(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709298
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】OLEDデバイスのパッケージ構造、OLEDデバイス及びディスプレイスクリーン
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20200601BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20200601BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20200601BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20200601BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
G09F9/30 365
G09F9/30 309
G09F9/30 308A
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-560109(P2018-560109)
(86)(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公表番号】特表2019-517105(P2019-517105A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】CN2016086346
(87)【国際公開番号】WO2017197699
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2018年11月14日
(31)【優先権主張番号】201610325919.7
(32)【優先日】2016年5月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517264292
【氏名又は名称】武漢華星光電技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN CHINA STAR OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】黄 金昌
(72)【発明者】
【氏名】徐 湘倫
【審査官】
▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第105552246(CN,A)
【文献】
特開2014−123727(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/072406(WO,A1)
【文献】
特開2015−169711(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104538425(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
G09F 9/30−9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLED本体とパッケージ層とを含むOLEDデバイスのパッケージ構造であって、前記パッケージ層は、有機層と、保護層と、バリア層と、応力層とを含み、前記有機層上には、第1の曲面領域が形成され、前記保護層、バリア層及び応力層は順に前記有機層上に積層され、前記保護層、バリア層及び応力層上には、いずれも第2の曲面領域が形成され、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域とは積層配置して重ね合わさり、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域とはパッケージ層の折り畳み領域を形成し、
前記第1の曲面領域は、複数の規則的な錐体、又は複数の規則的なトレンチ溝がマトリクス状に間隔配列されることにより形成され、
前記パッケージ層は、複数からなり積層配置され、前記応力層の上面に無機層が積層配置されており、且つ、各2つの隣接するパッケージ層は、1つのパッケージ層の有機層を介して他のパッケージ層の応力層の上面の前記無機層に積層配置して貼り合わせられるOLEDデバイスのパッケージ構造。
【請求項2】
前記保護層は、真空蒸着により前記有機層上に形成された透明金属である請求項1に記載のOLEDデバイスのパッケージ構造。
【請求項3】
前記バリア層は、堆積方式で前記保護層上に形成された無機材料である請求項1に記載のOLEDデバイスのパッケージ構造。
【請求項4】
前記応力層は、ポリマー材料から製造される請求項1に記載のOLEDデバイスのパッケージ構造。
【請求項5】
前記折り畳み領域は、1つであるか、又は複数で間隔配置される請求項1に記載のOLEDデバイスのパッケージ構造。
【請求項6】
OLED本体と、パッケージ層とを含むOLEDデバイスであって、前記パッケージ層は、有機層と、保護層と、バリア層と、応力層とを含み、前記有機層上には、第1の曲面領域が形成され、前記保護層、バリア層及び応力層は順に前記有機層上に積層され、前記保護層、バリア層及び応力層上には、いずれも第2の曲面領域が形成され、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域とは積層配置して重ね合わさり、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域とはパッケージ層の折り畳み領域を形成し、
前記第1の曲面領域は、複数の規則的な錐体、又は複数の規則的なトレンチ溝がマトリクス状に間隔配列されることにより形成され、
前記パッケージ層は、複数からなり積層配置され、前記応力層の上面に無機層が積層配置されており、且つ、各2つの隣接するパッケージ層は、1つのパッケージ層の有機層を介して他のパッケージ層の応力層の上面の前記無機層に積層配置して貼り合わせられるOLEDデバイス。
【請求項7】
前記保護層は、真空蒸着により前記有機層上に形成された透明金属である請求項6に記載のOLEDデバイス。
【請求項8】
前記バリア層は、堆積方式で前記保護層上に形成された無機材料である請求項6に記載のOLEDデバイス。
【請求項9】
前記応力層は、ポリマー材料から製造される請求項6に記載のOLEDデバイス。
【請求項10】
前記折り畳み領域は、1つであるか、又は複数で間隔配置される請求項6に記載のOLEDデバイス。
【請求項11】
請求項6に記載のOLEDデバイスを含むディスプレイスクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中国において2016年5月17日に出願された発明の名称が「OLEDデバイスのパッケージ構造、OLEDデバイス及びディスプレイスクリーン」である中国特許出願番号201610325919.7を基礎として優先権を主張するものであり、上記した出願の内容は参照されることにより、本出願に援用される。
【0002】
本発明は、液晶表示技術の分野に関し、特に、OLEDデバイスのパッケージ構造、OLEDデバイス及びディスプレイスクリーンに関する。
【背景技術】
【0003】
表示技術の発展に伴って、新世代の表示技術の開発と応用がすばらしい勢いで繰り広げられ、次第に複数の分野に応用される。例えば、スマートリストバンド、スマートウォッチ、VR(Virtual Reality;即ち、バーチャルリアリティ)機器のようなウェアラブル機器や、携帯電話、電子書籍及び電子新聞、テレビ、パーソナルコンピューター等がある。
【0004】
有機発光ダイオードは、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(Organic Light−Emitting Diode、OLED)とも呼ばれ、自体の操作使用寿命がOLEDの開発にとって極めて重要な課題の1つとなる。また、OLED素子は、水分・酸素に非常に敏感な素子であり、特に水分に対して、素子がパッケージされないと、発光領域に黒点が容易に形成されると共に、時間の経過に伴って黒点が広がる。現在、パッケージ方式として、カバーガラスのパッケージ方式が広く用いられるが、OLED、即ち折り畳み可能なOLEDや巻取り式のOLEDに対して、フィルム封止(Thin Film Encapsulation)は最適な方法の1つである。現在のフィルム封止で最も一般的に用いられる技術は、ポリマー有機フィルムと無機フィルムとをOLED表面に交互に堆積させることであり、無機フィルムは、良好な水分・酸素バリア性を有し、ポリマーフィルムは層間の応力をよく吸収し分散させることができ、緻密な無機フィルムに割れが生じられることを避けて水分・酸素に対するバリア性を低減する。折り畳み可能なOLED及び巻取り式のOLEDにとって、通常平面へのポリマーフィルムと無機フィルムの交互な堆積では、十分な折り畳み寿命回数及びより小さな巻取り曲率を達成することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述したOLEDデバイスの柔軟性を補強し、折り畳み寿命を向上するOLEDデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記OLEDデバイスは、OLED本体と、パッケージ層とを備え、前記パッケージ層は、有機層と、保護層と、バリア層と、応力層とを有し、前記有機層上には、第1の曲面領域が形成され、前記保護層、バリア層及び応力層は順に前記有機層上に積層され、前記保護層、バリア層及び応力層上には、いずれも第2の曲面領域が形成され、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域とは積層配置して重ね合わさり、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域とはパッケージ層の折り畳み領域を形成する。
【0007】
また、前記第1の曲面領域は、複数の規則的な錐体、又は複数の規則的なトレンチ溝がマトリクス状に間隔配列されることにより形成される。
【0008】
また、前記パッケージ層は、複数からなり積層配置され、且つ、各2つの隣接するパッケージ層は、有機層を介して応力層に貼り合わせられる。具体的に、圧印金型の表面には、前記ピラミッド形又は円錐形又は三角形のトレンチ溝又は円弧形のトレンチ溝が配置され、フィルムを圧印することで対応する曲面領域を形成する。
【0009】
また、前記OLED本体は、カソード層を含み、前記カソード層と前記有機層との間にはバリア保護層が設けられている。
【0010】
また、前記保護層は、真空蒸着により前記有機層上に形成された透明金属であり、前記保護層は、前記有機層を保護するための、一定の厚みで透明金属となる無機材料であるAlやAg等を含むが、これらに限定されない。
【0011】
また、前記バリア層は、堆積方式で前記保護層上に形成された無機材料である。
【0012】
また、前記応力層は、ポリマー材料から製造される。
【0013】
また、前記応力層上には無機層も積層されている。実際の必要に応じて異なる有機層と無機層の交互構造フィルムを堆積することによって、水分・酸素に対する有効的なバリア性と、折り畳み及び巻取り寿命の有効的な延長を図る。バリア層と無機層の材料は、同一でも異なってもよい。
【0014】
また、前記折り畳み領域は、1つであるか、又は複数で間隔配置される。折り畳み領域が複数であると、OLEDデバイスを複数回に折り畳む状況に適合される。
【0015】
本願は、前述したOLEDデバイスのパッケージ構造を有するOLEDデバイスを提供する。
【0016】
本願は、前述したOLEDデバイスを有するディスプレイスクリーンを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の前記OLEDデバイスのパッケージ構造は、曲面領域から構成された屈曲領域を有して、良好な折り畳み及び巻取り効果を達成すると共に、フレキシブルOLEDデバイスの操作寿命を延ばしている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下、本発明の実施例又は従来技術による技術案をより明らかに説明するために、実施例又は従来技術で利用する必要がある図面について簡単に紹介する。なお、後述する図面は、本発明のある実施例を示したものに過ぎず、当業者であれば、創造的な活動をしない前提で、これらの図面に基づいて他の関連する図面を得ることもできることは言うまでもない。
【
図1】本発明によるOLEDデバイスのパッケージ構造の模式図である。
【
図2】
図1に示すOLEDデバイスを有するディスプレイスクリーンの模式図である。
【
図3】
図1のOLEDデバイスのパッケージ構造を製造する有機層の第1の曲面領域の金型の模式図である。
【
図4-6】
図1に示すOLEDデバイスのパッケージ構造の段階図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案について明瞭、完全に記述するが、その記述した実施例はただ本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことは勿論である。そして、本発明における実施例に基づき、本分野の当業者が創造的な活動をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属するものである。
【0020】
図1及び
図2を参照すると、本発明の好ましい実施形態の提供する前記OLEDデバイスのパッケージ構造はOLEDデバイス、特にフレキシブルなOLEDデバイスに用いられる。前記OLEDデバイスはOLED本体10及びパッケージ層(図示せず)を備えている。前記パッケージ層は、有機層11と、保護層12と、バリア層13と、応力層14とを有し、前記有機層11上には第1の曲面領域111が形成されている。前記有機層11上には、前記保護層12、バリア層13及び応力層14が順に積層され、前記保護層12、バリア層13及び応力層14上には、いずれも第2の曲面領域が形成され、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域111とは積層配置して重ね合わさり、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域111とは積層配置されてOLEDデバイスの折り畳み領域15を形成する。説明したいことは、前記第2の曲面領域と前記第1の曲面領域111とは、OLED本体10に投影すると重ね合わさり、積層後に規則的な折り畳み領域15を構成する。
【0021】
前記パッケージ層は、複数からなり積層配置され、且つ、各2つの隣接するパッケージ層は、有機層を介して応力層に貼り合わせられる。つまり、異なる必要に応じて、異なる層の有機層と無機層を交互に積層配置することができる。本実施例においては、前記パッケージ層は1つである。前記OLED本体10はカソード層101を含み、前記パッケージ層は前記カソード層101上に貼り付けられ、前記カソード層101と前記有機層11との間にはバリア保護層16が設けられる。
【0022】
さらに、前記有機層11の第1の曲面領域は、いずれも複数の規則的な錐体、又は複数の規則的なトレンチ溝がマトリクス状に間隔配列されることにより形成される。また、前記第1の曲面領域は金型で圧印形成される。さらに、前記錐体は、ピラミッド形又は円錐形であり、前記トレンチ溝の断面は三角形又は円弧形を呈する。具体的に、圧印金型の表面には、前記ピラミッド形又は円錐形又は三角形のトレンチ溝又は円弧形のトレンチ溝が配置さら、フィルムを圧印することで対応する曲面領域を形成する。
図2を参照すると、金型表面には、複数のピラミッド形をマトリクス状に間隔配列して構成される圧印面が凸設され、金型で有機層11を圧印することにより第1の曲面領域が形成される。保護層12、バリア層13及び応力層14が有機層11に積層される時、対応する前記第1の曲面領域の位置にいずれも第2の曲面領域が形成される。
【0023】
また、前記保護層12は、透明金属で製造され、前記有機層11を保護するための、一定の厚みで透明金属となる無機材料であるAl、Ag等を含むが、これらに限定されない。
【0024】
また、前記バリア層13は、無機材料から製造され、無機材料をプラズマ援用化学気相堆積法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition;PECVD)により保護層上に堆積して前記バリア層を形成するが、その方法はPECVD法に限定されない。また、無機材料はAl
2O
3、SiN
x、TiO
2、SiO
x等を含むが、これらに限定されない。
【0025】
また、前記応力層14は、ポリマー材料から製造され、バリア層上に透明ポリマーを堆積して応力層を形成することによって、バリア層の折り畳み及び巻取り過程での応力を緩和する。透明ポリマーは、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)重合体であるpp−HMDSO(Plasma Polymerized HMDSO)、ポリアクリレート系、ポリカーボネート系、ポリスチレン系等を含むが、これらに限定されない。
【0026】
さらに、前記応力層14上には無機層17も積層されている。実際の必要に応じて本体10上に異なる有機層と無機層の交互構造のパッケージ層フィルムを堆積することによって、水分・酸素に対する有効的なバリア性と、折り畳み及び巻取り寿命の有効的な延長を図る。バリア層と無機層の材料は、同一でも異なってもよい。
【0027】
また、前記折り畳み領域15は、
図2に示すように1つである。よく理解できるように、前記折り畳み領域15は、複数で平行に間隔配置されてもよい。折り畳み領域15が複数である時、OLEDデバイスを複数回に折り畳む状況に適合し、折り畳み領域15が表示領域全体に延びると、OLEDデバイスを巻き取る、又は可撓にする状況に適合する。
【0028】
図3を参照すると、前記パッケージ層を製造する場合、第1の段階として、前記金型20と、有機層11が設けられたOLED本体10とを提供する。また、金型20の表面には、複数のピラミッド形をマトリクス状に間隔配列して構成される圧印面201が凸設されている。第2の段階として、金型20の圧印面201で前記有機層11を圧印することによって、有機層11の表面を第1の曲面領域111(
図4)に圧印する。第3の段階として、透明金属を有機層11の表面に真空蒸着することによって保護層12を形成すると共に、保護層12上の前記第1の曲面領域111に対応する位置に第2の曲面領域121(
図5)を形成する。第4の段階として、堆積方式で前記保護層12上にバリア層13を形成すると共に、バリア層13上の前記第1の曲面領域111に対応する位置に第2の曲面領域131(
図6)を形成する。第5の段階として、堆積方式で前記バリア層13上に応力層14を形成すると共に、応力層14上の前記第1の曲面領域111に対応する位置に第2の曲面領域141(
図1)を形成する。
【0029】
本願の前述したOLEDデバイスのパッケージ構造は、通常平面のフィルム封止と比べて、交互する無機フィルムと有機フィルムの積層配置を用い、曲面領域を有する有機層11及び応力層14は、フレキシブルOLEDデバイスの折り畳み及び巻き取る場合に生じる応力をより効果的に緩和できると共に、曲面領域を有する保護層12、バリア層13は、フィルム封止層への水分・酸素の浸透経路を効果的に延ばすことができる。これによって、良好な折り畳み及び巻取り効果を達成すると共に、フレキシブルOLED素子の操作寿命を延ばしている。さらに、金型プロセスにより特定形状の折り畳み領域15を圧印形成でき、製造工程が簡単で、低コストである。
【0030】
本願は、OLEDデバイスのフレキシブルディスプレイスクリーンも提供し、前記OLEDデバイスは、上記実施例に記載のOLEDデバイスのパッケージ構造を備える。OLEDデバイスは、上記パッケージ構造を採用することによって、フレキシブルディスプレイスクリーンの柔軟性及び屈曲寿命を増加することができる。
【0031】
以上は、単に本発明の好ましい実施例を開示したことに過ぎず、これによって本発明の特許請求の範囲を限定できないことは言うまでもない。本分野の当業者であれば、上記実施例の全部又は一部の工程を実現し、本発明の特許請求の範囲に応じてなされた同等な変化が、依然として本発明の保護範囲内に属することを理解できるであろう。