【実施例】
【0285】
実施例1
本発明者らは、診療所で容易に使用可能なヘパラン硫酸(HS)調製物のスケールアップに適した、商業的に入手可能なブタCelsusヘパラン硫酸供給源由来の新規FGF2結合性HSの精製を調べた。
【0286】
FGF2由来のヘパリン結合ドメイン(HBD)ペプチド配列GHFKDPKRLYCKNGGF[配列番号1]を選択し(グリコサミノグリカンの構造およびそのタンパク質との相互作用;Gandhi NSおよび Mancera RL., Chem Biol Drug Des. 2008 Dec; 72(6):455−82)、そしてこれをFGF2に結合する特異的HS種の精製に用いた。
【0287】
ペプチド合成に際して、該ペプチドを
3Hヘパリンアッセイに供し、ここで、ニトロセルロース膜に染み込ませたペプチドへの、用量依存方式での
3Hヘパリンの特異的結合を、
3Hヘパリンの総カウントに比較した。
3HヘパリンのFGF2−HBDペプチドへの特異的結合が示されたら、ペプチドを用いて、アフィニティクロマトグラフィによってFGF2に結合するブタCelsus HSから特異的HSをプルダウンした。この新規HS種をHS8と名付けた(そして変異体名HS8Gを与えた)。
【0288】
グリコサミノグリカン(GAG)結合プレートを用いて、FGF2との結合における特異性に関してHS8を分析し、ここで、FGF2へのHS8の特異的結合を、ヘパリン、ブタCelsus HSおよびHS8陰性分画に比較して測定した。
【0289】
GAGをGAG結合プレート上に一晩プレーティングし(5μg/ml)、そしてその後、組換えヒトFGF2(0〜100ng/ml)とインキュベーションし、そしてELISA法を用いて、FGF2へのGAG結合の特異性をチェックした。
【0290】
結果は明らかに、HS8が他のGAG種に比較して、FGF2へのより高い結合性を有することを示した(
図1)。HS8がFGF2に結合する能力を、他の増殖因子(VEGF、BMP2、PDGFBB、FGF1、およびFGF7)に対して比較し、これによって、HS8がFGF2に特異的であることが明らかになった(
図2)。
【0291】
HS8をまた、STRO1ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を用いたin vitro細胞増殖アッセイに供して、HS8の生理活性を決定した。本発明者らは、対照に比較して、hMSCの短期増殖において、異なる用量(50ng/ml、100ng/ml、500ng/ml、1000ng/ml、5000ng/mlおよび10000ng/ml)の単独培地補充物としてHS8を用いた。外因性増殖因子のいかなる添加も伴わずに、本発明者らは、HS8でhMSCの用量依存性増殖を観察した(
図3および4)。
【0292】
実施例2
間葉系幹細胞(MSC)
MSCは、in vitroで、骨形成性、軟骨形成性、脂肪形成性、筋肉形成性、および他の細胞系譜への分化を導くことが可能であるプラスチック接着性細胞と広く定義され、そして近年、International Society for Cytotherapy(Zulmaら, 2011)によって、「多分化能間葉系間質細胞」の名称もまた、MSCに対して使われるようになった。MSCは、骨髄、脂肪組織、真皮組織、椎間板、羊水、多様な歯科組織、ヒト胎盤および臍帯血に見出されている(Siら、2011およびZulmaら、2011)。MSCの療法的潜在能力が認識され、そして骨組織再生および非骨格組織再生などの多くの臨床的適用において、用いられてきている。近年、MSCの免疫抑制および抗炎症効果が記載された。これは、細胞表面上に主要組織適合性複合体I分子(MHC−1)を低レベルで発現することにより、MSCが弱い免疫原性を持つこと、TおよびBリンパ球両方の活性化および増殖を抑制可能であること、ならびに損傷を受けた組織を保護しながら、傷害を受けた組織の微小環境を調節することによる(Siら、2011およびZulmaら、2011)。MSCが仲介し、GVHDを治療するために有効に使用可能であるこの免疫抑制は、機構の種変動を有する(Renら、2009およびShiら、2010)。サイトカインにプライミングされるマウスMSCは、一酸化窒素(NO)によって仲介され、そしてヒトMSCのサイトカイン・プライミングは、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)を通じて実行される。
【0293】
ヘパリンおよびヘパラン硫酸グリコサミノグリカン(HSGAG)
ヘパリンは、マスト細胞中で産生され、そして貯蔵され、そしてこれに比較して、HSGAGは、すべての動物組織で見られ、そしてこれらはHS鎖が細胞表面またはECMタンパク質に結合する場合、プロテオグリカンとして存在可能である。HSは、代謝、輸送、情報伝達、細胞接着、細胞増殖および分化に影響を及ぼし、そしてすべての臓器系を補助する(Bishopら、2007およびGandhiら、2008)。ヘパリンおよびHSは、反復ウロン酸−(1→4)−D−グルコサミン二糖サブユニットからなる直鎖多糖である。ウロン酸は、D−グルクロン酸またはL−イズロン酸のいずれであってもよい。さらに、特定の場所での修飾は、異なるN−硫酸化、O−硫酸化およびN−アセチル化複合体配列を生じさせる[Oriら、2008]。ヘパリン中で最も豊富な二糖は、IdoA(2S)−(1→4)−GlcNS(6S)であり、したがって、鎖の長さ全体で高い負の電荷を生じさせ、これによってヘパリンはタンパク質への結合において、劣った選択性を示すかまたは選択性を示さない。他方で、HSは、最も一般的な型として、非硫酸化GlcA−(1→4)−GlcNA二糖を有し、非硫酸化NAドメインの分離ブロックおよび非常に硫酸化されたヘパリン様IdoA−(1→4)−GlcNS二糖のブロック(NSドメイン)を生じさせる。NAおよびNSドメインは、NA/NS遷移ドメインによって分離される。HS構造のこの多様性が、広範囲の生物学的機能の原因である。
【0294】
線維芽細胞増殖因子(FGF)タンパク質およびヘパリン結合ドメイン
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、ヒトにおいて22のメンバーを含む、ポリペプチド増殖因子の大きなファミリーである。これらは、FGF受容体(FGFR)として知られるFGF細胞表面受容体チロシンキナーゼのサブファミリーに結合し、そしてこれを活性化することによって、発生、分化、細胞増殖、血管形成および創傷治癒において大きな役割を果たす(Ornitzら、1996)。さらに、FGFは、最もよく研究されたヘパリン結合タンパク質の1つであり、そしてHSGAGは、FGFRとの直接分子会合によって、FGFシグナル伝達を制御する(Pellegrini、2001)。さらに、FGFR1を通じたFGF2シグナル伝達は、MSC拡大に重要である(Gronthosら、1999)。
【0295】
ヘパリン/HSとFGF2の相互作用
タンパク質のヘパリン/HS結合部位において、共通の構造特徴があることが多様な研究によって認識されてきている(Gandhiら、2008;Hilemanら、1998およびOriら、2008)。CardinおよびWeintraubは、1989年に、21のヘパリン結合タンパク質を分析した後、ヘパリン結合ドメイン(HBD)を決定する最初の試みを行い、そして典型的なヘパリン結合部位が、配列XBBXBXまたはXBBBXXBX、式中、Bは陽性荷電アミノ酸(アルギニン、リジンおよび稀にヒスチジン)であり、そしてXはヒドロパシー(hydropathic)残基である、を有しうることを提唱した。次のコンセンサス配列TXXBXXTBXXXTBBは、いくつかのタンパク質のX線およびNMRを比較した後、Hilemanらによって1998年に導入された。この配列において、Tはターンを定義し、Bは塩基性アミノ酸(アルギニンまたはリジン)を定義し、そしてXはヒドロパシー残基を定義する。
【0296】
GAGおよびタンパク質間には強いイオン性相互作用が予期され、陽性荷電塩基性アミノ酸は、ヘパリン鎖上の負に荷電した硫酸またはカルボン酸基とイオン結合を形成する。これらの役割は、ヘパリンとの、そしておそらくHS様NSドメイン内の非常に硫酸化された領域との相互作用の決定要因である(Frommら、1997およびOriら、2008)。さらに、他のタイプの結合、すなわちファンデルワールス力、水素結合および疎水性相互作用がある。これらの結合は、より不均一なHSとの相互作用で役割を果たし、この場合、中性アミノ酸もまた必要とされる(Frommら、1997およびOriら、2008)。FGF2を考慮すると、グルタミンおよびアスパラギンアミノ酸は、イオン結合に加えて、糖のヒドロキシル基と水素結合を形成することによって、HSとの相互作用に重要な役割を果たす(Thompsonら、1994)。
【0297】
これまでの多くの公表された研究にしたがって、FGF2のヘパリン結合ドメインとして、異なるペプチド配列があり、そしてこれらを表1に編集する。ここで、本発明者らは、アミノ酸を全長FGF2配列(288aa)にしたがって番号付けする番号付け系を採用している。
【0298】
移植片対宿主病(GVHD)
造血細胞移植(HCT)は、血液学的悪性疾患を治療するために用いられる集中的療法であり、同種HCT法は年々増加しつつある(Ferraraら、2009)。HCTの主な合併症は、胃腸管、肝臓、皮膚、および肺に主に影響を及ぼす免疫学的障害であるGVHDである。Billingham、1966〜67によれば、GVHDが起こるには3つの必要条件が満たされる必要があり、すなわち、1)移植片が、Tリンパ球である免疫学的適格細胞を含有しなければならず、2)レシピエントが移植ドナーに存在しない組織抗原を発現しなければならず、そして3)患者が移植細胞を無効にするために有効な反応を開始させることが不可能でなければならない。GVHD病態生理は、骨髄破壊性条件付け措置を用いて、宿主防御骨髄を除去した際に始まる。宿主の抗原提示細胞は、損傷を受けた組織によって産生されるサイトカイン(TNFα、IL1、LPS)のために活性化される。この段階で同種HCTをひとたび行うと、ドナーT細胞が活性化され、それによってさらなるサイトカインが産生されて、細胞性および炎症性反応が導かれ、GVHDが生じる。非造血性幹細胞;MSCは、強力な免疫抑制作用のため、同種T細胞反応を減少させ、そしてGVHDを軽減させうる(Le Blancら、2008;Meulemanら、2009およびToubaiら、2009)。
【0299】
療法目的のため、hMSCをスケールアップする必要性
細胞に基づく療法におけるhMSC使用の主な欠点は、すでに診療所で用いられてはいるが、十分な細胞数を達成することが困難であることである。骨髄単核細胞の0.01%〜0.0001%と同程度に低い可能性もあるほどhMSCが少数であるため、その広い使用が妨げられる。Caplan、2009は、骨髄を異なる年齢のドナーから得て、分散させ、培養フラスコに入れ、その後、CFU−Fを計数し、そして有核骨髄細胞あたりのMSCに対する年齢10年を示した。有核骨髄細胞あたりのMSCの顕著な減少が観察され、誕生から10代までに10倍減少し、そして10代からさらに年齢が上がるとさらに10倍の減少があった。明らかに、骨髄中のMSCの数は年齢とともに減少した。さらに、Caplanは、これらの減少が、若年層および成体で観察される骨折治癒率と平行して減少することを指摘した。これに比較して、骨髄中の造血幹細胞の力価は10
4有核骨髄細胞あたりほぼ1であり、個体の年齢を通じて一定のままであった。
【0300】
hMSCの現在の拡大法
研究者らは、hMSCを培養する際、骨髄微小環境を模倣することが可能であれば、臨床使用のための療法に適した数のhMSCを達成可能であると考えてきた。基本的に、模倣は、2つの広い方法によって達成可能であり、すなわち、hMSCをECMとともに増殖させること、および外因性増殖因子補充とともに増殖させることである。ECM基質を用いた場合、hMSC付着および累積細胞数の増加が観察された(Gruenertら、2007およびMatsubaraら、2004)が、拡大された細胞は幹細胞性を欠いていた(Coolら、2005)。さらに、FGF2は、一般的に、外因性増殖因子補充物として用いられ、これはまた、標準培地での対照と比較して、細胞数の顕著な増幅も示した(Lingら、2006およびSotiropoulouら、2006)。ECM基質とともに増殖させた細胞と一致して、FGF2とともに増殖させた細胞は、対照における多分化能hMSCと比較して、増加した量の分化した前駆細胞を有した(Gronthosら、1999およびWalshら、2000)。したがって、幹細胞性に不都合に影響を及ぼすことなく療法に適した数のhMSCを達成可能である、hMSCの増殖を促進する分子が同定されたことは、GVHDを軽減する、骨再生および骨髄移植のためのhMSCの臨床的使用において非常に有望であることが示された。
【0301】
HS GAGは、細胞の幹細胞性に影響を及ぼすことなく、hMSCの増殖を改善する
Nurcombeらは、1993年、HS GAGによって制御される、ネズミ神経前駆細胞に対するFGFの活性、およびこの相互作用が、FGF2のその受容体への結合の必要条件であることを示した。さらに、FGFへのHSGAGの結合には有意な相違があり、第9日、これらの細胞によって産生されるHS GAGは、FGF2に優先的に結合し、そして第11日までには、HSGAG結合はFGF1にシフトした。さらに、これらのユニークなヘパラン硫酸は、神経前駆細胞上の細胞表面受容体との相互作用を通じて、特異的受容体へのFGF2の結合を仲介する(Brickmanら、1995)。1988年、Brickmanらは、不死化胚性第10日マウス神経上皮2.3D細胞からの2つの別個のHSプールの単離および特徴付けによって、これらの知見をさらに補助した。1つのプールは、対数増殖期の細胞に由来し、これはFGF−2の活性を増加させ、そしてもう一方のプールは接触阻害および分化を経ている細胞に由来し、FGF1に対する優先性を有した。本発明者らの研究室によって以前記載されたように、HS2と称される胚性HS GAG調製物は、多分化能の有意な喪失を伴わずにhMSC増殖を増加させ、そしてin vivoで移植された際、マウスにおいて骨形成増加を導く。この証拠によって、ECM構成要素HS GAGは、多分化能に不都合に影響を及ぼすことなく、hMSCの増殖を改善させることが示唆される。したがって、FGF2への高い結合アフィニティを有し、HS2に比較して、臨床設定で使用されるように容易にスケールアップ可能である、細胞増殖に対するその活性を増強させる、HS変異体に対する特別な必要性がある。
【0302】
結果
カラムクロマトグラフィによる、FGF−2に対してより高い結合アフィニティを持つヘパラン硫酸(HS8)の単離
FGF2結合性HS2を精製する戦略と一致して、本発明者らは、診療所で容易に使用可能なHS調製物をスケールアップするため、商業的に入手可能なブタCelsusヘパラン硫酸供給源(Celsus Laboratories、米国)から別のFGF2結合性HSを精製する可能性を探る。表1に提示するこれらのペプチド配列のうち、FGF2−Gandhi−HBDと名付けられた、
157GHFKDPKRLYCKNGGF
172(Gandhiら、2008)を用いた。
【0303】
[
3H]ヘパリンアッセイ
ペプチド合成に際して、これらを
3Hヘパリンアッセイに供し、ヘパリンに対するFGF2−HBDペプチドの結合能を試験した。既知の量のペプチドまたは飽和量のペプチドを同一のニトロセルロース膜上で乾燥させ、これをまず風乾し、そして次いで、真空オーブン中、80℃で45分間さらに乾燥させた。次いで、膜を1xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、そしてカウントバイアル中、4%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)/PBS中、0.1μCiの[
3H]ヘパリン(Perkin Elmer、米国ボストン)と、16時間インキュベーションした。その後、膜を洗浄し、そしてPerkin Elmer Tri−Carb 2800 TCR液体シンチレーション分析装置によって、放射活性を決定した。
【0304】
BMP2−HBDを陽性対照として用い、既知の量のペプチド(配列番号1)を用いた際、これらは、用量依存性にCPM増加を示した[
図6(A)]。しかし、ニトロセルロース膜を500μg/mlペプチド溶液中で飽和させた際に、最高のカウントが示された。Neat[
3H]ヘパリンからのCPMパーセントを、500μg/ml溶液レベルで、各ペプチドに関して計算した。BMP2−HBD(7.2%)が最高であり、次がFGF2−Gandhi−HBD(4.97%)であった。[
3H]ヘパリンアッセイから得た結果によれば、FGF2−Gandhi−HBDを用い、アフィニティクロマトグラフィによって、ブタCelsus HSから、FGFへのより高いアフィニティ結合を有するHS(HS8)をプルダウンした。クロマトグラムを
図6(B)に示す。
【0305】
HS8の特徴付け
GAG結合アフィニティアッセイ
HS8を、96ウェルGAG結合プレート(Iduron、英国)を用い、FGF2および他のタンパク質(R&D Systems)への結合におけるアフィニティアッセイに供し、ここで、HS8+のFGF2への特異的結合を、ヘパリン(Sigma)、ブタCelsus HS(Celsus Laboratories、米国)およびHS8陰性分画に比較して測定した。GAGをGAG結合プレート(2.5〜10μg/ml)に一晩プレーティングし、そして標準アッセイ緩衝液(SAB)中、0.2%魚類ゼラチン(Sigma)で37℃で1時間ブロッキングした。
【0306】
次いで、200μl/ウェルの0〜100ng/mlの組換えヒトFGF2と、37℃で2時間インキュベーションし、そしてその後、200μl/ウェルの250ng/ml一次ビオチン化抗体(R&D Systems)と37℃で1時間インキュベーションした。次の工程において、プレートを200μl/ウェルの220ng/ml ExtrAvidin−AP(Sigma)と37℃で30分間インキュベーションした。一晩インキュベーションからこの工程まで、プレートを各工程の間に、SABで3回洗浄した。最後に、200μl/ウェルのSigmaFAST p−ニトロフェニルリン酸(Sigma)で40分間インキュベーションし、そしてVictor
3 1420マルチラベルカウンター、PerkinElmerによって、吸光度を405nmで読み取った。
【0307】
試験した3つの濃度すべて(2.5、5および10μg/ml)のGAGすべてのFGF2への結合は、FGF2の量が増加するにつれて、同様に増加し、そして100ng/mlのFGFで飽和に達した(
図8)。異なるGAGをFGF2への結合に関して試験した際、結果は明らかに、HS8+が、他のGAG種に対するよりも、FGF2への結合の最高のアフィニティを有することを示した(
図9)。Celsus HS:HS8+の100ng/ml FGF2ポイントでの相違倍数を比較すると、比は1:1.51であった。
【0308】
次いで、本発明者らは、異なるタンパク質に対するHS8+およびHS8(−)分画の結合能を試験した(
図10)。HS8+は、VEGF、BMP2、PDGFBB、FGF1、およびFGF7に比較して、FGF2への結合においてより高いアフィニティを有する[
図10(A)]。一方、HS8(−)分画は、他のタンパク質に比較して、FGF1への結合において最大のアフィニティを有する[
図10(B)]。
【0309】
Onoら、1999から修飾して、異なるGAGが、FGF2と、ヘパリンに関して競合する能力をこのアッセイで試験した。既知の濃度のFGF2(R&D Systems)と異なる濃度のGAGを、室温(RT)で、マイクロチューブ中、30分間混合した。
【0310】
この40μlのビーズ溶液[20μlのへパリン−アガロースビーズ(タイプI、Sigma)およびポリアクリルアミドゲル(Bio−Gel P−30、Bio−Rad)]に添加し、そしてRTで30分間混合した。ヘパリンビーズを、BSA−PBS(PBS中、1%BSA)で遠心分離(2000rpm、1分間)することによって3回洗浄し、そしてPBST(0.02%Tweenを含有するPBS)で3回洗浄し、そして各試験管に100μlの1:500ビオチン化抗FGF2(R&D Systems)を添加し、そしてRTで1時間インキュベーションした。上述のように洗浄した後、100μlの1:10 TMB基質(R&D Systems)を添加し、そしてRTで30分間混合した。停止溶液(50μlの2N H
2SO
4)を添加し、そして遠心分離後、100μlの上清を96ウェルプレートに移した。Victor
3 1420マルチラベルカウンター、PerkinElmerによって、吸光度を405nmで読み取った。
【0311】
最初に、添加したヘパリンビーズの量と結合するために必要なFGF2の量を、FGF2最適化によって測定し、そしてFGF2用量20ng/mlを次の実験セットのために選択した[
図11(A)]。
【0312】
次いで、競合アッセイにおいて使用すべきGAGの範囲を得るため、本発明者らはまず、異なる量のヘパリンを用いた。50μgのヘパリンを添加すると、ビーズに付着する内部ヘパリンと競合するためにほぼ十分であった[
図11(B)]。したがって、本発明者らは、競合アッセイにおいて、0〜50μg GAGの範囲を用いた[
図11(C)]。競合パーセントを考慮すると、ヘパリンは、最も競合性であり、50μgを添加することによって、ほぼ13%に達し、次いで、HS8+が43%、Celsus HSが50%、そしてHS(−)が63%であった。
【0313】
増殖アッセイ
21歳のヒスパニック系男性ドナー由来のhMSCの2つの変種をこのアッセイに用い、これらは、磁気活性化細胞ソーティングによって単離されたSTRO1陽性細胞(第5〜7継代)および慣用的プラスチック接着によって単離されたHM21細胞(第5継代)であった。細胞を3000細胞/cm
2植え付け密度で植え付け、そして24時間プレートに付着させた。次いで、50〜10000ng/mlの範囲の単独の培地補充物として用いた異なる濃度のHS8+、および陽性対照としての2.5ng/mlのヒト組換えFGF2(R&D Systems)を培地に添加した。培地交換を2または3日のいずれかで行った。STRO1細胞において、培地交換を2日ごとに行った、増加する濃度のHS8+は、生存細胞数を増加させ、そして第6日までに、対照に比較して、5000ng/mlが最高のカウントを生じた(
図12)。対照的に、培地交換を3日ごとに行ったHM21細胞は、第6日までに、10000ng/mlで、対照に比較して,わずかにより高いカウントを示した(
図13)。
【0314】
2つの細胞種で、生存細胞数に有意な相違が観察されるため、本発明者らは、第5継代のSTRO1およびHM21細胞を6日間用いた増殖アッセイを行い、そして培地交換を3日ごとに行う対照に比較した。STRO1は、HM21細胞に比較して、わずかにより高い増殖カウントを示したが、どちらの細胞タイプでも、対照および処理細胞は、ほぼ同じ細胞カウントを生じた[
図14(A)]。次いで、本発明者らは、先の実験から、培地交換の異なる時間間隔に基づいて、第6日でのSTRO1細胞の細胞カウント/cm
2を計算した[
図14(B)]。興味深いことに、3日ごとの培地交換に比較して2日ごとに培地交換を行うと、対照および処理細胞の両方でより多い細胞カウントが得られた。さらに、培地交換を2日ごとに行うと、処理細胞カウントは、未処理対照よりも高かった。
【0315】
要約
本発明者らは、配列
157GHFKDPKRLYCKNGGF
172を用いて、ブタCelsus HSから、アフィニティクロマトグラフィによって、FGF2に対してより高いアフィニティ結合性であるHS(HS8)を調製した。
【0316】
グリコサミノグリカン(GAG)結合アッセイ結果において、HS8+が、他のGAG種に比較して、FGF2に最高の結合アフィニティを有することが明らかに示された。さらに、Celsus HS:HS8+の100ng/ml FGF2ポイントでの相違倍数を比較すると、比は1:1.51であった。競合パーセントを考慮して、ヘパリンビーズ競合(completion)アッセイにおいて、ヘパリンは、最も競合性であり、50μgを添加することによって、ほぼ13%に達し、次いで、HS8+が43%、Celsus HSが50%、そしてHS(−)が63%であった。磁気活性化細胞ソーティングによって単離されたSTRO1+hMSCおよび慣用的プラスチック接着によって単離されたHM21 hMSCを細胞増殖アッセイに用い、5μg/mlの濃度でHS8+を単独の培地補充剤として用いた際、そして培地交換を2日ごとに行った際、より高い細胞カウントが得られた。結論として、本発明者らは、現在、商業的に入手可能なヘパラン硫酸供給源のプールから、FGF2により高い結合アフィニティを有するヘパラン硫酸(HS8)を成功裡に単離してきており、HS8は、FGF2により高い結合アフィニティを所持し、そしてhMSCが増殖する能力を増加させる。
【0317】
結論として、本発明者らは、現在、商業的に入手可能なヘパラン硫酸供給源のプールから、FGF2により高い結合アフィニティを有するヘパラン硫酸(HS8)を成功裡に単離してきており、そしてHS8が、ヘパリンを含む他のGAGに比較して、より高い結合能を有することを示した。さらに、HS8+は、単独の培地補充剤として用い、培地交換を2日ごとに行った際、細胞増殖を増加させる。したがって、本発明者らは、これらの細胞を、FGF2に対する高いアフィニティを有するように操作されたヘパラン硫酸(HS8)中で培養することによって、高品質のex vivo拡大MSCに関する必要性に取り組んだと考えている。
【0318】
さらなる研究
FGF2に特異的なHS(HS8)の単離
本発明者らは、FGF2に対してより高い結合アフィニティを有するHSであるHS8の単離を成功裡に達成したが、[
3H]ヘパリンアッセイ、GAG結合アッセイ、およびLeeら、2007にしたがった細胞付着アッセイによって、他のFGF2 HBDペプチド配列(表1)をさらに試験するであろう。
【0319】
結合アフィニティアッセイ
HS8の結合アフィニティがGAG結合プレートによってすでに確認されており、そしてドットブロットアッセイおよびBIAcore T100を用いた動力学結合(Cainら、2005)によって、さらに検証されるであろう。
【0320】
競合アッセイ
ELISA法由来の結果は、ウェスタンブロット法によってさらに確認されるであろう。
【0321】
増殖アッセイ
増殖アッセイの結果は、より多くのhMSC株を用いることによって、そしてまたより低い継代の細胞を用いることによって、さらに検証されるであろう。さらに、短期増殖アッセイは、BRDU(Roche)およびWST−1(Roche)試薬を用いることによって、実行されるであろう。
【0322】
二糖分析
HS8の二糖分析は、Muraliら、2009にしたがった陰イオン交換クロマトグラフィを用いて行われるであろうし、そしてHS8の組成が明らかになりうる。
【0323】
FGF2の安定性
安定性アッセイは、SYPROアッセイおよびFGF2 quantikineアッセイとして行われるであろう。SYPROアッセイにおいて、FGF2タンパク質とGAGの相互作用は、特異的Syproオレンジ色素(Uniewiczら、2010)によって、タンパク質の変性温度として測定されるであろう。細胞培養におけるFGF2濃度を測定するため、FGF2 quantikineアッセイを製造者の推奨(R&D Systems Quantikine(登録商標)ELISAカタログ番号DFB50)にしたがって行うであろう。結果を
図46に示す。
【0324】
HS8を用いて増殖させたhMSCの生物学的活性のin vitroでのチェック
多分化能は、プラスチック接着、骨形成、脂肪形成および軟骨形成組織への分化、ならびに表面マーカーのFACSに関してチェックされるであろう(Dominiciら、2006)。CFU−Fアッセイは、骨髄吸引物、およびHS8を含みまたは含まずに拡大したhMSCで行われるであろう(Cawthon、2002およびGuillotら、2007)。hMSCの免疫調節活性を混合Tリンパ球アッセイによって評価するであろう。
【0325】
HS8を用いて増殖させたhMSCの生物学的活性のin vivoでのチェック
単離しそしてHS8の存在下で増殖させた細胞を、マウス骨再生モデル(Zannettinoら、2010)において用い、そしてまた、GVHDの異種移植ヒトNOD−SCIDマウスモデル(Tiastoら、2007およびToubaiら、2009)において用いるであろう。
【0326】
実施例3
GAG結合プレート(Iduron)を用いて、FGF2に対する異なるGAGの結合能を評価した。ヘパリン結合性増殖因子(HBGF)BMP−2、FGF1、FGF2、FGF7、PDGF−BBおよびVEGFに関する異なるGAGの結合能もまた、GAG結合プレート(Iduron)を用いて評価した。用いた材料および方法論を以下に記載する。
【0327】
HS8は、ヘパリンとほぼ同程度にFGF−2に結合することが見出され、そして未精製出発Celsus HSおよびHS8−フロースルー分画よりも確かによく結合することが見出された(
図15)。
【0328】
HS8(HS8+)は、試験したすべての他のHBGFよりもFGF2に優先的に結合し、そしてヘパリンよりもFGF2により高い結合能を有し、すなわち、HS8は、FGF2に特異的結合を示す。HS8−および未精製出発Celsus HSは、試験したHBGFのいずれに対してもほとんど優先性を示さなかった(
図16)。
【0329】
材料
1. 標準的アッセイ緩衝液(SAB)−100mM NaCl、50mM酢酸ナトリウム、0.2%v/v Tween20、pH7.2
2. ブロッキング緩衝液−0.4%魚類ゼラチン(Sigmaカタログ番号67041)+SAB
3. GAG結合プレート(Iduron、英国)
4. R&D Systems由来のタンパク質:BMP2−カタログ番号355BM、FGF1−カタログ番号231BC、FGF2−233FB、FGF7−カタログ番号251KG、PDGF BB−カタログ番号220BB、VEGF−カタログ番号293VE
5. R&D Systems由来の抗体:BMP2−カタログ番号BAM3552、FGF1−カタログ番号BAF232、FGF2−BAM233、FGF7−カタログ番号BAF251、PDGF BB−カタログ番号BAF220、VEGF−カタログ番号BAF293
6. ExtraAvidin−AP(Sigmaカタログ番号E2636)
7. Sigma FAST p−ニトロフェニルリン酸(Sigma、N2770)
方法
1. SABにGAGを溶解する(5μg/ml)
2. 200μlのGAG溶液/ウェルをGAG結合プレートに添加し、そして光から保護しながら、RTで一晩インキュベーションする
3. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
4. 250μl/ウェルのブロッキング緩衝液とプレートを、光から保護しながら、37℃で1時間インキュベーションする
5. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
6. タンパク質をブロッキング緩衝液に溶解し、そして連続希釈:0、0.781、1.56、3.125nMを行う
7. 200μl/ウェルの希釈タンパク質を、GAGコーティングプレートに分配し、そして37℃で2時間インキュベーションする
8. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
9. 200μl/ウェルの250ng/mlのブロッキング溶液中のビオチン化一次抗体を添加し、そして37℃で1時間インキュベーションする
10. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
11. 200μl/ウェルの220ng/mlのブロッキング溶液中のExtraAvidin−APを添加し、そして37℃で30分間インキュベーションする
12. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
13. 200μl/ウェルの現像試薬:DI水中のSigma FAST p−ニトロフェニルリン酸を添加し、そしてRTで40分間インキュベーションする
14. 405nmで吸光度を読み取る
実施例4
BrdU取り込み増殖アッセイを行い、hMSC増殖に対するHS8の効果を確立した(プロトコルを以下に記載する)。
【0330】
ヒト間葉系幹細胞のHS8(HS8+)に対する用量−反応を、BrdU取り込みによって、36時間に渡って監視した。投薬陽性対照として、FGF2を用いた。HS8+は、hMSC増殖を増進し、そして他のGAGよりも有意により高い刺激を提供することが見出された(
図17)。
【0331】
プロトコル(細胞増殖ELISA、BrdU(比色) Roche)
1. 細胞植え付け−190μlの培地/ウェル中、5000細胞(96ウェルプレート)
2. 培地−1000mg/L+10%ウシ胎児血清(FCS)+1% 2mM L−グルタミン+1%ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDMEM
3. 37℃および5%CO
2で6時間インキュベーションする
4. 6時間インキュベーションした後、レイアウトにおけるように指定したウェルに関して10μlの培地中、異なる用量の処理を加える
5. FGF2(ng/ml)およびGAG(μg/ml)−10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125
6. 処理を伴い、37℃および5%CO
2で36時間インキュベーションする
7. BrdUを各ウェルに添加する
8. 細胞をBrdUで2時間、37℃および5%CO
2で標識する(20μlのBrdU標識溶液/ウェルを添加する)
9. プレートを軽く叩くことによって、標識培地を除去する
10. 200μl/ウェルのFixDenatを細胞に添加し、そして15〜25℃で30分間インキュベーションする
11. 軽く振りそして叩くことによって、FixDenat溶液を完全に除去する
12. 100μl/ウェルの抗BrdU−POD作業溶液を添加し、そして15〜25℃で90分間インキュベーションする
13. 振り落とすことによって抗体コンジュゲートを除去し、そして250μl/ウェルの洗浄溶液(1xPBS)でウェルを3回リンスする
14. 軽く叩くことによって、洗浄溶液を除去する
15. 100μl/ウェルの基質溶液を添加し、そして15〜25℃で30分間インキュベーションする。
【0332】
16. 370nmでの吸光度を測定する(参照波長:492nm)
実施例5
FACSに基づく細胞増殖アッセイを行って、hMSC増殖に対するHS8の影響を確立した(プロトコルを以下に記載する)。
【0333】
ヒト間葉系幹細胞のHS8(HS8+)に対する用量−反応をGuava ViaCount(FACSに基づく)法によって6日間監視した。用量陽性対照として、FGF2を用いた。HS8は、hMSC増殖を増進し、そして有意な刺激を提供することが見出された。
【0334】
細胞増殖プロトコル
材料
1. HM20 hMSC−男性ヒスパニック系20歳のドナー(Lonzaより購入)
2. FGF2(R&D Systems カタログ番号233−FB−025)
3. 維持培地:DMEM(10mg/lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strp、2mM L−グルタミン
4. HS8(+)、バッチ2、HS8(−)バッチ2、ブタ粘膜ヘパラン硫酸(Celsus Laboratories、米国)、ヘパリン(Sigmaカタログ番号H3149)
5. Guava Flex試薬(Millipore)
方法
1. HM20細胞を24ウェルプレート上、500μl/ウェルの培地中、3000細胞/cm
2でプレーティングする(第0日)
2. 第1日−500μlの新鮮な培地中、増加する濃度のFGF2(ng/ml)およびGAG(μg/ml)で培地交換する−10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125、0.156。
【0335】
3. 培地を2日ごとに交換する
4. 指定した時点で細胞を採取する(第2日、第4日および第6日)−100μlのトリプシンを用い、そして100μlの培地(t=第2日)または300μlの培地(第4日および第6日)で中和する
5. 細胞をGuava装置中でカウントした(Guava flex試薬:細胞懸濁物は1:200である)
実施例6−ヒト間葉系幹細胞単離
ヒト骨髄(BM)単核細胞の調製
ヒト骨髄(BM)の収集および密度勾配分離によるBM単核細胞の調製
1. インフォームドコンセントの後、およそ40mLのヒト骨髄(BM)を、健康な若い志願者(18〜40歳)から、後部腸骨稜(寛骨)からの吸引によって収集する。BMを直ちに保存剤不含、ナトリウム、ヘパリン含有50mL試験管に入れる。
【0336】
2. 10μLアリコットを取り除き、そして白血球液(WCF)に1:20で希釈し、そして有核細胞内容物を血球計算板で数える。
3. 次いで、等体積のブロッキング緩衝液をBM吸引物に添加し、よく混合し、次いで、70μmのFalcon細胞濾過器を通じて濾過して、いかなる小さい塊および骨断片も取り除く。
【0337】
4. 次いで、3mLのFicoll−Hypaque(Lymphoprep)溶液をおよそ12の丸底14mLポリスチレンFalcon試験管の底に分配し、そして7.5mLの希釈BMを注意深く重層する。
【0338】
5. 試験管を400gで、室温で30分間遠心分離する。
6. 使い捨てプラスチックパスツールピペットを用いて、白血球バンドをすべての試験管から回収し、そして4x14mLポリプロピレン試験管内にプールする。
【0339】
7. 細胞をHHF洗浄緩衝液で希釈し、そして試料を400gで、4℃で10分間遠心分離することによって、BMMNCをペレットにする。
8. 緩衝液を吸引し、そして細胞を1つの試験管にプールする。
【0340】
接着によるMSCの単離
1. BMNC分画を、維持培地(DMEM、1g/lグルコース、10%FCS、2mM L−グルタミン、50U/mlペニシリンおよび50U/mlストレプトマイシン)中、15cmプレートに植え付け、そして最初の培地交換前に、細胞を3日間接着させる。
【0341】
2. 3〜4日ごとに培地交換しながら、維持培地中で細胞を培養し、そして85%集密になったら、0.125%トリプシンを用いて、ルーチンに継代する。再プレーティングの際、細胞を3,000/cm
2で植え付ける。すべての培養を加湿インキュベーター中、37℃、5%CO
2で維持する。
【0342】
3. 非酵素細胞解離溶液(CellStripper、Mediatech、米国)を用いて、細胞を培養から除去し、そして計数前に1回、PBSで洗浄する。次いで、1x10
5細胞を96ウェルプレートにアリコットし、そして細胞を450xgで5分間ペレットにする。あらかじめ希釈した、2%FCS/PBS中の免疫表現型決定抗体溶液を、続いて添加し、そして細胞を氷上で20分間インキュベーションする。次いで、細胞を2%FCS/PBS中で2回洗浄した後、2%FCS/PBS中に再懸濁して、そしてGUAVA PCA−96ベンチトップフローサイトメーター(Guava Technologies Inc.、米国)で分析する。すべての試料を3つ組で測定する。
【0343】
STRO−1陽性BMSSCの磁気活性化細胞ソーティング(MACS)
MACSの使用は、BMSSC集団の部分的精製、および全体の幹細胞収量の損失となる高い喪失を伴わない多数のBMMNCのプロセシングを可能にする。密度勾配遠心分離後、およそ1〜2x10
8単核細胞をBM吸引物40mLから回収する。免疫標識前に、BMMNCを0.5mLブロッキング緩衝液中に再懸濁し、そして氷上でおよそ30分間インキュベーションして、抗体のFc受容体仲介性結合の可能性を減少させる。
【0344】
磁気活性化細胞ソーティング(MACS)を使用したSTRO−1+BMSSCの単離
1. 400g、4℃で10分間遠心分離することによって、BMMNCをペレットにし、そして5x10
7 BMMNCあたり500μlのSTRO−1上清中に再懸濁し、そして時々穏やかに混合しながら、氷上で60分間インキュベーションする。
【0345】
2. BMMNCをHHF洗浄緩衝液で2回洗浄し、そして次いで、ビオチン化ヤギ抗マウスIgM(μ鎖特異的)を1/50希釈で含有する0.5mLのHHFに再懸濁し、そして4℃で45分間インキュベーションする。
【0346】
3. BMMNCをMACS緩衝液中で3回洗浄し、そして450μLのMACS緩衝液に再懸濁し、これに50μLのストレプトアビジンマイクロビーズを添加する(90μL MACS緩衝液中、10μLのマイクロビーズ/10
7細胞)。混合物を氷上で15分間インキュベーションする。
【0347】
4. 氷冷MACS緩衝液中で1回洗浄した後、細胞の少量のアリコットをフローサイトメトリー分析のために除去する(プレ試料)。次いで、残りの細胞をミニMACSカラム上に入れる(10
8細胞のカラム容量、Miltenyi Biotec、MSカラム)。STRO−1−細胞(陰性分画)は、カラム内に保持されず、そして引力下、溶出物内で新鮮な2mLポリプロピレン試験管内に通過する一方、STRO−1+細胞は磁化マトリックスに付着したままである。
【0348】
5. カラムを0.5mL MACs緩衝液で3回洗浄して、いかなる非特異的結合STRO−1−細胞も取り除き、これを新鮮な2mLポリプロピレン試験管内に収集する。
6. カラムを磁場から回収した後、カラムをMACS緩衝液でフラッシュすることによって、STRO−1+細胞(陽性分画)を新鮮な2mLポリプロピレン試験管内に回収する。次いで、STRO−1+細胞をカウントし、そして二色FACSのためにプロセシングする。
【0349】
7. プレMACS、STRO−1−およびSTRO−1+分画各々から、少量の試料(0.5〜1.0x10
5細胞)を、0.2mLのストレプトアビジン−FITCコンジュゲート(1/50)を含有する別個の2mLポリプロピレン試験管に取り除く。次いで、細胞試料を氷上でさらに5分間インキュベーションして、濃縮処置の評価を可能にする。非標識プレMACS(1.0x10
5細胞)細胞の試料は、陰性対照として働く。
【0350】
8. これらの試料をHHFで2回洗浄し、FACS固定溶液中で固定し、そして続いて、フローサイトメトリーによって分析して、純度および回収を評価する。
9. この時点で、部分的に精製されたSTRO−1+BMSSCを培養拡大してもよいし、またはさらに二色FACSによって精製してもよい。
【0351】
コロニー効率アッセイによる骨髄品質の評価
ヒト骨髄吸引物におけるCFU−Fコロニーの予期される発生率は、プレーティングした10
5細胞あたり、およそ5〜10 CFU−Fである。
【0352】
1. BMMNCを、20%(v/v)FBS、2mM l−グルタミン、100μM l−アスコルビン酸−2−リン酸、50U/mLペニシリン、50mg/mLストレプトマイシン、およびβ−メルカプトエタノール(5x10
−5M)を補充したα−MEM中、ウェルあたり0.3、1.0、および3.0x10
5細胞で、6ウェル培養プレートに植え付ける。培養を3つ組でセットアップし、そして5%CO2および>90%湿度中、37℃で12日間インキュベーションする。
【0353】
2. 第12日培養をPBSで2回洗浄し、そして次いで、PBS中の1%(w/v)パラホルムアルデヒド中、20分間固定する。
3. 次いで、固定した培養を0.1%(w/v)トルイジンブルー(1%パラホルムアルデヒド溶液中)で1時間染色し、次いで、水道水でリンスし、そして乾燥させる。50細胞より大きい凝集物をCFU−Fとしてスコア付けする。
【0354】
非常に精製されたBMSSCの蛍光活性化細胞ソーティング
すべての測定可能なCFU−Fが、STRO−1+BMMNC分画に含有される一方、BMSSCは、総STRO−1+集団の2%未満にしか相当しない。大部分のSTRO−1+細胞は、グリコホリン−A+有核赤血球およびある程度のCD19+ B細胞である。したがって、STRO−1発現のみに基づくBMSSCの選択は、CFU−Fの部分的な濃縮しか生じない(およそ10倍)。クローン原性BMSSCは、すべて、STRO−1
明細胞分画に含有され、これはさらに、有核赤血球およびリンパ球上には存在しないマーカー、特にCD106およびCD146の発現に基づいて、二色FACSによって区別されうる。以下に記載する方法は、総STRO−1+細胞分画、STRO−1
明/CD106+ BMMSC(1.4%±0.3;n=20)の少数の下位集団の単離を可能にし、ここで、プレーティングされた2〜3細胞のうち1つが、CFU−Fを形成する能力を有する。この濃縮レベルは、未分画BMMNC(プレーティングされた10,000細胞あたり1 CFU−F)で観察されるCFU−Fの平均発生率よりほぼ5,000倍高い。
【0355】
フローサイトメトリー細胞ソーティング(FACS)を用いたSTRO−1明/CD106+ BMSSCの単離
1. 免疫標識前に、MACS単離STRO−1+細胞BMMNC(1x10
8 BMMNCから、ルーチンに2〜5x10
6細胞)を、2色免疫蛍光およびFACS用の調製において、0.5mL HHFに再懸濁する。
【0356】
2. およそ3〜5x10
5 MACS単離STRO−1+細胞を3つの適切にラベリングされた試験管に分配し、これに、以下を添加する:
(i)一次抗体なし(二重陰性対照)、氷上に維持
(ii)ストレプトアビジン−FITCコンジュゲート(HFF中、1/100希釈)、氷上で30分間インキュベーション(FITC対照)。次いで、細胞をHHFで2回洗浄する。
【0357】
(iii)HFF中で20μg/mLに希釈した0.5mLのネズミIgG抗ヒトCD106(VCAM−1)。STRO−1+細胞を氷上で30分間インキュベーションし、HHF中で2回洗浄し、そして0.2mLのPEコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異的)に再懸濁する(PE対照)。試料をインキュベーションし、そして洗浄し、次いで、HFF中に再懸濁する。
【0358】
(iv)残りの1〜2x10
6 MACS単離STRO−1+細胞を、0.5mLネズミIgG抗ヒトCD106(VCAM−1)に再懸濁し、そして上述のようにインキュベーションし、HHF中で2回洗浄し、そして0.2mLのPEコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異的)およびストレプトアビジン−FITCコンジュゲート(HHF中、1/100希釈)に再懸濁し、次いで、氷上で30分間インキュベーションする(ソーティング試料)。次いで、細胞を前述のように洗浄し、次いで、HHFに再懸濁する。
【0359】
3. 試料を、HHF中、mLあたり1x10
7細胞の濃度に再懸濁した後、FITCおよびPEを同時に検出可能な488nmの波長で、250MWアルゴンレーザー放出光を取り付けた任意のソーター上でソーティングする。試料(i〜iii)を用いて、FITCおよびPE両方の補償を確立する。5. 試料(iv)からソーティングされたSTRO−1
明/VCAM−1+細胞を、適切な増殖培地を含有する試験管中に収集し、そして混合する。6. 上述のように細胞カウントを行う。次いで、ソーティングした細胞を培養する。
【0360】
ヒトBMSSCのex vivo培養
血清豊富培地
1. STRO−1
明/CD106+単離BMSSC集団(cm
2あたり、1〜3x10
4)を、20%ウシ胎児血清、100μM l−アスコルビン酸−2−リン酸、2mM l−グルタミン、50U/mLペニシリンおよび50μg/mLストレプトマイシンを補充したイーグル培地のα修飾(α−MEM)を含有する組織培養フラスコまたはプレート中、4%CO2中、>90%の相対湿度で、37℃で2週間培養する。培養が80〜90%の集密を達成したら、初代BMSSC集団を継代する。
【0361】
2. 接着培養を血清不含HBSSで1回洗浄し、そしてT75フラスコあたり2mLの0.5%トリプシン/EDTA溶液を37℃で5〜10分間添加することによる酵素消化によって、細胞を解放する。
【0362】
3. 0.4%トリパンブルー/PBS中、単細胞懸濁の1:5希釈を調製することによって、細胞生存度を評価し、そして血球計算板を用いて生存細胞数を決定する。
4. BMMSC単細胞懸濁物をプールし、そして10%FBS、100μM l−アスコルビン酸−2−リン酸、2mM l−グルタミン、50U/mLペニシリンおよび50μg/mLストレプトマイシンを補充したα−MEM増殖培地中、cm
2あたり0.5〜1.0x10
4で再度植え付け、そして5%CO
2中、>90%の相対湿度で、37℃でインキュベーションする。培地を吸引し、そして新鮮に調製し、37℃に温めた等量の培地と交換することによって、培養に2回給餌する。
【0363】
血清枯渇培地
この方法は、造血前駆細胞の増殖のために最初に開発された血清枯渇培地(SDM)の修飾である。
【0364】
1. cm
2あたり5μgのフィブロネクチン溶液で、室温で90分間プレコーティングすることによって、フィブロネクチンコーティングプレートまたはフラスコを調製する。この後、フィブロネクチン溶液を吸引し、そして培養容器を無菌PBSで1回洗浄した後、細胞を植え付ける。
【0365】
2. STRO−1
明/CD106+単離BMSSC集団(cm
2あたり、1〜3x10
4)を、2%(w/v)ウシ血清アルブミン(Cohn分画V)、10μg/mL組換えヒトインスリン、ヒト低密度リポタンパク質、200μg/mL鉄飽和ヒトトランスフェリン、2mM l−グルタミン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム(10
−8M)、100μM l−アスコルビン酸−2−リン酸、β−メルカプトエタノール(5x10
−5M)、10ng/mL血小板由来増殖因子−BB、50U/mLペニシリンおよび50μg/mLストレプトマイシンを補充したα−MEM含有培地中に懸濁されたフィブロネクチンコーティング組織培養フラスコまたはプレート中で培養する。
【0366】
3. 次いで、培養を、37℃、4%CO
2、>90%の相対湿度で2週間インキュベーションする。培養が80〜90%集密を達成したら、初代BMSSC集団を継代する。
ex vivo拡大MSCの凍結保存
1. ルーチンに、上述のようなトリプシン/EDTA消化によって、培養拡大されたMPCの単細胞懸濁物を調製する。次いで、細胞を希釈し、そして冷HFF中で洗浄する。
【0367】
2. 細胞ペレットをFBS中、mLあたり1x10
7細胞の濃度で再懸濁し、そして氷上で維持する。次いで、細胞を穏やかに混合しながら、等体積の凍結混合物(冷FBS中、20%DMSO)を漸次添加して、10%DMSO/FBS中、mLあたり、5x10
6細胞の最終濃度を生じる。次いで、1ミリリットルのアリコットを、氷上であらかじめ冷却した1.8mLの凍結バイアル中に分配し、次いで、速度調節フリーザーを用いて、分あたり−1℃の速度で凍結させる。
【0368】
3. 次いで、凍結バイアルを、長期保存のため、液体窒素に移す。37℃水槽中で細胞を迅速に融解することによって、凍結ストックの回収を達成する。次いで、細胞を冷HFF中に再懸濁し、そして280gで10分間回転させる。
【0369】
4. 細胞の生存度を評価するため、1:5希釈を0.4%トリパンブルー/PBS中で調製し、そして細胞の数を、血球計算板を用いて決定する。典型的には、この方法は、80〜90%の生存度を生じる。
【0370】
実施例7−コロニー形成単位−線維芽細胞(CFU−F)アッセイ
以下に記載する方法論を用いて、hMSCのCFU−F特性を評価した。4継代に渡って、非補充対照培地の1つにおいてhMSCを増殖させ、そして次いで、非補充対照培地、あるいはヘパリン(1.25μg/ml)、Celsus HS(1.25μg/ml)、HS8−(1.25μg/ml)、HS8(HS8+)(1.25μg/ml)またはHS8(HS8+)(2.5μg/ml)の1つを加えた対照培地の1つにおいて増殖させた。
【0371】
材料
1. hMSC−(Lonzaより購入)
2. 維持培地:DMEM(1000mg/Lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strep、2mM L−グルタミン。
【0372】
3. 100%メタノール中、クリスタルバイオレット0.5%
方法
1. MSCを、100x15mmペトリ皿中、150細胞/cm
2で、10ml/プレート維持培地を用い、3つ組でプレーティングする。
【0373】
2. 細胞を、第7日に培地交換しながら、14日間培養する。
3. 第14日、プレートを以下のようにクリスタルバイオレット(100%メタノール中、0.5%)で染色した。
【0374】
a. 培地を取り除き、そしてPBSで2回洗浄する。
b. 10ml/プレートのクリスタルバイオレットを添加し、そして30分間インキュベーションする。
【0375】
c. PBSで1回、そしてH
2Oで1回洗浄し、そしてプレートを乾燥させる。
d. 他のコロニーと接触していない、50より多い細胞を含むコロニーを計数した。
【0376】
実施例8−MSCの多分化能特性
MSCが骨(骨形成)および脂肪(脂肪形成)に分化する能力に関して、以下に記載する方法論にしたがってアッセイすることによって、MSCの多分化能特性の維持を試験した。結果を
図25に示す。
【0377】
細胞
第4継代細胞(P4)−正常維持培地中で培養したhMSC
第7継代細胞(P7)−以下の処理の1つを含有する正常維持培地中のP4〜P7まで培養したhMSC
・HS8(HS8(+)) 2.5μg/mL
・HS8(−) 1.25μg/mL
・Celsus HS 1.25μg/ml
・ヘパリン 1.25μg/ml
・FGF2 1.25μg/ml
骨形成分化
材料
1. hMSC−(Lonzaより購入)
2. 維持培地:DMEM(1000mg/Lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strep、2mM L−グルタミン
3. 処理維持培地:DMEM(1000mg/Lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strep、2mM L−グルタミン、10nMデキサメタゾン、10mM β−グリセロール−リン酸および25μg/mL L−アスコルビン酸−2−リン酸
4. PBS中のパラホルムアルデヒド4%
5. アリザリンレッド溶液:100mL H
2O中、1.37g;pH4.1〜4.3
方法
1. 細胞を6ウェルプレート中に24時間植え付けた(3,000細胞/cm
2)
2. 対照ウェルの培地を維持培地に交換した
3. 処理ウェルの培地を、10nMデキサメタゾン、10mM β−グリセロール−リン酸および25μg/mL L−アスコルビン酸−2−リン酸を含有する維持培地に交換した
4. 次いで、すべての細胞を3日ごとに培地交換しながら28日間培養した。
【0378】
5. 次いで細胞をアリザリンレッドで染色した:
a. PBSで3回洗浄する
b. 4%パラホルムアルデヒドで10分間細胞を固定する
c. ddH
2Oで3回洗浄する
d. アリザリンレッド溶液を細胞に添加し、そしてゆっくりと振盪しながら30分間インキュベーションする
e. ddH
2Oで3回洗浄する
f. 染色した細胞を風乾する
脂肪形成分化
材料
1. hMSC−(Lonzaより購入)
2. 脂肪細胞維持培地:DMEM(4500mg/Lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strep、2mM L−グルタミン
3. 脂肪細胞処理培地:DMEM(4500mg/Lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strep、2mM L−グルタミン、1μMデキサメタゾン、10μMインスリン、20μMインドメタジンおよび115μg/mL 3−イソブチル−1−メチルキサンチン
4. PBS中のパラホルムアルデヒド4%
5. オイルレッドO溶液:60%イソプロパノール中、0.36%
方法
1. 細胞を3つ組で、6ウェルプレート中に植え付けた(18,000細胞/cm
2)
2. 細胞を集密まで培養した
3. 対照ウェルの培地を、脂肪細胞維持培地に交換した(4500mg/mLグルコース)
4. 処理ウェルの培地を、1μMデキサメタゾン、10μMインスリン、20μMインドメタジンおよび115μg/mL 3−イソブチル−1−メチルキサンチンを含有する脂肪細胞処理培地に交換した
5. 続いて、3日ごとに培地交換しながら28日間培養した。
【0379】
6. 次いで細胞をオイルレッドOで染色した:
a. PBSで3回洗浄する
b. 4%パラホルムアルデヒドで60分間細胞を固定する
c. ddH
2Oで1回洗浄する
d. オイルレッドO溶液を細胞に添加し、そしてゆっくりと振盪しながら1時間インキュベーションする
e. 60%イソプロパノールで2回洗浄する
f. ddH
2Oで3〜5回洗浄する
g. プレート上のddH
2Oを残すか、または染色した細胞を風乾する
実施例9
以下に記載する方法論を用いて、FGF−2が仲介するhMSC増殖に対するHS8の影響を調べた。HS8は、FGF−2が仲介するMSC増殖を増進させることが見出された(
図26)。
【0380】
細胞
第4継代細胞−以下の処理の1つを伴い、そして伴わずに、正常維持培地中で培養したhMSC:
・FGF2 0.156ng/mLのみ
・FGF2 0.156ng/mLと、多様な用量のHS8(+)
細胞増殖プロトコル
材料
1. hMSC−(Lonzaより購入)
2. FGF2(R&D Systems、カタログ番号233−FB−025)。
【0381】
3. 維持培地:DMEM(1000mg/lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strep、2mM L−グルタミン
4. HS8(HS8(+)),HS8(−)、ブタ粘膜ヘパラン硫酸(Celsus Laboratories、米国)、ヘパリン(Sigmaカタログ番号H3149)。
【0382】
5. Guava Flex試薬(Millipore)
方法
1. 細胞を24ウェルプレート上、500μl/ウェル培地中で3000細胞/cm
2でプレーティングする(第0日)。
【0383】
2. 第1日−培地を、500μLの新鮮な培地中、FGF2(0.156ng/mL)のみまたはFGF2(0.156ng/mL)と多様な濃度のHS8(+):10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125、0.156(μg/ml)を加えた維持培地に交換する
3. 培地を2日ごとに交換する
4. 第4日に100μlのトリプシンで細胞を採取し、そして300μlの培地で中和する
5. GUAVA装置中で細胞をカウントする(Guava flex試薬:細胞懸濁物は1:200である)。
【0384】
実施例10
以下に記載する方法論を用いて、ERK経路を通じたFGF−2シグナル伝達に対するHS8の影響を調べた。HS8は、ERK1/2およびFRS2aのリン酸化によって測定されるように、ERK経路のFGF2が仲介するシグナル伝達を増進させる/維持することが見出された(
図27)。
【0385】
細胞
P4−以下の処理を伴い、そして伴わずに、正常維持培地中でhMSCを培養した:
・FGF2 0.312ng/mLのみ
・HS8(HS8(+)) 2.5μg/mL
ウェスタンブロット
材料
1. hMSC−(Lonzaより購入)
2. FGF2(R&D Systems、カタログ番号233−FB−025)。
【0386】
3. 維持培地:DMEM(1000mg/Lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strep、2mM L−グルタミン
4. 血清不含培地:DMEM(1000mg/Lグルコース)、0.2%FCS、1%Pen/Strep、2mM L−グルタミン
5. ホスホ−FRS2aに対する抗体(Cell Signaling カタログ番号3861) TBST中の5%BSA中、1:1000
6. ホスホ−ERK1/2に対する抗体(Cell Signaling カタログ番号9106L) TBST中の5%BSA中、1:2000
7. 総ERK1/2に対する抗体(Cell Signaling カタログ番号9102L) TBST中の5%BSA中、1:1000
8. アクチンに対する抗体(Millipore Chemicon カタログ番号MAB1501R) TBST中の5%BSA中、1:8000
方法
1. 細胞を6ウェルプレート上、維持培地中で10,000細胞/cm
2でプレーティングする
2. 第1日:培地を、2mL/ウェルの血清不含培地に交換する
3. 第3日:ウェルに処理を添加する。必要な量のHS8(+)および/またはFGF2を血清不含培地に投薬し、そして10μL/ウェルで添加する
4. 異なる時点(30分および24時間)で、1.5X laemmli緩衝液で100μL/ウェルで細胞を採取する
5. 溶解物を95℃で5分間加熱し、そして−20℃で保存する
6. 試料を1回のみ凍結融解する
7. 20μL/ウェルの試料を、Novex 4〜12%Bis−Tris SDS PAGEゲル、10ウェル(Invitrogen、カタログ番号NP0335BOX)の各レーンに装填する
8. 1X MOPS緩衝液で、180Vで50分間ゲルを泳動した
9. 次いで、分離されたタンパク質バンドを、1xトランスファー緩衝液中、100Vで1時間30分間、ニトロセルロース膜にトランスファーした。
【0387】
10. ニトロセルロース膜をPonceau S溶液で染色し、そして関心対象のタンパク質のサイズにしたがって、ストリップにカットした
11. TBST中の5%BSAまたは5%脱脂乳のいずれかで、室温で30分間〜1時間、ゆっくりと振盪しながら膜をブロッキングした
12. 次いで、推奨される希釈の一次抗体を、ゆっくりと振盪しながら、4℃で一晩インキュベーションした
13. 次いで、ブロットをTBSTで各5分間、3回洗浄した
14. 次いで、推奨される希釈の二次抗体を、ゆっくりと振盪しながら、室温で1時間〜2時間インキュベーションした
15. ブロットをTBSTで各5分間、3回洗浄した
16. 化学発光試薬とブロットをインキュベーションし、そして暗室でバンド視覚化のため、X線フィルムの現像を進めた。
【0388】
実施例11−HS8のNMR分析
HS8の試料を分析前に−20℃で保存した。化学シフト比較および定量化に用いる内部標準tBuOH(200μL、δ1.24ppm)を含有するD2O(600μL)に溶解することによって、NMR分析を完了した。Celsus HSを、〜1、4および7mg量に正確に重量測定し、作業D2O/tBuOH溶液中で調製し、そしてHS8と同じ実行で分析した。標準溶液の線適合(line fitting)は、内部標準に比較して、アセチルメチル領域、領域δ3.15〜3.25ppmおよびアノマー領域δ5.15〜5.65ppmの最低フィールド部分の統合(integration)のため、0.995またはそれより優れた回帰を生じた。
【0389】
試料サイズが小さく、低いシグナル対ノイズを生じるため、アセチル領域データのみを用いて、HS8の量を計算し、0.7mgの値を得た。アセチルピークのノイズにシグナルを比較する第二の実験を完了し、そして0.5mgの値を記録した。これは、内部標準に比較しない絶対値である。さらなる分析の前に、3回凍結乾燥工程を行い、tBuOHを取り除いた後、記録される質量は1.2mgであった。注目に値するのは、SEC HPLCデータを統合して、およその純度値が得られうることであり、そしてこれはまた58%を記録し、材料中に0.7mgのHS−GAGが存在することが示唆された。この重量不一致は少量のGAG試料において新規の現象ではなく、多様な湿度および塩の比率が、記録される質量に影響を及ぼすはずであると仮定される。
【0390】
HS8、Celsus HSおよびHS3
*の1H NMRスペクトルを
図31に示す。示すプロット中、他のシグナル(Celsus HSは、4.8〜4.9に最高のピークがあり、そしてHS3は中間の高さのピークである)に比較した、HS8の強度の相違(4.8〜4.6ppmで最低のピーク)は、すべてのスペクトルをアセチルメチル共鳴の高さに対して規準化したためである:このHS8試料の場合、より細い線では、わずかによりよいシミングが観察され、アセチル共鳴をわずかによりシャープにそしてより高くした。
【0391】
Celsus HSに比較したHS8の化学的組成変化は、2−D NMRによってようやく区別される。
HS8 1H NMRのメチンおよびメチレン領域のより緊密な検査によって、Celsus HSおよびHS3に比較して、相違が示された(
図32)。
【0392】
[
*HS3は、BMP−2のヘパラン結合ドメインに特異的および高い結合アフィニティを有する単離ヘパラン硫酸である。HS3はWO2010/030244に記載される]
実施例12−HS8および他のHS調製物のHPLC−SEC−RI
ヘパラン硫酸調製物(およそ1mg、正確に重量測定)を、水中、2mg/mLで調製した。これらの調製物のヘパリンリアーゼI、IIおよびIII消化は、水中の2mg/mLであった。溶液を遠心分離し(14000g、2分間)、そして200μLアリコットを分析のために採取した。
【0393】
SEC−RI系は、Waters 2690 Alliance分離モジュールおよびWater 2410屈折率モニター(レンジ64)からなる。RIクロマトグラムからの定量化のためのdn/dcを0.129(参照)に設定した。試料を注入し(50μL)、そして50mM酢酸アンモニウム、流速0.5mL/分で、一連の2つのSuperdex
TMペプチド10/300GLカラム(300x10mm GE Healthcare、英国バッキンガムシャー)から溶出した。データを収集し、そしてASTRAソフトウェア(バージョン4.73.04、Wyatt Technology社)を用いて分析した。
【0394】
全HS8調製物のサイズ排除クロマトグラフィは、別個のサイズ排除プロファイルを示した。Celsus HS出発材料は、15mLでボイディングシグナルを示し、あるサイズ範囲のさらなる材料が溶出液およそ23mLまで溶出する。
図33に示すように、HS8材料(FGF−2アフィニティカラムによって保持される)は、SECカラムを空にするまでの、材料が濃縮されたサイズプロファイルを示す。
【0395】
これは再び、HS3調製物のサイズプロファイルとは異なっており、HS3はHS8およびCelsus HSプロファイルの間の中間のサイズプロファイルを示す(
図34)。HS8クロマトグラムは、およそ36mLで大きな塩シグナルを示し、これはこの試料が、水ではなく、50mM酢酸緩衝液(pH7)中で調製されたためであった。
【0396】
図35は、Celsus由来のHSの2つの異なるバッチに関するSECクロマトグラムを示す。バッチ#10697をHS3およびHS8両方の調製のための出発材料として用いた。これらのバッチ両方の酵素での消化は、バッチ#10595がまったく消化されず、そしてカラムを空にするまでに、より多量の材料を有することを示す以外、同様である。
【0397】
HS8(
図36)のヘパリンリアーゼ消化のサイズプロファイルは、Celsus HS出発材料(
図35)またはHS3(
図36)のものとはまったく異なる。HS3に関して得られるサイズプロファイルは、先の消化物で得られるものと非常に類似であった。HS8クロマトグラムは、HS3消化に関するものと同様、ボイド体積(15mL)でほとんどシグナル強度を示さず、材料の大部分がある程度消化されていることが示唆される。しかし、2つのHS3消化は、およそ19mLで有意なそして別個のシグナル強度を示す一方、HS8は、18mL周囲で広いシグナルを示す。
【0398】
実施例13−[3H]ヘパリンアッセイ
以下に記載するプロトコルを用いて、FGF2のアミノ酸配列由来の配列番号1のヘパリン結合能を評価した。結果を
図37に示す。
【0399】
材料
(1)ペプチド:
Gandhiら(HS8)−Nanyang Technology Universityによって製造
GHFKDPKRLYCKNGGF−Ahx−(K)ビオチン
(2)3Hヘパリン0.1μCi(Perkin Elmer、米国ボストン)
(3)ニトロセルロース膜(Bio−Rad、米国)
(4)ウシ血清アルブミン4%(w/v)、PBS中
(5)真空オーブン(Thermo Fisher Scientific、米国)
(6)Tri−Carb 2800 TCR液体シンチレーション分析装置(Perkin Elmer、米国ボストン)
方法
(1)PBSでFGF2−HBD−ペプチドを望ましい濃度(4.66x10−9、9.32x10−9、1.86x10−8、3.73x10−8モル)に調製する
(2)既知の濃度のペプチドに、二連の同一のニトロセルロース膜を浸す
(3)膜を1時間風乾する
(4)真空オーブン中、80℃で45分間、さらに乾燥させる
(5)膜をPBSで3回洗浄する
(6)3Hヘパリン0.1μCiを膜に添加し、そしてシンチレーション計測バイアル中で16時間インキュベーションする
(7)膜をPBSで4回洗浄する
(8)Tri−Carb 2800 TCR液体シンチレーション分析装置(Perkin Elmer、米国ボストン)で放射活性を決定する
実施例14
以下に記載するプロトコルを用いて、ヘパリン結合ドメインペプチド配列番号1が、固定されたヘパリンに結合する能力を評価した。結果を
図38に示す。
【0400】
材料
1. 標準アッセイ緩衝液(SAB)−100mM NaCl、50mM酢酸ナトリウム、0.2%v/v Tween 20、pH7.2
2. ブロッキング緩衝液−0.4%魚類ゼラチン(Sigmaカタログ番号67041)+SAB
3. GAG結合プレート(Iduron、英国)
4. ペプチド:
Gandhiら(HS8)−Nanyang Technology Universityによって製造
GHFKDPKRLYCKNGGF−Ahx−(K)ビオチン
5. ExtraAvidin−AP(Sigmaカタログ番号E2636)
6. Sigma FAST p−ニトロフェニルリン酸(Sigma、N2770)
方法
1. SABにヘパリンを溶解する(5μg/ml)
2. 200μlのヘパリン溶液/ウェルをGAG結合プレートに添加し、そして光から保護しながら、RTで一晩インキュベーションする
3. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
4. 250μl/ウェルのブロッキング緩衝液とプレートを、光から保護しながら、37℃で1時間インキュベーションする
5. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
6. ペプチドをブロッキング緩衝液に溶解し、そして連続希釈:0、50、100、200nMを行う
7. 200μl/ウェルの希釈タンパク質を、GAGコーティングプレートに分配し、そして37℃で2時間インキュベーションする
8. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
9. 200μl/ウェルの220ng/mlのブロッキング溶液中のExtraAvidin−APを添加し、そして37℃で30分間インキュベーションする
10. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
11. 200μl/ウェルの現像試薬:DI水中のSigma FAST p−ニトロフェニルリン酸を添加し、そしてRTで40分間インキュベーションする
12. 405nmで吸光度を読み取る
実施例15
HS8に結合する能力に関して、FGF−2を評価した。これを、未精製出発HS(HS−PMブタ粘膜)または糖不含との結合に比較した。結果を
図39に示す。
【0401】
材料
1. 標準アッセイ緩衝液(SAB)−100mM NaCl、50mM酢酸ナトリウム、0.2%v/v Tween20、pH7.2
2. ブロッキング緩衝液−0.4%魚類ゼラチン(Sigmaカタログ番号67041)+SAB
3. GAG結合プレート(Iduron、英国)
4. R&D Systems由来のタンパク質:FGF2−233FB
5. R&D Systems由来の抗体:FGF2−BAM233
6. ExtraAvidin−AP(Sigmaカタログ番号E2636)
7. Sigma FAST p−ニトロフェニルリン酸(Sigma、N2770)
方法
1. SABにGAGを溶解する(5μg/ml)
2. 200μlのGAG溶液/ウェルをGAG結合プレートに添加し、そして光から保護しながら、RTで一晩インキュベーションする
3. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
4. 250μl/ウェルのブロッキング緩衝液とプレートを、光から保護しながら、37℃で1時間インキュベーションする
5. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
6. タンパク質をブロッキング緩衝液に溶解し、そして連続希釈:0、0.781、1.56、3.125nMを行う
7. 200μl/ウェルの希釈タンパク質を、GAGコーティングプレートに分配し、そして37℃で2時間インキュベーションする
8. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
9. 200μl/ウェルの250ng/mlのブロッキング溶液中のビオチン化一次抗体を添加し、そして37℃で1時間インキュベーションする
10. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
11. 200μl/ウェルの220ng/mlのブロッキング溶液中のExtraAvidin−APを添加し、そして37℃で30分間インキュベーションする
12. プレートを3x、250μl/ウェルのSABで注意深く洗浄する
13. 200μl/ウェルの現像試薬:DI水中のSigma FAST p−ニトロフェニルリン酸を添加し、そしてRTで40分間インキュベーションする
14. 405nmで吸光度を読み取る
実施例16
HS8の存在下で、6日間に渡って、プラスチック接着性間葉系幹細胞の増殖を分析した。結果を
図40に示す。
【0402】
細胞増殖プロトコル
材料
1. HM20 hMSC−男性ヒスパニック系20歳のドナー(Lonzaより購入)
2. FGF2(R&D Systems カタログ番号233−FB−025)
3. 維持培地:DMEM(1000mg/lグルコース)、10%FCS、1%Pen/Strp、2mM L−グルタミン
4. HS8
5. Guava Flex試薬(Millipore)
方法
1. HM20細胞を、24ウェルプレート上、500μl/ウェルの培地中、3000細胞/cm2でプレーティングする(第0日)
2. 第1日−GAG(μg/ml)−2.5および0.5で培地交換する
3. 培地を2日ごとに交換する
4. 指定した時点で細胞を採取する(第6日)−100μlのトリプシンを用い、そして300μlの培地で中和する
5. 細胞をGuava装置中でカウントした(Guava flex試薬:細胞懸濁物は1:200である)
実施例17
未精製Celsus出発HS(HS−PM)、または非結合HSフロースルー(HS8−)に比較した際の、単離HS8の存在下で36時間に渡るSTRO−1単離間葉系幹細胞の増殖を、以下に記載するように、BrDU取り込みによって測定した。結果を
図41に示す(図中、HS8G=HS8)
プロトコル(細胞増殖ELISA、BrdU(比色)、Roche)
1. 細胞植え付け−190μlの培地/ウェル中、5000細胞(96ウェルプレート)
2. 培地−アルファMEM+10%ウシ胎児血清(FCS)+1% 2mM L−グルタミン+1%ペニシリンおよびストレプトマイシン+100nM L−グルタミン酸
3. 37℃および5%CO2で6時間インキュベーションする
4. 6時間インキュベーションした後、レイアウトにおけるように指定したウェルに関して10μlの培地中、異なる用量の処理を加える
5. GAG(μg/ml)−10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125
6. 処理を伴い、37℃および5%CO2で36時間インキュベーションする
7. BrdUを各ウェルに添加する
8. 細胞をBrdUで2時間、37℃および5%CO2で標識する(20μlのBrdU標識溶液/ウェルを添加する)
9. プレートを軽く叩くことによって、標識培地を除去する
10. 200μl/ウェルのFixDenatを細胞に添加し、そして15〜25℃で30分間インキュベーションする
11. 軽く振りそして叩くことによって、FixDenat溶液を完全に除去する
12. 100μl/ウェルの抗BrdU−POD作業溶液を添加し、そして15〜25℃で90分間インキュベーションする
13. 振り落とすことによって抗体コンジュゲートを除去し、そして250μl/ウェルの洗浄溶液(1xPBS)でウェルを3回リンスする
14. 軽く叩くことによって、洗浄溶液を除去する
15. 100μl/ウェルの基質溶液を添加し、そして15〜25℃で30分間インキュベーションする。
【0403】
16. 370nmでの吸光度を測定する(参照波長:492nm)
実施例18−二糖のキャピラリー電気泳動(CE)分析
ヘパラン硫酸(HS)は、Celsus Laboratories Inc由来であった(HO−03103、ロット#HO−10697)。細菌ヘパリナーゼにより、高品質ブタヘパリンを消化して得られる二糖標準(ΔUA,2S−GlcNS,6S; ΔUA,2S−GlcNS、ΔUA,2S−GlcNAc,6S、ΔUA−GlcNS,6S、ΔUA−GlcNS、UA−GlcNAc、ΔUA,2S−GlcNAc、ΔUA−GlcNAc,6S、ΔUA,2S−GlcN、ΔUA,2S−GlcN,6S、ΔUA−GlcN,6S、ΔUA−GlcN カタログ番号HD001〜HD013、Iduron Ltd、英国マンチェスター)を、Iduron Ltd、英国マンチェスターより購入した。非天然存在二硫酸化二糖の合成誘導体(ΔUA,2S−GlcNCOEt,6S)もまた、内部標準として使用するために、Iduronから購入した。ヘパリンオリゴ糖(dp4、dp6、dp8、dp10、dp12(カタログ番号HO04、HO06、HO08、HO10、HO12))および選択的脱硫酸化ヘパリン標準(2−O、6−OおよびN−脱硫酸化ヘパリン)(カタログ番号DSH001/2、DSH002/6、DSH003/N、Iduron Ltd、英国マンチェスター)もまた、Iduron Ltd、英国マンチェスターより購入した。
【0404】
ヘパリンリアーゼI(ヘパリチナーゼ、EC 4.2.2.8、ヘパリチナーゼIとしてもまた知られる)、ヘパリンリアーゼII(ヘパリチナーゼII、EC番号割り当てなし)およびヘパリンリアーゼIII(ヘパリナーゼ、EC 4.2.2.7、ヘパリチナーゼIIIとしてもまた知られる)を、生化学工業株式会社、日本より得た。凍結乾燥粉末(0.1 U/バイアル)として供給される酵素を、0.1%BSA中に溶解して、0.5mU/μLを含有する溶液を得た。必要になるまでアリコット(5μL;2.5mU)を凍結した(−80℃)。
【0405】
ヘパリンリアーゼ酵素でのHS調製物の消化
HS調製物(1mg)を各々、500μLの酢酸ナトリウム緩衝液(10mM酢酸カルシウムを含有する100mM、pH7.0)に溶解し、そして3つの酵素各2.5mUを添加した。試験管を穏やかに反転しながら(9rpm)、試料を37℃で一晩(24時間)インキュベーションした。3つの酵素をさらに各2.5mU、試料に添加して、試験管を穏やかに反転しながら(9rpm)これを37℃でさらに48時間インキュベーションした。加熱(100℃、5分間)によって消化を停止し、そして次いで凍結乾燥した。消化を500μLの水に再懸濁し、そしてCEによる分析のため、アリコット(50μL)を採取した。
【0406】
キャピラリー電気泳動(CE)
20mM H
3PO
4の水溶液を20mM Na
2HPO
4・12H
2Oの溶液に添加してpH3.5を生じることによって、キャピラリー電気泳動操作緩衝液を作製した。カラム洗浄液は、100mM NaOH(50%w/w NaOHから希釈)であった。0.2μm酢酸セルロース膜フィルター(47mmφ;Schleicher and Schunell、ドイツ・ダッセル)を取り付けたMilliporeフィルター装置を用いて、操作緩衝液およびカラム洗浄液両方を濾過した。水に二糖を溶解することによって(1mg/mL)、12の二糖標準のストック溶液を調製した。標準のための較正曲線を決定するため、すべての12の標準を含有する混合物を調製した。12の標準混合物のストック溶液は、10μg/100μLの各二糖を含有し、そして10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125μg/100μLを含有する希釈シリーズを調製した;2.5μgの内部標準(ΔUA,2S−GlcNCOEt,6S)を含む。HSの消化を水で希釈し(50μL/mL)、そして同じ内部標準を各試料に添加した(2.5μg)。溶液を凍結乾燥し、そして水に再懸濁した(1mL)。PTFE親水性使い捨てシリンジフィルター装置(0.2μm;13mmφ;Advantec、東洋濾紙株式会社、日本)を用いて、試料を濾過した。
【0407】
キャピラリー電圧30kVで、20mM操作緩衝液を用い、非コーティング石英ガラスキャピラリーチューブ(75μmID、64.5cm全長および56cm有効長、Polymicro Technologies、アリゾナ州フェニックス、部品番号TSP075375)上で、Agilent
3DCE(Agilent Technologies、ドイツ・ワルドブロン)装置を用いて、分析を行った。水圧注入(50mbarx12秒)を用いて、カソード(逆極性)端で、キャピラリーチューブに試料を導入した。
【0408】
各実行前に、キャピラリーを100mM NaOH(2分間)、水(2分間)でフラッシュし、そして操作緩衝液(5分間)で前処理した。緩衝液再補充系は、入口および出口チューブ中の緩衝液を交換して、一定の体積、pHおよびイオン強度が維持されることを確実にした。水のみのブランクを、試料配列の開始時、中間および終了時に流した。吸光度を232nmで監視した。すべてのデータをChemStoreデータベース中に保存し、そして続いて回収し、そしてChemStationソフトウェアを用いて再プロセシングした。
【0409】
上に詳述する条件を用いて、標準混合物中の12のヘパリン二糖のうち11を分離した。12番目の二糖、ΔUA−GlcNは、これらの実験に用いた条件下では移動しない。しかし、この二糖は、ヘパラン硫酸中に存在することが報告されていない。標準較正曲線のR2値は、0.9949〜1.0の範囲であった。
【0410】
HS調製物のヘパリンリアーゼI、IIおよびIII消化を、二連で行い、そして二連のそれぞれをCEに2回注射した。したがって、HS消化中の二糖の規準化パーセントは、分析結果の平均である。標準混合物中で分離される11の二糖のうち、これらのうちの8つのみがHS消化中で検出される。他の小さいシグナルが消化の電気泳動図のベースラインに見られ、そしてこれらは、>2dpのオリゴ糖に対応しうる。上述のように、より大きいオリゴ糖は、二糖に比較して、より少ないUV吸光度を有するであろう。
【0411】
Celsus HS(ロット#10697)の試料に対して、二連の分析を完了し、そして同じ試料に対する以前の分析セットに比較し;これらの結果を
図42に示す。2つの分析セットの間には優れた相関が観察された。Celsus HS消化中の8つの二糖の比率は、他の以前の分析のものと類似であり、ΔUA−GlcNAcおよびΔUA−GlcNSが大量の構成要素であり、そしてΔUA−GlcNAc,6S、ΔUA−GlcNS,6SおよびΔUA,2S−GlcNS,6Sがより少ない比率であった(
図42)。これは、一硫酸化および非硫酸化二糖が大きな割合であり、それより少ない割合が二硫酸化二糖であり、そして少ない割合が三硫酸化二糖である、HPLC−SECプロファイルと一致する。Celsus HS出発材料と比較して、一硫酸化および非硫酸化二糖において、非保持HSが濃縮される。非保持材料のこのパターンはまた、HPLC−SECクロマトグラム中に非常に明瞭に見られた。HS8の分析の場合、試料サイズは、単一の分析のみを許容し、そしてしたがって、この調製物に関しては、誤差データは提供されない。HS8、HS3およびCelsus HSの比較を
図44に示す。
【0412】
HS8の二糖組成は、HS3(Celsus HSからBMP2由来のヘパリン結合ドメインに対するアフィニティを通じて単離されるHS、WO2010/030244に記載される通り)のものに匹敵し、この中で、より硫酸化された(荷電した)分画が、一般的に、Celsus HSから調製されてきている。しかし、HS3に比較して、HS8では、UA−GlcNS,6sのより大きな比率およびUS−GlcNSのより少ない比率が存在するという顕著な相違がある。
【0413】
HS8が由来する未精製Celsus HSは、(ヘパリンの〜15kDaと比較して)20〜25kDaの平均分子量を有し、そしてアフィニティクロマトグラフィによるHS8の同定プロセスは、HS鎖の観察される分子量に実質的な変化を生じなかった。各二糖単位は、〜430から〜650kDaの範囲の分子量を有すると予期される。二糖あたり500ダルトンの大まかな平均(例えば、ヘパリン中の平均二糖は、〜650ダルトンである)を用いると、平均(22kDa)HS8あたり、HS8の鎖長が(基本的近似として)約44環であることが示される。
【0414】
実施例19
HS8がFGF2に優先的に結合し、そしてhMSCの増殖速度を増加させることが同定されたため、本発明者らはさらに、HS8活性の機構を調べた。
【0415】
FGF2中和抗体またはFGFR1阻害剤(キナーゼ阻害剤および中和抗体両方)いずれかは、hMSCにおいて、HS8の増殖効果を減少させることが可能であり(
図47〜50)、hMSCにおけるHS8のマイトジェン効果が、FGF2/FGFRとの相互作用を通じるが、他の分子との相互作用を介さないことが確認される。HS8の存在下で、FGF2の迅速な分解が遅延され(
図46)、HS8がFGF2と相互作用して、培地中でFGF2が分解されることを保護することが立証される。
【0416】
本発明者らは(上記に)、HS8がhMSC自己再生を増進する一方、多分化能を維持することを示した。hMSCのルーチンの培養において、HS8補充が培養をより迅速に拡大可能であるかどうかを試験するため、本発明者らは、3人の個々のドナー由来のhMSCを、HS8補充培地中で別個に増殖させた。本発明者らは、HS8に曝露されたhMSCが、より多くのコロニーを形成可能であり(
図51)、そしてさらなる細胞二倍化にもかかわらず、3人のドナーに渡る、バイオマーカーCD14、19、34、45、HLA−DR、CD73、90、105、CD49a、SSEA−4およびSTRO−1に関するFACSによって(例えば
図22に提示するように)測定されるような幹細胞様表現型を維持することに注目した。「幹細胞性」を示すバイオマーカーは、hMSCをHS8補充培地中で拡大した際に維持された。
【0417】
本発明者らはまた、これらの細胞が、3つの間葉系幹細胞系譜すべて(アリザリンレッド、フォンコッサ、オイルレッドOおよびアルシアンブルー染色によって測定されるように、骨を含む)に容易に分化可能であり、そして骨形成を増進させることも見出し、この戦略が整形外科的外傷療法に有効でありうることを示唆する。HS8は、MSCが骨に分化する能力に不都合に影響を及ぼさなかった。
【0418】
したがって、本発明者らは、HS8を、ラットにおける頭蓋冠欠損モデルに適用した(
図52)。骨治癒改善が明らかであり、HS8が外傷部位でFGF2と相互作用して、内因性幹細胞および骨前駆体細胞の活性をFGF−2依存性機構を通じて加速することを示唆し、したがって、頭蓋冠骨欠損を治療するためのこのアプローチの療法的可能性を強調する。
【0419】
実施例20−ブタ切除創傷モデルに対するHS8の影響
ブタ皮膚創傷治癒プロトコル
5匹の成体マイクロブタの背中に、全層切除創傷を生成した。麻酔したブタの背中の体毛を剃り、そしてポピドンヨード溶液で清浄化した。1日、3日、7日、9日、13日および15日の実験時点を提供するため、6および10mm生検パンチを用いて、入子式の創傷を生成した。全実験時点には、3つの創傷セットが必要である。最初の3つの創傷を6mm生検パンチで作製した。第1日、3日および7日に、各創傷を10mm生検パンチでくり抜いた。第16日に、10mm創傷は、9日、13日、および15日の時点を提供するであろう。
【0420】
治療の単純なランダム化を行い、そして10mg/mlカルボキシメチルセルロース(CMC)(Sigma)ジェル(n=6)、またはCMCジェル単独(未処置創傷)(n=6)を通じて、250μg/μL HS化合物の局所適用によって、治療を開始した。56.5μLおよび157μLの化合物を、それぞれ第0日および1日に、6および10mm創傷に適用した。創傷をTegadermドレッシング剤(3M Singapore)で覆った。術後、毎週、すべての創傷を調べ、そして写真撮影した。
【0421】
第16日にブタを安楽死させ、そして創傷がない皮膚が取り巻く創傷の全層皮膚試料を切除し、そして半分に切った。一方の半分を、組織学的分析のため、10%中性緩衝ホルマリン中で固定した。別の半分を、TRIzol(Life Technologies)に入れ、そして続く分子分析のため、−80℃で凍結した。
【0422】
最初に6mmパンチを用いて、創傷治癒の初期マーカー(例えば炎症反応および再上皮化)を調べてもよく、そして次いで、より大きな10mmパンチでくり抜いて、創傷治癒の後期マーカー(例えば血管再増殖、組織再構成)を探してもよい。
【0423】
図53は、6mmパンチ処置を経たミニブタの脇腹の巨視的外観を示す。これらの結果は、HS8が、切除皮膚外傷のin vivoミニブタモデルにおいて、創傷治癒を増進させることを示す。本発明者らはまた、HS8がFGF−2依存性経路を通じて、真皮線維芽細胞の増殖を誘発可能であることを実験的に決定した。
【0424】
作用機構は多価である。HS8に関するような皮膚/上皮創傷治癒の関心対象領域には、形成手術後の治癒、結腸直腸吻合手術/閉鎖縫合、火傷の治療、血管/動脈/褥瘡治療、皮膚切開/外傷創傷修復、上皮区画への血管復帰促進、および上皮幹細胞機能の刺激が含まれる。主な効果は、FGF感受性細胞、特に幹細胞に対するものであり、他の効果は真皮線維芽細胞および血管形成(血管新生)に対する。
【0425】
HS8は、発癌性転帰の恐れを伴わずに、FGF2の増進を可能にする。糖は、皮膚において、天然にすでに発現されるFGF−2を増進させる。本発明者らの実験結果によれば、HS8はそれ自体、大きな療法効果を有すると予期される。
【0426】
発明の態様
[1]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのヘパラン硫酸HS8。
[2]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するための薬剤製造におけるヘパラン硫酸HS8の使用。
[3][1]の皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8あるいは[2]の使用であって、療法的方法が、場合によって皮膚火傷、潰瘍、切除創傷、切り傷、刺し傷または穿刺傷より選択される、皮膚創傷または瘢痕の治療を含む、前記HS8またはその使用。
[4][1]の皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8あるいは[2]の使用であって、療法的方法が、皮膚移植治癒、皮膚再構築、または皮膚形成手術を含む、前記HS8またはその使用。
[5]ヘパラン硫酸HS8を含む薬学的組成物の有効量と、皮膚創傷を接触させる工程を含む、皮膚創傷を治癒させる方法。
[6]ヘパラン硫酸HS8の療法的有効量を被験体に投与し、創傷部位で皮膚の修復および/または再生を導く工程を含む、皮膚創傷を有する被験体を治療する方法。
[7]皮膚創傷が、皮膚火傷、潰瘍、切除創傷、切り傷、刺し傷または穿刺傷である、[5]または[6]の方法。
[8]皮膚移植、皮膚再構築、または皮膚形成手術の方法であって、HS8を含む薬学的組成物の有効量と、移植、再構築または形成手術の領域のまたは該領域に隣接した皮膚を接触させる工程を含む、前記方法。
[9]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8、先行する態様のいずれかの使用または方法であって、HS8、薬剤または薬学的組成物が、局所または経皮投与のために製剤化される、前記HS8、使用または方法。
[10]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8、先行する態様のいずれかの使用または方法であって、HS8、薬剤または薬学的組成物が、ジェル、スプレー、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、膏薬(salve)、オイル、水溶液、懸濁物、分散物、パッチ、絆創膏、包帯、ドレッシング剤、デポ剤またはリザーバーとして製剤化される、前記HS8、使用または方法。
[11]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8、先行する態様のいずれかの使用または方法であって、方法が、増殖因子、好ましくはFGF2、および/または間葉系幹細胞の投与をさらに含む、前記HS8、使用または方法。
[12]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8、先行する態様のいずれかの使用または方法であって、HS8、薬剤または薬学的組成物が、増殖因子、好ましくはFGF2、および/または間葉系幹細胞との組み合わせ調製物として製剤化される、前記HS8、使用または方法。
[13]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8、先行する態様のいずれかの使用または方法であって、ヘパラン硫酸HS8が単離型または実質的に精製された形態で提供される、前記HS8、使用または方法。
[14]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8、先行する態様のいずれかの使用または方法であって、ヘパラン硫酸HS8がアミノ酸配列YCKNGGF(配列番号2)またはGHFKDPKRLYCKNGGF(配列番号1)を有するかまたは該配列からなるペプチドまたはポリペプチドに結合可能である、前記HS8、使用または方法。
[15]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8、先行する態様のいずれかの使用または方法であって、ヘパリンリアーゼI、IIおよびIIIで消化し、そして次いで生じた二糖断片をキャピラリー電気泳動分析に供した後、ヘパラン硫酸HS8が:
[化1]
を含む二糖組成を有する、前記HS8、使用または方法。
[16]皮膚の修復および/または再生の療法的方法において使用するためのHS8、先行する態様のいずれかの使用または方法であって、HS8が:
(i)固体支持体に付着したポリペプチド分子を有する固体支持体を提供すること、ここでポリペプチドは、アミノ酸配列YCKNGGFを有するヘパリン結合ドメインを含む;
(ii)ポリペプチド−グリコサミノグリカン複合体の形成が可能になるように、グリコサミノグリカンを含む混合物と、該ポリペプチド分子を接触させること;
(iii)ポリペプチド−グリコサミノグリカン複合体を混合物の残りから分離すること;
(iv)ポリペプチド−グリコサミノグリカン複合体からグリコサミノグリカンを解離させること;
(v)解離したグリコサミノグリカンを収集すること
を含む方法によって得られる、前記HS8、使用または方法。
参考文献
【0427】
【化9-1】
【0428】
【化9-2】
【0429】
【化9-3】
【0430】
【化9-4】
【0431】
【化9-5】
【0432】
【化9-6】