)に設けられ、固定端子60が接続される円柱部32と、を備えている。フランジ部31は、端子接続部20及び円柱部32よりも大きな外径を有しており、端子本体15において径方向に突出している。
【0020】
図2〜
図5に示すように、円柱部32の外周面321には、凹状の溝322が形成されている。この溝322は、
図4に示すように、円柱部32の外周面3211の全域を軸方向に沿って往復するような蛇行形状を有している。なお、溝322が外周面321の全域に設けられていれば、溝322の平面形状は特に上記に限定されない。例えば、溝322が、円柱部32の外周面321を周方向に沿って往復するような蛇行形状を有していてもよい。
【0021】
また、
図6に示すように、円柱部32の後端面324には、固定端子60を固定するためのボルト70が螺合する締結穴325が形成されている。この締結穴325の内周面には、雌ネジが形成されている。この円柱部32の後端面324は、端子10の軸方向に対して実質的に垂直に延在しており、固定端子60を端子10に固定した時に固定端子60が定置される取付面として機能する。
【0022】
図2、
図3及び
図5に示すように、ジャケット部40は、筒形の形状を有する筒状部41と、当該筒状部41に立設された一対の出入口部42,43と、を備えている。筒状部41の内孔411は、ベース部30の円柱部32の外径よりも僅かに大きく、且つ、当該ベース部30のフランジ部31の外径よりも小さな内径を有している。この筒状部41の内孔411にベース部30の円柱部32が挿入されていると共に、当該筒状部41の端面がベース部30のフランジ部31に当接している。
【0023】
出入口部42,43は、筒状部41の外周面から径方向に突出するように、筒状部41にそれぞれ設けられている。出口部42は、径方向に貫通する貫通孔421を有しており、この貫通孔421がベース部30の溝322に対向するように、筒状部41の外周面に配置されている。同様に、入口部43も、径方向に貫通する貫通孔431を有しており、この貫通孔431がベース部30の溝322に対向するように、筒状部41の外周面に配置されている。
【0024】
本実施形態では、筒状部41にベース部30の円柱部32が挿入された状態において、当該円柱部32の外周面321と筒状部41の内周面とが密着している。従って、上述の溝322によって、冷媒(後述)が流通可能な空間323(
図2及び
図4参照)が、ベース部30の円柱部32とジャケット部40の円筒部41との間に形成されている。
【0025】
また、本実施形態では、ベース部30とジャケット部40がろう付けにより接合されている。具体的には、
図1及び
図2に示すように、ベース部30のフランジ部31とジャケット部40との当接部がろう付けにより全周に亘って接合されることで、第1の接合部44が形成されている。また、
図2及び
図6に示すように、ベース部30の後端面324とジャケット部40の後端面との接触部がろう付けにより全周に亘って接合されることで、第2の接合部45が形成されている。従って、溝322によって形成された空間323は、これらの接合部44,45によって液密に封止(シール)されており、出入口部42,43のみを介して外部に連通している。
【0026】
なお、ベース部30とジャケット部40との間の空間323の形状は、上記のような蛇行した形状に特に限定されない。例えば、溝322に代えて、円柱部32の外周面321において軸方向の両端以外の部分を全体的に凹ませることで、空間323を形成してもよい。或いは、ベース部30の溝322に代えてジャケット部40の内周面に溝を形成してもよいし、ベース部30及びジャケット部40の両方に溝を形成してもよい。
【0027】
また、ろう付けに代えて、次のような構造によって空間323をシールしてもよい。すなわち、ジャケット部40の内周面に雌ネジを形成すると共にベース部30の円柱部32の外周面に雄ネジを形成し、ジャケット部40とベース部30の間にOリングを介在させつつ、これらのネジ部を用いてジャケット部40とベース部30を固定することで、空間323をシールしてもよい。
【0028】
電線50は、
図1、
図2及び
図7に示すように、導電性を有する中心導体51と、当該中心導体51を被覆する絶縁層52と、を備えている。電線50は、銅やアルミニウム等の金属材料からなる撚線や単線から構成されている。この電線50は、例えば、電気自動車用バッテリを急速充電可能なCHAdeMO規格に準拠したケーブルであり、急速充電時には例えば250A程度の大電流がこの電線50を流れる。
【0029】
図7に示すように、固定端子60は、金属材料等の導電性を有する材料から構成された所謂LA端子(丸形端子)であり、保持部61と、固定片62と、平板部63と、を備えている。保持部61は、電線50を挿通させて電線50の絶縁層52を保持している。また、この電線50の端末では絶縁層52が剥かれて中心導体51が露出しており、当該中心導体51と固定片62が加締められることで、電線50と固定端子60が電気的に接続されている。そして、平板部63に挿通孔631が形成されており、この挿通孔631を介して、ボルト70をベース部30の締結穴325の雌ネジに螺合させることによって、固定端子60が端子本体15に固定されている。
【0030】
図8は上述した端子付き電線1を用いた端子冷却システム90の一例を示す図である。この端子冷却システム90は、冷媒を用いて上述した端子10を冷却するためのシステムであり、
図8に示すように、冷却装置91と、ポンプ92と、絶縁継手93a,93bと、配管94a〜94eと、を備えている。
【0031】
端子10の出口部42は、配管94a、絶縁継手93a、及び、配管94bを介して、冷却装置91と接続されている。この冷却装置91は、配管94cを介してポンプ92と接続されている。ポンプ92は、配管94d、配管継手93b、及び、配管94eを介して、端子10の入口部43に接続されている。すなわち、本実施形態の端子冷却システム90では、端子10の空間323→出口部42→配管94a→絶縁継手93a→配管94b→冷却装置91→配管94c→ポンプ92→配管94d→絶縁継手93b→配管94e→入口部43→端子10の空間323、からなる循環路が形成されている。
【0032】
冷却装置91は、端子冷却システム90内を循環する冷媒を冷却する装置であり、冷却装置91の具体例としては、例えば、チラーやラジエター等を例示することができる。冷媒は、電気絶縁性を有する液体であり、例えば絶縁油等を冷媒として用いることができる。また、絶縁継手93a,93bは、電気絶縁性を有する接続口931をそれぞれ有しており、大電流が流れる端子10から冷却装置91やポンプ92を電気的に断絶する機能を有している。さらに、配管94a〜94eも、電気絶縁性を有する材料から構成されていることが好ましい。
【0033】
この端子冷却システム90では、ポンプ92により冷媒が上述の循環路内を圧送される。この冷媒は、配管94d、配管継手93b、及び、配管94eを介して、端子10に供給されて、入口部43を介して端子10の空間323内に導入される。冷媒が溝322に沿って空間323内を流れることで、端子10の熱が冷媒に吸収されて、当該端子10が冷却される。その後、使用済みの冷媒は、出口部42を介して端子10の外部に排出されて、配管94a、配管継手93a、及び、配管94bを介して冷却装置91に戻り、当該冷却装置91によって再び冷却されるようになっている。
【0034】
以上のように、本実施形態では、出入口部42,43を有するジャケット部40で端子10のベース部30を覆うと共に、ベース部30の円柱部32の外周面321に溝322を形成する。これにより、ベース部30とジャケット部40の筒状部42との間に、冷媒が流通可能な空間323が形成され、出入口部42,43を介して冷媒をジャケット部40内に導入して空間323内を流通させることが可能となるので、大電流を通電した場合でも端子10の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、ジャケット部40とベース部30をろう付けにより接合するので、溝322によりジャケット部40と円柱部32との間に形成される空間323を適切にシールすることができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、固定端子60及びボルト70を用いて電線50を端子10に接続するので、ベース部30をジャケット部40で覆う構成であっても電線50を端子10に接続することができる。
【0037】
<<第2実施形態>>
図9は本発明の第2実施形態における端子付き電線を示す斜視図、
図10は
図9に示す端子の分解斜視図、
図11は
図9に示す端子のベース部の断面図である。
【0038】
本実施形態では、端子本体の構成が第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下に、第2実施形態における端子付き電線1Bについて第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
図9及び
図10に示すように、本実施形態における端子本体15Bの端子接続部20Bとベース部30Bが別々の部材で構成されている。端子接続部20B及びベース部30Bはいずれも、例えば、金属材料等の導電性を有する材料から構成されている。なお、相手方端子100との良好な接続を確保する観点から、接触片端子接続部20Bを構成する材料のヤング率が、ベース部30Bを構成する材料のヤング率よりも高いことが好ましい。
【0040】
端子接続部20Bは、複数(本例では12本)の接触片21と連結部22に加えて、第1及び第2の挿入片23,24を備えている。第1及び第2の挿入片23,24は、端子10の軸方向に沿って延在する板状形状をそれぞれ有しており、その一端で連結部材22に固定されていると共に、接触片21とは反対の方向に向かって延出しており、当該第1及び第2の挿入片23,24の先端が自由端になっている。上述のように連結部22は円筒形状を有しているため、第1及び第2の挿入片23,24は、円周方向に沿って間隔を空けて配置されている。第1の挿入片23の先端には、当該端子接続部20Bの径方向に向かって突出する係止突起231が設けられている。第2の挿入片24の先端にも、当該端子接続部20Bの径方向に向かって突出する接触突起241が設けられている。
【0041】
図10及び
図11に示すように、ベース部30Bは、フランジ部31及び円柱部32に加えて、端子接続部20Bを保持する保持部33を備えている。この保持部33は、端子接続部20Bの連結部22及び挿入片23,24が挿入可能な穴部34を備えている。この穴部34は、開口341aを有する小径部341と、底面342aを有する大径部342と、を備えている。大径部342は、小径部341の内径よりも大きな内径を有しており、小径部341と大径部342との間には段差343が形成されている。
【0042】
本実施形態では、端子接続部20Bがベース部30Bの穴部34に挿入されると、第1の挿入片23の係止突起231が穴部34の段差343に係止することで、端子接続部20Bがベース部30Bに固定される。また、第2の挿入片24の接触突起241がベース部30Bの小径部341の内面に当接することで、端子接続部材20Bとベース部30Bとの電気的な接続が確実に確保される。
【0043】
以上のように、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、出入口部42,43を有するジャケット部40で端子10Bのベース部30Bを覆うと共に、ベース部30Bの円柱部32の外周面321に溝322を形成する。これにより、ベース部30Bとジャケット部40の筒状部42との間に、冷媒が流通可能な空間323が形成され、出入口部42,43を介して冷媒をジャケット部40内に導入して空間323内を流通させることが可能となるので、大電流を通電した場合でも端子10Bの温度上昇を抑制することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、ジャケット部40とベース部30Bをろう付けにより接合するので、溝322によりジャケット部40と円柱部32との間に形成される空間323を適切にシールすることができる。
【0045】
また、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、固定端子60及びボルト70を用いて電線50を端子10Bに接続するので、ベース部30Bをジャケット部40で覆う構成でも電線50を端子10Bに接続することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、端子本体15Bの端子接続部20Bとベース部30Bが相互に独立した部材で構成されている。これにより、ジャケット部40とベース部30Bをろう付けにより接合した後に、ベース部30Bに端子接続部20Bを取りつけることが可能となる。このため、ジャケット部40とベース部30Bをろう付けする際に、その熱によって端子接続部20Bの接触片21のばね特性が変化してしまうのを抑制することができる。
【0047】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0048】
例えば、上述の実施形態では、車両に設けられる充電コネクタの端子が、ジャケット部からなる冷却構造を備えるように説明したが、特にこれに限定されない。例えば、充電スタンド等に設けられる給電プラグの端子が当該冷却構造を備えてもよいし、プラグ型端子(棒状の端子)が当該冷却構造を備えてもよい。