特許第6709322号(P6709322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709322
(24)【登録日】2020年5月26日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】回転操作部品
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/20 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   H01H19/20 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-502380(P2019-502380)
(86)(22)【出願日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2017008251
(87)【国際公開番号】WO2018158905
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮城 勝
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−15641(JP,A)
【文献】 特開平11−329806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/00 − 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作軸と、
前記回転操作軸の一方の端部が挿入されており、前記一方の端部を回転自在に保持する軸受と、
リングバネと、
を備え、
前記軸受は、前記回転操作軸を保持する環状領域における前記軸受の奥側の端部に環状の第1の端部を有し、前記環状領域における前記奥側の端部と反対側の端部に環状の第2の端部を有し、
前記第1の端部の内側には、前記軸受の奥側に向かうほど前記軸受の内径が大きくなるよう第1のテーパー面が形成されており、
前記回転操作軸の前記第1のテーパー面に対向する面には、前記軸受の奥側に向かうほど前記回転操作軸の外径が大きくなるよう第2のテーパー面が形成されており、
前記第1のテーパー面のテーパー角は前記第2のテーパー面のテーパー角よりも大きく、
前記リングバネは、前記第1のテーパー面、および、前記第2のテーパー面に挟まれて、前記第1のテーパー面を押圧する状態で配置されていることを特徴とする回転操作部品。
【請求項2】
前記回転操作軸は、前記軸受に挿入される第1の円柱状部分と、前記第1の円柱状部分よりも外径が大きい第2の柱状部分とを備え、前記第2の端部は、前記第1の円柱状部分と前記第2の柱状部分との境界にある環状の段差部分を面で支持することを特徴とする請求項1に記載の回転操作部品。
【請求項3】
前記第2の柱状部分は円柱状であり、前記段差部分は、前記第2の柱状部分の側面、および、前記第2の柱状部分の底面外周側の環状面からなり、前記第2の端部は、前記環状面を前記回転操作軸の軸方向から面で支持することを特徴とする請求項2に記載の回転操作部品。
【請求項4】
前記第2の端部は、前記側面を前記回転操作軸の半径方向から面で支持することを特徴とする請求項3に記載の回転操作部品。
【請求項5】
前記回転操作軸は、前記第2のテーパー面の端部に前記リングバネの移動を止める壁面を有することを特徴とする請求項1に記載の回転操作部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作軸と、回転操作軸の一方の端部が挿入され、回転操作軸を回転自在に保持する軸受とからなる回転操作部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転操作軸を有する回転型スイッチやポテンショメータなどの部品が広く用いられている。回転操作軸は軸受により保持されるが、回転操作軸が軸受から抜けないようにすることが要求される。
【0003】
このような技術として、特許文献1、2には、回転操作軸の溝にはめ込まれた止め輪が軸受と接触することにより回転操作軸が軸受から抜けることを防止する電子部品の回転軸保持構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−33606号公報
【特許文献2】国際公開第2013/065507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、このような部品においては回転操作軸の抜け防止だけでなく、回転操作軸が軸受に対して滑らかに回転できるようにしつつ、回転操作軸のガタつきを抑制することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、回転操作軸が軸受に対して滑らかに回転できるようにしつつ、回転操作軸のガタつきを抑制することが可能な回転操作部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転操作部品は、回転操作軸と、回転操作軸の一方の端部が挿入されており、回転操作軸を回転自在に保持する軸受と、リングバネと、を備え、軸受は、回転操作軸を保持する環状領域における軸受の奥側の端部に環状の第1の端部を有し、環状領域における奥側の端部と反対側の端部に環状の第2の端部を有し、第1の端部の内側には、軸受の奥側に向かうほど軸受の内径が大きくなるよう第1のテーパー面が形成されており、回転操作軸の第1のテーパー面に対向する面には、軸受の奥側に向かうほど回転操作軸の外径が大きくなるよう第2のテーパー面が形成されており、第1のテーパー面のテーパー角は第2のテーパー面のテーパー角よりも大きく、リングバネは、第1のテーパー面、および、第2のテーパー面に挟まれて、第1のテーパー面を押圧する状態で配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転操作軸が軸受に対して滑らかに回転できるようにしつつ、回転操作軸のガタつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係るポテンショメータの分解斜視図
図2】本実施の形態に係るポテンショメータの断面図
図3】回転操作軸および軸受に挟まれて配置されるリングバネの状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
以下では、回転操作部品の一例として、ポテンショメータを例に挙げて説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、回転操作軸と、回転操作軸の一方の端部が挿入され、回転操作軸を回転自在に保持する軸受とからなる部品に広く適用できる。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るポテンショメータ10の分解斜視図である。図1に示すように、このポテンショメータ10は、回転操作軸11、マグネット12、軸受13、リングバネ14、回路基板15、ホルダ16を備える。
【0013】
回転操作軸11は、ユーザにより回転操作がなされる軸である。マグネット12は、回転操作軸11に固定され、回転操作軸11とともに回転するマグネットである。このマグネット12の回転による磁界の変化を、後述する回路基板15に搭載されたホールIC15aが検出する。
【0014】
軸受13は、回転操作軸11の一方の端部が挿入され、回転操作軸11を回転自在に保持する軸受である。軸受13は、ホルダ16と組み合わされて回路基板15を収納する筐体となる。
【0015】
リングバネ14は、一部が切断された環状のバネである。リングバネ14は、弾性を有し、切断された部分の間隔が広がるような変形を受けると、元の形状に戻ろうとして狭まる。そのため、リングバネ14の内周側に物体があると、その物体が押圧される。なお、リングバネ14の断面は、円形でも楕円形でもよい。
【0016】
回路基板15は、ホールIC(Integrated Circuit)15aなどの電子回路が搭載された回路基板である。回路基板15は、マグネット12が回転した際、ホールIC15aが検出した磁界の変化を電圧に変換して出力する。
【0017】
ホルダ16は、前述のように、軸受13と組み合わされて回路基板15を収納する筐体となる。
【0018】
図2は、本実施の形態に係るポテンショメータ10の断面図である。また、図3は、回転操作軸11、および、軸受13に挟まれて配置されるリングバネ14の状態を示す図である。図2図3は、回転操作軸11の回転軸を含み、回転軸に平行な断面で切断した場合の断面図である。
【0019】
図2図3に示されるように、軸受13は、回転操作軸11を保持する環状領域13aにおける軸受13の奥側の端部に環状の第1の端部13bを有し、環状領域13aにおける奥側の端部と反対側の端部に環状の第2の端部13cを有する。
【0020】
そして、第1の端部13bの内側には、軸受13の奥側(矢印Aの方向)に向かうほど軸受13の内径が大きくなるよう第1のテーパー面13dが形成されている。
【0021】
また、回転操作軸11の第1のテーパー面13dに対向する面には、軸受13の奥側に向かうほど回転操作軸11の外径が大きくなるよう第2のテーパー面11aが形成されている。
【0022】
ここで、第1のテーパー面13dのテーパー角αは、第2のテーパー面11aのテーパー角βよりも大きい。
【0023】
なお、本実施の形態では、図2図3に示されるように、第1のテーパー面13d、および、第2のテーパー面11aは、断面でみた場合に直線状となっているが、それらが曲線状となるように第1のテーパー面13d、および、第2のテーパー面11aを形成してもよい。
【0024】
また、リングバネ14は、第1のテーパー面13d、および、第2のテーパー面11aに挟まれて、第1のテーパー面13dを押圧する状態で配置されている。
【0025】
具体的には、一部が切断された環状のリングバネ14は、切断された部分の間隔が広がるように変形されて、第1のテーパー面13d、および、第2のテーパー面11aの間に配置される。そして、リングバネ14は、元の形状に戻ろうとして狭まることにより、第1のテーパー面13dを押圧する。
【0026】
これにより、リングバネ14は、第1のテーパー面13dに沿って軸受13の奥側とは反対側の方向(矢印Aと反対の方向)に移動しようとするので、より確実に第1のテーパー面13dと第2のテーパー面11aとに挟まれる。その結果、軸受14に対する回転操作軸11のガタつきを効果的に抑制することができる。
【0027】
また、このような構成では、軸受14に対する回転操作軸11の回転が妨げられず、回転操作軸11が軸受14に対して滑らかに回転できる。
【0028】
さらに、回転操作軸11は、軸受13に挿入される第1の円柱状部分11bと、第1の円柱状部分11bよりも外径が大きい第2の円柱状部分11cとを備える。
【0029】
そして、第2の端部13cは、第1の円柱状部分11bと第2の円柱状部分11cとの境界にある環状の段差部分11dを面で支持する。これにより、回転操作軸11のガタつきをさらに効果的に抑制できる。
【0030】
図2の例では、上述した段差部分11dは、第2の円柱状部分11cの側面11e、および、第2の円柱状部分11cの底面外周側の環状面11fからなる。
【0031】
そして、第2の端部13cは、第2の円柱状部分11cの側面11eを回転操作軸11の半径方向から環状面13eにより面で支持し、第2の円柱状部分11cの底面外周側の環状面11fを回転操作軸11の軸方向から軸受13の環状面13fにより面で支持する。
【0032】
これにより、回転操作軸11の軸方向のガタつき、および、軸方向と直交する方向のガタつきを効果的に抑制できる。
【0033】
なお、図2の例では、回転操作軸11が、第1の円柱状部分11bと第2の円柱状部分11cとを備えることとしたが、第2の円柱状部分11cをフランジとして、第1の円柱状部分11bと外径が同じか、あるいは、その外径よりも小さい第3の円柱状部分を、第1の円柱状部分11bと第3の円柱状部分とで第2の円柱状部分11cを挟むようにして設けることとしてもよい。
【0034】
なお、第2の円柱状部分11cは、円柱状でなくともよく、角柱状など柱状であればよい。この場合、第2の端部13cは、柱状部分の底面外周側の環状面11fを回転操作軸11の軸方向から、環状面13fにより面で支持する。
【0035】
また、図2の例では、第2の端部13cにおいて、2つの環状面13e、13fにより段差が形成されていることとしたが、段差はなくともよく、回転操作軸11の回転軸に垂直な環状面が形成されることとしてもよい。
【0036】
この場合、第2の端部13cは、第2の円柱状部分11cの底面外周側の環状面11fを回転操作軸11の軸方向から、上述した環状面により面で支持する。
【0037】
さらに、回転操作軸11は、図3に示すように、軸受13の奥側(矢印Aの方向)の第2のテーパー面11aの端部にリングバネ14の移動を止める壁面11gを有する。
【0038】
これにより、軸受13から引き抜く方向に回転操作軸11に力がかかった場合でも、リングバネ14が第1のテーパー面13d、第2のテーパー面11a、および、壁面11gに接触し、軸受13に対して回転操作軸11が移動しなくなる。そのため、回転操作軸11が軸受13から抜けることを防止することができる。
【0039】
なお、壁面11gの代わりに、回転操作軸11の軸方向における回転操作軸11の移動を妨げる構造を第1の端部13b以外の部分に設け、回転操作軸11が軸受13から抜けることを防止することとしてもよい。
【0040】
たとえば、回転操作軸11の周囲に溝を形成し、軸受13に突起を形成し、その溝に突起が係合することにより、回転操作軸11の回転を妨げずに、回転操作軸11の軸方向における回転操作軸11の移動を防止するようにしてもよい。
【0041】
また、第2のテーパー面11aのもう一方の端部には、回転操作軸11の回転軸から一定距離だけ離れた円筒状の内壁面11hが形成されている。さらに、第2のテーパー面11aとつながる内壁面11hの端部と反対側の端部には、環状の壁面11iが形成されている。
【0042】
ここでは、第2のテーパー面11aと壁面11iとの間に円筒状の内壁面11hを形成することとしたが、内壁面11hの代わりにテーパー面を設けることとしてもよい。このテーパー面は、第2のテーパー面11aの延長であってもよい。
【0043】
このような場合であっても、図2図3に示した構成と同様に、軸受14に対する回転操作軸11のガタつきを効果的に抑制することができるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、回転型スイッチやポテンショメータなどの回転操作軸を有する回転操作部品に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0045】
10 ポテンショメータ
11 回転操作軸
11a 第2のテーパー面
11b 第1の円柱状部分
11c 第2の円柱状部分
11d 段差部分
11e 第2の円柱状部分の側面
11f 第2の円柱状部分の底面外周側の環状面
11g 壁面
11h 内壁面
11i 壁面
12 マグネット
13 軸受
13a 回転操作軸を保持する領域
13b 第1の端部
13c 第2の端部
13d 第1のテーパー面
13e 環状面
13f 環状面
14 リングバネ
15 回路基板
15a ホールIC
16 ホルダ
図1
図2
図3