(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6709438
(24)【登録日】2020年5月27日
(45)【発行日】2020年6月17日
(54)【発明の名称】歩行型草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/47 20060101AFI20200608BHJP
【FI】
A01D34/47
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-104973(P2016-104973)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-209060(P2017-209060A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】井手 宣弘
(72)【発明者】
【氏名】大原 浩二
【審査官】
小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−017608(JP,U)
【文献】
実開昭51−120232(JP,U)
【文献】
実開昭58−155928(JP,U)
【文献】
特開2003−265012(JP,A)
【文献】
実開昭61−007930(JP,U)
【文献】
実開昭57−001518(JP,U)
【文献】
特開平02−042911(JP,A)
【文献】
特開2003−111509(JP,A)
【文献】
実開昭49−127356(JP,U)
【文献】
韓国登録特許第10−0823426(KR,B1)
【文献】
韓国登録特許第10−1066663(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D34/00 −34/01
A01D34/412−34/90
A01D42/00 −42/08
A01D43/06 −43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(1)前方に、左右両外側位置に接地輪(2),(2)を備えた刈刃ハウジング(3)を設け、その後方に原動機(4)と左右一対の走行輪(5),(5)とを設け、機体(1)後方上方へ向け延設するハンドル(6)を、その後方を歩行する作業者が把持操作しながら草刈作業を行うことのできる歩行型草刈機において、前記走行輪(5),(5)の左右間隔(W)を拡縮可能に構成し、接地輪(2),(2)を上下移動させて草の刈高さを調整可能にするとともに、刈刃ハウジング(3)の左右両外側に配置した接地輪(2),(2)を上下移動させた際に、該接地輪(2),(2)の前端が側面視刈刃ハウジング(3)側板(35)の前端(F)より突出しないよう構成し、更に、刈刃ハウジング(3)の前部上側の中央部に接地輪取着部(7)を設け、この接地輪取着部(7)へ接地輪(2a)を着脱可能に構成したことを特徴とする歩行型草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右一対の走行駆動用の走行輪を備えた歩行型草刈機に関し、更に詳しくは、平地での草刈作業を行う場合には刈草の掻き込み性が良く、狭幅の畦上の草刈作業においても容易に行うことのできる歩行型草刈機の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
刈刃ハウジング左右両側に接地車輪を設けた歩行型の草刈機が特許文献1に開示されてあり、刈刃ハウジング前方中央部に接地輪を設けた草刈機については特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−167679号公報
【特許文献1】特開平8−336722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、機体後部に設けた左右一対の走行駆動輪と、機体前部に設けた左右一対の接地輪、又は走行駆動車輪と同様に駆動する左右一対の前輪を備えた4輪駆動形態の歩行型草刈機が知られている。又、機体後部に左右一対の走行駆動輪、又は走行クローラを備え、その前方には刈り取り装置を含む刈刃ハウジングを設け、この刈刃ハウジングの左右両側に接地輪を設けた歩行型草刈機が知られている。しかしながら、これらの歩行型草刈機は草刈作業効率や機体の左右バランス、更には刈刃ハウジング内への刈草の掻き込み性を考慮して、刈刃ハウジング前方中央部には草掻き込みの障害となる接地輪を配置せず、接地輪は刈刃ハウジングの左右外側方に設けられ、走行輪の左右間隔も広く構成したものが多くなっている。これら広幅の接地輪や走行輪を備えた歩行型草刈機は、比較的小型ではあるものの狭幅の畦上の草刈作業を行う場合には機体腹部が接地してしまい、草刈作業ができないものであった。そこで本発明は、平旦地において広幅での草刈作業が可能であり、畦上等の草刈作業においても容易に効率よく行うことができる歩行型草刈機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
機体1前方に、左右両外側位置に接地輪2、2を備えた刈刃ハウジング3を設け、その後方に原動機4と左右一対の走行輪5、5とを設け、機体1後方上方へ向け延設するハンドル6を、その後方を歩行する作業者が把持操作しながら草刈作業を行うことのできる歩行型草刈機において、前記走行輪5、5の左右間隔Wを拡縮可能に構成
し、接地輪2、2を上下移動させて草の刈高さを調整可能に構成するとともに、
刈刃ハウジング3の左右両外側に配置した接地輪2、2を上下移動させた際に、該接地輪2、2の前端が側面視刈刃ハウジング3側板35の前端Fより突設しないよう構成し、更に、刈刃ハウジング3の前部上側の中央部に接地輪取着部7を設け、この接地輪取着部7へ接地輪2aを着脱可能に構成する。
【0006】
【0007】
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、走行輪5、5の左右間隔Wを拡縮可能に構成
し、接地輪2、2を上下移動させて草の刈高さを調整可能に構成するとともに、
刈刃ハウジング3の左右両外側に配置した接地輪2、2を上下移動させた際に、該接地輪2、2の前端が側面視刈刃ハウジング3側板35の前端Fより突出しないよう構成し、更に、刈刃ハウジング3の前部上側の中央部に接地輪取着部7を設け、この接地輪取着部7へ接地輪2aを着脱可能に構成してあるので、平地等の草刈作業を行う場合は、刈刃ハウジング3左右両外側方位置の接地輪2、2及び左右の走行輪5、5間隔Wを拡張させ広幅に構成することにより、機体1安定性、及び草の掻き込み性が良く、狭幅の畦上等の草刈作業を行う場合には、刈刃ハウジング3の前部上側中央部に設けた接地輪取着部7へ接地輪2aを取着するとともに、左右走行輪5、5間隔Wを縮小させ狭幅に構成することにより、歩行できる程度の狭幅の畦上等の草刈作業も行うことが可能となる。
又、接地輪2、2を上下移動調整しても、接地輪2、2前端が側板35の前端Fより突出しないので、刈刃ハウジング3前方からの刈草の取込み性が良く、接地輪2、2への草の巻込みも少ない。
【0009】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の歩行型草刈機は、機体1前方に雑草の刈取が可能の刈取装置8を設け、その外周部を刈刃ハウジング3で覆っている。機体中央部にはギヤボックス15を設け、その後方に原動機4を、下方に走行用の走行輪5を設け、ギヤボックス15上方部から原動機4上側の後方上方へ向かって延設のハンドル6を設けてある。原動機4の動力は、ギヤボックス15を介して走行輪5及び刈取装置8へ伝達され、走行輪5への伝達は走行クラッチ16により、又、刈取装置8への伝達は刈取クラッチ17を入、切操作することで各々への伝動を入、切することができる。22は、左右各々の走行輪5、5への駆動の入、切、及び回転固定を行うサイドクラッチレバーで、18は走行速度を変速する変速レバーであり、19は原動機4の回転数を増減するスロットルレバー、20はハンドル6を機体1進行方向と同方向に向けた状態Aや機体1進行方向と直交方向に向けた状態B等に旋回させる際に、そのハンドル6の旋回固定状態を旋回可能状態にすることのできる旋回レバーで、状態Aから左右各々約100度、すなわち機体1進行方向に対し直行方向に向けた状態Bから更に前方へ旋回可能に構成してある。又、21は、ハンドル6の所定範囲上下回動を固定状態と回動可能状態とに切換え可能のハンドル上下レバーである。
【0013】
走行輪5、5の左右間隔Wは、その轍間距離を拡張状態W1と縮小状態W2とに拡縮可能に構成してある。その拡縮方法は、ピン23を抜き車軸24穴と車輪ボス25との穴位置を変更することによって行われる。走行輪5、5は比較的広幅のタイヤを採用し、左右走行輪5、5間に設けるギヤボックス15は狭幅に形成してあり、走行輪5、5間を拡張させた場合は機体1の左右安定性が良く、縮小させた場合にも左右安定性を維持しながら、畦上等の狭幅の走行路面も安定した走行が可能である。
【0014】
原動機4の駆動力は、ギヤボックス15及び刈刃伝動系路Dを介して刈刃軸9に伝動され、この伝動は刈刃クラッチ17を入、切操作することで接続、遮断が可能である。刈刃軸9の周りには複数のフレールナイフ10を設け、このフレールナイフ10は左右一対のナイフをY字形態に取着し、所定範囲の回動が可能で、これらの刈取装置8は、側面視において刈刃軸9前側が上方へ向け回転するアッパー回転によって草を刈取ることができるハンマーナイフ形態である。刈取装置8外周は刈刃ハウジング3で覆われ、この刈刃ハウジング3の左右両外側部には、接地輪軸30に軸支された車輪31を備え、上下スライド可能の接地輪2、2を設けてある。接地輪2、2の上下スライドは、スプリング26の付勢力に抗してレバー27を引き、接地輪2、2の摺動杆28の穴29の嵌合を解除し別の穴29へ嵌合させることで行うことができる。
【0015】
刈刃ハウジング3の前部上側には、ハンマーナイフ形態の刈取装置8に巻き付いた蔓草や紐等により、刈刃ハウジング3前方から作業者(操縦者)側へ向けて礫土や草が飛散することを防止可能の飛散防止カバ−11を設けてある。飛散防止カバー11は、刈刃ハウジング3の左右幅WKと略同幅に形成してあり、刈刃ハウジング3前部上側の左右両端部に設けたカバーベース32にボルト33で取着してあり、刈刃ハウジング3の前端部から前方上方へ向け屈曲させ、この飛散防止カバー11の左右中央部には、接地輪2a又は2を取着可能の接地輪取着部7を設けてある。この接地輪取着部7は、本実施の形態においては飛散防止カバー11にその全体を溶着しているが、その一部を刈刃ハウジング3側へ固着しても良い。接地輪取着部7に取着する接地輪は、新たな接地輪2aを取着するか、刈刃ハウジング3左右両外側方に設けた接地輪2、2の内どちらか一方を取着できるよう構成してもよい。又、左右どちらか一方の接地輪2を接地輪取着部7へ取着した場合は、残った片方の接地輪2を取外し、接地輪ベース34の上方から摺動杆28を嵌挿し、接地輪2を逆向きに取着し、草刈作業の際、接地輪2に草が接触して抵抗とならないようにすることが好ましい。
【0016】
傾斜地、及び平地での草刈作業時は、走行輪5、5の左右間隔Wを拡張させた拡張状態W1に設定し、安定した草刈作業を行うことができる。又、畦上等の草刈作業時は、走行輪5、5の左右間隔Wを縮小させた縮小状態W2に設定するとともに、新たな接地輪2a又は刈刃ハウジング3左右両外側に設けた接地輪2、2の内どちらか一方の接地輪2を、左右中央部に設けた接地輪取着部7へ取着する。通常、畦は田の風通しを良くするという目的もあり、その畦上の草刈作業は比較的頻繁に行う必要があり、休耕田等のように草丈が高くならず、刈刃ハウジング3中央部の前方接地輪2、2aが突出していても刈取装置8内への刈草の取込み性能にはあまり影響せず、このことからも、狭幅の畦上においても安定した刈残しのない草刈作業を行うことが可能である。
【0017】
刈刃ハウジング3の左右両外側の接地輪ベース34は、断面角パイプ形状に形成し後方上方に向け溶着してあり、この接地輪ベース34内を、接地輪2、2の断面角パイプ形状の摺動杆28を上下摺動させることによって、刈草の刈高さを調整することが可能である。接地輪2、2の上下高さ調整は、摺動杆28の複数個設けた穴29とレバー27との嵌合、及び解除によって行うことができる。草の刈高さが高くなるよう接地輪2、2を最下方位置に設定した場合に接地輪2、2が最も前方へ移動した位置となるが、この位置においても、接地輪2、2の前端は刈刃ハウジング3側板35の前端Fより突出しないように構成してあり、前方からの刈草の取込み性が良く、接地輪2、2への草の巻込みも少ない。
【符号の説明】
【0018】
1 機体
2 接地輪
2a 接地輪
3 刈刃ハウジング
4 原動機
5 走行輪
6 ハンドル
7 接地輪取着部
8 刈取装置
9 刈刃軸
10 フレールナイフ
11 飛散防止カバー
W 間隔
WK 左右幅