【実施例】
【0112】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0113】
本実施例では、単量体成分として、下記式(A−1)で表される化合物(化合物A)、下記式(B−1)で表される化合物(化合物B)、下記式(C−1)で表される化合物(化合物C)及び下記式(D−1)で表される化合物(化合物D)を用いた。下記化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dの
1H−NMRチャート及び
13C−NMRチャートを
図1〜
図8に示す。なお、本実施例において、
1H−NMR及び
13C−NMRの測定は、DPX300(Bruker製)を用いて行い、溶媒にはCDCl
3を用いた。
【0114】
【化17】
[式中、Adは1−アダマンチル基を示す。]
【0115】
【化18】
[式中、
tBuはtert−ブチル基を示す。]
【0116】
【化19】
[式中、Phはフェニル基を示す。]
【0117】
【化20】
[式中、MDはメチルジメタノシクロデセニル基を示す。]
【0118】
(実施例1)
化合物Aのアニオン重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて行った。
【0119】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたジフェニルメチルリチウム(Ph
2CHLi)10.7mg(0.0615mmol)を含むヘプタン溶液2ml(関東化学製)のアンプルと、化合物A 594.0mg(2.23mmol)及びテトラヒドロフラン(THF)8mlを含むアンプルを溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10
−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0120】
次いで、ジフェニルメチルリチウム溶液が収容されている容器のブレークシールを割り、反応容器にジフェニルメチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。ジフェニルメチルリチウム溶液を含む反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却した化合物AとTHFを含む容器のブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま48時間反応させた。
【0121】
重合終了後、反応容器を開封し、重合停止剤であるメタノール2mlを添加し、重合を停止した。その反応溶液を100mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロート及び桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、5mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、下記式(A−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物1)を30mg得た。得られた高分子化合物1の
1H−NMRチャートを
図9に示す。なお、得られた高分子化合物1の
1H−NMRから求めた化合物Aの転化率は10%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Aに対して5質量%であった。
【0122】
【化21】
[式中、Adは1−アダマンチル基を示す。]
【0123】
得られた高分子化合物1について、下記(I)の方法で、数平均分子量Mnの計算値を算出した。また、下記(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnを測定した。結果は表1に示すとおりであった。
【0124】
(I)数平均分子量Mnの計算値の算出
得られた高分子化合物の末端に存在する重合開始剤及び重合停止剤に由来する部分構造の分子量と、重合開始剤の使用量(モル)に対する単量体成分の使用量(モル)の比(単量体成分の使用量/重合開始剤の使用量)に基づき算出した重合鎖の分子量と、を合計して、数平均分子量Mnの計算値とした。
【0125】
(II)数平均分子量Mnの測定
Right Angle Laser Light Scattering GPC(RALLS−GPC)を用いて、高分子化合物1の数平均分子量Mnを測定した。より具体的には、屈折率計、散乱強度計及び粘度計を検出器として有するViscotek Model 302 Triple Detector Array(旭テクネイオン(株)製)を使用し、流量を1.0ml/min、カラムオーブンの温度を30℃に設定して、測定を行った。流出溶媒にはTHFを用い、分析カラムはTOSOH G5000HXL+G4000 HXL+G3000 HXLを使用した。
【0126】
(III)比(Mw/Mn)の測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)を測定した。より具体的には、Viscotek Model 302 Triple Detector Array(旭テクネイオン(株)製)を使用した。
【0127】
(実施例2)
ジフェニルメチルリチウムの使用量を10.2mg(0.0584mmol)とし、化合物Aの使用量を442.2mg(1.66mmol)とし、反応時間を72時間とし、反応温度を0℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、式(A−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物2)を389mg得た。得られた高分子化合物2の
1H−NMRから求めた化合物Aの転化率は100%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Aに対して88質量%であった。
【0128】
得られた高分子化合物2について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0129】
(実施例3)
ジフェニルメチルリチウムに代えてジフェニルメチルナトリウム(Ph
2CHNa)10.3mg(0.0541mmol)を用い、化合物Aの使用量を532.8mg(2.00mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、式(A−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物3)を426mg得た。得られた高分子化合物3の
1H−NMRから求めた化合物Aの転化率は89%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Aに対して80質量%であった。
【0130】
得られた高分子化合物3について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0131】
(実施例4)
ジフェニルメチルリチウムに代えてジフェニルメチルカリウム(Ph
2CHK)8.5mg(0.0412mmol)を用い、化合物Aの使用量を1251mg(4.70mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、式(A−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物4)を1039mg得た。得られた高分子化合物4の
1H−NMRから求めた化合物Aの転化率は100%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Aに対して83質量%であった。
【0132】
得られた高分子化合物4について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0133】
得られた高分子化合物4について、下記(IV)の方法でガラス転移温度Tg及び10質量%減少温度T
10を測定した。Tgは193℃であり、T
10は430℃であった。なお、10質量%減少温度T
10、高分子化合物4の質量が、測定開始時の質量から10質量%減少した時の温度を意味する。
【0134】
(IV)ガラス転移温度Tg及び10質量%減少温度T
10の測定
DSC装置(セイコー電子社製「DSC6220」)を用いて測定した。測定は、一度100℃まで試料を加熱し、同温度で10分間アニールを施した後、室温まで試料を急冷した。この後、再度20℃/分で昇温して、ガラス転移温度(Tg)及び10質量%減少温度(T
10)を測定した。
【0135】
(実施例5)
ジフェニルメチルリチウムに代えてカリウムナフタレン(K−Naph)13.2mg(0.0792mmol)を用い、化合物Aの使用量を498.1mg(1.87mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、式(A−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物5)を443mg得た。得られた高分子化合物5の
1H−NMRから求めた化合物Aの転化率は100%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Aに対して89質量%であった。
【0136】
得られた高分子化合物5について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0137】
(実施例6)
ジフェニルメチルリチウムに代えてトリフェニルメチルカリウム(Ph
3CK)22.4mg(0.0794mmol)を用い、化合物Aの使用量を668.6mg(2.51mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、式(A−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物6)を595mg得た。得られた高分子化合物6の
1H−NMRから求めた化合物Aの転化率は95%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Aに対して89質量%であった。
【0138】
得られた高分子化合物6について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0139】
(実施例7)
ジフェニルメチルリチウムに代えてジフェニルメチルセシウム(Ph
2CHCs)20.9mg(0.0697mmol)を用い、化合物Aの使用量を623.3mg(2.34mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、式(A−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物7)を530mg得た。得られた高分子化合物7の
1H−NMRから求めた化合物Aの転化率は100%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Aに対して85質量%であった。
【0140】
得られた高分子化合物7について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表1に示すとおりであった。
【0141】
(実施例8)
化合物Aに代えて化合物B 523.4mg(2.78mmol)を用い、ジフェニルメチルリチウムの使用量を9.9mg(0.0566mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、下記式(B−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物8)を52mg得た。得られた高分子化合物8の
1H−NMRチャートを
図10に示す。なお、得られた高分子化合物8の
1H−NMRから求めた化合物Bの転化率は16%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Bに対して10質量%であった。
【0142】
【化22】
[式中、
tBuはtert−ブチル基を示す。]
【0143】
得られた高分子化合物8について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。また、上記(IV)の方法で、ガラス転移温度(Tg)及び10質量%減少温度(T
10)の測定を行った。Tgは135℃であり、T
10は415℃であった。
【0144】
(実施例9)
ジフェニルメチルリチウムの使用量を10.1mg(0.0581mmol)とし、化合物Bの使用量を561.0mg(2.98mmol)とし、反応時間を72時間とし、反応温度を0℃としたこと以外は、実施例8と同様にしてアニオン重合を行い、式(B−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物9)を476.9mg得た。得られた高分子化合物9の
1H−NMRから求めた化合物Bの転化率は100%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Bに対して85質量%であった。
【0145】
得られた高分子化合物9について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0146】
(実施例10)
ジフェニルメチルリチウムに代えてジフェニルメチルナトリウム9.8mg(0.0517mmol)を用い、化合物Bの使用量を564.8mg(3.00mmol)とし、反応時間を72時間としたこと以外は、実施例8と同様にしてアニオン重合を行い、式(B−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物10)を441mg得た。得られた高分子化合物10の
1H−NMRから求めた化合物Bの転化率は83%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Bに対して78質量%であった。
【0147】
得られた高分子化合物10について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0148】
(実施例11)
ジフェニルメチルリチウムに代えてジフェニルメチルカリウム8.8mg(0.0428mmol)を用い、化合物Bの使用量を431.1mg(2.29mmol)とし、反応時間を72時間としたこと以外は、実施例8と同様にしてアニオン重合を行い、式(B−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物11)を272mg得た。得られた高分子化合物11の
1H−NMRから求めた化合物Bの転化率は100%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Bに対して63質量%であった。
【0149】
得られた高分子化合物11について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0150】
(実施例12)
ジフェニルメチルリチウムに代えてトリフェニルメチルカリウム21.4mg(0.0757mmol)を用い、化合物Bの使用量を679.7mg(3.61mmol)としたこと以外は、実施例8と同様にしてアニオン重合を行い、式(B−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物12)を415mg得た。得られた高分子化合物12の
1H−NMRから求めた化合物Bの転化率は99%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Bに対して61質量%であった。
【0151】
得られた高分子化合物12について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0152】
(実施例13)
ジフェニルメチルリチウムに代えてカリウムナフタレン23.3mg(0.139mmol)を用い、化合物Bの使用量を625.1mg(3.32mmol)としたこと以外は、実施例8と同様にしてアニオン重合を行い、式(B−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物13)を538mg得た。得られた高分子化合物13の
1H−NMRから求めた化合物Bの転化率は98%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Bに対して86質量%であった。
【0153】
得られた高分子化合物13について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0154】
(実施例14)
ジフェニルメチルリチウムに代えてジフェニルメチルセシウム19.3mg(0.0643mmol)を用い、化合物Bの使用量を675.9mg(3.59mmol)としたこと以外は、実施例8と同様にしてアニオン重合を行い、式(B−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物14)を412mg得た。得られた高分子化合物14の
1H−NMRから求めた化合物Bの転化率は98%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Bに対して61質量%であった。
【0155】
得られた高分子化合物14について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。
【0156】
(実施例15)
化合物Aに代えて化合物C 556.1mg(2.67mmol)を用い、ジフェニルメチルリチウムに代えてトリフェニルメチルカリウム16.2mg(0.0573mmol)を用い、反応温度を0℃とし、反応時間を24時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、下記式(C−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物15)を556.1mg得た。得られた高分子化合物15の
1H−NMRチャートを
図11に示す。なお、得られた高分子化合物15の
1H−NMRから求めた化合物Cの転化率は100%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Cに対して100質量%であった。
【0157】
得られた高分子化合物15について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示す通りであった。また、上記(IV)の方法で、ガラス転移温度(Tg)及び10質量%減少温度(T
10)の測定を行った。Tgは120℃であり、T
10は408℃であった。
【化23】
[式中、Phはフェニル基を示す。]
【0158】
(実施例16)
化合物Aに代えて化合物D 462.7mg(1.52mmol)を用い、ジフェニルメチルリチウムに代えてジフェニルメチルカリウム8.7mg(0.042mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、下記式(D−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物16)を351.7mg得た。得られた高分子化合物16の
1H−NMRチャートを
図12に示す。なお、得られた高分子化合物17の
1H−NMRから求めた化合物Cの転化率は100%であった。また、ポリマー収率は、仕込んだ化合物Dに対して76質量%であった。
【0159】
得られた高分子化合物16について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。結果は表2に示すとおりであった。また、上記(IV)の方法で、ガラス転移温度(Tg)及び10質量%減少温度(T
10)の測定を行った。Tgは172℃であり、T
10は283℃であった。
【化24】
[式中、MDはメチルジメタノシクロデセニル基を示す。]
【0160】
(参考例1)
ジフェニルメチルリチウムに代えてsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)2.69mg(0.0420mmol)を用い、化合物Aの使用量を444.9mg(1.67mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を試みたが、化合物Aのアニオン重合は進行しなかった。
【0161】
(参考例2)
ジフェニルメチルリチウムに代えてsec−ブチルリチウム1.97mg(0.0308mmol)を用い、化合物Bの使用量を504.6mg(2.68mmol)としたこと以外は、実施例8と同様にして化合物Bのアニオン重合を試みたが、化合物Bのアニオン重合は進行しなかった。
【0162】
(参考例3)
ジフェニルメチルリチウムに代えてカリウムナフタレン23.3mg(0.139mmol)を用い、化合物Aに代えてスチレン13.3g(128mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスチレンのアニオン重合を行い、ポリスチレンを13g得た。
【0163】
得られたポリスチレンについて、上記(II)、(III)及び(IV)の方法で、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定、並びに、ガラス転移温度(Tg)及び10質量%減少温度(T
10)の測定を行った。Mnは96000であり、Mw/Mnは1.04であり、Tgは104℃であり、T
10は396℃であった。
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
(実施例17)
化合物A及び化合物Bのブロック共重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて行った。
【0167】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたジフェニルメチルカリウム16.4mg(0.0796mmol)を含むTHF溶液2mlのアンプルと、化合物A 514.1mg(1.93mmol)及びTHF8mlを含むアンプルと、化合物B 487.6mg(2.59mmol)及びTHF6mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10
−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0168】
次いで、ジフェニルメチルカリウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にジフェニルメチルカリウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。ジフェニルメチルカリウム溶液を含む反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却した化合物A及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま48時間反応させた。その後、化合物B及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま48時間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール2mlを添加し、重合を停止した。
【0169】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロート及び桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、5mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで、式(A−2)で表される構造単位及び式(B−2)で表される構造単位を有する高分子化合物17を881mg得た。得られた高分子化合物17の
1H−NMRチャートを
図13に示す。なお、ポリマー収率は、仕込んだ化合物A及び化合物Bの合計量に対して88質量%であった。
【0170】
得られた高分子化合物17について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。数平均分子量Mnの計算値は14100であったのに対し、数平均分子量Mnの測定値は15000であった。また、分子量分布Mw/Mnは1.07であった。
【0171】
また、反応開始から48時間後の化合物Aのホモ重合体(ブロック鎖A)を採取し、ホモ重合体の
1H−NMRを測定した。ホモ重合体の
1H−NMRチャートを
図14に示す。得られたホモ重合体の
1H−NMRと高分子化合物17の
1H−NMRとの比較から、式(A−2)で表される構造単位を有するブロック鎖(ブロック鎖A)と、式(B−2)で表される構造単位を有するブロック鎖(ブロック鎖B)の質量比(ブロック鎖Aの質量/ブロック鎖Bの質量)が、27/73であることを確認した。
【0172】
また、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、ホモ重合体の数平均分子量Mn
Aの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn
A及び分子量分布Mw
A/Mn
Aの測定を行った。ホモ重合体の数平均分子量Mn
Aの計算値6500であり、数平均分子量Mn
Aは6000であった。また、分子量分布Mw
A/Mn
Aは1.08であった。
【0173】
ホモ重合体の数平均分子量Mn
Aと、得られた高分子化合物17の数平均分子量Mnとの比較から、高分子化合物17の数平均分子量Mnの増大が確認された。また、ホモ重合体のGPC曲線と、高分子化合物17のGPC曲線と、を比較したところ、ピーク位置の移動が確認された(
図15参照。)これらの結果からも、高分子化合物17がブロック共重合体であることが確認された。また、ホモ重合体の分子量分布Mw
A/Mn
Aと、高分子化合物17の分子量分布Mw/Mnと、を比較したところ、分子量分布にはほとんど違いがみられなかった。
【0174】
(実施例18)
[リビングポリスチレンによるグラフトコポリマーの合成]
まず、ジフェニルメチルリチウムに代えてジフェニルメチルカリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン重合を行い、上記式(A−2)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物1’)を61.1mg得た。得られた高分子化合物1’について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。数平均分子量Mnの計算値は10400であったのに対し、数平均分子量Mnの測定値は11400であった。また、分子量分布Mw/Mnは1.06であった。
【0175】
次いで、得られた高分子化合物1’及びポリスチレンのグラフト重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて行った。
【0176】
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器に、ブレークシールによって封じられたsec−ブチルリチウム 18.3mg(0.286mmol)を含むTHF溶液3mlのアンプルと、スチレン1.291g(12.4mmol)及びTHF12mlを含むアンプルと、高分子化合物1’ 61.1mg(2.59mmol)及びTHF10mlを含むアンプルと、を溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10
−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。
【0177】
次いで、sec−ブチルリチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にsec−ブチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。sec−ブチルリチウム溶液を含む反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したスチレン及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま10分反応させた。これにより、ポリスチレンを合成した。数平均分子量Mnの測定値は4500であった。
【0178】
その後、高分子化合物1’及びTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま24時間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール2mlを添加し、重合を停止した。
【0179】
反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロート及び桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、ヘキサン及びシクロヘキサンの混合溶液により分別沈殿することで過剰に用いたポリスチレンを除去した。分別沈殿により分離精製した結果、下記式(E)で表される構造単位を有する高分子化合物(高分子化合物1’の変性物、高分子化合物18)を0.65g得た。得られた高分子化合物18の
1H−NMRチャートを
図16に示す。高分子化合物18の
1H−NMRはポリスチレンとほぼ一致し、高分子化合物1‘に起因するシグナルは検出されなかった。なお、ポリマー収率は、仕込んだ高分子化合物1’及びスチレンの合計量に対して66質量%であった。
【0180】
【化25】
[式中、Adは1−アダマンチル基を示し、PSはポリスチレンを示す。]
【0181】
得られた高分子化合物18について、上記(I)、(II)及び(III)の方法で、数平均分子量Mnの計算値の算出、並びに、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnの測定を行った。数平均分子量Mnの計算値は209000であったのに対し、数平均分子量Mnの測定値は165000であった。また、分子量分布Mw/Mnは1.02であった。高分子化合物1’と高分子化合物18の分子量分布にはほとんど違いがみられず、リビング的にグラフト重合が進行していることが確認できた。
【0182】
(実施例19)
[UV照射による式(C−2)で表される構造単位を有する高分子化合物の高分子架橋反応]
以下に示す内容で、式(C−2)で表される構造単位を有する高分子化合物の架橋反応を行った。
【化26】
【0183】
バイアルに100mgの高分子化合物15(カルボニル基を0.48mmolを含む)を入れ、ここにイソプロパノール40μl(0.52mmol)及びTHF200μlを加えて、高分子化合物15を溶解させた。これにより、高分子化合物15を32質量%含む溶液を調製した。バイアルにカバーガラスをかぶせ、超高圧UVランプ(250w、ウシオ電機製、商品名:USHIO optical module)を用いて11時間連続してUV照射を行った。11時間のUV照射後、溶液が流動性を失いゲル化していることを確認した。また、UV照射前は無色透明であった溶液が、UV照射後には薄い黄色に変化していることを確認した。
【0184】
UV照射前の溶液及びUV照射後に得られたゲルのFT−IR測定を行った。測定では、UV照射前の溶液及びUV照射後に得られたゲルをそれぞれKBrプレート上に塗布し、蒸発乾固させたものを用いた。結果を
図17に示す。
図17中、上段がUV照射前の溶液のFT−IRチャートを示し、下段がUV照射後に得られたゲルのFT−IRチャートを示す。
図17に示すFT−IRチャートでは、水酸基のピークが観測され、高分子化合物15の一部のカルボニル基がUV照射によって励起されて架橋反応が進行し、高分子化合物15の架橋物が得られていることが確認された。