【実施例1】
【0014】
図1は本発明の一実施例の鋼管杭の正面図、
図2は
図1の平面図である(但し、杭本体である鋼管は断面で示している)、
図3は
図2のA−A断面図、
図4は
図1の底面図である。
この鋼管杭1は、杭本体である鋼管2の先端面に、直径D
0が鋼管直径dより大で、かつ中央部に、下面側から見て杭頭側にへこんだ直径D
1の円形輪郭の凹部8が形成された円形の端面板3を溶接固定している。図示例の凹部8はすり鉢状をなしている。凹部8の円形輪郭を
図4にSで示す。凹部8の外側部分(上面部分)を8’で示す。凹部8の外側部分8’の上から見た円形輪郭をS’で示す。
前記端面板3における前記凹部8より外側に張り出した鍔部4に、前記端面板3の周縁から中央に向かう切欠き部5を有し、前記切欠き部5の端面板周方向両側に、互いに上下逆向きに傾斜した傾斜面部6、7(上向き傾斜面部6及び下向き傾斜面部7)が形成されている。
そして、前記凹部8に、その中心側から前記切欠き部5の近傍に向かって延びる掘削推進補助バーとして機能する細長部材10が溶接固定されている。実施例の細長部材10は、縦横18mmの正方形断面で長さが130mmの角棒(角形部材)である。
【0015】
この実施例ではさらに、端面板3の下面に下向き傾斜面部7を補強する傾斜面部補強部材21を溶接固定している。
図示例の傾斜面部補強部材21は、縦横18mmの正方形断面で長さが40mmの角棒であり、その下端を端面板3に、下向き傾斜面部7における端面板中心側の側端面に接するように位置させて溶接固定し、上部の側面を下向き傾斜面部7の端面板中心側の側端面に溶接固定している。
図5(ロ)の砂地ハッチングで示した部分が傾斜面部補強部材21と下向き傾斜面部7の端面板中心側の側端面とが接合される領域である。溶接はその領域の周囲において行う。
図2において溶接部をQで示す。
図示例の傾斜面部補強部材21が端面板3に固定される位置は、凹部8の円形輪郭Sと円弧状切りこみmとの間の平坦な部分である。
なお、端面板3の直径が小径の場合は、傾斜面部補強部材21の位置が凹部8の傾斜面になる場合もあるが、その場合は傾斜面部補強部材21の下端面を傾斜面にする。
【0016】
鋼管杭1の杭本体である鋼管2は通常、板厚tが4.2mm、5.5mm、5.7mm、6.0mm等であり、直径dが89.1mm、101.6mm、114.3mm等である。材質はSTK400である。
端面板3は通常、板厚T=9mm、12mm等であり、直径D
0=300mm、400mm、580mm等である。材質はSS400又はSS490である。凹部8の高さは通常、H=45mm、60mm、75mm等であり、凹部8の円形輪郭Sの直径D
1は通常、175mm、220mm、280mm、360mm等である。
実施例で説明する鋼管杭の各サイズ等については、鋼管2は板厚t=4.5mm、直径d=114.3mm、材質STK400である。端面板3は板厚T=9mm、直径D
0=400mm、凹部8の高さH=45mmである。凹部8の円形輪郭Sの直径D
1は220mm、材質はSS400又はSS490である。
【0017】
端面板3を製作する方法は特に限定されないが、鋼板の平坦な円板に凹部8を形成した後に傾斜面部6、7を形成してもよいし、平坦な円板に、傾斜面部6、7を形成するための切り込みを入れた段階で凹部8を形成してもよい。また、平坦な円板に、切り込みを入れかつ傾斜面部を形成した後に、凹部を形成することも考えられる。
図4に対応する底面図として示した
図6では、円板9に凹部8を形成した後に傾斜面部を形成する場合として示している。同図において、傾斜面部が形成される前の段階の端面板を3’で示し、傾斜面部6、7となる部分を6’、7’で示す。
図示例では、凹部8の円形輪郭Sより若干半径方向外側の位置に円弧状の切込みmを入れ、その円弧状の切り込みmの中央位置から半径方向外側に延びる切込みnを入れた後、前記切込みnの円周方向両側をそれぞれ上下逆向きに傾斜させて、
図1、
図3、
図5のような互いに上下逆向きの傾斜面部6、7を形成する。底面図である
図6において、傾斜面部6、7を形成する際の谷折り部を1点鎖線、山折り部を2点鎖線で示す。
なお、端面板3の直径D
0と凹部8の円形輪郭Sの直径D
1との寸法差にも関係するが、前記円弧状の切り込みmと円形輪郭Sとの間に、前記傾斜面部補強部材21の下端を端面板3に溶接固定する平坦なスペースが確保されるようにするのが望ましい。
【0018】
上述の鋼管杭1を地盤に打設する場合、回転圧入駆動部を持つ杭打ち機にて、回転圧入により地盤に貫入する。
この場合、先端の端面板3が、その傾斜面部6、7が土に食い込む態様で推進力を発揮する。そして、端面板3が支持層に到達した状態では、下面の凹部8に土がつまっていることで地盤との接触面が有効に働き、支持力の高いものとなる。
【0019】
鋼管杭1を回転圧入により地盤に貫入する際、端面板3の中央部に凹部8を有するので、上記のように、地盤に貫入した時に凹部3に土がつまっていることで地盤との接触面が有効に働き、支持力を確実に確保できるものであるが、回転貫入の際には、特に下向き傾斜面部7で土が凹部8に囲い込まれ押し込まれることが、掘削推進に対する抵抗が大きく要因となる。すなわち、回転貫入の際、土が特に下向き傾斜面部7で凹部8に強く押し込まれ過ぎると、凹部8につまった土からの下向き傾斜面部7の回転に対する抵抗が増し、また、鉛直方向の抵抗も増す。
しかし、上述した鋼管杭1では、端面板3の裏面の凹部8に、その中心側から切欠き部5の近傍に向かって延びる細長部材10が存在するので、掘削推進中にこの細長部材10が凹部8に囲い込まれ押し込まれる土を排出する作用をする。したがって、土が凹部8につまり過ぎることは抑制され、凹部8につまった土からの下向き傾斜面部7の回転に対する抵抗は軽減され、また、鉛直方向の抵抗が増すことも軽減される。このように、細長部材10は掘削推進補助部材として機能する。
【0020】
上記のように端面板3の特に下向き傾斜面部7には土を掘削する作用に対して大きな抵抗を受ける。したがって、その抵抗により下向き傾斜面部7が変形する恐れがあるが、その下向き傾斜面部7が前記傾斜面部補強部材21を介して端面板3に結合されていので、下向き傾斜面部7がその傾斜角度がさらに大となるように変形することは防止される。
【0021】
図7は上述の鋼管杭1を、家屋等の建築物の基礎杭として施工する態様の一例を説明するもので、鋼管杭1は建築物の基礎コンクリート20を支持する態様で地盤に設置される。この鋼管杭1によれば、地盤支持力が向上するので、従来より少ない本数の杭にて、所望の支持力を確保することができる。
また、鋼管杭1を地盤に貫入する際には、上述の通り、端面板3の下面に固定した細長部材10により、鋼管杭1の掘削推進に対する抵抗が軽減される。