【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する調整リングによって、特に周回するカラー部が、半径方向外側に向かって延在する半径方向の部分を有する調整リングの調整部分から出発することによって解決される。
【0010】
本発明は、すでにどのみち存在している、支承部の第一の支承部部分を第二の支承部部分に対して軸方向で整向するための調整リングに、調整リングが、周回するカラー部を設けられており、これが、調整リングの調整部分から出発し、そしてこれが、半径方向外側に向かって延在する半径方向のカラー部分を有することによって、支承部部分の間に位置する支承間隙を汚染から保護する機能、つまり外部体の堆積から保護する機能を追加するという一般的思想に基礎を置く。これによって、せいぜい最小限の、特に害の無い量の外部体のみが支承間隙内へと至り、最高の場合、外部体の支承間隙内への進入が完全に防止される。これより、支承部のより長い寿命というメリットと、より少ない電流消費というメリットが生じる。支承部部分の間の外部体の数量が減少されていることに基づいて、より少ない摩擦が発生するからである。調整リング半径方向のカラー部分によって、少なくとも部分的な、そして最高でも完全なローターの遮蔽が、外部の磁場に対して可能であり、及び/又は逆に、支承の為に使用される磁石支承部の漂遊磁界に対する磁気的にセンシティブな適用の保護が可能であるという点に別のメリットがある。
【0011】
一方の支承部分の他方の支承部部分に対する軸方向の整向とは、この意味において、両方の支承部部分を支承部の長手方向中心軸の方向において互いに整向することと解されよう。特にその際、支承部の長手方向中心軸は、ローターの回転軸に相当し得る。
【0012】
調整リングは、真空ポンプにおける使用に制限されず、基本的に、支承部の第二の支承部の軸方向の整向が必要であり、そして汚染に対する保護、又は磁場からの遮蔽が望ましい箇所全般にわたって使用されることが可能である。
【0013】
本発明の有利な形態は、下位の請求項、詳細な説明、及び図面に見て取ることができる。
【0014】
調整リングは、少なくとも近似的に円形状の周囲プロフィールを有し、そして、丸鋼、特にステンレス製の丸鋼、切削的加工方法、例えば旋削やフライス等のようなものによって製造されることが可能である。ここで調整リングは、好ましくは一つの部分から製造されるので、調整部分と調整リングのカラー部は一体に形成されている。しかしまた、調整部分とカラー部が独立した部材であり、これらが、調整リングの形成の為に、例えばしまり嵌め、接着、はんだ付け、溶接等によって互いに接合せれることも考え得る。更に、調整部分と半径方向のカラー部分が独立しており、そして調整リングの形成の為に接合された部材であることも考え得る。
【0015】
調整リングは、少なくとも近似的に円形状の周囲プロフィルを有するのみならず、例えば多角形状周囲プロフィルのような他の任意の周囲プロフィルも有し得る。その際、六角形の周囲プロフィルは特に安価であり得る。これによって調整リングは、ツール、特にオープンエンドレンチによって特に簡単に捩られることが可能である。
【0016】
調整リングが、丸鋼のみならず、他の任意の金属材料から、又は他の適当な材料、例えばプラスチックやセラミックから製造されていることが可能である。その上、調整部分とカラー部は、異なる材料から成ることが可能である。更に、調整部分、及び/又は半径方向のカラー部分が異なる材料から成ることが可能であるということも考え得る。
【0017】
外部の磁場に対してローターをさらに良好に磁気的に遮蔽する為に、及び/又は真空ポンプの周囲を、ローターの支承の為の磁石支承部によって発生される漂遊磁界、又は磁場に対してより良好に磁気的に遮蔽するために、調整リングが、少なくとも部分的に強磁性、特に軟磁性、及び/又は伝導性の材料を有すると有利である。
【0018】
強磁性の材料によって、静的な磁場も動的な磁場も確実に遮蔽されることが可能である。強磁性の材料は、1より大幅に大きい相対透磁率によって際立っている。好ましくは、強磁性の材料は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のうちの少なくとも一つの材料、又はこれらの材料の少なくとも二つからなる合金を含む。更に、アルミニウム/ニッケル/コバルト(Al/Ni/Co)から成る合金、またはサマリウム/コバルト(Sm/Co)からなる合金も考え得る。しかしまた、強磁性の材料の代わりに、例えばフェライトのようなフェリ磁性のセラミックの材料も使用されることが可能である。調整リングが作られている材料の磁気的な透磁率がより高いほど、磁気的な遮蔽性はより高くなるのが一般的である。
【0019】
追加的に、又は代替的に、調整リングは、電気伝導性の、特に反磁性の、又は常磁性の材料(例えば銅、アルミニウム、銅、及び/又はアルミニウムから成る非強磁性の合金、又は非強磁性の鋼のようなもの)を有し得る。
【0020】
電気伝導性、特に非磁性の材料の使用の際、メリットは、回転するローターによって発生させられ、そして磁気的に敏感な適用にとって主として阻害的である動的な磁場が、特に効率的に遮蔽されることが可能である点に見ることができる。磁気的な遮蔽は、ここで、電気伝導性の材料内に、磁気的な交番磁界によって引き起こされ、そして動的な磁場の周波数に、又は磁気的な交番磁界の周波数に依存し、そして電気伝導性の材料の特有の内部の電気的な抵抗に依存する誘導効果に関する。電気伝導性の、特に非強磁性の材料の使用における別のメリットは、強磁性の材料と比較して、より多くの、及び/又は、安価な、及び/又は、ポンピングすべきガスに対してより安定した材料が使えるという点にある。
【0021】
更に、調整リングの磁気的遮蔽作用によって、せいぜい、追加的な磁気的遮蔽が省略されることが可能であるので、部材数量が減少され、及び/又は材料、及び製造コストが節約されることが可能であるという点、補足されよう。
【0022】
汚染に対する保護機能の改善の為、及び/又は磁場に対する遮蔽の改善の為に、調整リングは、更に、軸方向のカラー部分を有い得る。これは、半径方向のカラー部分から角度をつけて出発している。基本的に、調整部分、及び/又は、半径方向のカラー部分、及び/又は軸方向のカラー部分は、異なる材料から成っている。しかしまた調整部分と、半径方向及び軸方向のカラー部分が、互いに一体に形成されていることも可能であるとも解されよう。代替的に、調整部分、及び/又は、半径方向のカラー部分、及び/又は軸方向のカラー部分は独立しており、そして調整リングの形成の為に接合される部材であることが可能である。
【0023】
好ましくは、軸方向のカラー部分は、半径方向のカラー部分の半径方向外側に位置する縁部領域においてこれから出発している。
【0024】
ステーター側の支承部部分に軸方向において予負荷を与えるため、及び/又は固定する為、軸方向において調整リングの調整部分と支承部のステーター側の支承部部分の間にはばね要素が設けられていることが可能である。調整部分が、軸方向の予負荷、及び/又はステーター側の支承部部分の固定の目的で、軸方向で互いに重ね合わせて積層された複数の部材を有することが可能であり、その際、軸方向で見て調整部分を形成する積層部の少なくとも二つの構成要素の間には、少なくとも一つのばね要素が配置されていることが可能である。半径方向のカラー部分が、積層部の複数の構成要素の一つから出発していることが可能であると解されよう。
【0025】
調整部分が、軸方向に互いに重ね合わせて積層された少なくとも二つの構成要素を有し、そして構成要素の一つから半径方向のカラー部分が出発しているとき、調整部分の、半径方向のカラー部分を有さない一つの又は全ての構成要素と、そして半径方向のカラー部分を有する構成要素は互いに相対的に回転可能であることが可能である。ここで、半径方向のカラー部分は、半径方向のカラー部分を関するする少なくとも一つの孔を有し得るので、調整部分の一つの構成要素、又は全ての構成要素は、半径方向のカラー部分無で自由にアクセス可能である。これによって、半径方向のカラー部分を有さない調整部分の一つの又は全ての構成要素が、例えばツールを使って、半径方向のカラー部分を有する構成要素に対して回転させられることが可能である。カラー部分を有さない一つの、又は全ての構成要素の回転によって、ステーター側の支承部部分を、軸方向でローター側の支承部部分に対して整向する為である。基本的には、半径方向のカラー部分を有する、及び有さない調整部分の構成要素は、半径方向、及び/又は軸方向のカラー部分の回転が、半径方向のカラー部分を有さない調整部分の一つの、又は全ての構成要素の回転を引き起こすよう、互いに接続されている、特に互いに回転しないよう接続されていることが可能である。
【0026】
調整リングが、上述して半径方向のカラー部分、及び/又は軸方向のカラー部分の他に、別の半径方向の、及び/又は軸方向のカラー部分を有することによって、汚染に対する保護機能、及び/又は、磁場に対する遮蔽が更に改善されることが可能である。好ましくは、少なくとも一つの別の半径方向のカラー部分、及び/又は別の軸方向のカラー部分が、上述した、半径方向、又は軸方向のカラー部分から出発している。有利には、複数の半径方向のカラー部分と複数の軸方向のカラー部分が交互に設けられている。その際、複数の半径方向のカラー部分、及び軸方向のカラー部分は、カラー部分の全体が断面において見て、長方形モヂュレーションを有するよう交互に設けられていることが可能である。半径方向及び軸方向の複数のカラー部分の段階式のモヂュレーションも考え得る。更に、両方の軸方向のカラー部分が、反対の方向に向くように、つまり半径方向のカラー部分と、両方の軸方向のカラー部分が、基本的に約90度だけ傾けられたT字、又はY字に相当するように、半径方向のカラー部分から、二つの軸方向の部分が曲げられて出発している。相応して、また、軸方向のカラー部分から、二つのから部分が出発していることも可能である。特に、調整リングは、周回するカラー部分を有する。このカラー部分は、調整リングの調整部分から出発している。その際、周回するカラー部分は、半径方向外側に向かって延在する半径方向の第一のカラー部分を有し、そしてこれから出発して、角度づけられた軸法億のカラー部分と、第二の半径方向のカラー部分を有する。これは第一の半径方向のカラー部分を半径方向において外側に向かって延長する。そのような調整リングは、断面で見て、いわばT字形状のカラー部を有する。そのように形成された調整リングのメリットは、第一及び第二の半径方向のカラー部分による強い磁気的な遮蔽性と、軸方向及び第一の半径方向のカラー部分による汚染に対するより良好な保護作用にある。
【0027】
有利な態様に従い、半径方向のカラー部分は、調整部分より短い軸方向の寸法を有する。つまり、半径方向のカラー部分は、支承部の長手方向中心軸の方向でみて、調整部分よりも薄い。追加的に、又は代替的に、軸方向のカラー部分と調整部分は、少なくとも近似的に同じ軸方向の寸法を有するか、または他の表現をするなら、調整部分と軸方向のカラー部分は、支承部の長手方向中心軸の方向で見て、少なくとも近似的に同じ長さである。調整部分と軸方向の部分は、基本的に、異なる軸方向の寸法を有することも可能であると解される。調整リングが、複数の半径方向、及び/又は軸方向のカラー部分を有するとき、全ての半径方向のカラー部分、及び/又は全ての軸方向のカラー部分の軸方向の寸法は、少なくとも近似的に同じであることが可能である。しかしまた、少なくとも二つの半径方向のカラー部分、及び/又は二つの軸方向のカラー部分が、異なる軸方向の寸法を有することも可能であると解される。
【0028】
本発明は、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの為の支承部であって、半径方向内側に位置する第一の支承部部分、半径方向外側に位置する第二の支承部部分、及び調整リングを有するものに関する。調整リングは、第一の支承部部分を第二の支承部部分に対して支承部の長手方向中心軸の方向において軸方向で整向するために使用される。発明に係る支承部は、半径方向に延在するカラー部分が、第二の支承部部分を半径方向で覆う点、際立っている。調整リングが、軸方向のカラー部分を有する限り、第二の支承部部分は、半径方向で見て調整部分と調整リングの軸方向のカラー部分の間に配置されている。
【0029】
支承間隙における外部体の望まれない体積に対する、特に良好な保護作用は、軸方向のカラー部分が部分的に第二の支承部部分と軸方向でオーバーラップしているとき達成され得る。
【0030】
有利な実施形に従い、支承部は、第二の支承部部分をロックするためのロックリングを有する。これは、半径方向で見て少なくとも部分的に、調整部分と軸方向のカラー部分の間に配置されている。
【0031】
調整リングの保護作用は、ロックリングが調整リングと共に、多段に角度づけられた断面を有するリング間隙を定義するとき、更に高められることが可能である。リング間隙は、いわばラビリンス部を形成する。この中で外部体は、これが支承間隙に至る前に、絡まり得る。
【0032】
この箇所において、調整部分の前記一つの、又は全ての半径方向のカラー部分、及び/又は、前記一つの又は全ての軸方向のカラー部分は、調整リングと共に、又は、半径方向の部分によって半径方向で覆われている第二の支承部部分と共にポンプ作用が図られるように形成されていることが可能である。例えば、カラー部分の少なくとも一つは、溝状、特にスパイラル溝状の構造を有し得る。これは、ロックリングと共に、又は調整リングによって覆われる第二の支承部部分と共に、ホルベックポンプ原理、及び/又はジーグバーンポンプ原理に基づくポンプシステムを形成する。好ましくは、そのようなポンプシステムのポンプ作用は、ガス搬送方向が支承間隙から遠ざかるように向けられており、よって望まれない外部体に、ガス流を反対に向けるようになっているので、外部体は、支承間隙内に至ることができないか、又は少なくとも支承間隙内への外部体の進入が困難とされている。
【0033】
好ましい実施形に従い、支承部は、磁石支承部である。その際、第一及び第二の支承部部分は、それぞれ少なくとも一つの磁石を有する。磁石は、永久磁石で有り得、特にモノリス式の永久磁石であり得る。
【0034】
更に、本発明に従い真空ポンプは、ステーターに対して回転可能に支承されたローターと、ステーターにおけるローターの支承の為の支承部を設けられている。その際、ステーターは好ましくは、ローターの半径方向内側に配置されている。
【0035】
ローター側の支承部部分に対するステーター側の支承部部分の軸方向の整向の為に、調整リングは、ステーターとねじ係合しているので、ステーター側の支承部部分は、支承部の長手方向中心軸を中心とした調整リングの回転によって、ローター側の支承部部分に対して軸方向で整向されることが可能である。この為、ステーターと調整リングは、互いに補完的に形成されたねじ山を有する。その際、ステーター側の及びローター側の支承部部分の極めて正確な整向は、精密ねじ山によって達成されることが可能である。
【0036】
以下に、本発明を純粋に例示的に可能な実施形に基づいて添付の図面を参照しつつ説明する。